説明

試料分析装置、及び流路詰り判定方法

【課題】本発明は分析における損失を小さくするために、特に新たなセンサ類を使用せずに、流路の詰りを事前に検知する技術に関する。
【解決手段】流路の詰りを検知するために装置の具備している光検出器、具体的にはイメージセンサを使用する。画像処理によって流路の詰りを検知する。本発明によれば、新たなセンサを追加することなく流路の詰りを検知することができ、装置のコストを上昇させることなく、分析者の試料や時間の損失を防ぐことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は試料分析装置、及び流路詰り判定方法に関し、例えば、カートリッジが挿入される流路が詰まりによって塞がれた状態を検出するための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばSNP解析装置のような試料分析装置においては、DNAチップ等をフローセル内に保持したカートリッジが挿入されて試料分析が行われる。その場合、使用する試薬の溶質が析出したり、外来の異物が細い流路を塞いでしまうと、流路が詰まって試料を無駄にしたり不正確な結果を出力したりして分析の妨げになる。特に、試料は貴重であり、測定に失敗すると、もう試料を入手できない場合があるため、有効利用できる手段が必要となる。そのため、フローセルに試料を導入する装置は細い流路の詰りを検知して、詰りが発生している場合は使用者に警告を発することが考えられている。
【0003】
この流路の詰り検知に関し、例えば、特許文献1では、マイクロホンの振動板に、ノズルからの吐出物を衝突させてその振動を検出することによってノズルの詰りを検知する方法が開示されている。また、特許文献2では、ノズルの詰りを圧力測定器の圧力変動によって検知する方法が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2000−085149号公報
【特許文献2】特開平06−109745号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1や2のように、詰りを検知する素子としてマイクロホンの振動板や圧力測定器を試料分析装置に内蔵することは、装置の構造を複雑にし、価格を上昇させる。
【0006】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、試料分析における試料の損失を小さくすると共に廉価な試料分析装置を実現するため、流路の詰りを事前に検知する技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の問題点を解決するため、本発明による試料分析装置は、光検出器を備え、その光検出器の出力に基づいて流路に詰りが生じているか否かを判定する。光検出器としては、具体的にはイメージセンサを使用することができる。
【0008】
つまり、本発明による試料分析装置は、試料反応部に試料を導入して分析する試料分析装置であって、前記試料を前記試料反応部に導入するための流路と、前記試料及び所定の液体を、前記流路を介して前記試料反応部に送液するための送液機構と、前記試料反応部からの光を検出する光検出部と、前記光検出部の検出結果に基づいて前記流路が詰まっているか否かを判定する詰り判定部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
ここで、前記詰り判定部は、前記光検出器の出力画像から前記流路の詰りを判定する。より詳しくは、前記光検出器は、前記試料反応部を空にする動作を実行した後の第1の画像と、前記試料反応部を液体で満たす動作を実行した後の第2の画像とを取得し、前記詰り判定部は、前記第1の画像及び第2の画像を比較することによって前記流路の詰りを判定する。また、別の態様として、前記光検出器は、前記試料反応部を液体で満たす動作を実行した後の画像を取得し、前記詰り判定部は、前記画像と前記試料反応部が液体で満たされた状態の参照画像とを比較することによって前記流路の詰りを判定するようにしてもよい。
【0010】
前記試料分析装置は、さらに、前記詰り判定部が、前記流路が詰っていると判定した場合、自動的に前記流路の洗浄処理を実施する洗浄処理手段を備えたり、前記詰り判定部が、前記流路が詰っていると判定した場合、使用者に判定結果を通知し、前記使用者に洗浄を促す手段を備えるようにしてもよい。
【0011】
前記試料分析装置に対しては、セプタムを有するフローセルを含むカートリッジを装着するようにしてもよい。この場合には、試料分析装置は、カートリッジを装着するためのカートリッジインターフェイス部と、前記セプタムに挿入可能なニードルと、前記ニードルを前記セプタムに対して相対的に移動させ、前記ニードルの挿抜動作を実行するニードル移動機構と、前記試料を前記フローセルに導入するための流路と、前記試料及び所定の液体を、前記流路及び前記ニードルを介して前記フローセルに送液するための送液機構と、前記フローセルからの光を検出する光検出部と、前記光検出部の検出結果に基づいて前記流路が詰まっているか否かを判定する詰り判定部と、を備えることになる。
【0012】
また、本発明による流路詰り判定方法は、上述の試料分析装置における前記流路の詰りを判定する流路詰り判定方法であって、光検出部によって、前記試料反応部からの光を検出する工程と、判定部によって、前記光検出部の検出結果に基づいて前記流路が詰まっているか否かを判定する工程と、を備えることを特徴とする。
【0013】
前記判定する工程において、前記詰り判定部は、前記光検出器の出力画像から前記流路の詰りを判定する。より詳しくは、前記光を検出する工程において、前記光検出器は、前記試料反応部を空にする動作を実行した後の第1の画像と、前記試料反応部を液体で満たす動作を実行した後の第2の画像とを取得し、前記判定する工程において、前記詰り判定部は、前記第1の画像及び第2の画像を比較することによって前記流路の詰りを判定する。別の態様として、前記光を検出する工程において、前記光検出器は、前記試料反応部を液体で満たす動作を実行した後の画像を取得し、前記判定する工程において、前記詰り判定部は、前記画像と前記試料反応部が液体で満たされた状態の参照画像とを比較することによって前記流路の詰りを判定するようにしてもよい。
【0014】
さらなる本発明の特徴は、以下本発明を実施するための最良の形態及び添付図面によって明らかになるものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、試料分析における試料の損失を小さくすると共に廉価な試料分析装置を実現するため、流路の詰りを事前に検知する技術を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、本実施形態では、試料分析装置の一例としてSNP解析装置を挙げているが、これに限らず、本発明の本旨はあらゆる試料分析を実行する装置に適用可能である。
【0017】
<SNP解析装置の概要について>
図1は、本実施形態にかかるDNAチップを用いるSNP解析装置101の分解斜視図(外観)である。SNP解析装置101は、主にDNAのSNPを検出することを目的としている。SNPとはSingle Nucleotide Polymorphismの略で一塩基多型と呼ばれ、一塩基だけ異なる遺伝子のことを指す。このSNPが病気と関連していると考えられ、さまざまな病気と関連するSNPの探索が精力的に行われている。
【0018】
SNP解析装置101の最終的な出力は、次の3状態である。サンプルDNAにおいて着目するSNPが両対立遺伝子で存在する、又は存在しない状態(ホモ)と、片方の対立遺伝子のみに存在する状態(ヘテロ)である。これらを判定する方法として、例えば、着目するSNPを持つサンプルと反応し結合する(ハイブリダイズする)試薬を第1番目の蛍光色素により標識しておき、それを持たないサンプルとハイブリダイズする試薬を第1番目とは励起波長、蛍光波長の異なる第2番目の蛍光色素により標識しておく。サンプルDNAに対し前記両試薬を反応させる。第1番目と第2番目の蛍光色素からの蛍光を検出し、それぞれの検出強度の比を求める。この比をもとに、着目するSNPに対する前記3つの状態を判定する。
【0019】
ここで、上記の電界制御式チップを用いたPCR生成物であるサンプルを分析する手順を説明する。分析手順は、”Amplicaon Down Format”と”Capture Down Format”の2種類がある。
【0020】
Amplicaon Down Formatでは、まず、半導体チップ上に、一部の塩基配列が不明であり、一端がビオチン化された分析対象PCR生成物(Sample Oligos)を供給し、半導体チップ上の所定の電極に電圧を印可する。すると、そのSample Oligosは、当該電極に引き寄せられ、半導体チップ表面の透過層構造と接触する。そして、Sample Oligosのビオチン標識と透過層構造が反応し(avidin-biotin反応)、Sample Oligosは透過層構造に固定される。半導体チップ表面を洗浄し、別のSample Oligosを用いて上述の工程を繰り返すことにより、半導体チップ上に、Sample Oligosから成る所望のオリゴヌクレオチド−アレイを形成する。Sample Oligosがマトリックス状に配置されたオリゴヌクレオチド−アレイを形成した後、その上に、一端が蛍光標識されたオリゴヌクレオチド(Reporter Oligos)を供給する。Reporter Oligosは、相補的配列を有するSample Oligosとハイブリダイズする。半導体チップ表面を洗浄後、半導体チップ上に励起光を照射する。これにより、Sample OligosとハイブダイズしたReporter Oligosから蛍光が発生する。この蛍光パターンを検出し、解析することで、Sample Oligosの塩基配列を分析することができる。
【0021】
一方、Capture Down Formatでは、まず、半導体チップ上に、既知の塩基配列を有し、一端がビオチン化されたオリゴヌクレオチド(Capture Oligo)を供給し、半導体チップ上の所定の電極に電圧を印可する。すると、そのCapture Oligoは、当該電極に引き寄せられ、半導体チップ表面の透過層構造と接触する。そして、Capture Oligoのビオチン標識と透過層構造が反応し(avidin-biotin反応)、Capture Oligoは透過層構造に固定される。半導体チップ表面を洗浄し、別のCapture Oligoを用いて上述の工程を繰り返すことにより、半導体チップ上に、Capture Oligoから成る所望のオリゴヌクレオチド−アレイを形成する。Capture Oligoがマトリックス状に配置されたオリゴヌクレオチド−アレイを形成した後、その上に、一部の塩基配列が不明である分析対象PCR生成物(Sample Oligos)を供給する。Sample Oligosは、相補的配列を有するCapture Oligoとハイブリダイズする。これにより、Sample Oligosは、Capture Oligoを介して、半導体チップ上に固定される。半導体チップ表面を洗浄し、一端が蛍光標識されたオリゴヌクレオチ(Reporter Oligos)を供給する。Reporter Oligosは、相補的配列を有するSample Oligosとハイブリダイズする。半導体チップ表面を洗浄後、半導体チップ上に励起光を照射する。これにより、Sample OligosとハイブリダイズしたReporter Oligosから蛍光が発生する。この蛍光パターンを検出し、解析することで、Sample Oligosの塩基配列を分析することができる。
【0022】
図1に示されるように、SNP解析装置101は、トップカバー102、カバー103、装置本体104、フロントパネル105を備えている。そして、SNP解析装置101の装置本体104は、主に、分注ユニット(後述するように、112+106)、流路系ユニット113乃至115、インターフェイスユニット107、光学系ユニット108および電源ユニット109から構成され、図示しない外部機器(PC)により制御される。SNP解析装置101は、DNAチップを備えたカートリッジを装着し、分析を行う。カートリッジは、その内部に半導体素子からなるDNAチップを配置したフローセルを内蔵している。DNAチップは、最大400の核酸プローブを所定位置に配置し、所望のプローブアレイを構築できる。尚、DNAチップ上への核酸プローブの貼り付けから、測定までを自動で行え、オペレータがサンプル毎に装置を操る必要はない。例えば、96個のサンプルの分析は、およそ3時間で行える。
【0023】
分注ユニットは、サンプルや試薬を配置保管できるサンプルハンドリングステーション106と、サンプル及び試薬を所定位置へ搬送するためのロボットアーム112を含むものである。サンプルハンドリングステーション106は、サンプルや試薬が入っているサンプルトレイ111を2つ、Reagentボトルを4つ搭載できる。また、反応酵素を冷却保管できる反応酵素冷却部を備えている。そして、溶液を吸引吐出できるプローブチップを備えたロボットアーム112を用い、所定のサンプルや試薬を分注し、注入ポートに投入できるようになっている。
【0024】
流路系ユニット113乃至115は、3台のシリンジポンプを駆動し、注入ポートから投入されたサンプルや試料、水ボトルに蓄えられた水等を、自動的にフローセル内のDNAチップへ搬送できる。また、洗浄ポートによりプローブチップを洗浄したり、フローセル内や流路を洗浄できる。更に、装置内から生じた廃液を、装置外に配置された廃液ボトルへ排出できる。
【0025】
インターフェイスユニット107は、カートリッジを着脱保持でき、カートリッジにニードルを挿入し、ニードルを介して流路接続できる。これにより、所定のサンプルや試薬をフローセル内に搬送することが可能となる。また、DNAチップと電気的接続することにより、核酸プローブの配置場所等を制御可能とする。更に、DNAチップと熱的接続することにより、フローセル内の温度を制御可能とする。
【0026】
光学系ユニット108は、DNAチップ上に存在する蛍光試薬を励起できる光源と、蛍光試薬から生じた蛍光を検出できる検出器とを含み、DNAチップ上の画像を出力できる。
【0027】
電源ユニット109は、各ユニットへ駆動電力を供給し、電源電圧として、100、110、120、200、220、230、240VACが使用可能であり、電流値は4A以下で、周波数は50/60Hzに対応している。
【0028】
SNP解析装置101の装置側面には外部機器接続部110が設けられ、図示しないパーソナルコンピュータ(PC)及びバーコードリーダーを接続できる。PCは、例えば、SNP解析装置101の操作、測定結果の表示、解析、保存を担う役割を有する。また、例えば、SNP解析装置101とPCはイーサネットによって接続される。ハブを介することで1台のPCが最高4つのSNP解析装置101を操作することも可能である。また、バーコードリーダーは、サンプルの入ったサンプルトレイやカートリッジに貼付されたバーコードを読み取り、PCへ送信することで測定されるサンプル、試薬、カートリッジの管理を容易にする。
【0029】
<SNP解析装置の内部構成について>
図2は、本実施例のSNP解析装置101の概略内部構成を示す図である。以下、図2を参照して装置全体の機構及び動作を説明する。尚、図2では、装置本体にカートリッジ218が挿入され、装置本体とフローセル219がニードル211により接続された状態が示されている。
【0030】
流路系ユニット113乃至115は、ロボットアーム112のプローブチップ205、水ボトル201、ヒスチジンボトル202、廃液ボトル203、水ポンプ206、ヒスチジンポンプ207、カートリッジポンプ208、洗浄ポート209、注入ポート210、及びニードル211が複数の流路で結ばれた構造となっている。
【0031】
プローブチップ205は、サンプル及び溶液を吸引吐出する配管が接続され、ロボットアーム112によりその先端を所定位置に移動させることができる。そして、サンプルハンドリングステーション上に配置されたサンプルトレイ、Reagentボトル及び反応酵素冷却部から、所定のサンプルや試薬を分注し、注入ポートへ投入できる。ここで、注入ポート210は、サンプル及び溶液をカートリッジ218内のフローセル219に送り込む前に存在するポートタンクである。注入ポート210は、40℃から60℃の範囲で温度制御可能である。導入試料温度とカートリッジ内温度が異なる状態で試料を導入するとスパイクノイズが発生するが、注入ポート210より試料導入前に温調することで、スパイクノイズを軽減できる。また、プローブチップ205は、洗浄ポート209において洗浄することができる。
【0032】
水ポンプ206は、水ボトル201からプローブチップ205に水を送ること、プローブチップ205によりサンプル及び試料の吸引・吐出を行うこと、廃液ボトル203に溶液を送ることができる。
【0033】
また、ヒスチジンポンプ207は、ヒスチジンボトル202からヒスチジンを注入ポート210に送ること、水ボトル201から注入ポート210に水を送ること、注入ポート210に空気を送ること、廃液ボトル203にシリンジ内溶液を送ることができる。
【0034】
また、カートリッジポンプ208は、注入ポート210からカートリッジ218内のフローセル219に溶液及び空気を送ること、カートリッジ218内のフローセル219からカートリッジポンプ208に溶液及び空気を送ることができる。
【0035】
装置内で生成された廃液は、接続部を介して着脱可能に搭載されている装置外部の廃液ボトル203へ排出できる。
【0036】
水ポンプ206とカートリッジポンプ208を駆動することにより、注入ポートに投入された試薬や洗浄液を、カートリッジ流路を介して、フローセル219内へ搬送できる。カートリッジ流路は、ヒスチジンポンプ207とカートリッジポンプ208を駆動することにより、ヒスチジンによって洗浄される。ヒスチジンポンプ207から注入ポート210及びカートリッジポンプ208までの流路は、ヒスチジン溶液から水に置換できる構造と成っている。水により流路を洗浄することでヒスチジン溶液が流路配管内に析出することを回避している。
【0037】
尚、水ボトル201とヒスチジンボトル202には、それぞれと1Lの水とヒスチジンを入れることが可能である。この為、96サンプルの貼り付けから測定までの間、水やヒスチジンをユーザーが追加する必要がない。
【0038】
インターフェイスユニット107は、カートリッジ218内のフローセル219と装置本体を結ぶ流路となるニードル211、カートリッジ冷却ペルチェ212、およびポゴピン213を含んでいる。カートリッジ冷却ペルチェ212は、カートリッジと接触し、フローセル219の温度を制御する。ポゴピン213は、カートリッジ218に設けられた端子に接続され、装置本体とDNAチップの電気的接続を行う。ポゴピン213の本数は、例えば12本と少数である為、カートリッジ218への接続が容易となっている。
【0039】
光学系ユニット108は、CCDカメラ214、EMフィルタ215、EXフィルタ216、及びLED217を含む。LED217は、EMフィルタ215により波長特性でフィルタされ、フローセル219内のDNAチップ上の蛍光体に光を照射できる。そして、蛍光体から生じた蛍光は、EXフィルタ216により波長特性でフィルタされ、フローセル219の映像はCCDカメラ214により取得される。なお、光源としてLED217を使用しており、光源の寿命は従来のレーザの場合より十分長い為、装置寿命中の光源交換作業を回避でき、メンテナンスが容易となる。
【0040】
<インターフェイスユニットについて>
図3はインターフェイスユニット107を構成するCartridge processor301の分解構成図である。図3を参照して、カートリッジ218とSNP解析装置101とのインターフェースについて説明する。
【0041】
図3において、カートリッジ押さえ302は、装置内にカートリッジ218を保持するためのものである。ニードルブロック304は、カートリッジ218にニードル211を挿入し流路接続を形成する。スライドベース305は、ポゴピン213やカートリッジ冷却ペルチェ212によりカートリッジ218との電気的・熱的な接続や切断を行う。ニードルベース306は、ニードルブロック304が取り付けられ、アクチュエータ307から動力を受け、ニードルの抜き差しをしたり、シャフト308や2種類のバネ309及び310を介してスライドベース305の駆動を行う。メカニカルストッパ311は、アクチュエータ307駆動時にスライドベース305と接触し動きを制限することで電気的・熱的な接触の位置を一定に保つ。フォトインタラプタ312は、ニードルベース306に取り付けられた遮光板が所定の位置にきたことを検知し装置駆動時の初期位置を定める。
【0042】
<カートリッジの構成について>
図4は、カートリッジのより詳細な構成を示す図である。図4を参照して、カートリッジの機能を説明する。図4(a)は、カートリッジの全体図であり、図4(b)は、チップ部を拡大した平面図と断面図である。
【0043】
カートリッジ218は、DNAチップ402、チップの下に配置されチップに試料を送る流路となるフローセル219、フローセル末端の試料が導入される部分においてフローセルの密閉を行うセプタム(隔壁部:シール構造を実現するもの)404、カートリッジの外観となりチップ・フローセル・セプタムなどを保持するハウジング405で構成される。カートリッジ218は、試料分析装置に対して着脱でき、検出目的ごとや測定対象ごとに異なったカートリッジを装置に取り付け、検査を行うことができる。
【0044】
DNAチップ402は、DNAプローブがアレイ状に配置されている。チップ上に試料となるDNAが蛍光物質付きで送りこまれ、DNAプローブとハイブリダイズし、蛍光検出を行うことで、DNAのSNPs判定を行う。本実施形態では400サイトのDNAプローブを有し、プローブ形成の際、電気的にDNAを引き付け、貼り付ける。
【0045】
フローセル219は、カートリッジ218内部に試料を溜めることで、DNAチップ402上に試料を導入・保持する。本実施形態ではフローセルサイズは長さ約7mm、幅約1.5mmである。セプタム404は、カートリッジフローセル219の両端にあるニードル挿入口でシールを行い、試料漏洩を防止する。本実施形態では、シリコン製厚さ約1.6mmのセプタムを用いる。ハウジング405は、DNAチップ402、フローセル219、セプタム404等を保持、収容する。各種反応において電気・熱を用いることから、ハウジング405には難燃材が用いられている。
【0046】
<カートリッジ挿入・固定機構について>
図5は、装置内にカートリッジ218を挿入・固定する機構である。図5(a)は、カートリッジ、カートリッジ押さえ、及びスイッチ(マイクロスイッチ)の位置関係を示し、図5(b)は、カートリッジの3個のピンと装置側長穴による固定法を示す。
【0047】
カートリッジ押さえ302は、カートリッジ218挿入時に適切な位置へ導く形状を有する。カートリッジ押さえ302の先端にはマイクロスイッチ503が取り付けられカートリッジ218の挿入を検知する。カートリッジ218の位置決めは、カートリッジ側の3本のピン505と装置側の3つの長穴506により定められる。
【0048】
カートリッジ押さえ302は、曲面の外形をもつカートリッジ218と、点接触することで、接触抵抗を減らし、スムーズな挿入を実現している。また、カートリッジ押さえ302の最深部に取り付けられたマイクロスイッチ503がカートリッジ218で押されて挿入検知する際、カートリッジ押さえ302は、カートリッジ218が正しい位置にきてカートリッジ先端でのみマイクロスイッチ503が押されるような形状となっている。そのため、カートリッジ挿入時に生じる可能性がある誤検知の危険性を回避している。
【0049】
カートリッジ218の位置決めはカートリッジに取り付けられた先端が球状である3本のピン505と、装置側に設けられた3個の傾斜を有する長穴506により実現される。断面図で見ると、各ピン先端部の球面と長穴の傾斜面が接触し位置状態を定めている。3本のピン505の中心にはカートリッジのDNAチップが位置し、3個の長穴506の中心にはDetector部光学系測定中心が位置する。この構成より、ピンや穴の加工位置が設計値に対して多少ずれても、3本ピンの中心と3個の長穴の中心位置ずれは小さく、Detector部で測定する際、位置合わせを最小限に抑えることが出来る。
【0050】
<ニードルブロックとニードルベースについて>
図6は、ニードルブロックとニードルベースの組立図である。図6を参照し、ニードルの挿入位置調整方法を説明する。
【0051】
ニードルベース系601は、ニードルブロック602、位置決めピン603、N調整ベース604、固定ネジ605、ニードルベース606で構成される。ニードルブロック602は位置決めピン603を基準としN調整ベース604に取り付けられる。N調整ベース604は、2個の穴607を介して固定ネジ605でニードルベース606に取り付けられる。2個の穴607は、固定ネジ605に対しての2mmの尤度を有しているため、位置調整が可能である。N調整ベース604の位置調整より、それに取り付けられたニードルブロック及びニードルの位置調整を実現する。ニードルを交換する際はニードルブロック602のみをN調整ベース604から取り外し、ニードルを交換し、位置決めピン603を基に取り付けを行うので、再調整が不要である。
【0052】
図7は、ニードルとニードルブロックの詳細図である。図7を参照し、ニードルをニードルブロックに取り付ける方法を説明する。図7(a)はニードルとニードルブロックの詳細図であり、図7(b)はニードルガイドの詳細図であり、図7(c)はニードルブロックの詳細図である。
【0053】
ニードル系701は、ニードル211、ニードルガイド703、ニードルブロック602、ニードルシール705、ニードル押さえネジ706で構成される。
【0054】
ニードル211は、カートリッジ218のフローセル219へセプタムを介して挿入され、カートリッジとの流路をつくる。本実施例ではニードル先端は45°にカットされ、切り口はセプタム詰まり防止のため、バリ取りがなされている。
【0055】
ニードルガイド707は円筒形状の一部に突起708を有し、ニードル211と接着される。ニードルブロック602は、ニードルガイドを受ける円筒穴710、円筒穴底面にニードルガイドの突起を受ける窪み711を有する。ニードルブロックの窪み711にニードルガイドの突起708が入ることで、ニードルガイド703と接着されたニードル211の切り口を方向付ける。本実施例では45°にカットされた切り口が2本のニードルそれぞれに対して外向きになるよう取り付けられる。このように、ニードルをセプタムに対して相対的に移動させ、ニードルの挿抜動作を実行するニードル移動機構が実現される。
【0056】
ニードルガイド703の円筒形状部が、ニードルブロック602の円筒穴に組み込まれることで、ニードル211とニードルブロック602の同心度を高くできる。そのため、ニードル交換による位置再現性が実現でき、メンテナンス性が向上する。また、ニードルガイド703が納まるニードルブロック602の円筒穴を2個平行に配置することで、その穴に組み込まれる2本のニードルを平行且つ切り口方向を揃えた状態で配置できる。そのため、1個のニードルブロック602を位置調整することで、2本のニードル211の位置を定めることができ、ニードルを1本毎に位置調整する場合と比較し、簡易で高精度な位置調整が実現できる。2本のニードル211がニードルブロック602に取り付けられる際、長さが揃っていないとカートリッジへの挿入や送液が困難となる。本方法では、ニードル211とニードルガイド703の接着時の位置関係、ニードルガイド703の寸法、ニードルブロック602のガイド受け穴寸法が正確であれば、ニードルガイド703の円筒側面がニードルブロック602の円筒穴側面に沿い、ニードルガイド703の円筒底面がニードルブロック602の円筒穴底面に接触するようニードル押さえネジ706で押し付けられるため、調整する必要なく、2本のニードルの長さを揃えることが可能である。
【0057】
ニードルシール705は、ニードルガイド703とニードルブロック602の接続部に設けられ、送液時の試料流出を防ぐ。本実施形態では、ニードルシール705は、その材料としてフッ素樹脂が用いられ、ニードル押さえネジ706による押し込みでニードルシール705をニードルガイド703、ニードルブロック602のそれぞれと密着させ、ニードルシール705を弾性変形させることにより、シール機能を果たす。
【0058】
<SNP解析装置の処理について>
図8は、SNP解析装置101の処理フローを示す図である。まず、SNP解析装置101をPower−onし、初期化(S801)を行う。水ボトル内の水容量確認とヒスチジンボトル内のヒスチジン容量確認を行う。
【0059】
続いて、サンプル等準備(S802)として、バーコードリーダーで、Low Salt Buffer、High Salt Buffer、NaOH、サンプルが入ったマイクロタイタープレート、カートリッジのバーコードを各々読み、そのたびにLEDが点灯するので、その場所に各々を正しく設置する。
【0060】
カートリッジを装置に挿入し(S803)、流路の接続を行う(S804)。具体的にはニードル系701がスライドして、ニードル211がカートリッジ218のフローセル219へセプタムを介して挿入される。
【0061】
ここで、流路が確実に接続され、外来異物による詰りがないことを確認するために詰り検知を実施する(S805)。その方法に関しては後述する。
【0062】
次にサンプルDNAの貼り付け(S806)を以下のように行う。ロボット112がプローブチップ205を洗浄ポートに移動させ、水ポンプ206を稼動させプローブチップ205を洗浄する。ロボット112はプローブチップ205を目的のサンプル位置に移動後、稼動させた水ポンプ206により、プローブチップ205からサンプルを吸引する。その後、ロボット112をPI検知位置に移動させ、キャリブレーションの確認を行う。また、ロボット112は、プローブチップ205を注入ポートに移動させた後、水ポンプ206により、プローブチップ205からサンプルを吐出する。続いて、カートリッジポンプ208を稼動させ、サンプルをカートリッジフローセル219に移動させる。さらに、カートリッジActive Chip内の目的の位置に、およそ0.2mAの電流を60秒印加する。ヒスチジンポンプ207を稼動させ、ヒスチジンを注入ポート210に送る。カートリッジポンプ208を稼動させ、カートリッジフローセル洗浄のためにヒスチジンをカートリッジフローセル219に移動させる。そして、カートリッジポンプ208を稼動させ、ヒスチジンを廃液ボトル203に移動させる。
【0063】
また、レポータDNAの導入(S807)は以下のように行われる。ロボット112は、プローブチップ205を洗浄ポート209に移動させ、稼動させた水ポンプ206によりプローブチップ205を洗浄する。そして、ロボット112は、プローブチップ205をHigh Salt Buffer位置に移動後、水ポンプ206によりプローブチップ205からHigh Salt Bufferを吸引する。ロボット112をPI検知位置に移動後、キャリブレーションの確認を行う。ロボット112は、プローブチップ205を注入ポート210に移動後、水ポンプ206により、プローブチップ205からHigh Salt Bufferを吐出する。続いて、カートリッジポンプ208を稼動させ、High Salt Bufferをカートリッジフローセル219に移動させる。さらに、カートリッジポンプ208を稼動させ、High Salt Bufferをカートリッジフローセル219に移動後、カートリッジポンプ208を稼動させ、High Salt Bufferを廃液ボトル203に移動させる。
【0064】
ロボット112は、プローブチップ205を洗浄ポートに移動させ、そのとき水ポンプ206を稼動させてプローブチップ205を洗浄する。ロボット112がプローブチップ205を蛍光体がついたDNA(レポータDNA)位置に移動後、水ポンプ206を稼動させ、ロボット112がプローブチップ205からレポータDNAを吸引する。ロボット112をPI検知位置に移動後、キャリブレーションの確認を行う。ロボット112がプローブチップ205を注入ポート210に移動後、水ポンプ206を稼動させ、ロボット112はプローブチップ205からレポータDNAを吐出する。カートリッジポンプ208を稼動させ、レポータDNAをカートリッジフローセル219に移動させる。カートリッジポンプ208を稼動させ、レポータDNAをカートリッジフローセル219に移動させた後は、およそ60秒維持する。その後、カートリッジポンプ208を再度稼動させ、レポータDNAを廃液ボトル203に移動させる。
【0065】
ロボット112は、プローブチップ205を洗浄ポート209に移動させ、稼動させた水ポンプ206を用いてプローブチップ205を洗浄する。ロボット112は、プローブチップ205をHigh Salt Buffer位置に移動後、水ポンプ206を用いて、プローブチップ205からHigh Salt Bufferを吸引する。ロボット112をPI検知位置に移動後、キャリブレーションの確認を行う。ロボット112は、プローブチップ205を注入ポート210に移動させた後、水ポンプ206を用いて、プローブチップ205からHigh Salt Bufferを吐出する。その後、カートリッジポンプ208を稼動させ、High Salt Bufferをカートリッジフローセル219に移動させる。さらに、カートリッジポンプ208を稼動させ、High Salt Bufferを廃液ボトル203に移動させる。カートリッジフローセル219の温度を設定温度に上昇させた後、およそ60秒維持する。
【0066】
非特異的吸着レポータDNAの洗浄(S808)を以下のように行う。ロボット112は、プローブチップ205を洗浄ポート209に移動させ、水ポンプ206を用いてプローブチップ205を洗浄する。ロボット112は、プローブチップ205をLow Salt Buffer位置に移動させた後、水ポンプ206により、プローブチップ205からLow Salt Bufferを吸引する。ロボット112をPI検知位置に移動後、キャリブレーションの確認を行う。ロボット112は、プローブチップ205を注入ポート210に移動させた後、水ポンプ206を用いて、プローブチップ205からLow Salt Bufferを吐出する。その後、注入ポート209の温度を設定温度に上昇させ、およそ60秒維持する。続いて、カートリッジポンプ208を稼動させ、Low Salt Bufferをカートリッジフローセル219に移動させる。そして、カートリッジポンプ208を稼動させ、Low Salt Bufferを廃液ボトル203に移動させる。
【0067】
ロボット112は、プローブチップ205を洗浄ポート209に移動後、水ポンプ206を用いてプローブチップ205を洗浄する。ロボット112は、プローブチップ205をLow Salt Buffer位置に移動後、水ポンプ206を用いて、プローブチップ205からLow Salt Bufferを吸引する。ロボット112をPI検知位置に移動後、キャリブレーションの確認を行う。ロボット112は、プローブチップ205を注入ポート209に移動後、水ポンプ206により、プローブチップ205からLow Salt Bufferを吐出する。カートリッジポンプ208を稼動させ、Low Salt Bufferをカートリッジフローセル219に移動させる。カートリッジフローセル219の温度を設定温度にする。
【0068】
続いて、CCDカメラで画像を取得する(S809)。ここで、画像取得の際に流路に詰りがなかったか否かを確認するために詰り検知を行う(S810)。詰り検知は後述するように、フローセルの中の液体を空にした状態とフローセル内部を液で満たした状態のCCD画像を連続して取得し、画像処理によって行う。そのため、上記S806からS808に記す過程の中で、フローセルの中の液体を空にした状態とフローセル内部を液で満たした状態が連続する過程において、更に実施してもよい。また、上記工程が繰り返されなくても、作為的にそのフローセルの中の液体を空にした状態とフローセル内部を液で満たした状態を連続的に作り出して実施してもよい。
【0069】
その後、カートリッジポンプ208を稼動させ、Low Salt Bufferをカートリッジフローセル219に移動する。再度カートリッジポンプ208を稼動させ、Low Salt Bufferを廃液ボトル203に移動する。装置終了処理(S807)後、装置Power−offする。
【0070】
<流路の詰り検出について>
流路の詰り検知は以下の手順で行う。図9は、流路の詰り検出動作を説明するためのフローチャートである。
【0071】
まず、フローセル219の内部が空になるような動作をさせて(S901)イメージを取得する(S902)。このとき、フローセル219の内部が液で満たされた位置に焦点はあわせておく。イメージの取得はイメージセンサを使用すると簡便に取得できるが、レーザ走査顕微鏡の様に照射光を走査して、処理によってイメージを合成してもよい。
【0072】
次にフローセル219をSNP解析装置101の送液機構を使ってフローセル219に液を満たすように動作させて(S903)イメージを取得する(S904)。
【0073】
もしこのとき流路が詰まっていた場合には、以下の2通りの状態が想定される。
(1)流路が詰まっていて、フローセル内部が液で満たされていない状態
(2)流路が詰まっていて、フローセル内部が液で満たされている状態
【0074】
(1)の場合は、S902及びS904で取得したイメージは、どちらも液で満たされていない「空」状態のイメージが取得される。
(2)の場合は、S902及びS904で取得したイメージは、どちらも液で満たされている「満」状態のイメージが取得される。
【0075】
すなわち、流路が詰まっていない場合においてのみ、S902とS904で取得したイメージは、空の場合と満たされた場合の異種のイメージとなる。
【0076】
取得したイメージの例を図10に示す。図10(a)および図10(c)はフローセルが空の状態、図10(b)および図10(d)はフローセルが液体で満たされた場合を示している。フローセル内部が空の状態と液で満たされた状態の画像は明らかに相違し、目視にて容易に流路が詰まっていないことが確認できる。詰まっている場合は、たとえば図10(a)と(c)が取得されたり、図10(b)と(d)が取得されたり、異なる画像にならないからこれも容易に目視にて判定できる。
【0077】
なお、図9に示す判定の流れの画像取得部分は、あらかじめ比較の参照画像を試料導入装置の記憶装置部分(図示せず)に保存しておき、その画像と比較してもよい。具体的には、流路を液で満たした状態の画像をあらかじめ保存しておき(これをF1と呼ぶ)、その画像と、新たに取得した実際に流路の詰りを確認するための液で満たした画像(これをF2と呼ぶ)に以下に述べる画像処理を施す。両者はほぼ一致するはずであるが、流路が詰まっていれば空画像になったり、流路から気泡が混入したりして、F1とF2の間に相違が発生してこれを検知することができる。
【0078】
また、自動化を進めた装置においては、自動判定を行うことが可能である。まず、フローセルを空にした状態の各画素の信号出力をe(i,j)で表す。ただし、iおよびjはイメージの座標である。フローセルを液で満たした状態の各画素の信号出力をf(i,j)で表す。
【0079】
流路詰りを自動判定するために、Σ|e(i,j)−f(i,j)|を計算する。この計算は、取得したイメージの全画素に対して施してもよいし、画面の一部や部分的に複数の箇所に対して行ってもよい。この総和は、2つの画像が似ていると値が小さくなり、2つの画像が異なっていると値が大きくなるため、あらかじめ設定したしきい値との比較によって自動判定が可能となる。計算において、差の絶対値の和ではなく、差の自乗和を計算して差分を強調してもよい。
【0080】
或いは、2つの画像各画素の信号出力を各画像の出力の平均値で除したもの(規格化)に対して、2つの画像の規格化した各画素同士の比の総和を求めて、これをしきい値と比較してもよい。画像が似ていれば、規格化した各画素の比は1に近づき、その総和は画総数に近づく。総和が画素数から大きく離れている場合は、2つの画像は異なるものであると判断し、流路の詰りはないと判断する。必要に応じて、規格化せずに比をとって演算を施すと測定条件や装置の状態(励起光源の強度変化など)も検出できるので適宜使用できる。
【0081】
以上の差や比の演算後、総和に変えて、差や比の各画素間の平均値を使用してもよい。
次に全画素に対して、差の絶対値の総和を計算した例を図11に示す。以下、フローセルが空の状態を空、液体で満たされた状態を満と表すものとし、図10aを空、図10bを満、図10cを空、図10dが満として計算した。上記の手順に従えば、空⇒満の並びが流路詰りのない正常な状態であり、空⇒空状態、満⇒満状態は流路の詰りが発生していて、異常状態である。
【0082】
図11において、計算結果は、差の絶対値総和の場合、規格化した比の総和の場合ともに、正常の場合に大きい値を示している。この撮像条件においては、差の絶対値総和の場合、約4.00E+09、規格化した比の総和の場合には、410000程度にしきい値を設定しておくことによって、流路が詰まっている場合と詰まっていない場合の分離ができている。
【0083】
流路の詰りなど装置の異常を検知したら、SNP解析装置(試料分析装置)内の制御部は、装置のログに異常検知のログを残すようにしてもよい。そして、必要に応じて操作者に異常を検知した旨画面にて通知する。更に必要に応じて操作者に確認ボタンを選択させるなどして操作者の確認を促すようにしてもよい。
【0084】
続いてSNP解析装置101は、自動的にまたは、操作者の確認を得た後、流路を洗浄する。具体的にはフローセル219に液を満たす操作を一回または複数回実施する。この動作によって、外来異物や析出物が洗い流されて正常に復帰する。洗浄後に再度詰まり検知処理を実施して洗浄の効果を確認する。一巡または複数の繰り返しにおいても正常に復帰しなかった場合は、操作者に該当部分を用手法にて洗浄することを促してもよいし、保守を依頼することを促してもよい。また洗浄処理を実施せずに洗浄や保守を促してもよい。
【0085】
<まとめ>
本実施形態による試料分析装置(SNP解析装置101)では、フローセル(試料反応部)に導入するための流路を介して、試料及び水等の所定の液体を、フローセルに送液し、光検出部(CCD等)によってフローセルの画像を取得し、その画像によって流路が詰まっているか否かを判定するので、簡単な構成の追加で詰りの判定を実行でき、装置のコストを廉価に抑えることができる。
【0086】
また、光検出器によってフローセルを空にする動作を実行した後の画像と、フローセルを液体で満たす動作を実行した後の画像とを取得し、これらの画像を比較することによって流路の詰りを判定する。従って、従来に比べて容易にかつ簡単に流路の詰りを検出することができる。なお、フローセルを液体で満たす動作を実行した後の画像(或いは、フローセルを空にする動作を実行した後の画像)を取得し、この画像とフローセルが液体で満たされた状態(或いは、フローセルを空にした状態)を撮像して得られた参照画像とを比較することによって流路の詰りを判定するようにしてもよい。
【0087】
さらに、流路が詰っていると判定した場合、自動的に流路の洗浄処理を実施するので、常に正常な状態で試料の分析を実行することができるようになる。なお、流路が詰っていると判定した場合、使用者に判定結果を通知し、使用者に洗浄を促すようにしても同様の効果が得られる。
【0088】
また、試料分析処理において、試料をDNAに貼り付ける処理の前と分析処理の直後の両タイミングにおいて流路の詰りを判定するので、両タイミングで正しい判定結果が得られれば、当該試料分析処理は信頼できるものであると判断できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】DNAチップを用いるSNP解析装置の分解斜視図である。
【図2】SNP解析装置内部の概略構成を示す図である。
【図3】インターフェイスユニットにおけるCartridge processorの構成を示す図である。
【図4】カートリッジの詳細な構成を示す図である。
【図5】装置内にカートリッジを挿入・固定する機構を説明するための図である。
【図6】ニードルブロックとニードルベースの組立図である。
【図7】ニードルとニードルブロックの詳細な構成を示す図である。
【図8】SNP解析装置における処理動作を説明するためのフローチャートである。
【図9】詰り検知の処理動作を説明するためのフローチャートである。
【図10】実際の画像を用いた詰り検知の例を示す図である。
【図11】実際の画像を用いた詰り検知の計算結果である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料反応部に試料を導入して分析する試料分析装置であって、
前記試料を前記試料反応部に導入するための流路と、
前記試料及び所定の液体を、前記流路を介して前記試料反応部に送液するための送液機構と、
前記試料反応部からの光を検出する光検出部と、
前記光検出部の検出結果に基づいて前記流路が詰まっているか否かを判定する詰り判定部と、
を備えることを特徴とする試料分析装置。
【請求項2】
前記詰り判定部は、前記光検出器の出力画像から前記流路の詰りを判定することを特徴とする請求項1に記載の試料分析装置。
【請求項3】
前記光検出器は、前記試料反応部を空にする動作を実行した後の第1の画像と、前記試料反応部を液体で満たす動作を実行した後の第2の画像とを取得し、
前記詰り判定部は、前記第1の画像及び第2の画像を比較することによって前記流路の詰りを判定することを特徴とする請求項2に記載の試料分析装置。
【請求項4】
前記光検出器は、前記試料反応部を液体で満たす動作を実行した後の画像を取得し、
前記詰り判定部は、前記画像と前記試料反応部が液体で満たされた状態の参照画像とを比較することによって前記流路の詰りを判定することを特徴とする請求項2に記載の試料分析装置。
【請求項5】
さらに、前記詰り判定部が、前記流路が詰っていると判定した場合、自動的に前記流路の洗浄処理を実施する洗浄処理手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の試料分析装置。
【請求項6】
さらに、前記詰り判定部が、前記流路が詰っていると判定した場合、使用者に判定結果を通知し、前記使用者に洗浄を促す手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の試料分析装置。
【請求項7】
セプタムを有するフローセルを含むカートリッジを装着し、試料を前記フローセルに導入して分析する試料分析装置であって、
前記カートリッジを装着するためのカートリッジインターフェイス部と、
前記セプタムに挿入可能なニードルと、
前記ニードルを前記セプタムに対して相対的に移動させ、前記ニードルの挿抜動作を実行するニードル移動機構と、
前記試料を前記フローセルに導入するための流路と、
前記試料及び所定の液体を、前記流路及び前記ニードルを介して前記フローセルに送液するための送液機構と、
前記フローセルからの光を検出する光検出部と、
前記光検出部の検出結果に基づいて前記流路が詰まっているか否かを判定する詰り判定部と、
を備えることを特徴とする試料分析装置。
【請求項8】
前記詰り判定部は、前記光検出器の出力画像から前記流路の詰りを判定することを特徴とする請求項7に記載の試料分析装置。
【請求項9】
前記光検出器は、前記試料反応部を空にする動作を実行した後の第1の画像と、前記試料反応部を液体で満たす動作を実行した後の第2の画像とを取得し、
前記詰り判定部は、前記第1の画像及び第2の画像を比較することによって前記流路の詰りを判定することを特徴とする請求項8に記載の試料分析装置。
【請求項10】
前記光検出器は、前記試料反応部を液体で満たす動作を実行した後の画像を取得し、
前記詰り判定部は、前記画像と前記試料反応部が液体で満たされた状態の参照画像とを比較することによって前記流路の詰りを判定することを特徴とする請求項8に記載の試料分析装置。
【請求項11】
さらに、前記詰り判定部が、前記流路が詰っていると判定した場合、自動的に前記流路の洗浄処理を実施する洗浄処理手段を備えることを特徴とする請求項7に記載の試料分析装置。
【請求項12】
さらに、前記詰り判定部が、前記流路が詰っていると判定した場合、使用者に判定結果を通知し、前記使用者に洗浄を促す手段を備えることを特徴とする請求項7に記載の試料分析装置。
【請求項13】
試料を試料反応部に導入するための流路と、前記試料及び所定の液体を、前記流路を介して前記試料反応部に送液するための送液機構と、を有し、前記試料反応部で前記試料を分析する試料分析装置における前記流路の詰りを判定する流路詰り判定方法であって、
光検出部によって、前記試料反応部からの光を検出する工程と、
判定部によって、前記光検出部の検出結果に基づいて前記流路が詰まっているか否かを判定する工程と、
を備えることを特徴とする流路詰り判定方法。
【請求項14】
前記判定する工程において、前記詰り判定部は、前記光検出器の出力画像から前記流路の詰りを判定することを特徴とする請求項13に記載の流路詰り判定方法。
【請求項15】
前記光を検出する工程において、前記光検出器は、前記試料反応部を空にする動作を実行した後の第1の画像と、前記試料反応部を液体で満たす動作を実行した後の第2の画像とを取得し、
前記判定する工程において、前記詰り判定部は、前記第1の画像及び第2の画像を比較することによって前記流路の詰りを判定することを特徴とする請求項14に記載の流路詰り判定方法。
【請求項16】
前記光を検出する工程において、前記光検出器は、前記試料反応部を液体で満たす動作を実行した後の画像を取得し、
前記判定する工程において、前記詰り判定部は、前記画像と前記試料反応部が液体で満たされた状態の参照画像とを比較することによって前記流路の詰りを判定することを特徴とする請求項14に記載の流路詰り判定方法。
【請求項17】
さらに、前記詰り判定部が、前記流路が詰っていると判定した場合、前記試料分析装置が自動的に前記流路の洗浄処理を実行する工程を備えることを特徴とする請求項13に記載の流路詰り判定方法。
【請求項18】
さらに、前記詰り判定部が、前記流路が詰っていると判定した場合、前記試料分析装置が使用者に判定結果を通知し、前記使用者に洗浄を促す工程を備えることを特徴とする請求項13に記載の流路詰り判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−64518(P2008−64518A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−240926(P2006−240926)
【出願日】平成18年9月6日(2006.9.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.イーサネット
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】