説明

試料分析装置及び試料分析方法

【課題】同一の試料容器内の試料に対して複数回連続して処理を行う場合に、精度よく分析結果を取得し得る試料分析装置を提供する。
【解決手段】試料分析装置1は、試料容器101内の試料を撹拌する撹拌部251と、試料容器101から試料を吸引する吸引部21と、吸引部21によって吸引された試料に所定の処理を施す処理部22,23と、を備える。試料分析装置1は、吸引部21が試料を吸引し、処理部22,23が当該試料に前記処理を施す一連の動作を一の試料容器101に対して自動的に複数回連続して行う特殊測定モードを実行可能であり、撹拌部251は、当該特殊測定モードの実行中、最初の試料吸引動作が行われてから最後の試料吸引動作が行われるまでの間に少なくとも1回、前記一の試料容器101内の試料の撹拌動作を行うよう構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は試料分析装置及び試料分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血液や尿などの検体を分析する検体分析装置が知られている。この種の検体分析装置には、分析精度を維持するために定期的に校正動作を行うことが推奨され、又は義務づけられている。この校正動作においては、既知の分析結果を示すキャリブレーター(標準物質)が複数回連続して分析されるとともに、そのキャリブレーターの分析結果をもとに、血液等の実際の検体の分析結果に対する校正用の補正値が求められる。
【0003】
下記特許文献1には、次のような工程で校正動作を行う検体分析装置が開示されている。まず、キャリブレーターを収容した検体容器を手動又は自動で所定の検体セット部にセットすると、当該検体容器内のキャリブレーターが撹拌され、その後、検体容器が所定の検体吸引位置に搬送される。その後、検体容器からキャリブレーターを吸引する工程及び吸引したキャリブレーターを分析する工程(吸引・分析工程)が複数回連続して行われ、複数回の分析の結果から校正用の補正値が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−107255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記校正動作が実施されている間、検体セット部における検体容器の静置時間が長くなると、キャリブレーターに含まれる分析対象成分が次第に沈降し、精度良く分析結果を得ることができない場合がある。
【0006】
また、同一の検体容器内の検体に対して複数回連続して測定を行う特殊な測定動作としては、上記校正動作の他にも、一つの検体容器に収容された検体を複数回連続して吸引および分析することによって複数の分析結果を得て、それらによって分析結果の再現性(ばらつきの程度)を確認するための再現性確認動作が知られている。この再現性確認動作においても上記と同様の課題が存在する。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、同一の試料容器内の試料に対して複数回連続して処理を行う場合に、精度良く分析結果を得ることができる試料分析装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点に係る試料分析装置は、
試料容器に収容された試料を処理する試料分析装置であって、
試料容器内の試料を撹拌する撹拌部と、
前記試料容器から試料を吸引する吸引部と、
前記吸引部によって吸引された試料に所定の処理を施す処理部と、を備え、
当該試料分析装置は、前記吸引部が試料を吸引し、前記処理部が当該試料に前記処理を施す一連の動作を一の試料容器に対して自動的に複数回連続して行う特殊測定モードを実行可能であり、
前記撹拌部は、前記特殊測定モードの実行中、最初の試料吸引動作が行われてから最後の試料吸引動作が行われるまでの間に少なくとも1回、前記一の試料容器内の試料の撹拌動作を行うよう構成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の試料分析装置によれば、一の試料容器に対して一連の動作(試料吸引および所定の処理)を自動的に複数回連続して行う特殊測定モードの実行中に、撹拌部は、最初の試料吸引動作が行われてから最後の試料吸引動作が行われるまでの間に少なくとも1回、試料の撹拌動作を行う。そのため、特殊測定モードによる処理動作を開始してから終了するまでに長時間を要する場合でも、試料に含まれる成分の分布を均一にした状態で検体を吸引することができ、これによって精度よく分析結果を取得することができる。
なお、「所定の処理」とは、試料の吸引動作の後に実施されるあらゆる処理を含むことができ、例えば、吸引した試料を試薬等と混和させる処理や、試料に含まれる成分を検出する処理等を含むことができる。
【0010】
前記撹拌部は、前記特殊測定モードの実行中、吸引動作を所定回数行う毎に試料の撹拌動作を行うよう構成されていることが好ましい。これにより、試料容器内の成分の分布をより確実に均一にすることができる。
【0011】
また、前記撹拌部は、前記特殊測定モードの実行中、各吸引動作の前に試料の撹拌動作を行うよう構成されているのが好ましい。
各吸引動作の前に試料の撹拌動作を行うことによって、試料に含まれる成分の分布をより確実に均一にすることができる。
【0012】
試料分析装置は、前記試料容器設置部に対して複数の試料容器を順次供給する供給装置を更に備えていてもよい。この場合、当該試料分析装置は、前記撹拌部が試料を撹拌し、前記吸引部が当該試料を吸引し、前記処理部が当該試料に前記処理を施す一連の動作を一の試料容器に対して1回行う通常測定モードを実行可能であり、当該通常測定モードで、前記供給装置によって供給された複数の試料容器に対して前記一連の動作を順次実行可能に構成され、前記特殊測定モードの実行中において最初の試料吸引動作から最後の試料吸引動作までの間に行われる各撹拌動作における試料の撹拌量は、前記通常測定モードで各試料容器から試料を吸引する前に行われる試料の撹拌量よりも少ないことが好ましい。
【0013】
通常測定モードで、供給装置によって供給された複数の試料容器に対して順次、一連の動作(撹拌、試料吸引、及び所定の処理)を行う場合、複数の試料容器の中には、当該動作が行われるまで供給装置上で長時間待機しなければならないものが存在し、その試料容器内の試料は成分が沈降して分布が不均一になる可能性が高くなる。そのため、供給装置にセットされたどの試料容器であっても試料を吸引する際には試料中の成分の分布が均一になるように、試料の撹拌量を比較的多くする必要がある。これに対して、特殊測定モードが実行される場合には、一の試料容器に対して一連の動作(試料吸引及び所定の処理)が連続して行われ、しかも最初の試料吸引動作から最後の試料吸引動作までの間に撹拌動作が行われるので、試料中の成分の分布は比較的均一に保たれる。そのため、特殊測定モードにおいては、最初の試料吸引動作から最後の試料吸引動作までの間に行われる各撹拌動作における試料の撹拌量を少なくすることができ、処理速度を高めることができる。
なお、ここでいう「撹拌量」は、撹拌時間によって定めてもよいし、撹拌回数によって定めてもよいし、実質的な試料の撹拌度合いによって撹拌量を定めてもよい。
【0014】
前記撹拌部は、前記特殊測定モードの実行中において、最初の試料吸引動作の前にも試料の撹拌動作を行うよう構成され、
前記特殊測定モードの実行中において最初の試料吸引動作の前に行われる試料の撹拌量は、他の試料吸引動作の前に行われる試料の撹拌量よりも多いことが好ましい。
【0015】
特殊測定モードを実行するにあたり、試料容器を装置にセットしてから実際に試料の処理を開始するまでの時間がユーザによって異なる場合があり、これによって試料中の成分の分布状態が異なってくる。したがって、本発明では、特殊測定モードの実行中において、一の試料容器から最初に試料を吸引する前には、比較的撹拌量を多くすることによって試料容器内の試料を十分に撹拌し、成分の不均一を確実に解消する。その後は成分の分布が不均一になることも少なくなるため、一の吸引動作の間に行われる撹拌動作では撹拌量を少なくすることができる。
【0016】
また、試料分析装置は、試料が収容された試料容器を設置する試料容器設置部をさらに備え、前記特殊測定モードは、前記試料容器設置部にユーザによって手動で設置された試料容器を対象として実行されるのが好ましい。
試料容器設置部に試料容器が設置される前に、通常、ユーザの手によって試料容器の撹拌が行われる。しかし、ユーザによって事前の撹拌量が異なる場合があり、試料中の成分の分布状態も異なる場合がある。このような場合であっても、最初に試料を吸引する前の撹拌部による撹拌量を多くすることによって試料容器内の成分の不均一を解消することができる。そのため、試料の撹拌動作に関して、ユーザの負担を減らすことができる。
【0017】
前記撹拌部は、試料容器を転倒させることによって試料の撹拌を行うよう構成されていることが好ましい。これによって、簡易な構成で試料を十分に撹拌することができる。
【0018】
また、前記吸引部は、試料を吸引する吸引管を有しており、
試料容器は、蓋体によって閉鎖される開口を有しており、
前記蓋体は、前記吸引管が貫通することによって前記試料容器内の試料の吸引を許容するとともに、貫通した吸引管が抜き取られることによって当該試料容器の密閉状態を維持することが可能な弾性材料により形成されていてもよい。
これにより、試料容器の撹拌によって試料が蓋体から漏れてしまうことが抑制される。
【0019】
前記試料は、粒子成分を含む液体試料であることが好ましい。例えば、試料は、赤血球や白血球等の粒子成分を含む血液や尿とすることができる。このような粒子成分を含む試料であっても、試料中の成分の分布を均一に保つことができ、精度よく処理結果を得ることができる。
【0020】
前記特殊測定モードは、試料容器から吸引された校正用試料に前記処理部が所定の処理を施すことによって、被検者から採取された試料の分析結果に対する補正値を求めるモードであってもよい。
【0021】
また、前記特殊測定モードは、一の試料容器内の試料から得られた複数の分析結果のばらつきを反映した値を求めるモードであってもよい。
【0022】
本発明の第2の観点に係る試料分析方法は、
試料容器内の試料を吸引し、当該試料に所定の処理を施す一連の動作を一の試料容器に対して自動的に複数回連続して行う特殊測定モードを実行可能な試料分析装置における試料分析方法において、
前記特殊測定モードの実行中、最初の試料吸引動作が行われてから最後の試料吸引動作が行われるまでの間に少なくとも1回、前記一の試料容器内の試料の撹拌動作を行う工程を含む。
【発明の効果】
【0023】
本発明の試料分析装置及び試料分析方法によれば、同一の試料容器内の試料に対して複数回連続して所定の処理を行う場合に、試料容器内の試料の成分に不均一が生じることが抑制され、精度よく分析結果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態に係る試料分析装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示される試料分析装置の各部の詳細を示す斜視図である。
【図3】図1に示される試料分析装置の測定ユニット及び検体搬送装置を示す概略説明図である。
【図4】吸引部の動作を説明する概略図である。
【図5】ハンド部による検体容器の把持動作を説明する概略図である。
【図6】ハンド部による検体容器の把持動作を説明する概略図である。
【図7】ハンド部による検体容器の撹拌動作を説明する概略図である。
【図8】サンプラ測定モードの処理手順を示すフローチャートである。
【図9】特殊測定モードの選択画面を示す図である。
【図10】キャリブレーター校正によって取得された分析結果の表示画面を示す図である。
【図11】校正データ確認画面を示す図である。
【図12】キャリブレーター校正実行画面を示す図である。
【図13】キャリブレーター校正の処理手順を示すフローチャートである。
【図14】試料分析装置の測定動作の全体の流れを示すフローチャートである。
【図15】マニュアル測定モードの処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の試料分析装置及び試料分析方法の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る試料分析装置の全体構成を示す斜視図、図2は、図1に示される試料分析装置の各部の詳細を示す斜視図である。
本実施の形態に係る試料分析装置1は、被験者から採取した血液を試料(検体)とする血液試料分析装置であり、特に、試料中の血球を計数する血球計数装置とされている。図1及び図2に示されるように、試料分析装置1は、第1測定ユニット2及び第2測定ユニット3の2つの測定ユニットと、第1測定ユニット2及び第2測定ユニット3の前面側(矢印Y1方向側)に配置された検体搬送装置(サンプラ;供給装置)4と、第1測定ユニット2、第2測定ユニット3及び検体搬送装置4に電気的に接続されたPC(パーソナルコンピュータ)からなる制御装置5とを備えている。また、試料分析装置1は、制御装置5によりホストコンピュータ6(図3参照)に接続されている。
【0026】
図3は、図1に示される試料分析装置の測定ユニット及び検体搬送装置を示す概略説明図である。図1〜3に示されるように、第1測定ユニット2及び第2測定ユニット3は、実質的に同種類の測定ユニットであり、互いに隣接して配置されている。具体的には、本実施の形態では、第2測定ユニット3は、第1測定ユニット2と同じ測定原理を使用して、同一の測定項目について検体を測定する。さらに、第2測定ユニット3は、第1測定ユニット2が分析しない測定項目についても測定する。
【0027】
また、図3に示されるように、第1測定ユニット2及び第2測定ユニット3は、それぞれ、検体である血液を検体容器(試料容器)101から吸引する吸引部21,31と、吸引部21,31により吸引した血液から検出用試料を調製する試料調製部22,32と、当該試料調製部22,32により調製された検出用試料から血液の血球成分を検出(測定)する検出部(測定部)23,33と、吸引部21,31、試料調製部22,32、及び検出部23,33などを制御する制御部2a,3aとを含んでいる。
【0028】
また、第1測定ユニット2及び第2測定ユニット3は、それぞれ、試料調製部22,32などを内部に収容するユニットカバー24,34と、検体容器101を前後方向(矢印Y1およびY2方向)に搬送することによって、検体容器101をユニットカバー24,34の内部に取り込み、吸引部21,31による検体の吸引位置600,700(図3参照)まで検体容器101を搬送する検体容器搬送部25,35と、検体容器搬送部25,35により内部に搬送される検体容器101の有無を検知する有無検知部26,36と、吸引位置600,700で検体容器101を固定保持するチャック部27,37とをさらに含んでいる。
【0029】
また、図1及び図2に示されるように、ユニットカバー24,34の前面部241,341の外側表面には、それぞれ、検体セット部開閉ボタン(マニュアルモード切替ボタン)28,38と、優先検体測定開始ボタン29,39と、サンプラモード切替ボタン40,50と、検体容器搬送部25,35の後述する移動部255d、355d(図2参照)が通過する開口部241a,341aとが設けられている。
【0030】
図4は、吸引部の動作を説明する概略的な説明図である。吸引部21(31)は、吸引管であるピアサ211(311)を備えている。ピアサ211(311)は、鉛直方向(矢印Z1およびZ2方向)に移動可能に設けられており、下方へ移動したときにその先端が検体容器101の密閉蓋(蓋体)102を貫通し、検体容器101内の検体を吸引するように構成されている。
【0031】
ピアサ211(311)は、ステッピングモータやエアシリンダなどのアクチュエータ、スライドガイド機構等を有する駆動部によって鉛直方向への移動が駆動される。また、吸引位置600(700)において、ピアサ211(311)によって検体が吸引されるとき、検体容器101はチャック部27(37)を構成する一対の保持部材27a(37a)によって挟まれ、固定される。
【0032】
検体容器101は、上下方向に細長い有底管形状であり、密閉蓋102によって閉鎖される開口を上端に有している。密閉蓋102は、シリコーンゴム等の弾性を有する合成樹脂(弾性材料)で作製されており、下方に移動するピアサ211(311)を貫通させることが可能である。また、密閉蓋102は、ピアサ211(311)が上方へ移動することによって抜き取られると、当該ピアサ211(311)の貫通によって形成された孔が密閉蓋102の弾性変形で塞がれ、再び検体容器101の密閉状態を維持するように構成されている。
【0033】
図3に示されるように、試料調製部22,32は、吸引部21,31によって吸引された検体と試薬とを混合撹拌し、検出部23,33による成分検出用の試料(測定試料)を調製する。
また、検出部23,33は、RBC検出(赤血球の検出)及びPLT検出(血小板の検出)をシースフローDC検出法により行うとともに、HGB検出(血液中の血色素の検出)をSLS−ヘモグロビン法により行うように構成されている。また、検出部23,33は、WBC検出(白血球の検出)やRET検出(網状赤血球の検出)を半導体レーザを使用したフローサイトメトリー法により行うようにも構成されている。
【0034】
検出部23,33で得られた検体の成分の検出結果(検出データ)は、制御部2a,3aに送信される。制御部2a,3aは、CPU、ROM、RAM、通信インタフェース等から構成され、ROMに記憶されているコンピュータプログラム等をRAMに読み出してCPUにより実行することで第1,第2測定ユニット2,3内の各部の動作を制御する。また、制御部2a,3aの通信インタフェースは、制御装置5に接続されており、検出部23,33によって取得された検出データを制御装置5に送信するとともに、制御装置5からの信号を受信するための機能を有している。制御装置5に送信される検出データは、ユーザに提供される最終的な分析結果(赤血球数、血小板数、ヘモグロビン量、白血球数等)を求めるために使用される。
【0035】
図3に示されるように、検体容器搬送部25,35は、検体容器101を前後方向(矢印Y1及びY2方向)に実質的に水平移動させる検体容器移送部255,355と、バーコード読取部256,356とを有している。また、検体容器搬送部25,35は、検体容器101を把持することが可能なハンド部251,351を有している。
【0036】
検体容器移送部255,355は、図4にも示されるように、検体セット部(検体容器設置部)255a(355a)と、検体セット部255a(355a)が取り付けられる移動部255d(355d)とを備えている。移動部255d,355dは、前後方向に回送駆動されるベルト搬送機構等によって前後方向(矢印Y1およびY2方向)の移動が可能なように構成され、この移動部255d,355dが移動することによって検体セット部255a,355aも一体的に前後方向に移動する。
また、検体容器移送部255,355は、検体セット部255a,355aを、図3に示される吸引位置600,700と、検体セット位置610,710と、優先検体セット位置620,720とに配置させることが可能である。
【0037】
検体セット部255a,355bは、検体容器101を挿入可能でありかつ挿入された検体容器101を保持可能な保持孔を有している。また、本実施の形態では、検体セット部255a,355aに前側に隣接して他の検体セット部255b,355bが設けられており、他の検体セット部255b,355bは、検体容器101とは異なる種類の検体容器、例えば、小型で少量の検体を収容可能なマイクロチューブ等を保持することができる。
【0038】
バーコード読取部256(356)は、検体容器移送部255(355)によって移送される検体容器101に貼付されたバーコードを読み取り、当該検体容器101に収容された検体についての情報を取得する。
【0039】
図5及び図6は、ハンド部251(351)による検体容器101の把持動作を説明する概略図、図7は、ハンド部251(351)による検体容器101の撹拌動作を説明する概略図である。
ハンド部251(351)は、一対の把持部材251a(351a)を互いに接近・離反させることによって開閉し、検体容器101の把持と解放とを行うことが可能なように構成されている。また、ハンド部251(351)は、鉛直方向(矢印Z1およびZ2方向)に移動可能に構成されており、把持した検体容器101を鉛直方向(上下方向)に移動させることができる。また、ハンド部251(351)は、軸心xを中心として直立状態と転倒状態との間で振り子状に移動(回動)可能に構成されており、これによって把持した検体容器101内の検体を撹拌することができる。ハンド部251(351)は、ステッピングモータやエアシリンダ等のアクチュエータ、スライドガイド機構等からなる駆動部によって開閉、鉛直方向移動、回動等の動作が駆動される。ハンド部251(351)やこれを駆動する駆動部等は、検体容器101内の検体を撹拌する撹拌部を構成し、この撹拌部は制御部2a,3a(図3参照)によって動作制御される。
【0040】
図3に示されるように、ハンド部251,351は、検体搬送装置4によって左右方向(矢印X1およびX2方向)に搬送されるラック110の搬送路の上方で、かつ検体セット位置610,710の上方に配置されている。また、図5(a)、(b)に示されるように、ハンド部251(351)は、検体搬送装置4により第1取出位置(検体容器取出位置)43a及び第2取出位置(検体容器取出位置)43b(図3も参照)に検体容器101が搬送されると、下方に移動(矢印a参照)するとともに、一対の把持部材251a(351a)を接近させて閉じ(矢印b参照)、ラック110に収容された検体容器101を把持するように構成されている。
【0041】
また、図6(a)に示されるように、ハンド部251(351)は、把持した検体容器101を上方に移動させることによりラック110から取り出し(矢印c参照)、その後、軸心x回りに振り子状に回動されるように構成されている(矢印d参照)。このハンド部251(351)の回動により、把持した検体容器101内の検体が攪拌される。
【0042】
検体容器101がラック110から取り出されると、検体容器移送部255(355)によって検体セット部255a(355a)が前方へ移動し、検体セット位置610(710)に位置づけられる(矢印e参照)。そして、攪拌終了後、図6(b)に示されるように、ハンド部251(351)は下方に移動し(矢印f参照)、検体容器101の把持を解放(矢印g参照)することによって検体セット部255a(355a)に検体容器101をセットするように構成されている。なお、図3に示されるように、平面的に見て、第1取出位置43aと検体セット位置610とは、重なるように配置されているとともに、第2取出位置43bと検体セット位置710とは、重なるように配置されている。
【0043】
図2に示されるように、検体容器移送部255,355の移動部255d,355dは、ユニットカバー24,34に形成された開口241a,341aを介して検体セット部255a,355aを前方へ突き出し、図3に示される優先検体セット位置620,720に検体セット部255a,355aを配置させることができる。具体的には、オペレータによってユニットカバー24,34に設けられた検体セット部開閉ボタン(マニュアルモード切替ボタン)28,38が押下されると、検体セット部255a,355aが優先検体セット位置620,720まで前方へ移動する。これにより、優先的に分析を行いたい検体を手動で検体セット部255a,355aに供給することができる。そして、優先検体セット位置620,720の検体セット部255a,355aに検体容器101がセットされた状態で、オペレータにより優先検体測定開始ボタン29,39が押下されると、検体セット部255a,355aが第1,第2測定ユニット2,3の内部に取り込まれ、前述したような検体の撹拌動作や吸引動作等が自動的に行われる。
なお、本実施の形態では、後述するように、キャリブレーターを用いた校正動作(キャリブレーター校正)や再現性確認動作(プレシジョンチェック)を行う場合にも、優先検体セット位置620,720に配置された検体セット部255a,355aに対してオペレータが検体容器101を供給するようになっている。
【0044】
図3に示されるように、検体搬送装置4は、分析前ラック保持部41、分析後ラック保持部42、及びラック搬送部43を有している。分析前ラック保持部41は、ラック送込部411を有し、ラック送込部411が矢印Y2方向に移動することによって、分析前ラック保持部41に保持されたラック110を1つずつラック搬送部43上に押し出すように構成されている。ラック送込部411は、分析前ラック保持部41の下方に設けられた図示しないステッピングモータによって駆動するように構成されている。
【0045】
ラック搬送部43は、第1測定ユニット2に検体を供給するための第1取出位置43a、及び、第2測定ユニット3に検体を供給するための第2取出位置43bに、ラック110に保持された検体容器101を自動的に移送するためにラック110を左右方向(矢印X1およびX2方向)搬送するように構成されている。さらに、ラック搬送部43は、有無検知センサ45が検体を収容する検体容器101の有無を確認するための検体有無確認位置43c、及び、バーコード読取部44が検体を収容する検体容器101のバーコードを読み取るための読取位置43dまで検体容器101が移送されるようにラック110を搬送するように構成されている。ラック搬送部43は、例えば、ラック110の搬送方向に回送駆動されるベルト搬送機構等によって構成されている。
【0046】
ラック搬送部43には、ラック送出部46が設けられている。ラック送出部46は、ラック搬送部43を挟んで分析後ラック保持部42に対向するように配置されており、矢印Y1方向に水平に移動するように構成されている。これにより、分析後ラック保持部42とラック送出部46との間にラック110が搬送された場合に、ラック送出部46を分析後ラック保持部42側に移動することによって、ラック110を押圧して分析後ラック保持部42内に移動することが可能である。
【0047】
制御装置5は、図1〜3に示されるように、パーソナルコンピュータ(PC)等からなり、制御部51(図3参照)と、表示部52と、入力デバイス53とを含んでいる。制御部51は、CPU、ROM,RAM及びハードディスク等からなる記憶部、CD−ROMドライブ等の読出装置、及び各種入出力インタフェース等を備えている。また、制御部51は、第1,第2測定ユニット2,3の制御部2a,3aに通信可能に接続されており、当該測定ユニット2,3の動作開始信号を送信するとともに、測定ユニット2,3で得られた検体の成分の検出データを受信して分析する機能を有している。また、制御部51の記憶部には、検出データを分析するためのプログラムや、各種データ等が記憶されている。また、制御部51の記憶部には、後述するようにキャリブレーター(標準物質)を用いた測定(キャリブレーション)によって、血液検体の分析結果に対する校正データ(補正率)を求めるためのプログラム等もインストールされている。表示部52は、制御部51で得られた分析結果等を表示するために設けられている。入力デバイス53は、キーボードやマウス等からなり、例えば、各種データの入力や、後述する通常の検体に対する分析動作、及びキャリブレーターに対する分析動作等の実行指示を入力するために用いられる。
【0048】
[試料分析方法]
本実施の形態の試料分析装置1は、ラック110に収容された複数の検体容器101に対して順次分析を実行するサンプラ測定モードと、オペレータによって手動で検体セット部255aにセットされた検体容器101に対して分析を実行するマニュアル測定モードとの2つの処理モードを備えている。サンプラ測定モードは、1つの検体容器101に対して1回の分析を行う「通常測定モード」に位置づけられる。マニュアル測定モードには、通常のマニュアル測定と、1つの検体容器101内のキャリブレーター(標準物質)に対して連続して分析を行うキャリブレーター校正と、再現性確認のために1つの検体容器101内の検体に対して連続して分析を行うプレシジョンチェック(再現性確認動作)とが設けられている。通常のマニュアル測定は、1つの検体容器101に対して1回の分析を実行する「通常測定モード」に位置づけられ、キャリブレーター校正およびプレシジョンチェックは1つの検体容器に対して連続して分析を行う「特殊測定モード」に位置づけられる。以下、試料分析装置1の測定動作の流れについて詳細に説明する。
なお、第1測定ユニット2及び第2測定ユニット3は、互いに同様の動作で検体の攪拌、吸引を含む分析が行われるので、以下では第1測定ユニット2による試料分析方法について説明し、第2測定ユニット3による試料分析方法については説明を省略する。
【0049】
図14は、試料分析装置1の測定動作の全体の流れを示すフローチャートである。装置の電源がONにされて所定の初期動作が行われた後、第1測定ユニット2の制御部2aは、現在の第1測定ユニット2がサンプラ測定モードに設定されているか否かを判断する(ステップS31)。なお、装置の電源がONにされた後の初期状態では、第1測定ユニット2はサンプラ測定モードに設定されており、オペレータがマニュアルモード切替ボタン28を押すことによって、第1測定ユニット2をマニュアル測定モードに設定することができ、オペレータがサンプラモード切替ボタン40を押すことによって、第1測定ユニット2をサンプラ測定モードに設定することができる。現在の第1測定ユニット2がサンプラ測定モードに設定されている場合には、制御部2aはサンプラ測定モードでの処理を実行し(ステップS32)、サンプラ測定モードに設定されていない場合には、ステップS33に移行する。
【0050】
制御部2aは、ステップS33において、現在の第1測定ユニット2がマニュアル測定モードであるか否かを判断する。現在の第1測定ユニット2がマニュアル測定モードに設定されている場合には、マニュアル測定モードでの処理を実行し(ステップS34)、マニュアル測定モードが設定されていない場合には、ステップS35に移行する。
【0051】
制御部2aは、ステップS35において、試料分析装置1の動作の終了指示があるか否かを判断し、終了指示がある場合には、処理を終了し、終了指示がない場合には、ステップS31に処理を戻す。
【0052】
(サンプラ測定モード)
図8を参照してサンプラ測定モード(通常測定モード)の処理手順について説明する。
まず、制御部2aは、分析開始指示があったか否かを判断する(ステップS1)。分析開始指示は、オペレータが、分析対象となる検体(血液)が収容された蓋付の検体容器101を保持したラック110を検体搬送装置4上にセットすることで行うこともできるし、オペレータが、入力デバイス53を介して、制御装置5に対して分析動作の実行指示を入力することによっても行うことができる。
【0053】
制御部2aは、分析開始指示があったと判断すると(図8のステップS1)、検体搬送装置4によるラック110の搬送を制御し、前記検体容器101を、第1取出位置(検体容器取出位置)43aに位置づける(図8のステップS2)。
【0054】
ついで、制御部2aは、ラック110から検体容器101を取り出すための処理を行う(図8のステップS3)。具体的には、図5(a),(b)及び図6(a)に示されるように、制御部2aは、ハンド部251を開いた状態で上方から下降させ、検体容器101を保持し得る高さで停止させる。そして、制御部2aは、ハンド部251を閉じることによって検体容器101を把持させ、ハンド部251を上昇させる。これにより、検体容器101がラック110から取り出される。この状態では、検体容器101は、その長手方向の軸がほぼ鉛直方向に沿った直立状態にある。
【0055】
ついで、制御部2aは、検体容器101内の検体を攪拌するための処理を行う(図8のステップS4)。具体的には、図7に示されるように、制御部2aは、検体容器101を保持したハンド部251を軸心x回りに正逆回転させる。これにより、検体容器101は直立状態と転倒状態との間で回動し、検体容器101の内部の検体が撹拌される。なお、転倒状態において、検体容器101の長手方向の軸Lと鉛直線Vとのなす角度θは、例えば約127度とされる。
【0056】
本実施の形態では、検体容器101の転倒撹拌動作が10回(10サイクル)繰り返し行われる。これは次の理由による。検体搬送装置4の分析前ラック保持部41には複数のラック110をセットすることができ、ラック搬送部43に近いラック110に保持された検体容器101から順次検体の吸引動作が行われる。そのため、ラック搬送部43から遠いラック110に保持された検体容器101は、分析動作の開始後、検体が吸引されるまでに長時間を要し、その間、検体搬送装置4上で静置されることになる。このように検体容器101が長時間静置されると検体に含まれる赤血球や白血球等の成分が次第に沈降し、当該成分の分布が不均一となり、分析結果に悪影響を及ぼすおそれがある。そのため、本実施の形態では、検体容器101から検体が吸引されるまでに長時間を要する場合であっても、検体を吸引するときには成分を均一にすることが可能な程度、例えば10回程度に転倒撹拌動作の回数が設定されている。なお、この転倒撹拌動作の回数は10回に限られるものではなく、適正な分析結果が得られるように適宜設定されるものである。
【0057】
攪拌終了後、制御部2aは、図6(b)に示されるように、ハンド部251を下降させて開くことにより、検体セット位置620(720)に配置された検体セット部255a(355a)に検体容器101をセットさせる(図8のステップS5)。
【0058】
ついで、制御部2aは、ハンド部251を上昇させ、検体容器移送部255の駆動によって検体セット部255aを後方(矢印Y2方向)へ引き込み、吸引位置600(図3参照)で停止させる。
ついで、制御部2aは、検体容器101から検体を吸引するための処理を行う(図8のステップS6)。具体的には、制御部2aは、検体容器101が検体セット部255a内で移動しないようにチャック部27によって検体容器101を保持させ、上方からピアサ211を下降させて検体容器101の密閉蓋102に貫通させる。そして、制御部2aは、ピアサ211を検体容器101内の所定位置で停止させ、検体容器101内の血液試料を吸引させる。
【0059】
ついで、制御部2aは、ピアサ211を上昇させて密閉蓋102から抜き取った後、吸引された検体を試料調製部22の反応容器内で試薬類と混合させ、成分検出用の試料を調製する。調製された検出用試料は、その後、検出部23に移送され、当該検出部23において検出用試料中の成分の検出が行われる。検出データは、制御装置5の制御部51に送信され当該制御部51において検出データの分析が行われる。そして、取得された分析結果は、表示部52に表示される。
【0060】
制御部2aは、ピアサ211を上昇させた後に、検体容器101を元のラック110に戻すための処理を行う(図8のステップS7)。具体的に、制御部2aは、検体容器移送部255の駆動によって検体セット部255aを再び前方(矢印Y1方向)に移動させ、検体セット位置610にて検体セット部255aを停止させる。そして、制御部2aは、ハンド部251を上方から下降させて閉じ、検体セット部255a内の検体容器101を把持させ、再びハンド部251を上昇させて所定位置で停止する。
【0061】
制御部2aは、検体容器101を把持したハンド251が上昇している間に、検体容器移送部255の駆動によって検体セット部255aを後方(矢印Y2方向)に引き込み、その後、ハンド部251を下降させて検体容器取出位置43aにあるラック110に検体容器101を挿入し、ハンド部251を開くことによって、検体容器101をラック110にセットさせる。
【0062】
その後、制御部2aは、次に分析される検体を収容した検体容器101があるか否かを判断し(図8のステップS8)、次の検体容器101がある場合には、ステップS2に処理を戻してラック110を移動させ、つぎに分析される検体を収容した検体容器101を検体容器取出位置43aに配置させる。以下、全ての検体の分析動作が終了するまで、ステップS2〜ステップ8の処理を繰り返し行い、ステップS8において、次に分析される検体を収容した検体容器101がないと判断した場合には、制御部2aは処理をリターンする。
【0063】
(マニュアル測定モード)
次に、図15を参照して、マニュアル測定モードの処理手順について説明する。なお、マニュアルモード切替ボタン28を押すことによってマニュアル測定モードに設定することができるが、マニュアルモード切替ボタン28が押されると、検体セット部255aは自動的に優先検体セット位置620(図3参照)まで移動される。
【0064】
まず、制御部2aは、特殊測定モードの1つであるキャリブレーター校正の指示があったか否かを判断する(ステップS41)。特殊測定モードによりキャリブレーター校正またはプレシジョンチェックを行う場合、オペレータは入力デバイス53を介して、制御装置5の表示部52に、図9に示されるような選択画面810を表示させる。この選択画面810には、プレシジョンチェックの選択ボタン811とキャリブレーター校正の選択ボタン812とが設けられている。そして、オペレータが入力デバイス53を介していずれかの選択ボタン811,812を押下すると、制御装置5の制御部51はいずれかの動作の実行指示を受け付け、第1測定ユニット2の制御部2aに実行指示がなされた旨の信号を送信する。これにより、制御部2aは、キャリブレーター校正の指示があったか、プレシジョンチェックの指示があったかを判断することができる。
【0065】
キャリブレーター校正の指示があった場合(ステップS41でYes)、制御部2aはキャリブレーター校正の処理を実行する(ステップS42)。キャリブレーター校正の処理については後述する。キャリブレーター校正の指示がなかった場合には(ステップS41でNo)、制御部2aは、プレシジョンチェックの指示があったか否かを判断する(ステップS43)。プレシジョンチェックの指示があった場合には、制御部2aはプレシジョンチェックを実行し(ステップS44)、プレシジョンチェックの指示がなかった場合には、通常のマニュアル測定を実行し(ステップS45)、処理をリターンする。なお、プレシジョンチェックおよび通常のマニュアル測定についても後述する。
【0066】
以下、ステップS42におけるキャリブレーター校正(特殊測定モード)の処理について説明する。
【0067】
図13は、キャリブレーター校正の処理手順を示すフローチャートである。この手順には、第1測定ユニット2の制御部2aによる処理と、制御装置5の制御部51による処理とが含まれる。
図13のステップS11において、第1測定ユニット2の制御部2aは、測定開始指示を受け付けたか否かを判断する。優先検体セット位置620に配置された検体セット部255aにキャリブレーターを収容した検体容器101がセットされた状態で、オペレータが優先検体測定開始ボタン29を押下すると、制御部2aは、測定開始指示を受け付けたと判断し、ステップS12において、分析回数を示す変数Nを1にセットする。
【0068】
ついで、制御部2aは、検体セット部255aを後方(矢印Y2方向)に移動させて検体セット位置610に配置し、ハンド部251により検体容器101の転倒撹拌動作を行う(ステップS13)。本実施の形態では、検体容器101の転倒撹拌動作の回数が1回(1サイクル)とされている。
【0069】
ついで、ステップS14において、制御部2aは、検体容器移送部255の駆動により検体セット部255aを吸引位置600に移動させ、吸引部21によって検体容器101内のキャリブレーターを吸引させる。
ついで、ステップS15において、制御部2aは、試料調製部22によってキャリブレーターを用いた検出用試料を調製させ、検出部23によって検出用試料内の成分の検出動作を行わせる。この検出動作によって得られた検出データは、制御装置5の制御部51に送信され、当該制御部51は、当該検出データの分析を行う(ステップS16)。
【0070】
ついで、ステップS17において、制御部2aは、分析回数を示す変数Nが「11」であるか否かを判断する。制御部2aは、N=11でないと判断すると、Nを1インクリメントした後、ステップS13に処理を戻し、N=11となるまでステップS13〜S16の処理を繰り返し実行する。すなわち、制御部2aは、キャリブレーターの撹拌〜検出データの分析までの一連の分析処理を繰り返し(合計11回)実行する。
そのため、検出容器101内のキャリブレーターは、吸引される前には必ず撹拌されることになる。すなわち、最初に吸引部21によって吸引される前は勿論のこと、その後の各吸引動作の前(複数回の吸引動作の間)にも必ず撹拌されることになる。そのため、検体容器101内のキャリブレーターに含まれる成分が沈降して不均一になった状態で当該キャリブレーターが吸引されることはなく、その後の検出工程においても適切な検出データを取得することができる。
【0071】
また、各吸引動作の前に行われる転倒撹拌動作の回数は1回とされており、前述のサンプラ測定モードにおける転倒撹拌動作の回数(10回)よりも少なくされている。サンプラ測定モードの場合、前述したように検体搬送装置4にセットされたラック110の位置によって検体が吸引されるまでに検体容器101が長時間静置されることがあり、成分の沈降を防ぐためには検体を吸引する前に比較的多くの撹拌を行う必要がある。これに対して、特殊測定モードで動作するキャリブレーター校正においては、1つのキャリブレーターに対して複数回の吸引動作が連続して行われるため、各吸引動作の前に行われる転倒撹拌動作の回数が少なくても十分に成分の均一化を図ることが可能となる。
【0072】
図13のステップS17において、制御部2aは、N=11であると判断すると、ステップS19に処理を進め、検体容器移送部255により検体セット部255aを優先検体セット位置620に移動させる。これにより、オペレータは検体セット部255aから検体容器101を取り出すことが可能となる。
ついで、ステップS20おいて、制御装置5の制御部51は、全ての検出データの分析結果から所定の演算処理を行うことによって、被検者から採取された検体の分析結果に対する校正データ(補正率)を求め、その処理結果等を表示部52に表示させる(ステップS21)。
【0073】
図10〜図12に、表示部52に表示させる処理結果の例を示す。図10は、キャリブレーター校正において取得された分析結果の表示画面を示す図である。この分析結果表示画面820は、分析結果表示領域821と、この分析結果の統計的な処理結果を表示する統計データ表示領域822と、校正ボタン823と、キャンセルボタン824とを有している。分析結果表示領域821には、合計11回(No.1〜No.11)の分析結果が項目毎に表示されている。図示例では、白血球、赤血球、ヘモグロビン、ヘマトクリット、血小板、網状赤血球についての各項目(WBC−N、WBC−D、RBC,HGB、HCT、PLT、RET%、RBC−C)の分析結果がそれぞれ数値で表示されている。統計データ表示領域822には、各項目についての平均値、標準偏差(SD)、変動係数(CV)、限界値(Limit)等が表示されている。オペレータは、各表示領域821,822の表示内容を確認したうえで、校正ボタン823及びキャンセルボタン824のいずれかを選択して押下することができる。
【0074】
なお、この分析結果表示画面820は、図9に示される選択画面810でキャリブレーター校正の選択ボタン811が選択された時から表示部52に表示させてもよい。この場合、当該画面820を表示させた段階では、分析動作はまだ開始されていないため、分析結果表示領域821や統計データ表示領域822は空欄とされる。そして、分析動作が進行し、分析結果が得られるに従って、分析結果表示領域821や統計データ表示領域822には分析結果の数値が自動的に入力される。
【0075】
また、分析結果表示領域821において、1回目(No.1)の分析結果には取消線821aが表示されている。これは、1回目の検出動作においては安定した検出データを取得し難く、その分析結果の信頼性も低くなると考えられるため、校正データを求めるための数値として採用されないからである。オペレータは、分析結果表示領域821に取消線821aが表示されていることで、校正データを求めるために1回目の分析結果が使用されないことを認識することができる。
【0076】
オペレータが校正ボタン823を押下すると、制御装置5の表示部52には、図11に示されるような校正データ確認画面830が表示される。また、オペレータがキャンセルボタン824を押下すると、分析結果表示画面820が閉じられる。
校正データ確認画面830は、ターゲット表示領域831、処理データ表示領域832、校正データ表示領域833、読み込みボタン834、OKボタン835、キャンセルボタン836を有している。ターゲット表示領域831は、キャリブレーターに含まれる成分の基準濃度(ターゲット値)を項目毎に表示するものである。このターゲット値は、キャリブレーターの製造者等から提供された数値を、直接ターゲット表示領域831の欄に入力することができ、また、当該数値が記録されたCD−ROM等の記憶媒体を制御装置5の読出装置に読み取らせ、読み込みボタン834を押下することによって、自動でターゲット表示領域831に入力することができる。
【0077】
処理データ表示領域832には、複数回の検出データの分布範囲や最大範囲、平均値、誤差率、許容誤差率、許容最大誤差率等が表示される。また、校正データ表示領域833には、校正データとして求められた補正率が表示されている。本実施の形態では、現在の補正率と新しい補正率とが上下に並べて表示されている。
【0078】
この校正データ確認画面830において、オペレータが各数値の内容を確認し、OKボタン835を押下すると、図12に示されるようなキャリブレーター校正実行画面840が表示部52に表示される。また、オペレータがキャンセルボタン836を押下すると、校正データ確認画面830が閉じられる。
【0079】
キャリブレーター校正実行画面840には、分析項目の選択表示領域841と、現在の補正率の表示領域842と、新しい補正率の表示領域843と、修正有無の選択表示領域844と、OKボタン845と、キャンセルボタン846とが表示されている。分析項目の選択表示領域841にはチェックボックス841aが設けられ、修正有無の選択表示領域844にもチェックボックス844aが設けられている。
【0080】
現在の補正率に変えて新しい補正率を適用する場合、オペレータは、所望の分析項目のチェックボックス841aにチェックを入れ、OKボタン845を押下すれば、新しい補正率に更新される。また、新しい補正率を修正したい場合には、その補正率に対応するチェックボックス844aにチェックを入れると、新しい補正率の表示領域843に修正した補正率を入力することができる。オペレータがキャンセルボタン846を押下すると、新しい補正率に更新されることなくキャリブレーター校正実行画面840が閉じられる。
【0081】
次に、図15のステップS44におけるプレシジョンチェック(特殊測定モード)について説明する。このプレシジョンチェックは、上述のキャリブレーターに代えて被検者から採取した血液検体を使用するほかは、概ね図13に示されるキャリブレーター校正と同様の処理が行われる。具体的には、図13に示すステップS11〜S19の処理についてはキャリブレーター校正と同一の処理を行い、ステップS20においては、キャリブレーター校正とは異なり、分析結果に対する補正率の算出は行わず、合計11回の分析結果を、各分析項目(WBC−N、WBC−D、RBC,HGB、HCT、PLT、RET%、RBC−C)毎に算出する。そして、ステップS21においては、図10に示すように、各分析項目の分析結果をそれぞれ数値で表示するとともに、各分析項目についての平均値、標準偏差(SD)、変動係数(CV)、限界値(Limit)等の統計データを表示する。これにより、オペレータは、各項目における分析結果のばらつきが所定範囲内に収まっているか否かを確認し、装置が正常な状態にあるか否かを判断することができる。
【0082】
次に、図15のステップS45における通常のマニュアル測定(通常測定モード)について説明する。このマニュアル測定においては、被検者から採取された血液に対して1回の分析が実行される。具体的には、図13に示すステップS11、ステップS13〜16、ステップS19の処理を実行することにより、オペレータによって検体セット部255aにセットされた検体容器101の転倒攪拌動作、検体吸引動作、検出用試料の調製動作、検出用試料中の成分の検出動作および検出データの分析動作の一連の動作を一回行う。その後、その1回分の分析結果を算出して表示部52に表示する。
【0083】
前述した実施の形態において、キャリブレーター校正またはプレシジョンチェックを行う場合に、最初の吸引動作の前に行われる転倒撹拌動作の回数(撹拌量)は、各吸引動作間に行われる転倒撹拌動作の回数(撹拌量)よりも多くしてもよい。このように転倒撹拌動作の回数を設定することによって次のような作用効果を奏する。
キャリブレーターを収容した検体容器101は、検体セット部255aにセットする前に人手によって十分に撹拌しておくことが推奨されているが、その撹拌の程度は人によって異なる可能性があり、十分に撹拌されていないこともありうる。そのため、最初の吸引動作の前に行われる転倒撹拌動作の回数を多くする(例えば、10回とする)ことによって、人手による撹拌の程度の不均衡を解消し、十分に撹拌を行った状態で検体を吸引することが可能となる。また、各吸引動作間に行われる転倒撹拌動作は、一度、十分な撹拌が行われた後に実施されるため、回数が少なくても(1回程度であっても)十分に成分を均一にすることができる。
【0084】
前述した実施の形態では、キャリブレーター校正またはプレシジョンチェックを行う場合に、複数回の吸引動作の各吸引動作の前に転倒撹拌動作を行っているが、例えば、数回(2,3回)の吸引動作毎に転倒撹拌動作を行ってもよい。この転倒撹拌動作を行う頻度は、適宜設定することが可能である。また、各吸引動作の前に行われる転倒撹拌動作の回数(サイクル数)も、適宜変更することができる。なお、これらの転倒撹拌動作の頻度及び回数の設定は、ユーザではなくサービスマンのみが変更可能なように構成されているのが好ましい。ユーザが自身の好みで頻度又は回数を変更できたとすると、使用するユーザ毎に撹拌の程度が変わってしまう可能性があり、分析結果にばらつきが生じやすくなるからである。
【0085】
前述した実施の形態では、キャリブレーター校正やプレシジョンチェック等の特殊測定モードを実行する場合、優先検体セット位置620に配置された検体セット部255aに対して検体容器101を手動で供給していたが、検体セット位置610に配置された検体セット部255aに検体搬送装置4によって検体容器101を自動で供給し、その検体容器101内の検体に対してキャリブレーター校正やプレシジョンチェック等を実行してもよい。
【0086】
また、前述した実施の形態では、ラック110から検体セット部255aに検体容器101を移した後、検体セット部255aから取り出された検体容器101内の検体に対して分析を実行しているが、ラック110から検体セット部255aに検体容器101を移すことなく、ラック110から取り出した検体容器101内の検体に対して分析を実行してもよい。
【0087】
また、前述した実施の形態では、オペレータが、優先検体セット位置620に配置された検体セット部255aに検体容器101をセットし、図9に示す選択画面810において特殊測定モードの設定をした後、優先検体測定開始ボタン29を押すことによって、特殊測定モードでの動作(キャリブレーター校正、プレシジョンチェック)が実行されているが、本発明はこれに限られない。例えば、特殊測定モードを示す情報が記録されたバーコードを検体容器101に貼付し、サンプラ測定モードでの動作中に検体容器101のバーコードから特殊測定モードを示す情報を読み取った場合に、自動的に特殊測定モードに移行して、特殊測定モードでの動作(キャリブレーター校正、プレシジョンチェック)を実行してもよい。
【0088】
また、検体容器101内の検体の撹拌は、前述したような転倒撹拌に限られるものではなく、例えば、検体容器101を軸心x回りに360°以上回転させたり、検体容器101を上下方向に直線往復動させたりしてもよい。また、検体容器101内の試料を撹拌棒等によって撹拌したり、検体容器101に対して試料の吸引と排出とを繰り返し行うことによって撹拌したりするなど、種々の撹拌形態を採用することができる。
【0089】
また、前述した実施の形態では、血液を分析する血球計数装置が記載されていたが、試料は、血液に限定されるものではなく、静止状態が継続することによって成分の分布が不均一になるその他の試料、例えば、尿であってもよい。この場合、本発明の試料分析装置は、尿中有形成分分析装置とされていてもよい。なお、この尿中有形成分分析装置は、尿中の赤血球、白血球、円柱、上皮細胞等の粒子成分を分析する装置である。
【符号の説明】
【0090】
1 試料分析装置
2 第1測定ユニット
2a 制御部
3 第2測定ユニット
3a 制御部
4 検体搬送装置
5 制御装置
21 検体吸引部
22 試料調製部
23 検出部
31 検体吸引部
32 試料調製部
33 検出部
51 制御部
101 検体容器
102 密閉蓋
251 ハンド部
255a 検体セット部
351 ハンド部
355a 検体セット部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料容器に収容された試料を分析する試料分析装置であって、
試料容器内の試料を撹拌する撹拌部と、
前記試料容器から試料を吸引する吸引部と、
前記吸引部によって吸引された試料に所定の処理を施す処理部と、を備え、
当該試料分析装置は、前記吸引部が試料を吸引し、前記処理部が当該試料に前記処理を施す一連の動作を一の試料容器に対して自動的に複数回連続して行う特殊測定モードを実行可能であり、
前記撹拌部は、当該特殊測定モードの実行中、最初の試料吸引動作が行われてから最後の試料吸引動作が行われるまでの間に少なくとも1回、前記一の試料容器内の試料の撹拌動作を行うよう構成されている、
試料分析装置。
【請求項2】
前記撹拌部は、前記特殊測定モードの実行中、吸引動作を所定回数行う毎に試料の撹拌動作を行うよう構成されている、請求項1に記載の試料分析装置。
【請求項3】
前記撹拌部は、前記特殊測定モードの実行中、各吸引動作の前に試料の撹拌動作を行うよう構成されている、請求項1又は2に記載の試料分析装置。
【請求項4】
前記試料容器設置部に対して複数の試料容器を順次供給する供給装置を更に備えており、
当該試料分析装置は、前記撹拌部が試料を撹拌し、前記吸引部が当該試料を吸引し、前記処理部が当該試料に前記処理を施す一連の動作を一の試料容器に対して1回行う通常測定モードを実行可能であり、当該通常測定モードで、前記供給装置によって供給された複数の試料容器に対して前記一連の動作を順次実行可能に構成され、
前記特殊測定モードの実行中において最初の試料吸引動作から最後の試料吸引動作までの間に行われる各撹拌動作における試料の撹拌量は、前記通常測定モードで各試料容器から試料を吸引する前に行われる試料の撹拌量よりも少ない、請求項1〜3のいずれか1項に記載の試料分析装置。
【請求項5】
前記撹拌部は、前記特殊測定モードの実行中において、最初の試料吸引動作の前にも試料の撹拌動作を行うよう構成され、
前記特殊測定モードの実行中において最初の試料吸引動作の前に行われる試料の撹拌量は、他の試料吸引動作の前に行われる試料の撹拌量よりも多い、請求項1〜4のいずれか1項に記載の試料分析装置。
【請求項6】
試料が収容された試料容器を設置する試料容器設置部をさらに備え、
前記特殊測定モードは、前記試料容器設置部にユーザによって手動で設置された試料容器を対象として実行される、請求項5に記載の試料分析装置。
【請求項7】
前記撹拌部は、試料容器を転倒させることによって試料の撹拌を行うよう構成されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の試料分析装置。
【請求項8】
前記吸引部は、試料を吸引する吸引管を有しており、
試料容器は、蓋体によって閉鎖される開口を有しており、
前記蓋体は、前記吸引管が貫通することによって前記試料容器内の試料の吸引を許容するとともに、貫通した吸引管が抜き取られることによって当該試料容器の密閉状態を維持することが可能な弾性材料により形成されている請求項1〜7のいずれか1項に記載の試料分析装置。
【請求項9】
前記試料は、粒子成分を含む液体試料である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の試料分析装置。
【請求項10】
前記特殊測定モードは、試料容器から吸引された校正用試料に前記処理部が所定の処理を施すことによって、被検者から採取された試料の分析結果に対する補正値を求めるモードである請求項1〜9のいずれか1項に記載の試料分析装置。
【請求項11】
前記特殊測定モードは、一の試料容器内の試料から得られた複数の分析結果のばらつきを反映した値を求めるモードである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の試料分析装置。
【請求項12】
試料容器から試料を吸引し、当該試料に所定の処理を施す一連の動作を一の試料容器に対して自動的に複数回連続して行う特殊測定モードを実行可能な試料分析装置における試料分析方法において、
前記特殊測定モードの実行中、最初の試料吸引動作が行われてから最後の試料吸引動作が行われるまでの間に少なくとも1回、前記一の試料容器内の試料の撹拌動作を行う工程を含む試料分析方法。

【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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