説明

試料分析装置

【課題】 簡易な構成であり、かつ、液体試料の計量精度に優れた試料分析装置を提供する。
【解決手段】 装置本体60の内部に、第一溶液が流下する第一流体流路11と、第一流体流路11と並設して第二溶液が流下する第二流体流路12と、装置本体60と密封状態で可動する可動部材20に備えてあり、かつ、第一流体流路11および第二流体流路12に連通可能であり、所定容積の第一溶液を計量する計量部21とを設け、計量した第一溶液を分析する分析手段14が第二流体流路12に備えてある試料分析装置Z。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体試料に含まれる測定物質を検出するための試料分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サンプルである液体試料を分取した後、この液体試料をバッファー液と共に分析手段に導入して、液体試料を分析することが行われている。
例えば特許文献1には、分析を行なうべき対象となる測定物質を含んだ液体試料、および溶離液を、流路を切り換えることにより連続的にカラムに導入する試料分析装置が開示してある。
即ち、液体試料導入部から液体試料を装置外部に設けたチューブに保持(ローディング)した後、回動する切り替え弁により当該チューブと溶離液導入部とを接続する。そして、溶離液導入部から当該チューブ内に溶離液を導入する。これにより、液体試料をチューブより押し出し、カラム内に一定量の液体試料と溶離液とを導入(インジェクション)できる。
【0003】
【特許文献1】特許第3451556号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の試料分析装置では、液体試料を保持するチューブや、当該試料分析装置とカラムとを接続するチューブを装置外部に配設した構造となっている。即ち、当該分析装置では複数のチューブを装置外部に配設する必要があり、これらのチューブを配管するのが煩雑である。また、当該チューブや分析領域であるカラムを当該分析装置の外部に配設するため、実験室内においては広い設置スペースが必要となる。
さらに、通常、当該チューブは可撓性の材料で構成してあるため、このチューブによって液体試料を正確に計量するのは困難である。
【0005】
また、液体試料を試料採取現場等でオンサイト処理する場合を鑑みると、分析装置の携帯性あるいは小型化が望まれている。
【0006】
従って、本発明の目的は、簡易な構成であり、かつ、液体試料の計量精度に優れた試料分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る試料分析装置の第一特徴構成は、
装置本体の内部に、第一溶液が流下する第一流体流路と、前記第一流体流路と並設して第二溶液が流下する第二流体流路と、前記装置本体と密封状態で可動する可動部材に備えてあり、かつ、前記第一流体流路および前記第二流体流路に連通可能であり、所定容積の前記第一溶液を計量する計量部とを設け、前記計量した第一溶液を分析する分析手段が前記第二流体流路に備えてある点にある。
【0008】
上記第一特徴構成によれば、第一流体流路および第二流体流路を並設してあり、さらに、これら流路・計量部および分析手段が装置本体の内部に設けてあるため、装置外部に流路を配管する必要がない。その上、実験室内においても、流路が外部配管してある場合に比べて広いスペースを要しない。さらに、液体試料をオンサイト処理する場合における試料分析装置の携帯性が向上する。
【0009】
また、計量部は、可動部材の部材中に形成するため、可撓性のチューブのように容易に変形し易い部材の中で計量する場合とは異なり、計量の精度を確保できる。そのため、所望量の第一溶液を確実に計量できる。
【0010】
さらに、第一溶液および第二溶液を装置本体の内部に導入したのちは、装置本体に対して密封状態で可動する可動部材を、第一流体流路に対する計量部の相対位置を変化させるように可動させることにより、計量部を、第一流体流路・第二流体流路と、或いは、分析手段と連通できる。従って、液体試料の分析操作中において、装置本体内部の溶液が外気と接触する虞がないため、第一溶液の中に気泡が混入し難くなる。
そして、第一溶液が充填してある計量部を第二流体流路と連通させると、計量した所望量の第一溶液を、第二溶液によって確実に分析手段に供給できるため分析精度が向上する。
従って、第一溶液を気泡のない状態で、かつ、正確な容量を分析手段に導くことができるため、分析手段における分析を気泡の影響を受けない状態で正確に行うことができる。
【0011】
本発明に係る試料分析装置の第二特徴構成は、前記可動部材を回転可能なロータにより構成した点にある。
【0012】
上記第二特徴構成によれば、可動部材を回転操作することにより、計量部の第一流体流路に対する相対位置を変化させることができる。そのため、計量部と分析手段とを連通状態に切り換える操作を容易に行うことができる。
【0013】
本発明に係る試料分析装置の第三特徴構成は、前記計量部を前記可動部材の厚さ方向に亘る流路によって構成した点にある。
【0014】
上記第三特徴構成によれば、計量部の容積は、可動部材の厚さ寸法を変えることで変更することができる。そのため、可動部材の厚さを判断することで、計量できる容積を認識することができる。
【0015】
本発明に係る試料分析装置の第四特徴構成は、前記可動部材に計量部を複数備えた点にある。
【0016】
上記第四特徴構成によれば、各計量部は、容積がそれぞれ異なるように構成することで、一つの試料分析装置において、様々な容積の第一溶液を計量できる。つまり、所望の容積を有する計量部を適宜選択し、選択した計量部にて液体試料を計量することができる。このように、複数箇所の計量部を備えることで、計量できる第一溶液のバリエーションが増え、種々の容積の第一溶液を計量して分析手段に導入できるため、第一溶液の容積を増減して分析感度を調整するのが容易になる。
【0017】
本発明に係る試料分析装置の第五特徴構成は、流下した前記第一溶液および前記第二溶液を収容する廃液収容部を、前記装置本体の内部に設けた点にある。
【0018】
上記第五特徴構成によれば、装置本体の内部に廃液収容部を設けてあるため、廃液のための流路を外部に配管する必要がない。そのため、液体試料中に人体に危険性の高い毒性物質が含まれている場合であっても、当該毒性物質が装置外部に漏出し難くなり、安全性を高めた状態で分析器具のディスポーザブル化を容易に図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
本発明は、液体試料に含まれる測定物質を検出するための試料分析装置である。この試料分析装置は、液体試料の所定量を分取した後、この液体試料をバッファー液である溶離液と共に、液体試料を分析する分析手段内に導入する装置である。図1〜4に、本発明の試料分析装置Zを示す。
【0020】
当該試料分析装置Zは、装置本体60の内部に、第一溶液が流下する第一流体流路11と、第一流体流路11と並設して第二溶液が流下する第二流体流路12とが設けてある。そして、装置本体60と密封状態で可動する可動部材20に備えてあり、かつ、第一流体流路11および第二流体流路12に連通可能であり、所定容積の第一溶液を計量する計量部21を設け、前記計量した第一溶液を分析する分析手段14が第二流体流路12に備えてある。
【0021】
即ち、第一流体流路11に対する計量部21の相対位置を変化させることにより、計量した第一溶液が充填してある計量部21と分析手段14とを連通状態に切り換え可能であり、第二溶液により、計量した第一溶液を分析手段14に供給可能に構成してある。
【0022】
(流体成分)
本実施形態では、試料分析装置Zの流体流路を流下する流体成分は、第一溶液として液体試料、第二溶液としてバッファー液とする場合を例示する。
【0023】
「液体試料」とは、分析を行なうべき対象となる測定物質を含む、或いは、含む可能性のある液体のサンプルのことを指す。液体試料は、どのような起源由来のものであってもよい。例えば、環境試料・細胞・培養物・組織・体液・尿・血清および生検試料等から得ることができる。
環境試料としては、工場跡地等から採取した土壌や、河川から採取した水等が例示される。そして、環境中より採取された試料は、流路中を流下できる程度の粘性を有する液体試料となるよう調整する。
【0024】
液体試料に含まれる「測定物質」は、この測定物質と特異的結合体を形成しうる結合性物質(後述)との結合により捕捉される。特異的複合体は、結合対アッセイを行った結果生じるものであり、後述するように、抗原抗体反応の結果生じる免疫化学的複合体や、相補的な核酸同士のハイブリダイゼーションの結果生じる複合体等が好適に例示される。
【0025】
測定物質は、化学物質・タンパク質等の高分子・DNA断片・微生物又はウィルスおよびその断片・ホルモン等、あらゆる物質が対象となりうる。本発明の試料分析装置Zに適用できる測定物質としては、例えば、土壌中に含まれる毒性物質(PCB,ダイオキシン)や、油性物質(重油)等の環境汚染の要因となりうる物質、或いは、河川の水に含まれる病原性大腸菌の菌体等が好適に例示される。
【0026】
バッファー液は、適用した液体試料の緩衝液となり得る溶液であれば公知の何れの溶液であってもよい。
【0027】
(試料分析装置の詳細構造)
本実施形態の試料分析装置Zは、例えば装置本体60の外形が略円筒状であり、使用者が把持することでハンドリング操作できる程度の大きさのものを示す。装置本体60の外形は円筒状に限らず多角形状の方形であってもよい。
【0028】
図1〜4に示したように、試料分析装置Zは、軸体51のまわりを共動して回転可能に構成してある円盤状の一対の可動部材20a〜20bを備えている。そして、可動部材20aは円筒上部材61と円筒中部材62とによって挟持され、可動部材20bは円筒中部材62と円筒下部材63とによって挟持される。装置本体60は円筒部材61〜63によって構成され、可動部材20と円筒部材61〜63とは相対移動するように構成してある。
【0029】
円筒部材
円筒上部材61、円筒中部材62および円筒下部材63には、試料分析装置Zの流体流路の一部を構成する第一流体流路11a〜11cがそれぞれ形成してあり、さらに、第二流体流路12a〜12cがそれぞれ形成してある。第一流体流路11および第二流体流路12は、3つの円筒部材61〜63間において、略直線状になるように、互いに略平行となるように並設して構成してある。
また、円筒中部材62および円筒下部材63には、第三流体流路13a〜13bがそれぞれ形成してある。
【0030】
円筒上部材61には、液体試料(第一溶液)を導入する第一導入孔31a、および、バッファー液(第二溶液)を導入する第二導入孔32aが形成してある。第一導入孔31aおよび第二導入孔32aは、例えば軸体51に対して対称となる位置に設ける。
【0031】
第一導入孔31aからは、例えばピストン機構を有する注液シリンジ等のサンプル導入手段41を装着することにより液体試料を導入できる。同様に、第二導入孔32aにおいても、サンプル導入手段41と同様の機構を有するバッファー導入手段42によりバッファー液を導入できる。
【0032】
円筒中部材62に形成してある第二流体流路12bには、後述する分析手段14が設けてある。この分析手段14は、初期状態(図1(a))においては、可動部材20a〜20bで両端が閉鎖された第二流体流路12b内に、バッファー液で浸漬された状態で保持してある。
【0033】
円筒下部材63には、第一流体流路11を流下した液体試料(第一溶液)、および、第二流体流路12を流下したバッファー液(第二溶液)を収容する廃液収容部15を備えている。廃液収容部15は、装置本体60の内部に設けられるように構成される。この廃液収容部15は、第三流体流路13とも連通する。
廃液収容部15は、液体を収容する空間であってもよく、液体を吸収するスポンジ等の吸収体を配設する構造でもよい。
【0034】
このような円筒部材61〜63は、液漏れ等を防ぐため、使用者の把持力、或いは、可動部材20の回動時における可動部材20と円筒部材61〜63との摩擦力等によって容易に変形しない硬質の材料で構成するのが好ましい。例えば、金属・プラスチック・ガラス等が適用できる。
【0035】
可動部材
可動部材20a〜20bは、例えば軸体51のまわりを同期して回動するロータにより構成する。可動部材20a〜20bは、回動が同期すること、および、後述するように試料分析装置Zの流体流路の一部を構成することから、それぞれ同様の通孔を備えた構成とする。以下、可動部材20aの構成のみ詳述する。
【0036】
可動部材20aは、上述した円筒部材61〜63と同様に、容易に変形しない硬質の材料で構成するのが好ましい。また、可動部材20aは、上述した円筒部材61〜62に対して相対回転移動するが、液漏れ防止のため、円筒部材61〜63と密着性の高い材料で構成する。これにより、可動部材20は装置本体と密封状態で可動することができ、例えば土壌試料中に含まれる毒性物質(PCB,ダイオキシン)等の人体に危険性の高い物質であっても、液漏れの殆どない状態で安全に分析することができる。
【0037】
そして、可動部材20aは、第一流体流路11および第二流体流路12に連通可能であり、所定容積の液体試料(第一溶液)を計量する計量部21を備える。
即ち、計量部21は、可動部材20の回動位置に応じて、第一流体流路11或いは第二流体流路12と連通するように構成してある。初期状態(図1(a))においては、計量部21は何れの流路とも連通しない状態とする。
【0038】
また、計量部21は、可撓性のチューブのように容易に変形し易い部材の中で計量する場合とは異なり、可動部材20の部材中に形成するため、計量の精度を確保できる。そのため、所望量の液体試料を確実に計量できる。
【0039】
計量部21は、可動部材20の厚さ方向に亘る流路によって構成してある。
これにより、計量部21の容積は、可動部材20の厚さ寸法を変えることで変更することができる。そのため、可動部材20の厚さを判断することで、計量できる容積を認識することができる。
【0040】
計量部21を構成する流路は、液体試料の容積計算を容易にするため、ストレート流路とするのが好適である。ストレート流路とは、略直線状の軸芯を有する流路のことを指す。そのため、流路の管径が一定であるものや、管径が変化する場合であっても流路軸芯が略直線であればよい。
一方、流路軸芯が曲折するように計量部21を構成する流路してもよい。この場合、可動部材20の限られた部材内において、計量部21の容積を効果的に増加させることができる。
【0041】
計量部21の容積は、適宜設定できるが、例えば5〜20μL程度とする。
【0042】
また、可動部材20には、連通孔23が設けてある。連通孔23の位置は、連通孔23が第三流体流路13と連通するように構成すれば、可動部材20の操作性等に鑑み、適宜、設計することができる。
さらに、可動部材20には、第二流体流路12aと連通孔23とを接続する接続部24が設けてある。
【0043】
分析手段
本実施形態において、分析手段14は、円筒中部材62に設けた第二流体流路12bに設けてある。
本実施形態における分析手段14は、結合対アッセイとして抗原抗体反応による免疫学的手法を用いた分析手段を例示するが、これに限られるものではなく、公知の核酸等のハイブリダイゼーションによる生化学的手法を用いた分析手段等も適用できる。
免疫学的手法を用いた分析手段14の場合、液体試料中に含まれる測定物質と結合して特異的複合体を形成する結合性物質を担持した固定化物質が配置してある構成とすることができる。
【0044】
「結合性物質」は、測定物質を認識し得る物質、つまり、結合性物質と親和性を有する測定物質を選択的に検出し得る分子認識能を有する物質を意味する。 分子識別能を有する事例としては、例えば、抗体(モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体)・抗体フラグメント−抗原間、DNA−DNA・DNA−RNA・RNA−RNAの核酸間でのハイブリダイゼーション(相補的結合)能、または、調節因子・受容体−ホルモン・サイトカイン・神経伝達物質・レクチン等間、または、酵素−基質・補酵素等間の生体応答能が、好ましく例示される。
従って、「結合性物質」は、結合性物質と親和性を有する測定物質を選択的に検出し得る分子認識能を有する限り、何れの物質をも含む概念であり、抗原・抗体・DNA断片・オリゴヌクレオチド・ポリヌクレオチド・ペプチド核酸等の核酸・タンパク質・ペプチド・糖・細胞・微生物等、が好ましく例示されるが、これらに限定されるものではない。 例えば、測定物質としてのPCB、ダイオキシンに対する結合性物質は、それぞれ抗PCB抗体、抗ダイオキシン抗体である。
【0045】
そして、結合性物質は、分析手段14を形成する部材表面に固相化、或いは、当該結合性物質を固定化物質の表面に担持させた状態で分析手段14中に収容することにより分析手段14に配置することができる。
【0046】
「固定化物質」は、その表面に結合性物質を担持できる水不溶性の物質であれば適用できる。例えば、ラテックス・ポリエチレン・ポリスチレン・ポリプロピレン等の高分子からなる担体、ケイ酸無機担体(ガラス・シリカゲル等)、有機担体(プラスチック・ニトロセルロース・デキストラン等)、活性炭等の炭素系材料、金属粒子・マグネタイト等の磁性体、等を挙げることができる。
【0047】
さらに、固定化物質の形状は、粒子(ビーズ)状・シート状・チューブ状など種々の形態をとりうる。好ましい例としては、粒径0.1〜1000μm程度、好ましくは1〜100μm程度、特に好ましくは1〜50μm程度のビーズ状である。
【0048】
一方、ナイロン・ニトロセルロース・酢酸セルロース・ガラス繊維および多孔性ポリマー等の多孔性物質が固定化物質として利用可能である。
【0049】
結合性物質を固定化物質に固定する方法は、公知の手法により行うことができるが、例えば、ポリスチレン担体に抗体(結合性物質)を物理吸着する方法、固定化物質の表面に設けた官能基に「結合性物質」のもつアミノ基などを共有結合する方法がある。結合の後、担体の表面及び表面の未反応官能基を適当なタンパク質・界面活性剤などでブロッキング処理し、非特異反応を抑制することが可能である。
【0050】
「免疫化学的手法」としては、例えば、固相法によるイムノアッセイの手法を適用することによって液体試料中の測定物質の存在を検出、或いは、定量的測定ができる。イムノアッセイとして公知の所謂「サンドイッチ法」では、例えば抗原のような標的となる測定物質を、標識化抗体と固定化物質表面に固定化された抗体(結合性物質)との間に挟むことにより、分析手段14において特異的複合体を形成させ、測定物質を捕捉することができる。
【0051】
このように、特異的複合体を形成する抗体等を標識化しておくことで、測定物質の存在を検出、或いは、定量的測定ができる。尚、測定物質或いは結合性物質の何れかを標識化してもよい。
このようにして、液体試料中の測定物質を高感度に検出することができる。
【0052】
抗原抗体反応により形成された特異的複合体の検出は、以下のように行う。
例えば、抗体を蛍光(発光)物質により標識化し、その蛍光(発光)強度を直接検出する、もしくは、抗体に酵素を結合し、化学発光基質を用いて酵素反応を行なうことにより光学的変化を検出する。
【0053】
本実施形態に適用できる蛍光物質は特に限定されるものではなく、適用可能な蛍光物質としては、フルオレセイン・ローダミン・フィコシアニン等が挙げられる。また、本実施形態に適用できる化学発光基質は特に限定されるものではなく、適用可能な化学発光基質としては、ルミノール・イソルミノール・イソルミノール誘導体等を挙げることができる。
【0054】
反応温度・反応を行う溶液の組成およびpH等は、通常の免疫測定で行われる条件で可能である。例えば、温度は5〜60℃程度、pHは5〜9程度が好ましい。
【0055】
蛍光標識した抗体を使用した場合における反応の結果、生成する特異的複合体中に、「測定物質」の量に応じて標識物質が存在することになる。洗浄用バッファーなどを第二導入孔32aより導入して第二流体流路12を流下させ、未反応物を除去した後、標識物質の量を測定することで、「測定物質」を定量することができる。標識物質の定量は、標識物質の種類と共に種々の方法をとりうる。例えば、蛍光測定装置により蛍光物質の蛍光強度を測定する。測定された標識強度を、既知量の「測定物質」を測定した場合の標識強度と比較することにより、液体試料中の測定物質量を決定できる。
【0056】
(試料分析装置の操作)
上述した試料分析装置Zの操作手順を以下に説明する。
まず、図1(a)に初期状態の試料分析装置Zを示す。
このとき、分析手段14は、可動部材20a〜20bで両端が閉鎖された第二流体流路12b内に、バッファー液で浸漬された状態で保持してある。
【0057】
この状態において、可動部材20を回動する操作を行う。
この操作は、第一流体流路11に対する計量部21の相対位置を変化させ、計量部21が第一流体流路11と連通する位置となるまで可動部材20を回動させる。本実施形態では、反時計廻りに90度回動する場合を例示してある(図1〜2参照)。
【0058】
回動後、図2(a)に示したように、液体試料を導入する第一導入孔31aから廃液収容部15までが連通する。この状態で、サンプル導入手段41を装着し、第一導入孔31aから液体試料を導入すると、第一流体流路11a〜11cおよび計量部21は液体試料で満たされる。尚、液体試料が計量部21により計量される。そして、第一流体流路11を流下した液体試料は、廃液収容部15に収容される。
【0059】
さらに、連通孔23は、バッファー液を導入する第二導入孔32aと接続部24を介して連通し、さらに第三流体流路13と連通する。この状態で第二導入孔32aからバッファー液を導入すると、第二流体流路12a・接続部24・連通孔23・第三流体流路13a〜13bがバッファー液で満たされる。そして、これらの部位を流下したバッファー液は、廃液収容部15に収容される。
【0060】
このとき、例えば、第二流体流路12aに気泡が存在していたとしても、この気泡は、第三流体流路13を流下する液体試料とともに廃液収容部15まで移送される。これにより、特に第二流体流路12aに存在する気泡を除去できる。
【0061】
そして、この状態において、さらに可動部材20を回動する操作を行う。本実施形態では、反時計廻りに180度回動した場合を例示してある(図2〜3参照)。この操作は、第一流体流路11に対する計量部21の相対位置を変化させることにより、計量した液体試料が充填してある計量部21と分析手段14とを連通状態に切り換えるものである。
【0062】
回動後、図3(a)に示したように、バッファー液を導入する第二導入孔32a・計量部21・分析手段14および廃液収容部15が連通する。この状態において、バッファー導入手段42を装着し、第二導入孔32aからバッファー液を導入すると、計量した液体試料は分析手段14に供給可能となる。つまり、計量部21に存在する計量済みの液体試料は、バッファー液によって押し流され、分析手段14に導かれる。従って、正確に計量した所望量の液体試料をバッファー液によって確実に分析手段14に供給できるため、分析精度が向上する。
【0063】
以上のように、本発明の試料分析装置Zは、第一流体流路11および第二流体流路12を並設してあり、これら流路11〜12・計量部21および分析手段14が装置本体60の内部に設けてあるため、装置外部に流路を配管する必要がない。その上、実験室内においても、流路が外部配管してある場合に比べて広いスペースを要しない。さらに、液体試料をオンサイト処理する場合における試料分析装置Zの携帯性が向上する。
【0064】
また、装置本体内部60に、廃液を収容する廃液収容部15を設けてあるため、廃液のための流路を外部に配管する必要がない。本構成では、所望の液体試料を分析した後は、装置内部に廃液を保持した状態、および、当該試料分析装置Zにサンプル導入手段41およびバッファー導入手段42を装着した状態で破棄できる態様となる。そのため、液体試料中に人体に危険性の高い毒性物質が含まれている場合であっても、当該毒性物質が装置外部に漏出し難くなり、安全性を高めた状態で分析器具のディスポーザブル化を容易に図ることができる。
【0065】
さらに、液体試料およびバッファー液を装置本体60の内部に導入したのちは、装置本体60と密封状態で可動する可動部材20を可動させることにより、計量部21を、第一流体流路11・第二流体流路12と、或いは、分析手段14と連通できる。従って、液体試料の分析操作中において、装置本体60内部の溶液が外気と接触する虞がないため、液体試料の中に気泡が混入し難くなる。よって、液体試料を気泡のない状態で、かつ、正確な容量を分析手段14に導くことができるため、分析手段14における分析を気泡の影響を受けない状態で正確に行うことができる。
【0066】
〔別実施の形態1〕
上述した実施形態において、試料分析装置Zは、軸体51のまわりを回動可能に構成してある可動部材20を備える構成としたが、この他にも、例えば図5に示したように、可動部材20を直線的にスライド移動するように構成してもよい。
【0067】
図5(a)は試料分析装置Zの初期状態を示す。この状態では計量部21に液体試料は充填されていない。
【0068】
そして、図5(b)に示したように、可動部材20を直線スライド移動させる。この状態で、第一導入孔から液体試料を導入すると、第一流体流路11および計量部21は液体試料で満たされる。
【0069】
さらに、図5(c)に示したように、可動部材20を直線スライド移動させる。この操作は、第一流体流路に対する計量部21の相対位置を変化させることにより、計量した液体試料が充填してある計量部21と、第二流体流路12に設けてある分析手段とを連通状態に切り換えるものである。
【0070】
そして、第二導入孔からバッファー液を導入すると、計量した液体試料は分析手段に供給可能となる。
【0071】
〔別実施の形態2〕
可動部材20に計量部21を複数備えた構成とすることができる。
例えば、図6に示したように、四つの計量部21a〜21dを設けることが可能である。
【0072】
この場合、各計量部21a〜21dは、流路の管径がそれぞれ異なるように構成することで、一つの試料分析装置において、様々な容積の液体試料を計量できる。つまり、所望の容積を有する計量部を適宜選択し、選択した計量部にて液体試料を計量することができる。このように、複数箇所の計量部を備えることで、計量できる液体試料のバリエーションが増え、種々の容積の液体試料を計量して分析手段14に導入できるため、液体試料の容積を増減して分析感度を調整するのが容易になる。
【0073】
尚、これら複数の計量部は、何れか1つを利用してもよく、複数の計量部で異なる溶液をそれぞれ計量し、分析手段に計量した複数の溶液を連続的に供給するように構成してもよい。
【0074】
〔別実施の形態3〕
図7に示したように、第一流体流路11および第二流体流路12を密封する円筒状のシール部材25a〜25bを、可動部材20および円筒部材にそれぞれ設けてもよい。図7には、円筒上部材61と円筒上部材62とにシール部材25aを設け、可動部材20にシール部材25bを設けた例を示してある。そして、例えば第一流体流路11a〜11bが連通した状態において、シール部材25a〜25bはそれぞれ当接するように構成してある。
【0075】
これにより、第一流体流路11或いは第二流体流路12は、外気から確実に遮断されるため、装置本体60内部を流通する溶液に気泡が混入することが殆どなくなる。
【0076】
さらに、可動部材20を回転あるいはスライド動作させるときにおいて、第一流体流路11或いは第二流体流路12の中の溶液が各流路から漏出するのを防止できる。そのため、例えば計量した液体試料を漏出することが殆どない状態で、分析手段14に供給することができる。従って、液体試料の分析精度がより向上する。
【0077】
本発明の試料分析装置は、流路を切り換えることにより分析手段に複数の溶液を連続的に供給する装置に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の試料分析装置の概略図
【図2】試料分析装置において、計量部に液体試料を導入するときの概略図
【図3】計量部と分析手段とを連通させた場合の概略図
【図4】試料分析装置の装置本体の概略図
【図5】本発明の試料分析装置の別実施形態の概略図
【図6】複数の計量部を設けた可動部材の概略図
【図7】シール部材を設けてある試料分析装置の概略図
【符号の説明】
【0079】
Z 試料分析装置
11 第一流体流路
12 第二流体流路
14 分析手段
15 廃液収容部
20 可動部材
21 計量部
60 装置本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体の内部に、
第一溶液が流下する第一流体流路と、
前記第一流体流路と並設して第二溶液が流下する第二流体流路と、
前記装置本体と密封状態で可動する可動部材に備えてあり、かつ、前記第一流体流路および前記第二流体流路に連通可能であり、所定容積の前記第一溶液を計量する計量部とを設け、
前記計量した第一溶液を分析する分析手段が前記第二流体流路に備えてある試料分析装置。
【請求項2】
前記可動部材が回転可能なロータにより構成してある請求項1に記載の試料分析装置。
【請求項3】
前記計量部が前記可動部材の厚さ方向に亘る流路によって構成してある請求項1又は2に記載の試料分析装置。
【請求項4】
前記可動部材に計量部を複数備えた請求項1〜3の何れか一項に記載の試料分析装置。
【請求項5】
流下した前記第一溶液および前記第二溶液を収容する廃液収容部を、前記装置本体の内部に設けてある請求項1〜4の何れか一項に記載の試料分析装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−329768(P2006−329768A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−152551(P2005−152551)
【出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】