説明

試料容器、分注装置、分注方法及び分析装置

【課題】分注プローブに付着した液体試料を分注前に簡易に除去することが可能な試料容器、分注装置、分注方法及び分析装置を提供すること。
【解決手段】検体又は試薬を含む液体試料を保持し、挿通口から挿通される分注プローブによって液体試料が吸引され、他の容器に吐出される試料容器、分注装置、分注方法及び分析装置。検体容器9は、挿通口9aの近傍内面に分注プローブの下端に付着する液体試料の液滴を表面張力によって捕捉する液滴捕捉部9bが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料容器、分注装置、分注方法及び分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、分析装置は、検体又は試薬を含む液体試料を分注装置によって正確に分注することにより、液体試料の分析精度を確保している。但し、分注装置は、分注プローブ下端を挿入して液体試料を吸引するので、下端に液体試料の液滴が付着することがある。分注プローブ下端に液滴が付着すると、分注装置は、吸引した液体試料を反応容器に吐出する際、付着した液滴が吐出される分注対象の液体試料に混入し、分注精度が乱されることから種々の対策が検討されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平9−184846号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1は、液体試料吸引後の分注プローブを上下方向に急速に移動させ、分注プローブに付着した液滴を除去している。このため、従来の分注装置は、分注プローブに付着した液体試料を除去するために構成が複雑になるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、分注プローブに付着した液体試料の液滴を分注前に簡易に除去することが可能な試料容器、分注装置、分注方法及び分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の試料容器は、検体又は試薬を含む液体試料を保持し、挿通口から挿通される分注プローブによって前記液体試料が吸引され、他の容器に吐出される試料容器であって、前記挿通口の近傍内面に前記分注プローブの下端に付着する液体試料の液滴を表面張力によって捕捉する液滴捕捉部が設けられていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の試料容器は、上記の発明において、前記液滴捕捉部は、前記分注プローブの下端を接近させた際、前記分注プローブ下端に付着した液体試料の液滴を捕捉する複数の突起又は凸条からなることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の試料容器は、上記の発明において、前記液滴捕捉部は、前記分注プローブに比べて前記液体試料に対する親和性が相対的に高くなる親和性処理が施されていることを特徴とする。
【0009】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の分注装置は、検体又は試薬を含む液体試料を保持した試料容器の挿通口から挿通した分注プローブに液体試料を吸引させ、吸引した液体試料を他の容器に吐出させる駆動手段と、前記駆動手段の作動を制御する駆動制御手段とを備えた分注装置であって、前記駆動制御手段は、前記液体試料を吸引した分注プローブを前記挿通口から引き出す際、前記駆動手段を制御して前記分注プローブ下端を前記挿通口の近傍内面に設けられた液滴捕捉部に接近させ、前記分注プローブ下端に付着した液体試料の液滴を表面張力によって前記液滴捕捉部に捕捉させることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の分注装置は、上記の発明において、前記駆動制御手段は、前記分注プローブの下端を前記液滴捕捉部に接近させた際、前記分注プローブに目標吐出量よりも少ない量の前記液体試料を予備吐出させることを特徴とする。
【0011】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の分析装置は、検体と試薬とを含む液体試料を反応させ、反応液を分析する分析装置であって、試料容器の挿通口から分注プローブを挿通して液体試料を吸引し、吸引した液体試料を他の容器に吐出して液体試料を分注する前記分注装置を備え、前記液体試料を吸引した分注プローブを前記挿通口から引き出す際、前記分注プローブ下端を前記挿通口の近傍内面に設けた液滴捕捉部に接近させ、前記分注プローブ下端に付着した液体試料の液滴を表面張力によって前記液滴捕捉部に捕捉させることを特徴とする。
【0012】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の分注方法は、駆動手段によって駆動される分注プローブによって検体または試薬を含む液体試料を試料容器から吸引する吸引工程と、吸引した前記液体試料を吐出する吐出工程と、前記分注プローブを洗浄する洗浄工程と、を含む分注方法において、前記吸引工程で前記液体試料を吸引した後、前記分注プローブの下端に付着した液体試料の液滴を前記試料容器に設けた液滴捕捉部との表面張力によって捕捉する捕捉工程を含むことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の分注方法は、上記の発明において、前記捕捉工程は、前記分注プローブの下端を前記液滴捕捉部に接近させ、付着した液体試料の液滴を前記液滴捕捉部に捕捉させることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の分注方法は、上記の発明において、前記捕捉工程は、前記分注プローブの下端を前記液滴捕捉部に接近させた際、目標吐出量よりも少ない量の液体試料を前記分注プローブから予備吐出し、前記分注プローブ下端に付着した前記液体試料と前記液滴捕捉部との接触面積を増大させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、分注プローブを挿通する挿通口の近傍内面に分注プローブの下端に付着した液体試料を表面張力によって捕捉する液滴捕捉部が設けた試料容器とし、分注プローブを挿通口から引き出す際、分注プローブ下端を液滴捕捉部に接近させ、分注プローブ下端に付着した液体試料を液滴捕捉部に捕捉させるので、分注プローブに付着した液体試料を分注前に簡易に除去することが可能な試料容器、分注装置、分注方法及び分析装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(実施の形態1)
以下、本発明の試料容器、分注装置、分注方法及び分析装置にかかる実施の形態1について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、本発明の分注装置を備えた自動分析装置を示す概略構成図である。図2は、実施の形態1の検体容器を示す斜視図である。
【0017】
自動分析装置1は、図1に示すように、第1試薬テーブル2、第2試薬テーブル3、反応テーブル4、第1試薬分注装置6、第2試薬分注装置7、検体容器移送部8、検体分注装置10、撹拌部21、測光部22、洗浄部23及び制御部25を備えている。
【0018】
第1試薬テーブル2及び第2試薬テーブル3は、それぞれ構造が同一であるので、第1試薬テーブル2について説明し、第2試薬テーブル3については、対応する構成要素に対応する符号を使用する。
【0019】
第1試薬テーブル2は、図1に示すように、駆動手段に回転されて保持した複数の試薬容器2aを周方向に搬送する。このとき、第1試薬テーブル2は、外周に第1読取部2bが配置されている。第1読取部2bは、複数の試薬容器2aに添付されたバーコードラベル等の情報記録媒体の情報を読み取る。
【0020】
反応テーブル4は、図1に示すように、複数の反応容器5が周方向に沿って配列され、試薬テーブル2,3の駆動手段とは異なる駆動手段によって正転或いは逆転されて反応容器5を搬送する。反応テーブル4は、例えば、一周期で時計方向に(1周−1反応容器)/4回転し、四周期で(1周−1反応容器)回転する。
【0021】
反応容器5は、四角筒形状の容量が数μL〜数十μLと微量なキュベットである。反応容器5は、測光部22が出射する分析光の80%以上を透過する透明素材、例えば、耐熱ガラスを含むガラス,環状オレフィンやポリスチレン等の合成樹脂が使用される。反応容器5は、反応テーブル4の近傍に設けた第1試薬分注装置6や第2試薬分注装置7によって第1試薬テーブル2や第2試薬テーブル3の試薬容器2a,3aから試薬が分注される。
【0022】
ここで、第1試薬分注装置6及び第2試薬分注装置7は、それぞれ構造が同一であるので、第1試薬分注装置6について説明し、第2試薬分注装置7については、対応する構成要素に対応する符号を使用する。
【0023】
第1試薬分注装置6は、図1に示すように、水平面内を矢印方向に回動されると共に、上下方向に昇降されるアーム6aと、試薬を分注する分注プローブ6bとを有している。アーム6aは、一端が支柱の上部に支持されている。第1試薬分注装置6は、洗浄水によって分注プローブ6bを洗浄する洗浄槽6cが分注プローブ6bの移動軌跡上に配置されている。洗浄槽6cは、分注プローブ6bから吐出させて分注プローブ6bの内側を洗浄した洗浄水を廃棄すると共に、槽内に噴出する洗浄水によって分注プローブ6bの外側を洗浄する。
【0024】
検体容器移送部8は、図1に示すように、複数のラック8aを矢印方向に沿って移送する移送手段であり、ラック8aを歩進させながら移送する。ラック8aは、検体を収容した複数の検体容器9を保持している。ここで、検体容器移送部8は、中央に緊急検体を収容する保冷庫8bが設けられている。そして、検体容器9は、検体容器移送部8によって移送されるラック8aの歩進が停止するごとに、検体分注装置10によって検体が各反応容器5へ分注される。
【0025】
このとき、検体容器9は、図2〜図4に示すように、上部に分注プローブ10bを挿通する挿通口9aが上部に形成され、底部が半球状に成形された有底円筒形の試験管状の容器であり、挿通口9a近傍の内面に複数の突起Pからなる液滴捕捉部9bが設けられている。液滴捕捉部9bは、分注プローブ10bの下端に付着する液体試料の液滴を表面張力によって捕捉する。
【0026】
ここで、突起Pは、図5に示すように、分注プローブ10bに付着すると予測される液滴の最大直径に対応する半径R(=直径2R)の半球状に成形することで、一辺の長さが2Rの正方形の角柱からなる突起とする場合よりも分注プローブ10bに付着する液滴との接触面積を増加させ、これにより検体に対する表面張力が分注プローブ10bよりも大きくなるようにしている。
【0027】
検体分注装置10は、図6に示すように、水平方向に回動すると共に、上下方向に昇降する駆動アーム10aと、駆動アーム10aに支持された分注プローブ10bと、駆動アーム10aを支持する支柱10cと、分注プローブ10bを洗浄する洗浄槽10dを有しており、駆動部11によって駆動される。分注プローブ10bは、後述するポンプ駆動機構15のプランジャポンプ15aを利用し、洗浄水Wとの間に空気層を介して内部に検体Sを吸引する(図8参照)。また、検体分注装置10は、例えば、分注プローブ10bと検体との間の静電容量の変化によって検体容器9に保持された検体の液面を検知する図示しない液面検知装置を備えている。洗浄槽10dは、洗浄水を槽内に噴出する配管と、槽内に噴出して分注プローブ10bの外面を洗浄した洗浄水を排出する配管とが接続されている。洗浄槽10dは、第1試薬分注装置6の洗浄槽6cと同様に、分注プローブ10bの移動軌跡上に配置されている。
【0028】
駆動部11は、図6に示すように、ECU等を使用した駆動制御部11aの制御の下に作動するプローブ駆動機構12とポンプ駆動機構15を備えている。プローブ駆動機構12は、分注プローブ10bの昇降と回動を行い、ポンプ駆動機構15は、分注プローブ10bへの検体の吸引と吐出を行う。
【0029】
プローブ駆動機構12は、図6に示すように、回動モータ13と昇降モータ14を有している。回動モータ13は、回転軸13aに取り付けたホイール13bと支柱10cに取り付けたホイール10eとの間にタイミンベルト13cが巻き掛けられている。昇降モータ14は、回転軸に取り付けたホイールとねじ軸10fの下端に取り付けたホイール10gとの間にタイミンベルト14aが巻き掛けられている。ここで、ねじ軸10fは、支柱10cの下端に取り付けた昇降ブロック10hに螺着されており、昇降ブロック10hと共にボールねじを構成している。
【0030】
ポンプ駆動機構15は、図6に示すように、プランジャポンプ15aと分注モータ15eとを備えている。プランジャポンプ15aは、シリンダ15bとプランジャ15cとを有し、分注モータ15eによってプランジャ15cが往復駆動される。分注モータ15eは、回転軸に連設されたねじ軸15fに昇降ブロック15gが取り付けられている。分注モータ15eは、昇降ブロック15gにプランジャ15cから延出するロッド15dの下端が連結されている。ここで、プランジャポンプ15aは、シリンダ15bと分注プローブ10bとの間、シリンダ15bと洗浄水タンクとの間が配管15hによって接続されている。そして、シリンダ15bと洗浄水タンクとの間を接続する配管15hには、ポンプ16と弁17が設けられている。
【0031】
ポンプ16は、洗浄水タンクに保持された洗浄水をポンプ駆動機構15のシリンダ15bへ圧送する。弁17は、前記洗浄水タンクとポンプ駆動機構15との間を接続する配管15hにおける洗浄水の流通を切り替える。
【0032】
撹拌部21は、図1に示すように、反応テーブル4外周の第2試薬分注装置7近傍に配置され、反応容器5に分注された検体と試薬とを含む液体試料を撹拌する。撹拌部21は、例えば、表面弾性波素子によって液体試料を非接触で撹拌する撹拌装置や、撹拌棒によって液体試料を撹拌する撹拌装置が使用される。
【0033】
測光部22は、図1に示すように、反応テーブル4外周の撹拌部21と洗浄部23との間に配置され、試薬と検体とが反応した反応容器5内の反応液を分析するための分析光を出射する。測光部22は、反応容器5内の反応液を透過した分析光の光量に対応する信号を制御部25へ出力する。
【0034】
洗浄部23は、図1に示すように、反応テーブル4外周の検体分注装置10近傍に配置され、プローブによって反応容器5内の反応液を吸引して排出した後、前記プローブから洗剤や洗浄水等の洗浄液を注入し、吸引する。洗浄部23は、この動作を複数回繰り返すことにより、測光部22による測光が終了した反応容器5内を洗浄する。
【0035】
制御部25は、例えば、マイクロコンピュータ等が使用され、自動分析装置1の各構成部と接続されて作動を制御する。例えば、制御部25は、測光部22が出力した信号に基づく反応液の吸光度から検体の成分濃度等を分析する際の制御を実行する。また、制御部25は、キーボード等の入力部26から入力される分析指令に基づいて自動分析装置1の各構成部の作動を制御しながら分析動作を実行させると共に、分析結果や警告情報の他、入力部26から入力される表示指令に基づく各種情報等をディスプレイパネル等の表示部27に表示する。
【0036】
以上のように構成される自動分析装置1は、制御部25の制御の下に作動し、回転する反応テーブル4によって周方向に沿って搬送されてくる複数の反応容器5に検体分注装置10によってラック8aに保持された複数の検体容器9から検体が順次分注される。検体が順次分注された反応容器5は、試薬分注機構7,8が試薬容器2a,3aから順次試薬が分注される。
【0037】
このようにして、試薬と検体が分注された反応容器5は、反応テーブル4が停止する都度、撹拌部21によって順次撹拌されて試薬と検体とが反応し、反応テーブル4が再び回転したときに測光部22を通過する。このとき、反応容器5内の試薬と検体とが反応した反応液は、測光部22で測光され、制御部25によって成分濃度等が分析される。そして、反応液の測光が終了した反応容器5は、洗浄部23に移送されて洗浄された後、再度検体の分析に使用される。
【0038】
このとき、本発明の検体分注装置10は、検体を吸引した分注プローブ10bを検体容器9から引き出す際、駆動制御部11aが駆動部11を制御し、挿通口9a近傍の内面に複数の突起Pからなる液滴捕捉部9bに分注プローブ10bの下端を接近させる。これにより、検体分注装置10は、検体の吸引によって分注プローブ10bの下端に付着する検体の液滴を液滴捕捉部9bに捕捉させ、引き続く吐出の際に、付着した検体が分注プローブ10bから吐出される分注対象の検体に混入することを防止している。以下、本発明の分注方法を図7に示すフローチャートを参照して説明する。
【0039】
先ず、駆動制御部11aは、回動モータ13を駆動し、分注プローブ10bを洗浄槽10dから検体の吸引位置へ回動する(ステップS100)。次に、駆動制御部11aは、昇降モータ14を駆動し、検体容器9内へ分注プローブ10bを下降させる(ステップS102)。このとき、検体分注装置10は、検体容器9内の検体の液面を前記液面検知装置によって検知し、分注プローブ10bを検体の所定深さまで下降させる。
【0040】
次いで、駆動制御部11aは、この状態でポンプ駆動機構15を駆動し、分注プローブ10bに検体容器9内の検体を吸引させる(ステップS104)。これにより、分注プローブ10bには、図8に示すように、検体Sが吸引される(状態A1参照)。検体吸引の後、駆動制御部11aは、昇降モータ14を駆動し、分注プローブ10b下端を液滴捕捉部9bまで上昇させる(ステップS106)。このとき、分注プローブ10bは、図8に示すように、下端に検体Sの液滴Dsが付着する(状態A2参照)。
【0041】
次に、駆動制御部11aは、回動モータ13を駆動して分注プローブ10bを回動し、分注プローブ10b下端を検体容器9内面の液滴捕捉部9bに接近させる(ステップS108)。これにより、分注プローブ10b下端に付着した検体Sの液滴Dsが、図8に示すように、液滴捕捉部9bの突起Pに接触する(状態A3参照)。このとき、図9に示すように、液滴Dsは、分注プローブ10b下端との接触面積よりも突起Pとの接触面積の方が大きい。このため、液滴Dsは、分注プローブ10b下端との間の表面張力よりも突起Pとの間の表面張力の方が大きくなる。
【0042】
次いで、駆動制御部11aは、昇降モータ14を駆動し、分注プローブ10bを所定位置まで上昇させる(ステップS110)。このとき、分注プローブ10bの下端に付着していた液滴Dsは、表面張力によって液滴捕捉部9bの突起Pに捕捉され、図10に示すように、突起Pの下部に付着する。これにより、分注プローブ10bは、図8に示すように、下端から検体Sの液滴Dsが除去される(状態A5参照)。
【0043】
その後、駆動制御部11aは、回動モータ13を駆動し、分注プローブ10bを吐出位置へ回動させる(ステップS112)。次に、駆動制御部11aは、昇降モータ14を駆動して反応容器5内へ分注プローブ10bを下降させ、ポンプ駆動機構15を駆動して分注プローブ10bから反応容器5へ検体を吐出させる(ステップS114)。
【0044】
次いで、駆動制御部11aは、プローブ駆動機構12とポンプ駆動機構15を駆動して分注プローブ10bを洗浄槽10dへ移動し、分注プローブ10bの内外を洗浄水で洗浄する(ステップS116)。その後、駆動制御部11aは、総ての検体の分注が終了したか否かを判定する(ステップS118)。このとき、駆動制御部11aは、自動分析装置1を管理するホストコンピュータから制御部25に入力された分析情報を予め制御部25から読み出しておき、この分析情報を利用して判定する。
【0045】
総ての検体の分注が終了している場合(ステップS118,Yes)、駆動制御部11aは、上述した一連の分注動作を終了する。一方、総ての検体の分注が終了していない場合(ステップS118,No)、駆動制御部11aは、ステップS100に戻り、引き続く工程を繰り返す。
【0046】
以上のように、検体容器9は、挿通口9a近傍の内面に複数の突起Pからなる液滴捕捉部9bが設けられている。そして、検体分注装置10は、検体を吸引した分注プローブ10bを検体容器9から引き出す際、挿通口9a近傍の内面の液滴捕捉部9bに分注プローブ10bの下端を接近させ、付着した検体の液滴を表面張力によって液滴捕捉部9bに捕捉させて除去している。
【0047】
従って、本発明によれば、検体吸引の際に分注プローブ10b下端に付着する検体の液滴を、反応容器5へ吐出する前に簡易に除去することができる。このため、検体分注装置10及びこの検体分注装置10を備えた自動分析装置1は、吸引した液体試料を反応容器5に吐出する際、分注プローブ10bに付着した液滴が吐出される分注対象の検体に混入せず、検体の分注精度が向上し、分析精度の信頼性を高めることができる。
【0048】
ここで、分注プローブ10b下端に付着する検体の液滴Dsが小さいと、液滴Dsと分注プローブ10b下端との間の表面張力が低下し、液滴Dsが液滴捕捉部9bに捕捉され難くなる。但し、液滴Dsが液滴捕捉部9bに捕捉されるのに十分な大きさか否かは、液滴Dsの大きさをモニタしないと判定できない。
【0049】
このため、検体分注装置10は、図11に示すように、分注プローブ10b下端を検体容器9内面の液滴捕捉部9bに接近(状態A3参照)させた後、目標吐出量よりも少ない量の検体を分注プローブ10bから予備吐出させ、液滴Dsを大きく成長させる(状態A4参照)。このように液滴Dsを大きく成長させると、分注プローブ10b下端に付着した液滴Dsと突起Pとの接触面積、従って表面張力が増大し、液滴Dsが検体容器9の液滴捕捉部9bに捕捉され易くなる。従って、この検体の予備吐出は、上述の分注方法におけるルーチンのステップとして、ステップS108の直後に行うことが好ましい。
【0050】
(変形例1)
また、検体容器9は、液滴捕捉部9bを含む検体容器9の素材自体の検体に対する親和性が分注プローブ10bの検体に対する親和性に比べて相対的に低いと、液滴Dsは液滴捕捉部9bに捕捉され難くなる。このため、検体容器9は、図12に示すように、液滴捕捉部9bの表面及び液滴捕捉部9bの上下の領域に検体に対する親和性を付与した親和性付与部Cを形成するとよい。このとき、親和性付与部Cは、検体に対する親和性が分注プローブ10bに比べて相対的に高くなればよく、例えば、ポリシラザン(無機ポリマー)等の無機溶剤を塗布することにより、空気と反応して親水性の石英ガラス膜が形成される。また、液滴捕捉部9b上下の親和性付与部Cの領域は、分注プローブ10bに付着すると予測される液滴Dsの最大直径に対応した幅(=2R)に設定する(図5参照)。ここで、親和性付与部Cは、薬剤に代えて、検体容器9の該当部分をサンドブラストや表面腐食処理等によって微細な凹凸面とすることで形成してもよい。但し、検体容器9の素材として液滴Dsに対する親和性を有する材料を用いる方がよりシンプルという点で好ましい。一方、上記とは逆に、分注プローブ10bに検体に対する親和性が低いフッ素樹脂溶液又はシリコーン樹脂溶液等の薬剤を塗布してもよい。
【0051】
(変形例2)
更に、検体容器9は、図2に示す液滴捕捉部9bに代えて、複数の突起Pを上下に複数段、例えば、図13に示すように、上下に2段形成して液滴捕捉部9bとしてもよい。この場合、上下に複数段形成する複数の突起Pは、上下方向に隣り合う突起P間で配置をずらした千鳥配置にしてもよい。このように、検体容器9は、複数の突起Pを近接させて配置し、或いは複数の突起Pを上下複数段形成することによって液滴捕捉部9bを構成すると、分注プローブ10bに付着する検体の液滴と突起Pとの接触面積を増加させることができる。
【0052】
(変形例3)
一方、検体容器9は、液滴捕捉部9bを上述した複数の突起Pに代えて、図14及び図15に示すように、液滴捕捉部9bを周方向に沿って形成した凸条としてもよい。
【0053】
(変形例4)
また、検体容器9は、図16及び図17に示すように、凸条からなる液滴捕捉部9bを下方から上方に向かって高さが低くなる複数段、例えば、3段の液滴捕捉部9b1〜9b3としてもよい。このとき、液滴捕捉部9b1〜9b3は、頂部を結ぶ直線の傾きが分注プローブ10b下端のテーパ角度と等しくなるようにそれぞれの高さを設定する。このようにすると、分注プローブ10b下端を検体容器9内面の液滴捕捉部9bに接近させた際、分注プローブ10bに側方から過剰な応力が作用するのを避けることができ、分注プローブ10bを長期に亘って使用することができる。
【0054】
尚、図13〜図17に示す検体容器9も、液滴捕捉部9bの表面及び液滴捕捉部9bの上下の領域に、検体に対する親和性を付与した親和性付与部Cを形成してもよい。
【0055】
(実施の形態2)
次に、本発明の検体容器にかかる実施の形態2について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図18は、実施の形態2の検体容器を示す斜視図である。図19は、図18に示す検体容器の挿通口近傍を拡大した断面正面図である。なお、実施の形態2の検体容器は、実施の形態1で説明した検体分注装置10を備えた自動分析装置1において実施の形態1の分注方法を適用して使用される。
【0056】
検体容器9Aは、図18及び図19に示すように、挿通口9a近傍の内面に液滴捕捉部9cが形成されている。液滴捕捉部9cは、例えば、検体に対する親和性を有する親和性薬剤を塗布した後、乾燥させて形成するが、検体に対する親和性が分注プローブ10bよりも相対的に高ければよい。
【0057】
検体容器9Aは、以上のように、挿通口9a近傍の内面に液滴捕捉部9cが形成されている。このため、検体分注装置10は、検体を吸引した分注プローブ10bを検体容器9Aから引き出す際、挿通口9a近傍の液滴捕捉部9cに分注プローブ10bの下端を接近させる。
【0058】
これにより、分注プローブ10bは、図20に示すように、下端に付着した検体の液滴Dsが液滴捕捉部9cに接触する。このとき、液滴捕捉部9cは、分注プローブ10bよりも検体に対する親和性が相対的に高いので、液滴Dsとの表面張力が分注プローブ10bとの表面張力よりも大きくなる。このため、分注プローブ10bを上昇させると、液滴捕捉部9cは、接触した液滴Ds分注プローブ10bの下端に付着した検体の液滴Dsを表面張力によって捕捉し、分注プローブ10bの下端から除去してしまう。
【0059】
従って、検体容器9Aは、検体吸引の際に分注プローブ10b下端に付着した検体の液滴を、反応容器4へ吐出する前に簡易に除去することができる。このため、検体容器9Aを使用することにより検体分注装置10及びこの検体分注装置10を備えた自動分析装置1は、吸引した液体試料を反応容器5に吐出する際、分注プローブ10bに付着した検体が吐出される分注対象の検体に混入せず、検体の分注精度が向上し、分析精度の信頼性を高めることができる。
【0060】
また、実施の形態2の検体容器9Aは、液滴捕捉部9bのように突起Pや凸条を使用せず、挿通口9a近傍の内面に検体に対する親和性が分注プローブ10bよりも相対的に高い親和性薬剤を塗布して液滴捕捉部9cを形成するので、実施の形態1の検体容器9よりも製造が簡単になるという利点を有している。
【0061】
ここで、実施の形態2の液滴捕捉部9cは、検体に対する親和性が分注プローブ10bよりも相対的に高ければよい。このため、上記とは逆に、分注プローブ10bに検体に対する親和性が低いフッ素樹脂溶液又はシリコーン樹脂溶液等の薬剤を塗布すると、検体容器9Aの内面全体が相対的な液滴捕捉部となり、分注プローブ10b下端に付着する検体の液滴を捕捉することができる。
【0062】
尚、上記の実施の形態は、試料容器が検体容器の場合について説明したが、試料容器と分注対象は、試薬容器と試薬であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の分注装置を備えた自動分析装置を示す概略構成図である。
【図2】実施の形態1の試料容器である検体容器を示す斜視図である。
【図3】図2に示す検体容器を挿通口側から見た平面図である。
【図4】図2に示す検体容器を挿通口の直径上で切断した縦断面図である。
【図5】図4に示す検体容器のA部拡大図である。
【図6】本発明の分注装置の概略構成を示す斜視図である。
【図7】本発明の分注方法を説明するフローチャートである。
【図8】検体を分注する際の分注プローブの位置の変化と分注プローブに付着した液滴を示す図である。
【図9】分注プローブ下端に付着した液滴が液滴捕捉部の突起に接触した状態を示す液滴捕捉部の拡大断面図である。
【図10】分注プローブを図9に示す位置から上昇させ、分注プローブに付着した液滴が液滴捕捉部の突起に捕捉されて突起の下部に付着した状態を示す液滴捕捉部の拡大断面図である。
【図11】検体を予備吐出させて、分注プローブ下端に付着した液滴を大きく成長させる状態示す検体容器の断面図である。
【図12】実施の形態1の検体容器の第1の変形例を示す斜視図である。
【図13】実施の形態1の検体容器の第2の変形例を示す斜視図である。
【図14】実施の形態1の検体容器の第3の変形例を示す斜視図である。
【図15】実施の形態1の検体容器の第3の変形例を示すもので、挿通口近傍の液滴捕捉部を含む拡大断面図である。
【図16】実施の形態1の検体容器の第4の変形例を示す斜視図である。
【図17】実施の形態1の検体容器の第4の変形例を示すもので、挿通口近傍の液滴捕捉部を含む拡大断面図である。
【図18】実施の形態2の検体容器を示す斜視図である。
【図19】図18に示す検体容器の挿通口近傍の液滴捕捉部を含む拡大断面図である。
【図20】液滴捕捉部に分注プローブ下端に付着した液滴が接触した状態を示す検体容器の挿通口近傍の液滴捕捉部を含む拡大断面図である。
【符号の説明】
【0064】
1 自動分析装置
2 第1試薬テーブル
3 第2試薬テーブル
4 反応テーブル
5 反応容器
6 第1試薬分注装置
7 第2試薬分注装置
8 検体容器移送部
9 検体容器
9a 挿通口
9b 液滴捕捉部
10 検体分注装置
10b 分注プローブ
11 駆動部
11a 駆動制御部
12 プローブ駆動機構
13 回動モータ
14 昇降モータ
15 ポンプ駆動機構
16 ポンプ
17 弁
21 撹拌部
22 測光部
23 洗浄部
25 制御部
26 入力部
27 表示部
Ds 液滴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体又は試薬を含む液体試料を保持し、挿通口から挿通される分注プローブによって前記液体試料が吸引され、他の容器に吐出される試料容器であって、
前記挿通口の近傍内面に前記分注プローブの下端に付着する液体試料の液滴を表面張力によって捕捉する液滴捕捉部が設けられていることを特徴とする試料容器。
【請求項2】
前記液滴捕捉部は、前記分注プローブの下端を接近させた際、前記分注プローブ下端に付着した液体試料の液滴を捕捉する複数の突起又は凸条からなることを特徴とする請求項1に記載の試料容器。
【請求項3】
前記液滴捕捉部は、前記分注プローブに比べて前記液体試料に対する親和性が相対的に高くなる親和性処理が施されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の試料容器。
【請求項4】
検体又は試薬を含む液体試料を保持した試料容器の挿通口から挿通した分注プローブに液体試料を吸引させ、吸引した液体試料を他の容器に吐出させる駆動手段と、前記駆動手段の作動を制御する駆動制御手段とを備えた分注装置であって、
前記駆動制御手段は、前記液体試料を吸引した分注プローブを前記挿通口から引き出す際、前記駆動手段を制御して前記分注プローブ下端を前記挿通口の近傍内面に設けられた液滴捕捉部に接近させ、前記分注プローブ下端に付着した液体試料の液滴を表面張力によって前記液滴捕捉部に捕捉させることを特徴とする分注装置。
【請求項5】
前記駆動制御手段は、前記分注プローブの下端を前記液滴捕捉部に接近させた際、前記分注プローブに目標吐出量よりも少ない量の前記液体試料を予備吐出させることを特徴とする請求項4に記載の分注装置。
【請求項6】
検体と試薬とを含む液体試料を反応させ、反応液を分析する分析装置であって、
試料容器の挿通口から分注プローブを挿通して液体試料を吸引し、吸引した液体試料を他の容器に吐出して液体試料を分注する請求項4又は5に記載の分注装置を備え、
前記液体試料を吸引した分注プローブを前記挿通口から引き出す際、前記分注プローブ下端を前記挿通口の近傍内面に設けた液滴捕捉部に接近させ、前記分注プローブ下端に付着した液体試料の液滴を表面張力によって前記液滴捕捉部に捕捉させることを特徴とする分析装置。
【請求項7】
駆動手段によって駆動される分注プローブによって検体または試薬を含む液体試料を試料容器から吸引する吸引工程と、
吸引した前記液体試料を吐出する吐出工程と、
前記分注プローブを洗浄する洗浄工程と、
を含む分注方法において、
前記吸引工程で前記液体試料を吸引した後、前記分注プローブの下端に付着した液体試料の液滴を前記試料容器に設けた液滴捕捉部との表面張力によって捕捉する捕捉工程を含むことを特徴とする分注方法。
【請求項8】
前記捕捉工程は、前記分注プローブの下端を前記液滴捕捉部に接近させ、付着した液体試料の液滴を前記液滴捕捉部に捕捉させることを特徴とする請求項7に記載の分注方法。
【請求項9】
前記捕捉工程は、前記分注プローブの下端を前記液滴捕捉部に接近させた際、目標吐出量よりも少ない量の液体試料を前記分注プローブから予備吐出し、前記分注プローブ下端に付着した前記液体試料と前記液滴捕捉部との接触面積を増大させることを特徴とする請求項8に記載の分注方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−117222(P2010−117222A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−289919(P2008−289919)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(510005889)ベックマン・コールター・インコーポレーテッド (174)
【Fターム(参考)】