説明

試料容器保管庫

【課題】簡易な構造であって大量の試料容器を安定して収容するとともに、収容される試料容器の入出庫が容易な試料容器保管を提供すること。
【解決手段】試料を封入した試料容器MTを所望の環境のもとで保管管理する試料容器用保管庫100であって、試料容器MTを入出庫する開閉扉140を複数設けたハウジング110と、ハウジング110内に開閉扉140のそれぞれに対向して奥行方向に配置されて移動自在である複数の無端帯状体120と、無端帯状体120の側面に配置されて試料容器MTを保持する容器支持体130とを備えている試料容器保管庫100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学、生化学、生体学、製薬などの基礎研究あるいは応用研究において、大量の生体サンプル、臨床サンプル、化学合成物などの試料を検査等のために保管するマイクロテストチューブのような、封入された試料を保管する試料容器保管庫に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、化学、生化学、生体学、製薬などの基礎研究あるいは応用研究においては、大量の生体サンプル、臨床サンプル、化学合成物などの試料を検査等のために保管している。例えば、創薬研究プロセスにおいても、生体活性等を調査するため、多種多様な検査、実験が行われているが、この中では、微量で多数の試料を取り扱うことが必要であり、通常マイクロ(テスト)チューブに封入された試料を、安定した環境のもとで大量に保管することが要請されていた。
このようなマイクロチューブは、平板状のラックに多数収容されて、冷凍庫のような、湿度、温度を一定に管理された収容庫に保管されることが通常であった。
【0003】
しかし、近年の医学、薬学、臨床、生化学、農学等におけるバイオ技術等の著しい進展に伴い、数多くの試料を迅速に扱う作業が増大していて、数多くの試料をマイクロチューブのような容器に封入して保管管理することが重要になってきている。
このため、より多数の試料を収容するため、16行24列で384個と多数の区画を有するラックを、多数収容庫に収容するものも現れている。
【0004】
また、遠心分離機CFと結合された収容機構として、マイクロチューブMTのような試料容器を複数の収容部を備えた試料容器支持体に収容し、これを多列にして保管するようにしたことも提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。
このような従来の試料容器保管庫として、例えば、図12に示されるように、遠心分離機CFの前段に待機ステーション500が配置されていて、この待機ステーション500には、多数のマイクロチューブMTを保持する試料容器キャリア510が、矢印で示す移動方向に複数列配置されている。
当該試料容器キャリア510は、概略の構造が図13又は図14に示されるように、各々一つの試料容器充填孔512を備えた試料容器保持エレメント511をジョイント513により複数結合した構造を有するものであり、待機ステーション500(収容機構)においては、マイクロチューブMTを保持して直線状とされた試料容器キャリア510が多数整列されている。
当該試料容器キャリア510が遠心分離機CFに収容されると、試料容器キャリア510が遠心分離機CFの内周面に沿って、各試料容器保持エレメント510をマイクロチューブを保持した状態のまま円弧状に配列されるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−303850号公報(段落[0060]〜[0066]、図1、図2、図22、図23)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、前述したような多数の区画を有するラックを使用する場合、各区画に稠密に試料容器が収容されて収容効率を向上することはできるが、ラック一面のみでは収容可能な試料容器の数に限界があり、かといってこれを多段に積載して収容する試料容器の数を増加すると、下段のラックから試料容器を取り出そうとする際に上段のラックがその取出し作業の障害となり、収容された試料容器の出し入れが不自由となってしまうという問題があった。
また、前述した試料容器キャリアを使用する場合にも、基本的には平面内に多数の試料容器を収容するのみであるから、収容できる試料容器の数にもおのずから限界があり、近年の大量、迅速に取り扱うという要請に対し充分対応できなくなってきている、という問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、従来の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、簡易な構造であって大量の試料容器を安定して収容するとともに、試料容器の入出庫が容易な試料容器保管庫を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本請求項1に係る発明は、試料を封入した試料容器を所望の環境のもとで保管管理する試料容器保管庫であって、前記試料容器を入出庫する開閉扉を複数設けたハウジングと、該ハウジング内に前記開閉扉のそれぞれに対向して奥行方向に配置されて移動自在である複数の無端帯状体と、該無端帯状体の側面に配置されて前記試料容器を保持する容器支持体とを備えていることにより、前述した課題を解決したものである。
【0009】
本請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の構成に加えて、前記開閉扉及び無端帯状体が、前記ハウジング内で上下方向及び幅方向に複数配置されていることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【0010】
本請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に係る発明の構成に加えて、前記容器支持体が、前記無端帯状体に対してピン等の円柱状部材で回動自在に設置され、前記試料容器が前記容器支持体に自重で安定して保持されていることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【0011】
本請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに係る発明の構成に加えて、前記容器支持体が、前記無端帯状体の一方の側又は両側に多数配置されていることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【0012】
本請求項5に係る発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに係る発明の構成に加えて、前記容器支持体が、前記無端帯状体の側面に長手方向に千鳥状に配置されていることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【0013】
本請求項6に係る発明は、請求項1乃至請求項5のいずれかに係る発明の構成に加えて、前記無端帯状体が前記ハウジングの両側に配置され、前記容器支持体が両側に配置された無端帯状体にさし渡して多数配置されていることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【0014】
本請求項7に係る発明は、請求項6に係る発明の構成に加えて、前記容器支持体が、複数の試料容器を保持可能な横長細幅形状であることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【0015】
本請求項8に係る発明は、請求項1乃至請求項7のいずれかに係る発明の構成に加えて、前記無端帯状体が可撓性ベルトであることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【発明の効果】
【0016】
そこで、本請求項1に係る発明によれば、試料を封入した試料容器を所望の環境のもとで保管管理する試料容器保管庫であって、試料容器を入出庫する開閉扉を複数設けたハウジングと、ハウジング内に開閉扉のそれぞれに対向して奥行方向に配置されて移動自在である複数の無端帯状体と、無端帯状体の側面に設けられて試料容器を保持する容器支持体とを備えていることにより、無端帯状体の上下2段にわたって多数の試料容器を無端帯状体の側面に配置された容器支持体に保持されて移動自在に保管されるため、収容面を一面しか有していなかった従前のラック等の試料容器保管装置と比べ、大量の試料容器をハウジング内に収容することができるとともに、奥行方向に多数保管されている試料容器を無端帯状体を移動させて適宜に開閉扉の位置まで移動させてこの位置で試料容器を挿入、取出しを実行するため、他の試料容器に阻害されることなく容易に入出庫作業を実行することができる。
また、複数の開閉扉のそれぞれ毎に入出庫作業を独立して行うことができるため、入出庫作業を各開閉扉毎に同時並行的に遂行して入出庫作業を大幅に迅速化することができる。
【0017】
次に、本請求項2に係る発明の試料容器保管庫によれば、請求項1に係る発明が奏する効果に加えて、開閉扉及び無端帯状体が、ハウジング内で上下方向に複数、幅方向に複数配置されていることにより、試料容器を上下方向にも多段に収容するため、試料容器保管庫に収容する試料容器の数を従前の平面型の収容装置と比べはるかに大量に収容することができるとともに、移動自在の無端帯状体を使用していて奥行方向に多数保管されている試料容器を、無端帯状体とともに開閉扉の位置まで移動させて、この位置で試料容器を挿入、取出しを実行するため、試料容器を容易にかつ迅速に入出庫することができる。
【0018】
本請求項3に係る発明の試料容器保管庫によれば、請求項1又は請求項2に係る発明が奏する効果に加えて、容器支持体が無端帯状体に対してピン等の円柱状部材で回動自在に設置され、試料容器が容器支持体に自重で安定して保持されていることにより、試料容器を容器支持体に保持したときに、移動自在な無端帯状体のどの位置にあっても、試料容器が回転、傾動することなく常に一定の姿勢、即ちキャップ部分を上方に維持した姿勢のままで保持されるため、封入された試料に転動、撹拌など無用の影響を与えることなく安定して保管することができる。
【0019】
本請求項4に係る発明の試料容器保管庫によれば、請求項1乃至請求項3のいずれかに係る発明が奏する効果に加えて、容器支持体が無端帯状体の一方の側又は両側に多数配置されていることにより、一方の側に配置されている場合には各無端帯状体の各位置に対して試料容器を一対一に対応付けて保管するため、試料容器を無端帯状体上の保管位置と対応付けて誤りなく管理することができるとともに、試料容器保管庫を自動化して、無端帯状体の駆動や取出し機構を自動化するときにも、誤りなく収容、保管、出庫を実行することができる。また、両側に配置されている場合には、各々の無端帯状体に保持される試料容器の数を倍増させるため、それぞれの無端帯状体を一層有効に利用して多数の試料容器を保管することができる。
【0020】
本請求項5に係る発明の試料容器保管庫によれば、請求項1乃至請求項4のいずれかに係る発明が奏する効果に加えて、容器支持体が無端帯状体の側面に容器支持体の長手方向の寸法より短いピッチで千鳥状に配置されていることにより、無端帯状体の長手方向での容器支持体の配置密度を向上するため、さらに多くの試料容器を保管することができる。
【0021】
本請求項6に係る発明の試料容器保管庫によれば、請求項1乃至請求項5のいずれかに係る発明が奏する効果に加えて、無端帯状体がハウジングの両側に配置され、容器支持体が両側に配置された無端帯状体にさし渡して多数配置されていることにより、無端帯状体の数は両側の一対としてもこれらにさし渡した容器支持体に試料容器を保持するため、容器支持体が両端で支持されるので保持される試料容器をより安定して支持することができるとともに、試料容器保管庫内の移動機構の数を減少して試料容器保管庫の構造を簡素化することができる。
【0022】
本請求項7に係る発明の試料容器保管庫によれば、請求項6に係る発明が奏する効果に加えて、容器支持体が複数の試料容器を保持可能な横長細幅形状であることにより、両側に配置された一対の無端帯状体に支持される容器支持体のそれぞれに多数の試料容器が保持されるため、無端帯状体の数を最小限としながらも、いっそう多数の試料容器を保管することができる。
【0023】
本請求項8に係る発明の試料容器保管庫によれば、請求項1乃至請求項7のいずれかに係る発明が奏する効果に加えて、無端帯状体が可撓性ベルトであることにより、その移動が滑らかで打撃音、摩擦音等が少ないため、低騒音で使用することができるとともに、ベルト自体が軽量であるため、容器の支持機構を小型・軽量とすることができる。
また、ベルトの場合、チェーンのように相互に摺動する部分もなくしかも潤滑剤を使用することがないため、塵埃が発生する可能性が非常に小さくクリーンな環境で使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施例である試料容器保管庫100の斜視図。
【図2】図1に示す試料容器保管庫100の要部拡大斜視図。
【図3】図2に示す試料容器保管庫における要部の(a)側面図、および(b)平面図。
【図4】本発明の第1実施例の変形例である試料容器保管庫200’の要部平面図。
【図5】本発明の第2実施例である試料容器保管庫における要部拡大斜視図。
【図6】図5に示す試料容器保管庫における要部の(a)側面図、および(b)平面図。
【図7】本発明の第2実施例に使用される容器支持体における装着部の拡大図。
【図8】本発明の第2実施例の変形例である試料容器保管庫200’における要部拡大図。
【図9】本発明の第3実施例である試料容器保管庫300の要部斜視図。
【図10】図9に示す試料容器保管庫300に使用される容器支持体の斜視図。
【図11】本発明の第3実施例の変形例である試料容器保管庫300’の要部拡大図。
【図12】従来の試料容器保管装置500。
【図13】図12に示す試料容器保管装置500に使用される試料容器キャリアの斜視図。
【図14】図13に示す試料容器キャリアの使用態様図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、試料を封入した試料容器を所望の環境のもとで保管管理する試料容器保管庫であって、試料容器を入出庫する開閉扉を複数設けたハウジングと、ハウジング内に開閉扉のそれぞれに対向して奥行方向に配置されて移動自在である複数の無端帯状体と、無端帯状体の側面に配置されて試料容器を保持する容器支持体とを備えていて、簡易な構造であって大量の試料容器を安定して収容するとともに収容される試料容器の入出庫が容易なものであれば、その具体的な態様はいかなるものであっても構わない。
【0026】
例えば、本発明の試料容器保管庫のハウジングは、従前のデシケータのように透明なものでもよいが、保管環境が、低温、低湿度であるならば、周囲に断熱材など配して、一部に二重ガラス窓を設けたような、断熱構造を有するようにしてもよい。
また、本発明の試料容器保管庫に使用する無端帯状体は、ピンプレートとブシュプレートとを交互に連設したチェーン状のものでもよいし、樹脂などで一体に成形された可撓性の無端ベルト状のものでもよい。
チェーン状のものとした場合には、ピン部分に容器支持体を回動自在に支承すると容器支持体を支持するための部材を余計に設ける必要がない点、構造を簡便にすることができる。素材としては、プラスチックチェーンでも、金属チェーンでも使用可能であるが、保管環境により、潤滑剤使用の当否あるいは自己潤滑性、低温における強度の低下等の特性に基づき、適宜の材料を選択、採用して構成すると、例えば、低温、低圧のような特殊な環境の下でも、長期にわたり劣化することなく安定して使用することができる。
【0027】
無端ベルト状とした場合には、当該無端ベルトは歯付ベルトでもよいし、歯を有しない平ベルトでも構わないが、ベルト自体に相互運動する部分がないため、騒音を発生する可能性を減ずることができる。
また、無端ベルトの場合には長手方向への強度は高いものの、上下、左右等の側方には撓み易いため、試料容器が軽量である場合はベルト単独で形成してもよいが、側板、あるいはガイドレールを設けるなど、両側方向、上下方向への振れ、傾きを防止するような構造部材を設置して安定性を確保するようにしてもよい。
何れの無端帯状体を使用する場合にも、ラックに多数の試料容器を装着する場合ほど稠密に並ぶことはないので、試料容器の間を気流が流通し易く、温度、湿度などの保管環境の制御が容易となる。
【0028】
また、無端帯状体を駆動する機構としては、操作者が手動で無端帯状体を駆動してもよいし、無端帯状体のハウジング後端側に、モータ等の駆動装置を設け、操作者がスイッチをオン、オフして駆動するようにしてもよい。
また、モータ等の駆動装置を使用して試料容器保管庫の自動化を図る場合には、無端帯状体に配置した容器支持体のそれぞれに特定のアドレスを与え、アドレス毎に保管試料に関するデータを記憶・管理するようにすると、収容されている試料の保管状況を電子ファイルとして管理できるようになって、大量に試料があってもその管理が非常に容易になる。
【0029】
逆に、携帯して運ぶなど可搬性を優先させたい場合には、モータ等の駆動機構を取り付けることなく、開閉扉、無端帯状体をすべて手動で駆動するようにして、軽量、簡素なものとして構成してもよい。
【実施例1】
【0030】
以下、本発明の第1実施例である試料容器保管庫100を図1乃至図3に基づいて説明する。
ここで、図1は、本発明の第1実施例である試料容器保管庫100の斜視図であり、図2は、図1に示す試料容器保管庫100における要部の拡大斜視図であり、図3は、図2に示す試料容器保管庫100における要部の(a)側面図、および(b)平面図である。
【0031】
図1に示すように、本発明の第1実施例である試料容器保管庫100は、全体として略直方体の形状を呈するものであり、試料を低温、低湿度で保管する場合には、断熱構造を備えてハウジング110を構成している。
そして、試料容器であるマイクロチューブMTを入出庫する側、すなわち前面側に、縦3列、横5列で、計15の開閉自在の開閉扉140を備えている。もちろん、開閉扉の数レイアウトは、保管すべき試料容器の数や試料容器保管庫100を置くスペース等の条件により適宜に決定すればよく、本実施例1のような数、レイアウトに限るものではない。
各々の開閉扉140の後方には、それぞれ、無端帯状体である容器保持チェーン120が奥行方向に配置したスプロケット122に張設され、当該容器保持チェーン120のピン121の部分に、それぞれ、マイクロチューブMTを収容する容器支持体130が回動自在に設置されている。
【0032】
容器支持体130は、容器保持チェーン120のピン121に回動自在に装着される支持軸132と、当該支持軸132と一体的に形成されてマイクロチューブMTを保持する容器搭載部131とから構成されている。
容器支持体130は、上方視で概ね円形を呈する形状であり、中央にマイクロチューブMTを吊下、保持する容器保持孔133を穿設されている。
このような形状の容器支持体130に、試料が封入されたマイクロチューブMTを当該容器保持孔133に吊下して搭載すると、マイクロチューブMTの上方のフランジ部で吊下げられる結果、マイクロチューブMTがその自重によりキャップ部分を上方に向けた状態で安定して容器支持体130に保持される。
【0033】
図2に示されるように、容器支持体130が容器保持チェーン120のピンに対して回動自在であるため、開閉扉140付近に配置したスプロケット122周りに回動する際にも、支持軸132が容器保持チェーン120のピン121に対して相対回動して、あるいはピン121とともに回動して、容器支持体130及びマイクロチューブMTの姿勢を維持したままで移動することが可能となる。
したがって、容器保持チェーン120が下方に位置する場合でも、マイクロチューブMTはキャップ部を上方に向けた姿勢を維持したまま容器支持体130に保持されるので、試料の封入されたマイクロチューブMTが容器保持チェーン120の駆動に伴って回転する等して、マイクロチューブMT内の試料が傾動したり撹拌したりすることがなくなり、試料に物理的刺激を与えることなく安定して保管することが可能となる。
【0034】
マイクロチューブMTを入出庫する場合には、操作者が、開閉扉140を開閉し、スプロケット122を回動して容器保持チェーン120を移動させ、所望の位置にマイクロチューブMTを挿入あるいは取出すので、マイクロチューブMTを入出庫する際にも、他のマイクロチューブMTが入出庫作業の障害となることはない。
【0035】
試料容器保管庫100には、このような容器保持チェーン120が開閉扉140の数と同数列及び同数段にわたり並設されていて、それぞれの開閉扉140毎に入出庫作業を行うことができるので、複数の作業者が別々の開閉扉部分で入出庫作業を行うことも可能である。
また、容器保持チェーン120の上段側に配置されるマイクロチューブMTと、下段側に配置されるマイクロチューブMTとの間に、略チェーン1ピッチ分程度の空間が確保されているため、冷却媒体等の流通が確保され、温度、湿度などの制御を円滑に行うことができる。
【0036】
上述した第1実施例の変形である第1変形例に使用される試料保持チェーン120’が図4に示されているが、第1実施例では、容器保持チェーン120の片側にのみ容器支持体130が配置されているのに対し、第1変形例の場合には、容器保持チェーン120’の両側に容器支持体130’が配置されている。
したがって、この第1変形例では、一つの容器保持チェーン120’に対して第1実施例の場合と比べて2倍の数のマイクロチューブMTを収容することができるので、試料容器保管庫100内のスペースを一層効率的に活用することができる。
【0037】
なお、本第1変形例の場合、一つの開閉扉140において2列のマイクロチューブMTの入出庫が行われるが、このような配置についてはさらに変形が可能であり、容器保持チェーン120’を左右に並んだ開閉扉140の間に配設し、両側に並んだマイクロチューブMTの列毎に開閉扉140を配置して、各々の開閉扉140から入出庫するように配置することもできる。
この場合には、容器保持チェーン120’を半数として、試料容器保管庫100の機構を簡素化することができる。
【0038】
また、マイクロチューブMTの収容数を増大することを優先させる場合は、各容器支持体130に1本毎マイクロチューブMTを保持させるのではなく、各容器支持体130に、例えば2本毎、というように複数本のマイクロチューブMTをそれぞれ吊下、保持するようにすることも可能であり、この場合には、各容器保持チェーン130当りのマイクロチューブMTの保持数を大幅の増大させて、試料容器保管庫100内へのマイクロチューブMT保管数を飛躍的に増大させることができる。
【0039】
以上のようにして得られた本第1実施例及び第1変形例の試料容器保管庫100は、マイクロチューブMTを入出庫する開閉扉140を複数設けたハウジング110と、ハウジング110内に開閉扉140のそれぞれに対向して奥行方向に配置されて移動自在である複数の容器保持チェーン120と、容器保持チェーン120の片側若しくは両側側面に配置されてマイクロチューブMTを保持する容器支持体130とを備えていることにより、各容器保持チェーン120毎に上下に2層、あるいは、多段に配置された容器保持チェーン120の段数の2倍に相当する数の層、にわたって配置される容器支持体130に、それぞれマイクロチューブMTを保管するようにして、簡易な構造であっても大量のマイクロチューブMTを保管することができるとともに、収容されるマイクロチューブMTの入出庫に当り、他のマイクロチューブMTやマイクロチューブMTを保持する機構が邪魔になることなく容易に挿入、取出しを行うことができる。
【0040】
また、容器支持体130が容器保持チェーン120に対して支持軸132により回動自在に支持され、マイクロチューブMTが容器支持体130に対し自重で安定して保持されているため、スプロケット122を駆動して容器保持チェーン120を移動させたとしても、封入されている試料を傾斜させたり撹拌してしまうことなく安定した状態で保持するため、物理的な刺激に敏感な試料であっても安心して保管することができるなど、その効果は甚大である。
【実施例2】
【0041】
次に、本発明の第2実施例である試料容器保管庫200について、図5乃至図7を参照して以下に説明する。
図5は、本発明の第2実施例である試料容器保管庫200における要部の拡大斜視図であり、図6は、図5に示す試料容器保管庫200における要部の(a)側面図、および(b)平面図であり、図7は、本発明の第2実施例に使用される容器支持体230における装着部の拡大図である。
本第2実施例の試料容器保管庫200は、前述した第1実施例の試料容器保管庫100において、無端帯状体を可撓性の容器保持ベルト220とし、当該容器保持ベルト220に容器支持体230を介してマイクロチューブMTを吊下、保持するようにしたものであり、第1実施例の試料容器保管庫100と共通する部分については下2桁を共通した200番代の符号を付して記載し、共通する部分についての詳細な説明は省略する。
【0042】
本第2実施例の試料容器保管庫200では、マイクロチューブMTを保持する無端帯状体として、歯付の可撓性ベルトである容器保持ベルト220を使用している。
当該容器保持ベルト220は、図5乃至図7に示されるように、ベルトの外側表面に所定のピッチP1で角柱状の回動支持部250が設けられ、これら回動支持部250の、側面視で略中央部に支持軸232を回動自在に装着し、当該支持軸232の両側に、マイクロチューブMTを挿通、吊下する容器保持孔233を備えた容器支持体230を配設している。
【0043】
当該容器支持体230を容器保持ベルト220に装着した部分が図7に拡大して示されているが、回動支持部235の略中央に挿通した支持軸232に対し、容器搭載部231の中心線を下方にδだけオフセットした状態で装着しているので、容器支持体230は、マイクロチューブMTを保持していない状態であっても、その自重により常にその上面が上方を向くように位置することとなる。
これにより、空いた容器支持体230の場合にも容器保持孔233が上を向いて開口しているため、マイクロチューブMTを挿入する場合にも、一々容器支持体230の向きを手作業で修正する必要がなく、マイクロチューブMTの入庫作業を一層容易に実行することができる。
【0044】
このように、容器支持体230を下方にオフセットして装着したことと、吊下、保持されるマイクロチューブMTの自重が容器支持体230に作用することとにより、容器支持体230に保持されたマイクロチューブMTは、容器保持ベルト220のどの位置にあっても、常にそのキャップ側を上方に位置した状態で容器支持体230に安定して保持される。
これにより、容器保持ベルト220を使用する第2実施例の試料容器保管庫200の場合にも、前述した第1実施例の試料容器保管庫100の場合と同様に、容器保持ベルト220に卷回した卷回歯車222を回動させて容器保持ベルト220を移動したとしても、マイクロチューブMTは常に一定の姿勢を維持した状態で試料容器保管庫200内で安定して保管される。
【0045】
なお、可撓性の歯付ベルトを容器保持ベルト220として使用する場合には、上下、左右への撓みが生じ易いので、容器支持体230の傾動を防止するため、容器保持ベルト220の両側に容器支持体230を配置して容器保持ベルト220の左右で重量のアンバランスが生ずることがないようにしているが、容器保持ベルト220の幅方向の剛性が高い場合には、前述の第1実施例と同様に容器保持ベルト220の一方の側にのみ、容器支持体230及びマイクロチューブMTを吊下、保持することもできる。
また、容器保持ベルト220の上下、左右方向の撓み易さを補強するには、容器保持ベルト220を卷回する卷回歯車222の間に、ガイドレールのような平板状のベルト支持機構を配して、当該ガイドレール上を容器保持ベルト220が摺動するようにすることも考えられる。
このようなベルト支持機構を設けると、容器保持ベルト220に保持されたマイクロチューブMTが上下、左右に振動することが防止されるので、保持するマイクロチューブMTを一層安定して保管することができる。
【0046】
図8に示されるのは、この第2実施例の試料容器保管庫200の変形である第2変形例であり、この第2変形例では、回動支持部250’及び支持軸232’を第2実施例に使用されている容器保持ベルト220よりも短いピッチP2で並設している。
当該第2変形例において、単に回動支持部250’等のピッチを短くしただけでは、前後の容器支持体230’の容器搭載部231’が重なってしまい、マイクロチューブMTが相互に接触したり、傾いたりと、保管状態に悪影響を与える虞がある。これを回避するために、本変形例では、支持軸232’を、それぞれ左右の一方を短く、他方を長く突出させる、というように、交互に長短突出させて、容器支持体230が千鳥状に配置されるようにして、容器搭載部231’が重ならないようにしている。
このように容器支持体230’を配置することにより、長手方向に並ぶマイクロチューブMTの密度を上げることが可能となり、一本の容器保持ベルト220’当りのマイクロチューブMTの保持数を増大させ、ひいては、試料容器保管庫200に収容する試料容器の数を増大させることができる。
【0047】
以上のようにして得られた、本第2実施例及び第2変形例の試料容器保管200によれば、無端帯状体を可撓性の容器保持ベルト220としたことにより、無端帯状体の構造を、チェーンのように外プレート、内プレート、ブシュ及びピンといような複数の部品を必要とすることのない簡単な構造とすることができるとともに、複数の部品が相互に摺動することのない構造でかつ可撓性の軟質材料で形成した結果、騒音の発生することの少ない静謐なものとできる。
また、容器保持ベルト220のとしたことにより、摩擦箇所がなく潤滑油を必要としないため、クリーンな環境で試料容器を保管することが可能となるとともに、小型、軽量に形成することが可能であるため、小型化した容器保持ベルト220を多数収容して試料容器保管庫200内に保管するマイクロチューブMTの数をさらに増大させたり、試料容器保管庫200全体を小型、軽量にして保管性とともに可搬性に優れるようにできるなど、その効果は甚大である。
【実施例3】
【0048】
本発明の第3実施例である試料容器保管庫300について、図9及び図10を参照して以下に説明する。
図9は、本発明の第3実施例である試料容器保管庫300の要部斜視図であり、図10は、図9に示す試料容器保管庫300に使用される容器支持体330の斜視図である。
第3実施例である試料容器保管庫300では、無端帯状体としてハウジング310の両側に一対の容器保持チェーン320を配置し、当該一対の容器保持チェーン320の間にさし渡して容器支持体330を配置している。
なお、第3実施例である試料容器用保管庫300についても、第1実施例の試料容器保管庫100、第2実施例の試料容器保管庫200と共通する部分については下2桁を共通した300番代の符号を付して記載し、共通する部分についての詳細な説明は省略する。
【0049】
容器支持体330の両端部には、その両側面に支持軸332が突出して形成されていて、当該支持軸332が容器保持チェーン320のピンに対して回動自在に装着されているので、容器支持体330は、容器保持チェーン320に対し相対的に回動自在となる。
図10に示されるように、容器支持体330は、横長でマイクロチューブMTの径より稍大きい程度の幅を有するもので、多数の容器保持孔333が穿設されている。
当該容器支持体330が、容器支持チェーン320の長手方向に多数並設されているので、一対の容器保持チェーン320に対し、多数のマイクロチューブMTを保持することができる。
【0050】
マイクロチューブMTが容器支持体330に吊下して保持されると、図10に示されるようにマイクロチューブMTの自重によりキャップ部が上方を向いた状態で安定して保持されるので、前述した第1実施例などと同様に、駆動ギヤを駆動して容器保持チェーン120を移動させたとしても、封入されている試料を傾斜したり撹拌したりすることがなく、安定した状態で保管することができる。
【0051】
本第3実施例の試料容器保管庫300の場合には、容器支持体330が、両端で容器保持チェーン320により支持されるので、容器支持体330が一方の端部でのみ支持される場合に比べ安定して支持される。また、マイクロチューブMTが容器支持体330とともに列単位で移動するので、マイクロチューブMTの入出庫は、各列の1又は複数毎に行う。
第3実施例の試料容器保管庫300の場合、高さ方向の各段毎に、最小限の数の容器保持チェーン320を設けるだけで済むにもかかわらず、各容器保持チェーン320の間には、左右方向及び奥行方向に多数のマイクロチューブMTを保持することができるとともに、これを上下、左右方向に多段、多列に設けることにより、莫大な数のマイクロチューブMTを保管することが可能となるが、両端に設けたスプロケット122を回転させるだけで、所望のマイクロチューブMTを開閉扉の位置まで移動させることができるため、マイクロチューブMTの入出庫にあたっても、他のマイクロチューブMTなどに邪魔されることなく、極めて簡便に挿入、取出しを実行することができる。
【0052】
また、本発明の第3実施例の変形である第3変形例の試料容器保管庫300’について、図11を参照して以下に説明する。
図11は、本発明の第3変形例である試料容器保管庫300’の要部拡大図である。
図11に示される第3変形例と第3実施例との相違は、無端帯状体としてチェーンに替えて可撓性の無端ベルトを使用していることである。
【0053】
第3変形例の試料容器保管庫300’でも、容器支持体330は図10に示されるような形態のものが使用され、ハウジング310内部の両側に配置した一対の容器保持ベルト320’に、当該容器支持体330がさし渡して装着されている。
容器保持ベルト320’への容器支持体330の装着は、基本的には第2実施例の試料容器保管庫200の場合と同様の構造が使用されていて、両側の容器保持ベルト320’のそれぞれに回転支持部350が装着され、これらに対して容器支持体330の両側の稍上方にオフセットして装着された支持軸332を回動自在に取り付けている。
したがって、本第3変形例でも、マイクロチューブMTが装着されると、マイクロチューブMTはその自重などにより、常に安定した姿勢を維持することができる。
また、前述した第3実施例の場合と同様に、上下左右方向に多段、多列に設けることにより、莫大な数のマイクロチューブMTを保管することが可能となるとともに、マイクロチューブMTの入出庫にあたっても、他のマイクロチューブMTなどに邪魔されることなく、極めて簡便に挿入、取出しを実行することができる。
【0054】
なお、第3実施例、第3変形例では、ハウジングの両側内部にそれぞれ容器保持チェーン320若しくは容器保持ベルト320’を配置しているが、試料容器保管庫を大型化する場合には、容器保持チェーン320若しくは容器保持ベルト320’を左右方向にも複数並設するようにしてもよい。
このようにすると、試料容器保管庫が大型化しても、容器支持体330の幅を過度に横長とせずにすむので、容器支持体330の撓みなどの変形を予防し、マイクロチューブMTを安定して保持することができる。
【0055】
以上のようにして得られた本第3実施例又は第3変形例である試料容器保管庫300は、無端帯状体である、容器保持チェーン320若しくは容器保持ベルト320’がハウジング310の両側に配置され、複数のマイクロチューブMTを保持可能な横長細幅形状である容器支持体330が、両側に配置された容器保持チェーン320若しくはベルト320’にさし渡して多数配置されていることにより、最小限の数の容器保持チェーン320若しくは容器保持ベルト320’を使用しつつも、各容器支持体330に多数のマイクロチューブMTを吊下保持させることにより、極めて多数のマイクロチューブMTを保管することが可能となり、試料容器保管庫300の内部を極めて効率的に使用することが可能となる。
【0056】
また、スプロケット322、卷回歯車322’などを動かすことで無端帯状体上に保持されたマイクロチューブMTを開閉扉340の位置まで移動させることで、マイクロチューブMTの入出庫を容易に実行することができるとともに、無端帯状体に吊下、保持された状態で移動するにもかかわらず、マイクロチューブMTを安定した姿勢及び状態で保管することができるなど、その効果は甚大である。
【符号の説明】
【0057】
100、200、300 ・・・ 試料容器保管庫
110 ・・・ ハウジング
120、320 ・・・ 容器保持チェーン
121、321 ・・・ ピン
130、230、330 ・・・ 容器支持体
122、322 ・・・ スプロケット
131、231、331 ・・・ 容器搭載部
132、232、332 ・・・ 支持軸
133、233、333 ・・・ 容器保持孔
140 ・・・ 開閉扉
220、320’ ・・・ 容器保持ベルト
222、322’ ・・・ 卷回歯車
250、350 ・・・ 回動支持部
500 ・・・ 待機ステーション
510 ・・・ 試料容器キャリア
511 ・・・ 試料容器保持エレメント
512 ・・・ 試料容器充填孔
513 ・・・ ジョイント
AM ・・・ 試料分析機
AN ・・・ 試料分析ステーション
CF ・・・ 遠心分離ステーション
MT ・・・ マイクロチューブ
P1、P2 ・・・ ピッチ
δ ・・・ オフセット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を封入した試料容器を所望の環境のもとで保管管理する試料容器用保管庫であって、
前記試料容器を入出庫する扉を複数設けたハウジングと、
該ハウジング内に前記扉のそれぞれに対向して奥行方向に配置されて移動自在である複数の無端帯状体と、
該無端帯状体の側面に配置されて前記試料容器を保持する容器支持体とを備えていることを特徴とする試料容器保管庫。
【請求項2】
前記扉及び無端帯状体が、前記ハウジング内で上下方向に複数、幅方向に複数配置されていることを特徴とする請求項1に記載の試料容器保管庫。
【請求項3】
前記容器支持体が前記無端帯状体に対してピン等の円柱状部材で回動自在に設置され、前記試料容器が前記容器支持体に自重で安定して保持されていることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の試料容器保管庫。
【請求項4】
前記容器支持体が、前記無端帯状体の一方の側又は両側に多数配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の試料容器保管庫。
【請求項5】
前記容器支持体が、前記無端帯状体の側面に該容器支持体の長手方向の寸法より短いピッチで千鳥状に配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の試料容器保管庫。
【請求項6】
前記無端帯状体が前記ハウジングの両側に配置され、前記容器支持体が両側に配置された無端帯状体にさし渡して多数配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の試料容器保管庫。
【請求項7】
前記容器支持部が、複数の試料容器を保持可能な横長細幅形状であることを特徴とする請求項6に記載の試料容器保管庫。
【請求項8】
前記無端帯状体が可撓性ベルトであることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかにに記載の試料容器保管庫。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−177600(P2012−177600A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40346(P2011−40346)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【Fターム(参考)】