説明

試料容器

【課題】構造が簡単であり、部品点数が少なく、配置スペースを小さく抑えることができる試薬容器を提供すること。
【解決手段】試薬及び検体を含む液体試料を収容する容器本体に被着されるキャップを備えた試料容器1。キャップ3は、容器本体2に被着される外蓋31と、外蓋にスライド自在に組み付けられ、液体試料分注用の開口32aを有する内蓋32と、内蓋と一体に駆動され、内蓋の開口を開閉自在に覆うシャッタ33と、外蓋に組み付けられ、キャップの中央から外縁に向かって低くなるように傾斜し、シャッタが係合する係合部34cが形成された変換部材34と、外蓋と内蓋との間に配置され、内蓋をシャッタの閉方向へ付勢する付勢部材とを備え、内蓋のスライド運動を変換部材によってシャッタのスライド運動と直交する方向への動きに変換して内蓋の開口を開閉する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試薬及び検体を含む液体試料を収容する容器に被着して液体試料の蒸発を抑制するキャップを備えた試料容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、試料容器は、収容した試薬及び検体を含む液体試料の蒸発を抑えるため容器にキャップを被着しており、キャップ・シール位置から横方向上方へ回動する蓋を備えた試薬容器が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−194132号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された試薬容器は、蓋がキャップ・シール位置から横方向上方へ回動するため、構造が複雑であり、部品点数が多くなるという問題があった。また、特許文献1の試薬容器は、容器の上方から見て、蓋が容器の外側へ回動することから、隣接する他の容器との干渉を避けるためには、容器1個当たりの配置スペースを大きく取らなければならないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、構造が簡単であり、部品点数が少なく、配置スペースを小さく抑えることができる試薬容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に係る試料容器は、試薬及び検体を含む液体試料を収容する容器本体に被着されるキャップを備えた試料容器であって、前記キャップは、前記容器本体に被着される外蓋と、前記外蓋にスライド自在に組み付けられ、前記液体試料分注用の開口を有する内蓋と、前記内蓋と一体に駆動され、前記内蓋の開口を開閉自在に覆うシャッタと、前記外蓋に組み付けられ、当該キャップの中央から外縁に向かって低くなるように傾斜し、前記シャッタが係合する係合部が形成された変換部材と、前記外蓋と内蓋との間に配置され、前記内蓋を前記シャッタの閉方向へ付勢する付勢部材と、を備え、前記内蓋のスライド運動を前記変換部材によって前記シャッタの前記スライド運動と直交する方向への動きに変換して前記内蓋の開口を開閉することを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に係る試料容器は、上記の発明において、前記シャッタは、前記内蓋に取り付ける保持板によって前記内蓋と一体に駆動自在に保持されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明にかかる試料容器は、外蓋に対する内蓋のスライド運動をスライド運動と直交する方向のシャッタの動きに変換する変換部材を設けたので、構造が簡単であり、部品点数が少なく、配置スペースを小さく抑えた試薬容器を提供することができるという効果を奏する。
【0009】
また、本発明にかかる試料容器は、シャッタが内蓋に取り付ける保持板によって内蓋と一体に駆動自在に保持されるので、内蓋とシャッタとを保持板によって常に安定した状態で一体に駆動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の試料容器にかかる実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、本発明の試料容器の斜視図である。図2は、図1の試料容器の断面正面図である。図3は、図1の試料容器からカバーを外した状態の断面側面図である。
【0011】
試料容器1は、図1乃至図3に示すように、容器本体2の上部にキャップ3が被着され、容器本体2の下部にはカバー4が取り付けられている。容器本体2は、略円筒状に成形され、図2に示すように、側面の一部にラベル貼付用の平面部2aが形成され、上部に直径を小さくした雄ねじ部2bが設けられている。カバー4は、平面部2aのラベルを貼付する部分が切除されている。
【0012】
キャップ3は、図2及び図3に示すように、外蓋31、内蓋32、シャッタ33、変換部材34及び付勢部材35を備えている。
【0013】
外蓋31は、容器本体2の雄ねじ部2bに被着される円筒状の部材で、図4及び図5に示すように、内周の上下方向略中央に段部31aが形成されている。外蓋31は、上部内周の4箇所に突起31bが周方向に沿って等間隔に形成され、段部31aの下部内周には雄ねじ部2bにねじ止めされる雌ねじ部31cが設けられている。
【0014】
内蓋32は、外蓋31に上下方向にスライド自在に組み付けられ、図6及び図7に示すように、液体試料分注用の開口32aが中央に設けられている。内蓋32は、外蓋31の4箇所に形成した突起31bと係合し、抜け止めとして機能する突部32bが下部外周に周方向に沿って設けられ、突部32bの内周には係合凹部32cが周方向に沿って形成されている。内蓋32は、仕切り壁32dによって下部が開放されたそれぞれ2つずつの凹部32e,32fが形成されている。ここで、凹部32fは、内蓋32が上下方向にスライドしたとき、変換部材34の支持板34bが収容される。
【0015】
シャッタ33は、内蓋32と一体に駆動され、内蓋32の開口32aを開閉自在に覆う板で、図8に示すように、本体33aの両側に平行四辺形の四角柱からなる突起33bを設けた2枚のシャッタ33が組み合わせて使用される。
【0016】
変換部材34は、外蓋31に組み付けられ、外蓋31に対する内蓋32のスライド運動をシャッタ33の水平方向の移動に変換して開口32aを開閉する。変換部材34は、図9に示すように、円板状の基板34aに所定間隔を置いて略三角形の支持板34bが平行に設けられ、各支持板34bには、中央上部から外縁に向かって低くなるように傾斜する2つの係合溝34cが形成されている。変換部材34は、液体試料分注用の開口34dが中央に形成されている。そして、変換部材34は、図10及び図11に示すように、基板34aを段部31aに設置し、接着剤等によって固定して外蓋31に組み付けられる。変換部材34は、2つの支持板34bの互いに対向する係合溝34cにシャッタ33の突起33bがスライド自在に係合される。
【0017】
このとき、2枚のシャッタ33は、図12及び図13に示すように、内蓋32に取り付ける保持板36によって内蓋32と一体に駆動自在に保持される。保持板36は、図14乃至図16に示すように、中央に開口36aが形成された基板36bの長手方向両側に係止突起36cが上方へ突出させて設けられている。保持板36は、変換部材34の2つの支持板34bの間に基板36bを配置し、互いに対向する係合溝34cに各シャッタ33の突起33bを係合させた状態で、係止突起36cを係合凹部32cに係合させることによって内蓋32に組み付け、図13に示すように、内蓋32との間に2枚のシャッタ33を保持する。このため、試料容器1は、内蓋32とシャッタ33とを保持板36によって常に安定した状態で一体に駆動させることができる。
【0018】
付勢部材35は、独立気泡ウレタン樹脂等の弾性体によって、図17に示すように柱状に成形されている。付勢部材35は、図3及び図12に示すように、外蓋31と内蓋32との間の凹部32fに配置され、内蓋32をシャッタ33が閉じる上方へと付勢する。
【0019】
以上のように構成される試料容器1は、付勢部材35の弾性力によって内蓋32が保持板36と共に上方へ付勢されているので、図2,図12及び図13に示すように、2つのシャッタ33が中央で当接して内蓋32の開口32aが閉じられている。このため、試料容器1は、収容した試薬及び検体を含む液体試料の蒸発が抑えられる。
【0020】
一方、液体試料を分注するとき、試料容器1は、内蓋32を押し下げる。このとき、試料容器1は、内蓋32を中間まで押し下げると、内蓋32の上下方向のスライド運動が変換部材34によってシャッタ33の水平方向への動きに変換され、図18及び図19に示すように、2つのシャッタ33が変換部材34の係合溝34cに案内されて、水平方向に離れながら内蓋32と共に押し下げられる。この結果、試料容器1は、内蓋32を押し下げるのに伴って2つのシャッタ33が離れ、図18に示すように、開口32aが次第に開かれてゆく。これと共に、試料容器1は、外蓋31と内蓋32との間の凹部32fに配置した付勢部材35が内蓋32に押圧されて圧縮されてゆく。
【0021】
そして、内蓋32を最下部まで押し下げると、試料容器1は、図20に示すように、保持板36が基板34aの上面に当接して2つのシャッタ33間が最大に離され、開口32aが2つのシャッタ33から完全に開放される。このとき、付勢部材35は、内蓋32によって最大に圧縮された状態にある。内蓋32を最下部まで押し下げたときの2つのシャッタ33と変換部材34との位置関係を図21に示す。図20及び図21に示すように、2つのシャッタ33が最大に離れる結果、試料容器1は、内蓋32の開口32aが保持板36の開口36a及び変換部材34の開口34dを介して容器本体2の内外が連通する。従って、この状態で上方から図示しない分注ノズルを内蓋32の開口32aへ挿通することによって、試料容器1内に収容された試薬や検体等の液体試料を分注することができる。
【0022】
そして、液体試料の分注が終了したときは、内蓋32の押圧を解放すると、試料容器1は、最大に圧縮された付勢部材35の復元力によって内蓋32が押し上げられる。このため、試料容器1は、変換部材34の係合溝34cに案内されて、2つのシャッタ33が水平方向に接近しながら内蓋32と共に上昇する。これにより、試料容器1は、内蓋32及び2つのシャッタ33が押圧前の位置へ復帰し、2つのシャッタ33によって内蓋32の開口32aが閉じられる。このため、試料容器1は、内蓋32の押圧を解放するだけで、付勢部材35によって内蓋32が押圧前の位置へ復帰してシャッタ33が開口32aを閉じる。試料容器1は、簡単な構成の変換部材34を使用することでシャッタ33を容易に開閉させることができる。
【0023】
このように、試料容器1は、外蓋31に対する内蓋32の上下方向のスライド運動を変換部材34によって2つのシャッタ33の水平方向の動きに変換しており、キャップ3は、外蓋31、内蓋32、2つのシャッタ33、変換部材34及び付勢部材35の5種類の部品のみから構成されるので、構成が簡単であり、部品点数を少なく抑えることができる。このため、試料容器1は、キャップ3の組み立てが容易で、シャッタの簡単、かつ、安定した作動が可能となる。しかも、試料容器1は、シャッタ33がキャップ3内で作動し、キャップ3の外部、特に試料容器1の上方から見て容器本体2の外側を動くことはない。従って、試料容器1は、配置スペースを小さく抑えることができるので、自動分析装置で使用する場合のように、複数隣接配置しても他の試料容器1と干渉することなく使用することができる。
【0024】
なお、本発明の試料容器1は、内蓋32をシャッタ33が閉じる上方へ付勢する手段として、付勢部材35に代えてコイルばねを用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0025】
以上のように、本発明にかかる試料容器は、構造が簡単であり、部品点数が少なく、配置スペースを小さく抑えるのに有用であり、特に、シャッタの簡単、かつ、安定した作動が可能となるので、自動分析装置で使用するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の試料容器の斜視図である。
【図2】図1の試料容器の断面正面図である。
【図3】図1の試料容器からカバーを外した状態の断面側面図である。
【図4】図1の試料容器で使用する外蓋の平面図である。
【図5】図4の外蓋のC1−C1線に沿った断面図である。
【図6】図1の試料容器で使用する内蓋の平面図である。
【図7】図6の内蓋のC2−C2線に沿った断面図である。
【図8】図1の試料容器で使用する2つのシャッタを対向配置した斜視図である。
【図9】2つのシャッタを組み付けた変換部材の斜視図である。
【図10】変換部材を組み付けた外蓋の平面図である。
【図11】図10の外蓋のC3−C3線に沿った断面図である。
【図12】図2の試料容器のキャップ部分から上蓋を外した状態の平面図である。
【図13】図2の試料容器のキャップ部分を拡大した断面正面図である。
【図14】試料容器で使用する保持板の平面図である。
【図15】図14の保持板のC4−C4線に沿った断面図である。
【図16】図14の保持板の側面図である。
【図17】試料容器で使用する付勢部材の斜視図である。
【図18】内蓋を中間まで押し下げたときの試料容器のキャップ部分を拡大した断面正面図である。
【図19】図18の試料容器のキャップ部分から上蓋を外した状態の平面図である。
【図20】内蓋を最下部まで押し下げたときの試料容器のキャップ部分を拡大した断面正面図である。
【図21】図20の状態における変換部材に組み付けた2つのシャッタの位置を示す斜視図である。
【図22】図20の試料容器から上蓋を外した状態の平面図である。
【図23】内蓋を最下部まで押し下げたときの試料容器のキャップ部分を拡大した断面側面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 試料容器
2 容器本体
2a 平面部
2b 雄ねじ部
3 キャップ
4 カバー
31 外蓋
31a 段部
31b 突起
31c 雌ねじ部
32 内蓋
32a 開口
32b 突部
32c 係合凹部
32d 仕切り壁
32e,32f 凹部
33 シャッタ
33a 本体
33b 突起
34 変換部材
34a 基板
34b 支持板
34c 係合溝
35 付勢部材
36 保持板
36a 開口
36b 基板
36c 係止突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試薬及び検体を含む液体試料を収容する容器本体に被着されるキャップを備えた試料容器であって、
前記キャップは、
前記容器本体に被着される外蓋と、
前記外蓋にスライド自在に組み付けられ、前記液体試料分注用の開口を有する内蓋と、
前記内蓋と一体に駆動され、前記内蓋の開口を開閉自在に覆うシャッタと、
前記外蓋に組み付けられ、当該キャップの中央から外縁に向かって低くなるように傾斜し、前記シャッタが係合する係合部が形成された変換部材と、
前記外蓋と内蓋との間に配置され、前記内蓋を前記シャッタの閉方向へ付勢する付勢部材と、
を備え、
前記内蓋のスライド運動を前記変換部材によって前記シャッタの前記スライド運動と直交する方向への動きに変換して前記内蓋の開口を開閉することを特徴とする試料容器。
【請求項2】
前記シャッタは、前記内蓋に取り付ける保持板によって前記内蓋と一体に駆動自在に保持されることを特徴とする請求項1に記載の試料容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2007−39103(P2007−39103A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−226998(P2005−226998)
【出願日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】