説明

試料導入マイクロデバイス

【課題】必要なタイミングで必要な量だけ試料を導入することが可能な試料導入マイクロデバイスを提供する。
【解決手段】基板17aに形成された加圧室1の入口側には、微小流路12aを形成するとともに、加圧室1aの出口側には、微小流路13aを介して毛細管効果を持つノズル形状流路14aを形成し、微小流路13aには、分岐点19aを介して分岐した微小流路18aを接続し、蓋板16aには、微小流路18aの先端に接続された排出口20aを形成するとともに、蓋板16a上には、蓋板16aを振動板として駆動するための圧電素子10aを加圧室1a上に位置するように配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は試料導入マイクロデバイスに関し、特に、基板上に形成された微小流路を用いて微小容量の液体の混合、反応、分離、精製、抽出、分析などを行うマイクロポンプ、マイクロミクサ、マイクロリアクタ、μTAS(マイクロトータルアナリシスシステム)などに適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロマシニング技術を用いてシリコンやガラス、プラスチックなどの基板上に微小流路(マイクロチャンネル)を形成し、その微小空間を各種の液体の混合、反応、分離、精製、抽出、分析などの場に利用する試みが注目されている。これらの分野に供されるデバイスは、その使用目的に応じて、マイクロポンプ、マイクロミクサ、マイクロリアクタ、μTAS(マイクロトータルアナリシスシステム)などと呼ばれている。
このような分野では、反応流路の等価直径(流路の断面を円に換算したときの直径)が500μmより小さいものが微小流路とされている。そして、このような微小流路のように、流路のスケールが微小化すると、単位体積当たりの表面積が非常に大きくなるという特徴がある。
【0003】
そして、このような特徴によって、微小流路を流れる液体の温度、圧力、濃度などの勾配が大きくなるため、熱伝導や物質移動拡散などの効率が向上し、反応系での反応時間を短縮させたり、反応速度を向上させたりすることができる。さらに、微小量の反応で適量合成が可能となる上に、高い再現性も得ることができ、薬品や触媒試薬類などの使用量を大幅に低減することが可能となることから、経済的にも有効である。
このような分野に供される試料導入マイクロデバイスの構造に関する従来技術として、以下に示すように、圧電素子を用いたデフューザ型のマイクロポンプの形態を持つ試料導入マイクロデバイスや、インクジェット技術を応用したディスペンサ型の形態を持つ試料導入マイクロデバイスが提案されている。
【0004】
図5(a)は、従来のデフューザ型のマイクロポンプの形態を持つ試料導入マイクロデバイスの概略構成を示す平面図、図5(b)は、図5(a)の試料導入マイクロデバイスをA−A´線で切断して示す断面図である。
図5において、試料導入マイクロデバイスには、蓋板16eおよび基板17eが設けられ、蓋板16eは基板17e上に固定されている。
ここで、基板17eには、加圧室1eが形成されるとともに、加圧室1eの入口側には、デフューザ2eを有する微小流路4eが形成され、加圧室1eの出口側には、デフューザ3eを有する微小流路5eが形成されている。
【0005】
また、蓋板16eには、微小流路4eの一端に接続された供給口7eおよび微小流路5eの一端に接続された流出口9eが形成され、蓋板16e上には、蓋板16eを振動板11eとして駆動するための圧電素子10eが加圧室1e上に位置するように配置されている。そして、供給口7eには、液体の供給源6eに接続され、流出口9eには、液体の導入先8eに接続されている。
そして、圧電素子10eを動作させて振動板11eを振動させると、加圧室1eの容積が変化し、加圧室1eが膨張することで流体を吸い込ませ、加圧室1eが収縮することで流体を吐出させるという動作を繰り返すことで送液することができる。また、振動板11eにより生じる流れが流路形状の抵抗差によって変化することを利用して、狭い方から広い方への流れを作り出すことができる。
【0006】
図6(a)は、従来のディスペンサ型の形態を持つ試料導入マイクロデバイスの概略構成を示す平面図、図6(b)は、図6(a)の試料導入マイクロデバイスをB−B´線で切断して示す断面図である。
図6において、試料導入マイクロデバイスには、蓋板16fおよび基板17fが設けられ、蓋板16fは基板17f上に固定されている。
ここで、基板17fには、加圧室1fが形成されるとともに、加圧室1fの入口側には、微小流路12fが形成されている。また、加圧室1fの出口側には、微小流路13fを介して毛細管効果を持つノズル形状流路14fが形成され、ノズル形状流路14fの先端にはノズル穴15fが設けられ、ノズル穴15fにおいて液体と気体との界面が形成されるように構成されている。
【0007】
また、蓋板16fには、微小流路12fの一端に接続された供給口7fが形成され、蓋板16f上には、蓋板16fを振動板11fとして駆動するための圧電素子10fが加圧室1f上に位置するように配置されている。そして、供給口7fには、液体の供給源6fに接続されている。
そして、圧電素子10fを動作させて振動板11fを振動させると、加圧室1fの容積が変化し、加圧室1fが膨張することで流体を吸い込ませ、加圧室1fが収縮することで流体を吐出させるという動作を繰り返すことで送液することができる。そして、振動板11fの変位により送液された液体は、ノズル形状流路14fの毛細管力を利用してノズル穴15fに供給されながら、ノズル穴15fから微小の液滴状に押し出すことができる。
【0008】
また、例えば、特許文献1には、微量の分注量と吐出流量とを確保できるようにするために、ノズル板、通路板、キャビティ板および振動板を積層接合して液体の搬送流路を形成する方法が開示されている。
【特許文献1】特開2004−116327号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の試料導入マイクロデバイスでは、試料導入マイクロデバイス内に導入された余剰分の試料の排出先がない。このため、従来の試料導入マイクロデバイスを分析装置の試料の導入に適用した場合、試料導入マイクロデバイスの上流から断続的に試料が供給されると、必要なタイミングで必要な量だけ試料導入マイクロデバイスの下流の検出器に試料を導入することができないという問題があった。
そこで、本発明の目的は、必要なタイミングで必要な量だけ試料を導入することが可能な試料導入マイクロデバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、請求項1記載の試料導入マイクロデバイスによれば、液体を供給する第1供給口と、前記第1供給口から供給された液体を輸送するように基板に形成された分岐点を有する第1微小流路と、前記第1微小流路の分岐先の一方に接続され、必要なタイミングで必要な量だけ液体を吐出することが可能な流出口と、前記第1微小流路の分岐先の他方に接続された過剰分の液体を排出する排出口とを備えることを特徴とする。
これにより、試料導入マイクロデバイス内に導入された余剰分の試料を排出口から排出させることができ、試料導入マイクロデバイスの上流から断続的に試料が供給された場合においても、必要なタイミングで必要な量だけ試料導入マイクロデバイスの下流に試料を導入することができる。
【0011】
また、請求項2記載の試料導入マイクロデバイスによれば、前記排出口に接続された前記分岐先の第1微小流路の流路抵抗は、前記流出口に接続された前記分岐先の第1微小流路の流路抵抗よりも小さいことを特徴とする。
これにより、試料導入マイクロデバイスの上流から断続的に試料が供給された場合においても、試料が流出口側に送液されないようにして、試料を排出口側に送液させることができ、試料導入マイクロデバイス内に導入された余剰分の試料を排出口から排出させることができる。
【0012】
また、請求項3記載の試料導入マイクロデバイスによれば、前記分岐点よりも上流側の前記第1微小流路の一部の区間に配置されるようにして前記基板に形成された第1加圧室と、前記第1加圧室上に配置された第1振動板と、前記第1振動板を振動させる第1圧電素子とを備えることを特徴とする。
これにより、第1圧電素子の駆動を停止することで、試料を排出口側に送液させることが可能となるとともに、第1圧電素子の駆動することで、試料を流出口側に送液させることができ、必要なタイミングで必要な量だけ試料を導入することが可能となる。
【0013】
また、請求項4記載の試料導入マイクロデバイスによれば、前記第1圧電素子を駆動しない場合には、前記第1微小流路の上流から送液される液体が前記排出口から排出され、前記第1圧電素子を駆動する場合には、前記第1微小流路の上流から送液される液体が前記流出口から吐出されることを特徴とする。
これにより、試料導入マイクロデバイスの上流から断続的に試料が供給された場合においても、試料導入マイクロデバイス内に導入された余剰分の試料を排出口から排出させることができ、試料導入マイクロデバイスの下流側の導入先に必要なタイミングで必要な量だけ試料を導入することが可能となる。
【0014】
また、請求項5記載の試料導入マイクロデバイスによれば、前記流出口は、液体と気体との界面が形成されるように構成されたノズル穴であり、前記流出口に接続された前記分岐先の第1微小流路は、前記ノズル穴の接続された毛細管効果を持つノズル形状流路であることを特徴とする。
これにより、第1圧電素子の駆動することで、試料を流出口側に送液させることができ、必要なタイミングで必要な量だけノズル穴から微小の液滴状に試料を押し出すことができる。
【0015】
また、請求項6記載の試料導入マイクロデバイスによれば、前記排出口に接続されたバルブをさらに備え、前記第1微小流路の上流から送液される液体を前記流出口から吐出させる時に前記バルブを閉じることを特徴とする。
これにより、試料導入マイクロデバイスに過剰分の液体を排出する排出口を設けた場合においても、流出口から試料を吐出させる時に排出口から試料が排出されるのを防止することができる。このため、第1微小流路の上流から送液される試料が排出口から漏れ出すことを防止しつつ、第1微小流路の上流から送液される試料の全量を流出口から吐出させることができ、試料が無駄に使用されるのを防止しつつ、必要なタイミングで必要な量だけ試料を導入することが可能となる。
【0016】
また、請求項7記載の試料導入マイクロデバイスによれば、前記分岐点と前記排出口との間の前記第1微小流路の一部の区間に配置されるようにして前記基板に形成された第2加圧室と、前記第2加圧室上に配置された第2振動板と、前記第2振動板を振動させる第2圧電素子とを備え、前記第1微小流路の上流から送液される液体を前記排出口から排出させる時には前記第2圧電素子を駆動し、前記第1微小流路の上流から送液される液体を前記流出口から吐出させる時には前記第2圧電素子を駆動しないことを特徴とする。
【0017】
これにより、第2圧電素子を駆動することで、第1微小流路の上流から送液される試料を強制的に排出口に導くことが可能となるとともに、第1圧電素子を駆動することで、第1微小流路の上流から送液される試料を強制的に流出口に導くことが可能となる。このため、第1微小流路の上流から送液される試料が流出口から漏れ出すのを防止しつつ、過剰分の試料を排出口から排出することが可能となり、試料導入マイクロデバイスの上流から断続的に試料が供給された場合においても、必要なタイミングで必要な量だけ試料導入マイクロデバイスの下流に試料を導入することができる。
【0018】
また、請求項8記載の試料導入マイクロデバイスによれば、液体を供給する第2供給口と、前記第2供給口から供給された液体を輸送するように前記基板に形成され、前記第1微小流路の分岐点と排出口との間に合流点を有する第2微小流路と、前記第2供給口と前記合流点との間の前記第2微小流路の一部の区間に配置されるようにして前記基板に形成された第3加圧室と、前記第3加圧室上に配置された第3振動板と、前記第3振動板を振動させる第3圧電素子とを備え、前記第1微小流路の上流から送液される液体を前記排出口から排出させる時には前記第3圧電素子を駆動し、前記第1微小流路の上流から送液される液体を前記流出口から吐出させる時には前記第3圧電素子を駆動しないことを特徴とする。
【0019】
これにより、第3圧電素子を駆動することで、第1微小流路の上流から送液される試料を強制的に排出口に導くことが可能となるとともに、第3加圧室の配置位置を第1微小流路の分岐点の下流とする制約をなくすことができる。このため、第1微小流路の上流から送液される試料が流出口から漏れ出すのを防止しつつ、過剰分の試料を排出口から排出することが可能となり、試料導入マイクロデバイスの上流から断続的に試料が供給された場合においても、必要なタイミングで必要な量だけ試料導入マイクロデバイスの下流に試料を導入することが可能となるとともに、第3加圧室の配置位置の選択範囲を広げることが可能となり、多様な形状のデバイス設計に対応することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明によれば、試料導入マイクロデバイス内に導入された余剰分の試料を排出口から排出させることができ、試料導入マイクロデバイスの上流から断続的に試料が供給された場合においても、必要なタイミングで必要な量だけ試料導入マイクロデバイスの下流に試料を導入することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係る試料導入マイクロデバイスについて図面を参照しながら説明する。
図1(a)および図1(b)は、本発明の第1実施形態に係る試料導入マイクロデバイスを層方向に分解して示す平面図、図1(c)は、本発明の第1実施形態に係る試料導入マイクロデバイスの概略構成を示す平面図である。
図1において、試料導入マイクロデバイスには、蓋板16aおよび基板17aが設けられ、蓋板16aは基板17a上に固定されている。なお、蓋板16aおよび基板17aの材質としては、例えば、シリコン、ガラス、プラスチックまたはステンレス鋼などを用いることができる。
【0022】
ここで、基板17aには、加圧室1aが形成されるとともに、加圧室1aの入口側には、微小流路12aが形成されている。また、加圧室1aの出口側には、微小流路13aを介して毛細管効果を持つノズル形状流路14aが形成され、ノズル形状流路14aの先端にはノズル穴15aが設けられ、ノズル穴15aにおいて液体と気体との界面が形成されるように構成されている。また、微小流路13aには、分岐点19aを介して分岐した微小流路18aが接続されている。
【0023】
なお、加圧室1a、微小流路12a、18aおよびノズル形状流路14aを基板17aに形成する方法としては、例えば、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いることができる。
また、蓋板16aには、微小流路12aの一端に接続された供給口7aおよび微小流路18aの先端に接続された排出口20aが形成され、蓋板16a上には、蓋板16aを振動板として駆動するための圧電素子10aが加圧室1a上に位置するように配置されている。
【0024】
ここで、排出口20aは、試料導入マイクロデバイス内に導入された過剰分の試料を排出することができ、ノズル穴15aは、必要なタイミングで必要な量だけ試料を吐出することができる。
そして、試料導入マイクロデバイス内に導入された過剰分の試料を排出口20aから排出させる時に、ノズル穴15aから試料が漏れ出すのを抑制するために、排出口20aに接続された微小流路18aの流路抵抗は、ノズル穴15aに接続されたノズル形状流路14aの流路抵抗よりも小さいことが好ましい。あるいは、ノズル形状流路14aの表面にフッ素加工などを施すことにより、ノズル形状流路14aの表面に撥水性を持たせるようにしてもよい。
【0025】
そして、圧電素子10aの動作を停止させた状態で供給口7aから試料を供給すると、微小流路12a→加圧室1a→微小流路13a→微小流路18aという経路で試料が送液され、試料導入マイクロデバイス内に導入された過剰分の試料が排出口20aから排出される。
そして、試料導入マイクロデバイス内に導入された過剰分の試料が排出口20aから排出されると、供給口7aから試料を供給しながら、圧電素子10aを動作させる。すると、微小流路12a→加圧室1a→微小流路13a→ノズル形状流路14aという経路で試料の一部または全量が送液され、ノズル形状流路14aの毛細管力を利用してノズル穴15aに試料を供給させながら、ノズル穴15aから微小の液滴状に試料を押し出すことができる。
【0026】
これにより、試料導入マイクロデバイス内に導入された余剰分の試料を排出口20aから排出させることができ、試料導入マイクロデバイスの供給口7aから断続的に試料が供給された場合においても、必要なタイミングで必要な量だけノズル穴15aを介して試料を導入することができる。
なお、ノズル穴15aから試料を吐出させる時に排出口20aから試料が排出されるのを防止するために、排出口20aにバルブを設けるようにしてもよい。ここで、排出口20aにバルブを設ける方法としては、排出口20aに配管を介してバルブを接続するようにしてもよいし、排出口20aとバルブとを中継する配管を用いることなく、蓋板16aにバルブを搭載し、排出口20aにバルブを直結するようにしてもよい。
【0027】
そして、排出口20aから試料を排出させる時にはバルブを開き、ノズル穴15aから試料を吐出させる時にはバルブを閉じることができる。これにより、試料導入マイクロデバイスに過剰分の液体を排出する排出口20aを設けた場合においても、ノズル穴15aから試料を吐出させる時に排出口20aから試料が排出されるのを防止することができ、供給口7aから供給される試料の全量をノズル穴15aから吐出させることができる。また、排出口20aにバルブを直結することにより、デッドボリュームを低減することができる。
【0028】
図2は、本発明の第2実施形態に係る試料導入マイクロデバイスの概略構成を示す平面図である。
図2において、試料導入マイクロデバイスには、蓋板16bおよび基板17bが設けられ、蓋板16bは基板17b上に固定されている。
ここで、基板17bには、加圧室1bが形成されるとともに、加圧室1bの入口側には、微小流路12bが形成されている。また、加圧室1bの出口側には、微小流路13bを介して毛細管効果を持つノズル形状流路14bが形成され、ノズル形状流路14bの先端にはノズル穴15bが設けられ、ノズル穴15bにおいて液体と気体との界面が形成されるように構成されている。また、微小流路13bには、分岐点19bを介して分岐したS字状の微小流路18bが接続され、微小流路18bの一部の区間には加圧室21bが形成されている。ここで、微小流路18bにおいて、加圧室21bの入口側にはデフューザ22bが形成され、加圧室21bの出口側にはデフューザ23bが形成されている。
【0029】
また、蓋板16bには、微小流路12bの一端に接続された供給口7bおよび微小流路18bの先端に接続された排出口20bが形成され、蓋板16b上には、蓋板16bを振動板として駆動するための圧電素子10bが加圧室1b上に位置するように配置されるとともに、蓋板16bを振動板として駆動するための圧電素子24bが加圧室21b上に位置するように配置されている。
【0030】
ここで、排出口20bは、試料導入マイクロデバイス内に導入された過剰分の試料を排出することができ、ノズル穴15bは、必要なタイミングで必要な量だけ試料を吐出することができる。
そして、圧電素子10bの動作を停止させるとともに、圧電素子24bを動作させながら、供給口7bから試料を供給すると、微小流路12b→加圧室1b→微小流路13b→微小流路18b→デフューザ22b→加圧室21b→デフューザ23b→微小流路18b→という経路で試料が送液され、試料導入マイクロデバイス内に導入された過剰分の試料が排出口20bから排出される。
【0031】
そして、試料導入マイクロデバイス内に導入された過剰分の試料が排出口20bから排出されると、供給口7bから試料を供給しながら、圧電素子10bを動作させるとともに、圧電素子24bの動作を停止させる。すると、微小流路12b→加圧室1b→微小流路13b→ノズル形状流路14bという経路で試料の一部または全量が送液され、ノズル形状流路14bの毛細管力を利用してノズル穴15bに試料を供給させながら、ノズル穴15bから微小の液滴状に試料を押し出すことができる。
【0032】
これにより、圧電素子24bを駆動することで、微小流路12bの上流から送液される試料を強制的に排出口20bに導くことが可能となるとともに、圧電素子10bを駆動することで、微小流路12bの上流から送液される試料を強制的にノズル穴15bに導くことが可能となる。このため、微小流路12bの上流から送液される試料がノズル穴15bから漏れ出すのを防止しつつ、過剰分の試料を排出口20bから排出することが可能となり、試料導入マイクロデバイスの上流から断続的に試料が供給された場合においても、必要なタイミングで必要な量だけ試料導入マイクロデバイスの下流に試料を導入することができる。
【0033】
図3は、本発明の第3実施形態に係る試料導入マイクロデバイスの概略構成を示す平面図である。
図3において、試料導入マイクロデバイスには、蓋板16cおよび基板17cが設けられ、蓋板16cは基板17c上に固定されている。
ここで、基板17cには、加圧室1cが形成されるとともに、加圧室1cの入口側には、微小流路12cが形成されている。また、加圧室1cの出口側には、微小流路13cを介して毛細管効果を持つノズル形状流路14cが形成され、ノズル形状流路14cの先端にはノズル穴15cが設けられ、ノズル穴15cにおいて液体と気体との界面が形成されるように構成されている。また、微小流路13cには、分岐点19cを介して分岐したS字状の微小流路18cが接続され、微小流路18cの一部の区間には加圧室21cが形成されるとともに、微小流路18cには毛細管効果を持つノズル形状流路27cが接続されている。そして、ノズル形状流路27cの先端にはノズル穴25cが設けられ、ノズル穴25cにおいて液体と気体との界面が形成されるように構成されている。
【0034】
また、蓋板16cには、微小流路12cの一端に接続された供給口7cが形成され、蓋板16c上には、蓋板16cを振動板として駆動するための圧電素子10cが加圧室1c上に位置するように配置されるとともに、蓋板16cを振動板として駆動するための圧電素子24cが加圧室21c上に位置するように配置されている。
ここで、ノズル穴25cは、試料導入マイクロデバイス内に導入された過剰分の試料を排出することができ、ノズル穴15cは、必要なタイミングで必要な量だけ試料を吐出することができる。
【0035】
そして、圧電素子10cの動作を停止させるとともに、圧電素子24cを動作させながら、供給口7cから試料を供給すると、微小流路12c→加圧室1c→微小流路13c→微小流路18c→加圧室21c→ノズル形状流路27cという経路で試料が送液され、試料導入マイクロデバイス内に導入された過剰分の試料がノズル形状流路27cの毛細管力を利用してノズル穴25cに供給されながら、ノズル穴25cから排出される。
【0036】
そして、試料導入マイクロデバイス内に導入された過剰分の試料がノズル穴25cから排出されると、供給口7cから試料を供給しながら、圧電素子10cを動作させるとともに、圧電素子24cの動作を停止させる。すると、微小流路12c→加圧室1c→微小流路13c→ノズル形状流路14cという経路で試料の一部または全量が送液され、ノズル形状流路14cの毛細管力を利用してノズル穴15cに試料を供給させながら、ノズル穴15cから微小の液滴状に試料を押し出すことができる。
【0037】
これにより、圧電素子24cを駆動することで、微小流路12cの上流から送液される試料を強制的にノズル穴15cに導くことが可能となるとともに、圧電素子10cを駆動することで、微小流路12cの上流から送液される試料を強制的にノズル穴15cに導くことが可能となる。このため、微小流路12cの上流から送液される試料がノズル穴15cから漏れ出すのを防止しつつ、過剰分の試料をノズル穴25cから排出することが可能となり、試料導入マイクロデバイスの上流から断続的に試料が供給された場合においても、必要なタイミングで必要な量だけ試料導入マイクロデバイスの下流に試料を導入することができる。
【0038】
図4は、本発明の第4実施形態に係る試料導入マイクロデバイスの概略構成を示す平面図である。
図4において、試料導入マイクロデバイスには、蓋板16dおよび基板17dが設けられ、蓋板16dは基板17d上に固定されている。
ここで、基板17dには、加圧室1dが形成されるとともに、加圧室1dの入口側には、微小流路12dが形成されている。また、加圧室1dの出口側には、微小流路13dを介して毛細管効果を持つノズル形状流路14dが形成され、ノズル形状流路14dの先端にはノズル穴15dが設けられ、ノズル穴15dにおいて液体と気体との界面が形成されるように構成されている。
【0039】
また、基板17dには、加圧室30dが形成されるとともに、加圧室30dの入口側には、微小流路29dが形成されている。また、加圧室30dの出口側には、微小流路31dを介して毛細管効果を持つノズル形状流路32dが形成され、ノズル形状流路32dの先端にはノズル穴33dが設けられ、ノズル穴33dにおいて液体と気体との界面が形成されるように構成されている。
また、微小流路13dには、分岐点19dを介して分岐した微小流路18dが接続され、微小流路18dは、分岐点34dを介してノズル形状流路32dの途中に接続されている。
【0040】
また、蓋板16dには、微小流路12dの一端に接続された供給口7dおよび微小流路29dの一端に接続された供給口28dが形成され、蓋板16d上には、蓋板16dを振動板として駆動するための圧電素子10dが加圧室1d上に位置するように配置されるとともに、蓋板16dを振動板として駆動するための圧電素子35dが加圧室30d上に位置するように配置されている。
ここで、ノズル穴33dは、試料導入マイクロデバイス内に導入された過剰分の試料を排出することができ、ノズル穴15dは、必要なタイミングで必要な量だけ試料を吐出することができる。また、供給口7dは、試料導入マイクロデバイス内に試料を導入するために用いることができ、供給口28dは、試料導入マイクロデバイス内に導入された過剰分の試料を排出させるための呼び水となる液体を導入するために用いることができる。
【0041】
そして、圧電素子10dの動作を停止させるとともに、圧電素子35dを動作させながら、供給口7dから試料を供給しつつ、供給口28dから呼び水となる液体を供給すると、微小流路12d→加圧室1d→微小流路13d→微小流路18d→加圧室30d→ノズル形状流路32dという経路で試料が送液されるとともに、微小流路29d→加圧室30d→微小流路31d→ノズル形状流路32dという経路で呼び水となる液体が送液され、試料導入マイクロデバイス内に導入された過剰分の試料がノズル形状流路32dの毛細管力を利用してノズル穴33dに供給されながら、ノズル穴33dから排出される。
【0042】
そして、試料導入マイクロデバイス内に導入された過剰分の試料がノズル穴33dから排出されると、供給口7dから試料を供給しながら、圧電素子10dを動作させるとともに、圧電素子35dの動作を停止させる。すると、微小流路12d→加圧室1d→微小流路13d→ノズル形状流路14dという経路で試料の一部または全量が送液され、ノズル形状流路14dの毛細管力を利用してノズル穴15dに試料を供給させながら、ノズル穴15dから微小の液滴状に試料を押し出すことができる。
【0043】
これにより、圧電素子35dを駆動することで、微小流路12dの上流から送液される試料を強制的に排出口に導くことが可能となるとともに、加圧室30dの配置位置を微小流路13dの分岐点19dの下流とする制約をなくすことができる。このため、微小流路12dの上流から送液される試料がノズル穴15dから漏れ出すのを防止しつつ、過剰分の試料をノズル穴33dから排出することが可能となり、試料導入マイクロデバイスの上流から断続的に試料が供給された場合においても、必要なタイミングで必要な量だけ試料導入マイクロデバイスの下流に試料を導入することが可能となるとともに、加圧室30dの配置位置の選択範囲を広げることが可能となり、多様な形状のデバイス設計に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1(a)および図1(b)は、本発明の第1実施形態に係る試料導入マイクロデバイスを層方向に分解して示す平面図、図1(c)は、本発明の第1実施形態に係る試料導入マイクロデバイスの概略構成を示す平面図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る試料導入マイクロデバイスの概略構成を示す平面図である。
【図3】本発明の第3実施形態に係る試料導入マイクロデバイスの概略構成を示す平面図である。
【図4】本発明の第4実施形態に係る試料導入マイクロデバイスの概略構成を示す平面図である。
【図5】図5(a)は、従来のデフューザ型のマイクロポンプの形態を持つ試料導入マイクロデバイスの概略構成を示す平面図、図5(b)は、図5(a)の試料導入マイクロデバイスをA−A´線で切断して示す断面図である。
【図6】図6(a)は、従来のディスペンサ型の形態を持つ試料導入マイクロデバイスの概略構成を示す平面図、図6(b)は、図6(a)の試料導入マイクロデバイスをB−B´線で切断して示す断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1a、1b、21b、1c、21c、1d、30d 加圧室
7a、7b、7c、7d、28d 供給口
10a、10b、24b、10c、24c、10d、35d 圧電素子
12a、13a、18a、12b、13b、18b、22b、23b、12c、13c、18c、26c、12d、13d、18d、29d、31d 微小流路
14a、14b、14c、14d、27c、32d ノズル形状流路
15a、15b、15c、15d、25c、33d ノズル穴
16a、16b、16c、16d 蓋板
17a、17b、17c、17d 基板
19a、19b、19c、19d 分岐点
20a、20b 流出口
22b、23b デフューザ
34d 合流点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を供給する第1供給口と、
前記第1供給口から供給された液体を輸送するように基板に形成された分岐点を有する第1微小流路と、
前記第1微小流路の分岐先の一方に接続され、必要なタイミングで必要な量だけ液体を吐出することが可能な流出口と、
前記第1微小流路の分岐先の他方に接続された過剰分の液体を排出する排出口とを備えることを特徴とする試料導入マイクロデバイス。
【請求項2】
前記排出口に接続された前記分岐先の第1微小流路の流路抵抗は、前記流出口に接続された前記分岐先の第1微小流路の流路抵抗よりも小さいことを特徴とする請求項1記載の試料導入マイクロデバイス。
【請求項3】
前記分岐点よりも上流側の前記第1微小流路の一部の区間に配置されるようにして前記基板に形成された第1加圧室と、
前記第1加圧室上に配置された第1振動板と、
前記第1振動板を振動させる第1圧電素子とを備えることを特徴とする請求項1または2記載の試料導入マイクロデバイス。
【請求項4】
前記第1圧電素子を駆動しない場合には、前記第1微小流路の上流から送液される液体が前記排出口から排出され、
前記第1圧電素子を駆動する場合には、前記第1微小流路の上流から送液される液体が前記流出口から吐出されることを特徴とする請求項3記載の試料導入マイクロデバイス。
【請求項5】
前記流出口は、液体と気体との界面が形成されるように構成されたノズル穴であり、
前記流出口に接続された前記分岐先の第1微小流路は、前記ノズル穴に接続された毛細管効果を持つノズル形状流路であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の試料導入マイクロデバイス。
【請求項6】
前記排出口に接続されたバルブをさらに備え、前記第1微小流路の上流から送液される液体を前記流出口から吐出させる時に前記バルブを閉じることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の試料導入マイクロデバイス。
【請求項7】
前記分岐点と前記排出口との間の前記第1微小流路の一部の区間に配置されるようにして前記基板に形成された第2加圧室と、
前記第2加圧室上に配置された第2振動板と、
前記第2振動板を振動させる第2圧電素子とを備え、
前記第1微小流路の上流から送液される液体を前記排出口から排出させる時には前記第2圧電素子を駆動し、
前記第1微小流路の上流から送液される液体を前記流出口から吐出させる時には前記第2圧電素子を駆動しないことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の試料導入マイクロデバイス。
【請求項8】
液体を供給する第2供給口と、
前記第2供給口から供給された液体を輸送するように前記基板に形成され、前記第1微小流路の分岐点と排出口との間に合流点を有する第2微小流路と、
前記第2供給口と前記合流点との間の前記第2微小流路の一部の区間に配置されるようにして前記基板に形成された第3加圧室と、
前記第3加圧室上に配置された第3振動板と、
前記第3振動板を振動させる第3圧電素子とを備え、
前記第1微小流路の上流から送液される液体を前記排出口から排出させる時には前記第3圧電素子を駆動し、
前記第1微小流路の上流から送液される液体を前記流出口から吐出させる時には前記第3圧電素子を駆動しないことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項記載の試料導入マイクロデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−304377(P2008−304377A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−152932(P2007−152932)
【出願日】平成19年6月8日(2007.6.8)
【出願人】(305027401)公立大学法人首都大学東京 (385)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】