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試料導入装置
説明

試料導入装置

【課題】ICP質量分析装置又はICP発光分光分析装置等の元素分析装置にて高感度に元素分析を行うことができる試料の導入を行う試料導入装置を提供する。
【解決手段】サイクロンチャンバー1内に霧状の試料をネブライザ2が噴霧し、サイクロンチャンバー1の送出口11から元素分析装置のプラズマトーチなどへ試料を導入する構成の試料導入装置に、ネブライザ2の噴霧口へ赤外線を照射して試料を加熱する赤外線照射器5を設ける。また、ネブライザ2へキャリアガスを供給する給気管41を加熱部42により加熱すると共に、サイクロンチャンバー1の送出口11に連通する送出管12及び導入管46を冷却部46が冷却する。これらにより、ネブライザ2が噴霧した試料の粒子サイズを小さくし、粒子サイズの小さい試料のみをプラズマトーチなどへ導入することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料の発光強度又は質量等を測定することにより元素分析を行う元素分析装置へ分析対象となる試料を導入する試料導入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高周波誘導結合プラズマ(ICP;Inductively Coupled Plasma)を用いて元素分析を行うICP質量分析装置(ICP−MS;ICP-Mass Spectrometer)又はICP発光分光分析装置(ICP−OES;ICP-Optical Emission Spectrometer)等の元素分析装置が知られている。ICPは、プラズマトーチと呼ばれる石英管に誘電コイルを巻きつけて高周波電流を流して誘導電場を発生させ、プラズマトーチ内にアルゴンガスを導入することで形成されるプラズマである。ICP−MSは、試料を8千度〜1万度程度の高温のプラズマ中に噴霧し、プラズマの熱エネルギーによってイオン化された元素を検出することで元素分析を行う装置である。また、ICP−OESは、プラズマの熱エネルギーによって元素が発する光をプリズムなどを用いて分光し、光の波長及び強度等を測定することで元素分析を行う装置である。これらの元素分析装置は、多元素を同時的に分析することができ、分析の感度が高いという特徴がある。
【0003】
ICP−MS及びICP−OESは、液体状の試料を霧状にしてプラズマに導入する必要があり、このような試料の導入を行うためのネブライザ及びチャンバー等で構成される試料導入装置を備えている。試料導入装置のネブライザは、試料液をアルゴンガスなどのキャリアガスにより噴霧するためのものであり、霧状の試料をチャンバー内に噴霧するようにしてある。チャンバーは、ネブライザにより噴霧された霧状の試料から粒子のサイズが小さいものを分別してプラズマに導入するためのものである。粒子のサイズが大きい試料はチャンバーにて分別されて排出されるため、排出される試料の量が多い場合には試料導入装置の効率が悪く、元素分析の効率を悪化させる虞がある。また、粒子のサイズが小さい試料の方が元素分析の感度も高いため、ネブライザから噴霧される試料はできるだけ粒子のサイズが小さいことが望まれる。近年では、試料の粒子のサイズを小さくするために、超音波を利用して試料を噴霧する超音波ネブライザなどが実用化されている。
【0004】
特許文献1においては、液体試料をネブライザにて噴霧し、噴霧された試料を加熱室、凝縮器及びICPトーチを通して連続的に流し、試料からの放射光をモノクロメーターで分散して強度を検出器により検出する構成の発光分光分析計が提案されている。この発光分光分析計の加熱室は、基部に入口及び出口の両方を有し、頂上部で封管された垂直管の形態をなしており、加熱室を楕円面反射器の一の焦点に置き、他の焦点に置かれた加熱バーによって加熱室内の試料の一部を加熱するようにしてある。加熱室で試料の一部を加熱することによって、試料の粒子サイズを小さくすることができ、原子発光分光分析を効率よく行うことができる。
【特許文献1】特表平5−502104号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の発光分光分析計は、加熱室が基部に入口及び出口を有して頂上部で封管された垂直管の形態であり、加熱室内の試料の一部を加熱バー及び楕円面反射器を用いて加熱する構成である。このため、加熱室の基部に設けられた入口から出口へ至るまでに試料が通過する経路によっては、試料が十分に加熱されずに出口へ至る試料が含まれる虞がある。このように、特許文献1に記載の発光分光分析計の構成では、ネブライザーにより噴霧された霧状の試料の全てを確実に加熱できる保証はなく、元素分析の効率の向上にも限度があった。
【0006】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、チャンバー内に開口したネブライザの噴霧口を覆うように加熱光を照射して加熱を行う構成とすることにより、ネブライザから噴霧される試料を確実に加熱して試料の粒子サイズをより小さくすることができる試料導入装置を提供することにある。
【0007】
また本発明の他の目的とするところは、加熱光線を集光してネブライザの噴霧口へ照射する構成とすることにより、ネブライザの噴霧口をより高温に加熱して試料をより確実に加熱することができる試料導入装置を提供することにある。
【0008】
また本発明の他の目的とするところは、ネブライザの噴霧口に対向する位置から噴霧口へ向けて加熱光を照射する構成とすることにより、ネブライザから噴霧される霧状の試料に広範囲に亘って加熱光を照射して加熱することができる試料導入装置を提供することにある。
【0009】
また本発明の他の目的とするところは、ネブライザの噴霧口から試料の噴霧方向へ線状に加熱光を集光する構成とすることにより、ネブライザから噴霧される霧状の試料に確実に且つ広範囲に亘って加熱光を照射して加熱することができる試料導入装置を提供することにある。
【0010】
また本発明の他の目的とするところは、チャンバーが透光性を有し、チャンバーの外側から内側へ加熱光を照射する場合に、チャンバーの加熱光が透過する部分を平面状に形成する構成とすることにより、チャンバーの外側から内側へ加熱光を照射し易い試料導入装置を提供することにある。
【0011】
また本発明の他の目的とするところは、チャンバーの送出口に連結して設けられた送出路内の試料を冷却する構成とすることにより、粒子サイズの大きい試料が導入されることを防止できる試料導入装置を提供することにある。
【0012】
また本発明の他の目的とするところは、ネブライザにキャリアガスを導入するためのガス導入路中のキャリアガスを加熱する構成とすることにより、試料の温度を高めて霧状にして噴霧することができる試料導入装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1発明に係る試料導入装置は、試料を送出する送出口を有するチャンバーと、該チャンバー内に試料を噴霧するネブライザとを備える試料導入装置において、前記ネブライザは、前記チャンバー内に試料を噴霧する噴霧口を有し、該噴霧口を覆うように加熱光を照射する照射手段を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明においては、チャンバー内に霧状の試料をネブライザが噴霧し、チャンバーの送出口から試料を送出する構成の試料導入装置に、ネブライザの噴霧口を覆うように赤外線などの加熱光を照射する照射手段を設ける。ネブライザは試料を噴霧するが、霧状の試料を加熱光線の照射により加熱することによって溶媒が気化するため、試料の粒子サイズをより小さくすることができる。また、試料の種類によっては加熱により溶媒以外の試料を気化させることも可能である。ネブライザの噴霧口を覆うように加熱光を照射することによって、ネブライザから噴霧される試料の全てに加熱光を照射することができ、効率よく加熱することができる。よって、チャンバー内で分別されて排出される粒子の大きい試料の発生を低減でき、元素分析装置などの他の装置へ試料を導入する効率が高まる。
【0015】
また、第2発明に係る試料導入装置は、前記照射手段が、前記噴霧口へ加熱光を集光するようにしてあることを特徴とする。
【0016】
本発明においては、加熱光線を照射する場合には、例えばレンズ又は楕円面鏡等の光学部材を用いて、ネブライザの噴霧口へ加熱光線を集光する。これにより、加熱光線のエネルギーを効率よく集中させることができ、ネブライザから噴霧された試料をより高温に加熱することが可能となる。
【0017】
また、第3発明に係る試料導入装置は、前記照射手段が、前記ネブライザの噴霧口に対向する位置から該噴霧口へ向けて加熱光を照射するようにしてあることを特徴とする。
【0018】
本発明においては、照射手段がネブライザの噴霧口に対向する位置から噴霧口へ向けて加熱光を照射する。これにより、加熱光の通過線上に試料が噴霧される。ネブライザの噴霧口から噴霧された直後の霧状の試料を確実に加熱することができると共に、噴霧されてチャンバー内に拡散した霧状の試料の一部を加熱することができ、加熱の効率を高めることができる。
【0019】
また、第4発明に係る試料導入装置は、前記照射手段が、前記ネブライザの噴霧口から試料の噴霧方向へ線状に加熱光を集光するようにしてあることを特徴とする。
【0020】
本発明においては、照射手段がネブライザの噴霧口から試料の噴霧方向へ線状に加熱光を集光する。これにより、集光された線状の加熱光上に試料が噴霧され、集光された加熱光上を長期間に亘って試料が通過するため、より確実に試料の粒子サイズを小さくすることができる。
【0021】
また、第5発明に係る試料導入装置は、前記照射手段が、前記チャンバーの外側から内側へ加熱光を照射するようにしてあり、前記チャンバーは、透光性を有し、前記照射手段による加熱光が透過する部分を平面状にしてあることを特徴とする。
【0022】
本発明においては、チャンバーが例えばガラスなどにより形成され、透光性を有する場合に、照射手段がチャンバーの外側から加熱光をチャンバー内のネブライザ近傍に照射する。このとき、チャンバーの一部分を平面状に形成し、この平面部分に加熱光を透過させてチャンバー内に加熱光を照射する。チャンバーの曲面部分を透過させて加熱光を照射する場合には、透過の際に加熱光が曲面部分で屈折することで、所望の位置に加熱光を照射することが困難となるが、チャンバーに平面部分を形成して加熱光を透過させることによって、所望の位置に加熱光を容易に照射することができる。
【0023】
また、第6発明に係る試料導入装置は、前記チャンバーの送出口に連結して設けられた送出路と、該送出路内の試料を冷却する冷却手段とを備えることを特徴とする。
【0024】
本発明においては、試料導入装置はチャンバーの送出口から送出した試料を送出路を通して他の装置に導入するが、送出路内の試料を冷却するための冷却手段を設ける。これにより、粒子サイズの大きな試料が冷却されて水滴状になり、粒子サイズの小さな試料と分別される。よって、他の装置へは粒子サイズの小さい試料をより確実に導入することができる。
【0025】
また、第7発明に係る試料導入装置は、前記ネブライザに噴霧のためのキャリアガスを導入するためのガス導入路と、該ガス導入路中のキャリアガスを加熱する加熱手段とを備えることを特徴とする。
【0026】
本発明においては、ネブライザには試料を霧状に噴霧するためにキャリアガスを導入する必要があるが、このキャリアガスを導入するためのガス導入路に電熱線などを設けることによって、ガス導入路中のキャリアガスを加熱する。これにより、ネブライザから噴霧される霧状の試料の温度を予め高めることができるため、加熱光による試料の加熱を促進することができる。
【発明の効果】
【0027】
第1発明による場合は、ネブライザの噴霧口を覆うように加熱光を照射して加熱を行う構成とすることにより、ネブライザから噴霧される霧状の試料の全てに加熱光を照射して加熱することができ、霧状の試料の粒子サイズをより小さくすることができるため、チャンバー内で分別されて排出される粒子サイズが大きい試料の発生を低減でき、試料の導入効率を高めることができる。よって、この試料導入装置を元素分析装置への試料の導入に用いた場合には、元素分析の効率を高めることができると共に、導入される試料の粒子サイズが小さいため分析の精度を高めることができる。また、噴霧された試料で粒子サイズの大きいものは溶媒を多く含んでいる。このようなものがプラズマに導入されるとプラズマが不安定となるが、これを抑制できる。
【0028】
また、第2発明による場合は、加熱光線を集光してネブライザの噴霧口へ照射する構成とすることにより、加熱光線のエネルギーを効率よく集中させて、試料濃度の高いネブライザの噴霧口をより高温に加熱することができるため、ネブライザから噴霧された試料をより高温に加熱することができ、より確実に試料の粒子サイズを小さくすることができる。
【0029】
また、第3発明による場合は、ネブライザの噴霧口に対向する位置から噴霧口へ向けて加熱光を照射する構成とすることにより、加熱光の通過線上に試料が噴霧され、霧状の試料に広範囲に亘って加熱光を照射して加熱することができるため、より確実に試料の粒子サイズを小さくすることができ、試料の導入効率をより高めることができる。
【0030】
また、第4発明による場合は、ネブライザの噴霧口から試料の噴霧方向へ線状に加熱光を集光する構成とすることにより、集光された線状の加熱光上に試料が噴霧され、加熱光上を長期間に亘って試料が通過するため、より確実に試料の粒子サイズを小さくすることができ、より確実に試料の導入効率を高めることができる。
【0031】
また、第5発明による場合は、チャンバーが透光性を有し、チャンバーの外側から内側へ加熱光を照射する場合に、チャンバーの加熱光が透過する部分を平面状に形成する構成とすることにより、所望の位置に加熱光を容易に照射することができるため、試料導入装置の操作性を向上することができる。
【0032】
また、第6発明による場合は、チャンバーの送出口に連結して設けられた送出路内の試料を冷却する構成とすることにより、粒子のサイズが大きい霧状の試料が導入されることを防止することができ、粒子サイズの小さい試料をより確実に導入することができるため、元素分析装置へ試料を導入した場合の元素分析の効率をより高めることができる。
【0033】
また、第7発明による場合は、ネブライザにキャリアガスを導入するためのガス導入路中のキャリアガスを加熱する構成とすることにより、ネブライザから噴霧される霧状の試料の温度を予め高めることができ、加熱光によって試料をより確実に加熱することができるため、試料の粒子サイズをより確実に小さくすることができ、試料の導入効率をより高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。図1は、本発明に係る試料導入装置の構成を示す模式図である。図において1はサイクロンチャンバーであり、サイクロンチャンバー1は略円柱形をなすガラス製の中空容器である。サイクロンチャンバー1の周面の一箇所には、接線方向に突出するように円筒形の固定筒10が連接してある。また、サイクロンチャンバー1は外側へ向けてアーチ状に湾曲する天面及び底面を有し、天面の略中央には略円形の送出口11が開設してあり、送出口11から円筒状の送出管12が連設してあり、送出管12を介してプラズマトーチへ試料を導入するようにしてある。ICP−MSの場合には、この後、試料は質量分析装置に導入され、また、ICP−OESの場合には、プラズマトーチにて試料が発する光を分光装置に導いている。また、底面の略中央には、有底円筒形をなすドレン溜まり13が連設してあり、ドレン溜まり13は、底部に開設された排出口14に連接されたドレン管31を介して廃液タンク33に接続してある。
【0035】
また、試料導入装置はサイクロンチャンバー1内に試料を噴霧するネブライザ2を備えている。ネブライザ2は、石英でできた内管及び外管の2重管構造を有する霧吹き形の噴霧器であり、試料の噴霧口が開設された先端部を内向きとしてサイクロンチャンバー1の固定筒10の軸心上に支持固定してある。サイクロンチャンバー1の外側にてネブライザ2の内管は、試料液100を貯留する試料タンク37に給液管35を介して接続してあり、ネブライザ2の外管は、アルゴンガスなどのキャリアガスの供給源(図示は省略する)に給気管41を介して接続してある。試料タンク37に貯留された試料液100は、給液管35の中途に介装された給液ポンプ36の動作によりネブライザ2の内管に一定量が供給されるようにしてあり、この試料液100は、ネブライザ2の外管の先端に設けられたガス吐出口からのキャリアガスの噴射に応じて発生する負圧の作用により、内管先端の噴霧口からサイクロンチャンバー1の内部に噴霧されるようにしてある。
【0036】
更に、試料導入装置はサイクロンチャンバー1内に赤外線を集光して照射する赤外線照射器5を備えている。赤外線照射器5は、図示は省略するが、赤外線を発生するための赤外線ランプと、この赤外線ランプから発生した赤外線を所定位置に集光するための集光部材として楕円面鏡又はレンズ等の光学部材とを有する構成である。赤外線照射器5は、サイクロンチャンバー1の外部に配設してあり、ガラス製のサイクロンチャンバー1の周面を透過して、ネブライザ2の噴霧口及びガス吐出口よりなる噴霧部を覆うように赤外線を集光し、噴霧部から噴霧された霧状の試料に赤外線を照射するようにしてある。
【0037】
図2は、ネブライザ2及び赤外線照射器5の配置を説明するための模式図であり、サイクロンチャンバー1の平面断面と共にネブライザ2及び赤外線照射器5を図示してある。ネブライザ2は、サイクロンチャンバー1の周面から接線方向へ突出して設けられた固定筒10に固定してあり、サイクロンチャンバー1の内部に霧状の試料を噴霧するようにしてある。赤外線照射器5は、ネブライザ2の噴霧方向についてネブライザ2の噴霧口に対向するように、サイクロンチャンバー1の外部に配設してある。サイクロンチャンバー1の曲面状の周面には一部を外側へ突出させて平面15が形成してあり、赤外線照射器5は平面15に略垂直に赤外線を照射すると共に、サイクロンチャンバー1の外部からネブライザ2の噴霧口へ平面15を透過してある一箇所に集まるように進む赤外線を照射するようにしてある。
【0038】
図3及び図4は、ネブライザ2に対する赤外線の照射位置を説明するための模式図であり、図3に模式的な斜視図を示し、図4に模式的な側断面図を示してある。また、図3及び図4においては赤外線を破線にて示してある。ネブライザ2は、一の先端へ向けて先細の形状をなす内管21と、この内管21より径が大きく一の先端へ向けて先細の形状をなす外管22とが同軸に配された2重管構造をなしており、内管21の先細の先端に設けられた噴霧口23aと、外管22の先細の先端に設けられたガス吐出口23bとによりネブライザ2の噴霧部23を構成している。
【0039】
赤外線照射器5は、光源から出射した赤外線を出射先へ向けて徐々に狭まるようにレンズ又は楕円面鏡等に光学部材を利用して集光するものであり、この際にサイクロンチャンバー1の周面に形成された平面15(図3及び図4では図示を省略してある)を透過し、ネブライザ2の略円形をなす噴霧部23の全体を覆って、赤外線を集光するようにしてある。加熱光が噴霧部23に到達するまでに最後に屈折又は反射した場所(本実施の形態においてはチャンバー1の平面15)での加熱光の単位面積あたりのエネルギーよりも、噴霧部23での単位面積あたりのエネルギーが大きくなるように集光している。即ち、赤外線照射器5から出射した赤外線が通過して噴霧部23に至るまでの加熱光である赤外線が照射される領域(以下、赤外線照射領域という)が図4にはハッチングを付して図示してあるが、ネブライザ2の噴霧部23の開口の試料が噴霧される側が赤外線照射領域により覆われることとなり、赤外線照射領域にネブライザ2の噴霧口23aから噴霧される全ての試料が通過することとなる。よって、噴霧口23aから噴霧する全ての霧状の試料を赤外線で加熱することができる。なお、試料液は内管21から吐出されるため、噴霧部23を構成する内管21の噴霧口23a及び外管22のガス吐出口23bの両方を赤外線が覆うのではなく、内管21の噴霧口23aのみを赤外線が覆う構成であってもよいが、噴霧口23a及びガス吐出口23bの両方を赤外線が覆う構成が好ましい。赤外線照射器5がネブライザ2の噴霧部23へ赤外線を集光することによって、噴霧部23の近傍は千℃〜千数百℃程度に加熱される。これにより、ネブライザ2から噴霧された霧状の試料中の溶媒が気化されて試料の粒子サイズをより小さくすることができる。
【0040】
図5は、ネブライザ2に対する赤外線の照射方法の他の例を示す模式図である。例えば、赤外線照射装置5(図5においては図示を省略する)とネブライザ2との間に障害物30が存在し、赤外線照射装置5からネブライザ2の噴霧部23までの赤外線照射領域の一部が障害物30によって遮られる構成であってもよい。ただし、ネブライザ2から噴霧される試料が、途中に赤外線が遮られた領域を通過しても、少なくとも一度は赤外線照射領域を通過するように、赤外線照射装置5からネブライザ2の噴霧部23へ赤外線を集光する。
【0041】
また、赤外線照射器5はネブライザ2の噴霧方向について対向する位置から赤外線を集光するため、ネブライザ2から噴霧された霧状の試料の一部は赤外線照射領域を長期間通過する。赤外線照射器5による加熱は、赤外線の集光点である噴霧部23の近傍にて最も温度が高くなるが、赤外線の経路上であっても十分に温度は上昇するため、噴霧された試料に長期間に亘って赤外線を照射することでより多くの試料の粒子サイズを小さくすることができる。
【0042】
また、図1に示すように、ネブライザ2の外管22に接続されてキャリアガスを供給する給気管41には、中途部分に電熱線43を巻設することによって給気管41内のキャリアガスを加熱する加熱部42が設けてある。加熱部42では、給気管41の耐熱の範囲内で、電熱線43の温度を数百℃程度に高めることによって、給気管41内のキャリアガスを加熱するようにしてある。ネブライザ2へ供給されるキャリアガスを予め加熱しておくことによって、ネブライザ2から噴霧される霧状の試料の温度を高めることができるため、上述の赤外線照射器5が行う試料の加熱を促進することができ、より効率よく試料の粒子サイズを小さくすることができる。
【0043】
赤外線照射器5及び加熱部42によって高い効率で試料の粒子サイズを小さくすることができるが、粒子サイズを十分に小さくすることができなかった試料はICP−MS又はICP−OES等の分析対象とせずに取り除くことが好ましい。サイクロンチャンバー1は粒子のサイズが比較的に大きい試料をサイクロン効果により取り除いて排出することが可能である。また、本実施の形態に係る試料導入装置は、サイクロンチャンバー1の送出管12と、この送出管12に接続されてプラズマトーチなどへ試料を導入するための導入管45とを冷却することで、送出管12及び導入管45内の試料を冷却する冷却部46を備えており、粒子サイズの大きい試料を凝析させて粒子サイズの小さい試料と分別することができるようにしてある。
【0044】
以上の構成の試料導入装置では、試料タンク37に貯留された試料液100を給液ポンプ36の動作によりネブライザ2の内管21に供給すると共に、加熱部42の作用により給気管41にて加熱されたキャリアガスをネブライザ2の外管22に供給することによって、ネブライザ2の外管22の先端からのキャリアガスの噴射に応じて発生する負圧の作用により、噴霧部23から温度の高い霧状の試料がサイクロンチャンバー1の内部に噴霧される。ネブライザ2の噴霧部23には赤外線照射器5からの赤外線が集光されており、噴霧された試料が千℃〜千数百℃程度に加熱され、試料中の溶媒が気化されることにより試料の粒子サイズが小さくなる。
【0045】
ネブライザ2から噴霧された試料は、サイクロンチャンバー1の内部に発生するサイクロン気流により天面に向けて上昇し、天面の中央に開口する送出口11から送出管12及び導入管45へ送出される。サイクロンチャンバー1内では、粒子サイズの大きい試料はサイクロン気流の作用によってサイクロンチャンバー1の内面に付着し、サイクロンチャンバー1の底面を伝って下方に流下し、底面中央のドレン溜まり13に滞留される。
【0046】
また、送出口11から送出された送出管12及び導入管45内の試料は冷却部46により冷却され、粒子サイズの大きい霧状の試料が凝析されることによって、粒子サイズの小さい試料と分別される。凝析された試料は送出管12又は導入管45の内面に付着して流下し、サイクロンチャンバー1の下部に設けられたドレン溜まり13に滞留される。粒子サイズの小さい試料は、導入管45を通して例えばICP−MS又はICP−OES等のプラズマトーチなどに導入され、元素分析が行われる。
【0047】
このように、本実施の形態の試料導入装置においては、赤外線照射器5がネブライザ2の噴霧部23を覆うように赤外線を集光して加熱を行う構成とすることにより、噴霧部23から噴霧される試料を確実に加熱することができ、効率よく粒子サイズを小さくすることができる。また、ネブライザ2にキャリアガスを供給する給気管41に加熱部42を設け、予め加熱したキャリアガスをネブライザ2に供給する構成とすることにより、ネブライザ2が噴霧する霧状の試料の温度を上げることができるため、赤外線による加熱の効率を高めることができる。また、赤外線照射器5をネブライザ2の対向位置に配設し、対向位置からネブライザ2の噴霧部23へ赤外線を集光する構成とすることにより、ネブライザ2から噴霧された霧状の試料に広範囲に亘って赤外線を照射することができるため、試料の加熱の効率をより高めることができる。また、サイクロンチャンバー1の周面に平面15を有した加熱光線を入射させるための部分を形成し、平面15を透過させて赤外線照射器5が赤外線をネブライザ2の噴霧部23へ集光する構成とすることにより、サイクロンチャンバー1の周面の曲面部分を透過させる場合と比較して、サイクロンチャンバー1の周面を赤外線が透過する際に屈折し難いため、赤外線照射器5による照射位置の調整などが行い易い。また、サイクロンチャンバー1の送出管12及び導入管45内の試料を冷却する冷却部46を設ける構成とすることにより、粒子サイズの大きい試料を分別してプラズマトーチなどに粒子サイズの小さい試料のみを導入することができるため、ICP−MS又はICP−OES等による元素分析の精度を高めることができる。
【0048】
なお、本実施の形態においては、試料導入装置がチャンバーとしてサイクロンチャンバー1を備える構成としたが、これに限るものではなく、その他の形状のチャンバー、例えばスプレーチャンバーなどを備える構成としてもよい。また、給気管41内のキャリアガスを加熱する加熱部42を設ける構成としたが、これに限るものではなく、加熱部42を設けずに常温のキャリアガスをネブライザ2へ供給する構成としてもよい。また、送出管12及び導入管45内の試料を冷却する冷却部46を設ける構成としたが、これに限るものではなく、冷却部46を設けずに赤外線照射器5により加熱した試料を直接的にプラズマトーチなどへ導入する構成としてもよい。加熱部42及び冷却部46は、赤外線照射器5による試料の加熱の作用及び効率等を補助的に高めるためのものであるため、赤外線照射器5のみで十分に試料を加熱して粒子サイズを小さくすることができる場合には必要ない。また、サイクロンチャンバー1の周面に平面15を形成し、赤外線照射器5が平面15を透過して赤外線を集光する構成としたが、これに限るものではなく、サイクロンチャンバー1に平面15を形成せず、赤外線照射器5がサイクロンチャンバー1の曲面部分を透過して赤外線を集光する構成としてもよい。また、赤外線照射器5をネブライザ2の噴霧方向について対向位置に配設し、対向位置からネブライザ2の噴霧部23へ赤外線を集光する構成としたが、これに限るものではなく、赤外線照射器5を他の位置に配設し、他の位置から赤外線を集光する構成としてもよい。また、赤外線照射器5をサイクロンチャンバー1内に配設する構成としてもよい。また、赤外線照射器5が赤外線ランプ及び楕円面鏡又はレンズ等の光学部材を有する構成としたが、これに限るものではなく、赤外線照射器が光学部材のみを有し、他の装置が発する赤外線を集光する構成としてもよい。また、赤外線照射器5が楕円面鏡又はレンズ等の光学部材を備えず、光源から出射した赤外線を集光することなくネブライザ2の噴霧部23に照射する構成としてもよい。また、加熱のために赤外線を用いる構成としたが、これに限るものではなく、他の光線を用いる構成であってもよい。
【0049】
(変形例1)
図6は、本発明の変形例1に係る試料導入装置のネブライザ2及び赤外線照射器5の配置を説明するための模式図であり、サイクロンチャンバー1の平面断面と共にネブライザ2及び赤外線照射器5を図示してある。ネブライザ2は、サイクロンチャンバー1の周面から接線方向へ突出して設けられた固定筒10に固定してあり、サイクロンチャンバー1の内部に霧状の試料を噴霧するようにしてある。赤外線照射器5は、サイクロンチャンバー1の外部に配設してあり、ネブライザ2の噴霧方向に交差する方向からガラス製の固定筒10を透過してネブライザ2の噴霧口(又は噴霧部)へ赤外線を集光するようにしてある。
【0050】
このように、赤外線照射器5をネブライザ2に対向する位置に配設するのではなく、他の位置に配設する構成としてもよく、例えば図示のようにネブライザ2の近くに赤外線照射器5を配設することによって、赤外線照射器5による赤外線の照射位置の調整などが行いやすくなるという利点がある。なお、円筒状の固定筒10の周面は曲面であるため、図示は省略するが、赤外線を透過させる部分に平面を形成することによって、赤外線照射器5による赤外線の照射位置の調整などをより容易に行うことができる。
【0051】
(変形例2)
図7は、本発明の変形例2に係る試料導入装置のネブライザ2に対する赤外線の照射位置を説明するための模式的斜視図である。変形例2に係る試料導入装置の赤外線照射器5aは、赤外線を発生するための赤外線ランプと、この赤外線ランプから発生した赤外線を一方向にのみ集光する鏡又はレンズ等の光学部材とを有する構成である。このため、図3及び図4に示した赤外線照射器5は赤外線を一点に集光するが、図7に示す変形例2の赤外線照射器5aは赤外線が噴霧口を覆うように線状に集光する。
【0052】
赤外線照射器5aは、サイクロンチャンバー1(図7においては図示を省略してある)の外部に配設してあり、ガラス製のサイクロンチャンバー1を透過して、ネブライザ2の噴霧部23から試料の噴霧方向に線状に赤外線を集光するようにしてある(図7中のハッチングを付した領域A参照)。これにより、噴霧部23から一定距離の領域Aについて、ネブライザ2から噴霧された試料を高温で加熱することができ、より効率よく試料を加熱して粒子サイズを小さくすることができる。
【0053】
なお、赤外線照射器5aが赤外線を集光して照射する構成としてあるが、これに限るものではなく、例えば平行光又は拡散する光などの適宜の態様で加熱光を照射する構成であってもよい。
【0054】
(変形例3)
図8は、本発明の変形例3に係る試料導入装置のネブライザ2に対する赤外線の照射位置を説明するための模式図である。図8に示すように、赤外線照射器が集光する赤外線の焦点B(赤外線の単位面積あたりのエネルギーが最も大きくなる部分)をネブライザ2の噴霧部23の手前側に合わせ、焦点Bより先の赤外線照射領域が噴霧部23を覆う構成とすることも可能である。このような構成とすることにより、最も温度が高くなる赤外線の焦点Bがネブライザ2の外側となるため、ネブライザ2が熱により溶解するなどの損傷が生じることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に係る試料導入装置の構成を示す模式図である。
【図2】ネブライザ及び赤外線照射器の配置を説明するための模式図である。
【図3】ネブライザに対する赤外線の照射位置を説明するための模式図である。
【図4】ネブライザに対する赤外線の照射位置を説明するための模式図である。
【図5】ネブライザに対する赤外線の照射方法の他の例を示す模式図である。
【図6】本発明の変形例1に係る試料導入装置のネブライザ及び赤外線照射器の配置を説明するための模式図である。
【図7】本発明の変形例2に係る試料導入装置のネブライザに対する赤外線の照射位置を説明するための模式的斜視図である。
【図8】本発明の変形例3に係る試料導入装置のネブライザに対する赤外線の照射位置を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0056】
1 サイクロンチャンバー
2 ネブライザ
5 赤外線照射器(照射手段)
10 固定筒
11 送出口
12 送出管(送出路)
13 ドレン溜まり
15 平面
21 内筒
22 外筒
23 噴霧部
23a 噴霧口
23b ガス吐出口
41 給気管(ガス導入路)
42 加熱部(加熱手段)
43 電熱線
45 導入管(送出路)
46 冷却部(冷却手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を送出する送出口を有するチャンバーと、該チャンバー内に試料を噴霧するネブライザとを備える試料導入装置において、
前記ネブライザは、前記チャンバー内に試料を噴霧する噴霧口を有し、
該噴霧口を覆うように加熱光を照射する照射手段を備えること
を特徴とする試料導入装置。
【請求項2】
前記照射手段は、前記噴霧口へ加熱光を集光するようにしてある請求項1に記載の試料導入装置。
【請求項3】
前記照射手段は、前記ネブライザの噴霧口に対向する位置から該噴霧口へ向けて加熱光を照射するようにしてある請求項1又は請求項2に記載の試料導入装置。
【請求項4】
前記照射手段は、前記ネブライザの噴霧口から試料の噴霧方向へ線状に加熱光を集光するようにしてある請求項2に記載の試料導入装置。
【請求項5】
前記照射手段は、前記チャンバーの外側から内側へ加熱光を照射するようにしてあり、
前記チャンバーは、透光性を有し、前記照射手段による加熱光が透過する部分を平面状にしてある請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の試料導入装置。
【請求項6】
前記チャンバーの送出口に連結して設けられた送出路と、
該送出路内の試料を冷却する冷却手段と
を備える請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載の試料導入装置。
【請求項7】
前記ネブライザに噴霧のためのキャリアガスを導入するためのガス導入路と、
該ガス導入路中のキャリアガスを加熱する加熱手段と
を備える請求項1乃至請求項6のいずれか1つに記載の試料導入装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−157895(P2008−157895A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−350324(P2006−350324)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【Fターム(参考)】