説明

試料撹拌蓋および試料容器

【課題】 試料を効率良く撹拌することができる試料撹拌蓋を提供する。
【解決手段】 液体試料が収容される試料収容部12を備える容器本体10の撹拌を行うための試料撹拌蓋20であって、試料収容部12の開口面に沿って摺動可能に配置される平板状の蓋本体22と、蓋本体22から突出する撹拌棒24とを備え、撹拌棒24は、試料収容部12に進入可能となるように、蓋本体22の表面に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料撹拌蓋および試料容器に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞培養液や薬品、血液などの液体試料を撹拌する場合、マイクロプレートやマイクロチューブなどの試料容器に試料を収容してシェーカーの上に載せ、振とうを行うことが一般に行われている。ところが、シェーカーによる振とう速度の高速化には限界があり、短時間での撹拌が困難であるという問題があった。このため、特許文献1には、マイクロプレートに超音波振動を与えて試料の撹拌を行うことが開示されているが、超音波振動を発生させるための装置がコスト高となるため、少量試料の撹拌効率を簡便に向上させることが求められていた。
【特許文献1】特開2007−117830号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明は、試料を効率良く撹拌することができる試料撹拌蓋および試料容器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の前記目的は、液体試料が収容される試料収容部を備える容器本体の撹拌を行うための試料撹拌蓋であって、前記試料収容部の開口面に沿って摺動可能に配置される平板状の蓋本体と、前記蓋本体から突出する撹拌棒とを備え、前記撹拌棒は、前記試料収容部に進入可能となるように、前記蓋本体の表面に配置されている試料撹拌蓋により達成される。
【0005】
また、本発明の前記目的は、液体試料が収容される試料収容部を複数備える容器本体と、前記容器本体を覆う試料撹拌蓋とを備える試料容器であって、前記試料撹拌蓋は、前記試料収容部の開口面に沿って摺動可能に配置される平板状の蓋本体と、前記蓋本体から突出する複数の撹拌棒とを備え、前記撹拌棒は、前記各試料収容部にそれぞれ進入可能となるように、前記蓋本体の表面に間隔をあけて配置されている試料容器により達成される。
【発明の効果】
【0006】
本発明の試料撹拌蓋および試料容器によれば、試料を効率良く撹拌することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る試料容器の斜視図である。試料容器1は、容器本体10と、この容器本体10を覆う試料撹拌蓋20とを備えており、図1においては、容器本体10と試料撹拌蓋20とを分離した状態で示している。
【0008】
容器本体10は、液体試料を収容するための試料収容部を複数備えており、本実施形態においては、試料収容部となるウェル12が、マトリクス状に96穴(8×12)形成された透明なマイクロプレートから容器本体10が構成されている。但し、試料収容部の数は、本実施形態のものに限定されない。容器本体10は、例えば、ポリスチレンやポリプロピレンなどから形成することができる。また、各ウェル12は、有底で円筒状の内周面を有している。ウェル容積は、例えば300μL程度であり、この場合、100〜300μL程度の液体試料を収容して撹拌することができる。各ウェル12の開口面と一致する容器本体10の上面10aは、平滑な平面状とされている。
【0009】
試料撹拌蓋20は、平板状の蓋本体22と、蓋本体22の表面から突出する複数の撹拌棒24とを備えている。試料撹拌蓋20についても、容器本体10と同様の材料から形成することが可能であり、蓋本体22が容器本体10の上面10aに摺動可能に載置される。
【0010】
撹拌棒24は、微小径の棒状体であり、蓋本体22を容器本体10の上面10aに載置したときに、それぞれがウェル12の内部に進入するように、マトリクス状に配置されている。各撹拌棒24は、図2に要部断面図で示すように、蓋本体22の表面に対して垂直方向に延びるように形成されており、軸線が各ウェル12の中心線とほぼ一致するように進入可能とされている。各撹拌棒24は、必ずしも全てのウェル12に進入する必要はなく、十分な撹拌が必要な一部のウェル12のみに進入するように、選択的に配置された構成であってもよい。撹拌棒24の長さは、先端がウェル12の底部12aと接触しない程度で、ウェル12の深さとほぼ同じであり、例えば、ウェル12の深さが11mmの場合に、撹拌棒24の長さを10.5mmとすることができる。撹拌棒24の断面形状は特に限定されず、例えば、円形状や楕円形状であってもよいが、平板状または十字状とすることで、振透方向に垂直な側面を撹拌棒24に形成することができ、撹拌効率をより高めることができる。
【0011】
上記の構成を備える試料容器1によれば、図2に示すように、液状試料Sを各ウェル12に収容した後、容器本体10の上面10aに試料撹拌蓋20を載置して、容器本体10の底部をシェーカーなどの撹拌装置30に固定し、容器本体10に対して水平方向の成分を含む振動を与える。これにより、容器本体10は、水平方向に振動する一方、試料撹拌蓋20は、容器本体10の上面10aを摺動可能であるために、容器本体10と試料撹拌蓋20との間に相対移動を生じる。この結果、ウェル12内の液状試料Sは、容器本体10及び撹拌棒24の振動により外部及び内部の双方から撹拌力が付与され、短時間で効率良く撹拌される。
【0012】
容器本体10と試料撹拌蓋20との間の摩擦係数は、大きすぎると、容器本体10及び試料撹拌蓋20間の相対移動が生じにくくなり、撹拌棒24による十分な撹拌力が得られない。そこで、両者の摩擦抵抗を低減するために、図3に示すように、蓋本体22の下面22aに複数の突起部40を設け、容器本体10と試料撹拌蓋20とが突起部40を介して接触する構成とすることで、接触面積を小さくすることができる。突起部40の形状は、半球状であることが好ましいが、これに限定されるものではない。また、突起部40は、容器本体10の上面10aに設けることも可能であり、或いは、蓋本体22の下面22aおよび容器本体10の上面10aの双方に設けることも可能である。
【0013】
試料撹拌蓋20が振動により容器本体10から落下するおそれがある場合には、試料撹拌蓋20の外周縁に容器本体10の外周縁と係合可能な枠体を設け、この枠体と容器本体10との間に所定の隙間を形成することにより、容器本体10及び試料撹拌蓋20間の相対移動量を、前記隙間の範囲内に制限することができる。
【0014】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、試料撹拌蓋20を用いて試料を撹拌可能な容器本体10は、必ずしも本実施形態のようにマイクロプレートに限定されるものではなく、他の形態であってもよい。例えば、試料収容部をマイクロチューブから構成し、複数のマイクロチューブをラックにマトリクス状に保持することにより容器本体を構成することも可能であり、各マイクロチューブの開口周縁と試料撹拌蓋との摩擦抵抗を低減することにより、本実施形態と同様の効果を得ることができる。また、容器本体が備える試料収容部は、種々の試料の撹拌を効率良く行うために複数であることが好ましいが、単一の試料収容部を備える容器本体に対して、本実施形態の試料撹拌蓋を使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る試料容器の斜視図である。
【図2】図1に示す試料容器の要部断面図である。
【図3】図1に示す試料容器の変形例を示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0016】
1 試料容器
10 容器本体
10a 上面(開口面)
12 ウェル(試料収容部)
20 試料撹拌蓋
22 蓋本体
24 撹拌棒
40 突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体試料が収容される試料収容部を備える容器本体の撹拌を行うための試料撹拌蓋であって、
前記試料収容部の開口面に沿って摺動可能に配置される平板状の蓋本体と、
前記蓋本体から突出する撹拌棒とを備え、
前記撹拌棒は、前記試料収容部に進入可能となるように、前記蓋本体の表面に配置されている試料撹拌蓋。
【請求項2】
液体試料が収容される試料収容部を複数備える容器本体と、前記容器本体を覆う試料撹拌蓋とを備える試料容器であって、
前記試料撹拌蓋は、前記試料収容部の開口面に沿って摺動可能に配置される平板状の蓋本体と、前記蓋本体から突出する複数の撹拌棒とを備え、
前記撹拌棒は、前記各試料収容部にそれぞれ進入可能となるように、前記蓋本体の表面に間隔をあけて配置されている試料容器。
【請求項3】
前記蓋本体の下面および前記容器本体の上面の少なくとも一方に、複数の突起部が形成されている請求項2に記載の試料容器。
【請求項4】
前記容器本体は、マイクロプレートである請求項2または3に記載の試料容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−127696(P2010−127696A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−301022(P2008−301022)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(397069868)アズワン株式会社 (23)
【Fターム(参考)】