説明

試料操作装置

【課題】基板上に載置された試料を確実且つ速やかに把持できると共に、把持が完了したか否かを高精度に検出すること。試料に応じて把持力を調整すると共に試料の脱離が完了したか否かを高精度に検出すること、
【解決手段】基板表面2a上に載置された試料Sをマニピュレーションする装置であって、試料Sを観察して少なくとも位置データ及び形状データを取得した後、両データに基づいて観察用プローブ15と把持用プローブ16との間に試料Sが位置するように移動手段5によりピンセット4を位置決めさせ、該位置決め後、変位測定手段7による測定結果をモニタしながら移動手段5によりピンセット4を基板表面2aから一定距離離間した位置に高さ設定し、その後、設定した高さで変位測定手段7による測定結果をモニタしながら把持用プローブ16を観察用プローブ15側に移動させて、把持開始点を検出しながら試料Sを把持させる試料操作装置1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板表面上に置かれた試料(操作対象物)を観察した後、観察データに基づいて該試料を操作(マニピュレーション)する試料操作装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子材料や有機材料等の各種の試料を微小領域にて測定し、試料の表面形状の観察や物性情報の計測を行う装置として、原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)や、走査型トンネル顕微鏡(STM:Scanning Tunneling Microscope)等の走査型プローブ顕微鏡(SPM:Scanning Probe Microscope)が知られている。この走査型プローブ顕微鏡は、3次元位置決め機構としても正確であることから、微小領域を加工する加工装置として応用するために様々な提案がされている。
【0003】
走査型プローブ顕微鏡を用いた試料の操作(マニピュレーション)への応用として、2本のプローブの間に試料を位置させ、該試料を把持或いは解放するAFMピンセットと呼ばれるものが既に開発されている。
この種のAFMピンセットの1つとして、走査型プローブ顕微鏡等に用いられるカンチレバーを利用したものが知られている。例えば、シリコンからなるカンチレバーの先端に設けられた探針上に、2本のカーボンナノチューブを取り付けたものが知られている。また、別のものとしては、カンチレバーとしてのガラスチューブに2本のカーボンナノチューブを取り付けたものや、シリコン基板よりMEMS(Micro Electro Mechanical System)プロセスを用いてカンチレバーを2本作製したもの等も知られている。
【0004】
このうち、2本のカーボンチューブを有するAFMピンセットの場合には、通常2本のカーボンナノチューブの間に静電気を印加させることで、2本のカーボンナノチューブの開閉を行っている。一方、MEMSプロセスによりカンチレバーを2本作製したAFMピンセットの場合には、櫛歯状の静電アクチュエータを利用して2本のカンチレバーを開閉したり、カンチレバーの根元に電流を流して発熱させ、シリコンの線膨張を拡大することで2本のカンチレバーの開閉を行ったりしている(非特許文献1参照)。
【非特許文献1】武川哲也、中川和久、橋口原、山中敬一郎、斉藤真人、民谷栄一、他著、「ナノ物質のマニピュレーションを行う為のAFMピンセットの開発」、電気学会論文誌E、Trans.SM、Vo1125、No.11、2005
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したAFMピンセットでは、以下の課題がまだ残されていた。
一般的にAFMピンセットで試料を把持する場合には、把持される試料の硬さやサイズ等が事前に判明していない場合が多い。ところが、上述したAFMピンセットは、いずれのものも単にカーボンナノチューブ或いはカンチレバーを開閉させて、試料の把持或いは解放を行うものであるので、試料の硬さやサイズ等に対応した動作を行うことが困難であった。
【0006】
そのため、柔らかい試料であった場合には、ピンセットの把持力によって試料が変形したり潰れたりして、破損してしまうことが多々あった。また、硬い試料であった場合には、試料が弾けて他の場所に移動してしまうことがあった。特に、把持力が強い場合には、顕著なものであった。また、把持する位置が適切でない場合にも、試料が他の場所に移動してしまうことがあった。このように、試料が移動してしまうと、再度ピンセットと試料との位置決めを行う必要があるので、効率の良い作業を行うことができなかった。
更には、仮に試料を把持して所定の場所に移動できたとしても、AFMピンセットを試料から脱離する際に、試料が付着する可能性があるので前記カーボンナノチューブ或いはカンチレバーと試料とが確実に離間して、正しく脱離が完了したか否かを検出することは困難なものであった。
【0007】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その主な目的は、基板上に載置された試料を確実且つ速やかに把持できると共に、把持が完了したか否かを高精度に検出することができる試料操作装置を提供することである。
また、別の目的としては、試料に応じて把持力を調整することができると共に、把持終了後に試料の脱離が完了したか否かを高精度に検出することができる試料操作装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、この発明は以下の手段を提供している。
本発明に係る試料操作装置は、基板表面上に載置された試料をマニピュレーションする試料操作装置であって、前記基板を固定するステージと、所定ギャップを空けた状態で隣接配置され、前記基板表面に対向配置された探針をそれぞれ先端に有する観察用プローブと把持用プローブとからなるピンセットと、前記基板と前記ピンセットとを、前記基板表面に平行な方向及び基板表面に垂直な方向に相対的に移動させる移動手段と、前記観察用プローブを所定周波数及び所定振幅で振動させる加振手段と、前記観察用プローブの変位を測定する変位測定手段と、前記把持用プローブを前記観察用プローブ側に移動させ、両プローブを前記所定ギャップよりも接近させるプローブ駆動手段と、前記移動手段、前記加振手段及び前記プローブ駆動手段を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段が、前記観察用プローブを振動させたAFM観察により前記試料を観察して少なくとも該試料の位置データ及び形状データを取得した後、両データに基づいて観察用プローブと前記把持用プローブとの間に試料が位置するように前記移動手段により前記ピンセットを位置決めさせ、該位置決め後、前記変位測定手段による測定結果をモニタしながら移動手段によりピンセットを前記基板表面から一定距離離間した位置に高さ設定し、その後、設定した高さで変位測定手段による測定結果をモニタしながら前記プローブ駆動手段により把持用プローブを観察用プローブ側に移動させて、把持開始点を検出しながら試料を把持させることを特徴とするものである。
【0009】
この発明に係る試料操作装置においては、まず、加振手段により観察用プローブを振動させながら、移動手段によりピンセットと基板とを相対的に移動させて基板表面上のAFM観察を行う。具体的には、ピンセットと基板表面との距離を、観察用プローブの振動状態が一定(即ち、自由振動振幅からの減衰量が一定或いは自由振動周波数からの周波数ずれ量が一定、又は、自由振動位相からの位相ずれ量が一定)となるように高さ制御しながら観察を行う。これにより、少なくとも試料の位置データ及び形状データを取得することができ、試料が基板上のどの辺りに載置されているか、試料がどのような形状(高さ、外形形状等)であるかを把握することができる。
なお、観察終了後は、観察用プローブの振動を停止させても良いし、引き続き振動させた状態にしても良い。
【0010】
続いて、取得した位置データ及び形状データに基づいて、観察用プローブと把持用プローブとの間に試料が位置するように、移動手段によりピンセットを位置決めさせる。特に、基板上のどの辺りに試料が載置されているかを既に把握しているので、ピンセットを速やかに位置決めすることができる。
続いて、位置決めした位置から移動手段によりピンセットと基板とを接近させると共に、ピンセットを基板表面から一定距離離間した位置に高さ設定する。この際、変位測定手段による測定結果をモニタしているので、観察用プローブの変位に基づいて所望する高さにピンセットを位置させることができる。これにより、試料を間に挟んで観察用プローブの探針と把持用プローブの探針とが、試料の両側に位置した状態となる。
【0011】
続いて、この設定した高さで、プローブ駆動手段により把持用プローブを観察用プローブ側に移動させて、両プローブを所定ギャップよりも接近させる。すると、把持用プローブの探針は、試料に接近した後、該試料に接触すると共に、さらなる移動によって試料を観察用プローブに向けて押し始める。そして、試料が観察用プローブの探針に接触することで、該試料を両プローブによって把持することができる。
【0012】
この把持を行っている間、変位測定手段による測定結果をモニタしているので、試料が観察用プローブに接触したこと、即ち、把持開始点を直ちに検出することができる。従って、試料の把持が完了したか否かを高精度に検出することができる。また、試料の形状に応じてピンセットを位置決めしているので、最適な位置を把持することができ、従来のように不適切な位置を把持することで試料が移動してしまうといった可能性を極力なくすことができる。従って、試料を確実に把持することができる。
【0013】
上述したように本発明に係る試料操作装置によれば、基板上に載置された試料を確実且つ速やかに把持できると共に、把持が完了したか否かを高精度に検出することができる。よって、マニピュレーション作業を効率良く行うことができる。
【0014】
また、本発明に係る試料操作装置は、上記本発明の試料操作装置において、前記制御手段が、前記位置決めが終了した後、前記加振手段により前記観察用プローブを前記所定周波数及び前記所定振幅で振動させた状態で前記ピンセットと前記基板とを接近させ、該基板との接触により観察用プローブの振幅が減衰して所定振幅よりも予め決められた量だけ小さくなった第1の減衰値に達したときに前記高さ設定を行うと共に、前記試料が観察用プローブに押し当てられることで振幅がさらに減衰して第1の減衰値よりも予め決められた量だけ小さくなった第2の減衰値に達したときに前記把持開始点を検出することを特徴とするものである。
【0015】
この発明に係る試料操作装置においては、観察が終了した後、引き続き観察用プローブを振動させ、この状態のまま試料の把持を行う。即ち、観察が終了した後、引き続き観察用プローブを所定周波数及び所定振幅で振動させた状態で、ピンセットを位置決めすると共に高さ設定を行う。高さ設定を行う場合には、まず位置決めした位置でピンセットと基板とを接近させる。すると、観察用プローブの探針と基板との間に働く原子間力によって観察用プローブの振幅が徐々に減衰し始める。そして、さらなる接近によって観察用プローブの探針と基板とが接触すると、振幅がさらに減衰して、初期の振幅、即ち所定振幅よりも予め決められた量だけ小さくなった第1の減衰値に達する。このときに、高さ設定を行う。これにより、振動している観察用プローブを所望する高さに確実に位置させることができる。
【0016】
また、観察用プローブと把持用プローブとの間で試料を把持すると、試料によって観察用プローブが押し当てられるので、観察用プローブの振動が妨げられて振幅がさらに減衰する。そこで、観察用プローブの振動が第1の減衰値よりも予め決められた量だけさらに小さくなった第2の減衰値に達したときに、把持が行われたと判断する。つまり、この時点が把持開始点となる。このように、振幅の減衰量を指標とすることで、ピンセットの高さ設定や把持を確実に行うことができる。
【0017】
また、本発明に係る試料操作装置は、上記本発明の試料操作装置において、前記制御手段が、前記高さ設定後、前記観察用プローブの振幅を、該位置で前記基板表面に対して観察用プローブが非接触状態で振動する振幅に再設定することを特徴とするものである。
【0018】
この発明に係る試料操作装置においては、高さ設定した後、第1の減衰値の振幅で振動している観察用プローブの振幅を、観察用プローブが基板表面に対して非接触となる振幅に再設定する。つまり、高さ設定した時点で、観察用プローブは、基板表面に周期的に接触しながら第1の減衰値で振動している状態となっている。しかしながら、上述したように振幅を再設定することで、高さ設定した後、基板表面に接触させることなく観察用プローブを振動させることができる。従って、基板表面との接触に起因する振幅変化を無視して、試料把持による減衰値だけを指標にすることができるので、試料を把持したことをより高精度に検出することができる。
【0019】
また、本発明に係る試料操作装置は、上記本発明の試料操作装置において、前記高さ設定の際、前記一定距離が前記試料の高さの1/2以下となるように前記第1の減衰値が設定されていることを特徴とするものである。
【0020】
この発明に係る試料操作装置においては、両プローブの探針と基板表面との間隔を試料の高さの1/2以下に設定するので、試料を把持する際に両プローブの探針と試料との接触面積をできるだけ多く確保することができる。よって、試料をより安定して把持することができ、マニピュレーション作業を安定性して行うことができる。
【0021】
また、本発明に係る試料操作装置は、上記本発明の試料操作装置において、前記制御手段が、前記位置決めが終了した後、前記加振手段を停止した状態で前記ピンセットと前記基板とを接近させ、前記観察用プローブの撓みが予め決められた規定値に達したときに前記高さ設定を行うと共に、前記試料が観察用プローブに押し当てられることで観察用プローブの捩れが測定されたときに前記把持開始点を検出することを特徴とするものである。
【0022】
この発明に係る試料操作装置においては、観察が終了した後、観察用プローブの振動を停止させた状態で試料の把持を行う。即ち、観察が終了した後、観察用プローブの振動を停止させた状態で、ピンセットを位置決めすると共に高さ設定を行う。高さ設定を行う場合には、まず位置決めした位置でピンセットと基板とを接近させる。すると、観察用プローブの探針と基板との間に働く原子間力によって観察用プローブが徐々に撓んでくる。そして、観察用プローブの撓みが予め決められた規定値に達したときに、高さ設定を行う。これにより、観察用プローブを所望する高さに確実に位置させることができる。
【0023】
また、観察用プローブと把持用プローブとの間で試料を把持すると、試料によって観察用プローブに押し当てられるので、観察用プローブに捩れが生じる。そこで、観察用プローブの捩れが測定されたときに、把持が行われたと判断する。つまり、この時点が把持開始点となる。このように、観察用プローブの振動を停止した状態であっても、ピンセットの高さ設定や把持を確実に行うことができる。特に、観察用プローブの振動を停止させているので、硬い試料やサイズが大きい(例えば1μm以上)試料であっても、安定して把持することができる。
【0024】
また、本発明に係る試料操作装置は、上記本発明の試料操作装置において、前記制御手段が、前記高さ設定を行う際、前記ピンセットと前記基板とを一旦接触させた後、前記観察用プローブの撓みが前記規定値に達するまでピンセットと基板とを離間させることで高さ設定を行うことを特徴とするものである。
【0025】
この発明に係る試料操作装置においては、ピンセットを高さ設定する際に、一旦基板に接触させてから引き上げ(離間)動作を行って高さ設定するので、観察用プローブの撓みに基づいてより正確に高さ設定することができる。
【0026】
また、本発明に係る試料操作装置は、上記本発明の試料操作装置において、前記高さ設定の際、前記一定距離が前記試料の高さの1/2以下となるように前記規定値が設定されていることを特徴とするものである。
【0027】
この発明に係る試料操作装置においては、両プローブの探針と基板表面との間隔を試料の高さの1/2以下に設定するので、試料を把持する際に両プローブの探針と試料との接触面積をできるだけ多く確保することができる。よって、試料をより安定して把持することができ、マニピュレーション作業を安定性して行うことができる。
【0028】
また、本発明に係る試料操作装置は、上記本発明の試料操作装置において、前記制御手段が、前記試料の物性に応じて前記把持開始点から前記把持用プローブをさらに前記観察用プローブ側に移動させて、把持力を調整することを特徴とするものである。
【0029】
この発明に係る試料操作装置においては、試料の物性に応じて把持力を調整できるので、従来のように試料を変形させたり、潰してしまったり、弾いて他の場所に飛ばしてしまったりすることがなく、確実に把持することができる。従って、マニピュレーション作業を安定性して行うことができる。
【0030】
また、本発明に係る試料操作装置は、上記本発明の試料操作装置において、前記制御手段が、前記所定ギャップと、前記把持用プローブが初期位置から前記把持開始点までに移動した移動距離とから、前記試料のサイズを算出することを特徴とするものである。
【0031】
この発明に係る試料操作装置においては、観察用プローブと把持用プローブとの初期の間隔、即ち予め既知の間隔とされている所定ギャップから、把持用プローブが初期位置から把持開始点までに移動した移動距離を減算することで、試料のサイズを算出することができる。このように、試料のサイズを算出しながら、該試料を把持することができる。
【0032】
また、本発明に係る試料操作装置は、上記本発明の試料操作装置において、前記制御手段が、前記試料の把持が終了した後、前記把持用プローブを前記観察用プローブから離間する方向に移動させて初期位置に戻すと共に前記ピンセットを前記基板表面から離間させ、その後、観察用プローブを振動させて、このときの振動状態と把持前の振動状態とを比較することで試料が脱離したか否かを検出することを特徴とするものである。
【0033】
この発明に係る試料操作装置においては、試料の把持が終了した後、把持用プローブを初期位置に戻して試料の把持を解くと共に、ピンセットを基板表面から十分に離間させる。そして、観察用プローブを再度振動させる。この際、観察用プローブの探針に試料が付着しておらず、試料が脱離していた場合には、観察用プローブは把持を行う前の振動状態で振動する。一方、観察用プローブの探針に試料が付着していた場合には、観察用プローブの振動状態が把持を行う前の振動状態とは異なる振動をする。
従って、把持前の振動状態と比較することで、試料の脱離が完了したか否かを検出することができ、マニピュレーション作業の信頼性を高めることができる。
【0034】
また、本発明に係る試料操作装置は、上記本発明の試料操作装置において、前記制御手段が、振動状態の比較を行った後、前記把持開始点に再び達するまで前記把持用プローブを再度観察用プローブ側に移動させることで、前記試料が脱離したか否かを検出することを特徴とするものである。
【0035】
この発明に係る試料操作装置においては、振動状態の比較を行った後、初期位置まで戻した把持用プローブを再度把持開始点まで移動させる。ここで、試料の把持を解いたときに、観察用プローブ側ではなく把持用プローブの探針側に試料が付着していた場合には、把持用プローブを把持開始点に戻したときに、試料が再度把持されるので観察用プローブが変位する。一方、把持用プローブに試料が付着していない場合には、観察用プローブは何ら変位しない。従って、把持用プローブを再度把持開始点に戻すことで、試料が観察用プローブだけでなく把持用プローブ側にも付着していないことを確認することができ、脱離が完了したか否かをより高精度に検出することができる。
【0036】
また、本発明に係る試料操作装置は、上記本発明の試料操作装置において、前記把持用プローブを前記把持開始点に再び達するまで移動させた時の前記観察用プローブの振動状態を前記変位検出手段で検出することで、前記試料が脱離したか否かを検出することを特徴とするものである。この試料操作装置においては、上述したように観察用プローブの振動状態を検出することで、把持用プローブに試料が付着しているか否かを検出することができる。
【0037】
この発明に係る試料操作装置においては、把持用プローブを把持開始点に戻したときに、該把持用プローブに試料が付着してない場合には観察用プローブは何ら変位しないので、振動状態が変化しない。一方、把持用プローブに試料が付着していた場合には、観察用プローブの振動状態が変化する。従って、観察用プローブの振動状態を検出することで、把持用プローブに試料が付着しているか否かを高精度に検出することができる。
【発明の効果】
【0038】
この発明に係る試料操作装置によれば、基板上に載置された試料を確実且つ速やかに把持できると共に、把持が完了したか否かを高精度に検出することができる。よって、マニピュレーション作業を効率良く行うことができる。更には、試料に応じて把持力を調整することができると共に、把持終了後に試料の脱離が完了したか否かを高精度に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明に係る試料操作装置の一実施形態について、図1から図8を参照して説明する。なお、本実施形態では、光てこ方式を利用した場合を例に挙げて説明する。
【0040】
本実施形態の試料操作装置1は、基板表面2a上に載置された試料Sをマニピュレーションする装置であって、図1及び図2に示すように、試料台(ステージ)3と、ピンセット4と、移動手段5と、加振手段6と、変位測定手段7と、プローブ駆動手段8と、制御手段9と、を備えている。
【0041】
操作対象となる試料Sが載置されている基板2は、上記試料台3上に固定されている。上記ピンセット4は、所定ギャップ(G)を空けた状態で隣接配置され、基板表面2aに対向配置された探針15a、16aをそれぞれ先端に有する観察用プローブ15と、把持用プローブ16とから構成されている。これら両プローブ15、16は、シリコンにより形成されており、ホルダ部17に固定された本体部15b、16bによってそれぞれ片持ち状態に支持されている。
なお、本実施形態では、観察用プローブ15と把持用プローブ16とが、初期段階で予め4μmの間隔が空いた状態となっている。つまり、所定ギャップ(G)は、4μmとされている。
【0042】
観察用プローブ15には、該観察用プローブ15を振動させる圧電体20が固定されている。この圧電体20は、圧電体制御部21からの信号を受けて所定周波数(f)及び所定振幅(A)で振動するようになっており、該振動を観察用プローブ15に伝えている。これにより、観察用プローブ15は、圧電体20と同様に所定周波数(f)及び所定振幅(A)で振動するようになっている。即ち、これら圧電体20及び圧電体制御部21は、上記加振手段6として機能する。
【0043】
把持用プローブ16の基端側(根元側)は、二股に分かれており、この二股の部分が熱アクチュエータとして機能する加熱部22とされている。特にこの加熱部22の一部22bは、他の部分よりも細長い形状に形成されており、通電加熱による線膨張によって、把持用プローブ16を観察用プローブ15側に接近させることができるようになっている。また、この加熱部22は、加熱電源23に接続されており、該加熱電源23によって通電加熱が制御されている。即ち、これら加熱部22及び加熱電源23は、把持用プローブ16を観察用プローブ15側に移動させて、両プローブ15、16を所定ギャップ(G)よりも接近させる上記プローブ駆動手段8として機能する。
【0044】
なお、本実施形態では、観察用プローブ15と把持用プローブ16との長さが異なっており、共振周波数がそれぞれ異なるように設定されている。但し、この長さではなく、幅や厚み等を変えることで、両プローブ15、16の共振周波数が異なるように構成しても構わない。また、観察用プローブ15と把持用プローブ16とは、それぞれ電気的に絶縁されていると共に、別々に電位が設定できるようにフローティングとされている。通常は、試料台3と同電位(アース電位)とされている。
【0045】
上記試料台3はXYスキャナ24上に載置されており、該XYスキャナ24は図示しない防振台上に載置されている。このXYスキャナ24は、例えばピエゾ素子であり、XY走査系とZサーボ系を含むXYZスキャナ制御部25から電圧を印加されることで、基板表面2aに平行なXY方向に微小移動するようになっている。これにより、基板2及び試料SをXY方向に微小移動させることが可能とされている。
また、上記ホルダ部17は、Zスキャナ26にぶら下がるように固定されている。このZスキャナ26は、XYスキャナ24と同様に、例えばピエゾ素子であり、XYZスキャナ26制御部25から電圧を印加させることで、基板表面2aに垂直なZ方向に微小移動するようになっている。これにより、ピンセット4をZ方向に微小移動させることが可能とされている。
【0046】
即ち、これらXYスキャナ24、Zスキャナ26、XYZスキャナ制御部25は、基板2とピンセット4とを、基板表面2aに平行なXY方向及び基板表面2aに垂直なZ方向の3次元方向に相対的に移動させる上記移動手段5として機能する。
【0047】
また、試料台3上には、観察用プローブ15の裏面側に形成された図示しない反射面に対してレーザ光Lを照射するレーザ光源30と、反射面で反射されたレーザ光Lを、ミラー31を利用して受光する光検出部32と、が設けられている。この光検出部32は、例えば入射面が2分割或いは4分割されたフォトダイオードであり、レーザ光Lの入射位置から観察用プローブ15の振動状態を検出する。そして、光検出部32は、検出した観察用プローブ15の振動状態の変位をDIF信号としてプリアンプ33に出力している。即ち、これらレーザ光源30、ミラー31、光検出部32は、観察用プローブ15の変位を測定する上記変位測定手段7として機能する。
【0048】
また、光検出部32から出力されたDIF信号は、プリアンプ33によって増幅された後、交流−直流変換回路34に送られて直流変換され、Z電圧フィードバック回路35に送られる。Z電圧フィードバック回路35は、直流変換されたDIF信号が常に一定となるように、XYZスキャナ制御部25をフィードバック制御する。これにより、試料Sの観察を行う際に、基板2とピンセット4との距離を、観察用プローブ15の振動状態が一定となるように、具体的には振幅の減衰量或いは周波数のずれ量、又は、位相のずれ量が一定となるように制御することができる。
【0049】
また、このZ電圧フィードバック回路35には、制御部36が接続されており、該制御部36がZ電圧フィードバック回路35により上下させる信号に基づいて、基板表面2a上の観察データを取得することができるようになっている。これにより、少なくとも試料Sの位置データや形状データを取得することができるようになっている。これらZ電圧フィードバック回路35及び制御部36は、上記制御手段9として機能する。なお、この制御手段9は、上述した各構成品を総合的に制御しており、試料Sの観察の観察を行った後、該試料Sのマニピュレーション(操作)を行うように制御している。
【0050】
次に、このように構成された試料操作装置1により、基板表面2a上の試料Sを観察した後、該試料Sをマニピュレーションする場合について、以下に説明する。
始めに、試料Sをマニピュレーションするに当たって、制御手段9は取得工程と、位置決め工程と、高さ設定工程と、把持工程と、脱離工程とを行うように各構成品を制御するように設定されている。
【0051】
取得工程は、観察用プローブ15を振動させたAFM観察により試料Sを観察して少なくとも該試料Sの位置データ及び形状データを取得する工程である。位置決め工程は、取得したデータに基づいて観察用プローブ15と把持用プローブ16との間に試料Sが位置するように移動手段5によりピンセット4を位置決めする工程である。高さ設定工程は、変位測定手段7による測定結果をモニタしながら移動手段5によりピンセット4を基板表面2aから一定距離(D)離間した位置に高さ設定する高さ工程である。把持工程は、設定した高さで変位測定手段7による測定結果をモニタしながら、プローブ駆動手段8により把持用プローブ16を観察用プローブ15側に移動させて、把持開始点を検出しながら試料Sを把持する工程である。脱離工程は、把持した試料Sを解放して、ピンセット4から試料Sを脱離させる工程である。
【0052】
これら各工程について、以下に詳細に説明する。なお、本実施形態では、観察用プローブ15を振動させた状態で試料Sを把持する場合を例に挙げて説明する。
まず始めに、初期設定を行う。即ち、観察用プローブ15の反射面に確実にレーザ光Lが入射するように、また、反射したレーザ光Lが光検出部32に確実に入射するように、レーザ光源30及び光検出部32の位置を調整する。また、圧電体制御部21から圧電体20に対して信号を出力して、圧電体20を所定周波数(f)及び所定振幅(A)で振動させる。これにより、観察用プローブ15は、所定周波数(f)及び所定振幅(A)で振動する。
【0053】
この初期設定が終了した後、試料SのAFM観察を行う。ここでは、振動振幅制御を例に挙げて説明する。
具体的には、観察用プローブ15を振動させながら、ピンセット4と基板表面2aとの距離を、観察用プローブ15の振動状態が一定となるように高さ制御した状態で、XYスキャナ24により基板表面2aの走査を行う。この際、基板表面2aの凹凸に応じて観察用プローブ15の振幅が増減しようとするので、光検出部32に入射するレーザ光L(反射面で反射したレーザ光)の振幅が異なる。光検出部32は、この振幅に応じたDIF信号をプリアンプ33に出力する。出力されたDIF信号は、プリアンプ33によって増幅されると共に交流−直流変換回路34によって直流変換された後、Z電圧フィードバック回路35に送られる。
【0054】
Z電圧フィードバック回路35は、直流変換されたDIF信号が常に一定となるように(つまり、観察用プローブ15の振幅が一定となるように)。XYZスキャナ制御部25によりZスキャナ26をZ方向に微小移動させて、フィードバック制御を行う。これにより、基板表面2aとピンセット4との距離を、観察用プローブ15の振動状態が一定となるように高さ制御した状態で基板表面2aの走査を行うことができる。また、制御部36は、Z電圧フィードバック回路35により上下させる信号に基づいて、基板表面2a上の観察データを取得することができる。その結果、基板表面2a上に載置されている試料Sの位置データ及び形状データを取得することができ、試料Sが基板2のどの辺りに載置されているのか、試料Sがどのような形状であるかを把握することができる。その結果、試料Sの高さ(Hs)を事前に確認することができる。
【0055】
続いて、観察用プローブ15の振動を一旦停止させると共に、取得した位置データ及び形状データに基づいて、観察用プローブ15と把持用プローブ16との間に試料Sが位置するようにXYスキャナ24によりピンセット4を位置決めさせる。特に、基板2上のどの辺りに試料Sが載置されているかを既に把握しているので、ピンセット4を速やかに位置決めすることができる。なお、この位置決めする際、ピンセット4は基板表面2aから十分離しておく。
【0056】
続いて、位置決めした位置から移動手段5によりピンセット4と基板2とを接近させると共に、ピンセット4を基板表面2aから一定距離(D)離間した位置に高さ設定する。詳細に説明すると、図3(a)に示すように、まず、位置決めした位置で観察用プローブ15を所定周波数(f)、所定振幅(A)で振動(自励共振振動)させる。なお、このときの所定振幅(A)が試料Sの高さ(Hs)の1/2以下となるように、圧電体制御部21を調整しておく。また、このときの振動の所定周波数(f)、所定振幅(A)及びQ値(Q)を観察用プローブ15の自由振動時の値として記録しておく。
【0057】
ここで、観察用プローブ15の共振振動振幅のRMS値と、観察用プローブ15と基板2との距離と、の関係を示すフォースディスタンスカーブを図4に示す。この図4に示すように、観察用プローブ15が基板2に接近するにつれて、探針15aと試料Sとの間に働く力の影響を受けてRMS値が小さくなることが知られている。そこで、本実施形態では、基板2との接触により観察用プローブ15の振幅が減衰して、上記所定振幅(f)よりも予め決められた量だけ小さくなった値(A)をSET POINT1(以下、第1のセットポイント(第1の減衰値)Pとする)として設定すると共に、把持した試料Sが観察用プローブ15に押し当てられることで振幅がさらに減衰して第1のセットポイントPよりも予め決められた量だけ小さくなった値(A)をSET POINT2(以下、第2のセットポイント(第2の減衰値)Pとする)として設定しておく。
【0058】
両セットポイントP、Pを設定した後、観察用プローブ15を振動させた状態で、Zスキャナ26を作動させて基板2とピンセット4とをゆっくり接近させる。すると、変位測定手段7で測定される観察用プローブ15の振幅が、フォースディスタンスカーブに沿って徐々に小さくなってくる。そして、図3(b)に示すように、測定される振幅が、第1のセットポイントPとして設定した振幅(A)に達した時点で、Zスキャナ26を停止させ、Zサーボ系ロックする。これにより、観察用プローブ15を振動させた状態で、ピンセット4を基板表面2aから一定距離(D)だけ離間した位置に高さを固定することができる。その結果、試料Sを間に挟んで観察用プローブ15の探針15aと、把持用プローブ16の探針16aとが、試料Sの両側に位置した状態となる。
【0059】
なお、本実施形態では、上記一定距離(D)が試料Sの高さ(Hs)の1/2以下となるように第1のセットポイントPが設定されている。また、この一定距離(D)に高さ設定された際に、観察用プローブ15の探針15aは周期的に基板表面2aに接触した状態となっている。
【0060】
続いて、この設定した高さで、プローブ駆動手段8により把持用プローブ16を観察用プローブ15側に移動させる。即ち、加熱電源23により加熱部22を通電加熱させることで、把持用プローブ16を観察用プローブ15側に移動させ、観察用プローブ15と把持用プローブ16との距離を所定ギャップ(G)よりも接近させる。すると、図3(c)に示すように、把持用プローブ16の探針16aは、試料Sに接近した後、該試料Sに接触すると共に、さらなる移動によって図3(d)に示すように、試料Sを観察用プローブ15に向けて押し始める。そして、試料Sが観察用プローブ15の探針15aに接触することで、該試料Sを両プローブ15、16によって把持することができる。
【0061】
特に、この把持を行っている間、変位測定手段7による測定結果をモニタしているので、試料Sが観察用プローブ15に接触したこと、即ち、把持開始点を直ちに検出することができる。具体的には、観察用プローブ15と把持用プローブ16との間で試料Sを把持すると、押し当てられた試料Sによって観察用プローブ15の振動が妨げられるので、振幅がフォースディスタンスカーブに沿って第1のセットポイントPでの振幅よりもさらに減衰する。そして、振幅が第2のセットポイントPで設定した振幅(A)に達したときに、把持が行われたと判断する。つまり、この時点が把持開始点となる。
【0062】
上述したように、把持開始点を検出できるので、試料Sの把持が完了したか否かを高精度に検出することができる。また、試料Sの形状に応じてピンセット4を位置決めしているので、最適な位置を把持することができ、従来のように不適切な位置を把持することで試料Sが移動してしまうといった可能性を極力なくすことができる。従って、試料Sを確実に把持することができる。特に、振幅の減衰量を指標としているので、ピンセット4の高さ設定や把持を確実に行うことができる。
【0063】
また、一定距離(H)が試料Sの高さ(Hs)の1/2以下となるように設定しているので、試料Sを把持する際に、両プローブ15、16の探針15a、16aと試料Sとの接触面積をできるだけ多く確保することができる。よって、試料Sをより安定して把持することができ、マニピュレーション作業を安定して行うことができる。
【0064】
続いて、試料Sを把持した後、圧電体制御部21を停止させて、観察用プローブ15の振動を停止させる。そして、制御手段9は、試料Sの物性に応じて把持開始点から把持用プローブ16をさらに観察用プローブ15側に移動量ΔSだけ移動させて、把持力(押し込み量)を調整する。このように、試料Sの物性に応じて把持力を調整できるので、従来のように試料Sを変形させたり、潰してしまったり、弾いて他の場所に飛ばしてしまったりすることがなく、確実に把持を行うことができる。
【0065】
なお、両プローブ15、16を試料Sに押し込んだ際に、試料Sが弾性限界範囲の場合には、両プローブ15、16に反力F(F=ks・ΔS)(ks;試料Sと両プローブ15、16との合成ばね定数)が生じ、試料Sを把持力に対する反力が生じる。一方、生体試料Sのような非常に柔らかい試料Sの場合には、容易に試料Sの塑性変形が生じ、両プローブ15、16により押し込まれた部分が凹むように変形して把持が可能となる。いずれにしても、把持力を調整できるので、試料Sを確実に把持することができる。
【0066】
また、試料Sを把持した後、Zスキャナ26を作動させて試料Sを引き上げると共に、XYスキャナ24を作動させることで、把持した試料Sを任意の位置に搬送することも可能である。
また、把持開始点を把握しているので、制御手段9は、所定ギャップ(G)と、把持用プローブ16が初期位置から把持開始点までに移動した移動距離(G)とから、試料Sのサイズ(両プローブ15、16で把持した間隔)Gsを算出することも可能である。つまり、観察用プローブ15と把持用プローブ16との初期の間隔、即ち、予め既知の間隔(4μm)とされている所定ギャップ(G)から、把持用プローブ16が初期位置から把持開始点までに移動した移動距離(G)を減算することで、試料Sのサイズ(Gs)を算出することができる。
【0067】
ここで、熱アクチュエータである加熱部22は、移動距離(G)と通電電圧(V)との関係で以下の校正曲線(二次曲線)を得ることができる。
G1=βV(β;定数)なお、定数βは、サイズ既知の試料を複数個測定し、統計処理より求められた数値である。
従って、この校正曲線を利用して通電電圧(V)から、容易に移動距離(G)を求めることができる。よって、所定ギャップ(G)から移動距離(G)を減算することで、試料Sのサイズ(Gs)を容易に算出することができる。
【0068】
また、本実施形態の試料操作装置1によれば、試料Sの把持が終了した後、試料Sがピンセット4から脱離したか否かを高精度に検出することができる。
この場合には、まず、Zスキャナ26を作動させて、ピンセット4によって把持されている試料Sを基板表面2aに押し付ける。この際、観察用プローブ15が撓むので、変位測定手段7による測定結果に基づいて、試料Sが基板表面2aに接触したか否かを正確に判断することができる。続いて、この状態で加熱部22を通電加熱して、把持用プローブ16を初期位置に戻して試料Sの把持を解く。続いて、Zスキャナ26によりピンセット4を基板表面2aから十分に離間させる。一例として、試料Sの高さ(Hs)の2倍以上の距離だけ引き上げる。
【0069】
ピンセット4を引き上げた後、圧電体20に電圧を印加して観察用プローブ15を再度自励共振させると共に、その際の共振周波数及びQ値を測定する。そして、このときの共振周波数及びQ値を、初期の自由振動の値、即ち、所定周波数(f)及び、Q値(Q)の値と比較する。
この際、観察用プローブ15の探針15aに試料Sが付着しておらず、試料Sが脱離していた場合には、観察用プローブ15は把持を行う前の振動状態(上記f及びQ)で振動する。一方、観察用プローブ15の探針15aに試料Sが付着していた場合には、観察用プローブ15の振動状態が把持を行う前の振動状態とは異なる振動をする。
【0070】
なお、この場合には下記の式により共振周波数が低下する。
f2=1/(2π)・(k/(m+ms))1/2
(m;観察用プローブ15の質量、ms;付着した試料Sの質量、k;観察用プローブ15のばね定数)
このように、把持前の振動状態と比較することで、試料Sが観察用プローブ15から脱離したか否かを検出することができる。なお、観察用プローブ15に試料Sが付着していた場合には、試料Sを基板表面2aに押し付ける動作まで戻って、上述した各動作をその後繰り返せば良い。
【0071】
また、把持前の振動状態と比較した結果、ほぼ等しい振動状態であった場合には、加熱部22を通電加熱して、初期位置まで戻した把持用プローブ16を再度把持開始点まで移動させる。ここで、試料Sの把持を解いた際に、観察用プローブ15側でなく、把持用プローブ16の探針16a側に試料Sが付着していた場合には、把持用プローブ16を把持開始点に戻したときに、試料Sが再度把持されるので、観察用プローブ15が変位する。一方、把持用プローブ16に試料Sが付着していない場合には、観察用プローブ15は何ら変位しない。即ち、把持用プローブ16を再度把持開始点まで移動させた時の観察用プローブ15の振動状態を変位測定手段7で検出することで、試料Sが脱離したか否かを検出するようにすれば良く、観察用プローブ15の振動状態を検出することで把持用プローブ16に試料Sが付着しているか否かを検出することができる。
【0072】
また、把持開始点を超えて、観察用プローブ15に接触するまで把持用プローブ16を移動させると、試料Sが把持用プローブ16に付着していない場合には、把持用プローブ16の移動距離(G)が所定ギャップ(G)とほぼ等しくなる。この点からも、試料Sが付着しているか否かを検出することができる。
【0073】
そして、把持用プローブ16に試料Sが付着していない場合には、該試料Sが両プローブ15、16間に挟まれておらず、基板表面2a上に確実に移動したものと判断することができ、脱離が完了したか否かを高精度に検出することができる。
なお、把持用プローブ16に試料Sが付着していた場合には、試料Sを基板表面2aに押し付ける動作まで戻って、上述した各動作をその後繰り返せば良い。
【0074】
上述したように、本実施形態の試料操作装置1によれば、試料Sの把持の際に2本のプローブ、即ち、観察用プローブ15と把持用プローブ16と間に試料Sが軽く挟まった状態(把持開始点)を検知することができる。また、そのときの両プローブ15、16の間隔から、試料Sのサイズ(Hs)を測定することができると共に、試料Sが変形等しない範囲で一定量の押し込みを行いながら把持を行うことができる。従って、従来では困難であった下記の効果を奏することができる。
即ち、基板2上に載置された試料Sを確実且つ速やかに把持できると共に、把持が完了したか否かを高精度に検出することができ、マニピュレーション作業を効率良く行うことができる。また、試料Sに応じて把持力を調整することができ、試料Sの変形、潰れ、弾け飛び等を確実に防止することができる。更には、把持終了後に試料Sの脱離が完了したか否かを高精度に検出することができる。
【0075】
なお、上記実施形態では、高さ設定を行ってから試料Sの把持を行っている間、周期的に観察用プローブ15が基板表面2aに接触していたが、観察用プローブ15の感度をさらに上げるため、観察用プローブ15が基板表面2aに接触しないようにすることがより好ましい。
この場合には、高さ設定後、観察用プローブ15の振幅を、該位置で基板表面2aに対して観察用プローブ15が非接触状態で振動する振幅に再設定するようにすれば良い。
【0076】
具体的に説明すると、図5(a)に示すピンセット4の位置決めから、図5(b)に示すようにピンセット4を一定距離D1の高さに高さ設定した後、共振周波数付近で振動周波数を走査して、そのときの振動振幅カーブ(Qカーブ)を測定する。但し、圧電体制御部21の振幅を小さくし、観察用プローブ15が共振点でも空中で振動する振幅(微小振動状態;振幅A)に設定する。これにより、図5(c)に示すように、高さ設定した後、基板表面2aに接触させることなく観察用プローブ15を振動させることができる。なお、この場合には、再設定した振幅(A3)よりも小さい振幅(A)となる点を第2のセットポイントPとして設定すれば良い。
【0077】
続いて、この設定した高さで、加熱電源23により加熱部22を通電加熱させることで、把持用プローブ16を観察用プローブ15側に移動させ、観察用プローブ15と把持用プローブ16との距離を所定ギャップ(G)よりも接近させる。すると、把持用プローブ16の探針16aは、図5(d)に示すように試料Sに接触すると共に、さらなる移動によって試料Sを観察用プローブ15に向けて押し始める。そして、図5(e)に示すように、試料Sが観察用プローブ15の探針15aに接触することで、該試料Sを両プローブ15、16によって把持することができる。そして、振幅が第2のセットポイントPで設定した振幅(A)に達したときに、把持が行われたと判断する。つまり、この時点が把持開始点となる。
【0078】
特に、高さ設定した後、観察用プローブ15を基板表面2aに対して非接触状態にすることができるので、基板表面2aとの接触に起因する振幅変化を無視して、試料把持による減衰値だけを指標にすることが可能となり観察用プローブ15の感度を上げることができる。従って、振幅の減衰値を指標として、試料Sを把持したことをより高精度に検出することができる。
【0079】
また、上記第1実施形態では、観察用プローブ15を振動させ、その振動振幅が減衰して所定の値(第1のセットポイントP、第2のセットポイントP)に達したことにより、把持開始点を検出したが、観察用プローブ15の振動を停止させた状態で、把持開始点を検出しながら試料Sの把持を行っても構わない。
【0080】
この場合には、位置決めが終了した後、加振手段6を停止した状態でピンセット4と基板2とを接近させ、観察用プローブ15の撓みが予め決められた規定値に達したときに高さ設定を行うと共に、観察用プローブ15の捩れが測定されたときに把持開始点を検出するように制御手段9で各構成品を制御すれば良い。この場合の方法について、以下に具体的に説明する。
ここでは、ピンセット4と基板2とを一旦接触させた後、観察用プローブ15の撓みが規定値に達するまでピンセット4と基板2とを離間させることで高さ設定を行う場合を例にして説明する。
【0081】
まず、試料Sの観察が終了した後、観察用プローブ15の振動を停止させた状態でピンセット4の位置決めを行う。続いて、図6(a)に示すように、Zスキャナ26によりピンセット4と基板2とを接近させた後、両者を接触させる。この際、観察用プローブ15は、基板2に接近すると基板2への押圧により撓みが大きくなり一定の値に達する。よって、この値を検出したときに、ピンセット4と基板2とが接触したと判断して、Zスキャナ26を停止させる。
【0082】
続いて、再度Zスキャナ26を作動させて、図6(b)に示すように、ピンセット4と基板2とを徐々に離間させる。つまり、ピンセット4の引き上げ動作を行わせる。そして、観察用プローブ15の撓みが基板2への押圧から解放されることにより規定値に達した時点で、Zスキャナ26を停止して、Zサーボ系をロックして高さの固定を行う。なお、このときの高さ(Hv)が、試料Sの高さ(Hs)の1/2以下となるように、予め規定値が設定されている。これにより、ピンセット4は、基板表面2aから一定距離(Hv)だけ離間した高さに設定される。
【0083】
続いて、図6(c)に示すように、加熱部22に通電加熱して把持用プローブ16を観察用プローブ15側に移動させ、試料Sを観察用プローブ15に向けて移動させる。そして、図6(d)に示すように、試料Sが観察用プローブ15に接触して把持が開始されると、観察用プローブ15が試料Sによって押されるので捩れが生じる。すると光検出部32は、観察用プローブ15の反射面で反射された後に入射してくるレーザ光Lの入射位置から、捩れ信号を検出する。よって、観察用プローブ15の捩れが測定されたときに、制御手段9は把持が行われたと判断する。つまり、この時点が把持開始点となる。
【0084】
このように、観察用プローブ15の振動を停止させた状態であっても、ピンセット4の高さ設定や試料Sの把持を確実に行うことができる。特に、観察用プローブ15の振動を停止させているので、硬い試料Sやサイズが大きい(例えば1μm以上)試料Sであっても、安定して把持することができる。
なお、観察用プローブ15の捩れが検出されない場合には、試料Sの把持が正しく行われていないことを意味する。
【0085】
なお、本発明の技術範囲は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
【0086】
例えば、上記実施形態では、ピンセット4側をZ方向、試料台3側をXY方向に移動させるスキャン方式としたが、この場合に限られず、ピンセット4側を3次元方向に移動させるようにしても構わないし、試料台3側を3次元方向に移動させるように構成しても構わない。いずれの場合であっても、スキャン方式が異なるだけで、上記実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0087】
また、上記実施形態では、変位測定手段7が光てこ方式により観察用プローブ15の変位検出を行ったが、光てこ方式に限定されるものではない、例えば、観察用プローブ15自身に変位検出機能(例えば、ピエゾ抵抗素子等)を設けた自己検知方式を採用しても構わない。
また、上記実施形態において、観察用プローブ15を振動させながら試料Sの把持を行う際に、基板表面2aに垂直なZ方向に自励共振振動させたが、この場合に限られず、捩れ方向に自励共振振動させても構わない。この場合であっても、同様の作用効果を奏することができる。
【0088】
また、上記実施形態では、プローブ駆動手段8が熱アクチュエータである加熱部22を利用して把持用プローブ16を観察用プローブ15側に移動させたが、熱アクチュエータに限定されるものではない。
例えば、静電容量アクチュエータ方式で把持用プローブ16を移動させても構わない。この場合には、図7及び図8に示す模式図のように、観察用プローブ15の本体部15b及び把持用プローブ16の本体部16bの一部をそれぞれ凹凸状に形成して櫛歯を形成すると共に、櫛歯となった領域にそれぞれ電極40、41を形成するように構成すれば良い。
【0089】
この場合には、両電極40、41間に電圧を印加することで、櫛歯がY方向に移動するので、その結果把持用プローブ16を観察用プローブ15側に移動させることができる。従って、この場合であっても、上記実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
但し、この静電アクチュエータ方式を採用した方が、把持用プローブ16を移動させる際に、熱アクチュエータのように熱ドリフトの影響を受け難いので、試料Sのサイズを測定するときや把持力を調整する際に有利である。
【0090】
また、静電アクチュエータ方式を採用して把持用プローブ16を移動させた場合、初期位置からの移動距離(G)の求め方を以下に説明する。
始めに、櫛歯間の静電容量をC、櫛歯間の電圧をV、櫛歯の移動方向をY軸とする。すると、櫛歯間に発生する静電気力(Fc)は、
Fc=(1/2)・(δC/δY)・Vとなる。
ここで、ピンセット4のばね定数をk、櫛歯の移動距離Xとすると、ピンセット4のばね力Fsと静電気力Fcとが釣り合うので、
Fc=Fs=(1/2)・(δC/δY)・V=X・kとなる。
よって、X=(1/2)・(δC/δY)・V・(1/k)となるので、移動距離(G)は、
=(m/2)・(δC/δY)・V・(1/k)となる。
なお、mは、拡大倍率(プローブ先端の移動距離/櫛歯の移動距離)である。
【0091】
上記式のうち、m、k、Cは、ピンセット4の形状、材質、雰囲気で決定される数値であり、通常の大気中室温動作では、一定とすることができる。従って、例えば既知の厚みの試料Sを把持し、その把持開始点での櫛歯印加電圧を求めることで、Gと印加電圧Vとの校正曲線、即ち、G=αV(二次曲線)(α;定数)を求めることができる。
その結果、上記式と印加電圧(V)とに基づいて、容易に把持用プローブ16の移動距離(G)を算出することができる。従って、静電アクチュエータ方式であっても、所定ギャップ(G)から移動距離(G)を減算することで、試料Sのサイズ(Gs)を算出することができる。但し、上述したように、静電アクチュエータ方式の方が熱ドリフトの影響を受け難いので、より正確に試料Sのサイズ(Gs)を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明に係る試料操作装置の一実施形態の構成図である。
【図2】図1に示す試料操作装置の構成品であるピンセットの斜視図である。
【図3】図1に示す試料操作装置により観察用プローブを振動させながら試料をマニピュレーションする場合の工程図であって、(a)はピンセットを位置決めさせた状態を示す図であり、(b)はピンセットを基板表面から一定距離離間した高さに高さ設定させた状態を示す図であり、(c)は把持用プローブを移動させて試料に接触させた状態を示す図であり、(d)はさらに把持用プローブを移動させて、観察用プローブとの間で試料を把持した状態を示す図である。
【図4】観察用プローブの共振振動振幅のRMS値と、観察用プローブと基板との距離と、の関係を示すフォースディスタンスカーブを示す図である。
【図5】図1に示す試料操作装置により観察用プローブを振動させながら試料を別の方法でマニピュレーションする場合の工程図であって、(a)はピンセットを位置決めさせた状態を示す図であり、(b)はピンセットを基板表面から一定距離離間した高さに高さ設定させた状態を示す図であり、(c)は観察用プローブが試料に非接触となるように振幅を再設定させた状態を示す図であり、(d)は把持用プローブを移動させて試料に接触させた状態を示す図であり、(e)はさらに把持用プローブを移動させて、観察用プローブとの間で試料を把持した状態を示す図である。
【図6】図1に示す試料操作装置により観察用プローブを振動させずに試料をマニピュレーションする場合の工程図であって、(a)はピンセットを基板表面に接触させた状態を示す図であり、(b)はピンセットを基板表面から一定距離離間した高さに高さ設定させた状態を示す図であり、(c)は把持用プローブを移動させて試料に接触させた状態を示す図であり、(d)はさらに把持用プローブを移動させて、観察用プローブとの間で試料を把持した状態を示す図である。
【図7】図2示すピンセットの変形例を示す図であって、静電アクチュエータ方式で把持用プローブを駆動させるピンセットの斜視図である。
【図8】図7に示すピンセットの上面図である。
【符号の説明】
【0093】
S 試料
所定ギャップ
第1のセットポイント(第1の減衰値)
第2のセットポイント(第2の減衰値)
1 試料操作装置
2 基板
2a 基板表面
3 試料台(ステージ)
4 ピンセット
5 移動手段
6 加振手段
7 変位測定手段
8 プローブ駆動手段
9 制御手段
15 観察用プローブ
15a 観察用プローブの探針
16 把持用プローブ
16a 把持用プローブの探針

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板表面上に載置された試料をマニピュレーションする試料操作装置であって、
前記基板を固定するステージと、
所定ギャップを空けた状態で隣接配置され、前記基板表面に対向配置された探針をそれぞれ先端に有する観察用プローブと把持用プローブとからなるピンセットと、
前記基板と前記ピンセットとを、前記基板表面に平行な方向及び基板表面に垂直な方向に相対的に移動させる移動手段と、
前記観察用プローブを所定周波数及び所定振幅で振動させる加振手段と、
前記観察用プローブの変位を測定する変位測定手段と、
前記把持用プローブを前記観察用プローブ側に移動させ、両プローブを前記所定ギャップよりも接近させるプローブ駆動手段と、
前記移動手段、前記加振手段及び前記プローブ駆動手段を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記観察用プローブを振動させたAFM観察により前記試料を観察して少なくとも該試料の位置データ及び形状データを取得した後、両データに基づいて観察用プローブと前記把持用プローブとの間に試料が位置するように前記移動手段により前記ピンセットを位置決めさせ、該位置決め後、前記変位測定手段による測定結果をモニタしながら移動手段によりピンセットを前記基板表面から一定距離離間した位置に高さ設定し、その後、設定した高さで変位測定手段による測定結果をモニタしながら前記プローブ駆動手段により把持用プローブを観察用プローブ側に移動させて、把持開始点を検出しながら試料を把持させることを特徴とする試料操作装置。
【請求項2】
請求項1に記載の試料操作装置において、
前記制御手段は、前記位置決めが終了した後、前記加振手段により前記観察用プローブを前記所定周波数及び前記所定振幅で振動させた状態で前記ピンセットと前記基板とを接近させ、該基板との接触により観察用プローブの振幅が減衰して所定振幅よりも予め決められた量だけ小さくなった第1の減衰値に達したときに前記高さ設定を行うと共に、前記試料が観察用プローブに押し当てられることで振幅がさらに減衰して第1の減衰値よりも予め決められた量だけ小さくなった第2の減衰値に達したときに前記把持開始点を検出することを特徴とする試料操作装置。
【請求項3】
請求項2に記載の試料操作装置において、
前記制御手段は、前記高さ設定後、前記観察用プローブの振幅を、該位置で前記基板表面に対して観察用プローブが非接触状態で振動する振幅に再設定することを特徴とする試料操作装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の試料操作装置において、
前記高さ設定の際、前記一定距離が前記試料の高さの1/2以下となるように前記第1の減衰値が設定されていることを特徴とする試料操作装置。
【請求項5】
請求項1に記載の試料操作装置において、
前記制御手段は、前記位置決めが終了した後、前記加振手段を停止した状態で前記ピンセットと前記基板とを接近させ、前記観察用プローブの撓みが予め決められた規定値に達したときに前記高さ設定を行うと共に、前記試料が観察用プローブに押し当てられることで観察用プローブの捩れが測定されたときに前記把持開始点を検出することを特徴とする試料操作装置。
【請求項6】
請求項5に記載の試料操作装置において、
前記制御手段は、前記高さ設定を行う際、前記ピンセットと前記基板とを一旦接触させた後、前記観察用プローブの撓みが前記規定値に達するまでピンセットと基板とを離間させることで高さ設定を行うことを特徴とする試料操作装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の試料操作装置において、
前記高さ設定の際、前記一定距離が前記試料の高さの1/2以下となるように前記規定値が設定されていることを特徴とする試料操作装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の試料操作装置において、
前記制御手段は、前記試料の物性に応じて前記把持開始点から前記把持用プローブをさらに前記観察用プローブ側に移動させて、把持力を調整することを特徴とする試料操作装置。
【請求項9】
請求項8に記載の試料操作装置において、
前記制御手段は、前記所定ギャップと、前記把持用プローブが初期位置から前記把持開始点までに移動した移動距離とから、前記試料のサイズを算出することを特徴とする試料操作装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の試料操作装置において、
前記制御手段は、前記試料の把持が終了した後、前記把持用プローブを前記観察用プローブから離間する方向に移動させて初期位置に戻すと共に前記ピンセットを前記基板表面から離間させ、その後、観察用プローブを振動させて、このときの振動状態と把持前の振動状態とを比較することで試料が脱離したか否かを検出することを特徴とする試料操作装置。
【請求項11】
請求項10に記載の試料操作装置において、
前記制御手段は、振動状態の比較を行った後、前記把持開始点に再び達するまで前記把持用プローブを再度観察用プローブ側に移動させることで、前記試料が脱離したか否かを検出することを特徴とする試料操作装置。
【請求項12】
請求項11に記載の試料操作装置において、
前記把持用プローブを前記把持開始点に再び達するまで移動させた時の前記観察用プローブの振動状態を前記変位検出手段で検出することで、前記試料が脱離したか否かを検出することを特徴とする試料操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−298671(P2008−298671A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−146734(P2007−146734)
【出願日】平成19年6月1日(2007.6.1)
【出願人】(503460323)エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社 (330)
【Fターム(参考)】