説明

試料水採取装置用水質分析計の保管方法及びその装置

【課題】電極式水分析計の電極に通水する純水の使用量を低減し、かつ純水の排水処理装置での排水処理費用も低減する。
【解決手段】サンプルを水質分析するときには、火力発電所等の発電プラント等の配管のサンプル弁2を開とし、その下流の電極式水分析計の電極3にサンプルを供給する。一方、サンプルの水質分析をしないときには、サンプル弁2を閉とし、電極式水分析計の電極3に、純水タンク4のダミー水弁5を開として純水を供給して電極3に純水を通水し、一定時間経過したら電極式水分析計の電極3下流のサンプル水出口弁6を閉とし、ダミー水弁5も閉とし、電極3に純水を滞留させ、電極3を乾燥させない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火力発電所等の発電プラントにおける試料水分析技術に係り、特にそのサンプル水(試料水)の水質を分析する試料水採取装置用水質分析計の保管方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所等の発電プラントでは、水質に起因するプラント構成材の腐食事故を防止するために、試料水採取装置を用いて水質を調整する必要がある。例えば、高温、高圧の蒸気プラントでは、水に起因する事故を防止するため一次水の処理と水質の調整が重要である。試料採取装置は、水質調整装置の一環として蒸気プラント系統内の水質調整を適正に行い、蒸気プラントの安全なる運転を維持するために、系統内の水質を監視する目的で、各点の試料を一箇所に集め、減温、減圧、流量調節を行い各種の分析を行う装置である。
【0003】
蒸気プラントの水質調整は一次水処理に比較し、その対象の様相が非常に異なる。即ち、系統内の水は一般に高温、高圧であり、その水質および性状はプラントの運転状況に応じて変化するものである。従って、試料採取装置の取扱い及び操作は注意を要する。
【0004】
試料水の水質を分析する方法について、図3の概略系統図に基づいて説明する。
試料採取装置を用いて蒸気プラントの水質分析する際に、試料管の内部に異物が付着していると、正確な分析が不可能となる。そこで、試料採取装置を事前に洗浄を行う必要がある。なお、装置外の試料管は、装置に接続する前に充分な洗浄を行う。
蒸気プラントが運転を開始したらフラッシング弁A1を開とし、装置外配管のフラッシングを行う。このフラッシングが終了したらサンプル弁B2を徐々に開とし、装置内の配管各部に漏洩がないか確認しながら全開とする。
【0005】
次に、試料手分析弁またはコンフローを開き、水質を分析するサンプル(試料)を流出させ、所定時間試料管を洗浄する。この際、サンプル(試料)が規定流量より流れ過ぎ、試料温度が上昇するときは、固定式減圧機構の減圧が不足しているので、減圧機構の芯線を交換し減圧機構を再調整する必要がある。洗浄後、総ての系統にサンプル(試料水)を通水し漏洩チェックを行う。
【0006】
弁開閉タイミングの動作について、図4のタイミングチャート図に基づいて説明する。
試料採取をするときは、上述したようにフラッシング弁A1を開としてフラッシングし、このフラッシング後にフラッシング弁A1を閉とし、引続きサンプル弁B2を開とし、所定時間この開状態を維持する。最後にサンプル弁B2を閉とし、サンプルが停止すると、電極式水分析計の電極3に純水タンク4からダミー水弁C5を開として純水を供給し、この電極3を乾燥させないようにスタンバイの状態に維持する。
【0007】
図5の概略系統図に示すように、自動コンフロー採取範囲外の低圧(約7kgt/G)になるとサンプル弁B2を閉として機能を停止する。自動コンフローにバイパス弁が設けられている場合はサンプル弁B2は例えば2〜3kgt/G以下の採取範囲外となるとサンプル弁B2を閉とする。例えば2〜3kgt/G〜7kgt/Gの間ではDバイパス弁を開となり規定流量のサンプルを採取し、水質分析を実施する。
【0008】
このような試料水採取装置の水質分析に関する技術が提案されている、例えば、特許文献1の特開平7−83914号の特開公報「試料水採取装置用水質分析計の異常監視装置」に示すように、発電所等のボイラプラントに対する水質調整装置における試料水採取装置において、前記試料水採取装置のそれぞれの水質分析計に予め所定の水質に調整された試薬を流すように構成し、前記水質分析計の監視ないし管理を一括して処理することを特徴とする試料水採取装置用水質分析計の異常監視装置が提案されている。特許文献1の本発明によれば、試料水採取装置の水質分析計に、予め所定の水質に調整された試薬を流すことにより、前記水質分析計の保守点検を一括して処理することができるものである。
【特許文献1】特開平7−83914号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、従来の試料採取装置の電極式水分析計は、その電極3を長時間乾燥させると、電極3が水を含んで指示が安定化するまで長時間を要する。また、固体が電極式水分析計の電極3に付着すると除去困難な皮膜を形成して、電極式水分析計が使用できなくなる。そこで、図6の概略説明図に示すように、試料採取装置の停止時において純水をダミー水弁5を開とし、電極式水分析計の電極3に常時流し続け、電極3を乾燥させないようにしている。そこで、純水を電極式水分析計の電極3に大量に放水し続けるという問題を有していた。
【0010】
また、この電極式水分析計の電極3を通過した純水は、そのまま排水処理装置7に送っているので、排水処理の費用も高騰するという問題を有していた。
【0011】
本発明は、かかる問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、水質分析計の電極に純水を通水する系統に工夫を加えることで、純水の使用量を低減でき、かつ純水の排水処理装置での排水処理費を低減することができる試料水採取装置用水質分析計及びその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、サンプルを水質分析するときに、火力発電所等の発電プラント等の配管のサンプル弁(2)を開とし、その下流の電極式水分析計の電極(3)にサンプルを供給し、サンプルの水質分析をしないときに、前記サンプル弁(2)を閉とし、前記電極式水分析計の電極(3)に、純水タンク(4)のダミー水弁(5)を開として純水を供給して該電極(3)に純水を通水し、一定時間経過したら電極式水分析計の電極(3)下流のサンプル水出口弁(6)を閉とし、前記ダミー水弁(5)も閉とし、該電極(3)に純水を滞留させる、ことを特徴とする試料水採取装置用水質分析計の保管方法が提供される。
前記サンプル水出口弁(6)及び前記ダミー水弁(5)をタイマ(9)により定期的に開閉させ、前記電極式水分析計の電極(3)に滞留させる純水を入れ替えることができる。
【0013】
試料水採取装置用水質分析計の保管装置は、火力発電所等の発電プラント等の配管からサンプルを電極式水分析計の電極(3)に供給するサンプル弁(2)と、前記サンプル弁(2)と前記電極式水分析計の電極(3)との間に、純水を純水タンク(4)から供給するダミー水弁(5)と、前記電極式水分析計の電極(3)の下流に配置した、サンプル又は純水を排出するサンプル水出口弁(6)と、を備え、前記試料水採取装置の停止時に、前記純水タンク(4)から前記電極式水分析計の電極(3)に純水を通水し、かつ一定時間純水を滞留させるように構成構成したものである。
【発明の効果】
【0014】
上記構成の発明では、電極式水分析計の電極(3)に純水を通水させ、一定時間経過したらサンプル水出口弁(6)を閉とし、ダミー水弁(5)も閉として電極式水分析計の電極(3)に純水を滞留させ、この電極(3)が乾燥しないように保管することができる。従来のように純水を放水し続けないので、純水の使用量を低減することができ、排水処理装置(7)での排水処理費を低減することができる。
【0015】
サンプル水出口弁(6)及びダミー水弁(5)をタイマ(9)で定期的に開閉させることにより、更に無駄な純水の消費を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の試料水採取装置用水質分析計の保管方法は、試料水採取装置の停止時に、電極式水分析計の電極に純水を通水させ、一定時間経過したらサンプル水出口弁を閉とし、ダミー水弁を閉とし、電極式水分析計の電極に純水を滞留させ、電極を乾燥させないようにする保管方法である。
【実施例1】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の水質分析計の保管方法を実施する試料水採取装置を示す概略系統図である。
実施例1の水質分析計の保管方法を実施する試料水採取装置は、火力発電所等の発電プラント等の配管からサンプル(試料水)を採取するために、配管と電極式水分析計の電極3との間にサンプル弁2を設け、この電極式水分析計の電極3の下流に、分析が終了したサンプルを排出するサンプル水出口弁6を備えた装置である。このサンプル水出口弁6の下流に排水処理装置7を設けている。
【0018】
サンプル弁2と電極式水分析計の電極3の間にヘッドベッセル8を設けている。このヘッドベッセル8は電極式水分析計に一定の水圧を与え、流量を安定させるものである。このヘッドベッセル8には例えばレベルスイッチを内蔵し、サンプル(試料)が水断したときに警報を発するように構成することができる。
【0019】
本発明の保管方法を実施する電極を有する電極式水分析計としては、電気伝導率計、pH計及びヒドラジン計等がある。例えば、電気伝導率計は極度に汚れた試料水を電極に流さないよう注意を要する分析計である。なお、電極が乾燥した場合は2〜3時間純水に浸してから測定 を開始する。pH計も電極を乾燥させないように注意を要する分析計であり、乾燥した場合は半日程度純水に浸してから測定を開始する。ガラス電極並びに比較電極にショックを与えないよう取扱に注意する。ヒドラジン計はW電極の取扱に注意を要する分析計である
【0020】
サンプル弁2と電極式水分析計の電極3との間に、純水を純水タンク4から供給するダミー水弁5を設けている。このダミー水弁5を開閉することにより、電極式水分析計の電極3に純水を供給するようになっている。
【0021】
図2は水質分析計の保管方法の説明図であり、(a)はサンプルを分析している状態、(b)は純水を滞留させている状態、(c)は純水を交換している状態である。
このように、電極式水分析計の電極3は、汚損または乾燥していると正確な測定ができなくなる。そこで、試料水採取装置の停止時に、純水タンク4から各電極式水分析計の電極3に純水を通水し、かつ一定時間純水を滞留させる。
【0022】
先ず、サンプルの水質分析するときに、図2(a)に示すように、サンプル弁2を開とし、その下流の電極式水分析計の電極3に、発電プラント等の配管からサンプルを供給する。サンプルの流れは太い実線で示す。このサンプルについて、上述した電気伝導率計、pH計及びヒドラジン計、更にシリカ計等の水質分析計で水質分析を実施する。
【0023】
サンプルの水質分析をしないときは、図2(b)に示すように、サンプル弁2を閉とし、ダミー水弁5を開として純水タンク4から純水を電極式水分析計の電極3に供給してこの電極3に純水を通水し、乾燥防止と同時に電極3を洗浄する。純水の流れは太い破線で示す。
次に、一定時間経過したら電極式水分析計の電極3下流のサンプル水出口弁6を閉とし、ダミー水弁5も閉とし、電極式水分析計の電極3に純水を滞留させる。分析のスタンバイ状態とする。
【0024】
更に、図2(c)に示すように、電極式水分析計の電極3下流のサンプル水出口弁6を開とし、ダミー水弁5も開とし、電極式水分析計の電極3に滞留させた純水を交換する。純水の流れは太い破線で示す。サンプル水出口弁6から排出された純水は、下流に排水処理装置7に送られる。
【0025】
これにより、電極3が乾燥しないように保管することができる。従来のように純水を放水し続けないので、その使用量を低減することができ、排水処理装置7での排水処理費を低減することができる。
【0026】
また、サンプル水出口弁6及びダミー水弁5をタイマ9により定期的に開閉させ、電極式水分析計の電極3に滞留させる純水を入れ替えることができる。これにより更に無駄な純水の消費を防止することができる。
【0027】
なお、本発明は、純水の使用量を低減でき、ダミー水(純水)を排水処理装置7で処理するため、排水処理費を低減することができれば、上述した発明の実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の試料水採取装置用水質分析計の保管方法及びその装置は、火力発電プラントや原子力発電プラントの各種のプラントの水分析に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の水質分析計の保管方法を実施する試料水採取装置を示す概略系統図である。
【図2】水質分析計の保管方法の説明図であり、(a)はサンプルを分析している状態、(b)は純水を滞留させている状態、(c)は純水を交換している状態である。
【図3】試料水採取装置を示す概略系統図である。
【図4】弁開閉タイミングの動作を示すタイミングチャート図である。
【図5】水質分析を示す概略系統図である。
【図6】従来の水質分析計の保管方法を実施する試料水採取装置を示す概略系統図である。
【符号の説明】
【0030】
2 サンプル弁
3 電極式水分析計の電極
4 純水タンク
5 ダミー水弁
6 サンプル水出口弁
9 タイマ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルを水質分析するときに、火力発電所等の発電プラント等の配管のサンプル弁(2)を開とし、その下流の電極式水分析計の電極(3)にサンプルを供給し、
サンプルの水質分析をしないときに、前記サンプル弁(2)を閉とし、前記電極式水分析計の電極(3)に、純水タンク(4)のダミー水弁(5)を開として純水を供給して該電極(3)に純水を通水し、
一定時間経過したら電極式水分析計の電極(3)下流のサンプル水出口弁(6)を閉とし、前記ダミー水弁(5)も閉とし、該電極(3)に純水を滞留させる、ことを特徴とする試料水採取装置用水質分析計の保管方法。
【請求項2】
前記サンプル水出口弁(6)及び前記ダミー水弁(5)をタイマ(9)により定期的に開閉させ、前記電極式水分析計の電極(3)に滞留させる純水を入れ替える、ことを特徴とする請求項1の試料水採取装置用水質分析計の保管方法。
【請求項3】
火力発電所等の発電プラント等の配管からサンプルを電極式水分析計の電極(3)に供給するサンプル弁(2)と、
前記サンプル弁(2)と前記電極式水分析計の電極(3)との間に、純水を純水タンク(4)から供給するダミー水弁(5)と、
前記電極式水分析計の電極(3)の下流に配置した、サンプル又は純水を排出するサンプル水出口弁(6)と、を備え、
前記試料水採取装置の停止時に、前記純水タンク(4)から前記電極式水分析計の電極(3)に純水を通水し、かつ一定時間純水を滞留させるように構成した、ことを特徴とする試料水採取装置用水質分析計の保管装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−25101(P2009−25101A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−187440(P2007−187440)
【出願日】平成19年7月18日(2007.7.18)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】