説明

試料注入システム

本発明の一実施形態は、真空源と、真空源と連通する導管と、導管内の流体の存在を検出するように構成される流体センサと、導管と連通する試料ループと、試料ループと連通するシッパーとを含む、試料注入システムを提供する。吸引をシッパーに印加するステップと、シッパーを試料貯蔵容器内に挿入するステップと、流体センサによる流体の検出の際に、シッパーを試料貯蔵容器から引き出すステップとを含む、高スループットの試料注入方法を目的とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2007年11月2日に出願された米国仮特許出願第61/001,595号および2007年11月2日に出願された米国仮特許出願第61/001,597号の優先権を主張する。これら出願の各々の全体が本明細書に参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は、概して、流体試料の高スループットスクリーニングに関し、より具体的には、流体試料の試料スループットを増加させるための自動システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景技術)
創薬および薬剤開発、環境試験、および診断等の多くの用途において、効率的かつ再現可能な様態で多数の試料を分析する必要がある。流体試料を分析するために用いられる手法の多くは、試料を連続的な様態で試験することを必要とする。このような用途において、連続分析法は、コンピュータ制御のロボット工学および自動化の使用を通して自動化することができる。このような装置は、概して自動注入器と呼ばれ、また、クロマトグラフィシステム、質量分光計、および分光学的検出器が挙げられるが、これに限定されない、あらゆる種類の連続分析システムに共通に結びつけられる。
【0004】
通常の自動注入器は、自動化およびコンピュータ制御システムとともに、複数の試料貯蔵容器と、注射器または注射器様の試料輸送システムと、注入弁とを含む。自動注入器は、共通に扱い難い手動注入方法を模倣しており、そこでは、計量された分割量の試料が、所望の試料貯蔵容器から移送注射器内に吸引される。吸引プロセスは、しばしば、試料の吸引をもたらす負圧を作り出すように、プランジャまたはピストンを引き戻すことによって制御される。次いで、移送注射器が移動され、定置注入弁とドッキングされる。次いで、移送注射器のプランジャを押下げるか、またはピストンを起動させることによって、試料分割量が注射器から注入弁へと移送される。試料は、注入弁内の注入ループを満たす。弁の作動に際して、試料は、流体回路内に導入され、分析システムに分流される。
【0005】
次いで、移送注射器および注入弁ポートは、検体の痕跡を除去して試料間の汚染を最小化するように、適切な緩衝剤または溶媒ですすがれる。試料を伴う流体系の汚染は、連続分析システムの良好な動作に対して重大な障害を引き起こす可能性があり、キャリーオーバーおよび信頼性に欠けるデータをもたらす。適切な清潔化プロトコルの後に、次の試料に対してプロセス全体が繰り返される。自動注入器に対するこの一般的手法の種々の実施形態は、商業的に入手可能である。自動注入器で使用される試料貯蔵容器は、ガラスバイアルから96または384ウエル(くぼみ)のマイクロタイタープレートまで様々である。試料貯蔵容器は、プラスチック膜または金属箔、あるいは隔膜によって密閉され得る。一部の自動注入装置は、ロボットアームに取り付けられた種々のサイズの従来の注射器を使用する。他の装置は、小さいピストンに取り付けられた管を使用する。試料は、この管内に吸引され、注入弁に移送される。自動注入器の一部のバージョンは、1つの注射器によって注入が行われている間に、他の注射器が洗浄されるといった、複数の注射器を使用することによってスループットを増加させようと試みている。ある自動注入器は、8つの試料の同時吸引によってスループットを増加させている。次いで、これらの試料は、8つの別々の注入弁の試料注入ループ内に搭載される。次いで、試料は、8つの注入弁の各々から、逐次的に分析システム内に分流される。したがって、スループットは、プロセスの並列処理を通して増加されるが、費用および複雑さが増加する。
【0006】
大気圧イオン化(API)を伴う質量分析(MS)は、複合混合物の分析について共通に使用される手法である。API−MSの変形物には、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、大気圧化学イオン化(APCI)、および大気圧光イオン化(APPI)が挙げられる。API−MSは、製薬業界、環境および法医学的分析、材料化学、および科学的用途で日常的に使用される。複合混合物内の特定の化合物に関する定量的および定性的な情報は、どちらもAPI−MS法を用いて得ることができる。
【0007】
しかしながら、API−MSは、複数の欠点を有する。従来、MSは、一般的に多くの光学分析システムで採用される並列分析スキームとは異なり、試料が逐次的に分析される連続プロセスである。逐次的な分析は、極めて多数の試料を分析しなければならない場合に、非実用的な可能性があり、ほとんどの場合において、経済的に実行不可能である。
【0008】
さらに、一般的に、塩、緩衝剤、イオンまたは非イオン性界面活性剤、タンパク質または酵素、および他の共同因子等の、複雑な生物学的、化学的、または環境試料中に高濃度で見出される多くの化合物は、質量分析において観察される標的信号の量の大幅な減少を引き起こす可能性がある。信号抑制不揮発性化合物がMS源領域内に集積する傾向を引き起こすことに加えて、徐々に機器性能の低下をもたらすので、高濃度の不揮発性成分からの干渉は、特に問題となる。
【0009】
質量分析計の購入および運用に関わる固有の出費は、分析のスループット(すなわち、所与の時間内に分析することができる試料の数)を増加させるための方法および装置を考案することによって、生産性を向上させることを非常に望ましくする。API−MSにおけるスループットの増加を試みるあらゆる方法および装置は、(1)試料を質量分析計に送達するための高速システムを設計しなければならない、(2)標的信号の抑制を引き起こす複合混合物の成分を、着目検体から単離して除去しなければならない、(3)MS源内に集積し、かつ機器性能の経時的な低下をもたらす、複合混合物の不揮発性成分を、単離して除去しなければならない、および(4)各試料は、データの汚染をもたらす試料間のキャリーオーバーを防止するように、次の試料が分析される前に、分析システムを許容レベルまで清潔にしなければならい、等の複数の重要な課題に対処しなければならない。
【0010】
液体クロマトグラフィ(LC)は、複合混合物から塩、緩衝剤、および着目MS信号の抑制を生じさせ得る、またはMS機器性能の低下をもたらし得る他の成分を除去するために使用することができる。従来の液体クロマトグラフィ(LC)および高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)等のその変形物は、一般的に、共通にカラム形式でパックされる、概して固相抽出(SPE)と称される、固体の不溶性マトリクス上で液体試料を流すステップを伴う。液体試料は、pH、塩濃度、または溶媒組成物のある条件下でマトリクスに対して親和性を有する、着目検体を含む。マトリクスに対する着目検体の親和性は、疎水性または親水性相互作用、イオン相互作用、分子サイズ、または配位化学に起因し得る。高度に特異的な変形物では、マトリクスに固定化される抗体は、複合混合物から、高度に特異的なエピトープを含有する分子を選択的に捕捉するために使用される。
【0011】
マトリクスに対する検体の親和性の結果として、検体は、マトリクスに結合して固定化されるが、液体試料の他の(不要な)成分は、マトリクスを通って流れて、除去される。着目検体は、次いで、着目検体がマトリクスに対する親和性をもはや有さなくなる程度に、流動流体の条件を変化させることによって、マトリクスから離れて溶出される。例えば、pH、イオン強度、溶媒組成物、温度、および/または他の物理化学的なパラメータの変化は、マトリクスに対する検体の親和性を弱め得る。
【0012】
しかしながら、高スループット質量分析における液体クロマトグラフィの従来の使用には制限がある。頻繁に、連続分析のスループットは、連続分析が個々の試料から信号を回収するのにかかる時間によって制限される。液体クロマトグラフィの用途では、着目検体からのマトリクス出力信号は、ピークの形態であり、時間中のこのピークの幅は、最大スループットの最終的な決定要素である。質量分析スループットの増加における主要因は、最短の時間量で質量分析計に提示される狭く鋭いバンドとしての、不溶性マトリクスからの着目試料の溶出である。例えば、1試料あたり30秒を超える全体的なスループットを達成するには、各試料の基線分解能に関して、ピーク幅を30秒よりも狭くしなければならない。スループットが増加されるにつれて、より厳しい要件をピーク幅に課さなければならない。スループットがピーク幅に接近し始めた場合、逐次的試料が重なり始め、MS内の試料間の基線分解能が失われ、各試料に対する正確な定量化はもはや不可能である。
【0013】
従来のLCでは、不溶性固体マトリクス(一般的にカラム形式でパックされる)に結合される着目検体は、検体がもはやカラム上に固定化されなくなる程度に、マトリクス上で流れる液体の種々の特性を変化させることによって、マトリクスから離れて溶出される。しかしながら、検体がマトリクスの長さを通って流れる時には、バンド広がりとして周知である現象が生じ、その現象では、線形拡散が、集束した検体を含有する容量を拡大させる。結果的に、質量分析計(または他の分析器)に提示される着目検体の濃度が減少し、高スループットスクリーニング(HTS)を問題を含むものにする、広いピークを生じる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
(発明の概要)
本発明は、例えばクロマトグラフィおよび/または質量分析を用いて、複合の生物学的、化学的、または環境マトリクス中の選択された成分の分析のスループットを増加させるためのシステムおよび方法を説明する。種々の実施形態では、特定の用途に応じて、1試料あたり30秒〜1試料あたり1秒以下の範囲のスループット率が達成可能である。本発明のさらなる実施形態は、スループットを増加させ、かつ試料のキャリーオーバーを最小化する、自動注入システムを含む。
【0015】
本発明の一局面では、高スループットの試料調製および分析のためのシステムを提供する。システムは、不溶性マトリクスを含む、クロマトグラフィカラムを含む。流体回路は、流体中の検体が不溶性マトリクスに結合するように、不溶性マトリクス上で流体を第1の方向に通過させることができ、かつ、検体を含む試料を出力するように、不溶性マトリクス上で溶出流体を第1の方向とは逆の第2の方向に逆溶出することができる。コントローラは、不溶性マトリクス上で流体を通過させるステップと、周期的速度で複数の試料を出力するように、不溶性マトリクス上で溶出流体を逆溶出するステップとを周期的に実施する、流体回路を制御する。
【0016】
本発明の関連する実施形態によれば、周期的速度は、30秒/試料以下である。流体回路は、交互に、不溶性マトリクス上で流体を第1の方向に方向付け、かつ不溶性マトリクス上で溶出流体を第2の方向に逆溶出することができる、弁モジュールを含み得る。弁モジュールは、少なくとも1つの空気圧作動の弁を含み得、および/または100ミリ秒未満の作動時間を有し得る。
【0017】
本発明のさらなる関連する実施形態によれば、システムは、試料のうちの1つ以上を分析するための分析器をさらに含み得る。分析器は、例えば、1つ以上の試料を代表する信号を出力する、光学分析器または質量分析計であってもよい。流体回路は、不溶性マトリクス上で溶出流体を逆溶出させるように作動する、弁モジュールを含み得、コントローラは、弁モジュールが試料の特性を決定するように作動した後に、所定の時間にわたって信号を積分する。質量分析計には、エレクトロスプレーイオン化源、大気圧化学イオン化源、または大気圧光イオン化源が挙げられるが、これに限定されない。
【0018】
本発明のさらなる関連する実施形態によれば、流体回路は、20μm〜300μmの直径を有する管系を含み得る。流体回路は、流体と接触する1つ以上の表面を含み得、各表面は、生体不活性であり、よって、非反応性である。各表面は、例えば、ポリエーテルケトン、ポリイミド、チタニウム、および/またはチタニウム合金を含み得る。流体回路は、ポリテトラフルオロエチレンおよび/またはポリエチレングリコール等の、検体との結合を最小化する材料で被覆した鋼鉄でできた、流体経路を含み得る。流体回路は、不溶性マトリクス上で通過させられる流体の分割量を吸引するための吸引器を含んでもよい。クロマトグラフィカラムは、第1の端部と、第2の端部とを含み得、検体は、第1の端部においてクロマトグラフィカラムを出入りする。
【0019】
本発明の他の局面によれば、高スループットの試料調製および分析の方法は、不溶性マトリクス上で流体を第1の方向に通過させるステップを含み、流体は、不溶性マトリクスに結合する検体を含む。溶出流体は、検体を含む試料を出力するように、不溶性マトリクス上で第1の方向とは逆の第2の方向に逆溶出される。流体を通過させるステップ、および溶出流体を逆溶出するステップは、ある周期的速度で複数の試料を出力するように繰り返される。
【0020】
本発明の関連する実施形態によれば、周期的速度は、30秒/試料以下である。各試料を分析するステップは、各試料を質量分析計に提示するステップを含み得る。逆溶出するステップは、不溶性マトリクス上で溶出流体を流し始めるように、弁体を作動させるステップを含み得、その方法は、弁が試料の特性を決定するように作動した後に、所定の時間にわたって質量分析計の出力を積分する。洗浄液は、不溶性マトリクス上で流体を通過させる前に、または溶出流体を逆溶出する前に、クロマトグラフィマトリクス上で通過させられてもよい。流体は、不溶性マトリクス上で流体を通過させる前に、流体源から吸引されてもよい。クロマトグラフィマトリクスは、カラム形式でパッケージ化されてもよい。
【0021】
本発明のさらに別の局面によれば、高スループットの試料調製および分析のためのシステムは、複数のクロマトグラフィカラムと、1つの質量分析計とを含む。弁は、複数のクロマトグラフィカラムのうちの1つからの排出物を、選択的に質量分析計に提示することができる。
【0022】
本発明の関連する一実施形態によれば、弁は、複数のクロマトグラフィカラムのうちの1つからの排出物を、質量分析計に提示するように作動し得る。プロセッサは、質量分析計から出力信号を受信し得、弁が試料の特性を決定するように作動した後に、所定の時間にわたって信号を積分する。
【0023】
本発明のさらに他の局面では、クロマトグラフィカラムと流体連通する流体回路を有する高スループットシステムを制御するためのコンピュータシステム上で使用するために、コンピュータプログラム製品が提示される。コンピュータプログラム製品は、コンピュータで読み取り可能なプログラムコードをその中に有する、コンピュータが使用可能な媒体を含む。コンピュータで読み取り可能なプログラムコードは、流体中の検体が不溶性マトリクスに結合するように、不溶性マトリクス上で流体を第1の方向に通過させるように流体回路を制御するためのプログラムコードを含む。コンピュータで読み取り可能なプログラムコードは、検体を含む試料を出力するように、不溶性マトリクス上で溶出流体を第1の方向とは逆の第2の方向に逆溶出するように流体回路を制御するためのプログラムコード、および周期的速度で試料を出力するように、流体の通過および溶出流体の逆溶出を繰り返すためのプログラムコードも含む。
【0024】
本発明の関連する実施形態によれば、溶出流体を逆溶出するように流体回路を制御するためのコンピュータで読み取り可能なプログラムコードは、溶出流体をクロマトグラフィカラムを通して第2の方向に流すことができるようにする弁モジュールを作動させるためのプログラムコードを含む。高スループットシステムは、試料を分析するための質量分析計を含み得、コンピュータプログラム製品は、試料の特性を決定するための弁モジュールの作動の際に、質量分析計の出力を積分するためのプログラムコードをさらに含む。
【0025】
本発明の別の実施形態によれば、流体試料の高スループットスクリーニングのための自動注入システムは、試料シッパー管と、試料ループと、注入弁とを含む。注入弁は、減圧を試料シッパー管に印加する。注入弁が第1の位置である時、試料ループは、試料シッパー管と流体連通する。
【0026】
本発明の関連する実施形態では、システムは、減圧を供給するための真空手段をさらに含み得る。真空手段は、減圧の連続的印加のための真空ポンプおよび/または減圧の計量印加のためのピストンを含み得る。弁は、減圧源として、真空ポンプおよびピストンポンプのうちの1つを選択してもよい。インラインのトラップが、真空手段と注入弁との間に位置決めされてもよい。電磁弁であってもよい遮断弁は、試料シッパー管を介して試料ループ内に吸引される試料流体の量を計量し得、遮断弁は、真空手段と注入弁との間に位置する。システムの流体接触表面は、ポリテトラフルオロエチレン(Wilmington,DelawareのE.I.DuPont De Nemours and Companyから、TEFLON(登録商標)の商標で入手可能)、溶融シリカ、およびポリエーテルケトンから成る材料群からの材料で作製され得る。
【0027】
本発明のさらなる関連する実施形態では、注入弁が第2の位置である時に、試料ループは、注入弁の出力ポートと流体連通する。注入弁が第2の位置である時に、試料シッパー管は、洗浄流体を吸引し、インラインのトラップが洗浄流体を捕捉するように、減圧源と流体連通し得る。
【0028】
本発明のさらに別の局面によれば、流体試料の高スループットスクリーニングのための自動注入システムは、減圧源と、試料ループと、試料シッパー管と、注入弁とを含む。注入弁は、試料シッパー管と流体連通する第1のポートと、試料ループと流体連通する第2のポートと、試料ループと流体連通する第3のポートと、減圧源と流体連通する第4のポートとを含む。
【0029】
本発明の関連する実施形態では、注入弁が第1の位置である時に、減圧源、試料ループ、および試料シッパー管が流体連通する。注入弁は、試料ループから試料流体を排出するための第5のポートを含み得る。注入弁が第2の位置である時に、試料ループは、第5のポートと流体連通する。システムは高圧源を含み得、注入弁は、高圧源と流体連通する第6のポートをさらに含む。
【0030】
減圧源は、真空ポンプおよび/またはピストンを含み得る。弁は、減圧源として、真空ポンプおよびピストンポンプのうちの1つを選択してもよい。インラインのトラップが、減圧源と注入弁との間に位置決めされてもよい。注入弁が第2の位置である時に、試料シッパー管は、洗浄流体を吸引し、インラインのトラップが洗浄流体を捕捉するように、減圧源と流体連通し得る。電磁弁等の遮断弁は、試料シッパー管を介して試料ループ内に吸引される試料流体の量を計量するために使用され得、遮断弁は、減圧源と注入弁との間に位置決めされる。
【0031】
本発明の別の実施形態によれば、繰り返しの試料採取および試料の提示のための自動試料採取器システムは、流体回路を含む。流体回路は、注入弁と流体連通する試料ポートを含む。流体回路は、試料を流体回路に搭載するように、減圧を試料ポートに印加するための手段をさらに含む。試料は、出力手段を介して、試料ポートとは異なる流体回路の出力ポートから分析器に提示される。システムは、複数の試料を試料ポートと関連して位置決めするための、自動手段をさらに含む。
【0032】
本発明の関連する実施形態では、減圧を印加するための手段は、トラップを含み得、および/または試料の提示の間中、負圧を試料ポートに連続的に印加し得る。複数の試料を位置決めするための自動手段は、マイクロプレートのウエルを連続的に提示するためのロボット装置を含み得る。試料は、30秒ごとに1つの試料を超える速度で処理される。分析器は、質量分析計であってもよい。試料は、試料ポートに断続的に吸引され得、一方で、流体は、分析器に連続的に注入される。
【0033】
本発明のさらなる関連する実施形態では、流体回路は、試料の精製のための樹脂を含み得る。システムは、試料を樹脂に導入する、洗浄液で樹脂を洗浄する、および提示の前に溶出溶液で試料を逆溶出するための手段をさらに含み得る。
【0034】
本発明の別の実施形態によれば、高スループットの試料調製および分析のためのシステムは、不溶性マトリクスを含むクロマトグラフィカラムを含む。流体回路手段は、流体中の検体が不溶性マトリクスに結合するように、不溶性マトリクス上で流体を第1の方向に通過させ、かつ不溶性マトリクス上で溶出流体を通過させて、検体を分析器に出力する。コントローラは、流体回路が、溶出流体および検体のうちの少なくとも1つだけを分析器に提示するように、不溶性マトリクス上で流体を通過させるステップと、不溶性マトリクス上で溶出流体を通過させて、周期的速度で複数の試料を分析器に提示するステップとを周期的に実施する、流体回路を制御する。
【0035】
本発明の別の実施形態によれば、液状試料の高スループットスクリーニングのためのシステムは、試料吸引管と、弁体と、試料ループと、分析器とを含む。コントローラは、交互に、第1の流体を試料吸引管を介して試料ループ内に吸引し、第2の流体を吸引管を介して吸引し、一方で、同時に、試料ループ内の第1の流体を分析器に出力するように、弁体を制御する。
【0036】
別の実施形態では、自動注入システムは、流体試料の高スループットスクリーニングを提供する。試料注入弁は、流体試料を試料シッパー管内に吸引するために減圧を試料シッパー管に印加する、第1の位置と、流体試料を試料供給ループに送達する、第2の位置とを有する。カラム制御弁は、試料供給ループから試料クロマトグラフィカラムへと流体試料を送達する、第1の位置と、試料分析器、例えば質量分析計に流体試料を送達するように、試料クロマトグラフィカラムを通って流れる方向を逆転させる、第2の位置とを有する。洗浄制御弁は、洗浄緩衝溶液を試料クロマトグラフィカラムに前方への流体の流れ方向に提供する、第1の方向と、試料供給ループを洗い流すように溶出溶媒を供給する、第2の方向とを有する。位置決め手段は、個々のマイクロプレートサンプル容器を試料シッパー管に提示する。自動制御手段は、繰り返して試料を導入して、試料注入弁、カラム制御弁、および洗浄制御弁を作動させるサイクルを作り出す。
【0037】
さらなるこのような一実施形態では、試料注入弁の第1の位置は、さらに、洗浄制御弁から試料クロマトグラフィカラムへと洗浄緩衝溶液を送達し得る。試料注入弁の第2の位置は、さらに、洗浄制御弁から試料供給ループへと溶出溶媒を送達し得る。カラム制御弁の第1の位置は、さらに、試料分析器を洗い流すように溶出溶媒を供給し得る。カラム制御弁の第2の位置は、さらに、溶出溶媒が試料供給ループを出ることができるようにし得る。洗浄制御弁の第2の位置は、さらに、試料供給ループを洗い流すように洗浄緩衝溶液を送達し得る。
【0038】
さらなる一実施形態では、洗浄緩衝剤供給ポンプは、洗浄緩衝溶液を洗浄制御弁に提供する。第1の溶出溶媒ポンプは、溶出溶媒をカラム制御弁に提供し得る。そして、第2の溶出溶媒ポンプは、溶出溶媒を洗浄制御弁に提供し得る。
【0039】
実施形態は、流体試料の高スループットスクリーニングを実施する、類似の方法も含む。各々が2つの動作位置を有する、試料注入弁、カラム制御弁、および洗浄制御弁が提供され、流体試料の高スループットスクリーニングのため繰り返しサイクルを実施するように配設される。サイクルは、弁のそれぞれを第1の動作位置に位置決めするステップを含み、そのステップでは、(i)マイクロプレート試料ウエル内の流体試料は、試料シッパー管に提示され、かつ試料シッパー管によって試料注入弁に吸引され、(ii)溶出溶媒は、カラム制御弁によって試料分析器に供給され、そして(iii)洗浄緩衝溶液は、カラムの平衡化のために、弁の各々から順番に試料クロマトグラフィカラムに送達される。試料注入弁は、第2の動作位置で作動し、その位置では、(i)試料シッパー管は、流体試料から引き出され、吸引された試料は、試料注入弁によって試料供給ループを通してカラムに送達され、そして(ii)洗浄緩衝溶液は、試料の精製のために、弁の各々から順番にカラムに送達される。カラム制御弁および洗浄制御弁は、それぞれの第2の動作位置で作動し、その位置では、(i)試料シッパー管は、清潔にするための洗浄液を吸引し、(ii)溶出溶媒は、試料供給ループを洗い流すように弁の各々を通して順番に供給され、そして(iii)溶出溶媒は、カラムを通って流れる流体の流れを逆方向にして流体試料を分析器に送達するように、制御弁によって供給される。最後に、弁の各々は、それらのそれぞれの第1の動作位置に戻るように作動してサイクルを繰り返す。
【0040】
さらなるこのような実施形態では、サイクルは、毎分2つの試料を超える速度で実施される。試料分析器は、質量分析計であってもよい。
【0041】
別の実施形態では、試料注入システムは、真空源と、真空源と連通する導管と、導管内の流体の存在を検出するように構成される流体センサと、導管と連通する試料ループと、試料ループと連通するシッパーとを含む。
【0042】
上述の実施形態は、複数の追加的な特徴を含むことができる。導管は、透明部分を含むことができる。流体センサは、光センサとすることができ、かつ導管の透明部分内の流体の存在を検出するように構成することができる。システムは、真空源と導管との間に位置する、トラップを含むことができる。弁は、シッパー、試料ループ、および導管に連結することができる。弁は、多重ポート弁とすることができる。弁は、空気圧で、電気的に、電気機械的に、または機械的に作動させることができる。弁は、流体が流体センサによって検出された時に、導管と試料ループとの間の流体連通を中断するように構成することができる。
【0043】
システムは、液状試料を試料貯蔵容器から吸引するようにシッパーを位置決めするための、ロボットシステムを含むことができる。ロボットシステムは、流体が流体検出器によって検出されるまで、シッパーを試料貯蔵容器内まで下げるように構成することができる。ロボットシステムは、シッパーが規定位置を越えて進行するのを防止するようにさらに構成することができる。規定位置は、ユーザによって指定することができる。ロボットシステムは、流体が流体センサによって検出される時に、貯蔵容器からシッパーを後退させるように構成することができる。
【0044】
別の実施形態は、流体試料の高スループットスクリーニングのための自動注入システムを目的とする。システムは、真空源と、試料注入弁と、真空源と試料注入弁とを接続する導管と、導管内の流体の存在を検出するように構成される流体センサと、試料分析器への溶出溶媒の連続流を促進するように構成されるカラム制御弁と、洗浄制御弁と、繰り返して試料を導入する、および試料注入弁を作動させるサイクルを作り出すための自動制御手段と、カラム制御弁と、洗浄制御弁とを含む。
【0045】
試料注入弁は、流体試料をシッパー内に吸引するために減圧を試料シッパー管に印加する、第1の位置と、試料供給ループから流体試料を送達する、第2の位置とを有する。
【0046】
カラム制御弁は、同時に、試料供給ループから試料クロマトグラフィカラムへと流体試料を第1の方向に送達し、溶出溶媒を試料分析器に送達する、第1の位置と、流体試料を送達するように、かつ流体試料および溶出溶媒を試料分析器に送達するように、試料クロマトグラフィカラム上で溶出溶媒を第2の方向に流す、第2の位置とを有する。
【0047】
洗浄制御弁は、洗浄緩衝溶液を試料クロマトグラフィカラムへと順方向の流体の流れ方向に提供する、第1の方向と、試料供給ループを洗い流すように溶出溶媒を供給する、第2の方向とを有する。
【0048】
上述の実施形態は、複数の追加的な特徴を含むことができる。導管は、透明部分を含むことができる。流体センサは、光センサとすることができ、かつ導管の透明部分内の流体の存在を検出するように構成することができる。
【0049】
システムは、試料貯蔵容器から液状試料を吸引するようにシッパーを位置決めするための、ロボットシステムを含むことができる。ロボットシステムは、流体が流体検出器によって検出されるまで、シッパーを貯蔵容器内まで下げるように構成することができる。ロボットシステムは、シッパーが規定位置を越えて進行するのを防止するように構成することができる。規定位置は、ユーザによって指定することができる。ロボットシステムは、流体が流体センサによって検出される時に、貯蔵容器からシッパーを後退させるように構成することができる。
【0050】
別の実施形態は、真空源と、真空源と連通する導管と、導管内の流体の存在を検出するように構成される流体センサと、導管と連通する試料ループと、試料ループと連通するシッパーとを提供するステップと、吸引をシッパーに印加するステップと、シッパーを試料貯蔵容器内に挿入するステップと、流体センサによる流体の検出の際に、シッパーを試料貯蔵容器から引き出すステップとを含む、高スループットの試料注入方法を目的とする。
【0051】
上述の実施形態は、複数のさらなる特徴を含むことができる。方法は、規定位置を越える前進の際に、試料貯蔵容器からシッパーを引き出すステップを含むことができる。方法は、誤りを報告するステップも含むことができる。方法は、試料ループ内に保持される試料を分析するステップをさらに含むことができる。
【0052】
本発明の別の実施形態は、質量分析装置による分析のために、液体クロマトグラフィ装置からの塩または緩衝剤を含有する溶出試料を調製する方法であって、方法は、無極性溶媒を質量分析装置に連続的に提供するステップと、液体クロマトグラフィ装置からの溶出試料を受容するステップと、固相抽出カラム上で溶出試料を流すステップと、固相抽出カラム上で無極性溶媒を流すステップと、無極性溶媒および溶出試料を質量分析装置に提示するステップとを含む。
【0053】
本実施形態は、複数の変形例を有し得る。例えば、液体クロマトグラフィ装置は、イオン交換クロマトグラフィ装置とすることができる。液体クロマトグラフィ装置は、陽イオン交換クロマトグラフィ装置とすることができる。液体クロマトグラフィ装置は、サイズ排除クロマトグラフィ装置とすることができる。方法は、光学データセットを生成するように、液体クロマトグラフィ装置からの溶出試料を光学的に分析するステップも含むことができる。方法は、光学データセットを、質量分析装置によって生成されるデータセットと関連付けるステップも含むことができる。方法は、固相抽出カラム上で極性洗浄液を流すステップも含むことができる。
【0054】
本発明の別の実施形態は、液体クロマトグラフィ装置を質量分析装置と連結するための試料注入システムを提供する。システムは、試料注入弁と、カラム制御弁とを含むことができる。試料注入弁は、(i)液体クロマトグラフィ装置からの試料が、試料注入システムを通過できるようにする、第1の位置と、(ii)液体クロマトグラフィ装置からの試料を試料供給ループに搭載する、第2の位置とを含むことができる。カラム制御弁は、(i)同時に、試料供給ループから固相抽出カラムへと流体試料を第1の方向に送達し、溶出溶媒を試料分析器に送達する、第1の位置と、(ii)流体試料および溶出溶媒を試料分析器に送達するように、固相抽出カラム上で溶出溶媒を第2の方向に流す、第2の位置とを含むことができる。
【0055】
本実施形態は、複数の変形例を有することができる。システムは、液体クロマトグラフィ装置からの試料を分析するための、光学検出器も含むことができる。システムは、液体クロマトグラフィ装置と試料注入弁との間に位置する、分流弁も含むことができる。分流弁は、光学検出器によって生成される信号の結果として作動することができる。システムは、フラクションコレクタも含むことができる。溶出溶媒は、極性溶媒または無極性溶媒とすることができる。
【0056】
本発明の別の実施形態は、質量分析装置による分析のために、液体クロマトグラフィ装置からの溶出試料を調製する方法を提供する。方法は、極性溶媒を質量分析装置に連続的に提供するステップと、液体クロマトグラフィ装置から溶出試料を受容するステップと、HILICカラム上で溶出試料を流すステップと、HILICカラム上で極性溶媒を流すステップと、極性溶媒および溶出試料を質量分析装置に提示するステップとを含む。
【0057】
液体クロマトグラフィ装置は、イオン交換クロマトグラフィ装置、陽イオン交換クロマトグラフィ装置、およびサイズ排除クロマトグラフィ装置から成る群より選択されるものとすることができる。方法は、光学データセットを生成するように、液体クロマトグラフィ装置からの溶出試料を光学的に分析するステップも含むことができる。方法は、光学データセットを、質量分析装置によって生成されるデータセットと関連付けるステップも含むことができる。方法は、固相抽出カラム上で極性洗浄液を流すステップも含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
本発明の上述の特徴は、添付図面を参照して、以下の詳細な説明を参照すれば、より容易に理解されるであろう。
【図1】図1は、本発明の一実施形態による、高速クロマトグラフィシステムのブロック図である。
【図2a】図2aは、本発明の一実施形態による、2つの注入弁を含む高速クロマトグラフィシステムの概略図である。
【図2b】図2bは、本発明の一実施形態による、複合混合物がマトリクスを第1の方向に通過する時の、図2aの高速クロマトグラフィシステムの概略図である。
【図2c】図2cは、本発明の一実施形態による、溶出流体がマトリクスを第2の方向に通過する時の、図2aの高速クロマトグラフィシステムの概略図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態による、多重分析器システムの概略図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態による、自動注入装置の概略図である。
【図5a】図5aは、本発明の一実施形態による、試料吸引中の、図4の自動注入装置の概略図である。
【図5b】図5bは、本発明の一実施形態による、吸引された試料が流体回路に出力される時の、図4の自動注入装置の概略図である。
【図6A】図6A−6Dは、3つの弁を使用する一実施形態の概略図である。
【図6B】図6A−6Dは、3つの弁を使用する一実施形態の概略図である。
【図6C】図6A−6Dは、3つの弁を使用する一実施形態の概略図である。
【図6D】図6A−6Dは、3つの弁を使用する一実施形態の概略図である。
【図6E】図6Eは、3弁式自動注入装置の一実施形態を示す図である。
【図6F】図6Fは、3弁式自動注入装置を支持するためのブラケットの等角投影図である。
【図7】図7は、本発明の一実施形態による、液体センサを組み込んだ自動注入装置の概略図である。
【図8a】図8aは、本発明の一実施形態による、試料吸引前の図7の自動注入装置の概略図である。
【図8b】図8bは、本発明の一実施形態による、試料吸引中の図7の自動注入装置の概略図である。
【図8c】図8cは、本発明の一実施形態による、吸引された試料が流体回路に出力される時の、図7の自動注入装置の概略図である。
【図9】図9は、本発明の一実施形態による、高スループット試料注入システムの動作を示すフローチャートである。
【図10】図10−11(e)は、質量分析システムと液体クロマトグラフィシステムとを連結するためのシステムの概略図である。
【図11a】図10−11eは、質量分析システムと液体クロマトグラフィシステムとを連結するためのシステムの概略図である。
【図11b】図10−11eは、質量分析システムと液体クロマトグラフィシステムとを連結するためのシステムの概略図である。
【図11c】図10−11eは、質量分析システムと液体クロマトグラフィシステムとを連結するためのシステムの概略図である。
【図11d】図10−11eは、質量分析システムと液体クロマトグラフィシステムとを連結するためのシステムの概略図である。
【図11e】図10−11eは、質量分析システムと液体クロマトグラフィシステムとを連結するためのシステムの概略図である。
【図12】図12は、質量分析装置内の液体クロマトグラフィシステムから溶出した試料を処理するための方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
(特定の実施形態の詳細な説明)
例示的実施形態では、試料スループットを増加させる、および/または複合の生物学的、化学的、または環境マトリクス内の選択された成分を分析するための、自動システムおよび方法を提示する。概して、システムは、クロマトグラフィカラムと、複数の試料を質量分析計等の分析器に迅速に出力することができる、流体回路とを含む。種々の実施形態では、特定の用途に応じて、1試料あたり30秒〜1試料あたり1秒以下の範囲の試料スループット率が達成可能である。本発明のさらなる実施形態は、スループットを増加させ、かつ試料のキャリーオーバーを最小化する、自動注入システムを含む。詳細を以下に論じる。
【0060】
図1は、本発明の一実施形態による、複合混合物から不要な塩、緩衝材、および他の成分を除去している間に、着目検体を迅速に出力する、高速クロマトグラフィシステム100のブロック図を示す。このような望ましくない成分は、例えば、分析器性能を低下させ得るか、または分析器からの出力信号を抑制させ得る。
【0061】
システム100は、試料スループットを増加させるといった特定の目的のために、逆溶出の原理に依存する。具体的には、分析される複合混合物は、流体回路104を介して不溶性マトリクス102へと第1の方向109に送達される。クロマトグラフィカラム内にパックされてもよいマトリクス102は、着目検体が、選択的に固定化されるように選択される。マトリクス102は、クロマトグラフィの技術分野において周知の種々の樹脂であってもよいが、これに限定されない。一般的に、検体は、集束として周知の現象により遭遇する、マトリクス102の第1の部分に結合する。集束時には、大量の検体が、マトリクス102に対する強い親和性により、マトリクス102のヘッド内の非常に小さい物理的空間内に固定化され得る。
【0062】
塩、緩衝剤、および/または洗浄剤が挙げられるが、これ限定されない、複合混合物の非結合成分は、そのようには固定化されずに、不溶性マトリクス102を通過する。これらの望ましくない成分は、一般的に、流体回路104によって廃棄物に分流される。望ましくない成分の十分な除去を確実にするために、着目検体が固定化されてマトリクスのヘッド上に集束されている間に、マトリクス102を所定の期間にわたって洗浄してもよい。
【0063】
望ましくない成分がマトリクスから除去されると、検体がもはやマトリクス102によって固定化されないように、流体回路104を介して、マトリクス102上で溶出流体を通過させる。しかしながら、マトリクス102上で溶出流体を第1の方向109に通過させる代わりに、本発明の好適な実施形態に従って、マトリクス102上で溶出流体を第1の方向109とは実質的に逆である第2の方向111に通過させる。したがって、検体は、マトリクス102の長さを通して進行しないが、その代わりに、マトリクス102から、検体が搭載された方向とは逆の方向に逆溶出される。集束効果により、検体は、クロマトグラフィマトリクス102のベッド全体を通して進行する必要が無く、よって、最少量の線形拡散が起こる。したがって、鋭く高濃度のピークを、最小限の時間帯域の範囲内でマトリクス102から出力させることができる。逆溶出によって採取される鋭い試料ピークは、従来のクロマトグラフィを使用した時よりもかなり鋭い。着目検体を含有する、マトリクス102から逆溶出した試料は、続いて、高速かつ高濃度の様態で分析器116内に導入することができる。
【0064】
本発明の種々の実施形態では、コントローラ125は、高い試料スループット速度を得るために、マトリクス102上で流体を第1の方向に通過させるステップと、マトリクス102上で溶出流体を第2の方向に逆溶出するステップとを周期的に実施するように、流体回路104を自動的に制御する。コントローラ125は、適切なプログラムが読み込まれるように、適切に予めプログラムまたは構成され得るプロセッサを含み得るが、これに限定されない。コントローラ125は、分析される複合混合物の分割量を試料採取し、かつ分析される各複合混合物を逐次的に提示できるようにする、ロボットシステムと連動して機能し得る。
【0065】
種々の方法論を使用してもよく、逐次的に試料採取できるようにするように、分析される各複合混合物の容器およびシッパー管を、相互に対して移動させることができる。これらの方法論には、分析される液体の容器(例えば、マイクロタイタープレートまたは一連のバイアル)が定位置に保持され、各容器の逐次的な試料採取のためにロボットアームによってシッパー管を転位させる、システムが挙げられるが、これに限定されない。ロボットマイクロプレート位置決めシステムは、米国特許第5,985,214号にあるように、当技術分野において周知である。好ましくは、ロボットシステムは、装置のスループットを制限しない速度で試料を提示できるべきである。他の実施形態では、シッパー管を固定化することができ、分析される各容器は、分割量を試料採取することができる位置に移動させることができる。一実施形態では、以下の米国特許および特許出願、米国特許出願公開第2002/0001544号、米国特許出願公開第2003/0119193号、および米国特許第6,812,030号に説明されているように、液体試料は、逐次的な分析のために、積層テープまたはベルトシステムを使用して、シッパー管へ輸送することができる。両方のアプローチの要素を組み込んだシステム(例えば、試料容器を二次元で、シッパー管を一次元で移動させる)も可能である。
【0066】
流体回路104は、交互に、不溶性マトリクス上で流体を第1の方向に方向付けることができ、かつ不溶性マトリクス上で溶出流体を第2の方向に逆溶出することができる、弁モジュール106を含み得る。弁モジュール106は、1つ以上の弁を含み得る。例えば、図2(a)〜(c)は、本発明の一実施形態による、クロマトグラフィマトリクス225と、2つの注入弁206および207とを含む、クロマトグラフィシステム200の概略図である。
【0067】
図2(a)は、複合混合物が試料ループ208に搭載されている時の弁206および207の位置を示す。減圧221および増圧222は、例えば弁206の 第1のポートおよび第2のポートに、ポンプによって連続的に印加される。減圧221は、シッパー管204を介して複合混合物を吸引するために用いられる。シッパー管204は、狭径毛細管の管系であってもよいが、これに限定されない。規定量を伴う試料ループ208を満たすのに十分な量の複合混合物が吸引される。したがって、マトリクス225上で通過させられる複合混合物は、試料ループ208のサイズによって制御することができる。吸引されるあらゆる過剰な混合物は、例えば注入弁206と減圧源221との間に位置決めされ得る、トラップ209内に回収される。
【0068】
種々の実施形態では、洗浄溶媒または緩衝液は、増圧222の領域と注入弁206との間に位置決めされる。複合混合物が試料ループ206に搭載されている間に、弁206に印加される増圧222は、洗浄流体を弁207に送出し、洗浄流体をマトリクス225を通して第1の方向226に通過させる。マトリクス225の出力は、弁207によって廃棄物に分流される。加えて、弁207に連続的に印加される増圧223は、増圧223の領域と弁207との間に位置決めされ得る溶出流体を分析器240に送出する。このように、以前の複合混合物/試料からのキャリーオーバーは、複合混合物が試料ループ206に搭載されている間に、マトリクス225および分析器240から洗い流される。
【0069】
図2(b)は、本発明の一実施形態による、試料ループ206からの計量された複合混合物がマトリクス225を通過する時の、弁206および207の位置を示す。注入弁206の作動に応じて、その後に洗浄流体が続く複合混合物は、マトリクス225を第1の方向226に通過する。集束効果により、着目検体は、上述のように、マトリクス225の第1の一部に結合する。試料に続く洗浄流体は、廃棄物に分流される不要な成分(例えば、塩、緩衝剤、洗浄剤等)のマトリクス225からの十分な除去を確保する。複合混合物の次の試料ループの吸引の前にシッパー管204を清潔にするために、シッパー管104は、洗浄溶媒または緩衝液中に浸漬される。シッパー管104に印加される減圧221は、洗浄溶媒を、シッパー管204を通過させて、トラップ209内に通す。
【0070】
着目検体がマトリクス225に搭載され、かつ望ましくない成分が除去された後に、弁206および207は、複合混合物をマトリクス225に搭載する送出系を、マトリクス225のヘッドから離れて分流する。同時に、溶出流体は、マトリクス225を、複合混合物が搭載された方向とは実質的に逆の方向227に通過する。溶液または溶媒のいずれかであってもよい溶出流体は、結合した着目検体をマトリクス225から解離させる。種々の実施形態では、複合混合物を搭載し、かつマトリクス225全体に溶出流体を送出するために、別々の送出系が使用される。
【0071】
図2(c)は、本発明の一実施形態による、溶出流体がマトリクス225を通して逆溶出される時の、弁206および207の位置を示す。弁207は、溶出流体をマトリクス225へと第2の方向227に通過させるように作動させる。検体は、主として、集束効果によりマトリクス225のヘッド226内に固定化され、かつマトリクス225の長さ全体を進行する必要が無く、したがって、拡散を制限するので、マトリクスの試料出力は、わずかな時間帯域の範囲内に高濃度の様態で分析器240に送達される。逆溶出の間、洗浄液が試料ループ206を清潔にするように通過して、その後の混合複合物の吸引のために、試料ループ206を準備する。
【0072】
分析器240は、例えば、光インタロゲータまたは質量分析計であってもよい。種々の実施形態では、試料は、大気圧化学イオン化(APCI)、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、または大気圧光イオン化(APPI)を含む、様々な標準システムを使用して、質量分析計に直接的に提示され得る。質量分析計は、各化合物の質量電荷比に基づいて、多数の化合物を定量的に分析することができる。正確な質量選択的検出および定量化は、質量分析によって実施することができるので、個々の化合物のさらなる分離は、概して不要である。MSの出力を分析し、MSピーク下での面積を積分することによって、試料中に存在する化合物の量が定量される。
【0073】
逆溶出後に、弁206および207は、どちらも図2(a)に示されるように作動させる。次いで、高い試料スループット速度を達成するために、複合混合物を試料ループ208内に搭載するステップ(実装されている場合)と、マトリクス225上で複合混合物を第1の方向に通過させるステップと、マトリクス225上で溶出流体を第2の方向に逆溶出するステップとを周期的に繰り返す。
【0074】
(マトリクス試料出力のピーク幅の最小化)
マトリクス225の出力における(ピーク高さの1/2における)試料ピーク幅は、送出系221、222、および223からの適切な流量を選択することによって、および混合複合物および試料が流体回路104を通って移動する時の線形拡散をさらに最小化する管系の直径を選択することによって、さらに最小化することができる。一般的に、狭径の管系は、高スループットを可能にする鋭いピークを生じるが、流体送出系内の高背圧にもつながる。同様に、高流量も、概してより鋭いピークをもたらすが、同様に高背圧につながる。高流量は、不完全な試料イオン化により、質量分析計内の信号強度の減少につながる可能性もある。したがって、システムの最大スループットの決定は、モデル化することができる、または経験的に決定することができる、複数の因子間の妥協点である。不溶性マトリクスの性質およびタイプ、送出流量および圧力、管系の仕様、高速クロマトグラフィを実施するために使用される流体の性質、および流体弁206と207との切り替えのタイミングを含む、使用される種々のパラメータは、分析される化学化合物ファミリーごとに最適化されなければならない。この一組の最適化されたパラメータは、高スループットの質量分析のための化合物特異的方法を構成する。本発明の種々の実施形態によれば、管系の直径の通常の範囲は、20μm〜300μmであり、また、流量は、0.1mL/分〜5mL/分であり、およそ5〜6000psiに到達し得る背圧をもたらす。
【0075】
(キャリーオーバーの最小化)
試料スループットの最大化における主な問題点は、試料間キャリーオーバーの除去である。図1に戻ると、1回の分析後に、流体回路104、マトリクス102、および分析器インターフェース130から除去されていない、いずれかの試料は、次の試料への干渉を引き起こし得る。低レベルの検体を伴う試料が、高レベルの検体を伴う試料の後にある場合、第1の試料からのキャリーオーバーは、第2の低検体試料における不正確な分析をもたらし得る。キャリーオーバーの最小化は、一般的に、着目検体がシステム100から除去されるように、流体回路104、マトリクス102、および分析器の界面130を、着目検体を完全に可溶化する溶媒で洗浄することによって達成される。本発明の種々の実施形態もこの手法を用いており、流体回路104、マトリクス102、および分析器インターフェース130は、試料のキャリーオーバーを最小化するように、溶出緩衝剤/洗浄液で洗い流され得る。
【0076】
複合混合物および/または試料と接触する、システム100の流体回路104および他の構成要素の洗浄は、慣習的に時間のかかるステップであり、試料間の長い洗浄ステップは、システムの全体的なスループットを制限する。したがって、最小量の洗浄を必要とし、一方で、許容可能に低レベルのキャリーオーバーを生じるシステムが非常に望ましい。この要件は、キャリーオーバーの量を最小化し、かつ清潔化を容易にするために、部分的に、複合混合物および/または試料と接触する、システム100内の流体回路104および(試料ループ206、弁モジュール106、MSインターフェース130等を含む)他の構成要素内の表面を生体不活性にすることによって達成することができる。さらに、送出系によって生成される高い背圧のため、このような表面は、強い機械抵抗および漏出を伴わずに高圧液体に耐える能力を有さなければならない。
【0077】
このようなシステムに一般的に使用される材料は、強い耐薬品性を有し、かつ広範囲の内径および外径で製造することができる、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)である。しかしながら、本発明の好適な実施形態では、流体回路104内の管系は、ポリイミドから製造される。ポリイミド管は、さらに非常に高い疎水性の化合物の非常に低いキャリーオーバーを有し、劣化するまで高圧に耐えることができ、かつ線形拡散を最小化するのに最適である、20〜300マイクロメートルの内径で製造することができる。ポリイミド流体系の使用は、最小限のキャリーオーバーで、広範囲の検体について試料間の非常に高速な洗浄ステップを可能にする。複合混合物および/または試料と接触する流体回路104および他の構成要素の構造に関する別の選択肢は、同様に低いキャリーオーバー特性を有することが分かっている、チタニウムまたはチタニウム合金である。流体回路104は、最小限の線形拡散に対して最適化される、20μm〜300μmの直径を有するチャネルを有し得るが、これに限定されない、マイクロ流体生体素子も含み得る。
【0078】
本発明の別の実施形態では、ステンレス鋼等の材料から完全または部分的に流体経路を構築する。ステンレス鋼は、特に生体不活性な基質ではなく、その表面に疎水性化合物を強く吸着する傾向がある。しかしながら、複合混合物および/または試料と接触する流体回路104および他の構成要素の表面は、検体の結合を最小化し、したがってキャリーオーバーを最小化する様態で、当業者に馴染みのある方法によって、疎水性膜または親水性膜(例えば、Teflon、ポリエチレングリコール)で、化学的または物理的に被覆され得る。
【0079】
(流体弁)
本発明の種々の実施形態によれば、流体回路104内の流体弁は、クロマトグラフィマトリクス102を横断する流れの方向を逆転させるように作動させる。一般的に、マトリクス102を横断する流れは、マトリクス102からの各試料出力について2回逆転させる必要がある。最初に、複合混合物102がマトリクス102に一方向に搭載されて、検体が結合されるが、他の成分(例えば、塩、緩衝剤、洗浄剤等)は結合されない。次いで、流れが逆転され、検体は、マトリクス102から搭載された方向とは逆の方向に溶出されて、分析のために分析器116に分流される。最後に、流れは、次の試料に備えて再び逆転される。このようなマイクロ流体用途で使用される多くの流体弁では、弁を通る液体の流れは、弁が作動している間、物理的に停止される。標準的な電子作動の弁モジュール106は、100ミリ秒以上で状態を切り替えることができる。空気圧作動の弁は、非常に速く切り替えることができ、30〜40ミリ秒の作動時間に到達し得る。この作動時間中の短い流れの遮断は、一般的に運転が数分間続く従来のLCの中では問題ではない。
【0080】
しかしながら、流れの遮断は、試料スループットの時間が1試料/秒に到達する、超高スループット率においては問題になる。一般的に、このシステムで使用され得る注入弁は、2つのポート間で流体連通できるようにし、かつ2つの作動位置を有する。しかしながら、弁が作動位置の間の中間状態に調整される場合、流体連通が物理的に止められ、いかなる流体も弁を通過することができない。作動手順の間には、弁が、一方の位置から、弁を通る流体を止める他方の位置へと回転される時に、有限の時間量が存在する。弁を通る流体を押し出す高圧ポンプは、この時間中も動作を継続する。作動プロセス中の弁における遮断の形成は、弁と高圧ポンプとの間の流体回路内の圧力の上昇をもたらす。圧力の上昇が十分に大きい場合は、最終的に流体系の不具合をもたらし、漏出をもたらし得る。従来の弁システムでは、圧力の上昇は、過渡的であり、圧力の上昇は、実際に流体回路の不具合を引き起こすには不十分である。しかしながら、流れの遮断は、質量分析計信号の基線内に観察される。流れの遮断によって、MSの背景信号をもたらす溶媒中の不純物が排除されるので、基線は、弁の動作中に著しく降下する傾向にある。弁が、回転を終了し、流体接続が再確立された時に、ポンプと弁との間の増加した圧力が解放され、通常よりも速い流れの溶媒が質量分析計に送達される。これは、質量分析計に入る不純物の量の増加および背景信号の増加をもたらす。この事象が検体信号と重なる場合、非対称的なピーク、歪曲した基線、および概して不十分な定量化につながる可能性がある。
【0081】
理想的には、流量および圧力にいかなる検出可能な障害も存在しないような速度で、流れの反転が生じる。毎秒1つの試料の試料スループットが実施されている一応用例に採用される、100ミリ秒の作動時間が可能な弁モジュール106は、分析器116への流れが、毎秒200ミリ秒、または試料の分析時間全体の20%にわたって物理的に遮断されることになる。本発明の種々の実施形態では、100ミリ秒未満、好ましくは約30ミリ秒以下の作動速度が可能な空気圧弁を利用する、弁モジュール106が利用されるが、これに限定されない。
【0082】
空気圧弁アクチュエータは、Huston,TexasのVICI Valco Instrumentsから入手できる。空気圧弁アクチュエータは、軸継手を通して、あらゆる弁(VICI Valco Instruments以外の製造業者からの弁を含む)に連結することができる。好適な弁には、Oak Horbor,WisconsinのScivex,Inc.から入手できるNANOPEAK(登録商標)等の、陶製ロータおよび/またはダイヤモンド状被覆を有する弁が挙げられる。
【0083】
従来のシステムに勝る上述の実施形態のさらなる利点は、同じ溶媒が質量分析計に常時送達されるように、流体回路が配設されることである。段階的溶出を行う時であっても、溶出溶媒が、質量分析計に噴霧される唯一の溶液である。質量分析計に適合しない成分を含有する洗浄液は、廃棄物に分流されるが、溶出溶媒は、質量分析計に噴霧される。このように、好適なAPI噴霧が常時保持され、洗浄溶液および溶出溶液からの異なる背景信号による、基線の変動が排除される。一部の高性能な従来のシステムは、源領域内の不揮発性化合物の集積を回避するように、MSの流入口から離れて洗浄液を分流する。しかしながら、溶出溶媒がMSに分流される時に、MS流入口における安定した噴霧を再確立するには数秒かかる可能性がある。試料信号がこの不安定な噴霧領域と重なる場合、ピーク対称性、基線安定性、および不十分な定量化に関する問題につながる可能性がある。
【0084】
(ソフトウェア)
コントローラ125または別のプロセッサによって実行され得る、分析器116によって生成されるデータを分析するために使用されるソフトウェアは、高スループット分析の多くの特徴を有効にする。例えば、高スループットでの長い分析の終了時の質量分析計の出力は、一連のデータ点から成り、時間対強度値は、分析されている各質量チャネルで記録される。直交座標系でプロットされる場合、これらのグラフは、一連のピークで構成されるクロマトグラムをもたらし、各ピーク下の面積の積分は、分析される試料の濃度に相関させることができる。
【0085】
この積分事象は、本発明の一実施形態によれば、流体回路104における種々の弁の切り替えに結びつけることができる。試料をクロマトグラフィマトリクスから質量分析計(または他の分析器)内に逆溶出するように弁を動作させた時間を、正確に記録することができる。この事象が起こるまで、いかなる検体も質量分析計に送達できないことが分かっている。弁の作動に応じて、クロマトグラフィマトリクスから逆溶出されている検体からの質量分析計信号を観察することができる。弁の作動時間および質量分析計ピークの始まりは、適時に相互に正確にマップすることができ、よって、ピーク積算アルゴリズムは、各弁の作動後の選択された期間にわたる質量分析計信号の積算から成る。いずれの場合においても、同一の信号窓が監視および積分されるので、いかなる検出可能な検体も含有していない試料であっても、このようにして正確に分析することができる。
【0086】
ある場合では、流体回路104における誤りが、質量分析計にいかなる信号も見出せないことにつながり得る。このような誤りの一例は、試料が全く存在しない流体貯蔵容器である。これは、試料の分割量ではなく、カラム225への空気の注入につながる。そのような場合、全ての検体について、基線信号だけしか検出されないことになる。最終的な定量化は、相対測定(すなわち基質対生成物または検体対内部標準)に依存するので、このような誤りを容易に検出することができる。2つ以上の検体信号の合計が、ある閾値を下回る場合、その試料は、誤りとして標識をつけることができる。
【0087】
(多重化)
本発明の種々の実施形態では、高速クロマトグラフィおよび試料間洗浄に必要な時間は、マトリクスの出力時点での試料の(ピーク高さの1/2における)ピーク幅よりもはるかに長い。このような実施形態では、次に分析される試料が質量分析計に送達される前に、数秒の基線質量分析計(または他の分析器)の信号が存在し得る。この期間は、質量分析計が能動的に試料を定量化していないので、事実上、生産性の損失である。
【0088】
質量分析計は、顕著な資本支出を必要とする、大きい設置面積の機器であるので、本発明の一実施形態に従って、図3に示されるように、2つ以上の高スループット質量分析インターフェース303および304が、単一の質量分析計302に試料を送給するために使用される。各質量分析インターフェース303および304は、上述した高速クロマトグラフシステム100を含み得るが、これに限定されない。選択弁310は、複数の高スループット質量分析インターフェース303および304と、質量分析計302との間に設置される。所与の高スループット質量分析インターフェース303または304からの試料を分析する準備ができた時に、選択弁310は、その試料を質量分析計302に方向付けるために使用され、一方で、残りのインターフェース303または304は、廃棄物に分流される。一方のインターフェースが能動的に分析されている間に、他方のインターフェースが洗浄または試料収集ステップにあるように、質量分析計302への試料送達をずらすことによって、複数のインターフェース303および304を、単一の質量分析計302に使用することができ、スループットを最大化できるようにする。
【0089】
(自動注入装置)
図4は、本発明の一実施形態による、単一の注入弁405を含む、自動注入装置400の概略図である。自動注入装置400は、上述の実施形態にあるように、さらなる弁と組み合わせて使用され得、また、試料を試料貯蔵容器から、これに限定されないが、分析器および/またはクロマトグラフィカラムを含み得る流体回路への移動に使用され得る。
【0090】
図5(a)により詳細に示されるように、また、図2(a〜b)の弁206と同様に、注入弁405が第1の位置である(例えば、起動していない)時に、減圧源411は、試料401を試料シッパー管407を通して試料ループ403内に吸引するために使用される。図5(b)に示されるように、注入弁405の作動に応じて、試料は、増圧を印加することによって流体回路413に導入される。弁405の停止および次の試料の吸引の前にシッパー管407を清潔にするために、吸引管405は、洗浄液または緩衝液中に浸漬され得、洗浄溶媒を吸引管104を通してトラップ109内に吸引するように、減圧が印加される。したがって、一定の負圧とインラインのトラップとの組み合わせは、注射器を通した洗浄溶液の繰り返しの吸引および分配の必要性を排除する。
【0091】
過剰の試料が利用できる場合、減圧源411は、連続的な真空を試料シッパー管407の遠位端に印加することができる真空ポンプであってもよいが、これに限定されない。十分に大容量の試料401が試料ループ403内に吸引されて、ループを完全に満たした時に、注入弁405が作動して、試料を流体回路413に出力する。注入弁405と真空ポンプ411との間に位置するトラップ409は、過剰な試料を回収するために使用される。注入容量を変化させることは、試料ループ403の長さを変化させることによって達成することができる。
【0092】
しかしながら、過剰の試料401が利用できない、または試料が浪費するには高価過ぎる場合には、計量された量の試料401を、注入弁405内に吸引してもよい。注入の好適な一実施形態では、この計量は、真空ポンプ411と注入弁405との間に位置する遮断弁415を使用することによって実施される。好適な実施形態では、遮断弁415は、ミリ秒の時間尺度で精密かつ正確に作動できるようにする、非常に高速な応答時間を有する電磁弁である。遮断弁415は、非常に正確かつ制御された時間量にわたって、試料の分割量をシッパー管407を通して試料ループ403内に吸引するために使用され得る。試料ループ403内に吸引される試料の容量は、試料ループ403の直径、試料シッパー管407、および遮断弁415のタイミングに基づいて正確に較正することができる。遮断弁415が開口位置により長く保たれるにつれて、試料の吸引はより長くなり、かつ注入弁405内に吸引される試料の容量はより大きくなる。
【0093】
本発明の別の実施形態によれば、連続真空システムは、特に、遮断弁415が非実用的である場合、または分析される複数の試料が、粘度に大きな差を有する場合には、注入弁403と流体連通するピストン装置と置き換えられ得る。粘度の変化は、試料吸引速度の変化を引き起こし得る。試料ループ403内に吸引される試料の量は、例えば、ピストンがシリンダ内で引き出される距離を制御することによって計量することができる。計量された量の試料全てを試料ループ403内に搭載できるようにするために、十分な時間が吸引プロセスに割り当てられる。したがって、試料の粘度によって生じる吸引速度の差に起因する、注入容量の不正確さを排除することができる。試料は、試料ループ403内に直接的に吸引され、次いで、流体系内に注入される。ピストンがシリンダ内のその移動端に到達するまで、ピストンから正圧を印加する必要は無い。
【0094】
本発明の他の実施形態では、試料をシッパー管を通して注入ループ内に吸引するための上述のアプローチの種々の組み合わせが使用され得る。例えば、選択弁は、連続真空源と組み合わせた遮断弁を注入弁と流体連通して設置するか、あるいは、ピストン装置を注入弁と流体連通して設置するかを選択するために使用され得る。過剰の試料が利用できる場合は、遮断弁を開放位置にしたままで、選択弁を、注入弁と流体連通する遮断弁および連続真空を設置するように作動させる。試料の吸引を計量しなければならない場合は、上述のように遮断弁を起動することができ、またはピストンに基づく吸引システムを使用するように、選択弁を作動させることができる。
【0095】
自動注入装置400は、いくつかの理由で、従来の自動注入器よりも有利である。試料を移送注射器内ではなく、注入ループ内に直接的に吸引することによって、各注入に要求されるコンピュータ制御のロボットの動作が削減される。従来の自動注入器システムでは、移送注射器は、試料の分割量を吸引するように、最初に試料貯蔵容器内に移動しなければならない。次に、移送注射器は、注入弁に移動して、試料の分割量を注入ループ内に搭載しなければならない。注入後、注射器は、さらに別の1つ以上の清潔化ステーションまで移動しなければならない。本発明は、試料を直接的に注入ループ内に吸引するので、移送注射器を試料貯蔵容器から注入弁へと移動させる必要性が排除される。装置内のロボットの移動を最小化することで、スループットおよびシステムの信頼性の両方が増加する。繰り返して吸引して、同じ試料から注入することによって、より大きい試料容量が、過度の遅延を伴わずに分析され得る。注入がクロマトグラフィの樹脂に対するものである場合は、複数の試料の分割量が、さらなる洗浄および溶出ステップの前に、カラムに添加され得る。
【0096】
本発明の別の利点は、試料間での自動注入器の清潔化が実現されることである。試料と接触する表面は全て、概して、次の試料を注入できる前に、完全に清潔にしなければならない。従来の自動注入器では、これは、移送注射器と、注入弁とを含む。移送注射器の清潔化は、特に標準的な注射器が使用されている場合は、特に難しくなり、かつ時間がかかる可能性がある。大部分の注射器は、ガラスおよびステンレス鋼から製造されるので、ある試料は、特に除去が困難である。多くの親油性化合物は、ステンレス鋼に強く付着する傾向があり、試料のキャリーオーバーまたは浸出をもたらす可能性がある。移送注射器は、一般的に、種々の直径の管系を有し、また、連続的で滑らかな生体不活性の管系よりも清潔にするのが困難である、複数の材料(例えば、ガラスおよびステンレス鋼)で構成される。本発明では、試料をシッパー管を通して直接的に注入弁内に吸引するので、本発明は、移送注射器の清潔化を必要としない。これは、試料のキャリーオーバーを減少させ、一方で、装置のスループットを増加させるといった、二重の効果を有する。
【0097】
試料のキャリーオーバーを最小化するために重要なことは、シッパー管に使用される材料の選択である。本発明の好適な一実施形態では、米国特許第7,100,460号に説明されているように、試料を、広範囲の試料に化学的に適合しないステンレス鋼等の材料と接触させる必要性を伴わずに、密閉した試料貯蔵容器に穴を開ける能力を提供するために、同心の管注入器が使用される。
【0098】
上述のように、装置の清潔化は、図5(b)に示されるように、着目試料が、分析のために流体回路に分流されている間に、シッパー管407を通して大容量の流体を吸引することによって達成することができる。小さい表面積のシッパー管および清潔にする必要がある注入弁と連結される、生体適合性材料の使用は、高速なスループットを保ちながら、試料のキャリーオーバーを極めて効率的に低減できるようにする。
【0099】
以下は、上述の実施形態の種々の構成を使用する、高スループット試料採取の実施例であるが、これに限定されない。
【0100】
(実施例1−薬物間相互作用(DDI)検定)
多くの生体異物化合物は、主に肝臓内の、シトクロームP450として周知の、酵素ファミリーによって生体内で代謝される。P450酵素による代謝活性は、大多数の小分子医薬品も含む。多くの医薬的活性化合物の治療活性は、非常に用量依存性があるので、これらの化学薬品の代謝的運命を理解することは有利である。多くの場合、ある高用量の化学薬品は、有毒であり得るか、または長期的な有害作用を有する可能性がある。
【0101】
多くの化合物は、阻害剤または活性化剤のいずれかとして作用し、あるP450酵素の代謝に影響を及ぼすことが分かっている。これは、現在治療法として使用されている化学薬品の範囲に当てはまる。薬物の安全性の観点から、個人によって摂取される医薬品化合物の代謝プロファイルが、個人が摂取している可能性のある他の化学薬品によって影響を及ぼされ得るかどうかを知ることは極めて重要である。個人が、現在、特異的P450酵素の作用を阻害するある薬物を摂取している場合、同じくP450酵素によって代謝される第2の薬物を摂取すると、破滅的な結果になる可能性がある。P450に対する第1の薬物の阻害効果は、第2の薬物が予想される速度で代謝されないことにつながり、かつ予想よりもかなり高い生体内濃度をもたらす可能性がある。場合によっては、これは、有毒に、または致命的にさえなり得る。
【0102】
潜在的な新しい医薬品化合物の可能な効果を研究するために、薬物間相互作用検定として周知の一連の生体外検定が開発され、当業者には馴染みのあるものとなってきた。検定は、精製された組み換え型のタンパク質、または肝臓組織の種々の細胞または細胞内(例えば、ミクロソーム、S9フラクション等)調製物のいずれかとして、P450酵素の種々の調製物を使用する。酵素調製物は、試験化合物の存在下で制御された条件の下で、プローブとして周知の、P450の周知の基質と反応させることができるようにする。試験化合物が検定において活性である場合は、プローブ分子の期待される代謝の転換を引き起こす。広範囲の異なるプローブおよび検定が、科学文献に説明されている。これらの形式には、一般的に組み換え型の酵素調製物、および細胞内肝臓調製物の使用を促進する質量分析アプローチとともに使用される光学活性プローブ、および高度に選択的かつ特異的なプローブが挙げられる。光学検定のスループットは、非常に高くすることができるが、研究者らは、より生物学的に関連するデータを得ることができるので、概して、質量分析に基づく検定の実施を好む。
【0103】
上述の本発明の実施形態は、質量分析に基づく薬物間相互作用検定のスループットを向上させるために用いることができる。シトクロームP450−2D6(CYP2D6)に対する試験化合物の活性を試験する検定を、96ウエルのマイクロタイタープレート内で実施した。ヒト肝臓組織からのミクロソーム調製物を、pH7.4のリン酸カリウムおよび塩化マグネシウムを含有する緩衝剤中のデキストロメトルファン、試験化合物、およびNADPHの存在下で培養した。30分の培養の後、10%(v/v)0.1%のギ酸を添加して反応物を酸性にすることによって、反応物を急冷した。ヒト肝臓ミクロソームは、様々な異なる酵素を有するが、デキストロメトルファンは、CYP2D6の特異的基質であり、かつデキストロファンへと代謝される。残りのデキストロメトルファン基質およびこの反応で形成されるデキストロファン生成物は、1試料あたり約数分であるスループットで、従来の液体クロマトグラフィ質量分析法を用いて定量化することができるが、上述の本発明の実施形態は、類似の分析を、約5秒で実施できるようにする。
【0104】
本発明の一実施形態に従い、図2(a)〜(c)を参照すると、弁206に取り付けられるシッパー管204は、96ウエルのマイクロタイタープレート内の第1の分析される試料と相対的に移動する。シッパー204の遠位端は、反応緩衝剤に浸漬され、分割量は、シッパー管204の遠位端に印加される真空221の使用を通して、5.0マイクロリットルの注入ループ208内に吸引される。吸引を開始して50秒後には、5.0マイクロリットルの注入ループ208を完全に満たすように、十分な流体が弁206内に吸引される。この時点で、注入弁206が作動し、ループ208内の試料は、注入ループ208を通して5.0マイクロリットルの試料分割量を不溶性マトリクスを含有するクロマトグラフィカラム225上に押し出す、高圧流体ポンプ222からの出力と流体連通する。マトリクスは、平均直径が40ミクロンである、不透過性ビーズから成る。各ビーズの表面は、疎水性環境を作り出すために、4炭素長のアルカン鎖で誘導体化される。多孔性フリットは、不溶性マトリクスビーズをカラム225内に拘束するが、粒子の性質は、許容できないほど高い圧力の増加を伴わずに、流体が周辺および粒子間を自由に移動できるようにする。
【0105】
高圧流体ポンプ222は、毎分1.2ミリリットルの流量で水を送出するために使用される。試料がカラム225に到達する時に、親油性分子であるデキストロルファンおよびデキストロメトルファン検体は、カラム内の不溶性マトリクスビーズと相互作用して、カラム225上に吸着される。リン酸カリウム緩衝剤、塩化マグネシウム塩、NADPH、およびNADPを含む、質量分析に干渉する反応緩衝剤中の化合物は、高度に親水性であり、したがって、カラムを通して廃棄物容器内に洗い流される。試料ともに吸引され得た検定緩衝液中の不溶性成分は、40ミクロンのビーズ間の空間を通って移動するのに十分小さく、同様に検体から除去される。
【0106】
カラム225の総内部容量は、4.0マイクロリットルである。許容レベルで干渉塩を除去するには、複数容量の水でカラムを洗い流す必要がある。毎分1.2ミリリットルの流量で、毎秒合計20マイクロリットルの水が送出される。したがって、質量分析法に不適合な成分を除去するために、1秒間の洗浄で、合計5カラム容量の水を、マトリクスのベッド上に送出した。
【0107】
このプロセス全体の間に、水中の80%アセトニトリルの溶液を、毎分1.0ミリリットルの流量で、エレクトロスプレーイオン化(ESI)モードで動作する三連四重極質量分析計240上に送出するために、第2の流体ポンプ223が使用される。質量分析計240は、複数の反応監視(MRM)モードで、特にデキストロルファンおよびデキストロメトルファン検体を監視するように最適化した。安定したESIの流れが保持され、また、80%アセトニトリル溶液から一定の基線が確立された。弁222が試料を注入ループからマトリクス上に押し出してから正確に1.0秒後に、第2の弁207を作動させた。弁207は、80%アセトニトリルを、試料が搭載された方向とは逆の方向から、カラム225に入らせる。同時に、第1のポンプ222の出力を、カラムから離れて、かつ廃棄物に分流した。第2の弁207の作動は、カラム225を第2のポンプ223と流体接触させ、カラム225上に吸着された検体は、80%アセトニトリルで溶出して、それらが分析される質量分析計240のESI源内に押し出した。2つの検体は、同時に溶出し、それらの質量対電荷比に基づいて、質量分析計で分析した。
【0108】
溶出ステップは、搭載ステップとは逆の方向に行われるので、検体は、カラム225を通して進行することは無い。これは、カラム225上を進行する流体が、混合および線形拡散をもたらす可能性のある乱流を受ける傾向があるので、重要な点である。これは、試料が質量分析計に提示される流体の容量の増加につながるので、線形拡散を最小化することが非常に重要である。最良の分析データは、試料が、最短の時間量で最小の可能な溶出容量で提示される時に得られる。小さい溶出容量は、検体の高局所濃度の検体につながり、それに応じて、背景信号および散弾雑音から区別することができる、高信号レベルにつながる。毎分1.0ミリリットルの流量での1.5秒において、合計25マイクロリットルの溶出流体をカラム224の上で押し出した。これは、6カラム容量を超える溶出流体の容量に相当し、カラムを洗い流し、かつ次の試料へのキャリーオーバーを排除するには十分である。
【0109】
この時点で、弁222および207の両方を、再び開始位置まで作動させた。注入ループ208は、次の使用を吸引するために利用することができ、第2の高圧ポンプ223からの80%アセトニトリルを、カラム225から離れて質量分析計240に直接的に分流し、第1の高圧ポンプ222からの水を、カラム225上で元の方向に押し出した。この状態を最小で2カラム容量(最小で400ミリ秒)にわたって保持し、カラム225のマトリクス内の局所環境を水で洗い流して、次の試料中の検体を結合できるようにした。このプロセスは、カラム平衡化として周知であり、かつ適切に分析できるようにするために十分な時間をかけて実施しなければならない。カラム225の平衡化の後、次の試料を分析するよう準備した。
【0110】
試料を分析している間に、シッパー管内のあらゆる汚染を除去し、かつ次の試料へのキャリーオーバーを排除するように、貯蔵容器から80%アセトニトリルをシッパー管204を通して吸引した。このように、試料を、1試料あたり5秒の周期的速度で分析した。2つを超える検体を同時に分析することも可能であり、したがって、複数のP450アイソフォームに対する検定を多重化することが可能である。
【0111】
(実施例2−代謝安定性検定)
本発明の種々の実施形態によれば、システムのある属性は、スループットを犠牲にして有利に強化され得る。このような応用の一実施例は、代謝安定性検定である。代謝安定性検定は、試験分子に対する肝臓酵素の活性を評価する。それは、一般的に、緩衝系内にエネルギ源(例えば、NADPH)および試験化合物とともに細胞内肝臓調製物(例えば、肝ミクロソームまたはS9フラクション)を培養することによって実施される、生体外検定である。肝臓酵素は、試験化合物を代謝し得、その速度は、質量分析法を用いて、制御された時間での試験化合物の量を定量化することによって定量することができる。
【0112】
この検定は、いずれの試験化合物も、質量分析計で監視しなければならないという点で、DDI検定とは異なる。DDI検定では、システムを完全に最適化できるように、一組の特異的プローブだけしか監視する必要が無かった。代謝安定性検定において非常に広範囲の試験化合物を分析する必要があると想定すれば、多くの異なる化学構造を分析することができる一般的な方法が必要とされる。この応用例では、より広範囲の分析を促進するために、システムのスループットがわずかに低下する。
【0113】
代謝安定性検定を実施するために、DDI検定とは異なるアプローチを使用する。逆溶出(すなわち、カラムから、検体がカラム上に搭載された方向とは逆の方向へと検体を溶出する)は、使用しない。むしろ、検体は、カラムから、それらがカラム上に搭載された方向と同じ方向に溶出される。これは、検体が不溶性マトリクスビーズ上で押し出される時に、検体が乱流を受けるので線形拡散をもたらし、より幅広なピークとなり、したがって、より低いスループットを引き起こす。しかしながら、DDI検定に用いられる本発明の局面のうちの多くは、それでも検定に適用することができ、検定の感度を犠牲にせずに、従来の方法を超えて大幅に増加したスループットをもたらす。これらの利点を、以下に詳細に説明する。
【0114】
試料分割量は、洗浄液を送出するために使用される第1の高圧ポンプを伴うDDI検定と同じ様態で、注入ループ内に吸引されてカラム上に搭載される。この溶液は、一般的に、水または水性緩衝液であり、反応混合物の塩、緩衝剤成分、NADPH、および不溶性成分を廃棄物容器へと洗い流すために使用される。この時間の間に、第2の高圧ポンプは、溶出溶媒を質量分析計のESIまたはAPCI源内に送出するために使用される。第2の弁を作動させる時に、溶出流体は、カラム上で、検体がカラム上に搭載された方向と同じ方向へと送り込まれる。非常に広範囲の化学薬品を溶解することができるが、大気圧イオン化質量分析と適合する溶出流体が使用される。これらの緩衝剤には、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、またはイソプロパノール)、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン、またはこれらの溶媒の混合物が挙げられる。概して、混合物中には少量の水を含むことが望ましく、酢酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、またはDMSO等の溶出溶媒への添加物は、より鋭いピークをもたらす。
【0115】
着目検体の質量分析特性がすでに周知である場合、質量分析計は、特にそれらの化合物をMRMモードで監視するように設定することができる。しかしながら、検体に関するいかなる事前の情報も入手できない場合は、質量の範囲を走査するために質量分析計を使用することが望ましくなり得る。飛行時間型、イオントラップ型、ハイブリッド四重極/イオントラップ型、またはハイブリッド四重極/飛行時間型質量分析計の使用は、信号強度の最小限の損失で、広範囲の質量の走査を促進することができる。良好な定量データを得るために、反応物の急冷の際に内部標準が加えられ、検体からの信号は、内部標準に関して正規化される。
【0116】
本発明は、カラムクロマトグラフィを使用して試料を精製するように段階的溶出システムを使用し、質量分析法を用いてそれらを分析する。しかしながら、システムは、従来の段階的溶出システムに勝る有意な改善を用いる。すなわち、同じ溶媒系(溶出溶液)が、常時、質量分析計の流入口に噴霧される。従来のシステムでは、洗浄液および溶出溶液は、試料ごとに交互に換えられ、2つの異なる溶液が、質量分析計の流入口に交互に噴霧される。これは、観察される基線信号に関して大きな効果を有することができる。基線信号の変動は、ピークの定量化、特に低レベルの信号を有するものに対して大きな効果を有し得る。
【0117】
一部のより高度な従来のシステムでは、洗浄液は、質量分析計の流入口から離れて、廃棄物容器に分流され、溶出溶液だけが質量分析計内に噴霧される。しかしながら、これは、カラムの搭載および洗浄段階中にいかなる流れも存在しないので、質量分析計に見られる背景信号の変化ももたらす。さらに、MSの流入口において安定した噴霧を再確立するために、数秒かかり得る。本明細書に説明されるような高スループットのシステムでは、検体のピークの先端は、不安定な流れの領域と重なる場合があり、定量化において不十分な感度、不均一なピーク形状、および誤りの増加をもたらす。
【0118】
本発明が従来のシステムを超えて提供するさらなる改善は、高速切り替え弁である。標準的な電子作動の弁は、100ミリ秒を超える切り替え時間を提供する。しかしながら、本発明に使用される非常に高速な弁の切り替え(例えば、50ミリ秒以下)は、質量分析計において無パルスで噴霧できるようにし、平坦な基線を伴う対称性ピークを提供して、正確な定量化を促進する。
【0119】
(実施例3−化合物純度試験)
一部の応用例では、分析される試料は、すでに質量分析法と適合する緩衝液中にある。このような応用例は、いかなる精製も必要とせずに、API源内に直接的に噴霧することができる、水性または有機緩衝液中の試験化合物の品質管理分析であり得る。上述の実施形態の種々の局面は、このような応用例に対する試料スループットを増加させるために用いることができる。
【0120】
この応用例では、単一の注入弁だけしか使用しない。試料の分割量は、注入ループ内に吸引され、弁の作動の際に、試料が質量分析計内に直接的に噴霧される。単一の流体ポンプからの流れは、試料を、注入ループを通して質量分析計の流入口内に押し出すために使用される。本発明の好適な実施形態では、試料を質量分析計上に押し出すために使用される流体は、検体がそこに非常に溶解しやすく、かつ質量分析計の流入口において良好なイオン化を提供する流体である。これらの溶液には、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、またはイソプロパノール)、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン、またはこれらの溶媒のうちの1つ以上と水との混合物が挙げられる。
【0121】
システムは、複数の手段を通して、従来のシステムに勝る増加したスループットを提供する。貯蔵容器から注入弁へ試料分割量を移動させるための輸送注射器の排除は、ロボットの全体的な速度を増加させる。注入弁および試料貯蔵容器は、試料の分割量を注入ループ中に直接的に吸引することができるように、互いに相対的に移動し得る。より速いロボットを促進することに加えて、これは、注入の間に輸送注射器を清潔にする必要性も排除する。従来のシステムでは、輸送注射器および注入ループは、どちらも試料間で完全に清潔にする必要がある。しかしながら、本発明では、いかなる輸送注射器も存在しない。
【0122】
精製する必要の無い試料は、試料間の最小限のキャリーオーバーを伴うシステムを使用して、1試料あたり約1秒のスループットで、大気圧イオン化によって分析されている。
【0123】
(試料間キャリーオーバーの回避)
上述のように、流体系全体は、所与の試料からのキャリーオーバーが列内の次の試料の分析と交絡しないようにするために、分析の間に適切に清潔にされる。流体系の清潔化は、交絡化合物がそこに溶解しやすい溶媒を使用して流体系を洗い流すことによって達成される。本明細書で説明される流体系は、弁アセンブリと各々が関連する2つの主要な構成要素で構成される。第1の弁は、注入ループと、分析される流体試料の分割量がそれを通して注入ループ内に吸引される、試料吸引管とを含む。この弁の配設は、分析の前に試料を精製することができる不溶性マトリクスを含有するクロマトグラフィシステムを含む、第2の弁と流体連通する。
【0124】
注入ループ内に吸引される試料は、クロマトグラフィカラム上に搭載され、「洗浄液」で第1の方向に洗浄され、適切な精製が実施された後に、試料は、溶出溶液を伴うクロマトグラフィカラムから、第1の方向とは逆の第2の方向へと溶出される。溶出溶液は、試料を可溶化することによってカラムから試料を除去するので、クロマトグラフィカラムを清潔にし、かつ次の試料へのキャリーオーバーを効果的に低減するといった副次的効果を有する。着目検体の正確な性質および使用される溶出溶媒に応じて、キャリーオーバーを許容レベルまで低減するために、数カラム容量の溶出溶液が必要になり得る。大容量の溶出溶媒は、カラムを溶出溶液で第2の方向に洗い流す時間を増加させることによって、カラムに送達することができる。
【0125】
クロマトグラフィシステムの検体を溶出する作用は、カラムおよび弁アセンブリを清潔にするというさらなる利益を有するが、キャリーオーバーは、注入ループ内、試料吸引管内、または初期の弁の部分内に残る検体の痕跡にも起因する可能性がある。この流体回路の部分も、試料間のシステムを清潔にし、かつキャリーオーバーの影響を排除または最小化するために、溶出溶液で洗い流すことができる。本発明の一実施形態では、試料吸引管は、溶出溶媒を含有する貯蔵容器へ移動させることができる。弁は、試料ループが試料吸引管と流体連通するように作動させることができ、必要な容量の溶出緩衝剤を、試料吸引管および注入ループを通して吸引することができる。そのように吸引される溶媒は、真空源の前の弁の下流にあるインラインのトラップ内に回収される。
【0126】
代表的な一実施形態では、試料吸引管および注入ループを通した溶出溶媒の吸引は、クロマトグラフィカラムから分析器への検体の逆溶出と同時に生じる。これは、試料注入ループを含む第1の弁の洗い流しが、試料が溶出されている間に達成されるので、スループットを最大化できるようにする。しかしながら、生体不活性材料および表面被覆の使用にもかかわらず、それでも観察されるキャリーオーバーを生じさせる、特に扱い難い検体(例えば、疎水性の高い化合物)が存在し得る。これらの特に扱い難い検体は、キャリーオーバーを許容レベルまで排除するために、試料吸引管および注入ループを通して吸引される大容量の溶出溶媒を必要とし得る。場合によっては、試料吸引管および注入ループを通した大容量の溶出溶液の吸引の方が、クロマトグラフィカラムから分析器への検体の逆溶出よりも長くかかり得る。そのような場合には、システムのスループットに対する制限因子となるキャリーオーバーを最小化するために、流体回路を洗い流す。
【0127】
したがって、本発明の別の実施形態は、流体系を洗い流すことがスループットを制限する事象である検体の場合に対処する。このような実施形態は、溶出溶媒の容量を増加させ、それによって、キャリーオーバーをさらに最小化するが、それでも試料スループットを最大化するために、流体系の一部が、試料間で洗い流される。このために、さらなる流体弁を使用することができる。この弁は、選択弁または4ポート注入弁とすることができる。一実施形態では、6ポート注入弁が使用されるが、これは、既存の2ポート弁と同一であり、ポートのうちの2つは、管系の一部と短絡されている。流体回路の全体を通して同一の弁を使用することは、製造、在庫管理、および機器の補修における利点を有する。
【0128】
試料注入ループ(弁1)と関連する流体弁は、上述のように、真空を伴う弁を通して吸引されるのではなく、むしろさらなる高圧流体ポンプ等の正圧源からの溶出流体で洗い流される。正圧の使用は、真空吸引の使用と比較して、所与の時間量で、弁を通してより大容量の流体を洗い流すことができるようにする。通常の条件下では、完全な真空が印加されると仮定すると、流体を吸引することができる最大圧力は、1気圧である。相対的に、標準的な高圧ポンプは、数十気圧の流体圧力を印加することができ、同等の時間量でより大容量の流体が送達されるようになる。
【0129】
本実施形態では、試料は、上述のように、弁1上の試料ループ内に吸引される。次いで、上述のように、弁を作動させて、検体を第2の弁へと分流してクロマトグラフィカラム上に搭載する。適切な容量の洗浄液での洗い流しを通して試料が精製されると、弁2を作動させて、試料が、溶出溶液を伴う分析器上に逆溶出される。この間に、弁1内の流体回路(試料注入ループを含む)を溶出溶液で洗い流すために、さらなる上流弁を同時に作動させる。この時点では、試料吸引管は、試料ループと流体連通しておらず、依然として、適切な貯蔵容器からの溶出溶液の吸引によって洗い流されなければならない。次の試料を吸引する前に、システムを平衡化するように、さらなる弁をもう一度作動させて、流体系およびクロマトグラフィカラムを通して洗浄液を洗い流す。
【0130】
(3弁式実施形態)
図6(A)〜(D)は、上述の3弁および3ポンプ配設を用いた本発明の一実施形態を示す。図6(A)は、液体試料を試料注入ループ内に搭載する、第1の検定段階を示す。2弁の実施形態に関して概ね上述したように、シッパー管604を、試料貯蔵容器まで下げて、試料注入弁601を介して試料の分割量を注入ループ内に吸引する。いかなる過剰に吸引した試料も、ループの下流の真空トラップ621内に回収される。この間に、新鮮な溶出溶媒を、安定したESIまたはACPIの噴霧、および質量分析計からの対応する安定した基線信号を確立するように、第1の溶出溶媒ポンプ624から分析器640へと送達する。カラム625は、洗浄溶媒ポンプ622から洗浄緩衝剤(一般的に、水溶液)を送出することによって平衡化される。第2の溶出溶媒ポンプ623は、溶媒弁603によって廃棄物に直接的に分流される。
【0131】
図6(B)は、試料をカラム625に搭載して管路を洗浄するように、弁を位置合わせする、次の段階を示す。試料注入弁601を作動させて、シッパー管604を試料貯蔵容器から上昇させる。注入ループ内に吸引された試料は、カラム625に送達され、そこでは、着目検体は結合するが、干渉化合物(例えば、塩、洗浄剤等)は、カラム625上を通過して廃棄物に送られる。試料が適切に精製されるように、適切なカラム容量数の洗浄緩衝剤が、カラム625上で送出される。
【0132】
次に、図6(C)に示されるように、試料は、カラム625から分析器640内に逆溶出される。カラム制御弁602および洗浄制御弁603は、同時に作動し、一方で、シッパー管604は、「洗浄液」貯蔵容器に移動する。洗浄液は、シッパー管を清潔にして試料間のキャリーオーバーを排除するように、シッパー管604によって吸引される。カラム制御弁602の作動は、溶出溶媒を、第1の溶出ポンプ624からカラム625へと逆の方向に送達することになり、結合した試料は、分析器640内に逆溶出される。適切なカラム容量数が、試料を完全に溶出するように、カラム625上で送出される。洗浄制御弁603の作動は、溶出溶媒を、第2の溶出ポンプ623によって注入ループ上に送出させて、廃棄物に分流させる。これは、各試料間で、注入ループを溶出溶媒で完全に洗い流して、キャリーオーバーの最小化を援助できるようにする。
【0133】
最後に、図6(D)は、カラム625の平衡化および次の試料の吸引を示す。3つ全ての弁601、602、および603は、それらの定位置まで同時に作動する。新鮮な溶出溶媒は、第1の溶出溶媒ポンプ624から分析器640へと送出され、一方で、洗浄溶媒は、カラム625上で順方向に送出される。カラムの平衡化を確保するように、適切なカラム容量数が、カラム625上で送出される。シッパー管604は、次いで、次の試料内に浸漬され、分割量が注入ループ内に吸引され、そしてサイクルが繰り返される。
【0134】
「カラム容量」という用語を複数回引用する。カラムの様々な幾何学形状、容量、およびパッキングは、種々の特定の応用例において使用することができ、かつ応用例ごとに最適化され得る。パッキング材料の物理的特徴(すなわち、粒子径、形状、間隙率等)およびパッキングの化学的性質(すなわち、C−18対ポリマーパッキング等)は、どちらも所与の実施形態を最適化する際に重要である。一般的に、10のμL未満のカラムベッド容量が用いられる。1.2mL/分の流量で、20μL/秒が、カラム625に送達される。これは、標準的な1.5秒の溶出において、3容量の10μLカラムまたは6容量の5μLカラムを実現できることを意味する。最大スループットは、所与の応用例に対して最小の許容可能なカラムベッド容量を用いることによって達成される。
【0135】
溶出溶媒(通常は、有機溶媒)は、連続的な様態で分析器640に一定の流量で送達される。この配設では、段階的溶出が実施されるが、溶出溶媒だけが分析器640に送達される。これは、安定したESIまたはAPCIの流れ、および一定の基線を達成できるようにする。検体は、カラム制御弁602の作動によってこの流れの中に単純に「挿入」され、一定の安定した基線に関する非常に鋭い対称なピークを促進する。
【0136】
高速ステップの溶出を実施するための他の方法は、若干の問題を含み得る。例えば、洗浄液および溶出溶媒は、周期的な様態で分析器640に送達することができる。しかし、これは、2つの溶液による背景信号の大きい変化をもたらす可能性がある。変化する基線上のピークのデコンボリュートに対する試みは、非常に煩わしい。また、洗浄液(一般的に、試料混合物の塩および他の不適合性成分を含有する)が、廃棄物に分流し、溶出溶液だけが分析器640に分流する可能性がある。しかし、安定したESIの確立には、大幅に時間がかかる可能性があり、着目検体が、安定した流れが確立される前に分析器640に送達される場合、感度および定量化という課題に直面する。
【0137】
標準的な電気機械的に起動する弁は、作動時間が遅いため、先に説明した実施形態には不適切なものとなり得る。弁は、作動プロセス中には流体連通させないので、流れが物理的に止められる。流れの妨害は、1サイクルあたり2回、基線信号内の「負の」ピークとしてそれ自体を表す。特定の実施形態のスループットを想定すると、これらの2つの「負の」ピークのうちの少なくとも1つは、分析器640からの検体信号に干渉し、定量化およびデータの品質に影響を与える二重ピークをもたらす。その解決策は、特にその作業用に設計されている、非常に高速に作動する弁(例えば、30μ秒以下の作動時間)である。弁の作動時間は、流れに対するあらゆる妨害を物理的に、またはデータ内に観察できないように、十分に高速であるべきである。
【0138】
洗浄制御弁603は、4ポート弁に置き換えることができる。しかしながら、製造および部品在庫を簡潔に保つために、弁601および602と同一の6ポート弁が好適なものとなり得、2つのポートを管系の一部と恒久的に「短絡」させることができる。試料キャリーオーバーを低減し、かつ弁の性能および耐久性を増進するために、種々の弁構成要素(例えば、固定子)を、セラミックから形成することができ、かつポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはダイヤモンドライクカーボン(DLC)等の材料で被覆することができる。好適な弁には、Oak Harbor,WashingtonのUpchurch Scientific,Inc.から入手できる、部品番号S−15287が挙げられる。
【0139】
洗浄制御弁603は、システムから排除することもでき、そうすると、注入ループは、シッパー管604を洗浄液中に配置し、注入ループがシッパー管604と流体連通する「搭載」位置において、試料供給弁601を通して試料を吸引することによって、洗浄することができる。しかしながら、所与の時間量では、負圧よりも正圧の方が、大量の流体を送出することができる。試料間キャリーオーバーが問題を含む検体については、制御弁603の使用が、より大量の溶媒でループを洗浄することによってキャリーオーバーを最小化し、一方で、スループットを維持するのを援助することができる。
【0140】
弁は、電気によって作動させるか、または空気圧作動とすることができる。好適なアクチュエータには、部品番号P0040−9212KEで、TokyoのOriental Motor Co.,Ltd.から入手できる、VEXTA(登録商標)が挙げられる。アクチュエータおよび弁は、Fayetteville,GeorgiaのGERWAH Drive Components,LPからの、部品番号DK/GS9によって連結することができる。
【0141】
ある実施形態では、弁アクチュエータは、ソフトウェアおよび/またはハードウェアで制御される。ソフトウェアおよび/またはハードウェアは、弁アクチュエータの移動のタイミングを制御することができる。加えて、ソフトウェアおよび/またはハードウェアは、最適な性能および/または寿命を達成するように、弁の速度および/または加速を制御することができる。例えば、高速用途では、弁への損傷を防止するために、弁が所望の位置に到達した時に、制動力または減速力を印加することが望ましい。
【0142】
図6(E)は、3弁式実施形態の一実施形態を示す。システム600は、弁601、602、および603(不可視)と、シッパー604とを含み、全てブラケット650上に載置される。弁601、602、603は、図6(a)に示されるように、管系によって接続される。有利なことに、弁601、602、603、およびシッパー604をブラケット上に載置することによって、必要とされる管系の長さが最小化され、管系内に保持される容量がより小さいので、より高いスループットを可能にする。
【0143】
各モータ651、652、および653(不可視)も、弁601、602、および603の作動のために、ブラケット650の上に装着される。一部の実施形態では、シッパー604は、米国特許第7,100,460号によるシッパーである。
【0144】
ブラケット650は、シッパー605とともに、制御アセンブリ654によって少なくとも垂直(すなわちy方向)に移動させることができ、当業者に周知の電気的、機械的、または電気機械的装置とすることができる。同様に、貯蔵容器プレート401は、制御アセンブリ655によって少なくともx方向およびz方向に移動させることができ、当業者に周知の電気的、機械的、または電気機械的装置とすることができる。制御装置655は、予め搭載されたプレート401を受け取り、かつ試料が抽出された後にプレートを戻すように、プレート取り扱い装置656と相互作用することができる。
【0145】
図6(F)は、弁601、602、603(ここでも不可視)、モータ651、652、および653、およびシッパー604を伴う、ブラケット650の等角投影図を提供する。図6(E)にさらに明確に見られるように、弁601、602、および603は、各弁間の管系距離をさらに低減できるような角度で載置される。
【0146】
生体不活性材料および表面被覆の使用等の本発明の他の局面と連動して使用した時に、3弁式実施形態は、最も困難な化合物に対しても最小量のキャリーオーバーをもたらし、一方で、非常に高速な試料分析を行うことができるようにする。
【0147】
(改善された流体注入弁タイミング)
本発明の別の実施形態は、複数の試料の高速で逐次的な分析のための装置および方法を提供する。装置は、流体試料の分割量を試料貯蔵容器から流体注入弁内の注入ループ内に吸引する、コンピュータ制御のロボットシステムを備える。この改善は、現在の注入時に、装置が、より高いスループットを実現し、一方で、試料のキャリーオーバーを最小化できるようにする。
【0148】
図7に示されるように、弁の起動は、注入弁405と真空トラップ409との間に位置する流体センサ702を含む、フィードバック機構によって制御される。流体センサ702は、導管704の流体の存在を検出する。流体センサ702は、注入弁405を作動させ、ならびに、分析される流体試料に対する試料吸引管407の位置を決定する、正確なタイミングを制御するために使用される。本発明の様々な実施形態を以下に説明する。
【0149】
本発明の一局面によれば、移送注射器は、自動注入装置から完全に排除される。分析される試料は、注入弁405のポートに直接的に取り付けられる吸引管407を通して、注入弁405の注入ループ403内に直接的に吸引される。装置のコンピュータ制御のロボットシステムは、注入弁405に接続される吸引管407の移動を、試料貯蔵容器401と相対的に移動できるようにする。
【0150】
試料の分割量は、複数の方法で、吸引管407を通して注入弁405内に直接的に吸引することができる。過剰の試料を利用できる場合、真空ポンプ211で、連続的真空を注入弁405の遠位端に印加することができる。十分に大容量の試料が注入ループ403内に吸引されて、それを完全に満たした時に、注入弁405を作動させて、試料を流体回路に導入する。注入弁405と真空ポンプ211との間に位置するトラップ409は、過剰な試料を回収するために使用される。本発明のこの実施形態では、注入される試料の量は、注入ループ403の容量を通して単独で制御される。注入容量を変化させるには、装置の注入ループを変化させる必要がある。
【0151】
試料の分析中は、正確な測定が達成されるように、注入容量が分かっていることが重要である。これは、不定の注入容量が測定のばらつきにつながり得るので、複数の試料が連続的に分析される時には特に重要である。本発明は、複数の試料の粘度、量、温度、または他の物理的パラメータが異なり得る場合であっても、最小量の試料で注入ループを満杯にすることが、試料の吸引ごとに確実に達成される、装置および方法に関する。
【0152】
吸引管407が流体試料401内まで下げられる時に、吸引管407、注入ループ403、および弁405は、液体が無く、周囲空気だけしか含まないことになる。吸引管407が流体試料401中に浸漬される時には、試料401が吸引管407内に引き出されて注入ループ403を満たし、最終的には、真空トラップ409内に回収される。注入弁405の作動は、注入ループ403内に位置する流体試料の容量の、試料精製または分析装置内への導入をもたらす。弁405の作動が早すぎると、注入ループ403の不完全な満杯をもたらし、一方で、弁405の作動が遅すぎると、試料の廃棄をもたらすので、この作動のタイミングは極めて重要である。少量の流体試料だけしか分析に利用できない場合、遅い弁作動は、試料全体が注入ループ403を通して進行し、かつ真空ポンプ409内に回収されることにつながり、不完全な、または空の注入ループ403、および試料の損失をもたらす。
【0153】
適切な弁作動のタイミングを経験的に決定することが可能であるが、これは、時間がかかり、かつ誤りを起こしやすいプロセスであり、一般的に、廃棄物に至る過剰な試料の吸引をもたらす。弁作動のタイミングの経験的な決定は、分析される流体試料の容量が非常に小さい時には、極めて困難になる。さらに、粘度、温度等の流体試料、もしくは細胞性または細胞内成分等の不溶性材料の物理的特徴のわずかな変化は、試料の吸引速度に大幅に影響を及ぼす可能性があり、複数の試料が吸引される時には、不定性につながる。本発明は、これらの問題を克服する。
【0154】
本発明は、注入弁405の起動がセンサ702によって制御される、装置を提供する。一部の実施形態では、センサ702は、試料吸引プロセスのある局面も制御する。
【0155】
一実施形態では、本発明の装置は、注入ループ403と真空源211との間に設置される、センサ702を備える。流体試料がセンサ702に到達する時に、空気と流体との間の界面が、注入弁405の作動を誘発するために用いられる信号を生成する。センサ702における流体の存在は、試料吸引管407および注入ループ403が、流体試料で完全に満杯である時にだけ達成することができる。注入ループ403とセンサ702の遠位端との間の容量を最小化することによって、弁405の作動前に吸引される試料の量を最小化することができ、分析中に廃棄される試料の量が最小となる。
【0156】
本発明の別の好適な実施形態では、センサ702からのフィードバックは、試料注入ループ403が満杯の時に、注入弁405の作動を誘発するためだけでなく、試料吸引管407の中で機械的移動を制御するためにも使用される。本実施形態では、図8(a)〜(c)に示されるように、試料吸引管407を、分析される流体試料を含有する容器802内に下げる。この容器802内の流体のレベルは、先験的に分かっておく必要は無い。吸引管407が、流体試料のレベルを下回る位置まで移動する時に(図8(b))、試料は、吸引管407を通してループ403内に吸引される。ループ403が満杯であり、流体試料がセンサ702に到達してセンサを誘発する時に、注入弁405が作動して、試料吸引管407が、一般的に、流体試料を含有する容器802の外に吸引管を上昇させることによって流体試料から除去されるように移動される(図8(c)。このように、異なる量の流体容量を伴う容器802は、各容器802内の試料の容量のいかなる事前の認識も伴わずに、正確に確認することができる。さらに、単一の容器802から複数の分析が必要であれば、試料吸引管の移動は、各分析後に低減した量の試料を自動的に補う。
【0157】
本発明の別の実施形態では、試料吸引管407が所定の距離を下回って進行し得ないように「安全な」レベルが設定される。「安全な」レベルは、製造時に決定してもよく、または特定の試料貯蔵容器の寸法を反映するように構成可能であってもよい。本実施形態は、試料吸引管407が空の容器802の底部と接触することから保護し、所与の反応容器内にいかなる液体流体も無い場合には、容器802の底部に到達して試料吸引管407および/または反応容器802に物理的な損傷を生じさせ得るまで、試料吸引管407が連続的に移動するのを防止する。
【0158】
本発明のさらなる一実施形態では、試料吸引管407が、センサ702を誘発すること無く、「安全な」レベルまで下げられる場合は、コンピュータ化された制御システムが、流体試料の吸引が生じなかったことを示す誤りメッセージを生成する。これは、容器802がいかなる流体試料も含有していない、試料吸引管407内の詰まりまたはプラグ、または真空の喪失を含む、複数の理由に起因し得るが、これに限定されない。生成される誤りメッセージは、本発明のユーザが分析を中断して、再開する前に問題を解決できるようにする。
【0159】
好適な流体センサ702には、Carrollton,TexasのOPTEK Technologyから入手できるもの等の、光センサが挙げられる。
【0160】
別の実施形態では、光学的な流体センサを、光源、2本の光ファイバ、および光学検出器から製造することができる。第1の光ファイバ長さの一端は、光源(例えば、ランプ、赤色ダイオードレーザ等)に連結される。第1の光ファイバ長さの他端は、例えば光学糊で、導管上の第1の光学窓と連結される。第2の光ファイバ長さの一端は、導管上の第2の光学窓に連結される。第2の光ファイバ長さの他端は、光学検出器、例えば可視光検出器に連結される。
【0161】
図9は、本明細書で説明されるシステムの使用を示す、フローチャートである。ステップS902で、真空源211、411が始動される。ステップS904で、シッパー吸引管407が試料貯蔵容器401、802内に導入される。ステップS906で、センサ702が導管704内の試料を検出する。ステップS908で、弁405を作動させて注入ループ403内の試料を放出する。ステップS910で、試料貯蔵容器401、802からシッパー吸引管S910を後退させる。ステップS912で、プロセスを繰り返す前に、洗浄液を試料吸引管407を通して吸引する。
【0162】
当業者は、図9に示されるステップを、必ずしも逐次的に実施する必要が無いことを認識されるであろう。むしろ、あるステップは、並行して、同時に、および/または並列に実施されてもよい。例えば、試料吸引管407は、弁405が作動している間に、貯蔵容器401、802から後退させることができる。
【0163】
(質量分析装置と塩または緩衝剤を含有するシステムとの連結)
多くの生物学的分離は、イオン交換クロマトグラフィ(例えば、陽イオン交換または陰イオン交換)、またはサイズ排除クロマトグラフィを使用する。これらの手法は、タンパク質、ペプチド、オリゴヌクレオチド、および多くの他の検体の分離において特に重要な用途を有する。分離手法は、科学的な研究開発から医薬的活性化合物の製造に及ぶ、多くの用途を有する。
【0164】
手法は、一般的に、1つ以上の生物物理学的パラメータの変動に応じた、クロマトグラフィマトリクスからの複合混合物中の個々の検体の選択的溶出に依存する。例えば、陽イオン交換クロマトグラフィでは、溶出緩衝剤中の陽イオンの濃度は、一般的に、緩やかな様態で増加する。溶出緩衝剤中の陽イオンの濃度が、クロマトグラフィマトリクスに対する溶出緩衝剤中の陽イオンの親和性が検体の親和性よりも強いレベルに到達した時に、陽イオンによって検体がクロマトグラフィマトリクスから置換される。次いで、置換された検体がカラムから溶出される。複合混合物中の異なる検体は、一般的に、クロマトグラフィマトリクスに対する異なる親和性を有するので、分離を達成することができる。他のイオン交換システムは、所望の分離を成立させるために、pHの変化に依存する。クロマトグラフィマトリクスの選択、溶出緩衝剤に使用される陽イオンの選択、陽イオン濃度が変動する速度、およびその他の、多くのパラメータは、望ましい分離に影響を及ぼすために最適化される必要があり得る。
【0165】
サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)では、検体の分離は、検体の相対的サイズに基づいて実施される。標準的なSEC分離は、多孔性粒子から成るクロマトグラフィマトリクスを使用して実施される。検体の混合物がカラム上に導入される時に、より小さい検体は、クロマトグラフィマトリクス内の細孔を通って進行する傾向があるが、大きすぎる検体は、細孔から排除されて、粒子間の空間を通って進行する。その結果、大きい粒子は、クロマトグラフィマトリクス内でより短い滞留時間を有する傾向があり、早期に溶出される。多孔性マトリクスを通って進行するより小さい粒子は、カラム上でより長い滞留を有し、より遅く溶出し、それによって、サイズに基づく分離を成立させる。イオン交換クロマトグラフィでのように、クロマトグラフィマトリクスの適切な選択、試料を溶出するために使用される緩衝剤、分離カラムの幾何学形状およびサイズ、および他の要因は、望ましい分離結果を達成するために最適化されなければならない。
【0166】
イオン交換クロマトグラフィおよびSECは、どちらも溶出流体中に塩および/または緩衝剤が存在することが必要である。陰イオンまたは陽イオンの存在は、分離全体が、イオンを伴うクロマトグラフィからの検体の置換に基づいているイオン交換クロマトグラフィの場合には、特に不可避である。しかしながら、概して溶出が有機溶媒で実施され、通常は塩を必要としない逆相クロマトグラフィであっても、洗浄または溶出溶媒へのある塩または他の化合物の添加を通して分離が向上され得る、多くの事例が存在する。
【0167】
質量分析(MS)は、調査、創薬、環境試験、法医学、品質管理、および他の多くを含む用途を伴う、重要な分析手法である。質量分析は、検体の分子質量に基づいて定量的に化合物を検出する能力を有する、質量選択検出器である。多くの異なるタイプの質量分析法を説明してきたが、2つの主な基本的アプローチ、すなわち、四重極および飛行時間型(TOF)がしばしば用いられる。両方のアプローチを含むハイブリッドシステムを含む、これらの手法の両方に対する多数の変形物が開発されてきた。全ての形式の質量分析では、着目検体は、イオン化して気相に変形させなければならない。これを達成するように採用されてきた多数の異なる方法が存在するが、ごく最近のシステムは、2つのアプローチのうちの1つに依存する。一方のアプローチは、大気圧イオン化(API)であるが、これは、エレクトロスプレーイオン化(ESI)および大気圧化学イオン化(APCI)にさらに分けられる。他方のアプローチは、マトリクス支援レーザ脱離イオン化(MALDI)である。
【0168】
MS(四重極対TOF)および試料イオン化(API対MALDI)に対する種々のアプローチは、特定の用途に対してそれらの種々の長所および短所を有する。しかしながら、全てのアプローチにおいて変わらないのは、MSが、高濃度の塩または緩衝剤を含有するもの等の、高イオン強度を含む溶液中にある検体には適合しないことである。高濃度のイオンの存在は、イオン抑制として周知である十分に立証された現象をもたらす。イオン抑制は、高濃度の非特異的イオンの交絡効果により、着目検体を非効率的にイオン化させる。塩および緩衝剤に関する第2の問題は、大部分が揮発性ではないことである。その結果、塩は、MS源領域の内表面に堆積する傾向があり、かつ、最終的にはシステムがもはや動作しなくなるまでに機器性能を低下させる。
【0169】
イオン交換および大部分のサイズ排除クロマトグラフィの応用例等の、分離システムにおける塩およびイオンの必要性とともに、MSと塩およびイオンを含有する試料との不適合性は、2つの手法を直接的に結びつけることができないことを意味する。イオン交換またはサイズ排除クロマトグラフィによって分離される試料をMSによって分析できることに非常に有利である、多くの事例が存在する。塩または緩衝剤を必要とするクロマトグラフィシステムをMSと結びつけることができる、現在の唯一の方法は、クロマトグラフィからの溶出液をフラクションで回収することである。フラクションは、次いで、一般的に、逆相クロマトグラフィシステムを使用する手法である、塩を必要としない二次分離プロセスで脱塩される。多数のフラクションは、分離プロセスの忠実度を保持するように回収され得るので、二次脱塩プロセスは、一般的に、固相抽出(SPE)等の高速システムを使用して実行され、かつ(例えば、96ウエルのSPEプレートで)並列に実施され得る。必要とされる感度を達成するように検体の濃度を増加させるために、所要のSPEプロセスからの溶出液を濃縮することが必要になり得る。精製した濃縮試料は、次いで、適切なMSシステムで連続的に分析される。これは、分析に関連する時間および費用を増加させる。
【0170】
本発明の一実施形態は、質量分析を伴う分離を達成するように、高イオン強度に依存するクロマトグラフィ(イオン交換クロマトグラフィ等)を結びつける、装置および方法に関する。本発明は、クロマトグラフィシステムとMSとの間の直接的な完全自動接続を提供し、かつ、クロマトグラフィシステムからフラクションを回収するといった手間のかかるステップを排除して、SPEと試料濃縮とによる並列精製を成立させる。
【0171】
クロマトグラフィシステムからの溶出液は、注入弁に接続される。Woburn,MassachusettsのBioTrove,Inc.から入手できる、RAPIDFIRE(登録商標)システム等の、クロマトグラフィシステムからの溶出液の分割量を捕捉して、それを高速自動試料精製システムに分流するために、注入弁を使用するが、これは、Hunterに対する米国特許第6,309,600号、Hess他の米国特許公開第2002/0001544号、Hess他の米国特許公開第2003/0119193号、Ozbal他の米国特許公開第2005/0123970号、Ozbal他の米国特許第6,812,030号、Ozbal他に対する米国特許第6,932,939号、およびOzbal他の米国特許公開第2005/0194318号に説明されている。上述の特許および発行物の内容は、各々、その全体が本明細書に参考として援用される。RAPIDFIRE(登録商標)高スループット質量分析システムは、1試料あたり約5秒のスループットでの精製に基づく、固相抽出を行うことができる。このようなシステムによって、5秒ごとに、クロマトグラフィシステムから、溶出物の質量分析記録を取り込むことが可能である。残りの試料は、追加的な分析またはさらなるフラクション化のために、フラクションで回収されてもよい。
【0172】
システムの一般レイアウトを図10に示す。注入システム1002は、クロマトグラフィシステム1004(例えば、高速液体クロマトグラフィシステム)に直接的に接続される。任意選択的に、クロマトグラフィシステム1002は、検体がクロマトグラフィカラムから溶出する時に、それらを監視および提供するように、クロマトグラフィカラムの直後に光学検出器1006を有し得る。本発明の一実施形態では、分流弁1008は、クロマトグラフィカラムからの溶出液を下流の器具類から離れて方向付けるために使用され得る、光学検出器1006の後ろに設置される。分流弁1008は、ある信号が基準を満たした場合に弁を作動させるように、光学検出器1006によって電子的に制御され得る。分流弁1008の一応用例は、注入システム1002および/または質量分析システム1012を汚染から保護するために、検体の濃度が高すぎる場合に、クロマトグラフィの溶出液を廃棄物1010に分流するものとなり得る。
【0173】
本発明の一実施形態では、クロマトグラフィシステムで分離を開始すると、注入システム、質量分析計、光学検出器、およびフラクションコレクタ(例えば、TTL(トランジスタ−トランジスタ論理回路)パルス)によって検出され、かつ全ての装置の始動を同期させるために使用される、トリガ信号を生成する。本発明の好適な実施形態の種々の構成要素間の電子通信回路を、図10に破線で示す。
【0174】
以下、図11(a)を参照すると、本発明は、2つの流体注入弁1102、1104と、2つの高圧流体ポンプ1106、1108とを含む。第1のポンプ1102は、水性洗浄液を流すために使用され、一方で、第2のポンプ1104は、SPEカートリッジ1110上で有機溶出溶液を流すために使用される。SPEカートリッジ1112の詳細および高スループット質量分析のための試料精製における応用例は、以前より説明されてきている。例えば、Nigel J.K.Simpson、Solid Phase Extraction:Principles,Strategies&Applications(2000)、E.M.Thurman&M.S.Mills、Solid−Phase Extraction:Principles&Practices(1998)を参照されたい。クロマトグラフィシステム1004からの溶出液は、図11(a)に示されるように、流体注入弁1102の一方のポートに直接的に接続される。同じ弁1102の第2のポートに接続される別の管は、用途に応じて、廃棄物またはフラクションコレクタ1014に溶出液を輸送するために使用される。ポンプ1106からの水性流体は、カートリッジ1110を調整および平衡化するように、SPEカートリッジ1110上で第1の方向に流される。その間に、ポンプ1108からの有機溶媒は、ESIまたはAPCIモードでの安定した噴霧を確立するように、API−MSの源に直接的に流される。この初期の流体回路を図11(a)に示す。
【0175】
以下、図11(b)を参照すると、クロマトグラフ分離が開始されると、弁1102は、図11(b)に示される位置へと電気機械的に作動する。この位置において、クロマトグラフィシステム1002からの溶出液は、注入ループ1114上に分流される。
【0176】
注入ループ1114が試料で完全に満杯になるのを確実にすることができる十分な時間の後に、弁1102が図11(c)に示される位置へと2度目に作動する。弁1102が2度目に作動する前の時間量の定量は、クロマトグラフィ溶出液の流量および注入ループ1114の容量を計算することによって決定することができる。例えば、クロマトグラフィ溶媒が0.6mL/分で送出され、10μLの注入ループが使用される場合、システムは、注入ループを完全に満たすまでに1秒を要することになる(0.6mL/分=10μL/sec)。あるいは、光センサは、上述のように、管1112に連結することができる。
【0177】
図11(c)に示されるように、試料の分割量がループ1114を満たすことができるようになった後の弁1102の再作動により、試料が、ループ1114からSPEカートリッジ1110上へ押し出される。着目検体(例えば、タンパク質またはオリゴヌクレオチド)は、SPEカートリッジ1110上に吸着され、一方で、クロマトグラフ分離で使用される塩および他のイオンは、カートリッジ1110を通過して、廃棄物容器1116内に回収される。廃棄物容器1116および1014は、種々の実施形態では、同じ、または別個の容器とすることができる。
【0178】
約10SPEカラム容量の洗浄液がSPEカートリッジ1110上で流された後に、弁1104を、図11(d)に示される位置まで作動させる。この位置では、第2のポンプ1108からの有機溶媒は、試料の搭載および洗浄のために、SPEカートリッジ1110上で逆方向に分流される。精製および脱塩された着目検体は、有機溶媒によって可溶化され、SPEカートリッジ1110から脱着させられ、そして、質量分析のためにAPI−MS1118上に流される。一般的に、10SPEカラム容量の有機溶媒は、検体のほぼ完全な溶出を達成するのに十分である。本発明の好適な一実施形態では、洗浄および溶出ステップのタイミングは調整可能であり、特定の用途ごとに最適化され得る。標準的な応用例では、4.0μLのカラムベッド容量を伴うSPEカートリッジを使用する。1.2mL/分(または20μL/sec)の流量で、10カラム容量の洗浄または溶出溶媒を、わずか2秒でSPEカートリッジ1110まで送達することができる。
【0179】
検体がMS1118に送達された後に、弁1104は、再び図11(e)に示される位置へと作動する。これは、流体系の初期位置であり、SPEカートリッジ1110の調整および平衡化を促進する。本発明の好適な一実施形態では、図11(a)〜11(e)に示されるサイクルは、ソフトウェアインターフェースを通してユーザによって選択される速度で繰り返すことができる。例えば、ユーザは、10秒の脱塩およびMS分析サイクルを選択してもよい。より長いサイクル時間選択してもよいが、最小サイクル時間は、弁サイクルのタイミングに依存する。イオン交換またはサイズ排除クロマトグラフィシステムからの標準的なピーク幅は、10〜30秒の範囲であり、これは、少なくとも1つのMS分析を、クロマトグラフィシステム1002から溶出されるピークごとに利用することができる。以前の10μLの注入ループおよび0.6mL/分のHPLCの流量の実施例に従い、脱塩装置では、10μL/secで弁1102上を流すこととする。10μLの試料が、10秒に1度の割合で注入ループを介して除去される場合、HPLCカラム1002からの総溶出液の合計10%が、高速脱塩およびMS分析のために分流される。溶出液の残りの90%は、用途に応じて、フラクションコレクタ内に回収されるか、または廃棄物容器内に廃棄され得る。
【0180】
HPLC実験の終わりにあたり、第2の電子信号は、注入システム1002、質量分析計1012、光学検出器1006、およびフラクションコレクタ1014を待機モードに切り替えるように指示する。クロマトグラフィ分離が終了した時点で、ユーザは、光学検出器1006から得られる連続的な光学痕跡(UVクロマトグラム等)、選択した繰り返し周波数での一連の不連続なMSデータ、およびフラクションコレクタによって回収される一連のフラクションを有することになる。光学検出器とMS源との間の管系の内部容量および注入システム1002の弁に選択される洗浄時間に基づいて、光学検出器とMSデータとの間には補正値が存在することになる。補正値は、計算されるか、または経験的に決定され得るが、補正値が分かると、MSデータを光学データおよび適切なフラクションと正しく整合することが可能になる。
【0181】
本発明により、手間のかかる、かつ時間のかかるフラクションの回収およびオフラインの試料調整ステップを実施する必要性を伴わずに、MS不適合性緩衝剤を含有する分離システム1004から、MSデータを直接的に回収することが可能である。
【0182】
図12は、質量分析装置内の液体クロマトグラフィシステムからの溶出試料の処理方法を示す。ステップ1202で、無極性溶媒を質量分析装置に流し始める。ステップ1204で、液体クロマトグラフィシステムから溶出試料を受容する。ステップ1206で、溶出試料をSPEカラムの上に流す。ステップ1208で、SPEカラムを極性溶液で洗浄する。ステップ1210で、無極性溶媒をSPEカラムの上に流す。ステップ1212で、無極性溶媒および溶出試料を質量分析装置に提示する。
【0183】
上述のシステムおよび方法は、溶出試料が無極性であり、一方で、洗浄溶媒が極性であるように、逆転させることもできる。このような一実施形態では、カラムは、HILIC(親水性相互作用液体クロマトグラフィ)カラムとすることができる。
【0184】
(実施例4)
陽イオン交換クロマトグラフィを、薬理活性タンパク質の製造の品質管理ステップで使用する。製造されるロットごとに、確立された標準処理手順を用いて、60分のHPLC分離を実施しなければならない。着目タンパク質は、28〜30分でHPLCカラムから溶出することが分かっている。クロマトグラフィの運転全体は、220nmの波長で光学検出器1006によって監視される。HPLC1004は、0.6mL/分で運転し、分離を成立させるために0.1Mの塩化ナトリウムから1Mの塩化ナトリウムへの勾配を用いる。
【0185】
主要タンパク質自体以外の、他の何らかのクロマトグラフィピークが検出された場合、これらは、汚染物または分解生成物である可能性がある。このタンパク質は、患者に投与されるように作られているので、そのロットが承認され得る前に、全ての潜在的な汚染物ピークの完全な特徴付けが完了していることが必要である。従来、この特徴付けは、HPLCからフラクションを回収するステップと、MS不適合成塩を除去するように、試料調製ステップを実施するステップと、MS測定を行うステップとを伴う。一般的に、フラクションの分割量も、正しいフラクションがMSの特徴付けに使用されたことを確実にするように、HPLC分離において再注入しなければならない。
【0186】
本発明は、時間がかかり、かつ手間のかかる上述のステップのうちの多くを排除する。図10に示されるように、装置1002は、光学検出器1006とフラクションコレクタ1014との間に設置する。10μLの注入ループ1114は、4.0μLのベッド容量を伴うポリマーマトリクスを含有する、SPEカートリッジ1110とともに使用する。ポンプ1102は、0.02%トリフルオロ酢酸を伴う水から成る洗浄溶媒を使用するために使用し、一方で、ポンプ1104は、0.02%トリフルオロ酢酸を伴う80%アセトニトリルの溶出溶媒を送達するために使用する。注入ループ1114を完全に満たすために1秒、検体から塩を洗浄するために2秒、SPEカートリッジ1110から検体を溶出するために2秒、およびSPEカートリッジ1110を完全に再調製するために2秒という時間を選択する。本出願については、システムは、6秒の最速サイクル時間で運転することとする。
【0187】
陽イオン交換HPLCの運転を始める時に、TTLパルスは、UV検出器1006、MS1012、注入システム1002、およびフラクションコレクタ1014の開始も誘発する。60分にわたる、600サイクルの高スループット質量分析システムの運転を実施する(6秒/サイクルにおいて3600秒=600サイクル)。実験の終了した時点で、600の注入を伴う時間痕跡から成るMSデータを、ランドマーク(例えば、検定における主要タンパク質)の識別、またはシステム内の遅延の計算のいずれかを通して、光学検出器と整合することができる。説明される本発明を使用することで、HPLCから600の個々のフラクションを回収および調整する同等の実験を、完全自動の様式で実行することができ、かついかなる追加的な検証実験の必要性も取り除くことができる。
【0188】
本明細書で説明される本発明の実施形態は、当業者に周知であるハードウェアおよびソフトウェアを含む、様々な電子装置によって制御することができる。弁206、207、601、602、603、1102、1104等の、電気機械的構成要素は、関連する文献に説明されるインターフェースに従って制御することができ、トランジスタ−トランジスタ論理回路(TTL)、シリアル、パラレル、ファイヤワイヤ、USB、イーサネット(登録商標)等が挙げられるが、これらに限定されない、様々な標準および独自の技術およびプロトコルに従って、制御装置と通信することができる。
【0189】
代替の実施形態では、いくつかの要素の機能は、より少ない要素、または単一の要素によって実行され得る。同様に、一部の実施形態では、任意の機能的要素が、図示される実施形態に関して説明されるものよりも少ない、またはそれとは異なる動作を行い得る。また、例示の目的のために異なるように示される機能的要素(例えば、モジュール、データベース、コンピュータ、クライアント、サーバ等)は、特定の実装例では、他の機能的要素内に組み込まれるか、異なるハードウェアに分割されるか、または分散され得る。
【0190】
本発明による、ある実施形態を説明してきたが、本発明は、説明された実施形態だけに限定されない。種々の変更および/または改良は、本発明の精神または範囲から逸脱することなく、説明される実施形態のうちのいずれかに対して行うことができる。また、説明される実施形態の要素、ステップ、特徴、および/または局面の種々の組み合わせは、そのような組み合わせが本明細書に明示的に確認されない場合であっても、可能であり、かつ意図される。
【0191】
(参考としての援用)
全ての特許、公開特許出願、および本明細書で引用される他の参考文献は、その全体が本明細書に参考として援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料注入システムであって、
真空源と、
該真空源と連通する導管と、
該導管内の流体の存在を検出するように構成される流体センサと、
該導管と連通する試料ループと、
該試料ループと連通するシッパーと
を備える、システム。
【請求項2】
前記導管は、透明部分を含む、請求項1に記載の試料注入システム。
【請求項3】
前記流体センサは、光センサであり、かつ前記導管の前記透明部分内の流体の存在を検出するように構成される、請求項2に記載の試料注入システム。
【請求項4】
前記真空源と前記導管との間に位置するトラップをさらに備える、請求項1に記載の試料注入システム。
【請求項5】
前記シッパー、前記試料ループ、および前記導管に連結される弁をさらに備える、請求項1に記載の試料注入システム。
【請求項6】
前記弁は、多重ポート弁である、請求項5に記載の試料注入システム。
【請求項7】
前記弁は、空気圧で作動される、請求項5に記載の試料注入システム。
【請求項8】
前記弁は、電気的に作動される、請求項5に記載の試料注入システム。
【請求項9】
前記弁は、流体が前記流体センサによって検出された時に、前記導管と前記試料ループとの間の流体連通を中断するように構成される、請求項5に記載の試料注入システム。
【請求項10】
流体試料を試料貯蔵容器から吸引するように前記シッパーを位置決めするロボットシステムをさらに備える、請求項1に記載の試料注入システム。
【請求項11】
前記ロボットシステムは、流体が流体検出器によって検出されるまで、前記シッパーを前記試料貯蔵容器まで下げるように構成される、請求項10に記載の試料注入システム。
【請求項12】
前記ロボットシステムは、前記シッパーが規定位置を越えて進行するのを防止するように構成される、請求項10に記載の試料注入システム。
【請求項13】
前記規定位置は、ユーザによって指定され得る、請求項12に記載の試料注入システム。
【請求項14】
前記ロボットシステムは、流体が前記流体センサによって検出される時に、前記シッパーを前記貯蔵容器から後退させるように構成される、請求項10に記載の試料注入システム。
【請求項15】
流体試料の高スループットスクリーニングのための自動注入システムであって、該システムは、
真空源と、
試料注入弁であって、
i.流体試料を試料供給ループの中に吸引するために、シッパーに減圧を印加する第1の位置と、
ii.該試料供給ループから該流体試料を送達する第2の位置と
を有する、試料注入弁と、
該真空源および該試料注入弁に接続する導管と、
該導管内の流体の存在を検出するように構成される流体センサと、
溶出溶媒の試料分析器への連続流を促進するように構成されるカラム制御弁であって、該カラム制御弁は、
i.同時に、該試料供給ループから試料クロマトグラフィカラムへと該流体試料を第1の方向に送達し、溶出溶媒を該試料分析器に送達する、第1の位置と、
ii.該流体試料および該溶出溶媒を該試料分析器に送達するために、該試料クロマトグラフィカラム上で該溶出溶媒を第2の方向に流す、第2の位置と
を有する、カラム制御弁と、
洗浄制御弁であって、
i.洗浄緩衝溶液を該試料クロマトグラフィカラムへと順方向の流体の流れ方向に供給する第1の位置と、
ii.該試料供給ループを洗い流すように溶出溶媒を供給する第2の位置と
を有する、洗浄制御弁と、
繰り返して試料を導入する、ならびに該試料注入弁、カラム制御弁、および洗浄制御弁を作動させるサイクルを作り出すための自動制御手段と
を備える、システム。
【請求項16】
前記導管は、透明部分を含む、請求項15に記載の自動注入システム。
【請求項17】
前記流体センサは、光センサであり、かつ前記導管の前記透明部分内の流体の存在を検出するように構成される、請求項16に記載の試料注入システム。
【請求項18】
流体試料を試料貯蔵容器から吸引するように前記シッパーを位置決めするロボットシステムをさらに備える、請求項15に記載の試料注入システム。
【請求項19】
前記ロボットシステムは、流体が流体検出器によって検出されるまで、前記シッパーを前記貯蔵容器まで下げるように構成される、請求項15に記載の試料注入システム。
【請求項20】
前記ロボットシステムは、前記シッパーが規定位置を越えて進行するのを防止するように構成される、請求項15に記載の試料注入システム。
【請求項21】
前記規定位置は、ユーザによって指定され得る、請求項20に記載の試料注入システム。
【請求項22】
前記ロボットシステムは、流体が前記流体センサによって検出される時に、前記シッパーを前記貯蔵容器から後退させるように構成される、請求項15に記載の試料注入システム。
【請求項23】
高スループット試料注入の方法であって、
真空源と、
該真空源と連通する導管と、
該導管内の流体の存在を検出するように構成される流体センサと、
該導管と連通する試料ループと、
該試料ループと連通するシッパーと
を提供することと、
該シッパーに吸引を印加することと、
該シッパーを試料貯蔵容器に挿入することと、
該流体センサによる流体の検出の際に、該シッパーを該試料貯蔵容器から引き出すことと
を含む、方法。
【請求項24】
規定位置を越える前進の際に、前記試料貯蔵容器から前記シッパーを引き出すことをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
誤りを報告することをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記試料ループ内に保持される試料を分析することをさらに含む、請求項23に記載の方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図6F】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図8c】
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【図9】
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【図10】
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【図11a】
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【図11b】
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【図11c】
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【図11d】
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【図11e】
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【図12】
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【公表番号】特表2011−503549(P2011−503549A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532318(P2010−532318)
【出願日】平成20年11月3日(2008.11.3)
【国際出願番号】PCT/US2008/082241
【国際公開番号】WO2009/059292
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(510123253)バイオシアス ライフ サイエンシーズ, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】