説明

試料注入方法、試料注入装置及びそれを有する超臨界流体クロマトグラフィー装置

【課題】 超臨界流体クロマトグラフィー装置において、移動相に注入される試料の圧力を簡易な構成で自在に調整することができる方法及び装置を提供する。
【解決手段】 超臨界流体と溶剤とを含有する移動相が流れる管14を開閉する二方弁41を迂回して管14を接続し、二方弁43a、43bによって管14に対して閉鎖されているサンプルループ49に試料を封入する工程と、封入された試料の圧力が設定された所定の圧力になるまで封入された試料をさらに加圧する工程と、加圧された試料を有するサンプルループ49を管14に対して開放し、かつ二方弁41によって管14の移動相の流れを規制して、管14からサンプルループ49に移動相を導入し、管14に試料を注入する。注入後は、二方弁43a、43bを閉じて三方弁44bを切り替え、放圧管48とサンプルループ49とを接続し、サンプルループ49の内圧を下げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超臨界流体クロマトグラフィー装置における移動相の流路に試料を注入する方法及び装置に関し、特に、注入する試料の圧力を調整可能な方法及び装置、及び注入する試料の圧力を調整可能な超臨界流体クロマトグラフィー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超臨界流体クロマトグラフィー装置では超臨界流体が移動相に用いられる。超臨界流体は、通常の溶剤に比べて高い拡散性と低粘性とを有する。このため、超臨界流体クロマトグラフィー装置では、例えば分離が困難とされる光学異性体を高速で分離可能である。
【0003】
一方で、超臨界流体は、適切な圧力及び温度によって存在する流体である。このため、超臨界流体クロマトグラフィー装置では、試料の注入時に圧力変動が生じると、移動相の組成が変化し、目的の物質の分離に悪影響を及ぼすことがある。
【0004】
超臨界流体クロマトグラフィー装置における試料の注入時の圧力変動を防止するための技術としては、例えば超臨界流体を含有する移動相の背圧に抗してサンプルループに試料を試料ポンプによって供給し、サンプルループ中の試料の圧力を移動相の圧力まで高め、その後に移動相の流路にサンプルループを接続し、サンプルループ中の試料を移動相の流路に注入してカラムに導入する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
前記技術は、試料の注入時の圧力変動を防止する観点で優れているが、移動相の圧力を注入前の試料に伝達するために圧力伝達手段の採用や流路の形状の複雑化を要し、既成の超臨界流体クロマトグラフィー装置に適用する観点から検討の余地が残されている。また、試料の注入時の圧力を移動相の圧力以外の圧力に調整する観点から検討の余地が残されている。
【特許文献1】特開平5−307026号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、超臨界流体クロマトグラフィー装置において、移動相に注入される試料の圧力を簡易な構成で自在に調整することができる方法及び装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、超臨界流体と溶剤とを含有する移動相に注入された試料から目的の物質を分離するための超臨界流体クロマトグラフィー装置における移動相の流路に試料を注入する方法において、移動相の流路の一部を迂回して移動相の流路を接続するバイパス管であって、移動相の流路に対して閉鎖されているバイパス管に試料を封入する工程と、封入された試料の圧力が設定された所定の圧力になるまで封入された試料をさらに加圧する工程と、加圧された試料を有するバイパス管を移動相の流路に対して開放し、かつ移動相の流路の一部における移動相の流れを規制して、移動相の流路からバイパス管に移動相を導入し、移動相の流路に試料を注入する工程と、を含む方法を提供する。
【0008】
また本発明は、超臨界流体と溶剤とを含有する移動相に注入された試料から目的の物質を分離するための超臨界流体クロマトグラフィー装置に用いられ、移動相の流路に試料を
注入するための試料注入装置において、試料注入装置は、移動相の流路に設けられる開閉自在な第一の弁と、第一の弁を迂回して移動相の流路を接続するバイパス管と、バイパス管を開閉自在な二つの第二の弁と、第二の弁に挟まれたバイパス管の内圧を検出する圧力計と、第二の弁に挟まれたバイパス管に試料を圧入するための圧入手段と、第一及び第二の弁の開閉と圧入手段の運転とを制御する制御装置とを有し、制御装置は、移動相の流路に対して閉鎖されているバイパス管の内部に試料を供給し、バイパス管の内部を設定された所定の圧力まで加圧し、移動相の流路中の移動相の一部又は全部をバイパス管に導入してバイパス管内の試料を移動相の流路に注入し、移動相の流路に対してバイパス管を閉鎖する制御を行う装置である装置を提供する。
【0009】
さらに本発明は、超臨界流体と溶剤とを含有する移動相を生成する移動相生成手段と、目的の物質を含有する試料を移動相に注入するための試料注入装置と、目的の物質を分離するためのカラムとを有する超臨界流体クロマトグラフィー装置において、試料注入装置は前述した本発明の試料注入装置である超臨界流体クロマトグラフィー装置を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、移動相の流路に対して閉鎖されているバイパス管に試料を封入、加圧し、試料の圧力を所望の圧力に調整した後に試料を移動相の流路に注入することから、超臨界流体クロマトグラフィー装置において、移動相に注入される試料の圧力を簡易な構成で自在に調整することが可能となる。したがって、試料の注入による圧力変動を抑制し、超臨界流体クロマトグラフィー装置の安定した運転を可能とすることができる。
【0011】
また、移動相に注入される試料の圧力を簡易な構成で自在に調整することが可能であることから、試料の注入時の圧力変動がもたらす試料の分離挙動変化を二次的に制御することにより、目的の物質の効率的な分離操作を可能とすることができる。
【0012】
本発明では、試料の注入後のバイパス管を低圧部に向けて開放すると、バイパス管に試料を再び注入することが可能となり、継続して試料を注入する観点からより一層効果的である。
【0013】
本発明では、サンプルループに試料を封入すると、試料を定量的に注入する観点、及び多量の試料を注入する観点からより一層効果的である。
【0014】
本発明では、カラムで分離された目的の物質を超臨界流体の超臨界状態が解除された移動相から取り出す取り出し部をさらに用いると、目的の物質を製造する観点からより一層効果的である。
【0015】
本発明では、超臨界流体の超臨界状態が解除された移動相から、超臨界流体を形成していた成分をガスとして回収して移動相の生成に再利用せしめるガス回収手段をさらに用いると、超臨界流体クロマトグラフィー装置のランニングコストを抑える観点からより一層効果的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、超臨界流体と溶剤とを含有する移動相に注入された試料から目的の物質を分離するための超臨界流体クロマトグラフィー装置に適用される。
【0017】
本発明に用いられる移動相は、超臨界流体と溶剤とを含有する移動相であれば特に限定されない。前記移動相は、超臨界流体と溶剤とを混合して生成することができ、あるいは液化ガスと溶剤とを含有する混合流体の圧力及び温度の一方又は両方を高めて生成することができる。前記移動相は、例えば公知の熱交換器及び高圧ポンプを用いて生成すること
ができる。
【0018】
前記超臨界流体は、臨界圧力以上及び臨界温度以上のいずれか一方又は両方の状態(すなわち超臨界状態)にある物質である。超臨界流体として用いられる物質としては、例えば二酸化炭素、アンモニア、二酸化イオウ、ハロゲン化水素、亜酸化窒素、硫化水素、メタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレン、プロピレン、ハロゲン化炭化水素、水等が挙げられる。
【0019】
前記溶剤は、前記目的の物質の種類や超臨界流体の種類等に応じて、公知の種々の溶剤の中から一種又は二種以上が選ばれる。前記溶剤としては、例えばメタノール、エタノールや2−プロパノール等の低級アルコール、アセトン等のケトン、アセトニトリル、酢酸エチル、水等が挙げられる。
【0020】
前記超臨界流体クロマトグラフィー装置は、前記移動相に注入された試料から目的の物質を分離することができる装置であれば特に限定されず、通常の超臨界流体クロマトグラフィー装置に、後述する試料注入方法を実施するための手段を適用することによって構成することができる。
【0021】
<本発明の試料注入方法>
本発明の試料注入方法は、移動相の流路の一部を迂回して移動相の流路を接続するバイパス管であって、移動相の流路に対して閉鎖されているバイパス管に試料を封入する工程(試料封入工程)と、封入された試料の圧力が設定された所定の圧力になるまで封入された試料をさらに加圧する工程(試料加圧工程)と、加圧された試料を有するバイパス管を移動相の流路に対して開放し、かつ移動相の流路の一部における移動相の流れを規制して、移動相の流路からバイパス管に移動相を導入し、移動相の流路に試料を注入する工程(試料注入工程)とを含む。
【0022】
前記試料封入工程は、移動相の流路の一部を迂回して移動相の流路を接続するバイパス管と、移動相の流路に対してバイパス管を開閉する二つの弁とを用いて行うことができる。前記移動相の流路の一部は、移動相が流れる方向において、目的の物質を分離するためのカラムよりも上流側の移動相の流路であれば特に限定されない。
【0023】
前記試料封入工程では、所定の容積を有しバイパス管の一部又は全部を構成するサンプルループに試料を封入することが、試料を定量的に注入する観点、及びより多量の試料を一回で注入する観点から好ましい。
【0024】
前記試料加圧工程は、封入された試料を加圧することが可能な公知の加圧手段を用いて行うことができる。前記加圧手段としては、例えば圧縮機や高圧ポンプ等が挙げられる。封入された試料の加圧には、目的の物質の分離に悪影響を及ぼさない媒体が加圧手段の種類に応じて用いられる。前記媒体には、例えば空気、窒素、希ガス等の気体や、超臨界流体、移動相等の流体、及び溶剤、試料等の液体が挙げられる。
【0025】
本発明では、前記封入された試料の圧力が設定された所定の圧力になるまで、封入された試料に試料をさらに圧入することが、目的の物質の分離への影響の抑制や、構成の簡易化の観点から好ましい。
【0026】
本発明において、前記所定の圧力は、常圧以上の圧力であれば特に限定されない。前記所定の圧力が移動相の圧力と同じ場合では、試料の注入時の圧力変動を抑制することが可能である。前記所定の圧力が移動相の圧力よりも高い場合では、試料の注入時に圧力の低下が伴うような試料の注入時であっても、試料の注入時の圧力変動を抑制することが可能
である。
【0027】
前記所定の圧力が移動相の圧力よりも低い場合では、目的の物質の分離に悪影響を与えない程度の圧力変動を試料の注入時に生じさせることが可能である。この圧力変動は、超臨界流体クロマトグラフィー装置の検出器で検出される。したがって、試料の注入を断続的に継続して行う場合に、目的の物質の分離により一層適当なタイミングで試料を注入することが可能となり、目的の物質の分離操作の効率のより一層の向上を図ることが可能である。
【0028】
前述した観点から、前記所定の圧力は、移動相の流路中の移動相の圧力に対して±5MPaの範囲であることが好ましい。
【0029】
前記試料注入工程は、前記移動相の流路の一部における移動相の流れを規制する手段をさらに用いて行うことができる。移動相の流れを規制する手段としては、例えば二方弁やバラフライ弁等の、移動相の流量を調整可能な公知の弁が挙げられる。
【0030】
本発明では、試料を注入した後にバイパス管を移動相の流路に対して閉鎖し、移動相の圧力よりも低い圧力の低圧部に向けてバイパス管を開放して、バイパス管の内圧を下げる工程(解圧工程)をさらに含むことが、前記試料加圧工程における前記所定の圧力が移動相の流路における移動相の圧力以下である場合に連続して試料を注入する観点から好ましい。
【0031】
前記解圧工程は、移動相の流路における移動相の圧力よりも低い圧力の低圧部と、移動相の流路に対して閉鎖されるバイパス管の一部と前記低圧部とを開閉する弁とをさらに用いて行うことができる。
【0032】
解圧工程によって低下するバイパス管の圧力の下限は特に限定されず、前記低圧部における圧力であっても良いし、それより高く、かつ前記移動相の圧力よりも低い特定の圧力であっても良い。解圧後のバイパス管の圧力は、例えば圧力計による検出結果に基づく弁の開閉や、設定されている開時間及び開度による弁の開閉、低圧部の圧力等によって調整することができる。
【0033】
前記低圧部は、前記移動相の流路における移動相の圧力よりも低い圧力の系であれば特に限定されない。前記低圧部としては、大気圧の雰囲気に通じる管や、適当な内圧の容器等が挙げられる。
【0034】
本発明の試料注入方法は、前述した工程を手動で行うことによって実施することができるが、本発明の試料注入方法を実施するための手段としては、後述する本発明の試料注入装置が挙げられる。
【0035】
<本発明の試料注入装置>
本発明の試料注入装置は、移動相の流路に設けられる開閉自在な第一の弁と、第一の弁を迂回して移動相の流路を接続するバイパス管と、バイパス管を開閉自在な二つの第二の弁と、第二の弁に挟まれたバイパス管の内圧を検出する圧力計と、第二の弁に挟まれたバイパス管に試料を圧入するための圧入手段と、第一及び第二の弁の開閉と圧入手段の運転とを制御する制御装置とを有する。
【0036】
前記第一の弁は、移動相の流路に設けられる開閉自在な弁であれば特に限定されない。前記第一の弁には、例えば二方弁やバラフライ弁等の、移動相の流路における移動相の流量を調整可能な弁が挙げられる。
【0037】
前記バイパス管は、移動相の流路に設けられる前記第一の弁を迂回して移動相の流路を接続する管であれば特に限定されない。
【0038】
前記第二の弁は、バイパス管を開閉自在な弁であれば特に限定されない。前記第二の弁には、例えば二方弁等のような、流路を開閉可能な弁が挙げられる。
【0039】
前記圧力計は、第二の弁に挟まれたバイパス管の内圧を検出する手段であれば特に限定されない。前記圧力計には、例えば圧力センサ等の各種公知の圧力計が挙げられる。
【0040】
前記圧入手段は、第二の弁に挟まれたバイパス管に試料を圧入することができる手段であれば特に限定されない。前記圧入手段には、例えば高速液体クロマトグラフィー装置や通常の超臨界流体クロマトグラフィー装置等で定量的な送液に用いられている高圧ポンプや、前記バイパス管に試料を供給する通常のポンプと前記バイパス管内を加圧する圧縮機とからなる手段等が挙げられる。
【0041】
前記制御装置は、少なくとも第一及び第二の弁の開閉及び前記圧入手段の運転を制御する装置であって、移動相の流路に対して閉鎖されているバイパス管の内部に試料を供給する制御、前記バイパス管の内部を設定された所定の圧力まで加圧する制御、移動相の流路中の移動相の一部又は全部をバイパス管に導入してバイパス管内の試料を移動相の流路に注入する制御、及び移動相の流路に対してバイパス管を閉鎖する制御を少なくとも行う装置であれば特に限定されない。
【0042】
制御装置による制御は、予め定められた順序にしたがって制御の各段階を逐次進めていくシーケンス制御や、入力と出力との差を比較演算して制御するフィードバック制御等の公知の制御を利用して行うことができる。前記制御装置には、例えば算術計算や論理計算を行い、各信号の送受信を制御する中央処理装置(CPU)と、プログラムやデータを記憶する記憶装置と、外部から情報を取り込む入力装置と、外部へ情報を伝える出力装置とを有する公知の制御装置が挙げられる。
【0043】
本発明の試料注入装置は、前述した構成要素以外の他の構成要素を有していても良い。前記他の構成要素には、例えば第二の弁に挟まれたバイパス弁に介在し、所定量の試料を収容するためのサンプルループ、移動相の流路中の移動相の圧力よりも低い圧力の系である低圧部、前記第二の弁に挟まれたバイパス管を前記低圧部に対して開閉自在な第三の弁等が挙げられる。
【0044】
前記サンプルループは、所定の容積を有する管である。サンプルループを有すると、試料の注入の定量性が向上し、またより多量の試料を注入することが可能となる。本発明において、前記サンプルループの容積は、超臨界流体クロマトグラフィー装置で用いられるカラムの種類やカラムの内径、目的の物質の種類、移動相の組成等の条件に応じて異なるが、0.1〜1,200mLであることが、超臨界流体クロマトグラフィー装置によって目的の物質を取り出して製造する場合の生産性の観点から好ましい。
【0045】
前記低圧部には、前述した低圧部を用いることができる。
【0046】
前記第三の弁は、前記第二の弁に挟まれたバイパス管を前記低圧部に対して開閉自在な弁であれば特に限定されない。前記第三の弁には、例えば二方弁等のような、流路を開閉可能な弁が挙げられる。
【0047】
なお、本発明の試料注入装置では、前記第二の弁と第三の弁のように同じ機能が重複す
る弁については、第二の弁と第三の弁を一体の三方弁で構成することができる。このような構成とすることは、装置の構成の簡素化の観点から好ましい。
【0048】
<本発明の超臨界流体クロマトグラフィー装置>
本発明の超臨界流体クロマトグラフィー装置は、前記移動相を生成する移動相生成手段と、前述した本発明の試料注入装置と、試料に含有される目的の物質を分離するためのカラムとを有する。本発明の超臨界流体クロマトグラフィー装置は、通常の超臨界流体クロマトグラフィー装置に、前述した本発明の試料注入装置を搭載することによって構成することができる。通常の超臨界流体クロマトグラフィー装置には、前記移動相を生成する移動相生成手段や前記カラムの他にも、検出器や圧力調整手段等の他の構成を一般に有する。
【0049】
前記移動相生成手段は、前記超臨界流体と前記溶剤とを含有する移動相を生成することができる手段であれば特に限定されない。前記移動相生成手段は、例えば熱交換器等の温度調整手段と高圧ポンプとによって構成することができる。
【0050】
前記カラムは、移動相に注入された試料中の目的の物質を分離することができる分離剤を有するカラムであれば特に限定されない。前記分離剤は、目的の物質に応じて種々の分離剤の中から選ばれる。前記分離剤の形態は特に限定されない。例えば分離剤は、粒子状の担体に担持されている状態でカラムに充填されていても良いし、カラムに収容される一体型の担体に担持されている状態でカラムに収容されていても良いし、分離剤からなる一体型の成形物としてカラムに収容されていても良い。
【0051】
例えば前記目的の物質が光学異性体である場合では、前記分離剤には、光学活性を有する多糖、又はその誘導体を用いることが好ましい。前記多糖としては、例えばセルロースやアミロースが挙げられる。前記多糖の誘導体としては、セルロースやアミロースのエステル誘導体、及びセルロースやアミロースのカルバメート誘導体等が挙げられる。
【0052】
前記検出器は、カラムを通過した移動相中の前記目的の物質を検出することができる手段であれば特に限定されない。前記検出器としては、例えば紫外吸収分光計、示差屈折計、及び旋光検出器等が挙げられる。
【0053】
前記圧力調整手段は、前記移動相生成手段から前記検出器までの移動相の流路の圧力を、移動相生成手段で生成した移動相を維持する圧力に調整することができる手段であれば特に限定されない。前記圧力調整手段には、例えば公知の背圧弁(背圧調整弁)を用いることができる。
【0054】
前記超臨界流体クロマトグラフィー装置は、試料中の目的の物質を分離するための機器以外の他の手段をさらに有していても良い。このような他の手段には、例えば前記圧力調整手段を通過して移動相中の超臨界流体の超臨界状態が解除された移動相中から目的の物質を取り出すための取り出し部や、超臨界状態が解除された移動相から超臨界流体を形成していた成分をガスとして回収して前記移動相生成手段に供給するガス回収手段等が挙げられる。
【0055】
前記取り出し部は、前記カラムによって分離された目的の物質を含有し、超臨界状態が解除された移動相から目的の物質を取り出すことができる手段であれば特に限定されない。前記取り出し部には、具体的には、超臨界流体の超臨界状態が解除された移動相を気液分離するためのサイクロン等の気液分離装置や、分離された液相が収容される、より低圧の密閉容器等によって構成することができる。
【0056】
本発明では、前記圧力調整手段に対して、一つの取り出し部を設けても良いし、複数の取り出し部を並列に受けても良い。複数の取り出し部を並列に設けることは、複数の目的の物質を取り出す観点から好ましい。
【0057】
前記ガス回収手段は、超臨界流体の超臨界状態が解除された移動相から超臨界流体を形成する成分をガスとして回収し、回収したガスを超臨界流体の原料として前記移動相生成手段に供給することができる手段であれば特に限定されない。前記ガス回収手段は、例えば前記取り出し部と前記移動相生成手段とを接続するガス回収管と、ガス回収管を流れる流体からガスと液相とを分離する回収用気液分離装置とによって構成することができる。
【0058】
前記回収用気液分離装置としては、例えばサイクロン、回収ガス中から前記溶剤を吸収する吸収液又は前記溶剤を吸着する固体の吸着剤をガスの流路中に有する装置等が挙げられる。
【0059】
前記超臨界流体クロマトグラフィー装置が前記ガス回収手段を有する場合では、回収ガスを移動相用の超臨界流体の生成に再利用することが可能となる。このような場合では、移動相生成手段に供給される回収ガスの圧力が移動相生成手段に供給される新規のガスの圧力よりも高いときに、回収ガスを新規のガスに優先して移動相生成手段に供給することが、回収ガスの再利用効率を高める観点から好ましい。このような回収ガスの供給は、例えば、適当な圧力(初期圧力)のときに新規のガスを供給するレギュレータ等の手段を介して、新規のガスの供給源と移動相生成手段とを接続することによって行うことができる。
【0060】
以下、本発明の実施の形態をより具体的に説明する。まず本実施の形態で用いられる超臨界流体クロマトグラフィー装置の構成について説明する。
【0061】
本実施の形態で用いられる超臨界流体クロマトグラフィー装置は、図1に示すように、高圧の二酸化炭素が充填されているボンベ1と、ボンベ1から供給される二酸化炭素を冷却して液化ガスとするための熱交換器2と、熱交換器2で生成した液化ガスを定量的に圧送する高圧ポンプ3と、溶剤を収容する溶剤タンク4と、高圧ポンプ3で送られる液化ガスに溶剤タンク4から溶剤を定量的に供給するための高圧ポンプ5と、液化ガスと溶剤との混合流体を加熱して混合流体中の液化ガスを超臨界流体にするための熱交換器6とを有する。ボンベ1は新規のガスの供給源である。熱交換器2から熱交換器6は、前記移動相生成手段に相当する。
【0062】
また前記超臨界流体クロマトグラフィー装置は、生成した移動相に目的の物質(例えば光学異性体)を含有する試料を注入するための試料注入装置7と、注入された試料中の目的の物質を分離するためのカラム8と、カラム8を通った移動相中の物質を検出する検出器9と、高圧ポンプ3から検出器9までの系内の圧力を所定の圧力に保つための背圧弁10とを有する。背圧弁10は前記圧力調整手段に相当する。なお、試料注入装置7を介して熱交換器6とカラム8とを接続する管を管14とする。管14は前記移動相の流路に相当する。
【0063】
さらに前記超臨界流体クロマトグラフィー装置は、背圧弁10を通過した移動相を気液分離するための複数の気液分離装置11と、各気液分離装置11で分離された液相を収容する複数の第一の槽12と、各第一の槽12に対応して接続されている複数の第二の槽13とを有する。気液分離装置11から第二の槽13は前記取り出し部に相当する。
【0064】
さらに前記超臨界流体クロマトグラフィー装置は、各気液分離装置11と熱交換器2とを接続するガス回収管15と、ガス回収管15を流れる回収ガスから液体を分離するため
の気液分離装置16と、気液分離装置16で分離された液相を収容する第三の槽17と、第三の槽17に接続されている第四の槽18とを有する。気液分離装置16は前記回収用気液分離装置に相当する。ガス回収管15から第四の槽18は前記ガス回収手段に相当する。
【0065】
さらに前記超臨界流体クロマトグラフィー装置は、ボンベ1から所定の圧力で二酸化炭素のガスを供給するためのレギュレータ19と、熱交換器2からボンベ1へのガスの逆流を防止するための逆止弁20と、熱交換器2で生成した液化ガスを収容するバッファタンク21と、背圧弁10と各気液分離装置11との間に設けられた二方弁22と、第一の槽12と第二の槽13との間に設けられた二方弁23と、各気液分離装置11へのガスの逆流を防止するための逆止弁26と、第三の槽17と第四の槽18との間に設けられた二方弁27とを有する。
【0066】
試料注入装置7は、図2に示すように、管14を開閉自在な二方弁41と、管14における移動相の流れ方向において、二方弁41の上流側及び下流側の管14にそれぞれ一端側で接続される二本の連絡管42a、42bと、それぞれの連絡管42a、42bを開閉自在な二つの二方弁43a、43bと、それぞれの連絡管42a、42bの他端に接続されている二つの三方弁44a、44bと、三方弁44a、44bに両端が接続される管状の試料封入部45と、試料溶液を収容する試料容器46と、三方弁44aを介して試料容器46の試料を試料封入部45に向けて送る高圧ポンプ47と、三方弁44bに接続される放圧管48と、図示しない制御装置とを有する。なお、図2中の矢印は、移動相が流れる方向を示している。
【0067】
試料封入部45は、サンプルループ49と、サンプルループ49の端部と三方弁44a、44bとを接続する管50と、サンプルループ49の内圧を検出するための圧力計51とを有する。
【0068】
二方弁41は前記第一の弁に相当する。連絡管42a、42b、管50及びサンプルループ49は前記バイパス管に相当する。二方弁43a、43bは前記第二の弁に相当する。高圧ポンプ47は前記圧入手段に相当する。放圧管48は、例えば大気圧の雰囲気の排気処理管に開口している管であり、前記低圧部に相当する。三方弁44bは、前記第三の弁に相当する。
【0069】
前記制御装置は、圧力計51の検出結果が入力され、二方弁41、43a、43b及び三方弁44a、44bの開閉、及び高圧ポンプ47の運転を制御するように構成されている。
【0070】
気液分離装置11、16には、例えば図3及び図4に示す気液分離装置が用いられる。この気液分離装置は、両端が開口している円筒状の外筒31と、外筒31の一端の開口を塞ぐフランジ部32と、外筒31の横断面形状における内周面の接線に沿って設けられて外筒31内に開口する管である導入部33と、両端が開口しており、フランジ部32を貫いて導入部33よりも外筒31の他端側に延出する内筒34と、外筒31の外周壁面を覆い熱媒の循環路を形成するジャケット35と、ジャケット35内を通って導入部33に接続される移動相供給管36とを有する。
【0071】
ジャケット35には、他端側に熱媒の供給口37が設けられ、一端側に熱媒の排出口38が設けられている。移動相供給管36は、ジャケット35の一端部からジャケット35内を通り、ジャケット35の他端側から外部に出て、導入部33に接続されている。移動相供給管36は、ジャケット35内では外筒31の外周にらせん状に巻きつけられている。
【0072】
移動相供給管36は二方弁22(気液分離装置16では逆止弁26)に接続されている。内筒34は逆止弁26(気液分離装置16では熱交換器2に接続されているガス回収管15)に接続されている。外筒31の他端は第一の槽12に接続されている。供給口37及び排出口38は不図示の熱媒循環手段に接続されている。
【0073】
なお、外筒31は、外筒31内に導入された移動相の流速に偏りを生じさせるためや、適度な衝撃を与えるため等の目的から、断面における内周壁面の形状が楕円形や多角形等の非円形となっている筒であっても良い。
【0074】
次に、前記超臨界流体クロマトグラフィー装置による目的の物質の分離について説明する。
【0075】
まずボンベ1から適当な初期圧力で二酸化炭素が熱交換器2に供給される。熱交換器2で冷却された二酸化炭素は液化ガスとなり、バッファタンク21に収容される。バッファタンク21に収容された液化ガスは、高圧ポンプ3によって定量的に圧送され、背圧弁10で規定される所定の圧力(例えば臨界圧力)まで加圧されながら熱交換器6に供給される。
【0076】
一方で溶剤タンク5からは、溶剤(例えばメタノール)が前記液化ガスに向けて高圧ポンプ5によって定量的に圧送される。前記溶剤は熱交換器6に供給される前に液化ガスと合流し、混合される。液化ガスと溶剤との混合流体は熱交換器6に供給されて所定の温度(例えば臨界温度又はカラム8の設定温度)まで加熱される。この加熱により、混合流体中の液化ガスが超臨界流体となり、超臨界流体と溶剤とを含有する移動相が生成される。
【0077】
生成した移動相には、目的の物質(例えば光学異性体)を含有する試料が試料注入装置7から管14に注入される。
【0078】
試料注入装置7による試料の注入は、例えば以下のように行われる。
試料注入装置7は、試料を注入する前の状態としては、図5に示すように、二方弁41が開かれており、二方弁43a、43bが閉じられており、三方弁44aは連絡管42aとサンプルループ49とを接続し、三方弁44bはサンプルループ49と放圧管48とを接続している状態とされている。
【0079】
なお、図5から図9の弁について、白抜きは弁が開いている状態を示し、黒塗りは弁が閉じている状態を示している。また図5から図9の高圧ポンプ47について、白抜きは停止状態を示し、縞模様は運転状態を示している。
【0080】
前記制御装置のフローチャートの一例を図10に示す。前記制御装置は、三方弁44aを切り替え、高圧ポンプ47とサンプルループ49とを接続し(ステップ101)、高圧ポンプ47を起動させる(ステップ102、図6参照)。これにより、試料容器46からサンプルループ49へ試料溶液が供給される。
【0081】
前記制御装置は、高圧ポンプ47の運転時間(ta)を測定し、高圧ポンプ47がサンプルループ49を満たす試料溶液を送るのに十分な時間として設定された時間(t1)と高圧ポンプ47の運転時間とを比較し(ステップ103)、高圧ポンプ47の運転時間が設定時間以上となったら、三方弁44bを切り替え、サンプルループ49と連絡管42bとを接続する(ステップ104、図7参照)。これにより、管14に対して閉鎖されているサンプルループ49に所定量の試料が封入される。
【0082】
前記制御装置は、圧力計51により封入された試料の圧力(pa)を測定し、封入された試料の圧力と設定されている所定の圧力(例えば管14における移動相の圧力と同じ値)とを比較し(ステップ105)、封入された試料の圧力が所定の圧力以上となったら、高圧ポンプ47を停止する(ステップ106)。これにより、サンプルループ49に封入された試料が所定の圧力になるまで加圧される。
【0083】
前記制御装置は、三方弁44aを切り替え、連絡管42aとサンプルループ49とを接続する(ステップ107、図8参照)。そして前記制御装置は、二方弁43a、43bを開き、二方弁41を閉じる(ステップ108、図9参照)。これにより、加圧された試料を有するサンプルループ49が管14に対して開放され、かつ二方弁41によって管14における移動相の流れが規制され、管14から連絡管42a、サンプルループ49を介して連絡管42bへ移動相が導入され、所定の圧力まで加圧された試料が管14に注入される。
【0084】
前記制御装置は、二方弁43a、43b及び41の操作開始時間からの経過時間(tb)を測定し、試料を注入するのに十分な時間として設定された時間(t2)と二方弁の操作開始からの経過時間とを比較し(ステップ)、二方弁の操作開始からの経過時間が設定時間以上となったら、二方弁43a、43bを閉じ、二方弁41を開く(ステップ110)。これにより、サンプルループ49は管14に対して閉鎖される。
【0085】
前記制御装置は、三方弁44bを切り替え、サンプルループ49と放圧管48とを接続する(ステップ111、図5参照)。これにより、サンプルループ49は大気圧の雰囲気に向けて開放され、サンプルループ49の内圧は大気圧付近まで下げられる。
【0086】
試料が注入された移動相は、目的の物質に応じた分離剤(例えば多糖誘導体)を収容するカラム8に送られる。カラム8では試料中から目的の物質が分離される。目的の物質は検出器9で検出される。検出器9で目的の物質が検出されると、いずれか一つの二方弁22が開き、他の二方弁22は閉じる。目的の物質を含有する移動相は、背圧弁10に送られる。
【0087】
背圧弁10を通過した移動相は、背圧弁10による圧力調整から解除され、減圧され、所定の気液分離装置11に供給される。気液分離装置11に送られた移動相は、気液分離される。超臨界流体を形成していた二酸化炭素は気相として分離され、目的の物質及び溶剤は液相として分離される。液相は、第一の槽12に収容され、さらに低圧の第二の槽13に収容される。第二の槽13に収容された液相は、第二の槽13から取り出される。減圧濃縮や真空蒸留等の公知の方法によって溶剤と目的の物質とが前記液相から分けられ、目的の物質が得られる。溶剤は、必要に応じて精製し、移動相に再利用しても良い。
【0088】
気液分離装置11で分離された二酸化炭素は、逆止弁26を介して気液分離装置16に送られる。
【0089】
他の目的の物質が検出器9によって検出されると、前記気液分離装置11に対応する二方弁22は閉じる。そして、他の気液分離装置11に対応する二方弁22が開き、他の目的の物質を含有する移動相の気液分離が他の気液分離装置11によって同様に行われる。
【0090】
気液分離装置16に送られた二酸化炭素(回収ガス)は、気液分離装置16によって気液分離される。回収ガスに含まれていた微量の液相(溶剤)は、第三の槽17に収容され、次いで第四の槽18に収容され、廃棄される。
【0091】
気液分離装置16によって精製された回収ガスは、ガス回収管15を通って熱交換器2
へ送られる。回収ガスの圧力がレギュレータ19で規定されている前記初期圧力よりも高い場合は、回収ガスが熱交換器2に供給され、液化される。回収ガスの圧力がレギュレータ19で規定されている前記初期圧力よりも低い場合は、ボンベ1からの新規の二酸化炭素のガスが熱交換器2に供給され、液化される。
【0092】
なお、本実施の形態では、それぞれの第二の容器13と気液分離装置16とを管で接続し、第二の容器13において液相から放出された二酸化炭素をさらに回収することも可能である。このような構成によれば、超臨界流体の原料となるガスの回収率が向上し、特に目的の物質の製造コストを削減する観点からより一層効果的である。
【0093】
また、本実施の形態では、高圧ポンプ47の流量を測定することによって、サンプルループ49へ所定量の試料を供給することも可能である。
【0094】
また、本実施の形態では、例えば前の試料注入からの経過時間を測定するように前記制御装置を構成し、試料の注入を適切なタイミングで継続して自動的に行うことも可能である。このような構成としては、例えばステップ107とステップ108との間に、前の試料注入におけるステップ110からの経過時間を測定し、前の試料注入が終了してからの経過時間と、試料を断続的に注入するために適切な時間として設定された時間とを比較し、前の試料注入が終了してからの経過時間が設定時間以上となったらステップ108に進むステップを挿入し、ステップ111からステップ101に戻す構成が挙げられる。
【0095】
本実施の形態によれば、試料注入装置7は、二方弁41、連絡管42a、42b、二方弁43a、43b、三方弁44a、試料封入部45、試料容器46、高圧ポンプ47、圧力計51、及び制御装置を有することから、管14に対して閉鎖されている試料封入部45に試料が封入され、封入された試料が所定の圧力まで加圧され、管14の移動相が適切に導入されることにより試料が管14に注入される。したがって、移動相の流路に注入される試料の圧力を簡易な構成で自在に調整することができる。
【0096】
本実施の形態では、試料注入装置7は、三方弁44b及び放圧管48をさらに有することから、試料を注入した後の試料封入部45が大気圧の雰囲気に向けて開放され、試料封入部45の内圧が下げられる。したがって、試料を加圧する際に設定されている所定の圧力の値に関わらず、試料を再び注入する際の試料の圧力を自在に調整することができる。
【0097】
本実施の形態では、試料注入装置7は、試料封入部45の一部がサンプルループ49によって構成されることから、所定量の試料、特に多量の試料を注入することができる。
【0098】
本実施の形態では、試料封入部45に封入された試料を移動相の圧力と同じ圧力に調整することが可能である。このように試料を加圧することにより、試料を注入したときの圧力変動が防止され、超臨界流体クロマトグラフィー装置を安定して運転することができる。
【0099】
特に、本実施の形態では、多量の試料の圧力を自在に調整することが可能であることから、一回に多量の試料を注入することができる。したがって、目的の物質に対する溶解性に優れる溶剤と目的の物質とを含有する試料を用いれば、目的の物質の分離効率を格段に高めることができる。また、溶剤に対する溶解性が低い目的の物質に対しても、多量の試料を注入することにより、前記目的の物質を高い分離効率で分離することができる。
【0100】
本実施の形態では、三方弁44aと二方弁43aとの間の連絡管42aの内圧が大気圧であるときに試料の注入が行われる。このように、試料の注入時に圧力の低下が生じる場合では、試料封入部45に封入された試料を移動相の圧力よりも高い圧力に調整すること
により、試料を注入したときの圧力変動が防止され、超臨界流体クロマトグラフィー装置を安定して運転することができる。
【0101】
なお、本実施の形態において、三方弁44a、44bは、制御や構成の簡易化の観点から好適な構成として用いられているが、三つの二方弁によってそれぞれ置き換えることが可能である。
【0102】
本実施の形態では、試料封入部45に封入された試料を移動相の圧力よりも低い圧力に調整することも可能である。このように試料を加圧することにより、試料を注入したときの圧力変動を抑制することが可能である。
【0103】
さらに試料の種類やカラムの種類によっては、適当なタイミングで低圧側の圧力変動を発生させることにより、カラムからの物質の溶出が早まる場合がある。したがって、圧力変動を抑制しつつ、試料を継続して注入する場合の移動相の流路への単位時間当たりの注入量を増すことも可能となる。
【0104】
本実施の形態では、超臨界流体クロマトグラフィー装置は、熱交換器2から熱交換器6と、試料注入装置7と、カラム8とを有することから、試料の注入時の圧力変動が防止又は抑制され、目的の物質の分離を安定して行うことができ、また目的の物質の分離効率を高めることができる。
【0105】
本実施の形態では、超臨界流体クロマトグラフィー装置は、気液分離装置11から第二の槽13をさらに有することから、超臨界流体の超臨界状態が解除された移動相から目的の物質を取り出すことができる。
【0106】
本実施の形態では、超臨界流体クロマトグラフィー装置は、ガス回収管15から第四の槽18をさらに有することから、超臨界流体の超臨界状態が解除された移動相から二酸化炭素を回収することができ、さらに回収した二酸化炭素を移動相中の超臨界流体の生成に再利用することができる。
【0107】
本実施の形態では、液化ガスを生成する熱交換器2に、回収ガスを供給するガス回収管15と新規のガスを供給するボンベ1とが接続され、ボンベ1はレギュレータ19及び逆止弁20を介して熱交換器2に接続されていることから、回収ガスの圧力に応じて回収ガスを新規のガスに優先して再利用することができる。したがって、二酸化炭素のコストを抑えることができ、目的の物質の生産性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明の超臨界流体クロマトグラフィー装置の一実施の形態における構成を概略的に示す図である。
【図2】本発明の試料注入装置の一実施の形態における構成を概略的に示す図である。
【図3】本実施の形態で用いられる気液分離装置の一例の要部の縦断面を示す断面図である。
【図4】図3に示す気液分離装置をA−A線で切断したときの要部の横断面を示す断面図である。
【図5】本実施の形態における試料注入装置の試料注入時の一状態を示す図である。
【図6】本実施の形態における試料注入装置の試料注入時の他の状態を示す図である。
【図7】本実施の形態における試料注入装置の試料注入時の他の状態を示す図である。
【図8】本実施の形態における試料注入装置の試料注入時の他の状態を示す図である。
【図9】本実施の形態における試料注入装置の試料注入時の他の状態を示す図である。
【図10】本実施の形態における制御装置による制御の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0109】
1 ボンベ
2、6 熱交換器
3、5、47 高圧ポンプ
4 溶剤タンク
7 試料注入装置
8 カラム
9 検出器
10 背圧弁
11、16 気液分離装置
12 第一の槽
13 第二の槽
14、50 管
15 ガス回収管
17 第三の槽
18 第四の槽
19 レギュレータ
20、26 逆止弁
21 バッファタンク
22、23、27、41、43a、43b 二方弁
31 外筒
32 フランジ部
33 導入部
34 内筒
35 ジャケット
36 移動相供給管
37 熱媒の供給口
38 熱媒の排出口
42a、42b 連絡管
44a、44b 三方弁
45 試料封入部
46 試料容器
48 放圧管
49 サンプルループ
51 圧力計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超臨界流体と溶剤とを含有する移動相に注入された試料から目的の物質を分離するための超臨界流体クロマトグラフィー装置における移動相の流路に試料を注入する方法において、
前記移動相の流路の一部を迂回して移動相の流路を接続するバイパス管であって、移動相の流路に対して閉鎖されているバイパス管に試料を封入する工程と、
封入された試料の圧力が設定された所定の圧力になるまで封入された試料をさらに加圧する工程と、
加圧された試料を有するバイパス管を前記移動相の流路に対して開放し、かつ前記移動相の流路の一部における移動相の流れを規制して、移動相の流路からバイパス管に移動相を導入し、移動相の流路に試料を注入する工程と、を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
試料を注入した後に前記バイパス管を前記移動相の流路に対して閉鎖し、移動相の圧力よりも低い圧力の低圧部に向けてバイパス管を開放して、バイパス管の内圧を下げる工程をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記封入する工程では、所定の容積を有し前記バイパス管の一部又は全部を構成するサンプルループに前記試料を封入することを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
超臨界流体と溶剤とを含有する移動相に注入された試料から目的の物質を分離するための超臨界流体クロマトグラフィー装置に用いられ、前記移動相の流路に前記試料を注入するための試料注入装置において、
前記試料注入装置は、
前記移動相の流路に設けられる開閉自在な第一の弁と、
前記第一の弁を迂回して前記移動相の流路を接続するバイパス管と、
前記バイパス管を開閉自在な二つの第二の弁と、
前記第二の弁に挟まれた前記バイパス管の内圧を検出する圧力計と、
前記第二の弁に挟まれた前記バイパス管に前記試料を圧入するための圧入手段と、
前記第一及び第二の弁の開閉と前記圧入手段の運転とを制御する制御装置とを有し、
前記制御装置は、前記移動相の流路に対して閉鎖されている前記バイパス管の内部に試料を供給し、前記バイパス管の内部を設定された所定の圧力まで加圧し、移動相の流路中の移動相の一部又は全部をバイパス管に導入してバイパス管内の試料を移動相の流路に注入し、移動相の流路に対してバイパス管を閉鎖する制御を行う装置であることを特徴とする装置。
【請求項5】
前記第二の弁に挟まれた前記バイパス管を前記移動相の圧力よりも低い圧力の低圧部に対して開閉自在な第三の弁をさらに有し、
前記制御装置は、さらに第三の弁の開閉を制御して、試料の注入後に閉鎖した前記バイパス管を前記低圧部に向けて開放する制御をさらに行うことを特徴とする請求項4記載の装置。
【請求項6】
前記バイパス管は、所定の容積を有し、前記第二の弁に挟まれるサンプルループを含むことを特徴とする請求項4又は5記載の装置。
【請求項7】
超臨界流体と溶剤とを含有する移動相を生成する移動相生成手段と、目的の物質を含有する試料を移動相に注入するための試料注入装置と、目的の物質を分離するためのカラムとを有する超臨界流体クロマトグラフィー装置において、
前記試料注入装置は、請求項4〜6のいずれか一項に記載の試料注入装置であることを特徴とする超臨界流体クロマトグラフィー装置。
【請求項8】
前記カラムによって分離された目的の物質を含有し、超臨界流体の超臨界状態が解除された移動相から目的の物質を取り出すための取り出し部をさらに有することを特徴とする請求項7に記載の超臨界流体クロマトグラフィー装置。
【請求項9】
前記超臨界流体の超臨界状態が解除された移動相から、超臨界流体を形成していた成分をガスとして回収して前記移動相生成手段に供給するガス回収手段をさらに有することを特徴とする請求項7又は8に記載の超臨界流体クロマトグラフィー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−58146(P2006−58146A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−240788(P2004−240788)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】