説明

試料液の攪拌方法

【課題】簡易な構成の撹拌機構および容器により、容易に試料液を攪拌することができる試料液の撹拌方法を提供する。
【解決手段】所定の構成を有する測定デバイス及び測定装置を用い、測定デバイスの供給口を通して試料液保持部に試料液を供給する工程、一対の電極間に電圧を印加する工程、一対の電極からの電気信号を測定する工程、電気信号の変化に基づき供給口が試料液中から取り出されたことを検知する工程、試料液保持部内に上記検知に基づき自動的に供給口を通して試料液保持部に気体を供給する工程、を行って試料液を撹拌する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料液と試薬とを攪拌するための攪拌方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、気体を用いた試料液の攪拌方法として、容器内にピペッタ等の液体注入用の機構を用い試料液を注入し、その後、ポンプ等の気体注入用の機構を用いて容器内に気体を注入し、容器内に注入された試料液を撹拌する方法があった(例えば、特許文献1及び2参照)。
【特許文献1】特開2002−286602号公報
【特許文献2】特開2003−34878号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のような従来の構成では、液体と気体を容器内に供給する際にそれぞれ別々の機構を有し、また、容器内に液体注入用と気体注入用の開口部が別々に設けられているため、撹拌機構及び容器の構成が大型・複雑になるという問題を有していた。
そこで、本発明は、上記のような従来の問題を解決するものであり、簡易な構成の撹拌機構および容器により、容易に試料液を攪拌することができる試料液の撹拌方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記従来の課題を解決するために、本発明は、
基体、前記基体の内部に設けられ試料液を保持するための試料液保持部、前記試料液保持部と連通しており前記試料液保持部に前記試料液及び気体を供給するための供給口、前記試料液保持部と連通する開口部、前記試料液保持部内に設けられ前記試料液中に含まれる被検物質と特異的に反応する試薬、並びに前記基体の外側表面に設けられた一対の電極を備えた測定デバイスと、
前記測定デバイスの前記開口部と接続されることにより前記測定デバイスを取付けるための測定デバイス取付け部と、
前記測定デバイス取付け部に取付けられた前記測定デバイスの前記開口部を通して前記試料液保持部内の気体を吸引するための吸引手段と、
前記測定デバイスの前記一対の電極間に電圧を印加するための電圧印加部と、
前記一対の電極からの電気信号を測定するための電気信号測定部と、
を備えた測定装置、を用い、
(A)前記供給口を通して前記試料液保持部に前記試料液を供給する工程と、
(B)前記一対の電極間に電圧を印加する工程と、
(C)前記一対の電極からの電気信号を測定する工程と、
(D)前記電気信号の変化に基づき、前記供給口が前記試料液中から取り出されたことを検知する工程と、
(E)前記試料液保持部内に、前記工程(D)における検知に基づき、自動的に前記供給口を通して前記試料液保持部に前記気体を供給する工程と、を含む試料液の撹拌方法を提供する。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、簡易な構成の撹拌機構および容器により、容易に試料液を攪拌することができる試料液の撹拌方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の撹拌方法は、
基体、前記基体の内部に設けられ試料液を保持するための試料液保持部、前記試料液保持部と連通しており前記試料液保持部に前記試料液及び気体を供給するための供給口、前記試料液保持部と連通する開口部、前記試料液保持部内に設けられ前記試料液中に含まれる被検物質と特異的に反応する試薬、並びに前記基体の外側表面に設けられた一対の電極を備えた測定デバイスと、
前記測定デバイスの前記開口部と接続されることにより前記測定デバイスを取付けるための測定デバイス取付け部と、
前記測定デバイス取付け部に取付けられた前記測定デバイスの前記開口部を通して前記試料液保持部内の気体を吸引するための吸引手段と、
前記測定デバイスの前記一対の電極間に電圧を印加するための電圧印加部と、
前記一対の電極からの電気信号を測定するための電気信号測定部と、
を備えた測定装置、を用い、
(A)前記供給口を通して前記試料液保持部に前記試料液を供給する工程と、
(B)前記一対の電極間に電圧を印加する工程と、
(C)前記一対の電極からの電気信号を測定する工程と、
(D)前記電気信号の変化に基づき、前記供給口が前記試料液中から取り出されたことを検知する工程と、
(E)前記試料液保持部内に、前記工程(D)における検知に基づき、自動的に前記供給口を通して前記試料液保持部に前記気体を供給する工程と、を含む。
このような方法によると、1つの吸引手段を用いて、前記測定デバイスに試料液および気体を供給することができるので、測定装置の簡易化・小型化などを実現することができる。また、前記測定デバイスの前記試料液保持部に試料液および気体を供給するための供給口を同一のもので構成することにより、測定デバイスの簡易化・小型化を実現することができる。さらに、供給口が試料液中から取り出されたことを検知して自動的に供給口を通して試料液保持部に気体を供給するため、容易に試料液保持部に気体を供給することができる。また、誤って試料液が吸引されることがないため、撹拌に不具合を生じることがない。
【0007】
本発明の撹拌方法は、
前記工程(A)の前に、
(F)前記一対の電極間に電圧を印加する工程と、
(G)前記一対の電極からの電気信号を測定する工程と、
(H)前記電気信号の変化に基づき、前記供給口が前記試料液中に浸漬されたことを検知する工程と、
をさらに含むのが好ましい。
さらに本発明の撹拌方法において用いる前記測定デバイスにおいては、前記一対の電極の先端部と前記供給口とが略一致する高さで設けられていてもよい。
また、前記測定デバイスにおいては、前記一対の電極の先端部と前記開口部との間に前記供給口が設けられていてもよい。後者によれば、測定デバイスを試料液から取り出した際に上記供給口が試料液の液面から外に出たことをより確実に検知することができる。
【0008】
ここで、上記試薬は、試料液保持部内に乾燥状態で備えられ、試料液保持部内に試料が供給されたときに、試料液に溶解するように配置されていることが好ましい。例えば、ガラス繊維や濾紙等からなる多孔性の担体に試薬の溶液を含浸させた後乾燥させることにより試薬を担持させ、その多孔性の担体を試料液保持部内に設ければよい。また、試料液保持部を構成する壁面に、試薬の溶液を直接塗布した後乾燥することにより試薬を配置してもよい。
【0009】
上記試薬としては、例えば、酵素、抗体、ホルモンレセプター、化学発光試薬、DNA等が挙げられる。特に抗体は、公知の方法により産生することができるため、試薬を作製し易いという点で有利である。例えば、アルブミンなどの蛋白や、hCG、LHなどのホルモンを抗原として、マウス・ウサギ等に免疫することにより、前記抗原に対する抗体を得ることができる。抗体としては、アルブミン等の尿中に含まれる蛋白に対する抗体や、hCG、LHなどの尿中に含まれるホルモンに対する抗体等が挙げられる。
【0010】
本発明における試料液としては、尿、血清、血漿、血液等の体液及び培地の上清液等の液体の試料が挙げられる。これらの中で、試料として尿が好ましい。試料が尿であると、非侵襲的に在宅での日常の健康管理を行うことができる。
また、上記被検物質としては、アルブミン、hCG、LH、CRP、IgG等が挙げられる。
【0011】
健康管理の最初の段階で行われる尿の定性検査では、pH、比重、蛋白、糖、潜血、ケトン体、ビリルビン、ウロビリノーゲン、亜硝酸塩、白血球、アスコルビン酸、アミラーゼ、食塩の12項目について検査が行われる。また、腎機能を分析するという目的では微量アルブミンが、妊娠検査等のマーカーとしては、hCG、LH等のホルモンがある。蛋白や、微量アルブミン、hCG、LH等のホルモンは、抗原抗体反応に基づいた光学測定が適している。ここで、抗原抗体反応に基づいた光学測定としては、免疫比ろう法、免疫比濁法、ラテックス免疫凝集法などが挙げられる。
【0012】
また、本発明の測定デバイスは、一対の電極を除き、光学的に透明な材料または可視光の吸収を実質的に有していない材料で構成されることが好ましい。例えば、石英やガラス、あるいはポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル等が挙げられる。デバイスを使い捨てにする場合には、コストの観点からポリスチレンが好ましい。
【0013】
測定デバイスに備えられた電極の材料としては、金、白金、パラジウムあるいはそれらの合金または混合物、及びカーボンのいずれかを少なくとも含むものが好ましい。これらの材料は化学的、電気化学的に安定であり、安定した測定を実現することができる。
また、試料液を撹拌するために前記試料液保持部に供給する気体は空気であることが好ましい。このようにすると、別途気体を保持するためのタンクが不要であり、測定装置の簡易化・小型化および低価格などを実現することができる。
以下、図面を用いて、本発明の実施の形態をさらに詳細に説明する。本実施の形態では、試料が尿で、被検物質がヒトアルブミンである場合について説明する。
【0014】
(1)測定デバイス
まず、本実施の形態に係る測定デバイスの構造について、図1及び2を用いて説明する。図1は本実施の形態に係る測定デバイスの構造を示す斜視図であり、図2は、同測定デバイスの断面図である。
本実施の形態の測定デバイス1は、第1の測定デバイス部材108及び第2の測定デバイス部材109で構成されており、第1の測定デバイス部材108及び第2の測定デバイス部材109を組み合わせることにより、試料液保持部103として機能する空間が形成されている。試料液保持部103は、底面が例えば5mm角程度、高さが例えば44mmの四角柱形状を有する。また、測定デバイス1には、測定装置2の測定デバイス着脱部211に測定デバイス1を取付けるための開口部101及び試料液保持部103内に試料及び空気を吸引するための供給口102が備えられている。開口部101及び供給口102は、それぞれ試料液保持部103と連通している。また、測定デバイス本体には、光学測定を行うための光学窓部104が備えられている。なお、供給口102は、本発明における供給口に相当する。
【0015】
また、測定デバイス1の外面を構成する5つの面のうち、供給口102が設置されている面には、一対の導電部分105c、105dが設けられている。そしてこれらの導電部分105c、105dは、開口部101から試料液保持部103の底面まで延びている。導電部分105c、105dはそれぞれ電極105e、105fを含んでいる。さらに、導電部分105c、105dは、それぞれ接合リード部105a、105bをそれぞれ含んでいる。これら電極105e、105f、及び接合リード部105a、105bは絶縁性の樹脂からなるカバー106によってその大きさ(長さ)が規定される。例えば、電極および接合リード部の長さはそれぞれ10mm、10mmである。一対の電極105e、105fの先端部が試料液保持部103の底面にまで延びているので、供給口102が一対の電極105e、105fの先端部と開口部101との間に位置している。
【0016】
以下に本実施の形態の測定デバイスの作製方法について、図3を用いて説明する。図3は本実施の形態に係る測定デバイスの分解斜視図である。
第1の測定デバイス部材108、第2の測定デバイス部材109は、例えば透明のポリスチレン製である。この透明のポリスチレン製の部材は、例えば金型を用いた成形によって得ることができる。成型には、公知の樹脂成型技術を用いればよい。第2の測定デバイス部材109は上側及び右端が開口しており、凹部を有している。ここで、第2の測定デバイス部材109の対向する2つの面のうち一方の面と、図3における底面(第1の測定デバイス部材108と対向する面)とが光学窓部104として機能する。
【0017】
次に、第2の測定デバイス部材109の凹部の底面に試薬保持部107を形成する。例えば、光学測定のための試薬であるヒトアルブミンに対する抗体の水溶液を、マイクロシリンジなどを用いて第2の測定デバイス部材109の凹部の底面に一定量滴下することにより塗布し、これを室温〜30℃程度の環境に静置して水分を蒸発させることにより、乾燥状態で試薬を担持することができる。
【0018】
抗体水溶液の濃度、滴下量及び滴下する部分の面積は、例えば、濃度が8mg/ml、滴下量が25μL、滴下する部分の面積が1cm2である。塗布する試薬を含む水溶液の濃度及び量は、必要とする測定デバイスの特性や第2の測定デバイス部材109における形成位置の空間的な制限に応じて適切な値を選択することができる。また、第2の測定デバイス部材109における試薬保持部の位置や面積は、試薬の試料に対する溶解性や光学窓部104の位置などを鑑みて適宜適切な位置が選択される。
【0019】
なお、ヒトアルブミンに対する抗体は従来公知の方法により得ることができる。例えば、ヒトアルブミンを免疫したウサギ抗血清を、プロテインAカラムクロマトグラフィーにより精製した後、透析チューブを用いて透析することにより、抗ヒトアルブミン抗体が得られる。
【0020】
第1の測定デバイス部材108は第2の測定デバイス部材109と同様に、金型を用いた成形によって得ることができる。また、それに代えて、板状の樹脂を所望の形状に切削することによっても作製することができる。
【0021】
さらに、第1の測定デバイス部材108の表面には、一対の導電部分105c、105d、電極105e、105f、接合リード部105a、105bを配置する。例えば一対の導電部分105c、105dと同様の形状の空隙を有するアクリル樹脂製のマスクを第1の測定デバイス部材108上に配置し、それを介して金をスパッタした後、マスクを除去することにより一対の導電部分105c、105dを形成することができる。スパッタに代えて、蒸着でも同様の手順で形成することができる。
【0022】
一対の導電部分105c、105dそれぞれの寸法は特に制限されないが、例えば、それぞれ幅1mm程度、長さ45mm程度、厚み5μm程度であればよい。電極105e、105fおよび接合接続リード部105a、105bの大きさ(長さ)を規定するために、絶縁性の樹脂からなるカバー106を導電部分105c、105dの両端が露出するように貼付する。カバー106としては、例えば、幅7mm程度、長さ25mm程度、厚さ0.1mm程度の、アクリル系の接着剤が塗布されたポリエチレンテレフタレート(PET)製のフィルムを用いることができる。電極105e、105fの長さが、例えばそれぞれ10mm、接合リード部105a、105bの長さが、例えばそれぞれ10mmとなるようにカバー106を配置する。
【0023】
導電部分、電極、接合接続リード部の材料、面積、厚さ、形状及び位置等は、必要とするデバイスの特性などに鑑みて、適宜調整することができる。
上記のようにして得られる第1の測定デバイス部材108、第2の測定デバイス部材109を、図3に記した破線で示す位置関係をもって接合し、測定デバイス本体を組み立てる。各部材の接合部にはエポキシ樹脂などの接着剤を塗布した後、各部材を張り合わせ静置し、接合部を乾燥させることにより組み立てる。また、それに代えて、各部材を接合した後、市販の溶着機を用いて接合部分を熱または超音波によって溶着させてもよい。
以上のようにして図1及び2に示すような構造を有する本実施の形態の測定デバイス1を得ることができる。
【0024】
(2)測定装置
次に、本実施の形態の測定デバイスを好適に用いることのできる測定装置2の構成について、図4〜6を用いて説明する。図4は、本実施の形態における測定装置2を示す斜視図であり、図5は、測定装置2の構成を示すブロック図であり、図6は測定装置2の構造を説明するための概略断面図である。
【0025】
図4に示すように、測定装置2は、測定デバイス1を着脱可能に取付けるための測定デバイス取付け部201、測定デバイス1への試料の供給を開始するための試料供給ボタン202、測定後に測定デバイス1内の試料を、例えば紙カップ等に排出するための試料排出ボタン203、及び測定結果を表示するための表示部207である液晶ディスプレイを備えている。
【0026】
また、図6に示すように、測定デバイス取付け部201の内側には、測定デバイス着脱部211が設けられており、測定デバイス1を取付ける際に、測定デバイス1の開口部101内に測定デバイス着脱部211が挿入される。このとき、接合部における空気の漏れが発生しないよう、例えばテフロン(登録商標)などのフッ素樹脂やイソプレンゴムなどの弾性を有する樹脂製の封止リングを測定デバイス着脱部211の周囲に設け、測定デバイス着脱部211と開口部101との密着性を高めることが好ましい。
【0027】
また、図6に示すように、測定装置2は、シリンダ210の内側に設けられたプランジャー209を、プランジャージョイント212を介して動かすためのモーター208を備えている。モーター208、プランジャー209及びシリンダ210が、試料液及び空気を測定デバイス1の試料液保持部103に吸引するための図5に示した吸引機構403に相当する。シリンダ210内部にはOリング213が設けられ、シリンダ210とプランジャー209との間で気密性が保持される。
【0028】
また、図5に示すように、測定装置2の内部には、受光器206により受光された出射光に基づき、試料中に含まれる被検物質を検出または定量するための演算部であるCPU401、及び被検物質であるヒトアルブミンの濃度と受光器206により受光される出射光強度との関係を表す検量線が格納されている記憶部であるメモリ402、測定デバイス1の電極105e、105fに電圧を印加するための電圧印加部408、電極105e、105fから得られた電気信号を測定するための電気信号測定部409が設けられている。
【0029】
本実施の形態における光源205としては、650nmの波長の光を出射する半導体レーザを用いる。これに代えて、ライトエミッティングダイオード(LED)などを用いてもよい。なお、本実施の形態においては免疫比ろう法による測定を適用し、650nmの照射及び受光波長を選択するが、この波長は測定法や測定対象に応じて適宜適切な値が選択され得る。本実施の形態における受光器206としては、フォトダイオードを用いる。また、これに代えて、フォトマルチメーターなどを用いてもよい。
【0030】
本実施の形態における吸引機構403は、シリンダ210内のプランジャー209をリニア型のステップモーターであるモーター208により作動させる構成となっている。
ステップモーターは入力された1パルス信号あたりに特定の回転角を回転するモーターであり、パルス数で回転角度を決定できるため、位置決めのためのエンコーダーを必要としない。すなわち、入力パルス数により、プランジャー(ピストン)の動作距離を制御できる。モーターの回転運動は、歯車機構と、雄ネジと雌ネジを組み合わせた直進機構等を用いて直進運動へ変換することにより、プランジャーを作動させる。リニア型のステップモーターは、モーター内に雄ネジと雌ネジを組み合わせた直進機構が組み入れられており、入力パルス数に依存して、棒状の可動部であるプランジャージョイントが直進運動するように構成されている。このため、このプランジャージョイントに直接プランジャーを連結すればよく、構成が簡単となる。
【0031】
(3)測定方法
次に本実施の形態の測定デバイス1及び測定装置2を用いて試料中の被検物質を測定する手順について図7〜14を参照しながら説明する。図7〜14は、本実施の形態の測定デバイス1及び測定装置2を用いて試料中の被検物質を測定する手順を示す概略図である。以下に、試料として尿を用いた例について述べる。なお、本実施の形態においては、測定デバイス1及び測定装置2を、測定デバイス1及び測定装置2の長さ方向が図7における矢印Xで示される鉛直方向に略平行になるようにして使用する。
【0032】
図7は、測定装置2に測定デバイス1を取付ける前の状態を示している。まず、ユーザは、図中の矢印の方向に測定デバイス1を測定装置2に装着する。この際、測定装置2の測定デバイス着脱部211と測定デバイス1の開口部101とが接合するように、測定デバイス取付け部201を通して測定デバイス1を測定装置2に装着する(図8)。これにより、測定デバイス1の1対の電極105e、105fに電気的に導通するように、接合リード部105a、105bと測定デバイス取付け部201内部に設けられた2つの端子とがそれぞれ接触する。
【0033】
このとき、測定装置2内に設けられたマイクロスイッチからなる測定デバイス挿入検知スイッチ(図示せず)が作動して、制御部として機能するCPU401が測定デバイス1の挿入を検知し、電圧印加部408により測定デバイス1の一対の電極105e、105f間に電圧(例えば、電極105eが電極105fに比べて+0.5Vとなる電圧)が印加される。
【0034】
次に、ユーザは、紙カップ3に排出された尿301中に、測定デバイス1のうち少なくとも供給口102を浸漬させる(図9)。尿が一対の電極105e、105fに接触すると、両電極間に電流が流れるため、それに起因する電気信号の変化、例えば抵抗値の低下を電気信号測定部409が検出する。
【0035】
次に、この状態で、ユーザが試料供給ボタン202を押すことにより、CPU401が吸引機構403を作動させる。具体的には、測定装置2内のモーター208が駆動し、シリンダ210内側にあるプランジャー209がプランジャージョイント212を介して引きあげられることにより、測定デバイス1の供給口102から試料液保持部103内に所定量(例えば、100μL)の尿301が供給される(図10)。プランジャー209をその位置に保持することにより、試料液保持部103内に尿が保持され、供給口102から漏れ出したり、シリンダ210内に吸引されたりすることがない。モーター208が停止し吸引機構403による吸引動作が終了すると、CPU401は、試料液保持部103内への空気の供給が完了したことを通知するメッセージを表示部207に表示させる。
【0036】
試料液保持部103内に供給された尿は、試薬保持部107に担持された乾燥状態の試薬である抗ヒトアルブミン抗体を溶解し始め、また同時に尿中の抗原であるヒトアルブミンと抗ヒトアルブミン抗体との免疫反応が進行し始める。
【0037】
次に、ユーザが、開口部102を尿301中から引き上げる(図11)。一対の電極105e、105fが尿から離れた場合、一対の電極105e、105f間の抵抗が増加することにより電流が流れなくなる。よって、電気信号測定部409が電気信号の変化、例えば抵抗値の変化を再度検知するので、その検知に伴い、CPU403が再び吸引機構403を作動し、尿が供給された試料液保持部103に空気を供給させる。一対の電極105e、105fの先端部と開口部101との間に供給口102が設けられているため、一対の電極105e、105f間の電気信号の変化を検出することにより、供給口102が確実に尿中から引き上げられたことを検知することができる。
【0038】
具体的には、測定装置2内のモーター208が駆動し、シリンダ210内側にあるプランジャー209がプランジャージョイント212を介して一定速度(例えば1140μL/s)でさらに引き上げられることにより、測定デバイス1の供給口102から試料液保持部103内に所定量(例えば、900μL)の空気が供給される(図12)。供給口102から空気が供給されることにより試料液保持部103内に保持された尿中で気泡302が発生し、それにより尿と試薬とが攪拌される。モーター208が停止し吸引機構403による吸引動作が終了すると、CPU401は、試料液保持部103内への空気の供給が完了したことを通知するメッセージを表示部207に表示させるとともに、計時部404であるタイマーによる計時を開始させる。
【0039】
このように、供給口102が尿301から引き上げられたことを検知することで、撹拌のための空気を試料液保持部103に供給する際に、誤って尿301を試料液保持部103に吸引することを防ぐことができるため、撹拌の不具合を防ぐことができる。また、供給口102が尿301から引き上げられたことを検知することにより自動的に空気が試料液保持部103に供給されるので、ユーザの作業を減らすことができる。
【0040】
次に、計時部404からの信号によって、試料保持部103内への空気の供給完了から所定時間(例えば、2分)経過したことをCPU401が判断すると、CPU401は光源205による光照射を実行させる(図13)。
光源205から出射したレーザ光が光学窓部104を通って試料液保持部103内の尿に照射され、尿中で散乱され光学窓部104から出射した光を受光器206により受光する。CPU401はメモリ402に格納されている出射光強度とヒトアルブミン濃度との関係を表す検量線を読み出し、それを参照することによりCPU401が受光器206により受光された出射光強度をヒトアルブミン濃度に換算する。得られたヒトアルブミン濃度は表示部207に表示される。表示部207にヒトアルブミンが表示されることにより、ユーザはヒトアルブミン濃度測定が完了したことがわかる。好ましくは、得られたヒトアルブミン濃度は、計時部404により計時された時刻とともにメモリ402に保存される。
【0041】
次に、ユーザは、紙カップ3の上方に測定デバイス1の供給口102が位置するように、測定デバイス1が装着された測定装置2または紙カップ3を動かす。その状態で、ユーザが試料排出ボタン203を押すと、モーター208が駆動し、シリンダ210内側にあるプランジャー209がプランジャージョイント212を介して押し下げられることにより、試料保持部105内の尿が紙カップ3内に排出される(図14)。ユーザは、紙カップ3内に排出された尿301を流し捨て、その後紙カップ3も廃棄する。また、ユーザは、測定デバイス1を矢印で示す方向に抜き取り廃棄する。
【0042】
さらに、得られたヒトアルブミン濃度は、記録部405によりSDカードなどの記憶媒体に記録することができる。取り外し可能な記憶媒体に保存することにより、測定結果を測定装置2から容易に取り出すことができるので、前記記憶媒体を分析専門業者に持参または郵送して、分析を依頼することができる。
【0043】
さらに、得られたヒトアルブミン濃度は、送信部406により測定装置2外に送信することができる。これにより、測定結果を、病院内の分析関連部門または分析関連業者等に送信し、それを前記分析関連部門または分析関連業者などにおいて分析することができるので、測定から分析までの時間を短縮することができる。
さらにまた、前記分析関連部門または分析関連業者などにおいて分析した結果を受信するための受信部407を備えている。これにより、分析結果を迅速にユーザにフィードバックすることができる。
【0044】
なお、上記実施の形態において、吸引機構403として、シリンダ210内のプランジャー209をリニア型のステップモーターであるモーター208により作動さデバイス構成を用いたが、これに限らない。リニア型以外のステップモーターや、直流モーター等を用いてもよい。
【0045】
また、上記の実施の形態において、ユーザが試料供給ボタン202を押すことにより、尿が供給されるようにしたが、これに限らず、CPU401が一対の電極105e、105f間の電気信号の変化を検出することにより、測定デバイス1のうち少なくとも供給口102が尿中に浸漬したことを検知すると、自動的に、CPU401が吸引機構403を作動させて尿が供給されるようにしてもよい。
【0046】
また、上記実施の形態において、紙カップ3に尿301を採取したが、これに限らず、プラスティック製のカップ等の運搬可能な容器や、便器内に設けられた受尿容器等を用いてもよい。
また、上記実施の形態において、試料液保持部103内への尿及び空気の供給が完了したことを通知するメッセージを表示部207に表示させたが、これに代えて、ブザー等の音声により通知してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の撹拌方法によれば、小型かつ簡易的な攪拌機構が利用できるため、分析・検査分野において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施の形態に係る測定デバイスの構成を示す斜視図である。
【図2】同測定デバイスの概略断面図である。
【図3】同測定デバイスの分解斜視図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係る測定装置の構成を示す斜視図である。
【図5】同測定装置の構成を示すブロック図である。
【図6】同測定装置の構成を示す断面図である。
【図7】同実施の形態の測定デバイス及び測定装置を用いて試料中の被検物質を測定する手順における一工程を示す概略図である。
【図8】同実施の形態の測定デバイス及び測定装置を用いて試料中の被検物質を測定する手順における他の工程を示す概略図である。
【図9】同実施の形態の測定デバイス及び測定装置を用いて試料中の被検物質を測定する手順におけるさらに他の工程を示す概略図である。
【図10】同実施の形態の測定デバイス及び測定装置を用いて試料中の被検物質を測定する手順におけるさらに他の工程を示す概略図である。
【図11】同実施の形態の測定デバイス及び測定装置を用いて試料中の被検物質を測定する手順におけるさらに他の工程を示す概略図である。
【図12】同実施の形態の測定デバイス及び測定装置を用いて試料中の被検物質を測定する手順におけるさらに他の工程を示す概略図である。
【図13】同実施の形態の測定デバイス及び測定装置を用いて試料中の被検物質を測定する手順におけるさらに他の工程を示す概略図である。
【図14】同実施の形態の測定デバイス及び測定装置を用いて試料中の被検物質を測定する手順におけるさらに他の工程を示す概略図である。
【符号の説明】
【0049】
1 測定デバイス
2 測定装置
3 紙カップ
101 開口部
102 供給口
103 試料液保持部
104 光学窓部
105a、105b 接合リード部
105c、105d 導電部分
105e、105f 電極
106 カバー
107 試薬保持部
108 第1の測定デバイス部材
109 第2の測定デバイス部材
201 測定デバイス取付け部
202 試料供給ボタン
203 試料排出ボタン
205 光源
206 受光器
207 表示部
208 モーター
209 プランジャー
210 シリンダ
211 測定デバイス着脱部
212 プランジャージョイント
213 Oリング
301 尿
302 気泡
401 CPU
402 メモリ
403 吸引機構
404 計時部
405 記録部
406 送信部
407 受信部
408 電圧印加部
409 電気信号測定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体、前記基体の内部に設けられ試料液を保持するための試料液保持部、前記試料液保持部と連通しており前記試料液保持部に前記試料液及び気体を供給するための供給口、前記試料液保持部と連通する開口部、前記試料液保持部内に設けられ前記試料液中に含まれる被検物質と特異的に反応する試薬、並びに前記基体の外側表面に設けられた一対の電極を備えた測定デバイスと、
前記測定デバイスの前記開口部と接続されることにより前記測定デバイスを取付けるための測定デバイス取付け部と、
前記測定デバイス取付け部に取付けられた前記測定デバイスの前記開口部を通して前記試料液保持部内の気体を吸引するための吸引手段と、
前記測定デバイスの前記一対の電極間に電圧を印加するための電圧印加部と、
前記一対の電極からの電気信号を測定するための電気信号測定部と、
を備えた測定装置、を用い、
(A)前記供給口を通して前記試料液保持部に前記試料液を供給する工程と、
(B)前記一対の電極間に電圧を印加する工程と、
(C)前記一対の電極からの電気信号を測定する工程と、
(D)前記電気信号の変化に基づき、前記供給口が前記試料液中から取り出されたことを検知する工程と、
(E)前記試料液保持部内に、前記工程(D)における検知に基づき、自動的に前記供給口を通して前記試料液保持部に前記気体を供給する工程と、を含む試料液の撹拌方法。
【請求項2】
前記工程(A)の前に、
(F)前記一対の電極間に電圧を印加する工程と、
(G)前記一対の電極からの電気信号を測定する工程と、
(H)前記電気信号の変化に基づき、前記供給口が前記試料液中に浸漬されたことを検知する工程と、
をさらに含む、請求項1記載の試料液の撹拌方法。
【請求項3】
前記測定デバイスにおいて、
前記一対の電極の先端部と前記開口部との間に前記供給口が設けられている、請求項1記載の試料液の撹拌方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−309834(P2007−309834A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−140519(P2006−140519)
【出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】