説明

試料製造装置

PCR分析に適した試料製造装置は、試料(15)を収容する入口(4)と、ふるい(133)と、を含む。入口キャップ(16)をネジ止めすることによって、前記ふるい(13)を通って、前記試料(15)が押し出される。2つの破れるシール(11、12)間に含まれた溶解液は、試料の細胞をバラバラにして、核酸を取り出すのに有効である。装置は、その装置における駆動装置(3、36、40)に取り外し自在に取り付けられたモータ(2’)を備えたPCR機械(2)上に取り外し自在に取り付けられている。このモータ(2’)は、その構成部品(30、31、32、42)を回転させ、かつ、上下方向に動かせる。この装置は、透明なキュベット(5)と、前記キュベットの下端に伸びる針(71)と、を有する。その針によって、製造された試料が、PCR分析のためにキュベットの方に配られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、入口開口(inlet opening)を有する試料製造装置に関する。この入口開によって、液体及び半固体(semi-solid)試料を前記装置に供給することができる。この入口は、試料物質(sample material)を収容する凹部(recess)を有している。
【0002】
この発明は、特に、核酸、例えば、DNA又はRNAを含む試料をPCR法による増幅、検出、及び分析に適した形態に製造(加工)する装置に関する。
【背景技術】
【0003】
PCR分析用の試料を製造する従来の方法は、試料を処理することと、それを異なる処理液(treatment solution)を含有する異なる容器(container)に移すことと、を含む。これらの方法は、熟練工(skilled operative)を要する難しい技術である。試料を取ったその場において、試料の迅速なDNA分析が望まれる場合が少なくない。例えば、医療、獣医、又は、農業分野がそうである。携帯DNA分析装置(例えば、スミスズデテックション−ワットフォードリミテッドから入手したバイオ−シーク(BioーSeeq))を利用することができる。それは、訓練(熟練)を要せず簡単に使用することができる。しかしながら、試料を用意することに伴う難点が、かかる装置の活用を実質的に制限している。試料製造装置については、例えば、WO05/121963, WO06/090180, WO06/079814, EP1383602, WO05/106040、及び、WO05/019836などを参考することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO05/121963号
【特許文献2】WO06/090180号
【特許文献3】WO06/079814号
【特許文献4】EP1383602号
【特許文献5】WO05/106040号
【特許文献6】WO05/019836号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、新規な試料製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の特徴は、液体及び半固体試料を収容する凹部を有し、且つ、(装置の中に)前記試料を供給する入口開口と、前記凹部の上部内に伸びることができる部分を有する離解部材と、を含む試料製造装置であって、前記凹部を横切ってふるい部材が設けられ、そして、前記離解部材を回転させ、かつ、下方に動かせることによって、前記半固体試料が前記ふるい部材を通って押し出されて、離解されることを特徴とする試料製造装置である。
【0007】
前記離解部材が、前記入口を閉めるキャップであっても良い。前記離解部材、及び、前記入口には、共動ネジ部が設けられて、前記離解部材が前記入口にねじ込まれると、前記離解部材が前記試料と接触されて、前記ふるい部材を通って前記試料が押し出されることが好ましい。前記凹部が、前記試料の細胞をバラバラにして、前記細胞から核酸を取り出すのに有効な物質を含有することが好ましい。前記物質が、溶解液を含有することが好ましい。前記物質が、前記離解部材が内側に移動されるにつれて破れる2つのシール間に含まれていることが好ましい。前記試料製造装置によって、前記離解された前記液体又は半液体試料から生物試料が製造され、且つ、前記生物試料が、PCR増幅分析に適した細長い透明なキュベットの方に配分され、前記キュベットには、開放された上端と、閉じられた下端と、が設けられ、前記試料製造装置には、前記キュベットの下端の方に伸びる針が設けられ、それにより、前記キュベットの内側と前記針の外側との間には、間隙が設けられ、そして、前記試料製造装置によって、前記針の上端の方に前記PCR試料が分配されて、前記キュベットがその下端から詰められることが好ましい。
【0008】
本発明の第2の特徴は、上記本発明の第1の特徴に係る試料製造装置と、PCR増幅分析機械と、を含むPCR分析システムである。
【0009】
前記試料製造装置が、前記PCR機械上に取り外し自在に取り付けられ、前記試料製造装置には、その試料製造装置の中にある構成部品を動かす駆動装置が設けられ、そして、前記PCR機械には、前記駆動装置に取り外し自在に取り付けられて、前記試料製造装置における前記構成要部品を動かす動力を提供するモータ装置が設けられていることが好ましい。前記モータ装置によって、前記試料製造装置における前記構成部品が回転され、かつ、上下方向に移動されることが好ましい。
【0010】
本発明の第3の特徴は、生物試料を製造すると共に、PCR増幅分析に適した細長い透明なキュベット内に前記生物試料を分配する試料製造装置であって、前記キュベットには、開放された上端と、閉じられた下端と、が設けられ、前記試料製造装置には、前記キュベットの下端の方に伸びる針が設けられ、それにより、前記キュベットの内側と前記針の外側との間には、間隙が設けられ、そして、前記試料製造装置によって、前記針の上端の方に前記PCR試料を分配されて、前記キュベットがその下端から詰められることを特徴とする試料製造装置である。
【0011】
本発明の第4の特徴は、PCR増幅分析機械と、試料製造装置と、を含むPCR分析システムであって、前記試料製造装置が、前記PCR増幅分析機械上に取り外し自在に取り付けられ、前記試料製造装置には、その装置の中にある構成部品を動かす駆動装置が設けられ、そして、前記PCR増幅分析機械には、前記ドライブ装置に取り外し自在に取り付けられて、前記試料製造装置における前記構成部品を動かす動力を提供するモータ装置が設けられていることを特徴とするPCR分析システムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、熟練を要することなく、分析に適した生物材料を簡単に用意できる(製造できる)装置を提供する。この試料製造装置は、使い捨てであるので、同じPCR機械において異なる試料を素早く処理することを可能にする。
【0013】
本発明に係る核酸を含む試料の製造装置については、添付した図面に基づいて、以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、装置の斜視図である。
【図2】図2A〜2Cは、3つの(動作)異なる段階にある装置の入口の断面図である。
【図3】図3A及び3Bは、異なる(動作)段階にある装置を部分的に切り取った図である。
【図4】図4は、最初の(動作)段階にある装置の一部の断面図である。
【図5】図5は、ある(動作)段階にある装置の部分断面図である。
【図6】図6は、ある(動作)段階にある装置の部分断面図である。
【図7】図7は、ある(動作)段階にある装置の部分断面図である。
【図8】図8は、ある(動作)段階にある装置の部分断面図である。
【図9】図9は、ある(動作)段階にある装置の部分断面図である。
【図10】図10は、ある(動作)段階にある装置の部分断面図である。
【図11】図11は、ある(動作)段階にある装置の部分断面図である。
【図12】図12は、ある(動作)段階にある装置の部分断面図である。
【図13】図13は、ある(動作)段階にある装置の部分断面図である。
【図14】図14は、ある(動作)段階にある装置の部分断面図である。
【図15】図15は、ある(動作)段階にある装置の部分断面図である。
【図16】図16は、ある(動作)段階にある装置の部分断面図である。
【図17】図17は、ある(動作)段階にある装置の部分断面図である。
【図18】図18は、ある(動作)段階にある装置の部分断面図である。
【図19】図19は、ある(動作)段階にある装置の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1〜3を参照すると、液体又は半固体試料を核酸分析に適した形態に加工(製造)する試料製造装置が示されている。この装置は、高さ約200mm、及び直径約120mmの円筒状のケース(casing)1を有する。この装置は、使用の際に、その下端にあるカップリング1’によって、PCR分析機械(符号2と示されている。)上に垂直方向に直接載せられる。このPCR機械2は、軸方向に伸び、かつ製造装置の中心部に存在するドライブシャフト3(図3A及び図3B参照)と結合するモータ2’を有する。このPCR機械2は、製造装置に動力を供給する。液体又は半固体状態の分析すべき試料は、装置の上端にある入口4に供給される。この装置は、試料から核酸を抽出して、それをPCR分析に適した形態に加工して、それを、装置の下端に垂直配置された透明なキュベット(cuvette)5に分配する。その後、加工された試料を含むこのキュベット5は、適当な開口部(図示しない)を通じて製造装置からPCR機械2の方に下げられて、前記製造装置がPCR機械上に保持されたまま、PCR機械は、通常の方法で増幅及び分析を行うことができる。分析が完了した後、キュベット5が製造装置の方に再度引き上げられるので、装置及び試料を安全に処理することができる。その後、新しい試料製造装置を用いて、新しい試料をテストすることができる。
【0016】
装置の構造及び動作については、図2A〜2Cに基づいてより詳細に説明する。装置の入口4は、その上端にあるケース1の一側(one side)に配置された円筒状の、外側ネジボス(externally screw-threaded boss)6によって形成されている。このボス6は、開放された上端7、並びに、テーパ状の下端9及び出口開口10を有する円筒状の内側凹部(internal cylindrical recess)8に垂直配置される。この凹部8は、破れる(破壊可能な)上部及び下部フォイルシール(upper and lower rupturable foil seal)11及び12の間に溶解液(lysis solution)を含む。この凹部8は、前記2つのフォイルシール11及び12の間に、前記凹部のほぼ中央に位置する円錐形のグリル(grill)13の形態をなすふるい部材(sieve member)を有する。上部シール11は、ボス6の上端7から間隔を空けて配置されて、シールの上方に開放された空洞(cavity)14を提供する。このシール内に試料15が配置され得る。この入口4は、閉鎖キャップ(closure cap)16の形態をなす離解部材(maceration member)を含む。この閉鎖キャップ16は、試料15を離解(浸解)すると共に、入口を閉じる2つの機能を有する。このキャップ16は、閉じられた上端17と、開放された下端19及びねじ内面(screw-threaded internal surface)20を有する外側スリーブと、を備えた円筒状のものである。キャップ16上のネジ内面20は、ボス6上の外側ネジ(external screw)に係止できるようになっている。このキャップ16は、軸方向下向きに突き出す中央離解棒(central maceration rod)21を有し、かつ、そこには円錐形の下端面(lower end surface)22が設けられている。この棒21の外径は、棒21がボス6の凹部8内にスライドしてぴったり閉まる(close sliding fit)ようになっている。(棒21の)円錐形の下端22は、グリル13の上面(upper surface)及び凹部8のテーパ状の下端9と同じ形状を有している。
【0017】
動作の際に、上部シール11上にある凹部8の開放された空洞14に、試料15を供給する。この試料は、キャップ16がボス6にねじ止めされるまでに、シール11上に保持され、そして、棒21の下端22が上部シールを破って、試料が溶解液(lysis solution)と混合されるようになる。この溶解液は、試料中の試料をバラバラにして、DNA又はRNAの核酸を取り出すのに有効である。試料15が液体である場合に、この溶解(lysis)ステップは、すぐに起こり、試料は溶解液に接触して、グリル13を通じて自由に流れる。しかしながら、試料15が生物組織試料のように半固体である場合、それは、グリル13上に保持される(残る)。しかしながら、ユーザがギャップ16をボス6の方に完全にねじ止めした場合(即ち、完全に下げた場合)、棒21の下面22が回転し、そして、グリル13上に集まっている物質を押しつぶす。それにより、物質がグリルを通じて押し出され、前記物質(即ち、試料)が小さい片に離解(侵解)される(図2B参照)。このグリル13は、それを通じての半固体試料物質の通過(移動)による圧力を耐える程度の堅さを有するように構成されている。棒21の下面22は、全ての試料物質15が押しつぶされた後、グリルの上面に接触する。キャップ16をねじると、グリルの破壊限度(fracture limit)を超えるまでに、グリル13に加えられる力が増加され、グリル13は破れて、棒21が凹部に向かってさらに下方に動くようになる。これが起こると、これが下部シール12の破壊限度(breaking limit)を超えるまでに、棒21の下にある分解液と試料との混合物上に圧力が高まる。その後、混合物は、入口4の下端にあるフィルタ24及び出口10から流出される。これは、キャップ16が下方に完全にねじ込まれるまで続き、そして、棒21の下面22によって、全ての試料物質が入口10から押し出される(図2C参照)。フィルタ処理した溶解液と試料との混合物は出口10の下にある第1反応槽30の方に流れる。
【0018】
図3A及び3Bを参照すると、反応槽30は、第1上部円形支持プレート(upper circular support plate)36の縁部に設けられた3つの反応槽30〜32のうちいずれかである。これらの図には、上部プレート36の縁部には6個のステーションが設けられているが、これらのステーションのうち3つがブランク(blank)である。しかしながら、更なる反応槽をブランクステーションに設けても良い。このプレート36は、ドライブシャフト3を貫通させる中心孔(central aperture)37を有している。ドライブシャフト3は、プレート36に設けられた孔37と協力する外側ねじ山(external screw thread)を有する部分38を有する。よって、ドライブシャフトが回転するにつれて、プレートを上下方向に動かせ、かつ、装置に対する角度を徐々に変えることができる。図3A及び3Bに示したように、装置は、上部支持プレート36の下にあるドライブシャフト3上に設けられた円形の下部キュベット支持プレート(circular, lower, cuvette support plate)40を含む。この下部プレート40は、回転するだけでなく、上下方向に動くことができる。このプレート40は、キュベットアセンブリ41を支持するが、そのキュベットアセンブリ41については後述する。
【0019】
磁気伝達アセンブリ(magnetic transfer assembly)42は、ケース1の上端において、上部プレート36上に設けられ、反応槽における磁気ビード(magnetic bead)を用いて、反応槽間に物質を移すのに用いられる。この伝達アセンブリ42は、リンケージ(linkage)43によって、ドライブシャフト3の上端に繋げられる。伝達アセンブリ42は、磁気プランジャー(magnetic plunger)44を含むが(図5〜19参照)、その磁気プランジャー44は、リンケージ43によって、その軸を中心に回転可能となっている。プランジャー44は、プラスチック製の外側の鞘(outer sheath)45と、この鞘に関して軸方向に(上下方向に)スライド自在に設けられた内側の永久磁石コア46とを含む。この鞘45は、その下端において、より小さい外径及び壁の厚さを有する捕集部(collection region)47と、下位ヘッド部(lower head portion)48と、を有する。そのヘッド部48は、下部傾斜面(inclined lower surface)49を有するが、その傾斜面49は、様々な反応槽上のフォイルシールに容易に穴を開けるとともに、より大きい攪拌効果を生じるために液体中に浸されたヘッドとともにプランジャーが回転するときに、乱流を増大させる2つの目的を果たす。磁石コア46は、円筒状であり、第1上昇位置(first raised position)(図5〜7参照)と、第2の低位置(second lowered position)との間に、外側の鞘45に関して、リンケージ43によって上下方向に動くものである。前記第1上昇位置において、磁石の下端と、前記捕集部47の上端とが同じ高さにある。前記低位置(図8〜11参照)において、磁石の下端は、拡大したヘッド48の上端と同じ高さにある。鞘45の厚さ及び材料は、磁石46が上昇位置にあるときに、反応槽に浸されたプランジャー部分の表面には、この伝達プロセスに使用された磁石ビーズを引き付け又は保持するのに不十分な磁場が生じるように、設けられる。したがって、この状態のプランジャー44は、「解放状態(release state)」と見ることができる。しかしながら、磁石46が鞘45内へ完全に下げられたとき、捕集部47の壁の厚さは、外面(outside surface)上の磁場フラックス(magnetic field flux)が、反応槽内にある全ての磁性ビーズを捕集する(集める)のに十分となるように、設けられる。磁石46がこの位置にあると、プランジャー44は「捕集状態(collect state)」にある。ヘッド48の厚さは、磁石46が低位置にある場合でも、その表面上に磁性のビーズを保持するために、その外面には不十分な磁場が存在するように、設けられている。したがって、プランジャー44上に捕集された磁性のビーズは、ヘッド48の後ろにある捕集部47に閉じ込められている。プランジャー44が回転する場合であっても、プランジャー44は上下方向に動くことはできず、その代わりに、上部支持プレート36を上下方向に動かせることによって、反応槽30〜32が上下方向に動いて、必要とされる反応槽内にプランジャーを浸すことができる。当初入口4に試料を供給する際に、上部支持プレート36は上昇位置にあり、そして、プランジャー44は、このプレートの一面(one side)において切り取り凹部(cut-away recess)50と位置合わせされている(整列されている)。
【0020】
試料製造装置を動かす際の異なるステップについては、図4〜19に基づいて説明する。
【0021】
キャップ16が入口4に完全にねじ込まれるとすぐに、PCR機械2が試料製造装置のシャフト3を駆動し始める。シャフト3が回転すると、シャフト3は、図2Cに示す上昇位置から、図4に示す位置まで上部支持プレート36を下げ始める。図4に示す位置において、前記プレート及び反応槽30は、引き下げられている(即ち、「低位置」にある)。図4より、支持プレート36の上面(upper surface)が、プランジャー44の下端48から下方に間隔を置いて配置されている。
【0022】
反応槽30は、3つの破壊可能な(rupturable)フォイルシール52,53、及び54を有し、それらのフォイルシールは、反応槽の長さに沿って互いに離れて配置されている。第1上部シール52(upper seal)は、反応槽30の開放された上端55から離れて配置されるので、溶解液と試料との混合物は、当初このシール上にある反応槽の上部(upper part)に保持される。この上部支持プレート36は、約50℃だけ時計回り方向に回転され(上から見たとき)、入口4の下になる当初の位置(initial position)からプランジャー44の下にある第2の位置にまでに第1の反応槽30をインデックスする(即ち、角度を変える)。このプランジャー44の磁石46は、当初「上昇位置」にある。図5に示すように、ドライブシャフト3の連続的な回転によって、下部プレート40が上昇するとともに、図6に示すように、プランジャーヘッド48の下端が反応槽30に入って、第1上部フォイルシール52に穴を開けるまでに、プランジャー44に関して上部支持プレート36を持ち上げる。第1のシール52と第2のシール53との間に、反応槽30は、第2の溶解液を含有するが、この溶解液は、試料と前記第1の溶解液との混合物と混合される。この混合(段階)は、プランジャー44の回転によって促進されるが、そこで、プランジャー44は、混合物を互いに攪拌する役割をする。ドライブシャフト3がさらに回転することによって、プランジャー44の下端が第2のフォイルシール53に穴を開けるまでに、下部プレート40がさらに上昇する。第2のシール53の下にある空間は、磁石ビーズ(バイオ−ノビル・オウワイ(Bio-Nobile Oy)社製の市販されるものなど)と緩衝液との混合物を含有する。磁石ビーズは、核酸、例えば、DNA又はRNAと結合するために選択された物質で被覆されている。プランジャーは、混合を促すために回転し続ける。混合が完了した後、プランジャー44は、回転を止め、そして、磁石46は鞘45内に下げられて、磁石ビーズと、それに結合された核酸物質とが、プランジャーの捕集部47に集められるようになる。ドライブシャフト3の更なる回転によって、反応槽30及び上部プレート36は、プランジャー44の下端が第3のフォイル54に穴を開けるまでに、さらに上方に動く。第3のフォイル54の下にある反応槽30には、多量の吸収材(absorbent material)56が含まれて、この反応槽に存在する液体は、この吸収材に吸収され、それにより、磁石ビーズがプランジャー44にくっつく。拡張型ヘッド(enlarged head)48及び凹型の捕集部47によって、ビーズがフォイルシールを通るときに(そのビーズが)プランジャー44から外れるリスクが減少される。次のステップでは、下部プレート40と上部プレート36が下方に動いて、図9に示すように、プランジャー44の下端が、上部プレートの上面より上にくるようになる。
【0023】
次に、上部支持プレート36は、時計回り方向にもう一度回転して、図10に示すように、第2の反応槽31がプランジャー44の下方に配されるようになる。この下部プレート40が上昇することによって、図11に示すように、上部プレート36が上昇すると共に、プランジャー44の下端が反応槽31の上部フォイルシール57を破る。反応槽31は、上部シール57の下方及び第2のシール58の上方に緩衝液を含む。このプランジャー44の磁石46は、この解放状態(release condition)までに上昇して、ビーズがプランジャーから離れて、緩衝液と混合することを可能にする。プランジャー44の回転によって、混合が促され、ビーズが離れていく。上部プレート36は、図12に示すように、プランジャー44の下端が第2のシール58を破るまでに、上昇し続ける。第2のシール58と第3のシーツ59間の空間において、反応槽はDNASE酵素を含んでいる。この酵素は、ビーズと、緩衝液と混合される。このような混合が完了すると、磁石46は、再びプランジャー44の方に下げられて、ビーズは、再び捕集部47の方に集められる。この反応槽31は、第3のシール59が破れるまでに上昇し、それにより、廃液(waste solution)はシールより下にある空間の方に排水される。図13に示すように、この廃液には、吸収材60が含まれている。次に、図14に示すように、下部プレート40が下げられ、それにより、上部プレート36が下げられると共に、プランジャー44の下端が上部プレート36の上面より上方に保持される。この状態において、ビーズは、プランジャー44の下端に集まっている(引き付けられている)。
【0024】
上部支持プレート36は、もう一段回転して、図15に示すように、第3の(最後の)反応槽32をプランジャー44の下方に整列する(配置させる)。下部プレート40は、上昇して、プランジャー44の下端が、反応槽の上端に近接したフォイルシール61に穴を開けて、緩衝液及び洗浄液を含む第2のシール62より上の空間に入るまでに、上部プレート36と反応槽32とを持ち上げる。このプランジャー磁石46は、上昇して、ビーズが緩衝液へ離れていき、そして、プランジャー44の回転によって、ビーズの混合及び放出(解放)が促される(図16参照)。緩衝液は、ビーズに結合されたDNA又はRNAのような核酸を分離して、それを緩衝液中の溶液に戻すのに有効である。磁石46は、プランジャー44において再び下げられて、核酸と結合されていない洗浄されたビーズが捕集部47に集まる。次に、図17に示すように、反応槽32がさらに上昇して、プランジャー44が第2のフォイルシール62を破り、且つ、第2のシールと第3のシール64間の空間において選択された逆転写(RT)剤63と緩衝液とを混合する。上部プレート36は、上昇し続けて、プランジャー44が第3のシール64に穴を開け、かつ、その溶液を反応槽32の下端にあるチャンバ又はバレル65の方へ排水する。
【0025】
最後の反応槽32の下端になるチャンバ65は、出口ノーズ(outlet nose)66を通じて開放されている。下部プレート40が上昇位置にあるときに(図16〜18参照)、反応槽32の出口ノーズ66が入って、微細な中空の金属製の針71のハブ(hub)70で封をする。針71のハブ70は、ゆるく又は取り外し自在に設けられて、下部プレート40を通して延設され、且つ、プランジャー44より下方に配置されている。針71は、キュベット5内に延設され、そのキュベット5は、下部プレート40の底面(underside)から突き出した栓(spigot)72に固定されている。キュベット5は、円形断面を有するが、それは、比較的小さい直径の細長い形状である。キュベット5は、閉じられた下端73と、開放された上端74と、を有する。キュベット5は、PCR分析プロセスに用いられる光学放射線(optical radiation)に透明な材料で構成されている。この観点から、キュベット5は、ガラス製、又は、透明なプラスチック製であっても良い。入れ針(filling needle)71の外径は、キュベット5の内径より小さいので、それらの間には間隙(clearance)が存在する。入れ針71の長さは、それが、キュベット5の内側になる下端73の近くまで伸びて、液体が入れ針の下端から流出する(溢れ出す)ように、設けられている。この構成により、米国公開公報第2005064582号に記載されたように、液体が確実にその下端まで流れるようにするために、キュベットを遠心分離機にかける必要がなくなる。
【0026】
最後の反応槽32の下端にあるチャンバ65は、プランジャー44のヘッド48の外径にマッチする減少された内径(小さい内径)を有している。かかる構造を有することによって、最後の反応槽32が上昇し続けても、プランジャー44のヘッド48はチャンバ65に入って(スライドして嵌合する。)、図18に示すように、シリンジのバレル内のプランジャーと同様に、チャンバ内の液体を出口ノーズ66から吸い出す。このように小さく設けられた入れ針71の内径によって、それを通じての液体の自由な流れが妨げられる。しかしながら、より自由な流れ(排水)が求められる場合には、前記構成は不要である。
【0027】
ドライブシャフト3の連続的な回転によって、下部支持プレート40が下方に動いて、入れ針71から充填キュベット5が分離される。この入れ針71は、最後の反応槽32のノーズ66に付着した状態を保持する(図19参照)。下部支持プレート40は、下がり続けて、キュベット5の下端をケース1の下端の下方に、そして、PCR機械2の上面にある試料開口内へ動かせる。PCR分析の前に針71を引き抜く(抜き出す)必要があるが、その理由は、前記針71が金属製であるので、キュベットを通る光学放射線の自由な進行を妨げる可能性があるからである。しかしながら、入れ針が透明な材料(例えば、ガラス製、又は、プラスチック製)で構成されていれば、分析中のキュベット内に入れ針をそのまま保持することも可能である。
【0028】
前述の装置には様々な変形・改質が可能である。例えば、異なる反応槽の間に物質を輸送(移動)するために、磁石ビーズ以外の構成をとることも可能である。磁石ビーズが用いられた場合であっても、それらが前述とは異なる方法で移動されることも考えられる。例えば、電磁石を用いることも可能であるが、そこには電力が要るという欠点がある。本発明の装置がPCR機械上に設けられ、且つ、PCR機械によって駆動されることが好ましいが、それが必ずしも必要なわけではない。異なる具体例に係る試料製造装置は、それ自体の持つモータ又は相互手段(mutual means)によって駆動されて、別途のPCR機械による分析に適した(加工された)試料を提供する独立型(stand-alone)装置である。
【0029】
本発明は、訓練を要することなく、分析用に適した生物材料を簡単に用意できる(製造できる)装置を提供する。この試料製造装置は、使い捨てであるので、同じPCR機械において異なる試料を素早く処理することを可能にする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体及び半固体試料(15)を収容する凹部(8)を有する前記試料(15)を供給する入口開口(4)と、
前記凹部(8)の上部内に伸びることができる部分(21)を有する離解部材(16)と、を含む試料製造装置であって、
前記凹部(8)を横切ってふるい部材(13)が設けられ、そして、
前記離解部材が回転すると共に下方に動くことによって、前記半固体試料(15)が前記ふるい部材(13)を通って押し出されて、離解される
ことを特徴とする試料製造装置。
【請求項2】
前記離解部材が、前記入口(4)を閉めるキャップ(16)であることを特徴とする請求項1に記載の試料製造装置。
【請求項3】
前記離解部材(16)、及び、前記入口(4)には、共動ネジ部(20)が設けられて、前記離解部材(16)が前記入口(4)にねじ込まれると、前記離解部材(16)が前記試料(15)と接触されて、前記試料(15)が前記ふるい部材(13)を通って押し出されることを特徴とする請求項1又は2に記載の試料製造装置。
【請求項4】
前記凹部(8)が、前記試料(15)の細胞をバラバラにして、前記細胞から核酸を取り出すのに有効な物質を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の試料製造装置。
【請求項5】
前記物質が、溶解液を含有することを特徴とする請求項4に記載の試料製造装置。
【請求項6】
前記物質が、前記離解部材(16)が内側に動くにつれて破れる2つのシール(11、12)間に含まれていることを特徴とする請求項4又は5に記載の試料製造装置。
【請求項7】
前記試料製造装置によって、前記離解された前記液体又は半液体試料(15)から生物試料が製造され、且つ、前記生物試料が、PCR増幅分析に適した細長い透明なキュベット(5)の方に配分され、
前記キュベット(5)には、開放された上端(74)と、閉じられた下端(73)と、が設けられ、
前記試料製造装置には、前記キュベット(5)の下端の方に伸びる針(71)が設けられ、それにより、前記キュベットの内側と前記針の外側との間には、間隙が設けられ、そして、
前記試料製造装置によって、前記針(71)の上端の方に前記試料が分配されて、前記キュベット(5)がその下端(73)から詰められる
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の試料製造装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の試料製造装置(1)と、PCR増幅分析機械(2)と、を含むことを特徴とするPCR分析システム。
【請求項9】
前記製造装置(1)が、前記PCR機械(2)上に取り外し自在に取り付けられ、
前記試料製造装置(1)には、その試料製造装置の中にある構成部品(30、31、32、42)を動かす駆動装置(3、36、40)が設けられ、そして、
前記PCR機械には、前記駆動装置(3、36、40)に取り外し自在に取り付けられて、前記試料製造装置における前記構成要部品(30、31、32、42)を動かす動力を提供するモータ装置(2’)が設けられている
ことを特徴とする請求項8に記載の試料製造装置。
【請求項10】
前記モータ装置(2’)によって、前記試料製造装置(1)における前記構成部品(30、31、32、42)が回転され、かつ、上下方向に移動されることを特徴とする請求項9に記載の試料製造装置。
【請求項11】
生物試料を製造すると共に、PCR増幅分析に適した細長い透明なキュベット(5)内に前記生物試料を分配する試料製造装置であって、
前記キュベット(5)には、開放された上端(74)と、閉じられた下端(73)と、が設けられ、
前記試料製造装置には、前記キュベット(5)の下端の方に伸びる針(71)が設けられ、それにより、前記キュベットの内側と前記針の外側との間には、間隙が設けられ、そして、
前記試料製造装置によって、前記針(71)の上端の方に前記PCR試料が分配されて、前記キュベット(5)がその下端(73)から詰められる
ことを特徴とする試料製造装置。
【請求項12】
PCR増幅分析機械(2)と、試料製造装置(1)と、を含むPCR分析システムであって、
前記試料製造装置(1)が、前記PCR増幅分析機械(2)上に取り外し自在に取り付けられ、
前記試料製造装置(1)には、その装置の中にある構成部品(30、31、32、42)を動かす駆動装置(3、36、40)が設けられ、そして、
前記PCR増幅分析機械には、前記ドライブ装置(3、36、40)に取り外し自在に取り付けられて、前記試料製造装置における前記構成部品(30、31、32、42)を動かす動力を提供するモータ装置(2’)が設けられている
ことを特徴とするPCR分析システム。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2010−519924(P2010−519924A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−552260(P2009−552260)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際出願番号】PCT/GB2008/000662
【国際公開番号】WO2008/107639
【国際公開日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(507235789)スミスズ ディテクション−ワトフォード リミテッド (25)
【Fターム(参考)】