説明

試料載置場所読取装置及びコンピュータプログラム

【課題】入出庫作業時に試料容器と、該試料容器が配されるべき区画とを正確に対応付ける作業を行わずとも、試料容器の載置場所を管理することができる試料保管装置を提供する。
【解決手段】複数の試料容器4は各試料容器を識別するための試料識別部41を上側に備える。そして、仕切り32で区画されている収納筺3に載置された複数の試料容器の載置場所を読み取る試料載置場所読取装置に、収納筺及び該収納筺に載置された複数の試料容器を上側から撮像する撮像部23と、該撮像部にて撮像された画像に含まれる試料識別部を判別することにより、前記複数の試料容器がそれぞれ載置されている区画を特定する特定部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仕切りで区画されている収納筺に載置された複数の試料容器の載置場所を読み取る試料載置場所読取装置及び試料載置場所読取装置を実現するためのコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
創薬研究や化学物質の分析等においては、試料を溶解した溶液を封入したバイアルビン、テストチューブ等の試料容器を、仕切りで区画されたトレイに並び立てて保管を行っている。そして、それぞれの試料容器にどのような試料を封入したのかを識別するために、試料容器にバーコードを貼付し、バーコードをハンディタイプのコードリーダを使って読み取り、管理することが行われている。
【0003】
一方、特許文献1には、トレイに保管すべき試料容器の配置を調剤指示に応じて決定する配置決定手段と、トレイの内底に敷ける印刷用紙に試料容器の識別コードを前記配置に対応させてカラー印刷する印刷手段と、試料容器が配されたトレイを上から撮像する撮像手段と、撮像して得た画像から識別コードを読み取り、読取の可否に応じて試料の使用の有無を判別する読取プログラム及び判定手段を備えた薬品管理システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−24663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に係る薬品管理システムにおいては、トレイの各区画に配置すべき試料容器を予め決定して管理する構成であるため、入出庫作業時に試料容器と、該試料容器が配されるべき区画とを正確に対応付ける必要があり、試料容器の保管作業が繁雑で非効率であるという問題があった。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、入出庫作業時に試料容器と、該試料容器が配されるべき区画とを正確に対応付ける作業を行わずとも、試料容器の載置場所を読み取り、管理することができる試料載置場所読取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る試料載置場所読取装置は、仕切りで区画されている収納筺に載置された複数の試料容器の載置場所を読み取る試料載置場所読取装置において、複数の試料容器は各試料容器を識別するための試料識別部を上側に有し、前記収納筺及び該収納筺に載置された複数の試料容器を上側から撮像する撮像部と、該撮像部にて撮像された画像に含まれる試料識別部を判別することにより、前記複数の試料容器がそれぞれ載置されている区画を特定する区画特定部とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る試料載置場所読取装置は、前記収納筺は、試料容器が配されていないことを示す空所識別部を各区画の上側に有し、前記撮像部にて撮像された画像に含まれる空所識別部を判別することにより、前記複数の試料容器が載置されていない区画を特定する空所特定部を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る試料載置場所読取装置は、試料容器は、該試料容器が前記区画に載置されていることを示す特徴部分を有し、前記空所特定部は、前記撮像部にて撮像された画像に含まれる試料容器の特徴部分を判別することにより、空所で無い区画を特定するようにしてあり、前記区画特定部は、空所では無い区画の画像に含まれる試料識別部を再度判別するようにしてあることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る試料載置場所読取装置は、前記収納筺及び該収納筺に載置された複数の試料容器を上側から照明する照明部を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る試料載置場所読取装置は、前記撮像部による撮像条件を変更する撮像条件変更部を備え、前記撮像部は、異なる複数の撮像条件下で前記収納筺及び試料容器を撮像するようにしてあり、前記区画特定部は、異なる複数の撮像条件下で撮像された画像に基づいて、前記複数の試料容器が載置されている区画を特定するようにしてあることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る試料載置場所読取装置は、前記撮像部にて撮像された各区画の画像上に、該区画に載置されている試料容器の試料識別部に対応する化学物質名又は化学式の画像を重畳させる重畳部を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る試料載置場所読取装置は、前記区画特定部は、前記撮像部にて撮像された画像における各区画に、前記試料識別部の中心部が含まれているか否かを判定する判定部を備え、一の区画に前記試料識別部の中心部が含まれている場合、該試料識別部に対応する試料容器が載置されている場所として該一の区画を特定するようにしてあることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る試料載置場所読取装置は、前記収納筺は、前記撮像部にて撮像された画像における該収納筺の位置及び方向を特定するための位置特定部を上側に有し、所定の位置及び向きに配された前記収納筺を撮像して得られる画像における各区画の位置を示した区画位置情報を記憶する記憶部と、前記撮像部にて撮像された画像に含まれる位置特定部を判別することにより、前記収納筺が配された位置及び向きを特定する収納筺位置特定部とを備え、前記区画特定部は、前記収納筺位置特定部にて特定された位置及び方向、前記記憶部が記憶する区画位置情報、並びに前記撮像部にて撮像された画像における試料識別部の位置に基づいて、前記複数の試料容器が載置されている区画を特定するようにしてあることを特徴とする。
【0015】
本発明に係るコンピュータプログラムは、複数の試料容器は各試料容器を識別するための試料識別部を上側に有しており、仕切りで区画されている収納筺に載置された複数の試料容器の載置場所をコンピュータに特定させるコンピュータプログラムにおいて、コンピュータを、前記収納筺及び該収納筺に載置された複数の試料容器を上側から撮像して得られた画像に含まれる試料識別部を判別することにより、前記複数の試料容器がそれぞれ載置されている区画を特定する区画特定部として機能させることを特徴とする。
【0016】
本発明にあっては、収納筺及び該収納筺に載置された複数の試料容器を上側から撮像する。試料容器は各試料容器を識別するための試料識別部を上側に有するため、撮像された画像に含まれる試料識別部を判別することによって、複数の試料容器がそれぞれ載置されている区画を特定することが可能である。
【0017】
本発明にあっては、収納筺は、試料容器が配されていないことを示す空所識別部を各区画の上側に有するため、撮像部にて撮像された画像に含まれる空所識別部を判別することにより、複数の試料容器が載置されていない区画を特定することが可能である。区画に試料容器が載置された場合、空所識別部が試料容器によって隠れ、試料識別部が撮像されるようになる。
【0018】
本発明にあっては、試料容器の特徴部分を判別することによって、空所では無い区画を特定することが可能である。撮像条件によっては、試料識別部の判別に失敗することがあり、この場合、空所識別部の判別が行われる。しかし、試料識別部の判別に失敗した区画には空所識別部の画像が含まれていない。この場合、空所識別部の読み取りを何度も試みるよりも、試料容器の特徴部分を読み取って、空所では無い区画であると判定する方が処理時間が短縮される。
【0019】
本発明にあっては、収納筺及び該収納筺に載置された複数の試料容器を上側から照明することにより、試料容器が載置されている区画の特定精度又は特定処理速度が向上する。
【0020】
本発明にあっては、異なる複数の撮像条件下で収納筺及び該収納筺に載置された複数の試料容器を撮像し、複数の画像に基づいて試料容器が載置されている区画を特定する。従って、試料容器が載置されている区画の特定精度、特定に要する処理時間を短縮することが可能である。つまり、試料容器が載置されている区画の特定が困難な1枚の画像のみを用い、長い時間を掛けて試料識別部を判別するよりも、区画毎に複数の画像の中から試料識別部の判別が短時間で可能な画像を選択して試料識別部を判別した方が短時間で試料容器が載置されている区画を特定することが可能である。なお、本発明には一の区画を特定する場合に一の画像から試料識別部を判別し、他の区画を特定する場合、他の画像から試料識別部を判別する処理も含まれる。
【0021】
本発明にあっては、収納筺及び該収納筺に載置されている試料容器の画像上に、各試料容器に収容されている試料の化学物質名又は化学式の画像を重畳させる。従って、試料載置場所読取装置の使用者は、収納筺に載置されている試料容器の内容物を容易に把握することが可能である。
【0022】
本発明にあっては、長尺の容器を収納筺に立てた場合、撮像して得た画像における試料容器の試料識別部の画像が、該試料容器が配されている区画からはみ出ることがあるが、試料識別部の中心部と、区画との位置関係から試料容器の載置場所を特定することにより、載置場所を誤り無く特定することが可能である。
【0023】
本発明にあっては、撮像部に対する収納筺の位置及び向きに拘わらず、試料容器の載置場所を特定することが可能である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、入出庫作業時に試料容器と、該試料容器が配されるべき区画とを正確に対応付ける作業を行わずとも、試料容器の載置場所を管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施の形態に係る試料管理装置の一構成例を示した模式図である。
【図2】トレイの一構成例を示した平面図である。
【図3】管理PCの内部構成を示したブロック図である。
【図4】試料情報のデータレイアウト構成を概念的に示した説明図である。
【図5】管理PCの機能ブロック図である。
【図6】試料容器の載置場所を特定する方法を概念的に示した説明図である。
【図7】トレイ及び試料容器の画像を表示部に表示する方法を概念的に示した説明図である。
【図8】変形例に係る空所識別部の一例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
図1は、本実施の形態に係る試料管理装置(試料載置場所読取装置)の一構成例を示した模式図である。本発明の実施の形態に係る試料管理装置は、仕切り32で区画されているトレイ3と、トレイ3に載置された複数の試料容器4と、トレイ3を撮像する撮像装置2と、試料の載置場所を管理する管理PC(Personal computer)1と、コードリーダ5と、位置決めガイド6とを備える。
【0027】
図2は、トレイ3の一構成例を示した平面図である。トレイ3は、浅底の平皿状をなし、略矩形の底部30及び該底部30の周縁に設けられた側壁31を有する。また、トレイ3は、複数の試料容器4が各別に載置されるよう、仕切り32で縦横に区画されている。トレイ3の形状及び仕切り方は特に限定されず、ハニカム状にトレイ3を仕切っても良いし、均等な格子状にトレイ3を仕切っても良い。トレイ3を丸型に形成しても良い。
更に、試料容器4が載置されていないことを示す空所識別コード部(空所識別部)34が各区画の上面に貼付されている。空所識別コード部34は、例えばデータマトリクス、QRコード等の二次元コードが印刷されたシールであり、各区画に貼付されている空所識別コード部34は同一のもので良い。なお、二次元コードは空所識別コード部34の一例であり、ある区画が空所であることを示すことができれば、その態様は限定されない。
更にまた、トレイ3の上側の適宜箇所には、後述するように撮像部23にて撮像された画像におけるトレイ3の位置及び方向を特定するための位置特定コード部(位置特定部)35が設けられている。位置特定コード部35は、例えば、トレイ3の略中央部に形成された異方性を有する十字印である。なお、十字印は、位置特定コード部35の一例であり、トレイ3の位置及び方向を特定することが可能であれば、その形態は特に限定されない。
更にまた、図1には一つのトレイ3のみを図示しているが、複数のトレイ3を用いて試料容器4を保管する場合、複数の各トレイ3を識別する必要がある。そこで、トレイ3の側壁31には、複数の各トレイ3を識別するためのトレイ識別コード部33が貼付されている。トレイ識別コード部33は、例えばバーコードである。なお、トレイ識別コード部33を二次元コード、その他のコードで構成しても良い。また、複数のトレイ3は、図示しない収納棚に収納されている。
【0028】
試料容器4は、創薬研究や化学物質の分析等を行う際に、試料を溶解した溶液を封入するエッペンチューブ、マイクロチューブ、バイアルビン等である。試料容器4は、有底円筒状の本体部と、本体部の上側の開口を封止する蓋体とで構成されている。本体部の底部30の形状は平坦である必要は無く、下方へ尖った形状であっても良い。蓋体は上面を有しており、該蓋体の上面には、複数の各試料容器4を識別するための試料識別コード部(試料識別部)41が貼付されている。試料識別コード部41は、例えばデータマトリクス、QRコード等の二次元コードが印刷されたシールである。なお、試料識別コード部41は、複数の試料容器4を識別することができれば十分であるが、試料容器4に封入されている試料の化学物質名、化学式等の情報を含ませても良い。以下の説明では、試料識別コード部に、各試料容器4を識別するための情報に加えて化学物質名、化学式等の情報が含まれているものとする。
【0029】
撮像装置2は、長尺の略直方体をなす基台21を有する。該基台21の上面の適宜箇所には、屈曲が可能な腕部22が設けられている。腕部22の先端部には、下方を撮像できるような姿勢で撮像部23及び照明部24を有するヘッドが取り付けられている。撮像部23は、例えばトレイ3及び該トレイ3に載置された複数の試料容器4を上側から撮像するCCDカメラであり、ピント調整機能、コントラスト調整機能等を有する。照明部24は、例えば、トレイ3及び該トレイ3に載置された複数の試料容器4を上側から照明するLEDランプであり、LEDの明るさを調整する調光回路を有する。撮像装置2は、図示しない通信インタフェースを有しており、該通信インタフェースを介して管理PC1と有線ケーブルで接続されている。撮像装置2は、管理PC1から送信された制御データに基づいて、撮像部23のピント調整。コントラスト調整、照明部24の明るさ調整などを行う。撮像条件の調整後、撮像装置2は、トレイ3を撮像し、撮像した画像のデータを管理PC1へ送信する。
【0030】
図3は、管理PC1の内部構成を示したブロック図である。
管理PC1は、該管理PC1の各構成部の動作を制御するCPU11を備えたコンピュータである。CPU11には、バスを介してROM12、RAM13、入力部14、表示部15、第1インタフェース16、第2インタフェース17、記憶部18が接続されている。
【0031】
ROM12は、コンピュータの動作に必要な制御プログラムを記憶したマスクROM、EEPROM等の不揮発性メモリである。
RAM13は、CPU11の演算処理を実行する際に生ずる各種データを一時記憶するDRAM、SRAM等の揮発性メモリである。
入力部14は、管理PC1を操作するためのキーボード、マウス等で構成されており、試料容器4の入出庫、廃棄などの指示を受け付ける。
表示部15は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、CRT等で構成されており、撮像部23にて撮像された画像等を表示する。
第1インタフェース16は、撮像装置2の動作を制御するための制御データを撮像装置2へ送信し、撮像部23にて撮像された画像のデータを受信するインタフェースであり、各種データの送受信はCPU11によって制御される。
第2インタフェース17は、コードリーダ5によって読み取った情報を受信するインタフェースであり、各種データの送受信はCPU11によって制御される。
記憶部18は、コンピュータを、試料管理装置を構成する管理PC1として機能させるためのコンピュータプログラム19aを記憶するハードディスク、不揮発性半導体メモリ等である。また、記憶部18は、試料容器4の載置場所、つまり、試料が載置されているトレイ3及び区画を示した試料情報18aと、複数種類の各トレイ3がどのように区画されているのかを示した区画位置情報18bと、複数のトレイ3それぞれが収納されている棚の場所を示したトレイ棚情報18cとを記憶する。試料情報18a及び区画位置情報18bの詳細は後述する。
なお、コンピュータプログラム19aは、CPU11が図示しない外部記憶装置の動作を制御することによって、該コンピュータプログラム19aをコンピュータ読み取り可能に記録したCD(Compact Disc)−ROM、DVD(Digital Versatile Disc)−ROM、BD(Blu-ray Disc)等の記録媒体19から、コンピュータプログラム19aを読み出し、記憶部18に記憶させる。また、言うまでもなく、光ディスク及び光ディスクドライブは、記録媒体19及び外部記憶装置の一例であり、フレキシブルディスク、磁気光ディスク、外付けハードディスク、半導体メモリ等にコンピュータプログラム19aをコンピュータ読み取り可能に記録し、前記外部記憶装置にて読み出すように構成しても良い。また、通信網に接続されている図示しない外部コンピュータから本発明に係るコンピュータプログラム19aをダウンロードするようにしても良い。
【0032】
コードリーダ5は、トレイ3の側壁31に貼付されたトレイ識別コード部33のバーコードを読み取り、管理PC1へ出力する。管理PC1のCPU11は、第2インタフェース17を介してトレイ識別コード部33を受信し、撮像部23の下方に配置されたトレイ3を特定する。
【0033】
位置決めガイド6は、トレイ3の側壁31と当接することによって撮像部23に対するトレイ3の位置決めを行う部材である。例えば、位置決めガイド6は、長尺の部材であり、その長手方向が基台21の長手方向に対して略直角であり、基台21の設置面と略並行になるように基台21に接続されている。試料保管装置の使用者は、トレイ3の隣り合う2つの側壁31をそれぞれ基台21と位置決めガイド6に当接させることによって、撮像部23に対するトレイ3の位置決めを行うことができる。
【0034】
図4は、試料情報18aのデータレイアウト構成を概念的に示した説明図である。試料情報18aは、複数の列(フィールド)、例えば「登録日時」、「トレイ識別コード」、「載置位置」、「試料識別コード」、「化学物質名」、「化学式」、「入出庫状況」及び「廃棄期限」列等から構成されており、各行(レコード)は、各列に対応した情報を有する。
「登録日時」列は、新たに試料容器4が初めてトレイ3に載置されたときの日時を格納する。「トレイ識別コード」列は、試料容器4が載置されているトレイ3に貼付されているトレイ識別コード部33から読み取られたトレイ識別コードを格納する。「載置位置」列は、試料容器4が載置されている区画を特定する記号を格納する。図4に示した例ではトレイの区画は、アルファベット1文字と、数字1文字の組み合わせで特定されている。「試料識別コード」列は、試料容器4に貼付された試料識別コード部41から読み取られた情報を格納する。「化学物質名」列は、試料容器4に封入された試料の内容を示した化学物質名を格納する。「化学式」列は、試料容器4に封入された試料の内容を表示した化学式を格納する。「入出庫状況」列は、該当する試料容器4がトレイ3に載置されて収納棚に収納されている入庫状態か、トレイ3から試料容器4が持ち出された出庫状態かを示す情報を格納する。「廃棄期限」列は、試料容器4に封入された試料の廃棄期限が登録されている。
【0035】
区画位置情報18bは、複数の各トレイ3がどのように区画されているかを示す情報である。例えば、区画位置情報18bは、所定の位置及び向きに配されたトレイ3を撮像して得られる画像における各区画の位置を座標で示した情報である。区画位置情報18bは、トレイ3を導入した際、使用者が入力部14を用いて区画の情報を入力し、記憶部18に記憶させる。
【0036】
トレイ棚情報18cは、例えば、トレイ識別コードと、該トレイ識別コードが付されたトレイ3が収納されている収納棚における棚の位置を示した情報とを対応付けた情報である。トレイ棚情報18cは、新たにトレイ3を導入した際、使用者が入力部14を用いて該トレイ3を収納する棚の位置を入力し、記憶部18に記憶させる。
【0037】
次に、管理PC1のCPU11によって実現される機能を、試料管理装置の使用方法と合わせて説明する。
図5は、管理PC1の機能ブロック図である。管理PC1のCPU11は、記憶部18が記憶するコンピュータプログラム19aをRAMに読み出して実行することによって、試料容器4が載置されているトレイ3及び区画を特定し、更に試料容器4の載置場所を示した試料情報18aを記憶部18に記憶させることにより、試料の入出庫及び廃棄を管理する処理を行う特定部110として機能する。更に特定部110は、トレイ3の配置位置を特定するトレイ位置特定部111、試料容器4が載置されている区画を特定する区画特定部112と、試料容器4が載置されていない区画を特定する空所特定部113と、試料容器4が載置されている区画の特定に失敗した場合にトレイ3の撮像条件を変更する撮像条件変更部114と、トレイ3の各区画の画像上に試料容器4の内容物を示す化学物質名及び化学式を重畳させる重畳処理部115と、特定した区画の情報を用いて試料容器4の入出庫情報を登録する入出庫登録処理部116として機能する。
【0038】
試料管理装置の使用者は、トレイ3を撮像装置2の下方に配置し、トレイ3の隣り合う2つの側壁31を基台21及び位置決めガイド6に当接させることによってトレイ3の位置決めを行う。そして、使用者が管理PC1の入力部14を用いて試料の入出庫を指示する操作を行った場合、特定部110の各構成部が以下に説明する入出庫に係る処理を実行する。
【0039】
まず、トレイ位置特定部111は、照明部24を点灯させ、撮像装置2のピント及びコントラストを調整し、撮像部23にトレイ3を撮像させる。そして、トレイ位置特定部111は、撮像部23にて撮像して得た画像を取得し、該画像に含まれる位置特定コード部35を判別する。位置特定コード部35は、例えばパターンマッチング処理によって判別される。ついで、トレイ位置特定部111は、撮像された画像における位置特定コード部35の位置及び方向に基づいて、トレイ3が配された位置及び向きを特定する。
【0040】
図6は、試料容器4の載置場所を特定する方法を概念的に示した説明図である。
区画特定部112は、撮像部23にて撮像された画像に含まれる試料識別コード部41を判別することにより、複数の試料容器4がそれぞれ載置されている区画を特定する。具体的には、区画特定部112は、トレイ位置特定部111によって特定されたトレイ3の位置及び向きの情報、並びに区画位置情報18bに基づいて、トレイ3の各区画と対応する画像上の領域を特定する。そして、区画特定部112は、撮像部23にて撮像された画像における各区画に、試料識別コード部41の中心部が含まれているか否かを判定する。一の区画に前記試料識別コード部41の中心部が含まれている場合、該試料識別コード部41に対応する試料容器4が載置されている場所として該一の区画を特定するようにしてある。図6に示すように、トレイ3の端側にある区画に載置された試料容器4は斜めから撮像されるため、試料容器4の蓋体に貼付された試料識別コード部41の画像が区画の画像からはみ出てしまう。従って、試料識別コード部41の頂点又は試料識別コード部41の全体が区画に収まっているか否かを判定すると、試料容器4の載置場所を誤判定するおそれがある。このため、試料識別コード部41の略中央部が区画に収まっているか否かを判定することによって、試料容器4の載置場所を判定するようにしてある。同様の処理を全ての区画について実行する。なお、試料識別コード部41の読み取りの処理を行う時間は所定時間に制限されており、試料識別コード部41の読み取りに失敗した場合、後述するように空所識別コード部34を判別する処理を実行する。
【0041】
次いで、空所特定部113は、撮像部23にて撮像された画像に含まれる空所識別コード部34を判別することにより、試料容器4が載置されていない区画を特定する。
【0042】
撮像条件変更部114は、区画特定部112及び空所特定部113の処理によって、試料識別コード部41及び空所識別コード部34のいずれも判別できなかった区画が存在しているか否かを判定し、試料識別コード部41及び空所識別コード部34のいずれも判別できなかった区画が存在していると判定した場合、撮像条件の変更を行い、異なる複数の撮像条件下でトレイ3及び試料容器4を撮像装置2に撮像させ、区画特定部112及び空所特定部113に再度、試料識別コード部41又は空所識別コード部34の判別を実行させる。撮像条件としては、例えば、照明部24の明るさ、撮像部23のピント及びコントラストなどを変更する。撮像条件を変更する場合、予め実験的に定められた良好な所定撮像条件から開始し、始めは撮像条件の変更幅を大きく、徐々に変更条件の変更幅を小さくしながら前記処理撮像条件に近づけていくように撮像条件を変更すると良い。例えば、照明部24の明るさが256階調で、所定撮像条件での照明部24の階調値が128である場合、始めは階調値128から開始し、次いで、階調値192、64、160、96、144、122の順で明るさを変更すると良い。コントラスト、その他の撮像条件についても同様である。
【0043】
図7は、トレイ3及び試料容器4の画像を表示部15に表示する方法を概念的に示した説明図である。
重畳処理部115は、各区画に対応する試料識別コード部41と、図4に示した試料情報18aとに基づいて、各区画に載置された試料容器4に封入されている試料の化学物質名及び化学式を特定し、撮像部23にて撮像された各区画の画像70上に、該区画に載置されている試料容器4の試料識別コード部41に対応する化学物質名又は化学式の画像71、72を重畳させる。そして、重畳処理部115は、化学物質名及び化学式が重畳されたトレイ3の画像を表示部15に表示させる。
試料管理装置の使用者は、画面に表示されたトレイ3の画像、化学物質名又は化学式の画像71、72などを用いて所望の試料容器4を探し当てることができる。
【0044】
入出庫登録処理部116は、上述の処理で特定されたトレイ識別コード部33と、載置位置、即ち試料容器4が載置されている区画を示した情報と、試料識別コード部41とを対応付けて記憶部18に記憶させる。また、試料識別コード部41に含まれる化学物質名及び化学式を読み取り、読み取った各情報も、試料識別コード部41に対応付けて記憶部18に記憶させる。
なお、試料容器4を廃棄する場合、試料容器4の管理内容を確実にするため、コードリーダ5を用いて廃棄する試料容器4の試料識別コード部41を読み取り、廃棄の指示を入力部14にて受け付けた場合、試料情報18aから該試料識別コード部41の情報を記憶部18から削除するように構成しても良い。もちろん、廃棄する試料容器4を並べたトレイ3を試料管理装置に撮像させ、複数の試料容器4の情報を一括して削除するように構成することも可能である。
次に、試料容器4の新規入庫登録手順、出庫手順、入庫手順、廃棄手順を具体的に説明する。また、棚卸しの方法を説明する。
【0045】
<新規入庫登録手順>
使用者は、新規に入庫する試料容器4が載置されるトレイ3を収納棚から取り出し、コードリーダ5を用いて、トレイ識別コード部33を管理PC1に読み取らせる。管理PC1は、使用者の操作に従ってコードリーダ5にてトレイ識別コード部33の情報を読み出し、読み出した該情報に基づいて、区画位置情報18bから、トレイ3がどのように区画されているのかを示した情報を読み出す。そして、使用者は、入力部14を用いて新規入庫登録を指定する。
次いで、使用者は、新規に入庫する試料容器4をトレイ3の任意の区画に載置し、トレイ3を撮像装置2の下方に配置する。そして、新規の試料容器4が載置されたトレイ3を撮像装置2に撮像させる。管理PC1は、使用者の操作に従って、トレイ3を撮像し、トレイ3の各区画と対応する画像上の領域を特定する。そして、管理PC1は、各区画に載置されている試料容器4の試料識別コード部41又は空所識別コード部34を読み取ることによって、複数の試料容器4それぞれが格納された区画を特定する。管理PC1は、未登録の試料識別コードに関するレコードを試料情報18aに追加登録する。未登録の試料識別コードに関するレコードとしては、登録を行った登録日時、最初に読み出したトレイ識別コード、試料容器4が載置されている区画を示した載置位置、試料識別コード、化学物質名、化学式、入出庫状況、廃棄期限などを登録する。なお、新規登録時の入庫情報は、入庫状態であることを示している。
【0046】
<出庫手順>
使用者は、必要な試料が封入されている試料容器4の試料識別コードを、入力部14を用いて管理PC1に入力し、試料容器4の検索を指示する。管理PC1は、入力部14にて受け付けた試料識別コードに基づいて、該当する試料容器4が載置されているトレイ3のトレイ識別コードを試料情報18aから検索する。そして、管理PC1は、トレイ識別コードに基づいて、トレイ棚情報18cから該当する試料容器4が載置されているトレイ3の収納場所を検索し、検索結果を表示部15に表示する。また、管理PC1は、該当するトレイ3が収納されている棚の位置に加えて、トレイ3内のどの区画に試料容器4が配置されているのかを表示する。例えば、管理PC1は、入力部14にて受け付けた試料識別コードに基づいて、試料情報18aから、使用者が所望する試料容器4が載置されている区画を特定する。また、管理PC1は、トレイ識別コードに基づいて、区画位置情報18bから、該当するトレイ3がどのように区画されているかを示す情報を読み出す。そして、管理PC1は、トレイ3を上側から見た画像と、所望の試料容器4が載置されている区画を指示する画像とを重畳させて表示部15に表示する。
使用者は、このようにして表示部15に表示された検索結果を確認し、所望の試料容器4が載置されているトレイ3を収納棚から取り出す。なお、使用者がトレイ3の収納場所を記憶している場合、トレイ3が収納されている棚の位置を検索せずに、直接収納棚からトレイ3を取り出しても良い。
【0047】
次に、使用者は、所望の試料容器4をトレイ3から取り出す。なお、試料識別コードを管理PC1に入力せずに直接、収納棚からトレイ3を取り出したが、トレイ3内のどの区画に試料容器4が載置されているのかを確認したいような場合、使用者は、管理PC1にトレイ3内に載置されている試料容器4の内容を表示部15に表示させることもできる。具体的には、使用者はコードリーダ5を用いて、トレイ識別コード部33を管理PC1に読み取らせ、トレイ3を撮像装置2の下方に配置する。管理PC1は、使用者の操作に従ってトレイ3を撮像し、トレイ3の映像を表示部15に表示させる。そして、管理PC1は、トレイ3の各区画に載置されている試料容器4の情報を試料情報18aから読み出し、読み出した化学物質名及び化学式などを図7に示すように表示部15に重畳表示させる。
【0048】
次いで、使用者は、コードリーダ5を用いて試料容器4を取り出したトレイ3のトレイ3識別コードを管理PC1に読み取らせ、トレイ3を撮像装置2の下方に配置し、出庫の指示を入力部14に入力する。管理PC1は、使用者の操作に従ってトレイ3を撮像し、トレイ3の各区画に載置されている試料容器4を特定する。一方、管理PC1は、試料情報18aから、当該トレイ3に載置されていた試料容器4を特定し、特定された試料容器4の内、現在トレイ3に載置されていない試料容器4を出庫された試料容器4として特定する。そして、管理PC1は、該試料容器4が出庫されていることを示す情報を、該試料容器4の試料識別コードに対応付けて登録する。また、各試料容器4の載置場所が変更されているものについては、新たな載置位置を試料情報18aに登録する。このように出庫処理を終えた後、使用者はトレイ3を収納棚の所定位置に戻す。
【0049】
<入庫手順>
使用者は、トレイ3に戻す試料容器4の試料識別コードを、入力部14を用いて管理PC1に入力し、試料容器4が載置されるべきトレイ3の検索を指示する。管理PC1は、入力部14にて受け付けた試料識別コードに基づいて、該当する試料容器4が載置されるべきトレイ3のトレイ識別コードを試料情報18aから検索する。そして、管理PC1は、トレイ識別コードに基づいて、トレイ棚情報18cから該当する試料容器4が載置されているトレイ3の収納場所を検索し、検索結果を表示部15に表示する。
使用者は、このようにして表示部15に表示された検索結果を確認し、試料容器4が載置されるべきトレイ3を収納棚から取り出す。なお、使用者がトレイ3の収納場所を記憶している場合、トレイ3が収納されている棚の位置を検索せずに、直接収納棚からトレイ3を取り出しても良い。
【0050】
次に、使用者は、試料容器4をトレイ3の任意の区画に載置する。そして、使用者は、コードリーダ5を用いて試料容器4を載置したトレイ3のトレイ3識別コードを管理PC1に読み取らせ、トレイ3を撮像装置2の下方に配置し、入庫の指示を入力部14に入力する。管理PC1は、使用者の操作に従ってトレイ3を撮像し、トレイ3の各区画に載置されている試料容器4を特定する。一方、管理PC1は、試料情報18aから、当該トレイ3に載置されていた試料容器4を特定し、特定された試料容器4の内、現在トレイ3に載置されている試料容器4を入庫された試料容器4として特定する。そして、管理PC1は、該試料容器4が入庫されたことを示す情報を、該試料容器4の試料識別コードに対応付けて登録する。また、各試料容器4の載置場所が変更されているものについては、新たな載置位置を試料情報18aに登録する。このように入庫処理を終えた後、使用者はトレイ3を収納棚の所定位置に戻す。
【0051】
<廃棄手順>
使用者は、廃棄する試料容器4が載置されるトレイ3を収納棚から取り出し、コードリーダ5を用いて、トレイ識別コード部33を読み管理PC1に読み取らせる。管理PC1は、使用者の操作に従ってコードリーダ5にてトレイ識別コード部33の情報を読み出し、読み出した該情報に基づいて、区画位置情報18bから、トレイ3がどのように区画されているのかを示した情報を読み出す。そして、使用者は、入力部14を用いて廃棄を指定する。
次いで、使用者は、廃棄する試料容器4をトレイ3から取り出し、トレイ3を撮像装置2の下方に配置する。そして、試料容器4が取り出されたトレイ3を撮像装置2に撮像させる。管理PC1は、使用者の操作に従って、トレイ3を撮像し、トレイ3の各区画と対応する画像上の領域を特定する。そして、管理PC1は、各区画に載置されている試料容器4の試料識別コード部41又は空所識別コード部34を読み取ることによって、複数の試料容器4それぞれが格納された区画を特定する。一方、管理PC1は、試料情報18aから、当該トレイ3に載置されていた試料容器4を特定し、特定された試料容器4の内、現在トレイ3に載置されていない試料容器4を廃棄対象の試料容器4として特定する。そして、管理PC1は、廃棄対象として特定された試料容器4の試料識別コードに関するレコードを試料情報18aから削除する。
【0052】
<棚卸し>
使用者は、収納棚に収納されているトレイ3を取り出し、コードリーダ5を用いて、トレイ識別コード部33を管理PC1に読み取らせる。管理PC1は、使用者の操作に従ってコードリーダ5にてトレイ識別コード部33の情報を読み出し、読み出した該情報に基づいて、区画位置情報18bから、トレイ3がどのように区画されているのかを示した情報を読み出す。
そして、使用者は、入力部14を用いて棚卸しを指定する。次いで、使用者は、トレイ3を撮像装置2の下方に配置し、トレイ3を撮像装置2に撮像させる。管理PC1は、使用者の操作に従って、トレイ3を撮像し、トレイ3の各区画と対応する画像上の領域を特定する。そして、管理PC1は、各区画に載置されている試料容器4の試料識別コード部41又は空所識別コード部34を読み取ることによって、複数の試料容器4夫々が格納された区画を特定する。管理PC1は、必要に応じてトレイ3の画像と、所望の試料容器4が載置されている区画を指示する画像とを重畳させて表示部15に表示し、試料情報18aの内容を更新する。
このように、本実施の形態によれば、高効率で試料容器4の棚卸しを行うことができる。
【0053】
本実施の形態に係る試料管理装置によれば、試料容器4を入出庫する際、定められた区画に試料を対応付けて載置されていなくても、トレイ3の各区画にどのような試料容器4が載置されているか、空所であるかを特定し、記憶することができる。従って、試料管理装置の使用者は、入出庫作業時に試料容器4と、該試料容器4が配されるべき区画とを正確に対応付ける作業を行わずとも、試料管理装置に試料容器4の載置場所を管理することができる。例えば、使用者は、出庫した試料容器4を元の区画に載置しなくても、試料管理装置は、試料容器4の載置場所が変更されたことを認識して記憶部18に各試料容器4がどの区画に載置されているのかを示した試料情報18aを更新することができる。また、試料容器4の載置場所の誤り、コードの読み取り忘れによって、試料容器4が紛失するミスを軽減することができる。
【0054】
また、試料容器4を入出庫する際、試料容器4に貼付された試料識別コード部41を各別にコードリーダ5で読み取る必要が無く、トレイ3全体を試料管理装置に撮像させるのみで、各試料容器4の載置場所を読み取り、管理させることができる。
【0055】
更に、本実施の形態では、空所識別コード部34を用いて試料容器4が載置されていない区画を特定するように構成してあるため、試料容器4の載置場所の特定を速やかに行うことができる。一般的に試料識別コード部41が無いことを判別するためには、コードの読み取りミスを避けるためにあらゆる方向から画像解析を実行する必要があり、非常に長い処理時間を要する。ところが、空所識別コード部34をトレイ3の各区画に貼付しておけば、短時間で空所を判別することができる。
なお、本実施の形態では、試料容器4を上側から撮像するように構成してあるため、試料容器4を各区画に載置することで空所識別コード部34を覆い隠すことができ、上述の効果を実現できる。
【0056】
更にまた、本実施の形態では、試料容器4の蓋体に貼付された試料識別コード部41を撮像する構成であるため、試料識別コード部41を試料容器4の底部に貼付する場合に比べて、試料容器4の底部の形状に制約が無く、試料容器4の選択自由度を向上させることができる。
【0057】
なお、本実施の形態では、空所識別コード部34をトレイ3の底部30に貼付する例を説明したが、空所識別コード部34を貼付しないように試料管理装置を構成しても良い。
【0058】
また、本実施の形態では、トレイ識別コード部33を用いて各トレイを識別するように構成してあるが、トレイ3に載置されている複数の試料容器に貼付された試料識別コードを用いて該トレイ3の特徴量、つまり該トレイ3がどのような用途で用いられているかといった傾向を算出し、該特徴量を用いて複数のトレイ3を判別するように構成しても良い。例えば、試料容器4に貼付された試料識別コードに含まれる情報を要素としたベクトルを計算し、各トレイ3のベクトル量が互に近似している場合、同一のトレイ3と判別するようにすれば良い。
【0059】
更に、本実施の形態において外光がトレイ3に入射しないように遮光板を適宜箇所に設けても良い。
【0060】
更にまた、空所識別コード部34として二次元コードを例示したが、トレイ3を撮像した画像から各区画が空所であることを判別することができれば、これに限定されず、図形、記号、模様、色彩等であっても良い。同様に、試料識別コード部41として二次元コードを例示したが、トレイ3を撮像した画像から各試料容器を判別することができれば、これに限定されず、図形、記号、模様、色彩等であっても良い。
図8は、変形例に係る空所識別部134の一例を示した説明図である。図8に示すように、空所識別部134は、円弧と、丸状の点で構成されている。以下、主に空所特定部113の動作を説明する。管理PC1の空所特定部113は、区画特定部112による試料識別コード部41の読み取りに失敗した場合、円弧及び点からなる空所識別部134をトレイ103の画像から判別することによって、空所の区画を判別する。
ところで、ある区画に試料容器104が載置されているにも拘わらず、撮像条件が良好では無かったために、試料識別コード部41の読み取りに失敗している場合、該区画の空所識別部134は当然に読み取ることができず、空所識別部134の読み取りに時間を浪費してしまうことがある。そこで、空所特定部113は、空所識別部134の読み取りにも失敗した場合、前記区画の画像に試料容器104の特徴部分42、例えば試料容器104の輪郭に対応する円環の曲線が含まれているか否かを判別する。空所特定部113は、前記区画の画像に含まれる特徴部分42を判別した場合、該区画には試料容器104があると認識し、この区画に対する空所の特定処理を停止する。管理PC1の区画特定部112は、撮像条件変更部114によって撮像条件が変更された後、空所では無い区画であって、未だ試料識別コード部41が読み取られていない区画の画像から、再び、試料識別コード部41の読み取りを実行する。
このように構成することによって、試料容器104の載置場所をより高速に読み取ることができる。
【0061】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものでは無いと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味では無く、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0062】
1 管理PC
2 撮像装置
3 トレイ(収納筺)
4 試料容器
5 コードリーダ
6 位置決めガイド
11 CPU
14 入力部
15 表示部
16 第1インタフェース
17 第2インタフェース
18 記憶部
18a 試料情報
18b 区画位置情報
19 記録媒体
19a コンピュータプログラム
23 撮像部
24 照明部
32 仕切り
33 トレイ識別コード部
34 空所識別コード部(空所識別部)
35 位置特定コード部(位置特定部)
41 試料識別コード部(試料識別部)
42 特徴部分
110 特定部
111 トレイ位置特定部
112 区画特定部
113 空所特定部
114 撮像条件変更部
115 重畳処理部
116 入出庫登録処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
仕切りで区画されている収納筺に載置された複数の試料容器の載置場所を読み取る試料載置場所読取装置において、
複数の試料容器は各試料容器を識別するための試料識別部を上側に有し、
前記収納筺及び該収納筺に載置された複数の試料容器を上側から撮像する撮像部と、
該撮像部にて撮像された画像に含まれる試料識別部を判別することにより、前記複数の試料容器がそれぞれ載置されている区画を特定する区画特定部と
を備えることを特徴とする試料載置場所読取装置。
【請求項2】
前記収納筺は、
試料容器が配されていないことを示す空所識別部を各区画の上側に有し、
前記撮像部にて撮像された画像に含まれる空所識別部を判別することにより、前記複数の試料容器が載置されていない区画を特定する空所特定部を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の試料載置場所読取装置。
【請求項3】
試料容器は、
該試料容器が前記区画に載置されていることを示す特徴部分を有し、
前記空所特定部は、前記撮像部にて撮像された画像に含まれる試料容器の特徴部分を判別することにより、空所で無い区画を特定するようにしてあり、
前記区画特定部は、空所では無い区画の画像に含まれる試料識別部を再度判別するようにしてある
ことを特徴とする請求項2に記載の試料載置場所読取装置。
【請求項4】
前記収納筺及び該収納筺に載置された複数の試料容器を上側から照明する照明部を備える
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の試料載置場所読取装置。
【請求項5】
前記撮像部による撮像条件を変更する撮像条件変更部を備え、
前記撮像部は、
異なる複数の撮像条件下で前記収納筺及び試料容器を撮像するようにしてあり、
前記区画特定部は、
異なる複数の撮像条件下で撮像された画像に基づいて、前記複数の試料容器が載置されている区画を特定するようにしてある
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載の試料載置場所読取装置。
【請求項6】
前記撮像部にて撮像された各区画の画像上に、該区画に載置されている試料容器の試料識別部に対応する化学物質名又は化学式の画像を重畳させる重畳部を備える
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一つに記載の試料載置場所読取装置。
【請求項7】
前記区画特定部は、
前記撮像部にて撮像された画像における各区画に、前記試料識別部の中心部が含まれているか否かを判定する判定部を備え、
一の区画に前記試料識別部の中心部が含まれている場合、該試料識別部に対応する試料容器が載置されている場所として該一の区画を特定するようにしてある
ことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一つに記載の試料載置場所読取装置。
【請求項8】
前記収納筺は、前記撮像部にて撮像された画像における該収納筺の位置及び方向を特定するための位置特定部を上側に有し、
所定の位置及び向きに配された前記収納筺を撮像して得られる画像における各区画の位置を示した区画位置情報を記憶する記憶部と、
前記撮像部にて撮像された画像に含まれる位置特定部を判別することにより、前記収納筺が配された位置及び向きを特定する収納筺位置特定部と
を備え、
前記区画特定部は、
前記収納筺位置特定部にて特定された位置及び方向、前記記憶部が記憶する区画位置情報、並びに前記撮像部にて撮像された画像における試料識別部の位置に基づいて、前記複数の試料容器が載置されている区画を特定するようにしてある
ことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一つに記載の試料載置場所読取装置。
【請求項9】
複数の試料容器は各試料容器を識別するための試料識別部を上側に有しており、仕切りで区画されている収納筺に載置された複数の試料容器の載置場所をコンピュータに特定させるコンピュータプログラムにおいて、
コンピュータを、
前記収納筺及び該収納筺に載置された複数の試料容器を上側から撮像して得られた画像に含まれる試料識別部を判別することにより、前記複数の試料容器がそれぞれ載置されている区画を特定する区画特定部として機能させる
ことを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−11481(P2013−11481A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143260(P2011−143260)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【Fターム(参考)】