試薬の連続輸送用フルイディクスシステム
本発明は、混合又は相互汚染なく、反応チャンバー又はフローセルなどの共通容積へ異なった流体を方向付ける受動的フルイディクス回路を提供する。フルイディクス回路の接合部、結節点及び通路を通る流れの方向及び速度は、上流のバルブの状態(例えば、開放又は閉止)、回路の入口又は上流の貯蔵部での流体圧力差、流路抵抗などで制御される。共通出口又は接合部若しくは結節点での他の入口への選択されていない入口からの流体の自由拡散又は漏出を選択された入口の流体の流れで防ぎ、選択された入口の流体の流れの一部は、選択されていない流体の入口近くを通過し、廃物ポートを介してフルイディクス回路から流出する。これにより、漏出又は拡散による出口流れとの好ましくない混合に対して障壁が形成される。本発明は、pHに基づくDNAシークエンシング反応などの敏感な多段階反応を実行する装置で特に有利である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年5月29日出願の米国出願12/474,897号及び12/475,311号の一部継続出願である2010年5月24日出願の12/785,667号の継続出願であり、本出願は、これらの出願及び2009年12月31日出願の米国仮出願61/291,627号の優先権の恩典を主張する。これらすべての出願は、その全体を本明細書に援用する。
【背景技術】
【0002】
背景
多くの適用が、異なった流体の混合又は相互汚染を最小化するように多数の流体流れの規制を必要とする。このような適用は多段階の合成又は分析プロセスを含み、このプロセスは共通の容積中で実施されるとともに、分離貯蔵部からの流体を用いた試薬輸送の連続的サイクルを有し、例えばMarguliesなど、Nature、437巻376から380頁(2005年)(非特許文献1)、Merrifieldなど、米国特許第3,531,258号公報(特許文献1)、Caruthersなど、米国特許第5,132,418号公報(特許文献2)、Rothbergなど、米国特許出願公開第2009/0127589号公報(特許文献3)などで述べられている。フルイディクスシステムは、処理用共通チャンバーへの複数の試薬溶液の選択的切り替えに利用できるが、次のような様々な欠点を有し、これらの欠点に限定されない。すなわち、試薬を吸着又は保持可能な表面領域が大きく、物理的なサイズが大きいことによって小型のフルイディクス要素を用いることが難しい(例えば、上で引用のRothbergなど参照)。また、縁部及び/又は角部を含むアクセス可能な表面が少ないことで、連続的な試薬を完全に排出し、かつ除去することが難しいか、或いは非効率となる。そして、摩耗し得、製造及び組立コストが高くなり得る移動部が使用される(例えば、Hunkapillerなど、米国特許第4,558,845号公報(特許文献4)、Wittmann−Lieboldなど、米国特許第4,008,736号公報(特許文献5)、Farnsworthなど、米国特許第5,082,788号公報(特許文献6)、Garwoodなど、米国特許第5,313,984号公報(特許文献7))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】Merrifieldなど、米国特許第3,531,258号公報
【特許文献2】Caruthersなど、米国特許第5,132,418号公報
【特許文献3】Rothbergなど、米国特許出願公開第2009/0127589号公報
【特許文献4】Hunkapillerなど、米国特許第4,558,845号公報
【特許文献5】Wittmann−Lieboldなど、米国特許第4,008,736号公報
【特許文献6】Farnsworthなど、米国特許第5,082,788号公報
【特許文献7】Garwoodなど、米国特許第5,313,984号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Marguliesなど、Nature、437巻、376から380頁(2005年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記を鑑みて、複雑な合成又は分析プロセス用の共通容積への複数流体の流入を規制する、現状アプローチの欠点を克服した装置が利用可能になることが有益であろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、例えば反応チャンバー又はフローセルへの通路又は導管などの共通容積へ複数の流体を輸送する装置及び方法を対象とする。本発明は、多段階の分析プロセス又は合成プロセスでのこのような装置及び方法の適用も含む。多数の実施形態及び適用にて本発明を例示し、その実施形態及び適用の幾つかが以下の明細書のすべてに亘って要約されている。
【0007】
一態様では、本発明は、混合又は相互汚染せずに、反応チャンバー又はフローセルへの共通容積へ異なった流体を連続的に方向付ける受動的フルイディクス回路を提供する。本明細書で用いるように、このような連続的方向付けは、時に複数の流体の流れを「多重化する」と呼ばれる。フルイディクス回路の接合部、結節点及び通路を通る流れの方向及び速度は、上流のバルブの状態(例えば、開放又は閉止)、回路の入口又は上流の貯蔵部での流体圧力差、流路抵抗などで制御される。共通出口への又は接合部若しくは結節点での他の入口への選択されていない入口からの流体の自由拡散や漏出を選択された入口の流体の流れで防ぎ、選択された入口の流体の流れの一部は、選択されていない流体の入口近くを通過し、廃物ポートを介してフルイディクス回路から流出する。これにより、漏出や拡散による出口流れとの好ましくない混合に対して障壁が形成される。一態様では、選択された流体入口はフルイディクス結節点を通して層流流体を提供する。
【0008】
別の態様では、本発明は複数の流体流れを制御するフルイディクス回路を提供し、フルイディクス回路は、(a)出口と複数の流体入口とを有するフルイディクス結節点と、(b)各々が流体抵抗を有する1以上の通路でフルイディクス結節点に流体連通する少なくとも1つの廃物ポートであって、流体が、フルイディクス結節点内に流れを形成するように単一の流体入口のみを通して流れるときはいつでも、このような流体の一部が出口を通してフルイディクス結節点から流出するように、かつこのような流体の残り部分が1以上の通路を通ってフルイディクス結節点から流出するように、通路の流体抵抗が選択されるため、流体の流れのない入口(すなわち「選択されていない入口」)からフルイディクス結節点に流入する任意の流体は、1以上の通路を通って1以上の廃物ポートに向けられる、少なくとも1つの廃物ポートとを含む。一実施形態では、複数の流体の流れは、フルイディクス結節点の出口を通して所定の一連の流体の流れを与えるように制御される。別の実施形態では、このような制御は、フルイディクス回路の上流の流体に適用されるバルブ及び圧力差で行われる。
【0009】
別の態様では、本発明は、複数の流体を混合せずに共通容積へ連続的に方向付ける移動部分のないフルイディクス回路を提供する。フルイディクス回路が、離れて位置付けされたバルブ、ポンプで流体の運動を制御した結節点及び複数の連続的な通路のみを有するため、サイズや質量が重要因子である適用用の従来マイクロフルイディクス技術により、フルイディクス回路を容易に小型化できる。さらに、透過性のない障壁を用いずに流体を切り替えるフルイディクス回路を使用することで、電気化学的プロセスなど、安定的な参照ポテンシャルを必要とするプロセスで使用するに理想的な回路が製造される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1A】フルイディクス結節点の対向する表面上に入口及び出口を有する本発明の一実施形態の例示である。
【図1B】本発明の実施形態のプライミングステップを示す。
【図1C】本発明の実施形態の試薬流れステップを示す。
【図1D】本発明の実施形態の洗浄ステップを示す。
【図2】複数の入口を備えた廃物ポートに単一の抵抗通路が接続した本発明の別の実施形態を示す。
【図3A】複数の入口の各々が通路の平面ネットワークを通して中心のフルイディクス結節点及び廃物ポートに接続した本発明の別の実施形態を示す。
【図3B】複数の入口の各々が通路の平面ネットワークを通して中心のフルイディクス結節点及び廃物ポートに接続した本発明の別の実施形態を示す。
【図3C】複数の入口の各々が通路の平面ネットワークを通して中心のフルイディクス結節点及び廃物ポートに接続した本発明の別の実施形態を示す。
【図4】図4A及び4Bは、平面構造を有する別の実施形態を示し、それらフルイディクス結節点及び廃物ポートで接続した類似のユニットを積み重ねることで平面構造が重複化可能なため、より多くの入口流体を収容できる。
【図5】本発明のフルイディクス回路が、多段階の電気化学的プロセス用の安定的参照電極を如何に提供可能かを示す。
【図6】本発明のフルイディクスシステムを用いた例示的装置の図式的説明図である。
【図7】参照電極とフローセルの両方のチャンバーとの間の連続流体通路を提供する二重流れのチャンバーフローセル内での別個の洗浄制御を提供する実施形態を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細な説明
本発明の実施は、他で指示しない限り、当技術分野にある機械工学、電子工学、流体力学、及び材料科学の従来の技術及び記述を採用し得る。このような従来の技術は、フルイディクスデバイス及びマイクロフルイディクスデバイスなどの設計及び製造を含むが、これらに限定されない。好適な技術が以下の実施例を参照して特定的に例示し得る。しかしながら、他の均等な従来の手段も当然のように用い得る。
【0012】
本発明は、フルイディクス回路を用いて共通出口への異なった流体の流れを急速にかつ清潔に切り替える方法及び装置を提供する。一態様では、本発明のフルイディクス回路は、出口、チャンバー、フローセルなどの共通容積に対する所定速度及び持続時間を有する別個の流体の流れを輸送するフルイディクスシステムを形成するように、フルイディクス貯蔵部、バルブ、圧力源、ポンプ、制御システム、及び/又は類似要素を組み合わせる。このようなフルイディクス回路は、Marguliesなど、Nature、437巻、376から380頁(2005年)、Merrifieldなど、米国特許第3,531,258号公報、Brennerなど、Nature Biotechnology、18巻、630から634頁(2000年)、Ronaghiなど、Science、281巻、363‐365頁(1998年)、Caruthersなど、米国特許第5,132,418号公報、Namsaraevなど、米国特許出願公開第2005/0100939号公報及びRothbergなど、米国特許出願公開第2009/0127589号公報などで記述するような多段階の化学的、酵素的、又は電気化学的プロセスを実行する装置のフルイディクスシステムで特に有用である。
【0013】
一態様では、本発明のフルイディクス回路は、選択した流体が少なくとも2つの支流に分かれる接合部を提供し、一方の支流は出口に向けられ、出口から、使用されるフローセル又は反応チャンバーに向けられ、他方の支流は選択されていない流体入口通過後、この入口から出口を離れ廃物ポートに向けられる。一実施形態では、このような流れは、流体出口の流体抵抗と流体入口と廃物ポート間の1以上の通路の流体抵抗とを均衡させることで生成される。好適には、流速、流体粘性、組成、並びに通路、チャンバー及び結節点の幾何学形状及びサイズが、フルイディクス回路内で流体流れが層流であるように選択される。このような設計選択の指針は、流体力学に関する従来の専門書、例えば、Acheson、Elementary Fluid Dynamics (Clarendon Press、1990年)及び自由に若しくは商業上利用可能なフルイディクスシステムモデリング用ソフトウェア、例えば、Dassault Systems(マサチューセッツ州コンコード)のSolidWorks、Flowmaster USA、 Inc.(イリノイ州グレンビュー)のFlowmaster及びOpenFOAM(ワールドワイドウェブwww.opencfd.co.uk上利用可能な数値流体力学用のオープンソースコード)から容易に得られる。本発明のフルイディクス回路及び装置は、特に中規模及び微小のフルイディクスシステムに適し、例えば、フルイディクスは通路断面積が数十μm2から数mm2の範囲にあり、或いは流速が数nL毎秒から数百μL毎秒の範囲にある。本発明のフルイディクス回路で制御する流体流れの数は大きく変わり得る。本発明のフルイディクス回路は、一態様では2から12種の異なった流体、又は別の態様では2から6種の異なった流体の範囲にある複数の流れを制御する。
【0014】
フルイディクス回路
本発明の一実施形態の設計及び動作を特に図1Aに例示する。4つの流体入口、又は試薬投入100、102、104、106が、フルイディクス結節点108に接続しているとともに、出口110に対向する表面上にあり出口110に流体連通している。バルブ111が、入口100を通してフルイディクス結節点108内に流体を通すように開放して示されている。流体の一部124が左側に示した通路を通って進行し、一部126が右側に示した通路を通って進行し、かつ一部が出口110を通ってフルイディクス結節点から流出する。3つの流体の流れが層流であるのが好適であり、流体入口を含む表面に沿う流れが、選択されていない入口(拡散排出液128)から材料を得るであろう期間よりはるかに短い期間に、フルイディクス結節点の対向する表面まで拡散するようにフルイディクス結節点から流出するのが好適である。このようにして、出口110を通って流出する異なった投入試薬の混合が避けられる。一作動モードでは、試薬投入は、このような試薬に対応するバルブを開放し、かつ他のすべてのバルブを閉止することで選択される。本実施形態で例示するように、バルブ111は開放し、バルブ113、115、及び117は閉止している。その閉止状態では、選択されていない入口に流れがないとしても、選択されていない流体の容積(例えば、120)が自由に選択流体と拡散接触している。出口110への層流、選択されていない入口を過ぎる層流及び廃物ポートへの層流に選択した流体が分かれることで、好ましくない混合が防止される。上記実施形態の作動を図1Bから1Dに更に例示する。図1Aと同様に、入口100、102、104、及び106は、出口110の反対側の表面でフルイディクス結節点108に接続し、通路130及び132が廃物ポート134までフルイディクス結節点108と接続している。入口からの流体の流れが、出口110を通って結節点から流出する流体と流路130及び132を通って結節点から流出する流体とを均衡させるように、通路130及び132の長さ136及び幅138が流体抵抗を与えるように選択される。出口110に接続し、フルイディクス結節点110に流体連通した洗浄流体入口140も例示されている。一作動モードでは、「プライム試薬」モードと呼ばれ、不図示の洗浄入口バルブを開放し、試薬入口104の不図示のバルブを開放する。洗浄溶液が出口110に流れ、上記のRothbergなどに記述されるようなチップを含むフローセルなどの適用に向かって流れ、かつ、フルイディクス結節点108に向かって流れる。フルイディクス結節点108において、洗浄溶液は入口104からの流体と合同し、廃物ポート134へと流れさせる。例示的な流速及び時間が以下でより十分に説明する特定の適用の図に記載されているが、一般的にこのような速度及び時間は、特定の適用に依存する設計選択である。別の作動モードでは、図1Cで「試薬流れ」モードとして言及されるように、洗浄溶液の流れが遮断され、単一の流れが入口104から流出する。流れは3つの支流に分かれ、2つは通路130及び132を通って進行し、もう1つは出口110を通って進行する。別の作動モードでは、図1Dで「洗浄」モードとして言及されるように、洗浄溶液のみがフルイディクス結節点108に流入し、かつ入口100、102、104、106上を通過して通路130及び132を通って流出するように、すべての流体入口100、102、104、106のバルブを閉止し、洗浄入口140のバルブを開放する。
【0015】
図2にフルイディクス回路の別の実施形態の上面図及び側面図を示し、この実施形態では、図1Aから1Dの実施形態より数が多い入口200を収容する輪状廃物通路206及び輪状抵抗通路208を用いている。上記のように、複数の入口200は、出口204に接続した表面に対向する表面でフルイディクス結節点202に接続している。入口からの流体流れは、一部が出口204から流出し、残りが輪状通路208から流出するようにフルイディクス結節点202内で分かれ、輪状通路208の幅210及び高さ212は、流入試薬流れを適切に分離する流体抵抗を与えるように選択されている。選択した入口からの流れは、選択されていない入口を通過して抵抗通路208を通過した後、廃物リング通路206に流入し、廃物ポート214に向けられる。
【0016】
図3Aから3Cに、平面回路構造内に5つの投入試薬を収容する本発明のフルイディクス回路の別の実施形態を図式的に例示する。図3Aはフルイディクス回路302を含む透明体又はハウジング300の上面図である。ハウジング300は、金属、ガラス、セラミックス、プラスチックなどを含む多様な材料から構成されていてもよい。透明材料は、ポリカーボネート、ポリメチル・メタクリレートなどを含む。入口(又は流入ポート)304、306、308、310、及び312が、通路を介してそれら各々のコネクタースロット314に接続し、入口と同心の二重の円として示したコネクタースロット314は、ハウジング300の底部側に配置され、そこから試薬がフルイディクス回路302に流入する。入口304、306、308、310、及び312は、通路305、307、309、311、及び313にそれぞれ流体連通し、次に、曲線通路324、326、328、330、及び332にそれぞれ接続している。各曲線通路は、336及び338などの2本の脚で成っており、この脚は「T」接合部335で曲線通路324用として特定され、曲線通路324専用としても特定される。一方の脚はその各入口を結節点(又は多用途の中心ポート)301に接続する内部脚(例えば、338)であり、他方の脚は、その各々の入口を廃物通路(又はリング)340に接続する外部脚(例えば、336)である。上述のように、曲線通路の内部脚及び外部脚の断面積及び長さは、「T」接合部での流れと結節点301での流れとが所望の均衡を達成するように選択できる。通路344を通して廃物通路(又は流路)340が廃物ポート345に流体連通し、廃物ポート345はボディー300の底部側のコネクタースロット346を介して不図示の廃物貯蔵部に接続している。結節点301は通路361を介してポート360に流体連通し、通路361は本実施形態ではボディー300に対して外部に在り、破線で例示している。他の実施形態では、通路361は、結節点301やポート360用のコネクタースロットが必要ないようにボディー300内に形成していてもよい。ポート360は、洗浄溶液入口362に通路363を介して接続し、そこで「T」接合部が形成され、ポート360は、フローセル、反応チャンバーなどに順に導管を提供するコネクタースロット364に接続している。フローセルに流体を分配するフルイディクス回路を用いる3つのモードの2つを図3B及び3Cに例示する。作動モードは、各流入試薬及び洗浄溶液と連関したバルブ350によって実施する。第1の作動モード(選択した試薬バルブを開放し、すべての他のバルブを閉止し、洗浄溶液バルブを閉止する)では、図3Bに示すように、選択した試薬をフローセルに輸送する。第2の作動モード(選択した試薬バルブを開放し、すべての他のバルブを閉止し、洗浄溶液バルブを開放する)では、図3Cに示すように、フルイディクス回路は選択した試薬を輸送するようにプライミングされる。不図示の第3の作動モード(すべての試薬バルブを閉止し、洗浄溶液バルブを開放する)では、フルイディクス回路内のすべての通路を洗浄する。上述したように、各入口と連関したバルブ350は、その各入口を通してフルイディクス回路302への流体流入を許容するように開放でき(バルブ352で示す)、或いは、回路302への流体流入を防止するように閉止できる(バルブ352以外のすべてのバルブで示す)。各ケースでは、図3Bの入口370に関して示すように、洗浄溶液バルブを含む入口のバルブを開放し、他のバルブを閉止するときに、流体は通路354を通って「T」接合部356に流れ、そこで2つの流れに分かれる。その一方は廃物通路340に向けられた後、廃物ポート345に達する。そしてもう一方の流れは結節点301に向けられる。結節点301からこの第2の流れは再び複数の流れに分かれ、その一方は通路361を通って結節点301から流出した後、通路363及びフローセルに向けられる。そして他方の流れは結節点301に接続した各通路や他の入口に向けられた後、廃物通路340や廃物ポート345に達する。後者の流れは、他の入口を通過し、その入口から拡散又は漏出する任意の材料を運び、かつ、廃物ポート345に向ける。選択した試薬のバルブを開放し、すべての選択されていない試薬及び洗浄溶液バルブを同時に閉止することで、一連の異なった試薬をフローセルに向けることができる。一実施形態では、このような工程は、洗浄溶液、主要試薬x1、輸送試薬x1、洗浄溶液、主要試薬x2、輸送試薬x2、洗浄溶液などのフルイディクス回路の一連の作動モードによって実施できる。試薬プライミングの作動モードを図3Cに示す。試薬輸送モードと同様に、選択した試薬に対応するバルブを除いて、すべての試薬入口バルブを閉止する。しかしながら、試薬輸送モードとは異なり、洗浄溶液バルブを開放し、選択した試薬の流れと洗浄溶液の流れとの相対的圧力が選択されるため、洗浄溶液は、通路361を流れて結節点301内に流れた後、選択した試薬入口に通じる流路を除く、廃物通路340に通じるすべての通路を通して流出する。
【0017】
図4Aから4Bに平面フルイディクス回路の別の実施形態を示す。平面フルイディクス回路は4つの投入試薬を収容し、その回路設計により、平面フルイディクス回路を積み重ね、それらフルイディクス結節点を接続することで投入試薬を更に収容できる。図4Aの平面フルイディクス回路のトポロジー及び作動は、以下の点を除いて図3Aのそれと同等である。すなわち、後者は追加的な入口を含み、前者では、421で例示される「T」接合部を通る流れは、異なった長さ及び/又は曲率の脚を選択するのではなく、各通路404、406、408、及び410の異なった脚(一方の脚は結節点400に接続し、もう一方の脚は廃物流路415に接続している)の異なった断面積を選択することで均衡化される。入口412、414、416、及び418が、例えば421の「T」接合部を介して通路404、406、408、及び410にそれぞれ接続し、次に、廃物通路又は流路415及びフルイディクス結節点400に接続している。出口402及び廃物通路424、426、428、及び430が、図4Bに例示する平面フルイディクス回路の積み重ねに接続している。
【0018】
図5に、複数の反応体を必要とする電気化学的プロセスで本発明のフルイディクス回路を如何に用いることが可能かを示し、このようなプロセスで用いる電解質を含み、かつ反応チャンバーの上流にある参照電極を用いる。安定的な参照電圧について、参照電極がたった一つのプロセス試薬にも接触していないのが望ましい。本発明のフルイディクス回路は、(i)反応チャンバーと参照電極間の途切れない流体連通を維持し、かつ(ii)単一の電解質(すなわち、選択した電解質)のみの参照電極との接触を維持する間に、反応チャンバーの共通入口を通して所定の一連の電解質を輸送する手段を提供する。他のすべての試薬又は電解質(すなわち、選択されていない電解質)は、決して参照電極と接触しない。図4A及び4Bに示す平面フルイディクス回路500は、通路502を介して反応チャンバー510に一連の異なった試薬を輸送する。上述のように、洗浄溶液の流れは、通路504を通して「T」接合部512に向けられ、フルイディクス回路500に戻り、かつ反応チャンバー510に向けられてもよい。参照電極506を通路504内に又は通路504に隣接して位置決めすることで、安定的な参照電圧を反応チャンバー510に提供してもよい。一実施形態では、このような参照電極は、図5に例示するように通路504の一部を形成する金属管であってもよい。参照電極506は参照電圧源508に電気的に接続していてもよい。
【0019】
本発明の一態様では、このような装置は、反応容器内の生成物を監視する電子センサーに連結された反応容器;選択された電解質を含む複数の異なった電解質を反応容器へ連続的に輸送する本発明のフルイディクス回路を含むフルイディクスシステム;及び選択した電解質と接触し、電子センサーに参照電圧を提供する参照電極であって、参照電圧は、任意の選択されていない電解質と参照電極が接触せずに提供されている、参照電極を含む。
【0020】
製造の材料及び方法
上述のように、本発明のフルイディクス回路は、多様な方法及び材料で製造可能である。材料選択で考慮すべき要素は、必要な化学的不活性度、作動条件、例えば、温度など、輸送すべき試薬の容量、参照電圧を必要するか否か、製造可能性などを含む。小規模の流体輸送に関しては、マイクロ流体製造技術が本発明のフルイディクス回路を製造するのによく適しており、このような技術用の指針が当業者には容易に利用できる。たとえば、その指針としてMalloy、Plastic Part Design for Injection Molding、An Introduction(Hanser Gardner Publications、1994年)、Heroldなど、Editors、Lab−on−a−Chip Technology(1巻)、Fabrication and Microfluidics(Caister Academic Press、2009年)などが挙げられる。中規模及び大規模の流体輸送に関しては、従来の製粉技術を、本発明のフルイディクス回路内で組み立て可能な組み立て部品に用いてもよい。一態様では、ポリカーボネート、ポリメチル・メタクリレートなどのプラスチックを、本発明のフルイディクス回路を製造するのに用いてもよい。
【0021】
電気化学的プロセスでの適用
本発明のフルイディクス回路は電気化学的プロセスで有用であり、その回路では複数の試薬が、参照電極を必要とする電子センサーで監視される1以上の反応体に輸送される。複数の試薬に対する参照電極の暴露によって、電子センサーで検知した信号内に好ましくないノイズが導入されうる。この状況は、無標識のDNAシークエンシング、特に、pHに基づくDNAシークエンシングを実現する方法及び装置で起こる。pHに基づくDNAシークエンシングを含む無標識のDNAシークエンシングの概念は、援用する次の参考文献、Rothbergなど、米国特許出願公開第2009/026082号公報、Andersonなど、Sensors and Actuators B Chem、129巻、79から86頁(2008年)、Pourmandなど、Proc. Natl. Acad. Sci.、103巻、6466から6470頁(2006年)などを含む文献で記述されてきた。簡単に言うと、pHに基づくDNAシークエンシングでは、塩基の結合が、ポリメラーゼを触媒とした伸長反応の当然の副産物として生成する水素イオンを計測することで求められる。機能的に結合したプライマー及びポリメラーゼを有する各DNAテンプレートを反応チャンバー(上で引用のRothbergなどで開示の微小ウェルなど)内に入れ、その後、デオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)の追加と洗浄の繰り返しサイクルを行う。このようなテンプレートは、クローナル集団として微小粒子、ビーズなどの固体担体に付着しているのが典型的であり、このようなクローナル集団が反応チャンバー内に添加される。前記サイクルの各追加ステップでは、テンプレート内の次の塩基が、追加したdNTPの相補体である場合だけ、ポリメラーゼは、追加したdNTPと結合することでプライマーを伸ばす。1つの相補的塩基があるなら、1つの取り込みとなり、2つあるなら、2つの取り込みとなり、3つあるなら、3つの取り込みとなり、以下同様である。各取り込みにともない水素イオンが放出され、水素イオンを放出するテンプレートの集団が集合的に、電子センサーで検知される反応チャンバーの局所的pHにごくわずかな変化をもたらす。図6に、上で引用したRothbergなどに係りpHに基づく核酸シークエンシングを実行する本発明のフルイディクス回路を用いる装置を図式的に例示する。この装置の各電子センサーは参照電圧の値に依存する出力信号を生成する。装置のフルイディクス回路は、多数の試薬がその一つでも参照電極に接触することのないようにこれら多数の試薬を反応チャンバーに輸送できることで、センサーで生成する出力信号からノイズ源が除去される。図6では、フルイディクス回路602を含むハウジング600が、入口を介して試薬貯蔵部604、606、608、610及び612に、廃物貯蔵部620に、並びにフルイディクス結節点630をフローセル634の入口638に接続している通路632を介してフローセル634に接続している。貯蔵部604、606、608、610及び612からの試薬は、圧力、注射器ポンプなどのポンプ、重力送り装置などを含む多様な方法でフルイディクス回路602に送ってもよく、この試薬は、上述したように、バルブ614で制御することで選択される。先の装置は図6の機器のフルイディクスシステムを含む。制御システム618がバルブ614用の制御装置を含み、制御装置は、電気的接続616を介してバルブを開閉する信号を生成する。制御システム618は、622で接続した洗浄溶液バルブ624などのフルイディクスシステムの他の要素用の制御装置及び参照電極628用の制御装置も含む。制御システム618は、フローセル634用の制御機能及びデータ収集機能も含んでいてもよい。一作動モードでは、選択した試薬流れ間において、フルイディクス回路602をプライミングして洗浄し、かつフローセル634を洗浄するように、フルイディクス回路602は、制御システム618のプログラム制御の下で一連の選択した試薬1、2、3、4、又は5をフローセル634に輸送する。フローセル634に流入する流体は出口640を通って流出し、廃物容器636内に貯められる。このようなオペレーションの間中、フローセル634で行われる反応及び/又は計測は安定した参照電圧を有する。これは、参照電極628が、フローセル634と連続的なすなわち途切れない電解質経路を有するとともに、洗浄溶液のみに物理的に接触しているためである。
【0022】
図7に、単一の大きなフローセル及びセンサーアレイを用いて複数の別個のフローチャンバーを作るように如何にフルイディクス回路設計概念を用いることができるかを例示し、そこでは、フローチャンバーすべて内のすべてのセンサー用参照電極への流体経路をなお連続的に維持している間に、各フローチャンバーへの試薬のアクセスが別個に制御される。図7はフローセル700の上面図であり、フローセル700は、この上に取り付けられたフルイディクス接続部材702を有し、かつ不図示のハウジングを封止するように取り付けられている。ハウジングはセンサーアレイ704を保持し、2つのフローチャンバー703及び705を画定し、各フローチャンバーはそれぞれ、別個の入口706及び708、並びにこれら入口と対角線上反対側にある別個の出口710及び712を有する。それらは各々、フローチャンバー1用の通路730及び735を介して、かつフローチャンバー2用の通路732及び737を介してフルイディクス回路からの試薬の共通源に接続し、別個のフローチャンバー1用の補助洗浄液貯蔵部722及びフローチャンバー2用の補助洗浄液貯蔵部724に接続している。前記チップハウジングにフルイディクス接続部材702を取り付けることで形成した内部壁714、716、718及び720によって、フローチャンバー703及び705を通る流れの経路が画定され、かつ、対向する角部750、751、752、及び753とフローチャンバーを通る試薬との接触が妨げられる。
【0023】
バルブ723を開放すると、洗浄溶液が補助洗浄液貯蔵部1 722から流れて通路729を通過し、バルブ723を介して、通路734及び接合部731に達し、そこで流れが通路735と通路741とに分かれる。上述のフルイディクス回路の設計を有するため、図示のようにバルブ723のみを開放するときに、洗浄溶液がフローチャンバー1に流入し、かつフルイディクス回路からの試薬が廃物貯蔵部744のみに向けられるように、通路735及び734の長さ及び断面積、並びに洗浄溶液及び試薬の駆動力が選択される。バルブ723を閉止すると、その後洗浄溶液は通路729に移動せず、通路730からの試薬の流れ、通路735、通路741、及びフローチャンバー1への試薬の流れに障壁がなくなる。同様に、バルブ725を開放すると、洗浄溶液が補助洗浄液貯蔵部2 724から流れて通路743を通過し、バルブ725を介して、通路736及び接合部745に達し、そこで流れが通路737と通路747とに分かれる。上述のように、バルブ725のみを開放するときに、洗浄溶液がフローチャンバー2に流入し、かつフルイディクス回路からの試薬が廃物貯蔵部744のみに向けられるように、通路736及び737の長さ及び断面積、並びに洗浄溶液及び試薬の駆動力が選択される。図示のようにバルブ725を閉止すると、その後洗浄溶液は通路743に移動せず、通路732からの試薬の流れ、通路737、通路747、及びフローチャンバー2への試薬の流れに障壁がなくなる。
【0024】
本発明は幾つかの特定の例示的実施形態を参照して説明してきたが、当業者は、本発明の精神及び範囲から逸脱せずにその実施形態に対し多様な変形がなされ得ると理解するであろう。本発明は、上述のセンサーの実施形態及び主題に加え、多様なセンサーの実施形態及び他の主題に適用できる。
【0025】
定義
「マイクロフルイディクスデバイス」とは、相互接続し、流体連通し、かつ、単独で、或いは、試料導入などの支持機能、流体及び/又は試料駆動手段、温度制御、検知システム、データ収集及び/又は統合システムなどを提供する器具や機器と協働して、分析反応又はプロセスを実行するために設計した1以上のチャンバー、ポート、及び流路の統合的システムを意味する。マイクロフルイディクスデバイスは、更にバルブ、ポンプ、及び内部壁上の機能的被覆材(例えば、試料成分又は反応体の吸着防止のため、電気浸透による試薬運動の容易化のためなど)を含んでいてもよい。このようなデバイスは、通常、固体基板内に或いは固体基板として製造され、ガラス、プラスチック、又は他の固体ポリマー材料であってもよく、特に光学的又は電気化学的な方法による試料及び試薬運動の検知及び監視を簡略化するために、平面的な構成を有するのが典型的である。マイクロフルイディクスデバイスの特徴としては、通常、断面積が数百μm2より小さく、通路が、典型的には毛細血管の寸法、例えば約0.1μmから約500μmの最大断面寸法を有する。マイクロフルイディクスデバイスは、典型的に容積が1μLから数nL、例えば、10から100nLの範囲にある。援用する次の参考文献、Ramsey、米国特許第6,001,229号公報、第5,858,195号公報、第6,010,607号公報及び第6,033,546号公報;Soaneなど、米国特許第5,126,022号公報及び第6,054,034号公報;Nelson、米国特許第6,613,525号公報;Maherなど、米国特許第6,399,952号公報;Riccoなど、国際特許出願公開第02/24322号公報;Bjornsonなど、国際特許出願公開第99/19717号公報;Wildingなど、米国特許第5,587,128号公報、第5,498,392号公報;Siaなど、Electrophoresis、24巻、3563から3576頁(2003年);Ungerなど、Science、288巻、113‐116頁(2000年);Enzelbergerなど、米国特許第6,960,437号公報で例示するマイクロフルイディクスデバイスの製造及び作動が、当業者には周知である。
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年5月29日出願の米国出願12/474,897号及び12/475,311号の一部継続出願である2010年5月24日出願の12/785,667号の継続出願であり、本出願は、これらの出願及び2009年12月31日出願の米国仮出願61/291,627号の優先権の恩典を主張する。これらすべての出願は、その全体を本明細書に援用する。
【背景技術】
【0002】
背景
多くの適用が、異なった流体の混合又は相互汚染を最小化するように多数の流体流れの規制を必要とする。このような適用は多段階の合成又は分析プロセスを含み、このプロセスは共通の容積中で実施されるとともに、分離貯蔵部からの流体を用いた試薬輸送の連続的サイクルを有し、例えばMarguliesなど、Nature、437巻376から380頁(2005年)(非特許文献1)、Merrifieldなど、米国特許第3,531,258号公報(特許文献1)、Caruthersなど、米国特許第5,132,418号公報(特許文献2)、Rothbergなど、米国特許出願公開第2009/0127589号公報(特許文献3)などで述べられている。フルイディクスシステムは、処理用共通チャンバーへの複数の試薬溶液の選択的切り替えに利用できるが、次のような様々な欠点を有し、これらの欠点に限定されない。すなわち、試薬を吸着又は保持可能な表面領域が大きく、物理的なサイズが大きいことによって小型のフルイディクス要素を用いることが難しい(例えば、上で引用のRothbergなど参照)。また、縁部及び/又は角部を含むアクセス可能な表面が少ないことで、連続的な試薬を完全に排出し、かつ除去することが難しいか、或いは非効率となる。そして、摩耗し得、製造及び組立コストが高くなり得る移動部が使用される(例えば、Hunkapillerなど、米国特許第4,558,845号公報(特許文献4)、Wittmann−Lieboldなど、米国特許第4,008,736号公報(特許文献5)、Farnsworthなど、米国特許第5,082,788号公報(特許文献6)、Garwoodなど、米国特許第5,313,984号公報(特許文献7))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】Merrifieldなど、米国特許第3,531,258号公報
【特許文献2】Caruthersなど、米国特許第5,132,418号公報
【特許文献3】Rothbergなど、米国特許出願公開第2009/0127589号公報
【特許文献4】Hunkapillerなど、米国特許第4,558,845号公報
【特許文献5】Wittmann−Lieboldなど、米国特許第4,008,736号公報
【特許文献6】Farnsworthなど、米国特許第5,082,788号公報
【特許文献7】Garwoodなど、米国特許第5,313,984号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Marguliesなど、Nature、437巻、376から380頁(2005年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記を鑑みて、複雑な合成又は分析プロセス用の共通容積への複数流体の流入を規制する、現状アプローチの欠点を克服した装置が利用可能になることが有益であろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、例えば反応チャンバー又はフローセルへの通路又は導管などの共通容積へ複数の流体を輸送する装置及び方法を対象とする。本発明は、多段階の分析プロセス又は合成プロセスでのこのような装置及び方法の適用も含む。多数の実施形態及び適用にて本発明を例示し、その実施形態及び適用の幾つかが以下の明細書のすべてに亘って要約されている。
【0007】
一態様では、本発明は、混合又は相互汚染せずに、反応チャンバー又はフローセルへの共通容積へ異なった流体を連続的に方向付ける受動的フルイディクス回路を提供する。本明細書で用いるように、このような連続的方向付けは、時に複数の流体の流れを「多重化する」と呼ばれる。フルイディクス回路の接合部、結節点及び通路を通る流れの方向及び速度は、上流のバルブの状態(例えば、開放又は閉止)、回路の入口又は上流の貯蔵部での流体圧力差、流路抵抗などで制御される。共通出口への又は接合部若しくは結節点での他の入口への選択されていない入口からの流体の自由拡散や漏出を選択された入口の流体の流れで防ぎ、選択された入口の流体の流れの一部は、選択されていない流体の入口近くを通過し、廃物ポートを介してフルイディクス回路から流出する。これにより、漏出や拡散による出口流れとの好ましくない混合に対して障壁が形成される。一態様では、選択された流体入口はフルイディクス結節点を通して層流流体を提供する。
【0008】
別の態様では、本発明は複数の流体流れを制御するフルイディクス回路を提供し、フルイディクス回路は、(a)出口と複数の流体入口とを有するフルイディクス結節点と、(b)各々が流体抵抗を有する1以上の通路でフルイディクス結節点に流体連通する少なくとも1つの廃物ポートであって、流体が、フルイディクス結節点内に流れを形成するように単一の流体入口のみを通して流れるときはいつでも、このような流体の一部が出口を通してフルイディクス結節点から流出するように、かつこのような流体の残り部分が1以上の通路を通ってフルイディクス結節点から流出するように、通路の流体抵抗が選択されるため、流体の流れのない入口(すなわち「選択されていない入口」)からフルイディクス結節点に流入する任意の流体は、1以上の通路を通って1以上の廃物ポートに向けられる、少なくとも1つの廃物ポートとを含む。一実施形態では、複数の流体の流れは、フルイディクス結節点の出口を通して所定の一連の流体の流れを与えるように制御される。別の実施形態では、このような制御は、フルイディクス回路の上流の流体に適用されるバルブ及び圧力差で行われる。
【0009】
別の態様では、本発明は、複数の流体を混合せずに共通容積へ連続的に方向付ける移動部分のないフルイディクス回路を提供する。フルイディクス回路が、離れて位置付けされたバルブ、ポンプで流体の運動を制御した結節点及び複数の連続的な通路のみを有するため、サイズや質量が重要因子である適用用の従来マイクロフルイディクス技術により、フルイディクス回路を容易に小型化できる。さらに、透過性のない障壁を用いずに流体を切り替えるフルイディクス回路を使用することで、電気化学的プロセスなど、安定的な参照ポテンシャルを必要とするプロセスで使用するに理想的な回路が製造される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1A】フルイディクス結節点の対向する表面上に入口及び出口を有する本発明の一実施形態の例示である。
【図1B】本発明の実施形態のプライミングステップを示す。
【図1C】本発明の実施形態の試薬流れステップを示す。
【図1D】本発明の実施形態の洗浄ステップを示す。
【図2】複数の入口を備えた廃物ポートに単一の抵抗通路が接続した本発明の別の実施形態を示す。
【図3A】複数の入口の各々が通路の平面ネットワークを通して中心のフルイディクス結節点及び廃物ポートに接続した本発明の別の実施形態を示す。
【図3B】複数の入口の各々が通路の平面ネットワークを通して中心のフルイディクス結節点及び廃物ポートに接続した本発明の別の実施形態を示す。
【図3C】複数の入口の各々が通路の平面ネットワークを通して中心のフルイディクス結節点及び廃物ポートに接続した本発明の別の実施形態を示す。
【図4】図4A及び4Bは、平面構造を有する別の実施形態を示し、それらフルイディクス結節点及び廃物ポートで接続した類似のユニットを積み重ねることで平面構造が重複化可能なため、より多くの入口流体を収容できる。
【図5】本発明のフルイディクス回路が、多段階の電気化学的プロセス用の安定的参照電極を如何に提供可能かを示す。
【図6】本発明のフルイディクスシステムを用いた例示的装置の図式的説明図である。
【図7】参照電極とフローセルの両方のチャンバーとの間の連続流体通路を提供する二重流れのチャンバーフローセル内での別個の洗浄制御を提供する実施形態を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細な説明
本発明の実施は、他で指示しない限り、当技術分野にある機械工学、電子工学、流体力学、及び材料科学の従来の技術及び記述を採用し得る。このような従来の技術は、フルイディクスデバイス及びマイクロフルイディクスデバイスなどの設計及び製造を含むが、これらに限定されない。好適な技術が以下の実施例を参照して特定的に例示し得る。しかしながら、他の均等な従来の手段も当然のように用い得る。
【0012】
本発明は、フルイディクス回路を用いて共通出口への異なった流体の流れを急速にかつ清潔に切り替える方法及び装置を提供する。一態様では、本発明のフルイディクス回路は、出口、チャンバー、フローセルなどの共通容積に対する所定速度及び持続時間を有する別個の流体の流れを輸送するフルイディクスシステムを形成するように、フルイディクス貯蔵部、バルブ、圧力源、ポンプ、制御システム、及び/又は類似要素を組み合わせる。このようなフルイディクス回路は、Marguliesなど、Nature、437巻、376から380頁(2005年)、Merrifieldなど、米国特許第3,531,258号公報、Brennerなど、Nature Biotechnology、18巻、630から634頁(2000年)、Ronaghiなど、Science、281巻、363‐365頁(1998年)、Caruthersなど、米国特許第5,132,418号公報、Namsaraevなど、米国特許出願公開第2005/0100939号公報及びRothbergなど、米国特許出願公開第2009/0127589号公報などで記述するような多段階の化学的、酵素的、又は電気化学的プロセスを実行する装置のフルイディクスシステムで特に有用である。
【0013】
一態様では、本発明のフルイディクス回路は、選択した流体が少なくとも2つの支流に分かれる接合部を提供し、一方の支流は出口に向けられ、出口から、使用されるフローセル又は反応チャンバーに向けられ、他方の支流は選択されていない流体入口通過後、この入口から出口を離れ廃物ポートに向けられる。一実施形態では、このような流れは、流体出口の流体抵抗と流体入口と廃物ポート間の1以上の通路の流体抵抗とを均衡させることで生成される。好適には、流速、流体粘性、組成、並びに通路、チャンバー及び結節点の幾何学形状及びサイズが、フルイディクス回路内で流体流れが層流であるように選択される。このような設計選択の指針は、流体力学に関する従来の専門書、例えば、Acheson、Elementary Fluid Dynamics (Clarendon Press、1990年)及び自由に若しくは商業上利用可能なフルイディクスシステムモデリング用ソフトウェア、例えば、Dassault Systems(マサチューセッツ州コンコード)のSolidWorks、Flowmaster USA、 Inc.(イリノイ州グレンビュー)のFlowmaster及びOpenFOAM(ワールドワイドウェブwww.opencfd.co.uk上利用可能な数値流体力学用のオープンソースコード)から容易に得られる。本発明のフルイディクス回路及び装置は、特に中規模及び微小のフルイディクスシステムに適し、例えば、フルイディクスは通路断面積が数十μm2から数mm2の範囲にあり、或いは流速が数nL毎秒から数百μL毎秒の範囲にある。本発明のフルイディクス回路で制御する流体流れの数は大きく変わり得る。本発明のフルイディクス回路は、一態様では2から12種の異なった流体、又は別の態様では2から6種の異なった流体の範囲にある複数の流れを制御する。
【0014】
フルイディクス回路
本発明の一実施形態の設計及び動作を特に図1Aに例示する。4つの流体入口、又は試薬投入100、102、104、106が、フルイディクス結節点108に接続しているとともに、出口110に対向する表面上にあり出口110に流体連通している。バルブ111が、入口100を通してフルイディクス結節点108内に流体を通すように開放して示されている。流体の一部124が左側に示した通路を通って進行し、一部126が右側に示した通路を通って進行し、かつ一部が出口110を通ってフルイディクス結節点から流出する。3つの流体の流れが層流であるのが好適であり、流体入口を含む表面に沿う流れが、選択されていない入口(拡散排出液128)から材料を得るであろう期間よりはるかに短い期間に、フルイディクス結節点の対向する表面まで拡散するようにフルイディクス結節点から流出するのが好適である。このようにして、出口110を通って流出する異なった投入試薬の混合が避けられる。一作動モードでは、試薬投入は、このような試薬に対応するバルブを開放し、かつ他のすべてのバルブを閉止することで選択される。本実施形態で例示するように、バルブ111は開放し、バルブ113、115、及び117は閉止している。その閉止状態では、選択されていない入口に流れがないとしても、選択されていない流体の容積(例えば、120)が自由に選択流体と拡散接触している。出口110への層流、選択されていない入口を過ぎる層流及び廃物ポートへの層流に選択した流体が分かれることで、好ましくない混合が防止される。上記実施形態の作動を図1Bから1Dに更に例示する。図1Aと同様に、入口100、102、104、及び106は、出口110の反対側の表面でフルイディクス結節点108に接続し、通路130及び132が廃物ポート134までフルイディクス結節点108と接続している。入口からの流体の流れが、出口110を通って結節点から流出する流体と流路130及び132を通って結節点から流出する流体とを均衡させるように、通路130及び132の長さ136及び幅138が流体抵抗を与えるように選択される。出口110に接続し、フルイディクス結節点110に流体連通した洗浄流体入口140も例示されている。一作動モードでは、「プライム試薬」モードと呼ばれ、不図示の洗浄入口バルブを開放し、試薬入口104の不図示のバルブを開放する。洗浄溶液が出口110に流れ、上記のRothbergなどに記述されるようなチップを含むフローセルなどの適用に向かって流れ、かつ、フルイディクス結節点108に向かって流れる。フルイディクス結節点108において、洗浄溶液は入口104からの流体と合同し、廃物ポート134へと流れさせる。例示的な流速及び時間が以下でより十分に説明する特定の適用の図に記載されているが、一般的にこのような速度及び時間は、特定の適用に依存する設計選択である。別の作動モードでは、図1Cで「試薬流れ」モードとして言及されるように、洗浄溶液の流れが遮断され、単一の流れが入口104から流出する。流れは3つの支流に分かれ、2つは通路130及び132を通って進行し、もう1つは出口110を通って進行する。別の作動モードでは、図1Dで「洗浄」モードとして言及されるように、洗浄溶液のみがフルイディクス結節点108に流入し、かつ入口100、102、104、106上を通過して通路130及び132を通って流出するように、すべての流体入口100、102、104、106のバルブを閉止し、洗浄入口140のバルブを開放する。
【0015】
図2にフルイディクス回路の別の実施形態の上面図及び側面図を示し、この実施形態では、図1Aから1Dの実施形態より数が多い入口200を収容する輪状廃物通路206及び輪状抵抗通路208を用いている。上記のように、複数の入口200は、出口204に接続した表面に対向する表面でフルイディクス結節点202に接続している。入口からの流体流れは、一部が出口204から流出し、残りが輪状通路208から流出するようにフルイディクス結節点202内で分かれ、輪状通路208の幅210及び高さ212は、流入試薬流れを適切に分離する流体抵抗を与えるように選択されている。選択した入口からの流れは、選択されていない入口を通過して抵抗通路208を通過した後、廃物リング通路206に流入し、廃物ポート214に向けられる。
【0016】
図3Aから3Cに、平面回路構造内に5つの投入試薬を収容する本発明のフルイディクス回路の別の実施形態を図式的に例示する。図3Aはフルイディクス回路302を含む透明体又はハウジング300の上面図である。ハウジング300は、金属、ガラス、セラミックス、プラスチックなどを含む多様な材料から構成されていてもよい。透明材料は、ポリカーボネート、ポリメチル・メタクリレートなどを含む。入口(又は流入ポート)304、306、308、310、及び312が、通路を介してそれら各々のコネクタースロット314に接続し、入口と同心の二重の円として示したコネクタースロット314は、ハウジング300の底部側に配置され、そこから試薬がフルイディクス回路302に流入する。入口304、306、308、310、及び312は、通路305、307、309、311、及び313にそれぞれ流体連通し、次に、曲線通路324、326、328、330、及び332にそれぞれ接続している。各曲線通路は、336及び338などの2本の脚で成っており、この脚は「T」接合部335で曲線通路324用として特定され、曲線通路324専用としても特定される。一方の脚はその各入口を結節点(又は多用途の中心ポート)301に接続する内部脚(例えば、338)であり、他方の脚は、その各々の入口を廃物通路(又はリング)340に接続する外部脚(例えば、336)である。上述のように、曲線通路の内部脚及び外部脚の断面積及び長さは、「T」接合部での流れと結節点301での流れとが所望の均衡を達成するように選択できる。通路344を通して廃物通路(又は流路)340が廃物ポート345に流体連通し、廃物ポート345はボディー300の底部側のコネクタースロット346を介して不図示の廃物貯蔵部に接続している。結節点301は通路361を介してポート360に流体連通し、通路361は本実施形態ではボディー300に対して外部に在り、破線で例示している。他の実施形態では、通路361は、結節点301やポート360用のコネクタースロットが必要ないようにボディー300内に形成していてもよい。ポート360は、洗浄溶液入口362に通路363を介して接続し、そこで「T」接合部が形成され、ポート360は、フローセル、反応チャンバーなどに順に導管を提供するコネクタースロット364に接続している。フローセルに流体を分配するフルイディクス回路を用いる3つのモードの2つを図3B及び3Cに例示する。作動モードは、各流入試薬及び洗浄溶液と連関したバルブ350によって実施する。第1の作動モード(選択した試薬バルブを開放し、すべての他のバルブを閉止し、洗浄溶液バルブを閉止する)では、図3Bに示すように、選択した試薬をフローセルに輸送する。第2の作動モード(選択した試薬バルブを開放し、すべての他のバルブを閉止し、洗浄溶液バルブを開放する)では、図3Cに示すように、フルイディクス回路は選択した試薬を輸送するようにプライミングされる。不図示の第3の作動モード(すべての試薬バルブを閉止し、洗浄溶液バルブを開放する)では、フルイディクス回路内のすべての通路を洗浄する。上述したように、各入口と連関したバルブ350は、その各入口を通してフルイディクス回路302への流体流入を許容するように開放でき(バルブ352で示す)、或いは、回路302への流体流入を防止するように閉止できる(バルブ352以外のすべてのバルブで示す)。各ケースでは、図3Bの入口370に関して示すように、洗浄溶液バルブを含む入口のバルブを開放し、他のバルブを閉止するときに、流体は通路354を通って「T」接合部356に流れ、そこで2つの流れに分かれる。その一方は廃物通路340に向けられた後、廃物ポート345に達する。そしてもう一方の流れは結節点301に向けられる。結節点301からこの第2の流れは再び複数の流れに分かれ、その一方は通路361を通って結節点301から流出した後、通路363及びフローセルに向けられる。そして他方の流れは結節点301に接続した各通路や他の入口に向けられた後、廃物通路340や廃物ポート345に達する。後者の流れは、他の入口を通過し、その入口から拡散又は漏出する任意の材料を運び、かつ、廃物ポート345に向ける。選択した試薬のバルブを開放し、すべての選択されていない試薬及び洗浄溶液バルブを同時に閉止することで、一連の異なった試薬をフローセルに向けることができる。一実施形態では、このような工程は、洗浄溶液、主要試薬x1、輸送試薬x1、洗浄溶液、主要試薬x2、輸送試薬x2、洗浄溶液などのフルイディクス回路の一連の作動モードによって実施できる。試薬プライミングの作動モードを図3Cに示す。試薬輸送モードと同様に、選択した試薬に対応するバルブを除いて、すべての試薬入口バルブを閉止する。しかしながら、試薬輸送モードとは異なり、洗浄溶液バルブを開放し、選択した試薬の流れと洗浄溶液の流れとの相対的圧力が選択されるため、洗浄溶液は、通路361を流れて結節点301内に流れた後、選択した試薬入口に通じる流路を除く、廃物通路340に通じるすべての通路を通して流出する。
【0017】
図4Aから4Bに平面フルイディクス回路の別の実施形態を示す。平面フルイディクス回路は4つの投入試薬を収容し、その回路設計により、平面フルイディクス回路を積み重ね、それらフルイディクス結節点を接続することで投入試薬を更に収容できる。図4Aの平面フルイディクス回路のトポロジー及び作動は、以下の点を除いて図3Aのそれと同等である。すなわち、後者は追加的な入口を含み、前者では、421で例示される「T」接合部を通る流れは、異なった長さ及び/又は曲率の脚を選択するのではなく、各通路404、406、408、及び410の異なった脚(一方の脚は結節点400に接続し、もう一方の脚は廃物流路415に接続している)の異なった断面積を選択することで均衡化される。入口412、414、416、及び418が、例えば421の「T」接合部を介して通路404、406、408、及び410にそれぞれ接続し、次に、廃物通路又は流路415及びフルイディクス結節点400に接続している。出口402及び廃物通路424、426、428、及び430が、図4Bに例示する平面フルイディクス回路の積み重ねに接続している。
【0018】
図5に、複数の反応体を必要とする電気化学的プロセスで本発明のフルイディクス回路を如何に用いることが可能かを示し、このようなプロセスで用いる電解質を含み、かつ反応チャンバーの上流にある参照電極を用いる。安定的な参照電圧について、参照電極がたった一つのプロセス試薬にも接触していないのが望ましい。本発明のフルイディクス回路は、(i)反応チャンバーと参照電極間の途切れない流体連通を維持し、かつ(ii)単一の電解質(すなわち、選択した電解質)のみの参照電極との接触を維持する間に、反応チャンバーの共通入口を通して所定の一連の電解質を輸送する手段を提供する。他のすべての試薬又は電解質(すなわち、選択されていない電解質)は、決して参照電極と接触しない。図4A及び4Bに示す平面フルイディクス回路500は、通路502を介して反応チャンバー510に一連の異なった試薬を輸送する。上述のように、洗浄溶液の流れは、通路504を通して「T」接合部512に向けられ、フルイディクス回路500に戻り、かつ反応チャンバー510に向けられてもよい。参照電極506を通路504内に又は通路504に隣接して位置決めすることで、安定的な参照電圧を反応チャンバー510に提供してもよい。一実施形態では、このような参照電極は、図5に例示するように通路504の一部を形成する金属管であってもよい。参照電極506は参照電圧源508に電気的に接続していてもよい。
【0019】
本発明の一態様では、このような装置は、反応容器内の生成物を監視する電子センサーに連結された反応容器;選択された電解質を含む複数の異なった電解質を反応容器へ連続的に輸送する本発明のフルイディクス回路を含むフルイディクスシステム;及び選択した電解質と接触し、電子センサーに参照電圧を提供する参照電極であって、参照電圧は、任意の選択されていない電解質と参照電極が接触せずに提供されている、参照電極を含む。
【0020】
製造の材料及び方法
上述のように、本発明のフルイディクス回路は、多様な方法及び材料で製造可能である。材料選択で考慮すべき要素は、必要な化学的不活性度、作動条件、例えば、温度など、輸送すべき試薬の容量、参照電圧を必要するか否か、製造可能性などを含む。小規模の流体輸送に関しては、マイクロ流体製造技術が本発明のフルイディクス回路を製造するのによく適しており、このような技術用の指針が当業者には容易に利用できる。たとえば、その指針としてMalloy、Plastic Part Design for Injection Molding、An Introduction(Hanser Gardner Publications、1994年)、Heroldなど、Editors、Lab−on−a−Chip Technology(1巻)、Fabrication and Microfluidics(Caister Academic Press、2009年)などが挙げられる。中規模及び大規模の流体輸送に関しては、従来の製粉技術を、本発明のフルイディクス回路内で組み立て可能な組み立て部品に用いてもよい。一態様では、ポリカーボネート、ポリメチル・メタクリレートなどのプラスチックを、本発明のフルイディクス回路を製造するのに用いてもよい。
【0021】
電気化学的プロセスでの適用
本発明のフルイディクス回路は電気化学的プロセスで有用であり、その回路では複数の試薬が、参照電極を必要とする電子センサーで監視される1以上の反応体に輸送される。複数の試薬に対する参照電極の暴露によって、電子センサーで検知した信号内に好ましくないノイズが導入されうる。この状況は、無標識のDNAシークエンシング、特に、pHに基づくDNAシークエンシングを実現する方法及び装置で起こる。pHに基づくDNAシークエンシングを含む無標識のDNAシークエンシングの概念は、援用する次の参考文献、Rothbergなど、米国特許出願公開第2009/026082号公報、Andersonなど、Sensors and Actuators B Chem、129巻、79から86頁(2008年)、Pourmandなど、Proc. Natl. Acad. Sci.、103巻、6466から6470頁(2006年)などを含む文献で記述されてきた。簡単に言うと、pHに基づくDNAシークエンシングでは、塩基の結合が、ポリメラーゼを触媒とした伸長反応の当然の副産物として生成する水素イオンを計測することで求められる。機能的に結合したプライマー及びポリメラーゼを有する各DNAテンプレートを反応チャンバー(上で引用のRothbergなどで開示の微小ウェルなど)内に入れ、その後、デオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)の追加と洗浄の繰り返しサイクルを行う。このようなテンプレートは、クローナル集団として微小粒子、ビーズなどの固体担体に付着しているのが典型的であり、このようなクローナル集団が反応チャンバー内に添加される。前記サイクルの各追加ステップでは、テンプレート内の次の塩基が、追加したdNTPの相補体である場合だけ、ポリメラーゼは、追加したdNTPと結合することでプライマーを伸ばす。1つの相補的塩基があるなら、1つの取り込みとなり、2つあるなら、2つの取り込みとなり、3つあるなら、3つの取り込みとなり、以下同様である。各取り込みにともない水素イオンが放出され、水素イオンを放出するテンプレートの集団が集合的に、電子センサーで検知される反応チャンバーの局所的pHにごくわずかな変化をもたらす。図6に、上で引用したRothbergなどに係りpHに基づく核酸シークエンシングを実行する本発明のフルイディクス回路を用いる装置を図式的に例示する。この装置の各電子センサーは参照電圧の値に依存する出力信号を生成する。装置のフルイディクス回路は、多数の試薬がその一つでも参照電極に接触することのないようにこれら多数の試薬を反応チャンバーに輸送できることで、センサーで生成する出力信号からノイズ源が除去される。図6では、フルイディクス回路602を含むハウジング600が、入口を介して試薬貯蔵部604、606、608、610及び612に、廃物貯蔵部620に、並びにフルイディクス結節点630をフローセル634の入口638に接続している通路632を介してフローセル634に接続している。貯蔵部604、606、608、610及び612からの試薬は、圧力、注射器ポンプなどのポンプ、重力送り装置などを含む多様な方法でフルイディクス回路602に送ってもよく、この試薬は、上述したように、バルブ614で制御することで選択される。先の装置は図6の機器のフルイディクスシステムを含む。制御システム618がバルブ614用の制御装置を含み、制御装置は、電気的接続616を介してバルブを開閉する信号を生成する。制御システム618は、622で接続した洗浄溶液バルブ624などのフルイディクスシステムの他の要素用の制御装置及び参照電極628用の制御装置も含む。制御システム618は、フローセル634用の制御機能及びデータ収集機能も含んでいてもよい。一作動モードでは、選択した試薬流れ間において、フルイディクス回路602をプライミングして洗浄し、かつフローセル634を洗浄するように、フルイディクス回路602は、制御システム618のプログラム制御の下で一連の選択した試薬1、2、3、4、又は5をフローセル634に輸送する。フローセル634に流入する流体は出口640を通って流出し、廃物容器636内に貯められる。このようなオペレーションの間中、フローセル634で行われる反応及び/又は計測は安定した参照電圧を有する。これは、参照電極628が、フローセル634と連続的なすなわち途切れない電解質経路を有するとともに、洗浄溶液のみに物理的に接触しているためである。
【0022】
図7に、単一の大きなフローセル及びセンサーアレイを用いて複数の別個のフローチャンバーを作るように如何にフルイディクス回路設計概念を用いることができるかを例示し、そこでは、フローチャンバーすべて内のすべてのセンサー用参照電極への流体経路をなお連続的に維持している間に、各フローチャンバーへの試薬のアクセスが別個に制御される。図7はフローセル700の上面図であり、フローセル700は、この上に取り付けられたフルイディクス接続部材702を有し、かつ不図示のハウジングを封止するように取り付けられている。ハウジングはセンサーアレイ704を保持し、2つのフローチャンバー703及び705を画定し、各フローチャンバーはそれぞれ、別個の入口706及び708、並びにこれら入口と対角線上反対側にある別個の出口710及び712を有する。それらは各々、フローチャンバー1用の通路730及び735を介して、かつフローチャンバー2用の通路732及び737を介してフルイディクス回路からの試薬の共通源に接続し、別個のフローチャンバー1用の補助洗浄液貯蔵部722及びフローチャンバー2用の補助洗浄液貯蔵部724に接続している。前記チップハウジングにフルイディクス接続部材702を取り付けることで形成した内部壁714、716、718及び720によって、フローチャンバー703及び705を通る流れの経路が画定され、かつ、対向する角部750、751、752、及び753とフローチャンバーを通る試薬との接触が妨げられる。
【0023】
バルブ723を開放すると、洗浄溶液が補助洗浄液貯蔵部1 722から流れて通路729を通過し、バルブ723を介して、通路734及び接合部731に達し、そこで流れが通路735と通路741とに分かれる。上述のフルイディクス回路の設計を有するため、図示のようにバルブ723のみを開放するときに、洗浄溶液がフローチャンバー1に流入し、かつフルイディクス回路からの試薬が廃物貯蔵部744のみに向けられるように、通路735及び734の長さ及び断面積、並びに洗浄溶液及び試薬の駆動力が選択される。バルブ723を閉止すると、その後洗浄溶液は通路729に移動せず、通路730からの試薬の流れ、通路735、通路741、及びフローチャンバー1への試薬の流れに障壁がなくなる。同様に、バルブ725を開放すると、洗浄溶液が補助洗浄液貯蔵部2 724から流れて通路743を通過し、バルブ725を介して、通路736及び接合部745に達し、そこで流れが通路737と通路747とに分かれる。上述のように、バルブ725のみを開放するときに、洗浄溶液がフローチャンバー2に流入し、かつフルイディクス回路からの試薬が廃物貯蔵部744のみに向けられるように、通路736及び737の長さ及び断面積、並びに洗浄溶液及び試薬の駆動力が選択される。図示のようにバルブ725を閉止すると、その後洗浄溶液は通路743に移動せず、通路732からの試薬の流れ、通路737、通路747、及びフローチャンバー2への試薬の流れに障壁がなくなる。
【0024】
本発明は幾つかの特定の例示的実施形態を参照して説明してきたが、当業者は、本発明の精神及び範囲から逸脱せずにその実施形態に対し多様な変形がなされ得ると理解するであろう。本発明は、上述のセンサーの実施形態及び主題に加え、多様なセンサーの実施形態及び他の主題に適用できる。
【0025】
定義
「マイクロフルイディクスデバイス」とは、相互接続し、流体連通し、かつ、単独で、或いは、試料導入などの支持機能、流体及び/又は試料駆動手段、温度制御、検知システム、データ収集及び/又は統合システムなどを提供する器具や機器と協働して、分析反応又はプロセスを実行するために設計した1以上のチャンバー、ポート、及び流路の統合的システムを意味する。マイクロフルイディクスデバイスは、更にバルブ、ポンプ、及び内部壁上の機能的被覆材(例えば、試料成分又は反応体の吸着防止のため、電気浸透による試薬運動の容易化のためなど)を含んでいてもよい。このようなデバイスは、通常、固体基板内に或いは固体基板として製造され、ガラス、プラスチック、又は他の固体ポリマー材料であってもよく、特に光学的又は電気化学的な方法による試料及び試薬運動の検知及び監視を簡略化するために、平面的な構成を有するのが典型的である。マイクロフルイディクスデバイスの特徴としては、通常、断面積が数百μm2より小さく、通路が、典型的には毛細血管の寸法、例えば約0.1μmから約500μmの最大断面寸法を有する。マイクロフルイディクスデバイスは、典型的に容積が1μLから数nL、例えば、10から100nLの範囲にある。援用する次の参考文献、Ramsey、米国特許第6,001,229号公報、第5,858,195号公報、第6,010,607号公報及び第6,033,546号公報;Soaneなど、米国特許第5,126,022号公報及び第6,054,034号公報;Nelson、米国特許第6,613,525号公報;Maherなど、米国特許第6,399,952号公報;Riccoなど、国際特許出願公開第02/24322号公報;Bjornsonなど、国際特許出願公開第99/19717号公報;Wildingなど、米国特許第5,587,128号公報、第5,498,392号公報;Siaなど、Electrophoresis、24巻、3563から3576頁(2003年);Ungerなど、Science、288巻、113‐116頁(2000年);Enzelbergerなど、米国特許第6,960,437号公報で例示するマイクロフルイディクスデバイスの製造及び作動が、当業者には周知である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の流体流れを制御するフルイディクス回路であって、
出口と複数の流体入口とを有するフルイディクス結節点と、
各々が流体抵抗を有する1以上の通路で前記フルイディクス結節点に流体連通する少なくとも1つの廃物ポートであって、流体が、前記フルイディクス結節点内に流れを形成するように単一の流体入口のみを通して流れるときはいつでも、このような流体の一部が前記出口を通して前記フルイディクス結節点から流出するように、かつこのような流体の残り部分が前記1以上の通路を通って前記フルイディクス結節点から流出するように、前記通路の前記流体抵抗を選択するため、選択されていない入口から前記フルイディクス結節点に流入するすべての流体が、前記1以上の通路を通って前記1以上の廃物ポートに方向付けられる、少なくとも1つの廃物ポートと
を含む、フルイディクス回路。
【請求項2】
前記複数の流体入口は前記出口に対して放射状に配置されている、請求項1に記載のフルイディクス回路。
【請求項3】
前記フルイディクス結節点内に形成された前記流れは層流である、請求項1に記載のフルイディクス回路。
【請求項4】
前記フルイディクス結節点は対向する面及び垂直な面を有する、請求項3に記載のフルイディクス回路。
【請求項5】
前記複数の入口は、前記出口が配置された前記表面に垂直な前記結節点の表面に配置されている、請求項4に記載のフルイディクス回路。
【請求項6】
前記複数の入口は、前記出口が配置された前記表面に対向する前記結節点の表面に配置されている、請求項4に記載のフルイディクス回路。
【請求項7】
前記1以上の廃物ポートに連通する前記通路は、前記出口及び前記複数の流体入口が配置された表面に垂直な表面に配置されている、請求項6に記載のフルイディクス回路。
【請求項8】
前記1以上の廃物ポート及び前記フルイディクス結節点に対して放射状に配置された複数の前記通路に流体連通を提供し、かつ前記フルイディクス結節点と前記廃物導管との間に流体連通を提供する、廃物導管を更に含み、各前記通路は単一の前記流体入口を有し、かつ該流体入口からの前記結節点に対して遠位の前記通路の各部分は、流体が前記フルイディクス結節点内に前記層流を形成するように単一の流体入口のみを通して流れるときはいつでも、このような流体の一部が前記出口を通して前記フルイディクス結節点から流出するように、かつこのような流体の前記残り部分が前記廃物導管への流体の流れなしに前記通路を通って前記フルイディクス結節点から流出するように選択された、流体抵抗を有する、請求項1に記載のフルイディクス回路。
【請求項9】
共通の容積へ複数の試薬を連続的に輸送する装置であって、
出口及び複数の試薬入口を有するフルイディクス結節点と、各々が流体抵抗を有する1以上の通路で前記フルイディクス結節点に流体連通する少なくとも1つの廃物ポートとを含むフルイディクス回路であって、試薬が、前記フルイディクス結節点内に層流を形成するように単一の試薬入口のみを通して流れるときはいつでも、このような試薬の一部が前記出口を通して前記フルイディクス結節点から流出するように、かつこのような試薬の残り部分が前記1以上の通路を通って前記フルイディクス結節点から流出するように、前記通路の前記流体抵抗を選択することで、前記1以上の通路を通っての前記1以上の廃物ポートへの試薬の流れなく、すべての試薬が入口から前記フルイディクス結節点へ流入するように方向付けられる、フルイディクス回路と、
試薬入口と試薬貯蔵部を接続する導管内に各々が配置された複数の試薬バルブと、
すべての他の前記試薬バルブが閉止された事前に選択された期間の間、事前に選択された試薬バルブを開放するように前記複数の試薬バルブの各々を開閉する信号を生成する制御システムであって、これにより、所定の一連の試薬流れが前記出口を通して輸送される、制御システムと
を含む、装置。
【請求項10】
洗浄入口及び洗浄バルブを更に含み、前記洗浄入口は、前記洗浄入口が前記出口を通して前記フルイディクス結節点に流体連通するように前記出口に接続され、かつ、前記洗浄バルブは、前記制御システムと機能的に連関しかつ前記洗浄入口を洗浄流体貯蔵部に接続する導管内に配置されているため、前記制御システムが前記洗浄バルブを開放しかつ前記試薬バルブのすべてを同時に閉止するときはいつでも、洗浄溶液が、前記1以上の通路を通って前記フルイディクス結節点を通って前記1以上の廃物ポートへ流れる、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記1以上の廃物ポート及び前記フルイディクス結節点に対して放射状に配置された複数の前記通路に流体連通を提供し、かつ前記フルイディクス結節点と前記廃物導管との間に流体連通を提供する、廃物導管を更に含み、各前記通路は単一の前記流体入口を有し、かつ該流体入口からの前記フルイディクス結節点に対して遠位の前記通路の各部分は、流体が、前記フルイディクス結節点内に前記層流を形成するように単一の流体入口のみを通して流れるときはいつでも、このような流体の一部が前記出口を通して前記フルイディクス結節点から流出するように、かつこのような流体の前記残り部分が前記廃物導管への流体の流れなしに前記通路を通って前記フルイディクス結節点から流出するように選択された、流体抵抗を有する、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
多段階の電気化学的プロセスを実行する装置であって、
反応容器内の生成物を監視する電子センサーに連結された反応容器と、
選択された電解質を含む複数の異なった電解質を、前記反応容器へ連続的に輸送するフルイディクス回路を含むフルイディクスシステムと、
前記選択された電解質と接触し、前記電子センサーに参照電圧を提供する参照電極であって、前記参照電圧は、前記参照電極が選択されていない電解質と接触することなく提供されている、参照電極と
を含む、装置。
【請求項13】
前記フルイディクス回路は出口及び複数の流体入口を有するフルイディクス結節点を含み、かつ少なくとも1つの廃物ポートが、各々が流体抵抗を有する1以上の通路で前記フルイディクス結節点に流体連通し、電解質が、前記フルイディクス結節点内に流れを形成するように単一の流体入口のみを通して流れるときはいつでも、このような電解質の一部が前記出口を通して前記フルイディクス結節点から流出するように、かつこのような電解質の残り部分が、前記1以上の通路を通って前記フルイディクス結節点から流出するように、前記通路の前記流体抵抗が選択されるため、選択されていない入口から前記フルイディクス結節点に流入するすべての電解質が、前記1以上の通路を通って前記1以上の廃物ポートに方向付けられる、請求項12に記載の装置。
【請求項1】
複数の流体流れを制御するフルイディクス回路であって、
出口と複数の流体入口とを有するフルイディクス結節点と、
各々が流体抵抗を有する1以上の通路で前記フルイディクス結節点に流体連通する少なくとも1つの廃物ポートであって、流体が、前記フルイディクス結節点内に流れを形成するように単一の流体入口のみを通して流れるときはいつでも、このような流体の一部が前記出口を通して前記フルイディクス結節点から流出するように、かつこのような流体の残り部分が前記1以上の通路を通って前記フルイディクス結節点から流出するように、前記通路の前記流体抵抗を選択するため、選択されていない入口から前記フルイディクス結節点に流入するすべての流体が、前記1以上の通路を通って前記1以上の廃物ポートに方向付けられる、少なくとも1つの廃物ポートと
を含む、フルイディクス回路。
【請求項2】
前記複数の流体入口は前記出口に対して放射状に配置されている、請求項1に記載のフルイディクス回路。
【請求項3】
前記フルイディクス結節点内に形成された前記流れは層流である、請求項1に記載のフルイディクス回路。
【請求項4】
前記フルイディクス結節点は対向する面及び垂直な面を有する、請求項3に記載のフルイディクス回路。
【請求項5】
前記複数の入口は、前記出口が配置された前記表面に垂直な前記結節点の表面に配置されている、請求項4に記載のフルイディクス回路。
【請求項6】
前記複数の入口は、前記出口が配置された前記表面に対向する前記結節点の表面に配置されている、請求項4に記載のフルイディクス回路。
【請求項7】
前記1以上の廃物ポートに連通する前記通路は、前記出口及び前記複数の流体入口が配置された表面に垂直な表面に配置されている、請求項6に記載のフルイディクス回路。
【請求項8】
前記1以上の廃物ポート及び前記フルイディクス結節点に対して放射状に配置された複数の前記通路に流体連通を提供し、かつ前記フルイディクス結節点と前記廃物導管との間に流体連通を提供する、廃物導管を更に含み、各前記通路は単一の前記流体入口を有し、かつ該流体入口からの前記結節点に対して遠位の前記通路の各部分は、流体が前記フルイディクス結節点内に前記層流を形成するように単一の流体入口のみを通して流れるときはいつでも、このような流体の一部が前記出口を通して前記フルイディクス結節点から流出するように、かつこのような流体の前記残り部分が前記廃物導管への流体の流れなしに前記通路を通って前記フルイディクス結節点から流出するように選択された、流体抵抗を有する、請求項1に記載のフルイディクス回路。
【請求項9】
共通の容積へ複数の試薬を連続的に輸送する装置であって、
出口及び複数の試薬入口を有するフルイディクス結節点と、各々が流体抵抗を有する1以上の通路で前記フルイディクス結節点に流体連通する少なくとも1つの廃物ポートとを含むフルイディクス回路であって、試薬が、前記フルイディクス結節点内に層流を形成するように単一の試薬入口のみを通して流れるときはいつでも、このような試薬の一部が前記出口を通して前記フルイディクス結節点から流出するように、かつこのような試薬の残り部分が前記1以上の通路を通って前記フルイディクス結節点から流出するように、前記通路の前記流体抵抗を選択することで、前記1以上の通路を通っての前記1以上の廃物ポートへの試薬の流れなく、すべての試薬が入口から前記フルイディクス結節点へ流入するように方向付けられる、フルイディクス回路と、
試薬入口と試薬貯蔵部を接続する導管内に各々が配置された複数の試薬バルブと、
すべての他の前記試薬バルブが閉止された事前に選択された期間の間、事前に選択された試薬バルブを開放するように前記複数の試薬バルブの各々を開閉する信号を生成する制御システムであって、これにより、所定の一連の試薬流れが前記出口を通して輸送される、制御システムと
を含む、装置。
【請求項10】
洗浄入口及び洗浄バルブを更に含み、前記洗浄入口は、前記洗浄入口が前記出口を通して前記フルイディクス結節点に流体連通するように前記出口に接続され、かつ、前記洗浄バルブは、前記制御システムと機能的に連関しかつ前記洗浄入口を洗浄流体貯蔵部に接続する導管内に配置されているため、前記制御システムが前記洗浄バルブを開放しかつ前記試薬バルブのすべてを同時に閉止するときはいつでも、洗浄溶液が、前記1以上の通路を通って前記フルイディクス結節点を通って前記1以上の廃物ポートへ流れる、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記1以上の廃物ポート及び前記フルイディクス結節点に対して放射状に配置された複数の前記通路に流体連通を提供し、かつ前記フルイディクス結節点と前記廃物導管との間に流体連通を提供する、廃物導管を更に含み、各前記通路は単一の前記流体入口を有し、かつ該流体入口からの前記フルイディクス結節点に対して遠位の前記通路の各部分は、流体が、前記フルイディクス結節点内に前記層流を形成するように単一の流体入口のみを通して流れるときはいつでも、このような流体の一部が前記出口を通して前記フルイディクス結節点から流出するように、かつこのような流体の前記残り部分が前記廃物導管への流体の流れなしに前記通路を通って前記フルイディクス結節点から流出するように選択された、流体抵抗を有する、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
多段階の電気化学的プロセスを実行する装置であって、
反応容器内の生成物を監視する電子センサーに連結された反応容器と、
選択された電解質を含む複数の異なった電解質を、前記反応容器へ連続的に輸送するフルイディクス回路を含むフルイディクスシステムと、
前記選択された電解質と接触し、前記電子センサーに参照電圧を提供する参照電極であって、前記参照電圧は、前記参照電極が選択されていない電解質と接触することなく提供されている、参照電極と
を含む、装置。
【請求項13】
前記フルイディクス回路は出口及び複数の流体入口を有するフルイディクス結節点を含み、かつ少なくとも1つの廃物ポートが、各々が流体抵抗を有する1以上の通路で前記フルイディクス結節点に流体連通し、電解質が、前記フルイディクス結節点内に流れを形成するように単一の流体入口のみを通して流れるときはいつでも、このような電解質の一部が前記出口を通して前記フルイディクス結節点から流出するように、かつこのような電解質の残り部分が、前記1以上の通路を通って前記フルイディクス結節点から流出するように、前記通路の前記流体抵抗が選択されるため、選択されていない入口から前記フルイディクス結節点に流入するすべての電解質が、前記1以上の通路を通って前記1以上の廃物ポートに方向付けられる、請求項12に記載の装置。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公表番号】特表2012−528328(P2012−528328A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513046(P2012−513046)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際出願番号】PCT/US2010/001547
【国際公開番号】WO2010/138186
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(502221282)ライフ テクノロジーズ コーポレーション (113)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際出願番号】PCT/US2010/001547
【国際公開番号】WO2010/138186
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(502221282)ライフ テクノロジーズ コーポレーション (113)
【Fターム(参考)】
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