説明

試薬カップ機器

【解決手段】試薬カップ機器(1)は、個々に密封された複数の試薬カップ区画室(7)を備えている。各試薬カップ区画室は、開放端と、少なくとも一部が化学試薬で塗布された内側面とを有する試薬カップ(8)を保持する。各試薬カップ区画室(7)は、閉じており、第一破断シール(5)で覆われた第一端部と、第二破断シール(10)で覆われた第二端部とを有する。各試薬カップ区画室は、破断シール(5,10)により個々に密封されているのであるから、残りの試薬カップ区画室(7)の密封性を破ることなく、1つの試薬カップ区画室(7)の内部にアクセスでき、それによりその内部の試薬カップ(8)にアクセスできる。それにより試薬カップ(8)内の化学試薬の劣化が抑えられ、従って試薬カップ(8)の期待される寿命が延びる。アクセスが望まれる際に、より容易に破断シール(5,10)を破断できるよう、シール(5,10)には弱化領域が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の試薬カップ、特に、血液サンプルのような生物学的サンプルを分析するための装置内で使用され得るような種類の試薬カップ、を保持するための機器に関する。より具体的には、本発明は、上記のように定義された機器であって、かつそのような装置に据え付けられるのに適した機器に関する。
【背景技術】
【0002】
血液サンプルのような生物学的サンプルの解析を行うための各種装置が知られている。あるサンプルが、例えば特定のパラメータについて解析されるとき、それは、その特定のパラメータに関連した化学試薬が入れられた試薬カップにしばしば供給される。化学試薬の劣化を防止するためには、試薬カップは、密封条件下で保存されることが好ましい。更に、複数の試薬カップを容易に分析装置内に据え付けるためには、複数の試薬カップは、例えばカセット等のホルダー内に配置され、その複数の試薬カップを含むホルダーの全体が密封される。しかしながら、そのホルダーから1つの試薬カップを抜き取るためには、その密封性は破られ、それによりホルダー内の残りの試薬カップは、もはや密封条件下での保存ではなくなってしまい、これらの試薬カップ、特にそれに入れられる化学試薬、の期待される寿命はかなり短くなってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
米国特許第6,551,833号明細書は、サンプルカップが搭載されたサンプルカップカセットが周辺に配置されるカセットドラムを有した診断測定機器を開示している。サンプルカップカセットからのサンプルカップが、重力により、処理ドラムへと搬送される。これを達成するために、サンプルカップは、サンプルカップカセット内で垂直方向に積まれて配列される。それによれば、サンプルカップカセットとその内部に配列される各サンプルカップは共に密封されるが、1つのサンプルカップが、処理ドラムに搬送されようとすると、全てのサンプルカップについての密封性が破られてしまう。従って、上述の問題が生ずる。
【0004】
そこで、本発明の目的は、各試薬カップの期待される寿命が、従来の試薬カップ機器と比較して長くなるような、複数の試薬カップを保持するための試薬カップ機器を提供することにある。
【0005】
本発明の更なる目的は、各試薬カップの期待される寿命について妥協することなく、各試薬カップに対するアクセスを容易にすることができるような、複数の試薬カップを保持するための試薬カップ機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一様相によれば、上記の、及び他の目的は、個々に密封された複数の試薬カップ区画室を備えた試薬カップ機器であって、各試薬カップ区画室は、閉じており、第一破断シールで覆われた第一端部と、第二破断シールで覆われた第二端部とを有し、各区画室は、開放端と、少なくとも一部が化学試薬で塗布された内側面とを有する試薬カップを保持することを特徴とする試薬カップ機器を提供することにより達成される。
【0007】
試薬カップ機器は、複数の試薬カップ区画室を備え、各試薬カップ区画室は、1つの試薬カップを保持している。従って、試薬カップ機器は、複数の試薬カップを保持していることになり、それにより、1つの試薬カップ機器を挿入することで、分析装置内に複数の試薬カップが挿入できる。試薬カップは、開放端及び内側面を有する。内側面の少なくとも一部は、化学試薬が塗布されている。この文脈においては、‘化学試薬’とは、試薬カップに供給されるサンプル、例えば血液サンプル、が特定の生化学的マーカーを含む場合に、そのサンプルと反応するような、乾燥状態の物体を意味するものとして解釈されるべきである。その化学試薬は、分析過程の後のある時点で、時間分解蛍光分析の基礎としての役割を果たす蛍光ランタニドキレートラベルを有益に備えていてもよい。この場合、時間分解蛍光分析の結果により、サンプル内の特定生化学的マーカーのレベル量が示される。適した化学試薬システムが米国特許第6,429,026号明細書に記述されている。
【0008】
試薬カップは、化学試薬が吸収されている吸収材料が有効に塗布されていてもよい。
【0009】
試薬カップ区画室は、個々に閉じているか、密封されており、いずれの試薬カップ区画室との間でも、液体が通じるようなことはない。従って、他の試薬カップ区画室のいずれにもアクセスすることなく、またそれらのいずれの密封性を破ることなく、各試薬カップ区画室の内部にアクセスできる。各試薬カップは、各試薬カップ区画室に保持されているので、このことは、他の試薬カップを防御する密封性を破ることなく、各試薬カップにアクセスできる、ということを意味している。これら大変有利なことである。それにより使用者が、機器の残りの試薬カップの期待される寿命について妥協することなく、分析目的のために試薬カップの1つを使用することができるからである。同時に、複数の試薬カップを保持する機器が提供され、複数の試薬カップを分析装置内に容器に挿入できること、サンプルが分析装置内に導入されたときに、関連する試薬カップが利用できる、等のそれに関連する利点も、それにより得られる。
【0010】
各試薬カップ区画室は、第一破断シールで覆われた第一端部と、第二破断シールで覆われた第二端部とを有している。これらのシールは破断できるものであるから、それらのシールの1枚を介して、試薬カップ区画室の内部へのアクセスが可能となり、それによりその内部に格納されている試薬カップへのアクセスが可能となる。更に、破断シールが互いに対向するように配置されている場合には、その破断シールの1枚を介して、打抜きヘッドを所望の試薬カップ区画室内に導入させ、その打抜きヘッドを利用して、他方の破断シートを通して、試薬カップ区画室から対応する試薬カップを打ち抜き出すことができるようになる。このことは以下に更に記述される。
【0011】
試薬カップの各々は、試薬カップ区画室内に遊嵌的に配置可能である。このように、試薬カップは、試薬カップ区画室に固定されておらず、例えばシールの1枚を破断すると、容易にそこから外すことができる。試薬カップ区画室の各々は、他の試薬カップ区画室の各々から個々に隔絶されている。この文脈において、‘各々から個々に隔絶’とは、任意の試薬カップ区画室の全ての壁面が、他の試薬カップ区画室のうちの1つの全ての壁面の部分を全く形成しないか、するとしても壁面の小部分が形成するのみである、ということを意味するものとして解釈されるべきである。それで、この実施形態によれば、任意の試薬カップ区画室の全ての壁面の大方が、他の試薬カップ区画室と供給しない、すなわち、壁面の大方が、他の試薬カップ区画室に隣接して配置されておらず、または他の試薬カップ区画室との境界を形成していない。好適には、任意の試薬カップ区画室の全壁面の10%未満、例えば5%以上10%未満の壁面が他の試薬カップ区画室と共有される。
【0012】
この構成によれば、湿気の浸透をかなり抑えることができる。すなわち、試薬カップ区画室の内部を非常に乾燥した状態に保つことができる。特に、この構成によれば、密封性が破断された試薬カップ区画室の隣りに配置される密封試薬カップ区画室に、湿気が入り込むことを防ぐことができる。試薬カップ区画室が互いに隔絶されていなければ、密封試薬カップ区画室ともはや密封されていない隣りの試薬カップ区画室との間の共通壁部を介して、湿気が密封区画室に入り込む、というリスクがある。
【0013】
試薬カップ機器は、枠部壁を有する枠部を更に備え、当該枠部は、複数の試薬カップ区画室を保持できる。この場合、その枠部壁は、試薬カップ機器の外側の境界を有効に画定している。
【0014】
枠部壁と試薬カップ区画室とは隔絶可能である。この構成により、密封試薬カップ区画室内に配置された試薬カップを湿気から防ぐことができる。湿気は、枠部壁を介すると共に試薬カップ区画室の壁を介して拡散して、試薬カップ区画室内に入り込む必要があるからである。
【0015】
枠部は、少なくとも1枚の破断シールで覆われており、その枠部の破断シールは、試薬カップ区画室の第一及び/又は第二破断シールと一体であってもよい。この実施形態によれば、試薬カップ機器は、2枚の破断シールで有効に覆われている。すなわち、1枚が、試薬カップ区画室の各々の第一端部と共に枠部の第一端部を覆っており、他の1枚が、試薬カップ区画室の各々の第二端部と共に枠部の第二端部を覆っている。この場合、各試薬カップ区画室の個々の密封性を得るために、試薬カップ区画室の周りにしっかりと破断シールが固着されることが保証されるべきである。代わりとして、各試薬カップ区画室に対する個々の破断シールが設けられ、枠部に対して1枚以上の付加的シールが設けられるようにしてもよい。
【0016】
枠部は、適切な環状オレフィン共重合体(COC)のような重合体材料で形成できる。好ましくは、トパスアドバンストポリマー(Topas Advanced Polymers)社製の材料、トパス(Topas(登録商標))が、この目的のためには大変適した材料である。枠部をトパスで形成する場合、湿気に対して非常に低い透過性を有し、それにより試薬カップ機器の内部を相対的に乾燥した状態に維持できるからである。代わりとしては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリスチレン(PS)、ポリスチレン−ポリエチレン(PS−PE)、又は液晶重合体(LCP)のような、他の適した重合体材料も使用できる。
【0017】
枠部の少なくとも外側部分は、金属材料の被膜が施されている。これによっても、枠部の湿気の透過性を抑えることができる。金属材料としては、例えば、アルミニウム、金、ステンレス鋼、又は他の適した金属材料が考えられる。アルミニウムがその目的には大変適している。
【0018】
試薬カップ区画室は、二次元的のパターンで配置されることが可能である。この構成により、他の試薬カップ区画室のいずれの密封性を破ることなく、各試薬カップ区画室に対する個々のアクセスが大変容易になる。
【0019】
第一破断シール及び/又は第二破断シールは、1つ以上の弱化領域を備えることが可能である。そのような弱化領域により、望まれれば、より容易にシールを破断することができるようになり、対象の密封性が意図した仕方、例えば、近くの試薬カップ区画室の破断シールに影響を与えることなく、意図した方向で及び/又は意図したパターンで破られる等の意図した仕方で破られる、ということが更に保証される。好適な実施形態によれば、試薬カップ区画室の破断シールは、互いに対向して配置されている。分析目的のために試薬カップ区画室内に配置された試薬カップを使用することが望まれる場合には、打抜きヘッドが、破断シールの1枚を介して試薬カップ区画室内に入り込む。打抜きヘッドは、好ましくは、この破断シールを切断することができる。その後、打抜きヘッドは、他の破断シールを通して試薬カップを打ち抜く。多くの場合、試薬カップに入れられたサンプルの分析の間、分析装置内で試薬カップが正立できるよう、試薬カップは、実質的に平らな底を有している。従って、破断シールを通して試薬カップを打ち抜くためには、打抜きヘッドによりかなり大きな力が必要とされる可能性がある。しかしながら、試薬カップが打ち抜かれるべき破断シールに弱化領域を設けることにより、その必要な力をかなり減らすことができる。
【0020】
弱化領域は、レーザーカッティング技法により設けることができる。この実施形態によれば、破断シールの材料の小部分が、そのシールを貫通させることなく、レーザーにより、例えば十字のパターンで取り除かれる。
【0021】
試薬カップ機器は、少なくとも1つの乾燥要素を有することが可能である。1つ以上の乾燥要素を試薬カップ機器内に配設可能であるが、それは、例えば各試薬カップ区画室の間等の試薬カップ区画室の外での配設である。代わりに、又は追加的に、試薬カップ区画室の少なくとも1つが乾燥要素を有していてもよい。乾燥要素によれば、湿気が試薬カップ機器内に入り込むことを避けようとしたにも拘わらず当該機器内に入り込むような場合にも、試薬カップ内に置かれた化学試薬を乾燥した状態に保つことが保証される。これにより、試薬カップ、特にそれに入れられた化学試薬の期待される寿命が延びる。各試薬カップ区画室の間に1つ以上の乾燥要素を配置することにより、1つの試薬カップ区画室の密封性が破られて、当該試薬カップ区画室の壁を通して、試薬カップ機器内に湿気が拡散しても、この湿気がそれらの壁を介して他の試薬カップ区画室に入ることが防止される。好適には、乾燥要素は、シリカゲルであるが、分子ふるい、紙、又は異なる種類のクレーのような他の適した材料も使用することができる。
【0022】
第一破断シール及び/又は第二破断シールは、金属又は合金、好ましくはアルミニウム又はアルミニウムの合金で形成され得る。アルミニウム積層体が有効に使用できる。例えば、アルミブリスターホイルや、PETP/AI/PE積層体のような、ポリエステル、アルミニウム及びポリエチレンの積層体である。あるいは、他の適した金属、合金及び/又は積層体も使用できるし、適した非金属材料も使用できる。破断シールを積層体で形成するときには、弱化領域は、各層の一層のみに形成される。
【0023】
試薬カップ区画室は、適切な環状オレフィン共重合体(COC)のような重合体材料で形成できる。好ましくは、トパスアドバンストポリマー(Topas Advanced Polymers)社製の材料、トパス(Topas(登録商標))が、この目的のためには大変適した材料である。試薬カップ区画室をトパスで形成する場合、湿気に対して非常に低い透過性を有し、それにより試薬カップ区画室の内部を相対的に乾燥した状態に維持できるからである。代わりとしては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリスチレン(PS)、ポリスチレン−ポリエチレン(PS−PE)、又は液晶重合体(LCP)のような、他の適した重合体材料も使用できる。試薬カップ機器が上述のような枠部を備える場合、その枠部と試薬カップ区画室とは、同じ材料で形成された一体部分を有効に形成できる。
【0024】
試薬カップは、重合体材料、好ましくはポリスチレン(PS)で形成できる。あるいは他の適した重合体材料も使用可能である。
【0025】
本発明の第二様相によれば、上記の、又は他の目的は、先行する請求項のいずれかによる試薬カップ機器を操作する方法であって、破断シールを切断するよう調整された切断部と、対応する試薬カップ区画室から試薬カップを打ち抜くよう調整された打抜き部とを備えた打抜きヘッドを用意し、前記打抜きヘッドの前記切断部を使用して、試薬カップ区画室の第一破断シールを切断し、前記打抜きヘッドの前記打抜き部を使用して、前記試薬カップ区画室に置かれた試薬カップを、前記試薬カップ区画室の前記第二破断シールを通して打ち抜くことを特徴とする方法を提供することにより達成される。
【0026】
当業者であれば、本発明の第一様相に関連して記述された如何なる特徴も、本発明の第二様相と均等に組み合わせることが可能であり、またその逆も可能であることが、容易に認識できることに注目すべきである。
【0027】
破断シールは、好ましくは、上述のように互いに対向して配置されるが、それにより、打抜きヘッドは、実質的に単一の直線運動で、切断と打抜きのステップを実行することができる。
【0028】
第一破断シールに1つ以上の弱化領域が設けられなくても、打抜きヘッドの切断部が第一破断シールを切断できるよう、その切断部は、好ましくは、十分に鋭利である。
【0029】
打抜きヘッドの打抜き部は、丸くなっている。それにより、試薬カップやそれに入れられる化学試薬に損傷を与えることなく、試薬カップを第二破断シールを通して打ち抜けるように調整されている。好適には、打抜きヘッドの打抜き部は、打抜きステップの間、試薬カップの上面を押すようにしている。それにより、打抜きヘッドが試薬カップの底の部分に届くことが防がれ、化学試薬を傷付ける危険を最小限にすることができる。上述のように、試薬カップは、第二破断シールの弱化領域を通して有効に打ち抜かれる。
【0030】
打抜きヘッドは、切断ステップの間、及び打抜きステップの間、実質的に垂直方向に沿って動かすことが可能である。それにより試薬カップは、打抜きヘッドにより第二破断シールを通して打ち抜かれるときに、概ね重力により移動できることとなる。
【0031】
本発明は、以下の添付の図面を参照して、更に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、本発明の実施形態による試薬カップ機器の斜視図である。
【図2】図2は、図1の試薬カップ機器の端面図である。
【図3】図3は、図1及び2の試薬カップ機器の側面図である。
【図4】図4は、図1−3の試薬カップ機器の斜視図であり、破断可能なシールが剥がされた状態を示す図である。
【図5】図5は、図1−4の試薬カップ機器の断面図である。
【図6】図6は、図1−5の試薬カップ機器の斜視図であり、一部が取り外された状態を示す図である。
【図7】図7は、図1−6の試薬カップ機器の分解組立図である。
【図8】図8は、本発明の実施形態による方法を実施する際に使用される打抜き機器を示す図である。
【図9】図9は、本発明の実施形態による方法を実施する際に使用される打抜き機器を示す図である。
【図10】図10は、本発明の実施形態による方法を実施する際に使用される打抜き機器を示す図である。
【図11】図11は、本発明の実施形態による方法を実施する際に使用される打抜き機器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、本発明の実施形態による試薬カップ機器1の斜視図である。試薬カップ機器1は、その試薬カップ機器1の外側境界を規定する外壁を有する枠部2を備えている。保持部4a,4bが、枠部2の外壁3に当接して配されている。保持部4aは、その試薬カップ機器1を分析装置内に案内するために使用される。分析装置は、いくつかの試薬カップ機器、例えば、異なる分析のための各種化学試薬が入れられた試薬カップを備えた試薬カップ機器を保持できる。保持部4bは、オペレーターが、例えば試薬カップ機器1を装置に挿入する際に、その試薬カップ機器1を保持できるように使用されるものである。
【0034】
試薬カップ機器1の上部には、その試薬カップ機器1の内部の全体を密封すると共に、その試薬カップ機器1内に配列された複数の試薬カップ区画室(見えない)の各々を個々に密封する第一破断シール5が備わっている。試薬カップ機器1の下部には、同様に、その試薬カップ機器1の内部を密封すると共に、各試薬カップ区画室を個々に密封する第二破断シール(見えない)が備わっている。
【0035】
第一破断シール5には、試薬カップ機器1の試薬カップ内に入れられている化学試薬の種類に関する情報を記載することができるラベル6を貼ることができる。その情報は、テキストメッセージ又は色コードのような可視情報の形態で、及び/又は、バーコード又はトランスポンダーのような機械読取りコードの形態で、構成できる。
【0036】
図2は、図1の試薬カップ機器の端面図であり、図3は、図1及び2の試薬カップ機器の側面図である。図2及び3においては、保持部4a,4bが明確に分かる。
【0037】
図4は、図1−3の試薬カップ機器の斜視図である。図4の試薬カップ機器1においては、第一破断シールが剥がされ、それによりその試薬カップ機器1の内部が露わにされている。そこで、試薬カップ機器1は、各々が試薬カップ8を保持した16個の試薬カップ区画室7を備えていることが分かる。各試薬カップ区画室7の間で画定される空間には、試薬カップ機器1の内部の乾燥が維持されることを保証するために、乾燥要素9が配されている。各試薬カップ区画室7は、互いに離れて、また枠部2の外壁3から離れて配置されている。上述のように、このことにより、湿気に関する透過性が落ち、それにより試薬カップ8の乾燥を維持することがより容易になる。
【0038】
図5は、図1−4の試薬カップ機器1の長手方向に沿った断面図である。図5において、各試薬カップ8が試薬カップ区画室7内でどのように配置されているのかがよく分かる。該図に示されている通り、各試薬カップ8は、区画室7内で遊嵌的に配置されており、区画室7の壁には固定されていない。更に、第一破断シール5と同様、第二破断シール10も見えており、シール5で、個々の試薬カップ区画室7の各々の上縁の全てが封緘されていると共に、シール10で、個々の試薬カップ区画室7の各々の下縁の全てが封緘されており、これにより各試薬カップ区画室7が個々に密閉されている。
【0039】
分析目的のために試薬カップ機器1の試薬カップ8を使用することが望まれる場合には、試薬カップ区画室7の1つに対応する位置において、第一破断シール5が、打抜きヘッドにより破断可能となっている。打抜きヘッドは、試薬カップ8を打って第二破断シール10を貫通させる。それにより、残った試薬カップ区画室7の密封性を破断させることなく、当該試薬カップ8が試薬カップ区画室7から打ち抜かれる。
【0040】
図6は、図1−5の試薬カップ機器の斜視図である。図6においては、試薬カップ機器1の一部が取り除かれており、それにより図5の切断面が示されている。
【0041】
図5及び6から分かるように、各試薬カップ区画室7は、個々に互いに隔絶されており、いずれの試薬カップ区画室7との間でも空気や液体が通じることはない。
【0042】
図7は、図1−6の試薬カップ機器の分解組立図である。そこで、試薬カップ機器1の個々の部分が、図7に明確に示されている。更に、付加的なラベル11があることが分かる。付加的ラベル11は、通常、第二破断シール10に張り付けられる。
【0043】
図1−7に示された実施形態においては、枠部2、保持部4a,4b及びカップ区画室7は全て、トパスアドバンストポリマー(Topas Advanced Polymers)社製の材料、トパス(Topas(登録商標))COCを射出成型して一塊として形成される。カップ区画室7内の試薬カップ8は、ポリスチレン(PS)で形成されている。乾燥要素9は、1グラムのシリカゲルが入った袋を備えている。両破断シール5及び10は、ポリエステルの外側層、アルミニウムの中間層、及びポリエチレンの内側層から成る積層体で形成されている。シール5,10は、枠部2の壁3の周縁部と共に各カップ区画室7の周縁部に熱溶着される。つまり、各カップ区画室7と共に枠部2の内部が、外部環境から、また他のカップ区画室7から、個々に隔絶される。各カップ区画室7の底部において、破断シール10には、内側ポリエチレン層の小部分をレーザーにより十字状に剥がすことにより、弱化領域が設けられている。弱化領域は、シールを貫通することなく設けられる。
【0044】
図8は、本発明の実施形態による方法を実施する際に使用される打抜き機器12の斜視図である。打抜き機器12は、その打抜き機器12の一端に配置された打抜きヘッド13を備えている。打抜きヘッド13は、3つの凹部16の交差部分として形成された3つの鋭利な端部14と、3つの丸み部15とを備えており、図8ではその丸み部の1つが見える状態となっている。3つの鋭利な端部14は、打抜きヘッド13の中心の一点で交わっており、その切断部を構成しており、3つの丸み部15は、打抜きヘッド13の打抜き部を構成している。
【0045】
打抜き機器12は、サンプルを分析する装置内に配置されるように適用され、その装置は、本発明による1つ以上の試薬カップ機器を収納するように適用される。打抜き機器12は、その装置内において、打抜きヘッド13を下に向けて実質的に垂直に置かれている。打抜き機器12は以下のように扱われる。
【0046】
サンプルの分析を目的として、試薬カップ機器の試薬カップを使用したいと望むとき、試薬カップ機器の当該試薬カップが置かれている部分が、即座に打抜きヘッド13の下に持っていかれる。そして、打抜き機器12が実質的に下方向に動かされる。これにより、鋭利な端部14が試薬カップを保持する試薬カップ区画室の第一破断シールを切り裂き、それにより密封性が破られる。その後、丸み部15が試薬カップの上端に突き当たり、その後も打抜き機器12の実質的下方向への動きが続きことにより、試薬カップは押されて、それが第二破断シールを突き抜けることとなる。上述のように、この打抜き処理の間、試薬カップがより容易にシールを破断することができるよう、第二破断シールは、有効に弱化領域を備えている。
【0047】
丸み部15は、試薬カップの上端に突き当たるので、打抜きヘッド13の鋭利な端部14が試薬カップの底の部分に届くことが防がれ、それにより底の部分に塗布された化学試薬を傷付ける危険を最小限にすることができる。
【0048】
図9は、図8の打抜き機器12の打抜きヘッド13を下から見た図である。3つの鋭利な端部14と3つの丸み部15が明確に分かる。
【0049】
図10及び11は、図8の打抜き機器12を2つの異なる角度から見た側面図である。鋭利な端部14と丸み部15の相対的な位置関係が分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個々に密封された複数の試薬カップ区画室を備えた試薬カップ機器であって、
各試薬カップ区画室は、閉じており、第一破断シールで覆われた第一端部と、第二破断シールで覆われた第二端部とを有し、各区画室は、開放端と、少なくとも一部が化学試薬で塗布された内側面とを有する試薬カップを保持することを特徴とする試薬カップ機器。
【請求項2】
前記試薬カップ区画室の各々は、他の試薬カップ区画室の各々から個々に隔絶されていることを特徴とする請求項1に記載の試薬カップ機器。
【請求項3】
枠部壁を有する枠部を更に備え、当該枠部は、前記複数の試薬カップ区画室を保持することを特徴とする請求項1又は2に記載の試薬カップ機器。
【請求項4】
前記枠部壁と前記試薬カップ区画室とは隔絶されていることを特徴とする請求項3に記載の試薬カップ機器。
【請求項5】
前記枠部は、少なくとも1枚の破断シールで覆われていることを特徴とする請求項3又は4に記載の試薬カップ機器。
【請求項6】
前記枠部の前記破断シールは、前記試薬カップ区画室の前記第一及び/又は前記第二破断シールと一体であることを特徴とする請求項5に記載の試薬カップ機器。
【請求項7】
前記枠部は、重合体材料で形成されていることを特徴とする請求項3乃至6のいずれかに記載の試薬カップ機器。
【請求項8】
前記枠部は、環状オレフィン共重合体(COC)で形成されていることを特徴とする請求項7に記載の試薬カップ機器。
【請求項9】
前記枠部の少なくとも外側部分は、金属材料の被膜が施されていることを特徴とする請求項3乃至8に記載の試薬カップ機器。
【請求項10】
前記試薬カップ区画室は、二次元的なパターンで配置されていることを特徴とする先行する請求項のいずれかに記載の試薬カップ機器。
【請求項11】
前記第一破断シール及び/又は前記第二破断シールは、1つ以上の弱化領域を備えていることを特徴とする先行する請求項のいずれかに記載の試薬カップ機器。
【請求項12】
前記弱化領域は、レーザーカッティング技法により設けられたことを特徴とする請求項11に記載の試薬カップ機器。
【請求項13】
少なくとも1つの乾燥要素を有することを特徴とする先行する請求項のいずれかに記載の試薬カップ機器。
【請求項14】
前記第一破断シール及び/又は前記第二破断シールは、金属又は合金であることを特徴とする先行する請求項のいずれかに記載の試薬カップ機器。
【請求項15】
前記第一破断シール及び/又は前記第二破断シールは、アルミニウム又はアルミニウムの合金であることを特徴とする請求項14に記載の試薬カップ機器。
【請求項16】
前記試薬カップ区画室は、重合体材料で形成されていることを特徴とする先行する請求項のいずれかに記載の試薬カップ機器。
【請求項17】
前記試薬カップ区画室は、環状オレフィン共重合体(COC)で形成されていることを特徴とする請求項16に記載の試薬カップ機器。
【請求項18】
前記試薬カップは、重合体材料で形成されていることを特徴とする先行する請求項のいずれかに記載の試薬カップ機器。
【請求項19】
前記試薬カップは、ポリスチレン(PS)で形成されていることを特徴とする請求項18に記載の試薬カップ機器。
【請求項20】
先行する請求項のいずれかによる試薬カップ機器を操作する方法であって、
破断シールを切断するよう調整された切断部と、対応する試薬カップ区画室から試薬カップを打ち抜くよう調整された打抜き部とを備えた打抜きヘッドを用意し、
前記打抜きヘッドの前記切断部を使用して、試薬カップ区画室の第一破断シールを切断し、
前記打抜きヘッドの前記打抜き部を使用して、前記試薬カップ区画室に置かれた試薬カップを、前記試薬カップ区画室の前記第二破断シールを通して打ち抜くことを特徴とする方法。
【請求項21】
前記打抜きヘッドは、前記切断ステップの間、及び前記打抜きステップの間、実質的に垂直方向に沿って動かされることを特徴とする請求項20に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2010−521683(P2010−521683A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−553908(P2009−553908)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【国際出願番号】PCT/DK2008/000106
【国際公開番号】WO2008/113352
【国際公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(500554782)ラジオメーター・メディカル・アー・ペー・エス (20)
【Fターム(参考)】