試薬カートリッジ及び核酸精製キット
【課題】分注チップの外面に付着した液体を簡易な構成で好適に除去できる試薬カートリッジ及び核酸精製キットを提供すること。
【解決手段】被検体から核酸を分離精製するための液体が収容された試薬カートリッジ100であって、前記液体を吸引、保持及び吐出する筒状の分注チップ201の外面に付着したオイル127Aを除去するオイル除去部128を備え、オイル除去部128は、分注チップ201を挿入可能で分注チップ201の外面に接触する切り込み部129Cが形成され、オイル127Aを吸収する拭いフィルター129Aを有する。
【解決手段】被検体から核酸を分離精製するための液体が収容された試薬カートリッジ100であって、前記液体を吸引、保持及び吐出する筒状の分注チップ201の外面に付着したオイル127Aを除去するオイル除去部128を備え、オイル除去部128は、分注チップ201を挿入可能で分注チップ201の外面に接触する切り込み部129Cが形成され、オイル127Aを吸収する拭いフィルター129Aを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試薬カートリッジ及び核酸精製キットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の遺伝子検査技術の発達により、例えば患者から採取した生体試料などの被検体から核酸を抽出して一塩基多型のような遺伝子の差異を検出することで、医薬品に対する感受性をあらかじめ予測できる可能性が示唆されている。
【0003】
被検体から核酸を抽出する場合、検体間の交差汚染を防止したり、感染源の拡散を防止するために、被検体から核酸を抽出するために必要な試薬類を試薬カートリッジ内に収容し、被検体から核酸を抽出するたびにこれら試薬類を使いきって試薬カートリッジごと廃棄するようになっている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また、試薬カートリッジに収容された液体は、内部に空洞を有する分注チップによって吸引、保持されて所定の工程に従って分注あるいは攪拌される。このとき、分注チップの内部に液体を吸引する工程や分注チップから液体を吐出する工程において、液体が分注チップの外面に付着する場合がある。液体が分注チップの外面に付着すると、分注チップを用いて液体を計量する精度が低下したり、分注チップの外面に付着した液体による汚染が広がったりするおそれがある。このため、核酸を分析する自動分析装置などには、分注チップの外面を洗浄する装置が自動分析装置などに備えられている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2005/118772号明細書
【特許文献2】特開2003−215928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の核酸分析装置では、分注チップの外面に付着した液体を除去することができないので、分注チップの外面に付着した液体によって計量誤差が生じることがある。
また、特許文献2に記載の自動分析装置では、分注チップを振動させて分注チップの外面に付着した洗浄液を除去するため、装置構成が複雑になってしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は分注チップの外面に付着した液体を簡易な構成で除去できる試薬カートリッジ及び核酸精製キットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の試薬カートリッジは、被検体から核酸を分離精製するための液体が収容され、分注チップを用いて前記液体が分注される試薬カートリッジであって、前記分注チップの外面に付着した余剰液体を除去する液体除去部を備え、前記液体除去部は、前記分注チップを挿入可能で前記分注チップの外面に接触する貫通路が形成されるとともに前記余剰液体を吸収する拭い部材を有することを特徴とする。
【0009】
また、前記拭い部材は、弾性を有する多孔性材料によって形成されていることが好ましい。
【0010】
また、前記拭い部材には、前記分注チップによって押し広げられる切り込み部が形成されていることが好ましい。
【0011】
また、前記拭い部材は、前記分注チップにおいて前記液体が接触可能な領域の最大外形よりも小さい内径を有する貫通孔を有することが好ましい。
【0012】
また、前記液体がオイルであり、前記拭い部材は親油性を有することが好ましい。
【0013】
また、前記試薬カートリッジは、前記被検体を収容する被検体収容部と、前記液体を収容する液体収容部と、前記分離精製において発生する廃液を収容する廃液収容部と、前記被検体の前記核酸を精製する抽出フィルターカートリッジと、をさらに有することが好ましい。
【0014】
本発明の核酸精製キットは、本発明の試薬カートリッジと、前記分注チップを複数収容するための分注チップ収容体と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の試薬カートリッジ及び核酸精製キットによれば、試薬カートリッジに設けられた液体除去部において余剰液体を拭い部に吸収させるので、分注チップの外面に付着した液体を簡易な構成で除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態の試薬カートリッジを示す斜視図である。
【図2】同試薬カートリッジと分注チップラックとの構成を示す斜視図である。
【図3】同試薬カートリッジにおける抽出フィルターカートリッジの構成を示す断面図である。
【図4】(A)は同試薬カートリッジにおける液体除去部の構成を示す断面図、(B)は液体除去部の一部の構成を示す分解斜視図である。
【図5】(A)ないし(C)は、同液体除去部における拭いフィルターの構成を示す平面図である。
【図6】(A)及び(B)は、同試薬カートリッジにおける液体除去部の作用を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態の試薬カートリッジ及び核酸精製キットについて図1ないし図6を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態の試薬カートリッジ100を示す斜視図である。また、図2は、試薬カートリッジ100と分注チップラック200との構成を示す斜視図である。また、図3は、試薬カートリッジ100における抽出フィルターカートリッジ150の構成を示す断面図である。また、図4(A)は試薬カートリッジ100における液体除去部128の構成を示す断面図で、図4(B)は液体除去部128の一部の構成を示す分解斜視図である。また、図5(A)ないし図5(C)は、液体除去部128における拭いフィルター129Aの構成を示す平面図である。また、図6(A)及び(B)は、試薬カートリッジ100における液体除去部128の作用を説明するための説明図である。
【0018】
図1及び図2に示すように、核酸精製キット10は、被検体から核酸を抽出するための試薬などが収容された試薬カートリッジ100と、液体を分注するための分注チップ201が複数収容された分注チップラック(分注チップ収容体)200とを備えている。本実施形態では、分注チップラック200は同形同大の分注チップ201を複数備えており、試薬カートリッジ100に収容された液体は複数の分注チップ201のいずれかによって分注操作あるいは攪拌操作され、分注チップ201によって液体の間で交差汚染が生じないようになっている。また、分注チップラック200は、使用後の分注チップ201を回収するための容器でもあり、核酸分析装置1における分注チップ201の使用終了後には感染性廃棄物として分注チップ201を分注チップラック200ごと廃棄することができる。
【0019】
試薬カートリッジ100は、略箱状に形成された本体101と、本体101の外面から突出して形成された爪部102とを有している。爪部102は、例えば試薬カートリッジ100が自動分析装置などにセットされたときに、試薬カートリッジ100が転倒しないように自動分析装置の一部と係合できるようになっている。
本体101の外面の一部には、核酸精製キット10の使用時には取り外される薄膜状の封止フィルム103が貼り付けられている。封止フィルム103によって本体101の開口は封止されており、本体101の内部に配置された後述する抽出フィルターカートリッジ150などが本体101から落下しないように、また本体101内部に埃などの異物が混入することが防止できるようになっている。
【0020】
本体101の内部には、生体試料などの被検体が投入されるサンプルウエル(被検体収容部)110と、被検体から核酸を抽出するための試薬などが収容されている試薬ウエル部120と、被検体から核酸を抽出する工程で分離された不要な溶液を廃棄する廃液ウエル(廃液収容部)130と、被検体から抽出された核酸を回収する回収ウエル140と、が一体に形成されている。
【0021】
また、試薬カートリッジ100は、核酸を吸着させる担体を含有する抽出フィルターカートリッジ150を有し、試薬カートリッジ100には、抽出フィルターカートリッジ150が収容される保持部160が一体に形成されている。
【0022】
試薬ウエル部120は、複数の試薬ウエル(試薬収容部)121、122、123、124、125、126と、オイルウエル(オイル収容部)127と、オイル除去部(液体除去部)128とを有している。また、試薬ウエル部120において、複数の試薬ウエル121、122、123、124、125、126、及びオイルウエル127の開口は、封止フィルム104によって封止されている。封止フィルム104は、気体の透過が抑制されていると共に、分注チップ201を突き刺すことによりフィルムを破ることができる構成とすることが好ましく、例えば金属製の薄膜や、プラスチックフィルム等を用いることができる。
【0023】
試薬ウエル121〜126には、細胞膜などの生体物質を溶解する溶解液121Aと、前記溶解液121Aで溶解しきれず担体へ目詰まりを起こしている細胞質などの生体物質を溶解する溶解液122A、担体に吸着された核酸以外の不要物を洗い流すための洗浄液123A、124Aと、担体から核酸を溶出させる溶出液125Aと、溶出液中の核酸濃度を調整するための希釈液126Aがそれぞれの試薬ウエルに個別に収容されている。
また後述の使用様態では分析用の試薬は核酸分析チップに配置した構成としているが、これとは別に試薬ウエルに分析用の試薬を収容した使用方法としても良い。例えば、核酸に対してPCR、及びインベーダー(登録商標)法によるSNP測定を行う試薬の一部があらかじめ混合された分析試薬プレミックスと、をそれぞれの試薬ウエルに個別に収容することができる。
【0024】
オイルウエル127には、例えばPCR反応において反応溶液に重層して用いられる周知のオイル127Aが収容されている。オイル127Aとしては、例えばミネラルオイルやシリコンオイルなどを好適に採用することができる。
【0025】
図4(A)に示すように、オイル除去部128は、分注チップ201(図2参照)の外面に付着するオイル127Aを除去するための拭い部129を内部に有している。
【0026】
図4(A)及び図4(B)に示すように、拭い部129は、親油性を有する拭いフィルター129Aと、オイル除去部128の内部で拭いフィルター(拭い部材)129Aを支持する円筒状の支持部129B、129Dとを有している。拭いフィルター129Aは、オイル除去部128の内径に沿う略円柱形状あるいは略円板形状に形成されており、拭いフィルター129Aの中央には拭いフィルター129Aの中心軸線方向に貫通して形成された切り込み部129Cが設けられている。
また、拭いフィルター129Aは、弾性を有する多孔性部材によって形成されていることが好ましく、例えばスポンジフィルターなどが圧縮して形成されたものを採用することができる。使用される主な物としては、ゴムスポンジ、ウレタンスポンジ、ポリエチレンフォーム、EVAスポンジ、等が上げられるが、多孔を有し弾性変形が可能なスポンジであればこの限りでない。
【0027】
図5(A)に示すように、切り込み部129Cは、拭いフィルター129Aを中心軸線方向に見たときに、拭いフィルター129Aの中心に位置し、十字形状に形成されている。なお、図5(B)に示すように、切り込み部129Cに代えて、拭いフィルター129Aを中心軸線方向に見たときに真円形に形成された切り込み部129Eを有していてもよい。また図5(C)に示すように、切り込み部129Cに代えて、拭いフィルター129Aの径方向内側に膨出した膨出部を有する円形の切り込み部129Fを有していてもよい。
【0028】
図2に示すように、廃液ウエル130は、抽出フィルターカートリッジ150の外径形状に沿って形成された凹部で、抽出フィルターカートリッジ150を支持可能な形状になっている。廃液ウエル130に抽出フィルターカートリッジ150が取り付けられた状態では、抽出フィルターカートリッジ150は試薬カートリッジ100内で転倒しないようになっている。
【0029】
回収ウエル140は、廃棄ウエル130と同様に抽出フィルターカートリッジ150を支持できるようになっている。回収ウエル140の底部は、抽出フィルターカートリッジ150の担体から溶出液125Aによって溶出された核酸溶液を貯留できる容器形状を有している。
【0030】
廃液ウエル130と回収ウエル140とは、試薬カートリッジ100内で隣り合う位置関係に設けられている。これは、抽出フィルターカートリッジ150の洗浄を廃液ウエル130において行った後に抽出フィルターカートリッジ150を回収ウエル140に移動させるときの抽出フィルターカートリッジ150の動線を短くするためである。これにより、試薬カートリッジ100上を通過する抽出フィルターカートリッジ150が試薬カートリッジ100などを汚染する可能性を軽減することができる。
【0031】
図3に示すように、抽出フィルターカートリッジ150は、抽出フィルターカートリッジの外枠となる略筒状の本体151と、本体151の内部に設けられた抽出フィルターユニット152とを有している。
【0032】
本体151は、上端151Aと下端151Bとがいずれも開口している。また、抽出フィルターユニット152よりも下端151B側において、上端151A側の開口よりも開口径が小さくなる漏斗状に本体151は形成されており、下端151Bにはノズル状の排出口151Cが下方向に突出して設けられている。
上端151A側の開口は、被検体が溶解された状態の溶解液121Aや122A、洗浄液123A、124A、溶出液125Aなどが供給されるようになっている。これらの液体は、フィルターユニット152を通過して排出口151Cから排出されるようになっている。
【0033】
フィルターユニット152は、核酸を吸着する性質を有する担体を含有する吸着フィルター152Aと、吸着フィルター152Aよりも下端151B側に配置され吸着フィルター152Aの変形を防止するサポート部材152Bとを有している。
【0034】
吸着フィルター152Aは、核酸を吸着可能な多孔性材料によって膜状に形成されている。吸着フィルター152Aの材料としては、洗浄液123A、124A内では核酸が吸着状態となり、溶出液125A内では核酸の吸着状態が弱まる性質を有する材料であることが好ましい。また、吸着フィルター152Aは、親水基として水酸基を導入した多孔性材料であることが好ましい。具体的には、吸着フィルター152Aは、シリカによって、あるいは他の物質上にシリカを結合させて形成されている。なお、吸着フィルター152Aの材料としては、有機物質の存在下で生体物質を吸着することができる材料であれば、特に限定されるものではない。また、吸着フィルター152Aは、例えばガラスウールなどの繊維材を重ね合わせて形成することで多孔性を有するようになっていてもよい。
【0035】
サポート部材152Bは、少なくとも核酸に対する吸着性が低く、かつ被検体から核酸を抽出する反応を阻害しない材料によって形成されていることが好ましい。例えば、サポート部材152Bは樹脂の粒を焼き固めて形成することができる。サポート部材152Bの剛性は吸着フィルター152Aよりも高くなっており、吸着フィルター152Aが本体151内で変形することがサポート部材152Bによって抑制されている。
【0036】
図2に示すように、保持部160は、試薬カートリッジ100において抽出フィルターカートリッジ150が収容される初期位置になっている。また、保持部160の底部には、液体を吸収する図示していない吸収体を設けることができる。この吸収体は、抽出フィルターカートリッジ150を保持部160に収容したときに抽出フィルターカートリッジ150の排出口151C側の外面に接触するようになっている。このため、例えば抽出フィルターカートリッジ150内に洗浄液123Aを供給したときに排出口151Cの外面に洗浄液123Aが付着した場合に、吸収体に洗浄液123Aを吸収させて洗浄液123Aを除去することができる。
【0037】
以上に説明した構成の、本実施形態の試薬カートリッジ100及び核酸精製キット10の作用について、液体除去部128の作用を中心に説明する。以下では、核酸精製キット10を適用する対象となる自動分析装置として、分注チップ201を搬送する分注搬送機構を有し、核酸を精製した後にPCR解析をする自動分析装置を例に挙げて説明する。
【0038】
まず、ユーザの手作業によって図1に示す試薬カートリッジ100の封止フィルム103が取り外される。続いて、試薬カートリッジ100のサンプルウエル110に例えば全血試料をユーザの手作業によって注入する。
【0039】
続いて、試薬ウエル121〜126に貯留された各種の試薬を所定の手順に従って自動分析装置の分注搬送機構によって分注、混合する。これにより、サンプルウエル110に供給された全血試料中の細胞は溶解され細胞溶解液が得られる。試薬ウエル121〜126から液体を分注チップ201内に吸引するときには、試薬ウエル121〜126を封止している封止フィルム104には分注チップ201の先端が差し込まれる。すると、封止フィルム104には貫通孔が形成され、分注チップ201によって試薬ウエル121〜126の内部の各種試薬類を吸引できるようになる。
【0040】
まず、廃液を集める必要がある為、抽出フィルターカートリッジ150を廃液ウエル130へ搬送する。細胞が溶解された溶液を抽出フィルターカートリッジ150に供給する。抽出フィルターカートリッジ150は上端151Aから気体を送り込んで本体151を加圧して、吸着フィルター152Aを液体が通過する速度を高めることができる。すると、細胞が溶解された溶液は吸着フィルター152Aを通過して、核酸は吸着フィルター152Aに吸着される。その後、前記溶解液121Aで溶解しきれず担体へ目詰まりを起こしている細胞質などの生体物質を溶解する溶解液122Aで吸着フィルター152Aを洗浄する。
【0041】
さらに、洗浄液123A、124Aを吸着フィルター152Aに供給して吸着フィルター152Aを洗浄液123A、124Aによって洗浄する。その後、抽出フィルターカートリッジ150を回収ウエル140へ搬送し、溶出液125Aを吸着フィルター152Aに供給する。これにより、吸着フィルター152Aに吸着されていた核酸を溶出液125A中に溶出させて、核酸を含有する核酸溶液を回収ウエル140に回収する。
【0042】
さらに、希釈液126Aと回収された核酸が回収された溶出液125Aとを混ぜ合わせ、サンプルの準備が完了となる。
以上で核酸精製キット10による核酸の分離精製は終了する。
【0043】
続いて、核酸精製キット10によって分離精製された核酸を用いて、核酸に対してPCR解析を行う。自動分析装置は、分注チップ201によって核酸溶液を吸引し、所定の反応容器(例えばマイクロチューブなど)に核酸溶液を供給する。続いて、分注チップ201を図1に示す核酸抽出キット10のオイルウエル127に挿入して、オイルウエル127に収容されたオイル127Aを分注チップ201の内部に吸引する。このとき、オイル127Aは、分注チップ201の素材がオイル127Aとの親和性が高いため、分注チップ201の外面に液滴状に付着することがある。
【0044】
自動分析装置の分注搬送機構は、図6(A)に示すようにオイル除去部128へと分注チップ201を移動させる。さらに、図6(B)に示すように分注搬送機構はオイル除去部128の拭いフィルター129Aの切り込み部129Cに分注チップ201の先端201Aを挿入する。すると、分注チップ201の先端201Aの外周面に付着したオイル127Aは拭いフィルター129Aに吸い取られて分注チップ201の外周面から除去される。分注チップ201を切り込み部129Cから引き抜くことで、分注チップ201の外周面は拭いフィルター129Aに再度接触し、分注チップ201の外周面に付着したオイル127Aは拭き取られる。
【0045】
内部にオイル127Aが保持され外周面のオイル127Aが除去された分注チップ201によって、上述の反応容器内の核酸溶液にオイル127Aが重層される。このとき、分注チップ201の外面の余剰オイルが除去されているので、反応容器の壁面などにオイルが付着することがない。
反応容器内で核酸溶液にオイル127Aが重層されることで、PCR反応において核酸溶液が蒸発することが抑制され、PCR反応を好適に行うことができる。
【0046】
以上説明したように、本実施形態の試薬カートリッジ100及び核酸精製キット10によれば、試薬カートリッジ100に設けられたオイル除去部128においてオイル127Aを拭いフィルター129Aに吸収させるので、分注チップ201の外面に付着したオイル127Aを簡易な構成で好適に除去できる。
【0047】
また、核酸精製キット10がオイル除去部128を備えているので、オイル除去部128の拭いフィルター129Aによって分注チップ201の先端201Aの外周面に付着したオイル127Aを除去することができる。反応容器の壁部などに意図せずに液体が付着してしまうことが抑制され、核酸を検査するときの精度と再現性とを高めることができる。
【0048】
また、拭いフィルター129Aが弾性を有するので、拭いフィルター129Aを分注チップ201の外面に押し付けて分注チップ201の外面に付着したオイル127Aを拭き取ることができる。さらに、拭いフィルター129Aが多孔性材料によって形成されているので、オイル127Aを好適に吸収して拭いフィルター129A内に保持することができる。このため、拭いフィルター129Aを複数回使用しても好適にオイル127Aを吸収させることができる。
【0049】
また、核酸を抽出するために必要な試薬やフィルターユニットとオイル除去部128とが試薬カートリッジ100の内部に設けられキットとして一体化されているので、被検体をサンプルウエル110に添加して自動分析装置にセットする操作のみ手作業によって行えばよいので、遺伝子検査を簡便に行うことができる。また、試薬カートリッジ100に廃液ウエル130が一体に設けられているので、遺伝子検査が終了した後は、試薬カートリッジ100を、自動分析装置から取り外して廃棄するだけでよい。このため、廃液処理が簡便であり、被検体などの残液によって周囲が汚染されるおそれがない。
【0050】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、上述の実施形態では、オイル除去部(液体除去部)128は分注チップ201の外面に付着したオイルを除去する例を説明したが、これに限らず、他の種類の液体に対しても分注チップ201の外面に付着した液体を好適に除去することができる。例えば、粘性が高いグリセロールや界面活性剤などを操作する場合に本発明の液体除去部を好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
10 核酸精製キット
100 試薬カートリッジ
128 オイル除去部(液体除去部)
129 拭い部
129A 拭いフィルター(拭い部材)
129C 切り込み部
200 分注チップラック(分注チップ収容体)
201 分注チップ
【技術分野】
【0001】
本発明は、試薬カートリッジ及び核酸精製キットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の遺伝子検査技術の発達により、例えば患者から採取した生体試料などの被検体から核酸を抽出して一塩基多型のような遺伝子の差異を検出することで、医薬品に対する感受性をあらかじめ予測できる可能性が示唆されている。
【0003】
被検体から核酸を抽出する場合、検体間の交差汚染を防止したり、感染源の拡散を防止するために、被検体から核酸を抽出するために必要な試薬類を試薬カートリッジ内に収容し、被検体から核酸を抽出するたびにこれら試薬類を使いきって試薬カートリッジごと廃棄するようになっている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また、試薬カートリッジに収容された液体は、内部に空洞を有する分注チップによって吸引、保持されて所定の工程に従って分注あるいは攪拌される。このとき、分注チップの内部に液体を吸引する工程や分注チップから液体を吐出する工程において、液体が分注チップの外面に付着する場合がある。液体が分注チップの外面に付着すると、分注チップを用いて液体を計量する精度が低下したり、分注チップの外面に付着した液体による汚染が広がったりするおそれがある。このため、核酸を分析する自動分析装置などには、分注チップの外面を洗浄する装置が自動分析装置などに備えられている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2005/118772号明細書
【特許文献2】特開2003−215928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の核酸分析装置では、分注チップの外面に付着した液体を除去することができないので、分注チップの外面に付着した液体によって計量誤差が生じることがある。
また、特許文献2に記載の自動分析装置では、分注チップを振動させて分注チップの外面に付着した洗浄液を除去するため、装置構成が複雑になってしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は分注チップの外面に付着した液体を簡易な構成で除去できる試薬カートリッジ及び核酸精製キットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の試薬カートリッジは、被検体から核酸を分離精製するための液体が収容され、分注チップを用いて前記液体が分注される試薬カートリッジであって、前記分注チップの外面に付着した余剰液体を除去する液体除去部を備え、前記液体除去部は、前記分注チップを挿入可能で前記分注チップの外面に接触する貫通路が形成されるとともに前記余剰液体を吸収する拭い部材を有することを特徴とする。
【0009】
また、前記拭い部材は、弾性を有する多孔性材料によって形成されていることが好ましい。
【0010】
また、前記拭い部材には、前記分注チップによって押し広げられる切り込み部が形成されていることが好ましい。
【0011】
また、前記拭い部材は、前記分注チップにおいて前記液体が接触可能な領域の最大外形よりも小さい内径を有する貫通孔を有することが好ましい。
【0012】
また、前記液体がオイルであり、前記拭い部材は親油性を有することが好ましい。
【0013】
また、前記試薬カートリッジは、前記被検体を収容する被検体収容部と、前記液体を収容する液体収容部と、前記分離精製において発生する廃液を収容する廃液収容部と、前記被検体の前記核酸を精製する抽出フィルターカートリッジと、をさらに有することが好ましい。
【0014】
本発明の核酸精製キットは、本発明の試薬カートリッジと、前記分注チップを複数収容するための分注チップ収容体と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の試薬カートリッジ及び核酸精製キットによれば、試薬カートリッジに設けられた液体除去部において余剰液体を拭い部に吸収させるので、分注チップの外面に付着した液体を簡易な構成で除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態の試薬カートリッジを示す斜視図である。
【図2】同試薬カートリッジと分注チップラックとの構成を示す斜視図である。
【図3】同試薬カートリッジにおける抽出フィルターカートリッジの構成を示す断面図である。
【図4】(A)は同試薬カートリッジにおける液体除去部の構成を示す断面図、(B)は液体除去部の一部の構成を示す分解斜視図である。
【図5】(A)ないし(C)は、同液体除去部における拭いフィルターの構成を示す平面図である。
【図6】(A)及び(B)は、同試薬カートリッジにおける液体除去部の作用を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態の試薬カートリッジ及び核酸精製キットについて図1ないし図6を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態の試薬カートリッジ100を示す斜視図である。また、図2は、試薬カートリッジ100と分注チップラック200との構成を示す斜視図である。また、図3は、試薬カートリッジ100における抽出フィルターカートリッジ150の構成を示す断面図である。また、図4(A)は試薬カートリッジ100における液体除去部128の構成を示す断面図で、図4(B)は液体除去部128の一部の構成を示す分解斜視図である。また、図5(A)ないし図5(C)は、液体除去部128における拭いフィルター129Aの構成を示す平面図である。また、図6(A)及び(B)は、試薬カートリッジ100における液体除去部128の作用を説明するための説明図である。
【0018】
図1及び図2に示すように、核酸精製キット10は、被検体から核酸を抽出するための試薬などが収容された試薬カートリッジ100と、液体を分注するための分注チップ201が複数収容された分注チップラック(分注チップ収容体)200とを備えている。本実施形態では、分注チップラック200は同形同大の分注チップ201を複数備えており、試薬カートリッジ100に収容された液体は複数の分注チップ201のいずれかによって分注操作あるいは攪拌操作され、分注チップ201によって液体の間で交差汚染が生じないようになっている。また、分注チップラック200は、使用後の分注チップ201を回収するための容器でもあり、核酸分析装置1における分注チップ201の使用終了後には感染性廃棄物として分注チップ201を分注チップラック200ごと廃棄することができる。
【0019】
試薬カートリッジ100は、略箱状に形成された本体101と、本体101の外面から突出して形成された爪部102とを有している。爪部102は、例えば試薬カートリッジ100が自動分析装置などにセットされたときに、試薬カートリッジ100が転倒しないように自動分析装置の一部と係合できるようになっている。
本体101の外面の一部には、核酸精製キット10の使用時には取り外される薄膜状の封止フィルム103が貼り付けられている。封止フィルム103によって本体101の開口は封止されており、本体101の内部に配置された後述する抽出フィルターカートリッジ150などが本体101から落下しないように、また本体101内部に埃などの異物が混入することが防止できるようになっている。
【0020】
本体101の内部には、生体試料などの被検体が投入されるサンプルウエル(被検体収容部)110と、被検体から核酸を抽出するための試薬などが収容されている試薬ウエル部120と、被検体から核酸を抽出する工程で分離された不要な溶液を廃棄する廃液ウエル(廃液収容部)130と、被検体から抽出された核酸を回収する回収ウエル140と、が一体に形成されている。
【0021】
また、試薬カートリッジ100は、核酸を吸着させる担体を含有する抽出フィルターカートリッジ150を有し、試薬カートリッジ100には、抽出フィルターカートリッジ150が収容される保持部160が一体に形成されている。
【0022】
試薬ウエル部120は、複数の試薬ウエル(試薬収容部)121、122、123、124、125、126と、オイルウエル(オイル収容部)127と、オイル除去部(液体除去部)128とを有している。また、試薬ウエル部120において、複数の試薬ウエル121、122、123、124、125、126、及びオイルウエル127の開口は、封止フィルム104によって封止されている。封止フィルム104は、気体の透過が抑制されていると共に、分注チップ201を突き刺すことによりフィルムを破ることができる構成とすることが好ましく、例えば金属製の薄膜や、プラスチックフィルム等を用いることができる。
【0023】
試薬ウエル121〜126には、細胞膜などの生体物質を溶解する溶解液121Aと、前記溶解液121Aで溶解しきれず担体へ目詰まりを起こしている細胞質などの生体物質を溶解する溶解液122A、担体に吸着された核酸以外の不要物を洗い流すための洗浄液123A、124Aと、担体から核酸を溶出させる溶出液125Aと、溶出液中の核酸濃度を調整するための希釈液126Aがそれぞれの試薬ウエルに個別に収容されている。
また後述の使用様態では分析用の試薬は核酸分析チップに配置した構成としているが、これとは別に試薬ウエルに分析用の試薬を収容した使用方法としても良い。例えば、核酸に対してPCR、及びインベーダー(登録商標)法によるSNP測定を行う試薬の一部があらかじめ混合された分析試薬プレミックスと、をそれぞれの試薬ウエルに個別に収容することができる。
【0024】
オイルウエル127には、例えばPCR反応において反応溶液に重層して用いられる周知のオイル127Aが収容されている。オイル127Aとしては、例えばミネラルオイルやシリコンオイルなどを好適に採用することができる。
【0025】
図4(A)に示すように、オイル除去部128は、分注チップ201(図2参照)の外面に付着するオイル127Aを除去するための拭い部129を内部に有している。
【0026】
図4(A)及び図4(B)に示すように、拭い部129は、親油性を有する拭いフィルター129Aと、オイル除去部128の内部で拭いフィルター(拭い部材)129Aを支持する円筒状の支持部129B、129Dとを有している。拭いフィルター129Aは、オイル除去部128の内径に沿う略円柱形状あるいは略円板形状に形成されており、拭いフィルター129Aの中央には拭いフィルター129Aの中心軸線方向に貫通して形成された切り込み部129Cが設けられている。
また、拭いフィルター129Aは、弾性を有する多孔性部材によって形成されていることが好ましく、例えばスポンジフィルターなどが圧縮して形成されたものを採用することができる。使用される主な物としては、ゴムスポンジ、ウレタンスポンジ、ポリエチレンフォーム、EVAスポンジ、等が上げられるが、多孔を有し弾性変形が可能なスポンジであればこの限りでない。
【0027】
図5(A)に示すように、切り込み部129Cは、拭いフィルター129Aを中心軸線方向に見たときに、拭いフィルター129Aの中心に位置し、十字形状に形成されている。なお、図5(B)に示すように、切り込み部129Cに代えて、拭いフィルター129Aを中心軸線方向に見たときに真円形に形成された切り込み部129Eを有していてもよい。また図5(C)に示すように、切り込み部129Cに代えて、拭いフィルター129Aの径方向内側に膨出した膨出部を有する円形の切り込み部129Fを有していてもよい。
【0028】
図2に示すように、廃液ウエル130は、抽出フィルターカートリッジ150の外径形状に沿って形成された凹部で、抽出フィルターカートリッジ150を支持可能な形状になっている。廃液ウエル130に抽出フィルターカートリッジ150が取り付けられた状態では、抽出フィルターカートリッジ150は試薬カートリッジ100内で転倒しないようになっている。
【0029】
回収ウエル140は、廃棄ウエル130と同様に抽出フィルターカートリッジ150を支持できるようになっている。回収ウエル140の底部は、抽出フィルターカートリッジ150の担体から溶出液125Aによって溶出された核酸溶液を貯留できる容器形状を有している。
【0030】
廃液ウエル130と回収ウエル140とは、試薬カートリッジ100内で隣り合う位置関係に設けられている。これは、抽出フィルターカートリッジ150の洗浄を廃液ウエル130において行った後に抽出フィルターカートリッジ150を回収ウエル140に移動させるときの抽出フィルターカートリッジ150の動線を短くするためである。これにより、試薬カートリッジ100上を通過する抽出フィルターカートリッジ150が試薬カートリッジ100などを汚染する可能性を軽減することができる。
【0031】
図3に示すように、抽出フィルターカートリッジ150は、抽出フィルターカートリッジの外枠となる略筒状の本体151と、本体151の内部に設けられた抽出フィルターユニット152とを有している。
【0032】
本体151は、上端151Aと下端151Bとがいずれも開口している。また、抽出フィルターユニット152よりも下端151B側において、上端151A側の開口よりも開口径が小さくなる漏斗状に本体151は形成されており、下端151Bにはノズル状の排出口151Cが下方向に突出して設けられている。
上端151A側の開口は、被検体が溶解された状態の溶解液121Aや122A、洗浄液123A、124A、溶出液125Aなどが供給されるようになっている。これらの液体は、フィルターユニット152を通過して排出口151Cから排出されるようになっている。
【0033】
フィルターユニット152は、核酸を吸着する性質を有する担体を含有する吸着フィルター152Aと、吸着フィルター152Aよりも下端151B側に配置され吸着フィルター152Aの変形を防止するサポート部材152Bとを有している。
【0034】
吸着フィルター152Aは、核酸を吸着可能な多孔性材料によって膜状に形成されている。吸着フィルター152Aの材料としては、洗浄液123A、124A内では核酸が吸着状態となり、溶出液125A内では核酸の吸着状態が弱まる性質を有する材料であることが好ましい。また、吸着フィルター152Aは、親水基として水酸基を導入した多孔性材料であることが好ましい。具体的には、吸着フィルター152Aは、シリカによって、あるいは他の物質上にシリカを結合させて形成されている。なお、吸着フィルター152Aの材料としては、有機物質の存在下で生体物質を吸着することができる材料であれば、特に限定されるものではない。また、吸着フィルター152Aは、例えばガラスウールなどの繊維材を重ね合わせて形成することで多孔性を有するようになっていてもよい。
【0035】
サポート部材152Bは、少なくとも核酸に対する吸着性が低く、かつ被検体から核酸を抽出する反応を阻害しない材料によって形成されていることが好ましい。例えば、サポート部材152Bは樹脂の粒を焼き固めて形成することができる。サポート部材152Bの剛性は吸着フィルター152Aよりも高くなっており、吸着フィルター152Aが本体151内で変形することがサポート部材152Bによって抑制されている。
【0036】
図2に示すように、保持部160は、試薬カートリッジ100において抽出フィルターカートリッジ150が収容される初期位置になっている。また、保持部160の底部には、液体を吸収する図示していない吸収体を設けることができる。この吸収体は、抽出フィルターカートリッジ150を保持部160に収容したときに抽出フィルターカートリッジ150の排出口151C側の外面に接触するようになっている。このため、例えば抽出フィルターカートリッジ150内に洗浄液123Aを供給したときに排出口151Cの外面に洗浄液123Aが付着した場合に、吸収体に洗浄液123Aを吸収させて洗浄液123Aを除去することができる。
【0037】
以上に説明した構成の、本実施形態の試薬カートリッジ100及び核酸精製キット10の作用について、液体除去部128の作用を中心に説明する。以下では、核酸精製キット10を適用する対象となる自動分析装置として、分注チップ201を搬送する分注搬送機構を有し、核酸を精製した後にPCR解析をする自動分析装置を例に挙げて説明する。
【0038】
まず、ユーザの手作業によって図1に示す試薬カートリッジ100の封止フィルム103が取り外される。続いて、試薬カートリッジ100のサンプルウエル110に例えば全血試料をユーザの手作業によって注入する。
【0039】
続いて、試薬ウエル121〜126に貯留された各種の試薬を所定の手順に従って自動分析装置の分注搬送機構によって分注、混合する。これにより、サンプルウエル110に供給された全血試料中の細胞は溶解され細胞溶解液が得られる。試薬ウエル121〜126から液体を分注チップ201内に吸引するときには、試薬ウエル121〜126を封止している封止フィルム104には分注チップ201の先端が差し込まれる。すると、封止フィルム104には貫通孔が形成され、分注チップ201によって試薬ウエル121〜126の内部の各種試薬類を吸引できるようになる。
【0040】
まず、廃液を集める必要がある為、抽出フィルターカートリッジ150を廃液ウエル130へ搬送する。細胞が溶解された溶液を抽出フィルターカートリッジ150に供給する。抽出フィルターカートリッジ150は上端151Aから気体を送り込んで本体151を加圧して、吸着フィルター152Aを液体が通過する速度を高めることができる。すると、細胞が溶解された溶液は吸着フィルター152Aを通過して、核酸は吸着フィルター152Aに吸着される。その後、前記溶解液121Aで溶解しきれず担体へ目詰まりを起こしている細胞質などの生体物質を溶解する溶解液122Aで吸着フィルター152Aを洗浄する。
【0041】
さらに、洗浄液123A、124Aを吸着フィルター152Aに供給して吸着フィルター152Aを洗浄液123A、124Aによって洗浄する。その後、抽出フィルターカートリッジ150を回収ウエル140へ搬送し、溶出液125Aを吸着フィルター152Aに供給する。これにより、吸着フィルター152Aに吸着されていた核酸を溶出液125A中に溶出させて、核酸を含有する核酸溶液を回収ウエル140に回収する。
【0042】
さらに、希釈液126Aと回収された核酸が回収された溶出液125Aとを混ぜ合わせ、サンプルの準備が完了となる。
以上で核酸精製キット10による核酸の分離精製は終了する。
【0043】
続いて、核酸精製キット10によって分離精製された核酸を用いて、核酸に対してPCR解析を行う。自動分析装置は、分注チップ201によって核酸溶液を吸引し、所定の反応容器(例えばマイクロチューブなど)に核酸溶液を供給する。続いて、分注チップ201を図1に示す核酸抽出キット10のオイルウエル127に挿入して、オイルウエル127に収容されたオイル127Aを分注チップ201の内部に吸引する。このとき、オイル127Aは、分注チップ201の素材がオイル127Aとの親和性が高いため、分注チップ201の外面に液滴状に付着することがある。
【0044】
自動分析装置の分注搬送機構は、図6(A)に示すようにオイル除去部128へと分注チップ201を移動させる。さらに、図6(B)に示すように分注搬送機構はオイル除去部128の拭いフィルター129Aの切り込み部129Cに分注チップ201の先端201Aを挿入する。すると、分注チップ201の先端201Aの外周面に付着したオイル127Aは拭いフィルター129Aに吸い取られて分注チップ201の外周面から除去される。分注チップ201を切り込み部129Cから引き抜くことで、分注チップ201の外周面は拭いフィルター129Aに再度接触し、分注チップ201の外周面に付着したオイル127Aは拭き取られる。
【0045】
内部にオイル127Aが保持され外周面のオイル127Aが除去された分注チップ201によって、上述の反応容器内の核酸溶液にオイル127Aが重層される。このとき、分注チップ201の外面の余剰オイルが除去されているので、反応容器の壁面などにオイルが付着することがない。
反応容器内で核酸溶液にオイル127Aが重層されることで、PCR反応において核酸溶液が蒸発することが抑制され、PCR反応を好適に行うことができる。
【0046】
以上説明したように、本実施形態の試薬カートリッジ100及び核酸精製キット10によれば、試薬カートリッジ100に設けられたオイル除去部128においてオイル127Aを拭いフィルター129Aに吸収させるので、分注チップ201の外面に付着したオイル127Aを簡易な構成で好適に除去できる。
【0047】
また、核酸精製キット10がオイル除去部128を備えているので、オイル除去部128の拭いフィルター129Aによって分注チップ201の先端201Aの外周面に付着したオイル127Aを除去することができる。反応容器の壁部などに意図せずに液体が付着してしまうことが抑制され、核酸を検査するときの精度と再現性とを高めることができる。
【0048】
また、拭いフィルター129Aが弾性を有するので、拭いフィルター129Aを分注チップ201の外面に押し付けて分注チップ201の外面に付着したオイル127Aを拭き取ることができる。さらに、拭いフィルター129Aが多孔性材料によって形成されているので、オイル127Aを好適に吸収して拭いフィルター129A内に保持することができる。このため、拭いフィルター129Aを複数回使用しても好適にオイル127Aを吸収させることができる。
【0049】
また、核酸を抽出するために必要な試薬やフィルターユニットとオイル除去部128とが試薬カートリッジ100の内部に設けられキットとして一体化されているので、被検体をサンプルウエル110に添加して自動分析装置にセットする操作のみ手作業によって行えばよいので、遺伝子検査を簡便に行うことができる。また、試薬カートリッジ100に廃液ウエル130が一体に設けられているので、遺伝子検査が終了した後は、試薬カートリッジ100を、自動分析装置から取り外して廃棄するだけでよい。このため、廃液処理が簡便であり、被検体などの残液によって周囲が汚染されるおそれがない。
【0050】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、上述の実施形態では、オイル除去部(液体除去部)128は分注チップ201の外面に付着したオイルを除去する例を説明したが、これに限らず、他の種類の液体に対しても分注チップ201の外面に付着した液体を好適に除去することができる。例えば、粘性が高いグリセロールや界面活性剤などを操作する場合に本発明の液体除去部を好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
10 核酸精製キット
100 試薬カートリッジ
128 オイル除去部(液体除去部)
129 拭い部
129A 拭いフィルター(拭い部材)
129C 切り込み部
200 分注チップラック(分注チップ収容体)
201 分注チップ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体から核酸を分離精製するための液体が収容され、分注チップを用いて前記液体が分注される試薬カートリッジであって、
前記分注チップの外面に付着した余剰液体を除去する液体除去部を備え、
前記液体除去部は、前記分注チップを挿入可能で前記分注チップの外面に接触する貫通路が形成されるとともに前記余剰液体を吸収する拭い部材を有する
ことを特徴とする試薬カートリッジ。
【請求項2】
前記拭い部材は、弾性を有する多孔性材料によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の試薬カートリッジ。
【請求項3】
前記拭い部材には、前記分注チップによって押し広げられる切り込み部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の試薬カートリッジ。
【請求項4】
前記拭い部材は、前記分注チップにおいて前記液体が接触可能な領域の最大外形よりも小さい内径を有する貫通孔を有することを特徴とする請求項2に記載の試薬カートリッジ。
【請求項5】
前記液体がオイルであり、
前記拭い部材は親油性を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の試薬カートリッジ。
【請求項6】
前記試薬カートリッジは、
前記被検体を収容する被検体収容部と、
前記液体を収容する液体収容部と、
前記分離精製において発生する廃液を収容する廃液収容部と、
前記被検体の前記核酸を精製する抽出フィルターカートリッジと、
をさらに有することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の試薬カートリッジ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の試薬カートリッジと、
前記分注チップを複数収容するための分注チップ収容体と、
を備えることを特徴とする核酸精製キット。
【請求項1】
被検体から核酸を分離精製するための液体が収容され、分注チップを用いて前記液体が分注される試薬カートリッジであって、
前記分注チップの外面に付着した余剰液体を除去する液体除去部を備え、
前記液体除去部は、前記分注チップを挿入可能で前記分注チップの外面に接触する貫通路が形成されるとともに前記余剰液体を吸収する拭い部材を有する
ことを特徴とする試薬カートリッジ。
【請求項2】
前記拭い部材は、弾性を有する多孔性材料によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の試薬カートリッジ。
【請求項3】
前記拭い部材には、前記分注チップによって押し広げられる切り込み部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の試薬カートリッジ。
【請求項4】
前記拭い部材は、前記分注チップにおいて前記液体が接触可能な領域の最大外形よりも小さい内径を有する貫通孔を有することを特徴とする請求項2に記載の試薬カートリッジ。
【請求項5】
前記液体がオイルであり、
前記拭い部材は親油性を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の試薬カートリッジ。
【請求項6】
前記試薬カートリッジは、
前記被検体を収容する被検体収容部と、
前記液体を収容する液体収容部と、
前記分離精製において発生する廃液を収容する廃液収容部と、
前記被検体の前記核酸を精製する抽出フィルターカートリッジと、
をさらに有することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の試薬カートリッジ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の試薬カートリッジと、
前記分注チップを複数収容するための分注チップ収容体と、
を備えることを特徴とする核酸精製キット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2011−72276(P2011−72276A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−228748(P2009−228748)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
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