説明

試薬キットおよび分析装置

【課題】 自動分析装置に使用される試薬キットを提供する。
【解決手段】 同じ高さを有する少なくとも2つの容器、すなわち、第1の試薬容器(12)および第2の試薬容器(13)と;少なくとも2つの試薬容器(12、13)の上部をともに覆い、保持するためのキットカバー(14)と;該第1の試薬容器(12)の底部を保持するための第1のトレイ(16)と;該第2の試薬容器(13)の底部を保持するための第2のトレイ(17)とを具備する試薬キットであり、試薬容器(12、13)は、一緒に組立てられた際に該試薬キットを通る空気の循環を許容する管状容積(21、37)を除いて該キットカバー(14)と、該トレイ(16、17)との間の空間全体を満たすような形状および寸法を有する。このキットカバー(14)の側壁の高さとトレイ(16、17)の側壁の高さの合計は、試薬容器(12、13)の高さよりも小さくなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動分析装置、特に自動臨床化学分析装置に使用される試薬キットに関する。本発明は更に、本発明に係る複数の試薬キットを使用するのに適した自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置において、試薬容器を保持する試薬キットを完全に自動的に処理することが望まれる。この分析装置で使用される前並びにピペット操作の間において、試薬容器もまた、栓体で閉塞状態とし、試薬の損失や、試薬の有用寿命の短縮を回避する必要がある。
【0003】
特許文献1には、上記構成を有する従来の試薬キットが記載されている。図1に示すように、この公知の試薬キット10は、底部82、側壁83、84および着脱自在な蓋体85を有する立方形ケース81と、並びにこのケース内に配置された試薬容器106、107および108とを有する。これらの試薬容器は夫々円筒状をなし、キャップ86、87および88により閉塞されている。なお、これらのキャップは分析装置のピペット装置の針により刺通可能になっている。蓋体85には開口部96、97および98が設けられていて、それを介して試薬容器106、107および108内の内容物が自動ピペット操作のためにアクセス可能になっている。ケース81の蓋体85および底部82には開口部が設けられていて、それを介して冷却空気がケース内および試薬容器106、107および108の周りを循環し、これらを要求された温度に確実に維持するようになっている。
【0004】
試薬キットのために割当てられた分析装置内の立方状空間を増大させることなく、試薬キット内に貯蔵される試薬の合計量を増大させることが望まれている。
【0005】
更に、使用期間(日、週又は月)当り必要とする試薬の量並びに必要とする試薬の多様性の双方についての広範に異なる要求に適応させるために、異なるサイズ又は同一サイズの多様な形状の試薬容器を備え得るようにした試薬キットも望まれている。
【0006】
更に、試薬容器を要求された温度に確実に維持させるために、1又はそれ以上の通路を試薬容器の周りに冷却空気の循環のために設けた試薬キットも望まれている。
【0007】
上述の望ましい特徴を提供するだけでなく、その製造コストを軽減することができる構造を有した試薬キットも望まれている。
【0008】
分析装置内での試薬キットの使用モードを向上させるため、試薬容器のキャップを自動的に除去することができ、それにより試薬容器を開口した状態(キャップを除去したのち)又は閉塞した状態で使用することを可能にした試薬キットも望まれている。
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,578,272号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の第1の目的は、前記文献1に記載されている公知の試薬キットでは提供できないような上述の望ましい特徴を有する試薬キットを提供することである。本発明の第2の目的は、請求項1記載の複数の試薬キットを使用するのに適した自動分析装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明の第1の形態は、自動分析装置に使用される試薬キットであって、同じ高さを有する少なくとも2つの容器である第1の試薬容器(12)および第2の試薬容器(13)と;前記の少なくとも2つの試薬容器(12、13)の上部をともに覆い、かつ保持するためのキットカバー(14)であって、前記の少なくとも2つの容器(12、13)内に収容されている試薬へのアクセスを提供する開口部(34、35、36)を有するとともに、該試薬容器(12、13)の高さより高い側壁(15)を有するキットカバー(14)と;前記第1の試薬容器(12)の底部を保持するための第1のトレイ(16)と;前記第2の試薬容器(13)の底部を保持するための第2のトレイ(17)と;を具備してなり;前記第1のトレイおよび第2のトレイがそれぞれ、該試薬容器(12、13)の高さより低い側壁(18、19)を有し;前記の少なくとも2つの試薬容器(12、13)が一緒に組立てられた際に、試薬キットを通る空気の循環を許容する管状容積(21、37)を除いて前記キットカバー(14)と前記トレイ(16、17)との間の空間全体を満たすような形状および寸法を少なくとも2つの試薬容器(12、13)が有していることを特徴とするものである。前記第1の目的は、請求項1にかかる本願発明の第1の形態で規定された試薬キットにより達成することができる。また、請求項2ないし16の試薬キットは、請求項1にかかる試薬キットの好ましい具体例を規定するものである。
【0012】
本発明の試薬キットで得られる主たる利点は以下の通りである。まず、分析装置において試薬キットに割当てられた或る立方空間について、試薬キット内に貯蔵される試薬の量を最大にすることができる。また、本発明の試薬キットの構造は、使用期間(日、週又は月)当り必要とする試薬の量および必要とする試薬の多様性の双方についての広範で異なる要求に適応させるため、異なるサイズ又は同一サイズの幾つかの形状の試薬容器を収容することを可能にするものである。また、試薬容器を要求された温度に確実に維持させるために、1又はそれ以上の通路が試薬容器の周りでの冷却空気の循環のために設けられている。また、本発明の試薬キットの構造は、その製造コストを軽減させることができる。なぜならば、試薬キットの製造において、材料が少なくて済み、試薬キットの組み立てが少ない労力で済むからである。また、本発明の試薬キットの構造は、試薬容器の螺着キャップを適当な工具で自動的に除去することができ、それにより試薬キットが試薬容器を開口した状態又はキャップで閉塞した状態で使用することができるものであり、その場合、これらキャップの中央部がピペット針により刺通可能になっていて、このピペット針により各試薬容器から必要量の試薬を分取できるようになっている。
【0013】
本願発明の第2の形態は、請求項1記載の試薬キットを複数使用するのに適した自動分析装置であって、新規な試薬キットを受理するための入力ステーション(61)と、使用済み試薬キットを移送するための移送ステーション(61)と、分析装置内に試薬キット(11)をマトリックス状に配置させるキャリアプレート(62)と、試薬キット(11)を入力ステーションからキャリアプレート(62)へ、又は該キャリアプレートから移送ステーション(61)並びに適宜、分析装置内の他の位置へ移送するためのコンベヤー(63)であって、該コンベヤー(63)が試薬キット(11)のキットカバー(14)の一部である把持用ウェブ(22、23、24、25)により試薬キットを把持するためのグリッパーを含むものと、分析装置内で、要求されるピペット操作を実行するための自動ピペット装置と、を具備してなり、前記ピペット操作は、該試薬キットの試薬容器(12、13)から試薬の或る量を分取すること、並びにこの試薬の或る量を検査のための試料を収容した反応容器へ移送させこと、からなるものである。前記第2の目的は、請求項17にかかる本願発明の第2の形態で規定された分析装置により達成することができる。
【0014】
本発明による分析装置は、試薬キットの完全な自動処理に適したものである。これは分析装置の取扱いにおける労力の必要性を軽減し、多数の異なる試薬又はその組合わせを必要とした多数の異なるテストを行う場合においてその信頼性も増大させるものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を添付図面を参照して好ましい実施例について説明する。なお、これらの実施例は本発明の理解を助けるためのものであり、限定を意図するものでないことを理解されるべきである。
【0016】
(本発明の試薬キットの第1の実施例)
本発明の試薬キット11の第1の実施例を、図2〜9を参照して以下で説明する。
【0017】
この試薬キット11は、例えば、第1の試薬容器12と、これと同じ高さの第2の試薬容器13とを備えている。
【0018】
試薬容器12の容積は、例えば、20mLであり、試薬容器13の容積は、例えば、60mLである。
【0019】
試薬キット11は更に、試薬容器12、13の上部をともに覆い、保持するためのキットカバー14を備えている。このキットカバー14には開口部34および36が設けられていて、試薬容器12、13内に収容されている試薬へのアクセスを可能にしている。キットカバー14は側壁15を有し、その高さは試薬容器12、13の高さよりも低くなっている。
【0020】
試薬キット11は更に、試薬容器12の底部を保持するための第1のトレイ16と、試薬容器13の底部を保持するための第2のトレイ17とを備えている。これらトレイ16および17は夫々、側壁18、19を有し、その高さは試薬容器12、13の高さよりも低い。これらトレイ16および17は夫々、試薬容器12、13のためのスタンド台として利用される。
【0021】
特に、図3に示すように、キットカバー14の側壁の高さと、側壁18または側壁19の高さとの合計は、試薬容器12、13の高さよりも小さい。
【0022】
試薬容器12、13は、それらが一緒に組立てられたとき、図2〜図4に示す円筒状容積37および図6に示す円筒状容積21の部分(いずれも試薬キット11を通る冷却空気の循環を許容させる)を除き、キットカバー14とトレイ16、17との間の空間全体を満たすような形状および寸法のものとなっている。円筒状容積37は、試薬容器12の側壁に沿う円筒状容積38と、試薬容器13の側壁に沿う円筒状容積39とからなる。トレイ16、17内の夫々の開口部48および49、並びに図6に示す開口部46、47、50、51は、試薬を必要な温度に維持させるため試薬キット11内を循環する冷却空気のための入口となっている。
【0023】
キットカバー14、トレイ16、17および試薬容器12、13は、これらを一緒にしたとき自立アッセンブリーを形成するような形状および寸法のものとなっている。好ましい実施例において、この自立アッセンブリーの少なくとも1つの外側面はラベル28、バーコードラベルを貼着するのに適したものとなっている。なお、これらラベルは試薬容器12、13内に収容された試薬についての情報を記載するものである。
【0024】
好ましい実施例において、機械読み可能なラベル28が試薬キット11に付着されている。好ましい実施例において、このラベル28の一部が第1の面に横たわる第1の表面に固定され、残りの部分が、前記第1の面に対し垂直な第2の面に横たわる第2の表面に固定される。ラベル28をこのように配置することにより、このラベル28は、上記自立アッセンブリーの硬直性および安定性の向上に寄与するものとなる。
【0025】
好ましい実施例において、試薬容器12、13の夫々の上部がキットカバー14のキャビティ内に嵌合し、試薬容器12、13の夫々の底部が対応するトレイ16、17のキャビティ内に嵌合するようになっている。
【0026】
好ましい実施例において、キットカバー14は、試薬容器12、13の夫々の上部にスナップ嵌めされるスナップオン組立てカバーからなるものである。この目的のため、キットカバー14の側壁15の内面には複数のラグ26が設けられていて、これらが試薬容器12、13の上部の外側面内の溝27と係合するようになっている。
【0027】
好ましい実施例において、第1および第2のトレイ16、17の夫々がスナップオントレイからなり、試薬容器12、13が一緒に組立てられた際に、このトレイがこれら試薬容器12、13の夫々の対応する1つの底部にスナップ嵌めされるようになっている。この目的のため、トレイ16、17の側壁18、19の内面には複数のラグ29が設けられていて、これらが試薬容器12、13の下部の外側面内の溝27と係合するようになっている。これらラグ26および29、並びに溝27が特に、図3ないし7および図9に示されている。
【0028】
好ましい実施例において、キットカバー14およびトレイ16、17は第1のプラスチック材料から作られたものであり、試薬容器12、13は第2のプラスチック材料から作られたものであり、この第1のプラスチック材料は第2のプラスチック材料よりもより硬質のものとなっている。
【0029】
好ましい実施例において、キットカバー14、試薬容器12、13およびトレイ16、17は夫々、不透明な材料から作られている。この材料は試薬を周囲の光から保護し、試薬キット使用前の貯蔵期間を延長させることができる。
【0030】
試薬容器12、13は適当なプラスチック材料から作られている。例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)(例えば、Basell社製の2%の黒色バッチを含むPurell PE GF 4750あるいはPolyplast社のCogranu UN 040.32)である。
【0031】
キットカバー14およびトレイ16、17は適当なプラスチック材料から作られている。例えば、耐衝撃性ポリスチロール、熱可塑性スチレン−ブタジエン共重合体(例えば、BP社製の2%の黒色バッチを含むSB-Empera 514あるいはSchulmann社のHS7037)である。
【0032】
好ましい実施例において、キットカバー14はウェブ22、23、24、25を有し、これらウェブは、図12に示す試薬キットのコンベヤーのキャリッジ73によって移送されるグリッパーにて把持されるようになっている。
【0033】
好ましい実施例において、特に図5および図6に示すように、キットカバー14は開口部34、36を有し、トレイ16、17の夫々にも開口部47、50、51が設けられ、これら全ての開口部は、試薬キット11内の円筒状容積21及び/又は37を通る空気の循環に適したものとなっている。
【0034】
好ましい実施例において、試薬容器12、13の夫々は実質的に立方形状のものであり、実質的に四角形の横断面を有する。特に図3および図6に示すように、試薬容器12、13の夫々の底部は、それに向って次第に減少するテーパー状の横断面を有する。この形状は試薬容器のデッドボリューム(dead volume;すなわち、試薬容器からピペットによる取り出しを行えない試薬の残った量)を減少させるものである。
【0035】
好ましい実施例において、キットカバー14およびトレイ16、17は夫々、立方形状のものである。
【0036】
好ましい実施例において、試薬容器12、13は夫々、着脱自在な螺着キャップ30、31を有し、その中央部はピペット針により刺通可能となっている。これら螺着キャップ30、31は夫々王冠形状のものであり、適当な工具により、かつ、キットカバー14の開口部34および36を介して除去できるようになっている。
【0037】
図5に示すように、試薬容器12、13は夫々開口部32、33を有し、これらは着脱自在な螺着キャップ30、31により閉塞されるようになっている。
【0038】
(本発明の試薬キットの第2の実施例)
本発明の試薬キット11の第2の実施例を、図10を参照して以下で説明する。
【0039】
図10に示す試薬キット11は、例えば、第1の試薬容器52および第2の試薬容器52と、これら試薬容器52,52のための2つのトレイ54,54とを備えている。第1の試薬容器52と第2の試薬容器52は同じ高さで、同じ容積のものである。これら試薬容器52は夫々、例えば40mLの容積を有する。
【0040】
この試薬キット11の第2の実施例における他の特徴は、図2〜9を参照して説明したものと同じである。
【0041】
(本発明の試薬キットの第3の実施例)
本発明の試薬キット11の第3の実施例を、図11を参照して以下、説明する。
【0042】
図11に示す試薬キット11は、第1の試薬容器12と、第2の試薬容器53と、第3の試薬容器12とを備えている。これら試薬容器12、53は全て高さが同じである。試薬容器12の夫々の容積は、例えば、20mLであり、試薬容器53の容積は、例えば、40mLである。
【0043】
図11に示す試薬キット11は更に、カバー14およびトレイ16、55、16を備えており、これらトレイは、試薬容器12、53、12に夫々対応している。
【0044】
この第3の実施例において、カバー14には3つの開口部34、35、36が設けられており、試薬容器53は着脱自在な螺着キャップ45により閉塞されるようになっている。
【0045】
この試薬キット11の第3の実施例における他の特徴は、図2〜9を参照して説明したものと同じである。
【0046】
(本発明の分析装置の実施例)
図12を参照して説明されるように、本発明の分析装置は、上述のタイプの試薬キット11を複数保持し得るようになっている。図12に示すように、この種の分析装置は、新規な試薬キット11を本装置内に挿入するため、および使用済みの試薬キット11を本装置から排出させるための入力/出力ステーション61を備えている。
【0047】
図12に示す分析装置には更に、キャリアプレート62が備えられ、その上に、この分析装置内に受理された試薬キット11が所定のマトリックス状に配置され、その場合、突起69、70が試薬キットをキャリアプレート62上に正確に配置させるために設けられている。更に、試薬キット11を入力/出力ステーション61からキャリアプレート62へ、あるいはこのキャリアプレートから入力/出力ステーション61並びに適宜、分析装置内の他の場所に移送するためのコンベヤー(例えば、63、73、66参照)が設けられていると共に、分析装置内で必要とされるピペット操作を実行するための自動ピペット装置(例えば、71、72参照)が設けられている。これらのピペット操作には、試薬の或る量を試薬キット11内の試薬容器から分取し、それを検査のための試料を収容した反応容器へ移送することが含まれる。各試薬容器は、ピペット装置のピペット針により刺通可能なキャップによって閉塞されている。
【0048】
中央制御装置(図12には示されていない)が、この分析装置内の全ての操作を制御するようになっている。
【0049】
キャリアプレート62は従来の冷却装置(例えば、図示しない送風機)により冷却することができる。この手段により、更に試薬キットを通る上述の空気の循環の結果として、キャリアプレート62上の試薬は均一に冷却される。
【0050】
図12に示す実施例において、符号61として指示された同じ場所が、入力ステーションとして、あるいは出力又は搬送ステーションとして使用される。この場合、分析装置には、ステーション61が試薬キットを挿入するのに空いているか、あるいはステーション61が試薬キットで既に占められているかを指示するようにした入力/出力ステーション61の状態を示すディスプレーが含まれる。その他、別の入力および出力ステーションを設けるようにしてもよい。
【0051】
好ましい実施例において、5個までの試薬キット11を同時に入力/出力ステーション61に挿入することができる。使用済みの複数の試薬キットを自動的に入力/出力ステーション61に戻すことができ、そこでこれら試薬キットは本装置から排出又は取除かれる。
【0052】
図12に示すように、この分析装置には読取り装置78が備えられ、これは、例えば、試薬キット11の側壁に取着されたラベル28に記載されたバーコードなどの機械読み可能な情報を読み取るため、入力/出力ステーション61に配置されている。ラベル28上の情報は、試薬キット11が入力/出力ステーション61に挿入されたときに読取り装置78により自動的に読み取られるようになっている。ラベル28上に機械読み可能な形で記載された情報には、試薬キット内に収容されている試薬を用いて行われるべきテストの識別と、試薬キット内の試薬のバッチに関係するパラメータとが含まれている。
【0053】
試薬キット11を特別に搬送するためのコンベヤーにはコンベヤーベルト63が備えられ、それにより入力ステーション61に挿入された試薬キット11が分析装置の内部に搬送され、あるいはそこから出力ステーション61に戻されるようになっている。このコンベヤーには更にグリッパー66が備えられ、これは分析装置の自動ピペット装置のピペット針(図示しない)を運ぶキャリッジ73により案内されるようになっている。これらのグリッパー66は、カバー14の対応する開口部を介して把持され得るウェブ22、23、24、25と協働して、例えばキャリアプレート62又はコンベヤーベルト63上の位置から試薬キット11を把持するようになっている。キャリッジ73は、グリッパー66をピペット針(キャリッジ73を示す図12において簡潔のために省略する)並びに試薬容器のキャップの中央部を貫通し開口部を形成するためのスパイク90と共に搬送するものである。これによって、ピペット針により刺通されるキャップが用意される。
【0054】
キャリッジ73およびこのキャリッジ73を移動させるロッド74は、分析装置内の自動ピペット装置のコンベヤーに属する。このコンベヤーは、ピペット針(簡潔のために図12では省略している)を互いに直角をなす3方向に移動させたり、ピペット針を多くのピペット操作位置へ移動させるために主に使用される。
【0055】
図12に示す好ましい実施例において、第2の自動ピペット装置が設けられていて、同じく、ピペット針101を移動させるためのコンベヤーが備えられている。この第2の自動ピペット装置のコンベヤーには、キャリッジ71およびロッド72が設けられ、このロッド72上をキャリッジ71が移動するようになっている。このキャリッジ71はピペット針101を担持している。
【0056】
前述のピペット操作には、とりわけ、試薬の或る量をキャリアプレート62上に置かれた試薬キット11の1つの中の試薬容器から分取し、それを検査のための試料を収容した所定の試薬容器68へ移送することが含まれる。分析装置内での全使用期間において、各試薬容器は、ピペット装置のピペット針101で穿孔されるキャップにより閉塞状態に維持することができるほか、試薬容器のキャップを除去した後に開口状態に維持することもできる。
【0057】
図12に示すように、この分析装置は処理ステーション77を有し、そこに配置された試薬キットがこのステーション77において枢動したり、転動したりすることができるようになっている。試薬キットが、凍結乾燥した試薬を保持する試薬容器を有する場合、試薬キットのコンベヤーがそのようなキットをその最初の使用前に処理ステーション77に向けて自動的に移送させる。キャリアプレート62上の位置にて、前記容器にはピペット操作により適当量の水が予め満たされる。次に、前記容器を備えた試薬キットが、コンベヤーの操作によりグリッパー66を用いて、キャリアプレート62上の位置から処理ステーション77に向けて移送される。この処理ステーション77において、試薬キット11が約10分間、枢動され、溶解されるべき試薬を効率的に混合させ、完全に溶解させる。キット内の試薬は全て同時に溶解される。試薬キット11内の試薬が処理ステーション77で溶解されたのち、このキットはキャリアプレート62上の所定位置に戻される。
【0058】
必要に応じて、或る試薬キット内の試薬は処理ステーション77において定期的に再度混合される(例えば、1日1回)。なお、この混合は、分析装置内の適当な混合手段を動作させることにより行われる。
【0059】
上述のように、凍結乾燥された試薬を溶解させたのち、そのキットは前述のように口が開けられる。
【0060】
ピペット針を洗浄するためのステーション76が処理ステーション77と並んで配置される。
【0061】
分析装置の操作の間において、試薬の幾つかの量がキャリアプレート62上の試薬キット11から選択的に取り出され、試料と試薬との混合物を処理するため、ステーション79内の反応容器68に供給される。
【0062】
本発明を好ましい具体例に基づいて特定の用語を用いて説明したが、その記載は説明のみを目的としたものであり、特許請求の範囲の趣旨又は範囲を逸脱することなく種々の変更、変形も可能であることを理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】従来公知の試薬キット10を示す斜視図である。
【図2】本発明の試薬キット11の第1の実施例を示す斜視図である。
【図3】図2の試薬キット11の側面図である。
【図4】第1の方向から図2の試薬キット11を見たときの、その構成部材の部分的な分解斜視図である。
【図5】図4と同じ方向から見たときの図2の試薬キット11の構成部材の全体的な分解斜視図である。
【図6】図5とは反対の方向から見たときの図2の試薬キット11の構成部材の部分的な分解斜視図である。
【図7】図2の試薬キット11のカバー14の上面を示す平面図である。
【図8】図2の試薬キット11の容器12および13の上面を示す平面図である。
【図9】図2の試薬キット11のトレイ16および17の底面を示す平面図である。
【図10】本発明の試薬キット11の第2の実施例の構成部材の部分的な分解斜視図である。
【図11】本発明の試薬キット11の第3の実施例の構成部材の部分的な分解斜視図である。
【図12】本発明の分析装置の斜視図である。
【符号の説明】
【0064】
10 EP0564 970A2号に記載の従来の試薬キット
11 本発明の試薬キット
12 試薬容器
13 試薬容器
14 カバー
15 カバー14の側面
16 試薬容器12の下部を保持するためのトレイ
17 試薬容器13の下部を保持するためのトレイ
18 トレイ16の側面
19 トレイ17の側面
21 管状容積
22 ウェブ
23 ウェブ
24 ウェブ
25 ウェブ
26 カバー14のラグ
27 試薬容器12、13、52、53の溝
28 ラベル
29 トレイ16、17、54、55のラグ
30 キャップ
31 キャップ
32 容器12の開口部
33 容器13の開口部
34 カバー14の開口部
35 カバー14の開口部
36 カバー14の開口部
37 管状容積
38 管状容積37の一部
39 管状容積37の一部
45 試薬容器53のキャップ
46 トレイ16の底面の開口部
47 トレイ17の底面の開口部
48 トレイ17の底面の開口部
49 トレイ17の底面の開口部
50 トレイ17の底面の開口部
51 トレイ17の底面の開口部
52 試薬容器
53 試薬容器
54 試薬容器52の下部を保持するためのトレイ
55 試薬容器53の下部を保持するためのトレイ
61 入力ステーション/出力ステーション
62 キャリアプレート
63 コンベヤーベルト
66 グリッパー
68 反応容器
69 位置決め用突起
70 位置決め用突起
71 キャリッジ
72 ロッド
73 キャリッジ
74 ロッド
76 キャリッジ
77 ロッド(処理ステーション)
78 洗浄ステーション
79 処理ステーション
81 ケース
82 底面
83 側壁
84 側壁
85 蓋体
86 試薬容器のキャップ
87 試薬容器のキャップ
88 試薬容器のキャップ
90 スパイク
96 蓋体85の開口部
97 蓋体85の開口部
98 蓋体85の開口部
101 ピペット針
106 試薬容器
107 試薬容器
108 試薬容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動分析装置に使用される試薬キットであって;
同じ高さを有する少なくとも2つの容器である、第1の試薬容器(12)および第2の試薬容器(13)と;
前記の少なくとも2つの試薬容器(12、13)の上部をともに覆い、かつ保持するためのキットカバー(14)であって、前記の少なくとも2つの容器(12、13)内に収容されている試薬へのアクセスを提供する開口部(34、35、36)を有するとともに、該試薬容器(12、13)の高さより高い側壁(15)を有するキットカバー(14)と;
前記第1の試薬容器(12)の底部を保持するための第1のトレイ(16)と;
前記第2の試薬容器(13)の底部を保持するための第2のトレイ(17)と;
を具備してなり;
前記第1のトレイおよび第2のトレイがそれぞれ、該試薬容器(12、13)の高さより低い側壁(18、19)を有し;
前記の少なくとも2つの試薬容器(12、13)が一緒に組立てられた際に、試薬キットを通る空気の循環を許容する管状容積(21、37)を除いて前記キットカバー(14)と前記トレイ(16、17)との間の空間全体を満たすような形状および寸法を少なくとも2つの試薬容器(12、13)が有していることを特徴とする試薬キット。
【請求項2】
前記キットカバー(14)、前記第1および第2のトレイ(16、17)および前記の少なくとも2つの試薬容器(12、13)が自立アッセンブリーを形成するようになっている請求項1記載の試薬キット。
【請求項3】
前記自立アッセンブリーが、前記の少なくとも2つの試薬容器(12、13)内に収容されている試薬についての情報を備えたラベルを固定するのに適した少なくとも1つの外側面を有する請求項2記載の試薬キット。
【請求項4】
機械読み可能なラベル(28)が取着されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の試薬キット。
【請求項5】
前記ラベル(28)が前記自立アッセンブリーの硬直性の向上に寄与するものである請求項4記載の試薬キット。
【請求項6】
前記の少なくとも2つの試薬容器(12、13)の夫々の上部が前記キットカバー(14)のキャビティ内に嵌合し、前記の少なくとも2つの試薬容器(12、13)の夫々の底部が対応するトレイ(16、17)のキャビティ内に嵌合するようになっている請求項1記載の試薬キット。
【請求項7】
前記キットカバー(14)が、前記の少なくとも2つの試薬容器(12、13)の夫々の上部にスナップ嵌めされるスナップオンカバーである請求項1記載の試薬キット。
【請求項8】
前記第1および第2のトレイ(16、17)の夫々がスナップオントレイであり、前記試薬キットが組立てられた際に、前記トレイが試薬容器(12、13)の夫々の対応する1つの底部にスナップ嵌めされるようになっている請求項1記載の試薬キット。
【請求項9】
前記キットカバー(14)並びに前記第1および第2のトレイ(16、17)が第1のプラスチック材料から作られたものであり、前記の少なくとも2つの試薬容器(12、13)が第2のプラスチック材料から作られたものであり、該第1のプラスチック材料が該第2のプラスチック材料よりもより硬質の材料である請求項1記載の試薬キット。
【請求項10】
前記キットカバー(14)、前記の少なくとも2つの試薬容器(12、13)および前記第1および第2のトレイ(16、17)が不透明な材料から作られている請求項1記載の試薬キット。
【請求項11】
前記キットカバー(14)がウェブ(22、23、24、25)を有し、該ウェブがコンベヤーの属するグリッパーによって把持されるようになっている請求項1記載の試薬キット。
【請求項12】
前記キットカバー(14)が開口部(34、35、36)のうちの少なくとも2つの開口部を有し、前記トレイ(16、17)の夫々が開口部(46、47)のうちの少なくとも1つの開口部を有し、該開口部が前記試薬キット内の円筒状容積(21)を通る空気の循環に適したものである請求項1記載の試薬キット。
【請求項13】
前記の少なくとも2つの試薬容器(12、13)の夫々が実質的に立方形状のもので四角形の横断面を有する請求項1ないし12のいずれかに記載の試薬キット。
【請求項14】
前記キットカバー(14)および前記第1および第2のトレイ(16、17)が夫々、立方形状を有する請求項1ないし13のいずれかに記載の試薬キット。
【請求項15】
前記の少なくとも2つの試薬容器(12、13)の夫々が螺着キャップ(30、31)を有し、これら螺着キャップ(30、31)の夫々がピペット針により刺通される中央部を有し、これら螺着キャップ(30、31)が適当な工具により、前記キットカバー(14)の前記開口部(34、35、36)を通って除去可能となっている請求項1ないし14のいずれかに記載の試薬キット。
【請求項16】
前記キットカバー(14)の側壁(15)の高さおよび前記側壁(18、19)の高さの合計が、前記試薬容器(12、13)の高さよりも小さい請求項1ないし14のいずれかに記載の試薬キット。
【請求項17】
請求項1記載の試薬キットを複数使用するのに適した自動分析装置であって、
新規な試薬キットを受理するための入力ステーション(61)と;
使用済み試薬キットを移送するための移送ステーション(61)と;
分析装置内に試薬キット(11)をマトリックス状に配置させるキャリアプレート(62)と;
試薬キット(11)を入力ステーションからキャリアプレート(62)へ、又は該キャリアプレートから移送ステーション(61)並びに適宜、分析装置内の他の位置へ移送するためのコンベヤー(63)であって、該コンベヤー(63)が試薬キット(11)のキットカバー(14)の一部である把持用ウェブ(22、23、24、25)により試薬キットを把持するためのグリッパーを含むものと;
分析装置内で、要求されるピペット操作を実行するための自動ピペット装置と;
を具備してなり、
前記ピペット操作は、該試薬キットの試薬容器(12、13)から試薬の或る量を分取すること、並びにこの試薬の或る量を検査のための試料を収容した反応容器へ移送させこと、からなる自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−187666(P2007−187666A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−5119(P2007−5119)
【出願日】平成19年1月12日(2007.1.12)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】