説明

試薬タンクを受容するスペースのある扉を有する生体試料処理装置

【課題】生体試料処理装置のスペース効率を向上させる。
【解決手段】生体試料処理装置20は、試料処理室22の扉24が複数の試薬供給タンク26を受容するように設計されている。試薬供給タンクは、試料処理室内の試薬バッファタンク30と流体連通している導管28を有する。少なくとも1つの導管が、中空の枢軸部32を通って試薬供給タンクを試薬バッファタンクに接続している。操作者が試薬を追加する際には、扉を開いて試薬供給タンクにアクセスするだけでよい。複数の生体試料処理装置が並列配置される場合には、同じスペースにより多く配置することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
[0001]本出願は、その全文が参照により本明細書に組み込まれる、2011年8月1日に出願された、台湾特許出願第100127248号の優先権の利益を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
[0002]本発明は、生体試料を処理するための試薬を貯留するための試薬タンク受容スペースのある扉を有する生体試料処理装置に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]試薬は試料を処理する際に消耗されるので、生体試料処理装置の動作中に試薬が頻繁に追加される。すなわち、試料処理が完了した後に試薬が廃棄され、新たな試料処理が始まる前に新たな試薬が追加される。生体試料処理装置の処理を、試薬の追加によって中断することなく続けられるようにするためには、十分な量の試薬を貯留するのに十分な大きさの試薬供給タンクが生体試料処理装置に備えられていなければならない。試薬供給タンクは、試料処理室の内部または外部に配置されるように設計される。
【0004】
[0004]図1に示されているように試料処理室の内部に配置される試薬供給タンクのために、少なくとも1つのこのような試薬供給タンク14を収容するのに十分なスペース16を試料処理室12が有する。しかし、このようなスペース16は横方向における生体試料処理装置の寸法を増大させることとなる。複数の試薬供給タンク14が試料処理室12内の長手方向に沿って配置されると、例えば手動操作が必要となった場合で、操作者がその手を使って試料処理室12の奥の部分にアクセスしなければならないときには、不利となる。したがって、複数の試薬供給タンク14を横方向に配置すれば、手動操作を容易にすることができる。しかし、横方向に配置すると、生体試料処理装置が占める空間を増やすことにもなる。
【0005】
[0005]試薬供給タンクが試料処理室の外側に配置されると、生体試料処理装置の占めるスペースは増えない。しかし、操作の容易性のためには、試薬供給タンクを生体試料処理装置の側面に配置すべきである。ただし、これによって生体試料処理装置はより多くのスペースを占めることとなる。このように配置すると、試薬供給タンクを試料処理室の内部に配置する場合に比べて操作者にはより便利になるが、生体試料処理装置の側面で操作をしなければならない。生体試料処理装置の操作のためのスペースを確保しておかなければならない。そのため、スペースが無駄に使用されることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
[0006]上記の欠点を考慮して、生体試料処理装置のスペース効率を向上させる方法が望まれている。より多くの装置が並列に配置される場合には、このスペース効率の利益がより顕著になる。また、より容易な操作を可能にするために生体試料処理装置を改善することも望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[0007]本発明は、試薬タンクを受容するスペースのある扉を有する生体試料処理装置に関する。このような装置は一般的に、試料処理室および廃液貯留室を有する。試料処理室は試料処理が行われるスペースである。廃液貯留室は試料処理で生成された廃液が一時的に貯留されるスペースであって、その後廃液貯留室は適切なタイミングで取り外されるかまたは廃棄される。
【0008】
[0008]本発明は、試料処理室の扉が、試薬を貯留するためのスペースを提供することを特徴とする。実際には、試薬は試薬供給タンク内に貯留され、試薬供給タンクは試料処理室の扉の内側面に配置されている。このため、試薬の追加が必要なときは、操作者はただ試料処理室の扉を開いて試薬供給タンクを試薬で満たせばよい。それによって、操作者は試料処理室内部に配置されたタンクに手を伸ばすという面倒な行為から開放される。試薬供給タンクを受容するために扉は厚くしなければならないが、この厚みは外側でなく内側に増大させることが可能である。したがって、生体試料処理装置全体の体積を増やすことなく操作の容易性を向上させることができる。
【0009】
[0009]本発明においては、試薬を試料処理室にどのように送るかが考慮すべき課題である。本発明はさらに、試料処理室の扉に中空の枢軸部を設けることも特徴とする。試薬供給タンクを試薬バッファタンクに接続する導管は中空の枢軸部を通って延びる。このため、試料処理室の扉の開閉は、試薬供給タンクから試薬バッファタンクへの試薬の流れを妨げない。
【0010】
[0010]好ましい実施形態が図示され説明されるが、この実施形態は本発明を制限するものと解釈されるべきではないことを理解すべきである。当業者であれば、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な修正、変更、変形、代替物、および同等物をなすことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】従来技術による生体試料処理装置を示す。
【図2】本発明による生体試料処理装置であって、試薬供給タンクが試料処理室の扉の内側面に配置され、試薬供給タンクが試料処理室内の試薬バッファタンクと導管によって流体連通しているものを示す。
【図3】本発明による生体試料処理装置であって、試薬バッファタンクが廃液バレルに接続されているものを示す。
【図4】並列配置された複数の生体試料処理装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[0015]本発明の好ましい実施形態が図2〜図5に示されている。図2は、生物医学研究所、薬物診断、および臨床試験に適し、複数の生体試料を同時に処理することができる生体試料処理装置20を示す。生体試料処理装置20は、試料処理室22を有する。本発明は、試料処理室22の扉が複数の試薬供給タンク26を受容するように設計されていることを特徴とする。試薬供給タンク26は、試料の処理に必要とされる種々の試薬を貯留するために用いられる。試薬供給タンクの数およびサイズは実際の要求に応じて決定される。試薬供給タンク26は、試薬バッファタンク30と流体連通している。試薬を処理するために、試薬が試薬供給タンク26から試薬バッファタンク30に送られる。
【0013】
[0016]操作試料処理の動作が完了した後、試薬バッファタンク30内の試薬を廃棄しなければならない。廃棄される試薬は廃液バレル38に吐出される。操作者は、適切なタイミングで廃液を廃液回収バレル40に吐出し、その後生体試料処理装置20から廃液回収バレル40を取り外すことができる。
【0014】
[0017]図3に示されるように、廃液バレル38および廃液回収バレル40は廃液貯留室36内に配置される。廃液回収バレル40を取り外すときにだけ操作者が廃液貯留室36の扉42を開ければよく、また取り外すことによって試料処理室22で行われている試料処理の進行が妨げられないように、廃液貯留室36は試料処理室22から離間するよう構成されている。
【0015】
[0018]試料処理手順が完了すると試薬は廃棄されることとなるので、試薬バッファタンク30にはその後の手順で用いられる新たな試薬が補充される。試薬供給タンク26は、試薬バッファタンク30内の複数の処理手順に用いられるのに十分な供給量の試薬を貯留している。試薬は、試薬供給タンク26から試薬バッファタンク30に供給された後、プログラム化された自動制御によって廃液バレル38に吐出される。
【0016】
[0019]試薬供給タンク26内の試薬を使い切った場合には、新たな試薬が手動で試薬供給タンク26に追加される。図2に示されるように、試薬供給タンク26は扉24の内側面に配置されている。図1を参照すると、現在使用されている生体試料処理装置10では、試薬供給タンク14が試料処理室12内に配置されている。生体試料処理装置10の使用するスペースが大きくなりすぎないように、試料処理室12は限られたスペースを持つように構成されている。試薬を追加する際には、操作者は手を使って試料処理室12の内部にアクセスしなければならない。しかし試料処理室12はスペースが限られているので、操作者による試料処理室12の内部へのアクセスが妨げられる。図2に示される本発明の試料処理室12では、操作者が試薬を追加する際には、操作者はただ扉24を開いて試薬供給タンク26にアクセスするだけでよく、操作者の手を試料処理室22の内部にまで伸ばす必要はない。したがって、試薬供給タンク26が試料処理室22の扉24の内側面に配置されるならば、このような試料処理室へのアクセスのしやすさは大きく向上する。
【0017】
[0020]さらに、図1に示されるように、試薬供給タンク14は試料処理室12内の非常に大きな横方向スペースを占めている。そのため、生体試料処理装置10全体の幅寸法をさらに大きくしなければならない。複数の生体試料処理装置10が並列配置される場合には、そのスペースはかなり拡大されることになる。図5は、本発明に係る複数の生体試料処理装置20が並列配置された状態を示す。図1に示される従来技術による装置とは対照的に、試料処理室22の扉24の内側面に試薬供給タンクを配置することによって、本発明に係る生体試料処理装置20を同じスペースにより多く配置することが可能となる。
【0018】
[0021]図2に示されるように、扉24の下方の角部における枢軸部32には孔が形成されている。試薬供給タンク26と試薬バッファタンク30とを接続するために用いられる導管28は扉24の内部に延びており、中空の枢軸部32を通って生体試料処理装置20の試料処理室22内に入っている。図では破線で示されているように、導管28は扉24の内部に配置され、扉24の内部に隠されている。導管28が扉24の内部に配置されているので、導管28によって生体試料処理装置20の動作が妨げられたり、生体試料処理装置20の美的外観が影響されたりすることはない。
【0019】
[0022]導管28は中空の枢軸部32を通って内部で延び、試薬バッファタンク30に到達している。そのため、導管28によって生体試料処理装置20の美的外観が影響されない。
【0020】
[0023]図3に示されるように、廃棄流体導管34によって試薬バッファタンク30が廃液バレル38に接続されている。処理手順が完了すると、試薬バッファタンク30内の試薬が廃棄流体導管34を通って廃液バレル38に流れ、廃液バレル38に一時的に貯留される。廃棄流体(数種の使用済み試薬の集合体)の量が所定のレベルに達すると、廃液バレル38の排水口にあるバルブが開いて廃棄流体が廃液回収バレル40に吐出される。廃液回収バレル40は取り外し可能なので、満杯になった廃液回収バレル40を操作者が取り外すことができる。図面を明確にするという点での悪影響を排するため、図3では、導管28が省略されて図示されておらず、また図2では、廃棄流体導管34が省略されている。
【0021】
[0024]図4は、本発明に係る生体試料処理装置20が複数の並列配置された状態を示す。本発明では、試薬供給タンク26が扉24の内側面に配置されている。試薬供給タンクが試料処理室内に配置されている従来技術と比較すると、本発明は試料処理室の横方向スペースをより小さくすることができる。スペースを小さくすることによって、より多くの生体試料処理装置を並列配置することができる。大量の試料を処理しなければならず、より多くの生体試料処理装置が必要とされる場合には、このスペース効率の利益がより顕著なものとなるであろう。
【0022】
[0025]本発明において開示された生体試料処理装置は、スペースを節約し、操作をより容易にするという利点を有し、したがって非常に実用的であることが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0023】
10、20…生体試料処理装置、12、22…試料処理室、14、26…試薬供給タンク、16…スペース、24、42…扉、28…導管、30…試薬バッファタンク、32…枢軸部、34…廃棄流体導管、36…廃液貯留室、38…廃液バレル、40…廃液回収バレル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試薬タンクを受容するスペースのある扉を有する生体試料処理装置であって、
少なくとも1つの試薬供給タンクを受容するのに十分なスペースのある扉を有する試料処理室を備える生体試料処理装置。
【請求項2】
前記試薬供給タンクの数に応じた数の試薬バッファタンクをさらに備え、
前記試薬バッファタンクが、導管によって前記試薬供給タンクに接続されている請求項1に記載の生体試料処理装置。
【請求項3】
前記扉が枢軸部を有する請求項2に記載の生体試料処理装置。
【請求項4】
前記枢軸部が孔部であって、前記試薬供給タンクと前記試薬バッファタンクとが前記導管によって接続されている請求項3に記載の生体試料処理装置。
【請求項5】
前記導管が、前記扉の内部、前記枢軸部を通って前記試薬バッファタンクまで延びている請求項4に記載の生体試料処理装置。
【請求項6】
処理が完了した後、前記試薬バッファタンクの前記試薬を一時的に貯留するための廃液バレルをさらに備え、
前記廃液バレルが、廃棄流体導管によって前記試薬バッファタンクに接続されている請求項5に記載の生体試料処理装置。
【請求項7】
前記廃液バレルに一時的に貯留された前記試薬を回収するための廃液回収バレルをさらに備える請求項6に記載の生体試料処理装置。
【請求項8】
前記廃液バレルと前記廃液回収バレルとを受容する廃液貯留室をさらに備え、
前記廃液貯留室が、前記試料処理室から離間している請求項7に記載の生体試料処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−33041(P2013−33041A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−165952(P2012−165952)
【出願日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【出願人】(508017111)タイゲン バイオサイエンス コーポレーション (4)
【Fターム(参考)】