説明

試薬ボトル及びボトルホルダ

【課題】試薬の種類や量が多い場合でも、設置作業を容易に行なうことができる試薬ボトルと共に、それをコンパクトに保持できるボトルホルダを提供する。
【解決手段】試薬ボトルを、上端に開口部12Aが形成された薄い箱形のバケット部12と、該バケット部の下方に形成された、所定の保持部材に形成されているスリットに差し込み可能な薄板部14とを備えた構成とする。ボトルホルダを前記試薬ボトルが備えている薄板部が差し込み可能な複数のスリットが、略ボトルの厚さ間隔で形成されている保持部材を備えた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動分注装置で使用される試薬ボトルとそのボルトホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
自動分注装置で使用される従来の試薬ボトルとしては、例えば特許文献1に図6、図7に示すものが開示されている。
【0003】
この試薬ボトルは、容器本体100の上部に壁102により囲まれた開口104が形成されている。この試薬ボトルでは、上部開口104が、本体100より小さい長辺106(例えば80mm)と短辺108(例えば20mm)で形成され、該開口104に、分注装置に装着されているピペットのノズルが挿入され、ノズル内に試薬を吸入できるようになっている。
【0004】
従来、このような試薬ボトルは、自動分注装置で使用する場合、作業者により1つずつ装置の所定位置に設置する方法が一般に採用されている。
【0005】
【特許文献1】特開平11−264827号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、1回の分注作業の中で複数種の試薬を使用する場合や1種類の試薬を多量に必要とする場合には、複数の試薬ボトルが必要となる。従って、所定位置に対して必要個数分のボトルを設置する作業が発生することになるため、容器本体100が大きな前記従来の試薬ボトルでは作業性が良くないという問題があった。
【0007】
更に、試薬の種類によって必要な量も変化するため、試薬の使用量に対応した複数種のボトルを使用できると同時に、それらをコンパクトに保持できるボトルホルダも必要となる。
【0008】
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、試薬の種類や量が多い場合でも、設置作業を容易に行なうことができる試薬ボトルを提供することを第1の課題とする。
【0009】
本発明は、又、本発明に係る試薬ボトルを、数が多い場合でもコンパクトに保持することができるボトルホルダを提供することを第2の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、試薬ボトルにおいて、上端に開口部が形成された薄い箱形のバケット部と、該バケット部の下方に形成された、所定の保持部材に形成されているスリットに差し込み可能な薄板部とを備えたことにより、前記第1の課題を解決したものである。
【0011】
本発明においては、前記開口部の長辺と短辺が、前記バケット部の長辺と短辺と実質上同一の長さで形成されているようにしてもよく、又、前記薄板部の幅が、前記保持部材の幅と略同一に形成されているようにしてもよい。
【0012】
本発明は、又、ボトルホルダにおいて、前記試薬ボトルが備えている薄板部が差し込み可能な複数のスリットが、略試薬ボトルの厚さ間隔で形成されている保持部材を備えたことにより、前記第2の課題を解決したものである。
【0013】
本発明においては、前記試薬ボトルの下部フレームの両端部には、それぞれ外側に第1つばが突設されていると共に、該試薬ボトルが、その薄板部を前記スリットに差し込んで保持されると、前記第1つばが当接可能な第2つばが、対応する両側上端部の外側に、それぞれ突設されているようにしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の試薬ボトルによれば、液体を貯留するバケット部を薄い箱形形状にすると共に、下部に形成された薄板部を保持部材に形成されたスリットに差し込むことができるようにしたことから、該試薬ホルダを保持部材が設置された所定位置に設置する設置作業を、その数が多い場合でも容易に行なうことができる。
【0015】
又、本発明のボトルホルダによれば、保持部材に略ボトルの厚さ間隔で形成されている複数のスリットに、本発明に係る試薬ボトルが有する薄板部を差し込むことにより、複数のボトルを容易且つコンパクトに保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0017】
先ず、本発明に係る一実施形態の試薬ボトルについて説明する。この試薬ボトル10は、図1に示すように、試薬を貯留・充填するバケット部12と、該バケット部12の下方に形成された、後述する保持部材のスリットに差し込むための薄板部14とを有している。
【0018】
上記バケット部12は、上端に開口部12Aが形成された長辺A、短辺B、深さCからなる薄い箱形に形成された容器本体であり、上端の開口部12Aと本体とは、長辺と短辺が、実質上同一長さである。なお、特に制限されないが長辺Aは70〜140mm、短辺Bは5〜30mm、深さCは10〜100mmとすることができる。
【0019】
本実施形態では、深さCのバケット部12より下方のDの範囲が厚さ数mmの一枚の薄板で形成され、該薄板が格子状のリブからなるフレーム16で補強された構造になっている。但し、下部フレーム16Aは、前記薄板部14に対応する中央部の幅Eの範囲が除かれ、下端部が薄板の状態に形成されているようにしたことにより、該薄板部14をスリットに差し込み、挿入が可能な形状になっている。なお、薄板の範囲Dは、20〜50mmとすることができ、又、薄板部14の幅Eは、スリットに差し込み可能であれば、長辺A以下の任意の寸法にすることができる。
【0020】
又、試薬ボトル10の下部フレーム16Aの両端部には、それぞれ外側に第1つば18が突設され、該第1つば18により薄板部14をスリットに差し込んで挿入した場合の挿入深さが、後述するように制限されるようになっている。
【0021】
次に、本発明に係る第1実施形態のボトルホルダについて説明する。このボトルホルダ30は、図2に前記試薬ボトル10と共に示すように、中央部に前記試薬ボトル10の薄板部14の幅Eより若干狭いが、略同一の幅に相当する間隔で対向配置された2つの保持部材32が立設されている。各保持部材32は、L字形状の板金からなり、下部がボトルホルダ30の底部にねじでそれぞれ固定されている。
【0022】
又、この2つの保持部材32には、前記薄板部14が差し込み可能なスリット34が、ほぼ試薬ボトル10の厚さ間隔で、該試薬ボトル10の設置高さに合わせた深さ寸法で形成されている。
【0023】
又、前記スリット34に薄板部14が差し込まれた試薬ボトル10に沿った方向のボトルホルダ30の両側上端には、前記第1つば18が当接し、薄板部14の挿入深さを制限する第2つば36が、それぞれ外側に突設されている。これら第1つば18、第2つば36は、後述するトレイにより試薬載置場に設置した際の抜け防止の機能をも有している。
【0024】
以上の構成において、前記試薬ボトル10は、図2に示したように薄板部14をホルダ30に立設されている保持部材32のスリット34に差し込み、挿入することにより保持される。
【0025】
このとき、L字板金からなる2枚の保持部材32は、試薬ボトル10の薄板部14の幅Eに合わせて対向配置され、略同一幅に形成されているので、試薬ボトル10の図中左右方向(幅方向)の位置決めが可能となる。更に、試薬ボトル10の第1つば18をホルダ30の第2つば36に突き当てて保持することにより、試薬ボトル10の挿入深さ(保持高さ)が決定される。又、ホルダ30に固定されている保持部材32のスリット34により試薬ボトル10の図中前後方向(厚さ方向)の転倒が防止される。
【0026】
以上説明したように、ボトル設置(保持)の方法に薄板部14をスリット34に差し込む方式を採用したことにより、試薬ボトル10を容易に位置決めすることが可能となり、しかも転倒防止も可能となる。
【0027】
従って、図2に残っているスリット34に対しても試薬ボトル10を隙間なくホルダ30に配置することが可能となることにより、限られた空間内により多くの試薬ボトル10を配置し保持することが可能となる。
【0028】
又、バケット部12の短辺Bや深さCの寸法を、それぞれ設計変更することにより、又、それに伴ってボトルの厚さやスリット間隔を変更することにより、多種の内容量のボトルに対応することが可能となる。
【0029】
以上詳述した本実施形態の試薬ボトル10とボトルホルダ30を採用することにより、試薬ボトル10を全てのスリット34に差し込んだ状態の試薬ホルダ30を複数個使用した例を図3に示すように、これらボトルホルダ30をトレイ40に嵌め込み、該トレイ40をスライドさせて分注装置(図示せず)に固定されている試薬載置場50に装着することにより、複数(多種)の試薬ボトル10を一括して装填することができる。
【0030】
図4には、試薬ボトル10を保持したボトルホルダ30を嵌め込んだトレイ40を、試薬載置場50に装着した状態の横断面を示す。
【0031】
この図に示されるように、試薬載置場50は、その内部に配設された、トレイ40を載置すると共に、長さ方向に案内するための下側ガイド部52と、外枠54の両側上部をそれぞれ内側に折り曲げて形成した上側ガイド部56とを備えている。
【0032】
この下側ガイド部52に載置されているトレイ40の両側上端部には、それぞれ内側に折り曲げて当接部42が形成され、該当接部42上に前記ボトルホルダ30の第2つば36が載置され、更に該つば36上に試薬ボトル10の第1つば18が載置され、それぞれ支持された状態になっている。
【0033】
従って、図4に示したように試薬ボトル10が保持されているボルトホルダ30が嵌め込まれたトレイ40を、試薬載置場50の下側ガイド部52と上側ガイド部56の間にスライドさせて装着することにより、試薬ボトル10を配置した複数のボトルホルダ30を一括して分注装置に装填することが可能となる。
【0034】
又、その際、ボトルホルダ30のつば部36上に支持されている試薬ボトル10のつば18を、上側ガイド56により上方への動きを規制することが可能であるため、第1及び第2つば18及び36の抜けが防止されることから、トレイ40を円滑にスライドさせ、装着することが可能となる。
【0035】
図5には、本発明に係る第2実施形態のボトルホルダを示す。このボトルホルダ30は、保持部材32として試薬ボトル10の厚みの間隔でスリット34が形成された、上部が連続した形状の箱形板金を設置している以外は、実質的に前記図2に示した第1実施形態のボトルホルダと同一である。
【0036】
従って、この箱形板金からなる保持部材32もその幅は試薬ボトル10の薄板部14の幅Eに合わせて形成されている。又、スリット34の深さも、試薬ボトル10の設置高さに合わせた寸法となっている。更に、ボトルホルダ30には、試薬載置場に設置された際の抜けを防止するための第2つば36も形成されている。
【0037】
従って、本実施形態のボルトホルダ30によっても、ボトル10は薄板部14をスリット34に挿入することにより保持され、箱形板金からなる保持部材32により試薬ボトルの左右方向の位置決めが可能となり、試薬ボトルの第1つば18をホルダの第2つば36に突き当てることにより、試薬ボトル10の挿入深さ(保持高さ)が決定される。更に、スリット34により、試薬ボトル10の前後方向の転倒を防止することもできる。
【0038】
なお、本発明に係る試薬ボトルやボトルホルダの具体的な形状は、前記実施形態に示したものに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る一実施形態の試薬ボトルを示す概略斜視図
【図2】本発明に係る第1実施形態のボトルホルダを、上記試薬ボトルと共に示す概略斜視図
【図3】ボトルホルダに保持されている試薬ボトルを、トレイを使って装着した状態を示す概略斜視図
【図4】図3に示した装着状態を示す横断面図
【図5】本発明に係る第2実施形態のボトルホルダを示す概略斜視図
【図6】従来の試薬ボトルを示す平面図
【図7】従来の試薬ボトルを示す側面図
【符号の説明】
【0040】
10…試薬ボトル
12…バケット部
14…薄板部
18…第1つば
30…ボトルホルダ
32…保持部材
34…スリット
36…第2つば

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端に開口部が形成された薄い箱形のバケット部と、該バケット部の下方に形成された、所定の保持部材に形成されているスリットに差し込み可能な薄板部とを備えたことを特徴とする試薬ボトル。
【請求項2】
前記開口部の長辺と短辺が、前記バケット部の長辺と短辺と実質上同一の長さで形成されていることを特徴とする請求項1に記載の試薬ボトル。
【請求項3】
前記薄板部の幅が、前記保持部材の幅と略同一に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の試薬ボトル。
【請求項4】
前記請求項1に記載の試薬ボトルが備えている薄板部が差し込み可能な複数のスリットが、略試薬ボトルの厚さ間隔で形成されている保持部材を備えたことを特徴とするボトルホルダ。
【請求項5】
前記試薬ボトルの下部フレームの両端部には、それぞれ外側に第1つばが突設されていると共に、該試薬ボトルが、その薄板部を前記スリットに差し込んで保持されると、前記第1つばが当接可能な第2つばが、対応する両側上端部の外側に、それぞれ突設されていることを特徴とする請求項4に記載のボトルホルダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−78421(P2007−78421A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−264190(P2005−264190)
【出願日】平成17年9月12日(2005.9.12)
【出願人】(000003399)JUKI株式会社 (1,557)
【Fターム(参考)】