説明

試薬再循環を用いてオリゴマー、特に、ペプトイドを合成するための装置

【課題】固相合成技術を用いてペプトイドオリゴマーを合成する方法および装置であって、従来のシステムに付随した無駄をなくした方法および装置などの提供。
【解決手段】ペプトイドオリゴマー合成方法であって、以下を包含する方法:(a)保護したアミノ基を有する固相を提供する工程;(b)該固相上にて該アミノ基を脱保護して、反応性アミンを提供する工程;(c)該反応性アミンをアシルサブモノマーと接触させることにより、該アミンをアシル化して脱離基を含むアシル化アミンを提供する工程;(d)該アシル化アミンをアミン試薬と接触させることにより該アシル化アミンに由来の該脱離基をアミンで置き換えてN置換モノマーおよび脱離基副生成物を提供する工程;および(e)該脱離基副生成物と共に未使用アミン試薬を閉じ込め手段に再循環させるこにより引き続いた置換反応で使用するのに適切な再生アミン試薬を提供する工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、固相化学合成に関する。さらに特定すると、本発明は、固相有機化学を利用した個々のペプトイド(peptoid)およびペプトイドライブラリの製造用の化学合
成技術で使用するための新規な方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
オリゴマー性N-置換グリシン(NSG)および他の「ペプトイド」は、多様な分子ライブラリの作成によく適合するポリマーである。これらの分子は、タンパク質のような他のポリマーの製造用に開発された従来の固相合成技術を用いて、調製され得る。例えば、Merrifield固相合成スキームを用いて規定ポリペプチドを調製する際に使用するための方法は、一般に、知られている。非特許文献1;非特許文献2。固相ペプチド合成を達成するための他の周知の方法は、これらのアミノ酸上の9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)保護基を使用する。非特許文献3,非特許文献4。この技術では、このペプチドは、任意の広範囲の市販のポリスチレン樹脂に固定化される。非特許文献5,非特許文献6,非特許文献7。個々のペプチドオリゴマーの合成は、上で言及したペプチド合成から適合させた設備および技術を用いて、行われ得る。非特許文献8。
【0003】
薬学的活性および生体活性についてスクリーニングするための多数のポリマーの系統的な合成方法もまた、開発されている。特に、「樹脂分割」技術または「混合/分割」技術を用いて、多数の分子を含有する組み合わせライブラリが調製され得る。非特許文献9;非特許文献10。ペプトイドライブラリを作成するために、樹脂混合/分割方法論もまた使用され得る。非特許文献11。
【0004】
これらの合成方法は常套的であり得るものの、それらは、極めて労力がかかる。このような合成を行うことの困難性は、例えば、組み合わせライブラリの合成と平行して、多くの特定の分子を調製する必要があるとき、拡大する。従って、ポリペプチドおよび/またはペプトイドオリゴマーの合成のための多数の自動化システムが開発されている。非特許文献12で記述された1つの自動化システムは、反応容器から溶媒を引き出し、溶媒を添加し、試薬を洗浄および混合するための数個の自動化アームを用いる、樹脂上でのペプチドの合成に関する。Zuckermannらの特許文献1で記述された他の自動化システムは、分割容器へのおよびそこからの反応溶液の自動化移動、分割容器から抽出容器へのペプチド溶液の移動、および抽出容器へのおよびそこからの抽出溶媒の移動のための構造を有する装置を用いる、ポリペプチドの合成に関する。これらの自動化システムは、大規模ペプチド合成での使用のために改良されている(例えば、ソフトウェアの改良)。
合成のオリゴマーおよびポリマーの製造スキームでのこのような自動化システムの使用は、多くの操作をなくし、そして合成ポリマーの製造効率を高める。しかしながら、ペプトイドの製造においては、その合成工程において、多量の未使用試薬が無駄にされている。その理由は、このような試薬が、一般に、この工程において、(反応速度および全収率を高めるために)繰り返し過剰に使用されているからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,240,680号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Merrifield(1963) J.Am.Chem.Soc.85:2149〜2154
【非特許文献2】Tamら(1987) The Peptides,Academic Press(New York),185〜259頁
【非特許文献3】Meienhoferら(1979) Int. J. Pept. Protein Res. 13:35
【非特許文献4】Athertonら(1979) Bioorg. Chem. 8:351
【非特許文献5】Wang,S.(1973)J. Am.Chem.Soc.95:1328
【非特許文献6】Merglerら(1988) Tetrahedron Lett.29:4005
【非特許文献7】Albericioら(1987) Int.J.Pept.Protein Res.30:206
【非特許文献8】Simonら(1992) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:9367
【非特許文献9】Furkaら(1991) Int.J.Peptide Protein Res.37:487〜493
【非特許文献10】Lamら(1991) Nature 354:82〜84
【非特許文献11】Figliozziら(1996) Methods in Enzymol.267:437
【非特許文献12】Schnorrenbergら(1989) Tetrahedron 45:7759
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、固相合成技術を用いてペプトイドオリゴマーを合成する方法および装置であって、従来のシステムに付随した無駄をなくした方法および装置が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によって以下が提供される:
(1)ペプトイドオリゴマーを合成するための方法であって、該方法は、以下の工程を包含する:
(a)保護したアミノ基を有する固相を提供する工程;
(b)該固相上にて該アミノ基を脱保護して、反応性アミンを提供する工程;
(c)該反応性アミンをアシルサブモノマーと接触させることにより、該アミンをアシル化して、脱離基を含むアシル化アミンを提供する工程;
(d)該アシル化アミンをアミン試薬と接触させることにより、該アシル化アミンに由来の該脱離基をアミンで置き換えて、N-置換モノマーおよび脱離基副生成物を提供する工程;および
(e)該脱離基副生成物と共に、未使用アミン試薬を閉じ込め手段に再循環させて、それにより、引き続いた置換反応で使用するのに適切な再生アミン試薬を提供する工程。
(2)前記閉じ込め手段が、前記脱離基副生成物を捕捉し得る試薬を含有する、項目1に記載の方法。
(3)前記アシルサブモノマーが、ハロ酢酸である、項目1に記載の方法。
(4)前記ハロ酢酸が、ブロモ酢酸である、項目3に記載の方法。
(5)工程(d)にて、前記アミンが、第一級アミンである、項目1に記載の方法。
(6)工程(d)にて、前記第一級アミンの少なくとも約10倍過剰量が、前記アシル化アミンと接触される、項目5に記載の方法。
(7)前記捕捉剤が、無機塩基またはイオン交換樹脂を含む、項目2に記載の方法。
(8)前記捕捉剤が、KOHである、項目7に記載の方法。
(9)前記ペプトイドが、N-置換グリシンのオリゴマーである、項目1に記載の方法。
(10)ペプトイドオリゴマーを合成するための方法であって、該方法は、以下の工程を包含する:
(a)そこに結合したアシルサブモノマーを含有する固相を提供する工程であって、ここで、該アシルサブモノマーは、脱離基を含有する;
(b)該アシルサブモノマーをアミン試薬と接触させることにより、該アシルサブモノマーに由来の該脱離基をアミンで置き換えて、該アシルサブモノマーに結合したアミン基を提供する工程;次いで
(c)該脱離基副生成物と共に、未使用アミンを閉じ込め手段に再循環させて、それにより、引き続いた置換反応で使用するのに適切な再生アミン試薬を提供する工程。
(11)前記閉じ込め手段が、前記脱離基副生成物を捕捉し得る試薬を含有する、項目10に記載の方法。
(12)粒子懸濁液中の固相粒子に固定化したオリゴマーを合成するための装置であって、該装置は、以下を包含する:
(a)反応容器であって、該反応容器は、流体および気体を受容するための頂部開口部、
および非粒子状流体が自由に通過し得る濾過手段を備えた底部開口部を有する;
(b)気体および/または溶媒を該頂部開口部を通って該反応容器へと送出するための第一送出手段;
(c)該底部開口部を通って以下の操作を行うための第二送出手段:(i)該反応容器に気体を送出して、該粒子懸濁液の混合を行うこと;(ii)該反応容器から、流体を除去すること;(iii)付随試薬容器から該反応容器に試薬を導入すること;および(iv)未使用試薬を該
反応容器から該付随試薬容器へと戻すこと;および
(d)該第一および第二送出手段の該操作を制御するための制御手段であって、該制御手段は、該第一および第二送出手段に接続されている。
(13)前記第二送出手段が、各個の試薬容器からおよびそこへ試薬を送出および引き続いて戻すことを可能にするために、2個またはそれ以上の別個の付随試薬容器間にて、前記反応容器の前記底部開口部と切り替え可能に連絡するように使用され得る、項目12に記載の装置。
(14)前記第二送出手段が、多位置バルブの操作可能な組み合わせを包含し、該多位置バルブが、前記反応容器の前記底部開口部を、気体源、廃棄物ポートおよび2個またはそれ以上の付随試薬容器と連絡する、項目13に記載の装置。
(15)前記第一送出手段が、前記反応容器の前記頂部開口部を2個またはそれ以上の付随溶媒源と切り替え可能に連絡するように使用され得る、項目13に記載の装置。
(16)前記第一送出手段が、多位置バルブの操作可能な組み合わせを包含し、該多位置バルブが、前記反応容器の前記頂部開口部を、気体源および2個またはそれ以上の付随溶媒源と連絡する、項目15に記載の装置。
(17)前記反応容器濾過手段が、ガラスフリットを含む、項目12に記載の装置。
(18)前記反応容器が、円筒形上部、円筒形下部、および該上部と該下部とを接続する肩部を包含する、項目17に記載の装置。
(19)前記反応容器の前記上部が、該容器の前記下部よりも大きな直径を有する、項目18に記載の装置。
(20)前記反応容器の前記肩部が、前記粒子溶液のための脱凝集面を提供する、項目19に記載の装置。
(21)前記制御手段が、前記第一および第二送出手段の作動を制御して前記装置内での気体および流体の運動を方向付けるマイクロプロセッサである、項目12に記載の装置。
(22)さらに、温度制御手段を包含し、該温度制御手段が、前記反応容器と操作可能に接触され、そして該反応容器内の前記粒子懸濁液の温度を制御し得る、項目12に記載の装置。
(23)粒子懸濁液中の固相粒子に固定化したオリゴマーを合成するための装置であって、該装置は、以下を包含する:
(a)反応容器であって、該反応容器は、流体および気体を受容するための頂部開口部、および非粒子状流体が自由に通過し得る濾過手段を備えた底部開口部を有する;
(b)該反応容器の該頂部開口部と連絡している第一送出手段であって、該手段は、気体および/または溶媒の該頂部開口部を通って該反応容器への送出を可能にする;
(c)試薬溶液を受容し送出するための試薬容器であって、該試薬容器は、第一開口部を有する;
(d)該試薬容器および該反応容器の該底部開口部と連絡している第二送出手段であって、該手段は、該底部開口部を通る以下の操作を可能にする:(i)該反応容器に気体を送出して、該粒子懸濁液の混合を行うこと;(ii)該反応容器から、流体を除去すること;(iii)該試薬容器から該反応容器に試薬を導入すること;および(iv)未使用試薬を該反応容器から該試薬容器へと戻すこと;ならびに
(e)該操作を制御するための制御手段であって、該制御手段は、該第一および第二送出手段に接続されている。
(24)さらに、前記第二送出手段と連絡する2個またはそれ以上の別個の試薬容器を包含する、項目23に記載の装置。
(25)前記第二送出手段が、各個の試薬容器からおよびそこへ試薬を送出および引き続いて戻すことを可能にするために、前記2個またはそれ以上の別個の試薬容器間にて、前記反応容器の前記底部開口部と切り替え可能に連絡するように使用され得る、項目24に記載の装置。
(26)前記第二送出手段が、多位置バルブの操作可能な組み合わせを包含し、該多位置バルブが、前記反応容器の前記底部開口部を、気体源、廃棄物ポートおよび前記2個またはそれ以上の試薬容器と連絡する、項目25に記載の装置。
(27)前記第一送出手段が、前記反応容器の前記頂部開口部を、2個またはそれ以上の付随溶媒源と切り替え可能に連絡するように使用され得る、項目23に記載の装置。
(28)前記第一送出手段が、多位置バルブの操作可能な組み合わせを包含し、該多位置バルブが、前記反応容器の前記頂部開口部を、気体源および2個またはそれ以上の付随溶媒源と連絡する、項目27に記載の装置。
(29)前記試薬容器が、その中に前記第一開口部を備えた頂端およびテーパ状底端を有する実質的に円筒形の本体、該頂端の該第一開口部を密封的に覆う蓋、および該蓋内に配置され前記反応容器へと伸長している導管を包含し、該導管が、該反応容器内に配置された第一末端および該反応容器蓋から伸長して前記第二送出手段と連絡している第二末端を包含する、項目23に記載の装置。
(30)前記試薬容器が、閉じ込め手段内に配置された捕捉剤を含有し、該閉じ込め手段が、該捕捉剤の前記反応容器導管への通過を防止する、項目29に記載の装置。
(31)前記試薬容器が、さらに、前記導管の前記第一末端にて、試薬濾過手段を包含し、非粒子状試薬流体が自由に通過し得る、項目29に記載の装置。
(32)前記試薬容器が、粒子状捕捉剤を含有する、項目31に記載の装置。
(33)前記粒子状捕捉剤が、中和樹脂である、項目32に記載の装置。
(34)前記中和樹脂が、KOHを含む、項目33に記載の装置。
(35)前記試薬濾過手段が、ポリテトラフルオロエチレンフリットを含む、項目31に記載の装置。
(36)さらに、温度制御手段を包含し、該温度制御手段が、前記反応容器と操作可能に接触され、そして該反応容器内の前記粒子懸濁液の温度を制御し得る、項目23に記載の装置。
【0009】
発明の要旨
本発明の1実施態様では、固相上で行う一連の反応工程を包含する化学合成を行うための方法が提供されている。さらに特定すると、ペプトイドオリゴマーを合成するための方法が提供されており、これは、以下の工程を包含する:(a)保護したアミン基を有する固相を提供する工程;(b)固相上にてアミン基を脱保護して、反応性アミンを提供する工程;(c)反応性アミンをアシルサブモノマーと接触させることにより、アミンをアシル化して、脱離基を含むアシル化アミンを提供する工程;(d)アシル化アミンをアミン試薬と接触させることにより、アシル化アミンに由来の脱離基を第一級アミンで置き換えて、N-置換モノマーおよび脱離基副生成物を提供する工程;および(e)脱離基副生成物と共に、未使用アミン試薬を閉じ込め手段に再循環させて、それにより、引き続く置換反応で使用するのに適切な再生アミン試薬を提供する工程。
【0010】
他の実施態様では、粒子懸濁液中の固相粒子に固定化したオリゴマーを合成するための装置が提供されている。この装置は、以下を包含する:反応容器;気体および/または溶媒を頂部開口部を通って反応容器へと送出するための第一送出手段;および反応容器の底部開口部を通って以下の操作を行うための第二送出手段:(i)反応容器に気体を送出して、粒子懸濁液の混合を行うこと;(ii)反応容器から、流体を除去すること;(iii)付随試薬容器から反応容器に試薬を導入すること;および(iv)未使用試薬を反応容器から付随試薬容器へと戻すこと。この第一および第二送出手段に接続された制御手段は、この装置の操作における制御を行う。
【0011】
他の実施態様では、粒子懸濁液中の固相粒子に固定化したオリゴマーを合成するための装置が提供されている。この装置は、以下を包含する:反応容器;反応容器の頂部開口部と連絡し、そして第一送出手段を通して気体および/または溶媒の反応容器への送出を可能にする第一送出手段;試薬容器;試薬溶液および反応容器の底部開口部と連絡し、そして試薬容器の底部開口部を通って以下の操作を可能にする第二送出手段:(i)反応容器に気体を送出して、粒子懸濁液の混合を行うこと;(ii)反応容器から、流体を除去すること;(iii)試薬容器から反応容器に試薬を導入すること;および(iv)未使用試薬を反応容器から試薬容器へと戻すこと。この第一および第二送出手段に接続された制御手段は、この装置の操作を制御するために使用され得る。
本発明のさらなる目的、利点および新規な特徴は、一部は、以下の説明で述べられており、そして一部は、以下を検討すると、当業者に明らかとなるか、または本発明の実施により習得され得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の方法を実施する際に使用する装置の概略図である。
【図2】図2は、本発明による代替装置実施態様の絵図である。
【図3】図3は、本発明の合成システムで使用する反応容器の側面図である。
【図4】図4は、試薬再循環工程を包含するオリゴマー合成で使用され得る試薬容器の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明の詳細な説明
本発明の方法の実施は、他に指示がなければ、従来の固相合成技術(これには、ペプトイド合成、ペプチド合成および当該技術分野の範囲内の他の固相有機化学が含まれる)を使用する。このような技術は、文献で充分に説明されている。Thompsonら(1996)「Synthesis and Applications of Small Molecule Libraries」、Chem Rev.96:555〜600;Terrettら(1995)「Combinatorial Synthesis-The Design of Compound Libraries and Their Application to Drug Discovery」,Tetrahedron 51(30):8135〜8173;Kirt-OthmerのEncyclopedia of Chemical Technology;HouseのModern Synthetic Reactions;C.S.MarvelおよびG.S.Hiers'text,ORGANIC SYNTHESIS,Collective 第1巻;Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait編、1984);国際公開第WO96/40202号参照のこと。
本明細書中で引用した全ての特許、特許出願、刊行物および他の種類の参考文献は、上記または下記のいずれであれ、その内容全体は、本明細書中で参考として援用されている。
A.定義
本発明を開示し詳細に記述する前に、本発明は、特定の方法形式、材料または試薬に限定されず、これらは、もちろん、変えてもよいことが理解されるべきである。本明細書中で使用する専門用語は、特定の実施態様を記述する目的のためのみであり、限定する意図はないこともまた理解されるべきである。
【0014】
本明細書および添付の請求の範囲で使用するように、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈にて他に明らかに指示がなければ、複数物の指示物を包含することに注意しなければならない。それゆえ、例えば、「a reaction vessel」との表示は、2個またはそれ以上のこのような容器を包含し、「a solvent reservoir」との表示は、2個またはそれ以上のレザバを包含するなど。
【0015】
本明細書およびそれに続く請求の範囲では、多数の用語に対して参照がなされ、これらは、以下の意味を有するように定義される:
本明細書中で使用する「モノマー」との用語は、オリゴマーを形成するために1個またはそれ以上の他の要素と共有結合し得る化学要素を意味する。モノマーとは、例えば、アミン、アミノ酸、ヌクレオチド、糖類、アルキレーター(alkylators)、求核試薬などを含むサブユニットである。
【0016】
「オリゴマー」との用語は、国際公開第WO 96/40202号で記述されているようなポリNSGおよび他のペプトイド(すなわち、N-置換ポリアミド)のようなポリマーを包含し、これらは、本発明の方法により生成され、任意の長さのホモポリマー、コポリマーおよびインターポリマーを含む。それゆえ、オリゴマーは、単一の繰り返しモノマー単位、2個の交互のモノマー単位、互いに対してランダムおよび/または故意に間隔を開けた2個またはそれ以上のモノマー単位から構成され得る。本発明を実施する際に生成したオリゴマーは、2個〜100個のモノマー、さらに好ましくは、2個〜50個のモノマーから構成される。
【0017】
「アシルサブモノマー」との用語は、反応性カルボニルまたはカルボニル等価物および脱離基(これは、アミンによる求核置換で置換され得る)を含有するアシル化試薬を意味する。「カルボニルまたはカルボニル等価物」には、カルボン酸、エステル、アミド、無水物、ハロゲン化アシルおよびイソシアネートが挙げられるが、これらに限定されない。使用されるエステルおよびアミドは、一般に、「反応性」形状、例えば、DIC付加物などである。このアシルサブモノマーは、さらに、側鎖を含有し得る。適切なアシルサブモノマーには、ブロモ酢酸(BrAA)、3-ブロモプロピオン酸、2-ブロモプロピオン酸、2-ブロモエチルイソシアネート、2-ブロモエチルクロロホルメート、6-フェニル-3-ブロモヘキサン酸、4-ブロモメチル安息香酸、4-ブロモメチル-2-メトキシ安息香酸、5-ブロモメチルピリジン-2-カルボン酸などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
「固相」との用語は、一連の反応工程が関与する化学合成の反応工程がその上で実施され得る任意の固体支持体または基材を意図する。それゆえ、この用語は、粒子状基材(例えば、標準的なFmoc化学合成で伝統的に使用されている樹脂)が挙げられ、これには、ポリスチレン樹脂および1%架橋ポリスチレン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、グラフト化ポリ(プロピレン)またはポリ(エチレン)樹脂、PEG-ポリスチレン樹脂などが含まれるが、これらに限定されない。
B.一般方法
本発明は、ペプトイドオリゴマーを調製するための新規な方法および付随した装置の発見に基づいている。この方法および装置は、その合成プロセス中のアミン試薬の再循環のために提供され、この合成プロセスは、試薬の消費を著しく少なくする。
【0019】
ペプトイドとは、一般的にタンパク質に類似した構造を有する合成N-置換ポリアミドバイオポリマーであり、これは、新規分子の化学的に多様なライブラリを作成するのに使用され得る。代表的なペプトイドには、N-置換グリシンのオリゴマーが挙げられる。これらのモノマーは、t-ブチルベースの側鎖および9-フルオレニルメトキシカルボニルα-アミン保護を包含し得る。モノマーのペプトイドオリゴマーへの構築は、現在、例えば、Zuckermannらのサブモノマー方法((1991) J. Am. Chem. Soc. 114:10646)を用いて、固相上にて行われている。また、国際公開第WO 96/40202号を参照のこと。
【0020】
ペプトイドを製造するためのサブモノマー方法では、合成は、典型的には、Rinkアミドポリスチレン樹脂を用いて行われる(Rinkら(1987) Tetrahedron Lett. 28:3787)。樹脂結合アミンは、典型的には、ジイソプロピルカルボジイミドを用いたハロ酢酸(例えば、ブロモ酢酸)のインサイチュでの活性化により、アセチル化される。引き続いて、この樹脂結合アセトアミド(例えば、ブロモアセトアミド)は、アミンの添加により、置換される。これらのアミンは、例えば、t-ブチルベースの保護を用いる追加の酸反応性基の酸不安定性保護を包含し得る。この2段階サイクルは、所望数のモノマーが付加されるまで、繰り返される。このオリゴペプトイドは、次いで、95%トリフルオロ酢酸/5%水での処理により、この樹脂から解離される。この合成は、自動化装置(例えば、ロボット合成機)を用いて実施され得る。例えば、Zuckermannら(1992)Pept. Protein Res. 40:498を参照のこと。
【0021】
このペプトイドを調製するためのサブモノマー方法では、一般に、その反応速度および全体的な合成収率を高めるために、各反応工程に対して、成長しているオリゴペプトイド鎖には、約0.5〜3M、好ましくは、1〜2Mの濃度で、アミン試薬が添加される。これは、典型的には、約10〜40モル当量、さらに好ましくは、約20モル当量に換算される。これらの試薬を過剰に使用する必要性により、この合成プロセスの各工程と共に、多量の未使用アミン試薬が失われるので、物質の著しい無駄が生じる。それゆえ、本発明の第一の実施態様では、ペプトイドを合成するためのサブモノマー方法が提供され、これは、未使用アミン試薬の再循環および引き続いた再使用を可能にする。ペプトイド合成中に未使用アミン試薬を再循環する性能は、特に、高分子量ペプトイドの製造において、このような試薬の消費を著しく低下させる。
【0022】
さらに特定すると、本発明のサブモノマー方法では、各モノマーの添加は、アシル化工程(例えば、ブロモ酢酸(BrAA)のようなアシルサブモノマーの添加)および置換工程(例えば、アミン試薬の添加)を伴う。このペプトイド合成は、適切な固相(例えば、アミン樹脂)を含有する粒子懸濁液を用いて、開始する。この樹脂上のアミン基の脱保護は、適切な有機溶媒(例えば、ピペリジン/ジメチルホルムアミド(DMF))を用いて行われ、反応性アミノ樹脂を提供する。このアミノ樹脂は、次いで、このアシルサブモノマー試薬でアシル化される。次いで、第一級アミンを用いて、このアシルサブモノマー脱離基の求核置換が行われ、例えば、N-置換グリシン(NSG)モノマーが形成される。置換後、未使用アミン試薬は、引き続く置換過程で使用するための保存容器に戻される。これらのアシル化工程、置換工程および再循環工程は、反復様式で行われて、所望のオリゴマーが生成する。当業者は、アミン樹脂の代わりに、基材結合アシルサブモノマーもまた、この初期出発物質として使用され得ることを容易に理解する。このアシル脱離基のアミンとの引き続く置換は、それゆえ、第一工程であり、それに続いて、第二アシルサブモノマーなどでアシル化される。このサブモノマー方法は、国際公開第WO 96/40202号および第WO 94/06541号で記述されており、これらの刊行物の内容全体は、本明細書中で参考として援用されている。
【0023】
洗浄溶媒(例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)およびジメチルスルホキシド(DMSO))は、一般に、アシル化工程と置換工程の間で使用される。特に、アシル化工程を行う前に、この固相は、一般に、DMF溶媒で数回洗浄され、そしてジイソプロピルカルボジイミド(DIC)試薬およびハロ酢酸(例えば、BrAA)試薬の添加前に、充分に排出される。類似の様式で、各置換工程前に、この固相は、DMFおよびDMSOで洗浄され、そしてアミン組立ブロック(building block)の添加前に、徹底的に排出される。
【0024】
この置換反応中に発生する唯一の副生成物は、1当量の脱離基副生成物(例えば、HXであり、ここで、Xは、ハロゲン化アシル(例えば、HBr)に由来のハロゲンである)である。従って、本発明の方法では、このアミン試薬の再生は、例えば、HX汚染物を無機塩基またはイオン交換樹脂で捕捉することにより、保存容器にて行われる。典型的には、この捕捉剤は、中和樹脂また無機塩基(例えば、KOH)を含有する;しかしながら、他の適切な試薬には、KCO、NaPOまたはCa(OH);結合試薬;塩基性アルミナ樹脂;DOWEXアニオン交換樹脂;塩基性アミノ基で架橋した多糖類樹脂;または類似の材料が挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
本発明の他の実施態様では、オリゴマーを合成するための装置が提供される。この装置は、上記サブモノマー方法を行うために使用され得、試薬(例えば、アミン試薬のような)を再循環するための手段を包含する。図1を参照すると、試薬を再循環するサブモノマー合成装置は、一般に、2で示されている。この装置は、反応容器4を包含し、この反応容器では、固相粒子で形成した粒子懸濁液6中にて、オリゴマーが合成される。この反応容器は、流体(気体を含めて)を受容するための頂部開口部8、および非粒子状流体が自由に通過し得る適切な濾過手段12をその中に配置した底部開口部10を有する。
【0026】
この反応容器は、化学的な不活性および物理的な弾性について選択した任意の適切な材料から構成され得る。それゆえ、この反応容器は、ホウケイ酸塩(例えば、Pyrex(登録商標))、または化学反応容器を作製する際に一般に使用される任意の他の適切な材料から構成され得る。ホウケイ酸塩材料が、一般に、好ましい。さらに、反応容器4は、ネジ付きキャップを用いて、この容器全体にわたる液密および圧密な流体連絡を促進するために、頂部開口部および/または底部開口部8および10の周囲の回りに配置した外部ネジ筋を包含し得る。あるいは、この頂部開口部および/または底部開口部には、肩部、蓋、または類似の密封面を設けられ得、これは適切な蓋または摩擦型接合で適合するための任意のOリングガスケットを備えているかまたは備えていない。
【0027】
濾過手段12は、溶媒、試薬および混合気体または駆動気体(driving gas)の排出および/または導入を可能にしつつ、この固体支持体(例えば、その上でペプトイドを合成する樹脂)を物理的に保持する。それゆえ、この濾過手段は、その上で化学合成を行う一般的な固体支持体を保持し得る任意の材料から構成され得る。この濾過基材材料はまた、この反応容器内で行う化学合成で使用する試薬に対して、化学的に不活性であるべきであり、複数回の使用にわたって、耐久性で、再使用可能であり、一般に、変形可能でない。この濾過手段を提供するのに使用される特定の基材は、一般に、約10μm〜約60μmの範囲のメッシュサイズを有するが、より大きな支持体を用いる合成での使用には、それよりずっと大きなメッシュサイズが適切であり得る。ある特定の容器では、濾過手段12は、例えば、40〜60μmのフィルターサイズを有する粗いガラスフリット(course glass frit)の形状である。
【0028】
反応容器4の頂部開口部8には、第一送出手段が連絡しており、そして気体および/または1種またはそれ以上の溶媒を、この頂部開口部を経由して、この反応容器に送出を与える。この第一送出手段は、図1で描写した送出手段のような複数の要素から構成され得る。具体的には、この第一送出手段は、多位置バルブ14を包含し得、これは、頂部開口部8を、導管18を経由して付随気体源16と、そして導管24を経由して付随溶媒容器20および22と切り替え可能に連絡する。バルブ14の第一位置への作動により、次いで、この付随気体源から反応容器4への駆動気体の導入が可能となる。
【0029】
適切な駆動気体には、固相合成で一般的に使用される不活性気体(例えば、窒素、ヘリウム、アルゴンなど)がある。この気体源とバルブ14との間に配置した追加バルブ26により、この反応容器への気体の導入、またはこの反応容器からの気体の排出が可能となる。溶媒容器20および22の間に配置した他のバルブ28、およびバルブ14により、この反応容器への溶媒および/または試薬の送出(例えば、アシル化工程中にて、この反応容器へのジイソプロピルカルボジイミド(DIC)およびBrAAの送出)が可能となる。
【0030】
図1をさらに参照すると、装置2はまた、第二送出手段を包含し、これは、反応容器4の底部開口部10を通って、多数の操作を行うのを可能にする。特に、この第二送出手段は、(i)この反応容器に気体を送出して、粒子懸濁液6の混合を行うこと;(ii)反応容器から、溶媒および他の流体を除去すること;(iii)置換工程中に、反応容器にアミン試薬を導入すること;および(iv)置換工程を行った後、未使用アミン試薬を付随試薬容器へと戻すことを可能にする。
【0031】
この第二送出手段は、多数の要素の代替的組み合わせを包含し得る。図1では、この第二送出手段は、多位置バルブ30を包含し、これは、この反応容器の底部開口部10を、第一および第二付随試薬容器(それぞれ、32および34で示す)の間で切り替え可能に連絡する。バルブ30はまた、底部開口部10を適切な廃棄物ポートに切り替え可能に連絡する。
【0032】
ペプトイドの合成のための操作において、アシル化試薬(例えば、DICおよびBrAA)および洗浄溶媒(例えば、DMFおよびDMSO)は、この反応容器にてアシル化工程を行った後、この容器から廃棄物へと排出される。この容器の排水は、バルブ30を第一位置(これは、この反応容器の底部を導管36を経由して廃棄物ポートに連絡する)へと作動することにより、行われる。望ましいなら、上記のような第一送出手段を用いて、この反応容器に、その頂部開口部8から、駆動気体が導入され得る。
【0033】
次いで、第一置換工程のために、バルブ30は、第二位置に作動され、これにより、第一試薬容器32から反応容器4へのアミン試薬の送出が可能となる。このアミン試薬は、導管38を通って、バルブ30へと移動し、そこから、濾過手段12を通って、底部開口部10を経由して、この反応容器へと入る。追加のバルブ手段40は、第一試薬容器32を加圧して、バルブ26の排出位置への同時の作動と共に、試薬をこの反応容器へと追いやる。バルブ30の閉鎖位置への作動は、この置換工程の持続中にて、このアミン試薬をこの反応容器内に保持する。この固相の混合または攪拌は、バルブ30を他の位置(これは、混合気体源を底部開口部10に連絡する)に作動することにより、行われ得る。この混合気体は、このバルブおよび導管から流体を排出するための発泡剤としてだけでなく、この反応容器の内容物を攪拌または混合するための両方に、使用され得る。
【0034】
この反応容器の底部を通る試薬の送出は、濾過手段12により保持された固相粒子のさらなる混合および攪拌を提供する。適切な時間にわたって置換が行われた後、未使用のアミン試薬は、バルブ30を元の第二位置に作動し、そして試薬を元の試薬容器に排出させることを可能にすることにより、試薬容器32に戻される。この未使用試薬をその各個の元の容器に追い出すのを助けるために、この反応容器には、頂部開口部8を経由して、駆動気体が導入され得る。さらに、試薬容器32は、バルブ手段40を経由して排気され得、そしてこの反応容器は、バルブ26を経由して加圧されて、この未使用試薬の戻りを助ける。この固相を、廃棄物へと排出される適切な溶媒(例えば、DMF)で洗浄した後、この固相は、次のアシル化工程のために準備される。
【0035】
この試薬容器には、この置換工程中に発生した汚染副生成物(例えば、HBr)を取り除くための捕捉剤を入れることができる。それゆえ、この試薬は、他の置換工程での引き続く使用に利用可能である。アシル化を行って溶媒を反応容器から排出した後、バルブ30は、第三位置(これは、第二試薬容器34から反応容器4への第二アミン試薬の送出を可能にする)に作動される。この第二アミン試薬は、導管42を通ってバルブ30へと移動し、そこから底部開口部10を経由して、この反応容器へと入る。追加のバルブ手段44は、第二試薬容器34を加圧して、試薬をこの反応容器へと追いやる。この置換工程を行った後、未使用のアミン試薬は、第一試薬容器に関して記述したように、第二試薬容器に戻される。本明細書を読んだ後、当業者により容易に理解されるように、バルブおよび作動工程の類似の組み合わせを用いて、この反応容器には、任意no数の異なる試薬容器が連絡され得る。
【0036】
図1で描写した装置2では、その機器内での流体流れは、加圧した気体送出システムにより、駆動される。他の移動システムは、本発明と共に使用するのが適切であり、例えば、当該技術分野で公知のポンプ駆動システムまたは真空駆動システムがある。しかしながら、加圧気体駆動システムは、ポンプ駆動システムで必要とするよりも少ない部品しか必要としないために、好ましい。このように、バルブ14、28、30、40および42は、一般に有機化学合成で一般的に使用されている多位置電磁バルブである。これらのバルブは、さらに、本発明の方法で使用される溶媒および有機試薬に対する耐性を与えるために、ポリテトラフルオロエチレン(例えば、Teflon(登録商標))または類似の材料で被覆され得る。これらのバルブの作動は、この第一および第二送出手段に接続された制御手段の様式によって、行われ得る。このような制御手段は、種々の多様なオリゴマー合成のためにプログラム化された適切なマイクロプロセッサを包含し得、また、温度、圧力および流体レベルセンサ(これは、合成の自動化モニタリングおよびそこでの小さなエラーの補正を可能にする)を制御し得る。あるいは、このバルブ操作の一部または全部は、手動で行われ得る

【0037】
導管24、36、38および42は、適切な耐薬品性の材料(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(Teflon(登録商標))またはポリエーテルエステルケトン(PEEK))から構成される。種々の導管、バルブおよび容器間の接合には、一般に、液密または圧密であり、例えば、スナップ接合(例えば、Swagelock(登録商標)取付)、フェルールおよび/またはネジ切り栓(これらはまた、適切な化学的に不活性な材料から構成される)がある。
【0038】
これらの試薬をこの反応容器内で混合するために提供するだけでなく、装置2内で液体を移動させるために、単一の加圧気体源が使用され得る。このシステムで使用される特定の気体は任意であるが、しかしながら、窒素、ヘリウムまたはアルゴンが好ましい。
【0039】
オリゴマーを合成するための別の装置を、図2で描写する。装置102は、図1の装置と同じラインに沿って操作するように設計されており、ここで、溶媒、試薬および気体は、頂部および底部開口部を経由して反応容器に導入され、そして未使用の試薬は、本明細書中で記述したサブモノマー方法の実施に際して、この反応容器と保存容器の間で再循環される。
【0040】
装置102は、上記のように、頂部開口部106および底部開口部108を備えた反応容器104を有する。この反応容器には、固相粒子を含有する粒子懸濁液が導入され得、例えば、引き続いた反復アシル化および置換工程が行われて、合成ペプトイドオリゴマーを生成し得る。頂部開口部106は、第一送出手段と連絡しており、これは、気体または溶媒を、この頂部開口部を通って、この反応容器へと送出するために提供される。図2で描写したシステムでは、この第一送出手段は、多位置バルブ110を包含し、これは、付随気体マニホルド(一般に、112で示す)からの気体または第一および第二溶媒容器114および116からの第一および第二溶媒を、それぞれこの頂部開口部を経由して、反応容器104と相互連絡するように、使用され得る。例えば、溶媒容器114および116は、代表的なペプトイド合成におけるアシル化工程と置換工程の間にて、この反応容器にDMFおよびDMSO洗浄溶媒を供給するために、使用され得る。この特定のシステム配置では、バルブ110は、この反応容器と連絡する共通出口118を備えた4位置電磁バルブであり得る。この種のバルブは、この反応容器を気体で加圧するかまたは付随溶媒容器からの2種の溶媒の1種で満たすかどうかにわたって、切り替え可能な制御を与える。
【0041】
装置102は、さらに、複数の試薬容器120〜134を包含し、これらは、選択的に、第二送出手段(これは、この反応容器の底部開口部108と流体連絡している)を経由して、反応容器104と連絡される。各試薬容器は、単一の試薬を収容するのに使用される。この方法で使用するための試薬には、アシル化試薬(例えば、DICおよびBrAA)、および数個の異なる置換試薬(例えば、アミン1〜6)が挙げられる。
【0042】
図2で描写した第二送出手段は、3個の多位置バルブの操作可能な組み合わせから構成される。特に、この反応容器の底部開口部108と連絡している一般的な入口を備えた多位置バルブ136は、気体マニホルド112からの混合気体流をこの反応容器の底部開口部を通って泡立たせるか、または試薬容器120〜134の1個からの選択試薬を、第一または第二付随多位置バルブ138および140を経由して送出するかどうかにわたって、切り替え可能な制御を与える。各付随バルブ138および140はまた、それぞれ、ポート142および144を有し、これらは、廃棄物に通じており、反応容器104を排水するための2個の代替経路を与える。
【0043】
装置102の操作は上記のように進行し、ここで、種々の組み合わせのバルブの作動により、溶媒導入および反応容器からの除去、および試薬(例えば、アミン)の導入、および選択した試薬容器からまたはそれへの未使用試薬の引き続く戻しが可能となる。これらのバルブの作動は、手動であり得、または制御手段(例えば、マイクロプロセッサ)により制御され得る。
【0044】
1つの代表的なアシル化および置換系列は、以下のようにして、装置102を用いて行われる。バルブ110の第一位置への作動および反応容器の排気ポート146を通る排気により、溶媒容器114からのDMF溶媒が反応容器104に添加されて、この容器および固相がリンスされ、それにより、この溶媒を反応容器への送出を可能にする。次いで、バルブ110が第二位置へと移動されて、マニホルド112から気体の導入を可能にし、バルブ136および138が作動されて、使用した溶媒のための排水路を与える。
【0045】
DMF溶媒での充分なリンスに続いて使用済み溶媒の排水を行った後、各試薬を選択するための2個の異なる位置間でのバルブ140の作動、この反応容器への適切な送出経路を与えるための第一位置へのバルブ136の作動、および排気ポート146を通る反応容器の排気により、それぞれ、試薬容器132および134からのDICおよびBrAAアシル化試薬は、底部開口部108を経由して、反応容器140に導入される。これらのアシル化試薬を添加した後、バルブ136は第二位置に作動されて、この反応容器の底部開口部を通る混合気体と連絡し、この固相の混合および攪拌を提供し得る。
【0046】
アシル化が完結した場合、バルブ136は元の第一位置に作動され、そしてバルブ140は、第三位置に作動されて、廃棄物ポート144を経由した廃棄物への排水経路を与える。この反応容器、およびその中に含まれるアシル化固体基材は、次いで、上記DMF溶媒の数回の添加により洗浄され、引き続いて、溶媒容器116からのDMSO溶媒で洗浄される。容器116からの溶媒の送出は、バルブ110を第三位置に作動し、そして排気ポート146の作動(これらの組み合わせにより、この溶媒の反応容器への送出を可能にする)により、次いで、バルブ110を元の第二位置に作動してマニホルド112から気体の導入を可能にし、そしてバルブ136および138を作動して使用済み溶媒のための排水経路を与えることの組み合わせにより、行われる。
【0047】
一旦、この固相を洗浄し排出すると、試薬容器120からのアミン試薬を用いた置換が行われる。特に、このアミン試薬は、バルブ138の第一位置への作動およびバルブ136の元の第一位置への作動により、この反応容器への送出経路を与えることによって、底部開口部108を経由して、反応容器104へと導入される。この試薬の適切な混合は、バルブ136を第二位置に作動してこの混合気体を導入することにより、上のように行われ得る。次いで、未使用アミン試薬は、バルブ136および138をそれらの第一位置に作動すること、およびこの反応容器を第一送出手段を用いて加圧することにより、容器120へと戻される。
【0048】
上記方法を実施するために、多数の異なるバルブの組み合わせが使用され得る。さらに、所望のペプトイドオリゴマーが得られるまで、1種またはそれ以上の異なるアミン試薬を用いる追加サイクルが使用され得る。最終の置換反応および溶媒リンスの後、この固相は、ジクロロメタンで洗浄され、次いで、開裂されるか、または真空中にて乾燥され、次いで、開裂前に保存され得る。
【0049】
装置102で使用する材料の選択は、再度、本発明のサブモノマー方法で使用する溶媒および試薬と接触する不活性で弾性の表面を与える必要性により、決定される。このシステム全体にわたって流体の移動を方向付けするために、単一の気体(例えば、加圧窒素)源が使用され得る。気体マニホルド112は、それゆえ、任意の適切な材料(例えば、銅、Teflon(登録商標)など)から構成され得、加圧気体は、多段階圧力制御器または類似の制御手段によって、このマニホルドに供給され得る。さらに、このシステムの種々のバルブおよび導管を通って1種またはそれ以上の溶媒を方向付けして、残留試薬を除去するため、そして下流または引き続く操作への持ち越しまたは汚染を防止するために、多数の異なるバルブの組み合わせが使用され得る。
【0050】
図1および2で描写した合成システムでは、多数の異なる反応容器形状が使用され得る。しかしながら、1つの好ましい反応容器形状は、図3で描写されている。この反応容器は、一般に、202で示され、円筒形上部204、円筒形下部206およびこの上部および下部を接続する肩部208を有する。上部204は、下部206よりも大きな直径を有し、そして肩部208は、脱凝集用肩部を提供し、これは、固相粒子の凝集物の分散を助け、そしてその底部開口部212を通って反応容器へと入る混合気体の泡立ちにより引き起こされる発泡を防止する。
【0051】
この反応容器の底部では、濾過手段214は、底部開口部212を覆っている。濾過手段214は、この底部開口部を通る非粒子状流体の通過を可能にするが、リンスおよび排水操作中にて、成長しているオリゴマーをこの反応容器に保持するのに適切な多孔性を有するように選択される。図3で描写した実施態様では、この濾過手段は、40 mの多孔性を有するガラスフリットから構成され、これは、およそ100 mまたはそれ以上の直径を有する固相樹脂を保持するのに充分である。濾過手段214はまた、この固相スラリーの急速な排水を促進するのに充分な表面積を与えるように、選択される。
【0052】
この反応容器の下部206もまた、底部開口部212で最小に達する低下した直径を有する拡散部分を含有する。この拡散部分は、この容器の底部を通って泡立つ混合気体を、このフィルターの中心部のごく一部ではなく、濾過手段214の全表面にわたって固相と接触し混合することを可能にする。この反応容器の底部開口部の回りに配置された外部ネジ筋は、導管および/または送出手段との確かな液密および圧密接合を可能にする。
【0053】
この反応容器の頂部開口部210は、蓋218により閉じられ、これは、一般に、220で示す複数の連絡ポートを包含する。これらのポートは、導管、送出手段、パージバルブおよび任意の測定装置(例えば、圧力変換器、温度計など(これらは、上記のようにして、この容器内の圧力および温度をモニターすることを可能にする))との液密および圧密接合を可能にする。
【0054】
蓋218は、噛み合いフランジ222および224(これらは、それぞれ、この図面で示すように、この容器および蓋上に配置されている)と協同する弾性接合手段により、この反応容器に取り付けられ得る。適切な密封ガスケット(例えば、Oリング)は、圧密シールを与えるのに使用され得る。
【0055】
一部のオリゴマー合成では、高温にて、1個またはそれ以上の工程を行うのが望ましくあり得る。従って、本明細書中で上で記述した装置形状のいずれかでは、この反応容器にて温度変化を起こすために、任意の温度制御装置が使用され得る。この反応容器の温度の正確な制御を提供するために、例えば、Peltier装置が反応容器(例えば、4、104または202)の外側に接触し得る。類似の様式で、反応容器内で100℃までの変化する温度を提供するために、他の温度制御手段(例えば、加熱コイルまたは要素)が使用され得る。任意の温度モニター設備は、上記のようにして使用され得、加熱または冷却は、マイクロプロセッサにより、またはこの装置の操作者による手動で、制御され得る。
【0056】
図1および2で描写した合成システムでは、種々の異なる試薬容器形状もまた、使用され得る。本発明の方法および合成システムで使用する1つの好ましい試薬容器形状は、図4で示されている。試薬容器302は、頂部開口部304を有し、これには、付随の蓋と連結するために、その外周の回りに、密封面306が設けられている。蓋308は、対応する密封面310を含み、これは、この試薬容器の頂部で、密封面306に対して閉じたとき、圧密シールを与えるように使用される。
【0057】
蓋308に配置された2個の連絡ポート312および314は、この蓋を、適切な弾性コネクタ(例えば、バネクリップ、張りつめたクランプなど)により、この試薬容器に接合したとき、この試薬容器の内容物へのアクセスを提供する。圧密シールを確実にするために、Oリングガスケットもまた、設けられ得る。連絡ポート312内には、第一導管316が配置されており、これは、そこからの試薬の送出のためにこの容器を加圧するのに使用する気体源への接続のための接合リード(coupling lead)を提供する。連絡ポート314内には、第二導管318が配置されており、実質的に、試薬容器302の底部320まで伸長している。導管318は、この試薬容器の内容物を、図1および2の論述を参照して上で記述した第二送出手段と連絡する。操作では、この試薬は、試薬容器302を導管316を経由して適切な駆動気体で加圧することを可能にすることにより、そしてこの試薬を導管318からこのシステムへと通すことにより、反応容器への送出のために合成システムへと引き上げられる。試薬容器302の底部320は、この試薬容器内に含まれる到達不可能な試薬の容積を最小にするために、実質的にテーパ状形状または円錐形状を有するように構成され得る。
【0058】
例えば、アミン試薬を用いて反応(例えば、置換)を行った後、未使用試薬は、副生成物である汚染物と共に、例えばこの反応容器を導管316を経由して排気し戻った試薬を集めることにより、逆置換操作を用いて、この容器へと戻される。一旦、この試薬容器に戻ると、汚染する副生成物(例えば、HBr)は、適切な捕捉剤を用いて取り除かれ得る。
【0059】
この捕捉剤は、典型的には、中和樹脂または有機塩基(例えば、KOH)である。しかしながら、他の適切な試薬には、KCO、NaPOまたはCa(OH);結合試薬;塩基性アルミナ樹脂;DOWEXアニオン交換樹脂;塩基性アミノ基を有する架橋した多糖類樹脂;または類似の材料が挙げられるが、これらに限定されない。適切な粒子サイズを有する微粒子状捕捉剤(例えば、KOHまたはDOWEX(登録商標)樹脂)は、この試薬容器に直接添加され得る。このような場合には、導管318は、適切な試薬濾過手段322を用いて、その最も下流の部分に取り付けられ得る。このような濾過手段322は、一般に、10〜50mのフィルターサイズを有する円筒形ステンレス鋼またはポリテトラフルオロエチレン(Teflon(登録商標))フリットを含み、このサイズは、この装置の配管およびハードウェアの残りの部分(それが、この合成システムの残りの部分を汚染および/またはこのシステムの物理的な閉塞を引き起こし得る場合)へのこの捕捉剤の移動を防止する。
【0060】
この試薬容器にて、細かい粒子サイズを有する捕捉剤を使用するとき、多数の代替濾過方法が利用され得る。例えば、捕捉剤の閉鎖パケット(packet)(ここで、このパケットは、非粒子状流体に対して浸透性である)を設けられ得るが、このパケットからの試薬の移動を制限するために、相当に小さな細孔またはメッシュサイズを有する。この特定の方法は、濾過手段322の設備と連結し得るか、またはその適切な位置で使用され得る。
【0061】
本発明の方法およびシステムで使用される試薬容器(例えば、容器302)は、使用する特定の試薬および行うオリゴマー合成に依存して、多数の異なる容量規模で設けられ得る。1つの好ましい試薬容器は、1リットルの試薬溶液を取り扱うように設計されている。単一アミノ基を含有する50マーペプトイド分子の合成では、例えば、ここで、この合成は、1〜3Mアミン試薬溶液を用いて、150 mL反応容器中で行われ、本発明の再循環の特徴を考慮すると、およそ800 mLのこのアミン溶液が必要である。それゆえ、1000 mLのこのアミン試薬を含有するペプトイド合成に使用するための反応容器の準備により、50マーペプトイドの合成で必要な試薬の最大算出容量をおよそ25%上回っているので、合成において、ある程度の融通性を提供する。
【0062】
本発明は、その好ましい特定の実施態様に関連して記述されているものの、前述の記述は、本発明を例示することを意図しており、本発明の範囲を限定する意図ではないことが理解されるべきである。本発明の範囲内の他の局面、利点および改良は、本発明が属する当業者に明らかとなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−292839(P2009−292839A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216262(P2009−216262)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【分割の表示】特願2006−280789(P2006−280789)の分割
【原出願日】平成10年4月28日(1998.4.28)
【出願人】(591076811)ノバルティス バクシンズ アンド ダイアグノスティックス,インコーポレーテッド (265)
【Fターム(参考)】