説明

試薬分注ノズルによる分取・分注方法および試薬分取・分注機構

【課題】試薬分注ノズル待機時における動作流体の汚染や、液滴の落下を防止することのできる試薬分取・分注方法を提供する。
【解決手段】動作流体の界面と、前記試薬分注ノズルにおけるノズル先端との間に第1エア層110を配置する待機工程と、試薬分注ノズル24を試薬の直上位置へ移動させる第1移動工程と、前記ノズル先端を前記試薬に浸漬させる第2移動工程と、試薬分注ノズル24内に前記試薬を充填する試薬分取工程と、試薬分注ノズル24の先端を前記試薬から退避させる第3移動工程と、前記ノズル先端に第2エア層112を配置する試薬保護工程と、試薬分注位置へ試薬分注ノズル24を移動させる第4移動工程と、分取した前記試薬を吐出する試薬分注工程と、前記ノズル先端に第1エア層110を配置する動作流体保護工程と、前記ノズル先端に第1エア層110を配置した状態で、試薬分注ノズル24を待機位置まで退避させる第5移動工程とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微量(マイクロオーダー)の液体を分取分注する機構に係り、例えば発光測定装置における試薬分注ノズルにより試薬を分取並びに分注する方法、およびその機構に関する。
【背景技術】
【0002】
各種臨床医学や食品工場、医薬品製造工場、および基礎研究の現場等といった無菌性や生物的清浄度が要求される環境では、空気中の微生物(空中浮遊菌)の数(生菌数)や落下菌、および付着菌等の計数が成される。空中浮遊菌の測定方法として、浮遊菌の捕集には、浮遊菌の自然落下や、一定量の空気を吸引することにより捕集を行う空中浮遊菌サンプラを利用することが一般的である。
これらの方法では、普通寒天平板培地上に浮遊菌を捕集し、恒温器により2〜3日培養し、培養後に発生したコロニー数をもって生菌の数とする。しかしこのような方法では、生菌を培養するのに時間がかかるという問題が生ずることとなる。
【0003】
これに対し、短時間に微生物数の計測を行うことを可能とする方法として、細胞内成分であるアデノシン3リン酸(ATP:Adenosine TriPhosphate)を生物発光法により測定することにより、微生物数を換算する方法が知られている。
生物発光法は、ルシフェリン−ルシフェラーゼ発光反応が用いられ、基質ルシフェリンと酵素ルシフェラーゼを含む発光試薬と、微生物の細胞から抽出したATPを含むサンプル溶液を混合し、反応させることにより生ずる光の発光量からATP量を求め、生菌1当たりのATP量に基づいて、生菌数を算出するというものである。特許文献1には、このような発光反応を利用して生菌の数を計測するためのキットが開示されている。
【0004】
特許文献1に開示されているキットによる生菌数の計測方法は、計測時間の短縮として確かな効果を挙げることができる。しかし、極微量の生菌計測を対象とした場合には、発光量自体が微量となるため、残留ATPや計測対象外のATPの混入などの影響によるバックグラウンド発光の影響が大きくなり、良好な測定精度を得ることができないという問題があった。
【0005】
これに対し特許文献2には、試薬を分注するためのノズルに付着した生菌や、残留ATPに由来するバックグラウンド発光を抑え、高精度で迅速な発光測定を行うことのできる発光測定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−155597号公報
【特許文献2】特開2008−249628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に開示されているような発光測定装置であれば、極微量の生菌計測を対象とした発光計測であっても、高精度かつ迅速に行うことが可能となると考えられる。しかし、特許文献2に開示されているような装置により極微量な生菌計測を可能とした場合、装置内部での汚染が計測値に大きな影響を及ぼすこととなる。
【0008】
そこで本発明では、試薬を分取・分注する試薬分注ノズルを待機させておく際における試薬分注ノズル内部の動作流体の汚染や、試薬分注ノズルを移動させる際の液滴の落下によるクロスコンタミの発生等を防止し、高い精度で試薬の分取・分注を行うことのできる試薬分注ノズルによる分取・分注方法、および試薬分取・分注機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係る試薬分注ノズルによる試薬分取・分注方法は、ノズル内に配された動作流体により、試薬の分取量や分注量の制御を行う試薬分注ノズルによる試薬分取・分注方法であって、動作流体の界面と、前記試薬分注ノズルにおけるノズル先端との間に第1エア層を配置する待機工程と、前記試薬分注ノズルを分取対象とする試薬の直上位置まで移動させる第1移動工程と、前記ノズル先端を前記試薬に浸漬させる第2移動工程と、前記試薬分注ノズル内における前記動作流体の占有量を減らし、前記ノズル先端から前記試薬分注ノズル内に前記試薬を充填する試薬分取工程と、前記試薬分注ノズルの先端を前記試薬から退避させる第3移動工程と、分取した前記試薬の界面と、前記ノズル先端との間に第2エア層を配置する試薬保護工程と、前記試薬保護工程を実施した後に試薬分注位置にまで前記試薬分注ノズルを移動させる第4移動工程と、前記試薬分注ノズル内における前記動作流体の占有量を増やすことで、分取した前記試薬を吐出する試薬分注工程と、前記試薬を分注した後、前記動作流体の界面と前記ノズル先端との間に前記第1エア層を配置する動作流体保護工程と、前記動作流体の界面と前記ノズル先端との間に前記第1エア層を配置した状態で、前記試薬分注ノズルを待機位置まで退避させる第5移動工程とを有することを特徴とする。
【0010】
また、上記特徴を有する試薬分注ノズルによる試薬分取・分注方法では、前記第1移動工程と前記第2移動工程との間に、前記試薬分注ノズル内における前記動作流体の占有量を増やし、前記第1エア層の占有量を減らすエア層調整工程を有するようにすると良い。このような工程を設けることにより、試薬分注ノズル内に試薬を充填する際、試薬と動作流体界面との間に配置する第1エア層の容量を少なくすることができる。これにより、気体層の圧縮や膨張に伴う試薬の分取・分注誤差を少なくすることができる。
【0011】
また、上記特徴を有する試薬分注ノズルによる試薬分取・分注方法では、前記試薬分注工程の後、前記試薬分注ノズルを動作流体排出位置へ移動させる一時退避工程と、動作流体排出位置において、前記ノズル先端から前記動作流体の一部を吐出させる動作流体吐出工程とを有するようにしても良い。このような工程を設けることにより、試薬が混合したり、汚染される可能性の高い界面付近の動作流体を排出することができる。これにより、試薬のクロスコンタミの発生や、汚染を防止することができる。
【0012】
さらに、上記特徴を有する試薬分注ノズルによる試薬分取・分注方法では、前記試薬分注工程において、前記第1エア層を残した後、前記一時退避工程へ移行することが望ましい。このような手段を採ることにより、試薬分注ノズルに充填された試薬の全てを吐出することができると共に、試薬充填ノズル内の動作流体が吐出されてしまうことを防ぐことができる。
【0013】
また、上記目的を達成するための、本発明に係る試薬分取・分注機構は、水平方向への移動軸をX軸およびY軸とし、垂直方向の移動軸をZ軸とした3軸アクチュエータと、当該3軸アクチュエータにより移動される試薬分注ノズルと、前記試薬分注ノズルに接続され、ノズル内に配された動作流体の制御を行うポンプ手段とを有する試薬分取・分注機構であって、前記ポンプ手段に対して、前記ノズル内における前記動作流体の占有量を減らし、前記動作流体の界面と、前記試薬分注ノズルにおけるノズル先端との間に第1エア層を配置する第1エア層配置信号を出力し、前記試薬分注ノズルに前記第1エア層が配置された後、前記3軸アクチュエータに対して、前記試薬分注ノズルを分取対象とする試薬の直上位置まで移動させる第1移動信号と、前記ノズル先端を前記試薬に浸漬させる第2移動信号とを出力し、前記ノズル先端が前記試薬に浸漬した後、前記ポンプ手段に前記ノズル内における前記動作流体の占有量を減らして前記試薬を前記試薬分注ノズル内に充填する試薬分取信号を出力し、前記3軸アクチュエータに対して、前記試薬分注ノズルの先端を前記試薬から退避させる第3移動信号を出力し、前記ポンプ手段に対して、分取した前記試薬の界面と、前記ノズル先端との間に第2エア層を配置する試薬保護信号を出力し、前記試薬分注ノズル内に前記第2エア層を配置した後、前記3軸アクチュエータに対して、試薬分注位置にまで前記試薬分注ノズルを移動させる第4移動信号を出力し、前記試薬分注ノズルが前記試薬分注位置に到達した後、前記ポンプ手段に対して、前記試薬分注ノズル内における前記動作流体の占有量を増やして前記試薬を吐出させる試薬分注信号を出力し、前記試薬分注ノズルから前記試薬が吐出された後、前記ポンプ手段に対して前記試薬分注ノズル内における前記動作流体の占有量を減らして前記動作流体の界面と前記ノズル先端との間に前記第1エア層を配置する動作流体保護信号を出力し、前記3軸アクチュエータに対し、前記試薬を分注した後に前記第1エア層が配置された前記試薬分注ノズルを待機位置まで退避させる第5移動信号を出力する制御部を有することを特徴とする。
【0014】
また、上記特徴を有する試薬分取・分注機構において前記制御部は、前記第1移動信号と前記第2移動信号を出力する間に、前記ポンプ手段に対して前記試薬分注ノズル内における前記動作流体の占有量を増やすエア層調整信号を出力することが望ましい。制御部をこのような構成とすることにより、試薬分注ノズル内に試薬を充填する際、試薬と動作流体界面との間に配置する第1エア層の容量を少なくすることができる。これにより、気体層の圧縮や膨張に伴う試薬の分取・分注誤差を少なくすることができる。
【0015】
また、上記特徴を有する試薬分取・分注機構において前記制御部は、前記試薬分注信号を出力した後、前記3軸アクチュエータに対して、前記試薬分注ノズルを動作流体排出位置へ移動させる一時退避信号と、前記ポンプ手段に対して、前記動作流体排出位置へ移動させた前記試薬分注ノズルの先端から前記動作流体の一部を吐出させるように前記試薬分注ノズル内における前記動作流体の占有量を増やす動作流体吐出信号を出力することが望ましい。制御部をこのような構成とすることにより、試薬が混合したり、汚染される可能性の高い界面付近の動作流体を排出することができる。これにより、試薬分注ノズル内における試薬のクロスコンタミの発生や、汚染を防止することができる。
【0016】
また、上記特徴を有する試薬分取・分注機構において前記試薬分注信号は、前記試薬分注ノズル内に充填した前記試薬を全て吐出させると共に、前記第1エア層の一部を吐出させるように、前記動作流体の占有量を制御する信号であると良い。このような構成とすることにより、試薬分注ノズルに充填された試薬の全てを吐出することができると共に、試薬充填ノズル内の動作流体が吐出されてしまうことを防ぐことができる。
さらに、上記特徴を有する試薬分取・分注機構では、前記ポンプ手段をシリンジポンプとすることが望ましい。このような構成とすることにより、試薬の分取・分注を高い精度で行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
上記特徴を有する試薬分注ノズルによる分取・分注方法によれば、試薬を分取・分注する試薬分注ノズルを待機させておく際に、試薬分注ノズル内部の動作流体が汚染されたり、液滴を落下させたりすることを防止することができる。これによりクロスコンタミの発生を防止することができると共に、高い精度で試薬の分取・分注を行うことが可能となる。
さらに上記特徴を有する試薬分取・分注機構によれば、上記方法を実施し、当該方法による効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】発光測定装置の構成を示すブロック図である。
【図2】計測ユニットの側面構成を示す概略図である。
【図3】試薬分注ノズルの構成を示すブロック図である。
【図4】Z軸機構部と固定ブロックと試薬分注ノズルの関係を示す参考斜視図である。
【図5】試薬・担体容器搭載部の構成を示す上面図である。
【図6】発光測定装置による発光測定の様子を示すフロー図である。
【図7】発明に係る試薬分取・分注機構による試薬の分取・分注時の状態図である。
【図8】試薬分取・分注機構における各動作工程を説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の試薬分注ノズルによる分取・分注方法および試薬分取・分注機構に係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
まず、図1を参照して、本発明の試薬分取・分注機構を搭載する発光測定装置(バイオメイテクタ)10の全体構成について説明する。本実施形態で説明する発光測定装置10は、計測ユニット12と、捕集ユニット80とによって構成されている。
【0020】
計測ユニット12は、試薬分注部14、温水供給部42、試薬・担体容器搭載部54、バッファ供給部64、濾過部72、PMT(Photomultiplier Tube:光電子増倍管)部78、および入力・制御部(以下、単に制御部11と称す)を有する。このような各構成要素を外殻内に配置している。
【0021】
試薬分注部14は、3軸アクチュエータ16、試薬分注ノズル24、およびシリンジポンプ(ポンプ手段)32を基本として構成されている。3軸アクチュエータ16は、詳細を後述する試薬分注ノズル24を所望位置へ移動させるための手段である。このため、3軸アクチュエータ16は図2に詳細を示すように、Y軸機構部18とX軸機構部20、およびZ軸機構部22より構成されることとなる。Y軸機構部18は、装置上部に配置可能とすることより、スペース的な制限が少ない。このため、本実施形態における計測ユニット12では、ステッピングモータ18aを駆動アクチュエータとし、リニアガイド18bに取り付けた稼動部18cを駆動ベルト18dにより摺動させる構成としている。
【0022】
これに対し、稼動部18cに取り付けられるX軸機構部20とZ軸機構部22は、スペース的な余裕を持たせることが難しい。このため、X軸機構部20とZ軸機構部22には共に、コンパクトアクチュエータを採用した。コンパクトアクチュエータとは、中空ロータに、大口径スラスト軸系を組み込むことで、モータと凸出軸を一体化させた小型アクチュエータである。動作原理としては、駆動系をステッピングモータとし、突出軸をボールネジとしている。このため、小型でありながら、高精度な位置決めを可能とする。
【0023】
試薬分注ノズル24は、発光計測に用いる各種試薬を所望量分取・分注する役割を担うノズルである。試薬分注ノズル24は図3、図4に示すように、Z軸機構部22であるコンパクトアクチュエータに取り付けられたスライドガイド26に備えられた固定ブロック28により支持されている。このような支持形態を採ることにより、昇降動作の安定化を図ることができる。なお、図3において、図3(A)は、3軸アクチュエータ16の概略構成と試薬分注ノズル24との関係を示す正面ブロック図であり、図3(B)は、同図(A)における上面構成を示すブロック図である。また、図4は、Z軸機構部22と試薬分注ノズル24との関係を示す参考斜視図である。
【0024】
試薬分注ノズル24の後端には、詳細を後述するシリンジポンプ32に接続された分注動作用配管30が接続されている。試薬分注ノズル24は、この分注動作用配管30を介してノズル内に負圧をかけることにより試薬を分取し、ノズル内に正圧をかけることにより、分取した試薬を分注する。なお、試薬分注ノズル24は、ガラス製の管の他、樹脂製や金属性の管により構成しても良い。
【0025】
シリンジポンプ32は、上述した試薬分注ノズル24による試薬の分取、分注を行うための作動流体(本実施形態では純水)の制御を行う役割を担う。シリンジポンプ32は、シリンジ34とプランジャ36、およびアクチュエータ38を基本として構成される。シリンジ34は、作動流体である純水を貯留するタンクである。プランジャ36は、シリンジ34内に負圧または正圧をかけることにより、シリンジ34内への純水の導入と純水の排出を行う役割を担う押し棒である。アクチュエータ38は、プランジャ36の押し込み、あるいは引抜きを行うための駆動手段である。アクチュエータ38には、ステッピングモータとボールネジなどを用いることにより、高精度な位置制御が可能となる。
【0026】
このような構成のシリンジポンプ32におけるシリンジ34の先端には、分注動作用配管30の一端が接続されており、分注動作用配管30の他端は、上述した試薬分注ノズル24に接続されている。分注動作用配管30をこのように接続することにより、プランジャ36を引抜くことによりシリンジ34内には純水が溜まり、試薬分注ノズル24のノズル内に負圧が付与され、試薬分注ノズル24内への試薬の注入(分取)が成されることとなる。逆に、プランジャ36を押し込んだ場合には、シリンジ34内から排出された純水が試薬分注ノズル24へ移行されるため、試薬分注ノズル24内の圧力が上がり、試薬分注ノズル24内に溜められた試薬が吐出(分注)されることとなる。
【0027】
分注動作用配管30には、3方弁などの分配弁40を介して、詳細を後述するバッファ供給部64に接続されるバッファ供給配管70が接続されている。このような構成とすることにより、分注動作用配管30内に貯留された動作流体である純水を定期的に入れ替える事ができる。これにより、動作流体が汚染されることによる計測データの誤差を抑制することが可能となる。
【0028】
温水供給部42は、捕集担体を希釈するための温水を供給する役割を担う。温水供給部42は、ペリスタルティックポンプ44、ヒータ46、および温水供給ノズル48を基本として構成される。ペリスタルティックポンプ44は、樹脂チューブとローラ、およびアクチュエータとを基本として構成される(いずれも不図示)。樹脂チューブは、送液用に用いられるチューブであり、搬送流体(本実施形態では純水)が流されることとなる。機構上、ローラにより押し潰されることとなるため、可撓性と耐久性を備えていることが望ましく、例えばシリコンチューブなどであれば良い。ローラは、樹脂チューブを押し潰しながら、自転と公転を繰り返すことで、押し潰し領域に閉じ込められた搬送流体をローラの公転方向へ押出す役割を担う。ローラにより押し潰された樹脂チューブには、元の形状に戻ろうとする力が働く。そして、搬送流体は非圧縮性流体であるため、複数のローラが連続的に公転することにより、搬送流体の押出しも連続的に行われることとなる。なおアクチュエータは、複数配置されたローラを回転させることのできるものであれば良い。
【0029】
このような構成のペリスタルティックポンプ44によれば、搬送流体(本実施形態では純水)と接触する箇所は、搬送流体が流れるチューブ内のみであるため、ポンプ自体が汚染されない。このため、無菌状態の維持と洗浄が容易となる。
ヒータ46は、搬送流体である純水を加熱する役割を担う。ヒータ46の構成については特に限定することは無いが、小型化を重視する場合には、カートリッジヒータやチューブヒータを採用することが望ましい。例えばカートリッジヒータを採用した場合には、ヒータ本体46aの外周に、金属性の配管(以下、単に金属配管46bと称す)を巻回させ、当該巻回させた金属配管46bの内部に搬送流体である純水を送通させるようにすれば良い。このような構成とすることにより、金属配管46b内部の純水は、熱伝達により加熱されることとなるからである。また、チューブヒータを採用した場合には、樹脂配管(チューブ)などの回りにラバーヒータを巻回させ、樹脂チューブ内を送通させる搬送流体である純水を加熱することとなる。このような構成では、樹脂チューブにシリコン樹脂などを採用することにより、熱伝達率が良好となる。また、樹脂チューブ、ラバーヒータともに可撓性を有することとなるため、配置の自由度が高く、加熱領域を長く確保することが可能となる。このため、加熱後の温度低下の回避、すなわち温度の安定化を図ることができる。ヒータ46の配置位置については特に限定することは無いが、加熱後の温度低下を防ぐためには、加熱後の送液距離を短くすることが望ましい。よって、本実施形態に係る計測ユニット12では、上述したペリスタルティックポンプ44と、詳細を後述する温水供給ノズル48との間に配置している。
【0030】
温水供給ノズル48は、ペリスタルティックポンプ44により送液され、ヒータ46により加熱された温水(純水)を、詳細を後述する試薬・担体容器搭載部54に配置された捕集担体カートリッジ82に供給するための吐出ノズルである。構成としては、金属(SUS)管などであれば良く、ガラス管や、樹脂管などであっても良い。温水供給ノズル48における吐出口と反対側の端部には、ヒータ46を介してペリスタルティックポンプ44に接続された温水供給配管50が接続されている。なお、ペリスタルティックポンプ44における吸引側配管52は、詳細を後述するバッファ供給部64に接続されている。
このように構成された温水供給部42によれば、ペリスタルティックポンプ44を駆動させることにより、温水供給ノズル48から連続的に温水を吐出させることが可能となる。
【0031】
試薬・担体容器搭載部54は、発光測定に用いる試薬や、捕集担体を配置するためのステージである。試薬・担体容器搭載部54には、捕集担体カートリッジホルダ56や、試薬ラック58、発光計測チューブホルダ60a、および排水口100などが配置される。捕集担体カートリッジホルダ56は、捕集担体カートリッジ82をセットするホルダである。捕集担体カートリッジホルダ56には、ヒータを備えたヒートブロックが設けられ、セットした捕集担体カートリッジ82を加熱可能な構成とされている。
【0032】
試薬ラック58には、発光測定に用いる試薬を充填した試薬カートリッジが配置される。試薬カートリッジは、図5に示すように、複数に仕切られた各凹部(図5(B)に示す例では9つ)に、それぞれ種類の異なる試薬や純水等が充填されたパッケージであり、凹部の上部開口部は、アルミシート(膜)などにより封止されている。このような構成とすることにより、アルミシートが剥がされて開封されるまでは、試薬が外部に晒されることが無く、ストックされている試薬が生菌等により汚染されることが無い。なお、図5において、図5(A)は、試薬・担体容器搭載部54の上面図であり、図5(B)は、試薬カートリッジ62の上面図である。
【0033】
発光計測チューブホルダ60aには、発光計測チューブ60が配置されている。発光計測チューブ60は、捕集担体カートリッジ82により捕集された生菌から抽出したATPの発光反応を実施するためのマイクロチューブである。
排水口100は、試薬分注ノズル24の動作流体である純水や、温水供給ノズル48からの純水を廃棄する廃棄口である。排水口100には、試薬分注ノズル24からの動作流体を排水する動作流体排出位置102と、温水供給ノズル48からの温水を排水する温水排出位置104を有する。ノズル内に溜まった純水を定期的、あるいは周期毎に排出することにより、ノズル内での菌の発生や汚染を防止することができ、装置内部での汚染の拡大や、クロスコンタミの発生を防止することができる。
【0034】
バッファ供給部64は、試薬分注ノズル制御用水タンク(以下、単に制御用水タンク66と称す)と、温水供給用水タンク68を有する。試薬分注ノズル24を使用した後の工程には、遊離ATPを除去する工程を含まないため、シリンジポンプ32と試薬分注ノズル24を繋ぐ分注動作用配管30に充填される制御用水タンク66内の水(純水)は、温水供給用水タンク68内の水(純水)よりも清浄度を高く保つ必要がある。このため、制御用水タンク66は、温水供給用タンク68に比べて、その容量を小さくし、貯留水の交換を適宜行うようにしている。なお、温水供給用水タンク68内の水は、捕集担体カートリッジホルダ56にセットされた捕集担体カートリッジ82に注がれるため、制御用水タンク66に比べて多くの容量を必要とする。
【0035】
このように設定された制御用水タンク66は、バッファ供給配管70により、分注動作用配管30における分配弁40に接続され、当該分配弁40の切り替えにより、分注動作用配管30への純水の供給を可能な構成としている。また、温水供給用水タンク68は、上述したペリスタルティックポンプ44の吸引側に接続され、ペリスタルティックポンプ44の駆動により吸い上げられることとなる。
【0036】
濾過部72は、温水供給ノズル48から吐出された温水により希釈された捕集担体カートリッジ82内の捕集担体を除去する役割を担う。濾過部72は、吸引ポンプ74と吸引ヘッド76を基本として構成される。吸引ポンプ74は、詳細を後述する吸引ヘッド76の内部に負圧を生じさせるためのポンプである。また吸引ヘッド76は、先端開放型の筒状体である。
このような基本構成を有する濾過部72では、先端を捕集担体カートリッジホルダ56の下部に接続し、吸引ポンプ74を稼動させることにより、温水により希釈された捕集担体を、回収フィルタ90(図6参照)を介して吸引除去することができる。
【0037】
PMT部78は、発光計測チューブ60内におけるATPの発光量を測定する役割を担う。本実施形態における計測ユニット12では、PMT部78をヘッドオン型とし、上述した発光計測チューブ60の下部に配置する構成とした。このような構成とすることにより、発光計測チューブ60内で生じた光がPMT部78の上部から入射され、その発光量が計測されることとなる。
なお、制御部11は、発光計測装置に対する入力値に対して、上記各構成要素を制御することで、発光測定の自動化を図る要素である。
【0038】
捕集ユニット80は、捕集担体カートリッジ82内に、空気中の生菌を捕集するための装置である。捕集ユニット80は、捕集担体カートリッジ82、送風ファン84、インパクタノズルヘッド86、および排気フィルタ88を基本として構成される。
捕集担体カートリッジ82は、空気中に浮遊する生菌を捕集するための役割を担う。捕集担体カートリッジ82には、生菌を捕集するための捕集担体82a(図6参照)が備えられる。本実施形態に係る捕集担体カートリッジ82に備えられる捕集担体82aは、常温においてはゲル状を成し、加熱によりゾル化する性質を持つ。また、捕集担体82aの下部には、希釈用温水を充填するためのキャビティ(不図示)が設けられている。そして、キャビティの下部には、捕集担体82aを希釈した温水の濾過を行うための回収フィルタ90(図6参照)が備えられる。
【0039】
送風ファン84は、捕集ユニット80内に空気を吸引し、上述した捕集担体カートリッジ82における捕集担体82aに、空気中の浮遊菌を衝突させる役割を担う。送風ファン84自体の汚染による検出誤差を避けるため、送風ファン84は、上述した捕集担体カートリッジ82の配置位置よりも下流側(本実施形態に係る捕集ユニット80では上部を吸引口とするため下部側)に配置することが望ましい。捕集ユニット80では、送風ファン84の送風量と稼動時間により、捕集対象とする空気の量を定めることができる。
【0040】
インパクタノズルヘッド86は、捕集ユニット80の上部に配置され、捕集担体カートリッジ82のカバー兼加速器としての役割を担う。捕集担体カートリッジ82に生菌を衝突させて担持させるためには、捕集ユニット80へ流入する空気の流速が、ある程度速い必要がある。しかし、速い流速を得るためには、送風ファン84を大きくしたり、高回転化させる必要が生じ、捕集ユニット80の大型化などが懸念される。
インパクタノズルヘッド86には、複数の小径口が設けられ、送風ファン84により吸引された空気が、当該小径口を通過して捕集担体82aへ衝突させられることとなる。空気の流量を一定とした場合、通過流路の面積を狭めることにより、通過する流体の流速を上げることができる。このため、送風ファン84の大型化や高回転化を行う事無く、必要な流速を得ることができるようになる。
【0041】
排気フィルタ88は、送風ファン84の下流側(本実施形態に係る捕集ユニット80では下側)に配置され、排気に含まれる塵埃を除去する役割を担う。
このような構成とすることにより、本実施形態に係る捕集ユニット80は、小型軽量なものとすることができる。
【0042】
上記のような基本構成を有する計測ユニット12と捕集ユニット80から成る発光測定装置10では、まず、捕集ユニット80により空気中の生菌を捕集する(ステップ100:図6参照)。
次に、生菌を捕集した捕集担体カートリッジ82を捕集ユニット80から取り出し、計測ユニット12の捕集担体カートリッジホルダ56にセットする。捕集担体カートリッジホルダ56にセットされた捕集担体カートリッジ82は、ヒートブロックにより加熱される。加熱により、捕集担体はゾル化する。ゾル化した捕集担体82aは、温水供給ノズル48から供給される温水により希釈される。そして、希釈された捕集担体82aは、回収フィルタ90を介して濾過部72により吸引除去され、回収フィルタ90には、捕集担体82aに捕集された生菌および遊離ATPが残留することとなる(ステップ110:図6参照)。
【0043】
捕集担体82aを濾過した後、試薬分注部14を稼動させて遊離ATPの除去と、生菌サンプルの分取を行う。まず、試薬分注ノズル24により試薬カートリッジ62から(ATP除去)試薬を分取し、捕集担体カートリッジ82に分注し、遊離ATPを除去する。この作業により、遊離ATPに起因する発光反応による発光量の計測誤差の発生を防ぐことができる。次いで遊離ATPを除去した後の捕集担体カートリッジ82における回収フィルタ90上に(ATP抽出)試薬を分注し、回収フィルタ90上の生菌からATPを抽出する(ステップ120:図6参照)。
【0044】
捕集担体カートリッジ82における回収フィルタ90から、ATP抽出サンプルを分取し、発光計測チューブ60へ分注する。発光計測チューブ60には、予め発光試薬が分注してあり、ATP抽出サンプルの分注と同時に発光反応が開始されることとなる。発光計測チューブ60内での発光反応は、PMT部78により、その発光強度の計測が行われる(ステップ130:図6参照)。
【0045】
このような基本構成を有する発光測定装置10では、捕集担体カートリッジ82からの生菌サンプル分取から、発光量の計測までを、外殻で覆われた計測ユニット12内部において自動で行うため、生菌サンプルがコンタミの影響を受ける虞が少ない。また、試薬・担体容器搭載部54にセットされた発光計測チューブ60に対して予め発光試薬を分注し、その後に生菌からのATP抽出サンプルを分注するため、試薬の自家背景光をも計測することができる。このため、発光量と発光時間との関係を正確に得ることができ、発光量に基づくATP量の算出、すなわち生菌数の計測を精度良く行うことができる。
【0046】
次に、図7、図8を参照しつつ、本発明の試薬分取・分注機構について説明する。なお、図7は、上述した計測ユニットにおける試薬分注ノズルによる試薬の分注・分取の様子を示す状態図である。また、図8は、試薬分取・分注機構の各動作を説明するためのフロー図である。本実施形態に係る試薬分取・分注機構は、上述した試薬分注部14と、上述した制御部11によって構成される。このような構成とされる試薬分取・分注機構では、次のようにして、試薬の分取・分注が成される。
【0047】
試薬分注ノズル24による試薬の分取・分注動作は、各種アクチュエータに対する制御部11からの駆動信号に基づく。制御部11はまず、試薬分注ノズル24が待機位置に位置する状態において、シリンジポンプ32のアクチュエータ38に対して、プランジャ36を引抜き、シリンジ34内に負圧を生じさせる駆動信号(第1エア配置信号)を出力する。第1エア配置信号を受けてアクチュエータ38が駆動することにより、負圧となったシリンジ34内には、分注動作用配管30および試薬分注ノズル24内に充填されていた動作流体である純水が流れ込む。これにより、試薬分注ノズル24内における動作流体の占有面積は減り、動作流体の界面と、試薬分注ノズル24におけるノズル先端との間に第1エア層110が配置されることとなる。ノズル先端に第1エア層110を配置したことにより、待機時におけるノズルの先端から、動作流体が垂れ落ちる虞が無くなる。このため、液滴の落下によるクロスコンタミの発生や、試薬濃度の変動による分取・分注精度の低下を防ぐことができる。
【0048】
待機工程において配置される第1エア層110は、試薬分注ノズル24の容積に対して、十分な容量を確保することが望ましい。ここで、十分な容量とは、ノズル容量の30%〜120%程度の割合であれば良く、ノズル容量を200μLとした場合には、第1エア層110の容量を100μL程度とすれば良い(図7(A)参照:ステップ200:待機工程)。
【0049】
次に制御部11は、3軸アクチュエータ16におけるX軸機構部20とY軸機構部18に対して、試薬カートリッジ62における分取対象となる試薬が充填された凹部の直上位置に、試薬分注ノズル24を移動させる駆動信号(第1移動信号)を出力する。上述した待機工程において、試薬分注ノズル24の先端に、試薬分注ノズル24の容量に対して十分な容量のエア層(第1エア層110)を配置したため、待機時のみならず移動時においても、動作流体が滴下される虞が無い(ステップ210:第1移動工程)。
【0050】
次に制御部11は、シリンジポンプ32のアクチュエータ38に対して、プランジャ36を押し込み、シリンジ34内に正圧を生じさせる駆動信号(エア層調整信号)を出力する。エア層調整信号を受けてアクチュエータ38が駆動することにより、正圧となったシリンジ34からは動作流体が排出され、分注動作用配管30を介して試薬分注ノズル24内に流れ込む。これにより、試薬分注ノズル24内における動作流体の占有面積が増える。ここで、エア層調整信号は、第1エア層110の一部が試薬分注ノズル24から排出され、他の一部が試薬分注ノズル24のノズル先端に残る程度、アクチュエータ38を駆動させるものとする。つまり、第1エア配置信号に比べ、エア調整信号によるプランジャ36の移動量は少ないものとなる(図7(B)参照:ステップ220:エア調整工程)。
【0051】
次に制御部11は、3軸アクチュエータ16におけるZ軸機構部22に対して、試薬分注ノズル24を降下させ、ノズル先端を試薬に浸漬させる駆動信号(第2移動信号)を出力する(ステップ230:第2移動工程)。
次に制御部11は、シリンジポンプ32のアクチュエータ38に対して、プランジャ36を引抜き、シリンジ34内に負圧を生じさせる駆動信号(試薬分取信号)を出力する。試薬分取信号を受けてアクチュエータ38が駆動することにより、負圧となったシリンジ34内には、分注動作用配管30および試薬分注ノズル24内に充填されていた動作流体が流れ込む。これにより、試薬分注ノズル24内における動作流体の占有面積は減り、試薬分注ノズル24の先端からは、分取対象とする試薬が流入することとなる。この動作により、動作流体と試薬との間には、第1エア層110が介在されることとなる。これにより、試薬に動作流体が混ざり込む虞が無く、試薬の混合拡散に伴うクロスコンタミの発生や、試薬の分注精度の低下を防ぐことができる(図7(C)参照:ステップ240:試薬分取工程)。
【0052】
次に制御部11は、3軸アクチュエータ16におけるZ軸機構部22に対して、試薬分注ノズル24を上昇させ、ノズル先端を試薬から退避させる駆動信号(第3移動信号)を出力する(ステップ250:第3移動工程)。
次に制御部11は、シリンジポンプ32のアクチュエータ38に対して、プランジャ36を引抜き、シリンジ34内に負圧を生じさせる駆動信号(試薬保護信号)を出力する。試薬保護信号を受けてアクチュエータ38が駆動することにより、負圧となったシリンジ34内には、分注動作用配管30および試薬分注ノズル24内に充填されていた動作流体が流れ込む。これにより、試薬分注ノズル24内における動作流体の占有面積は減り、試薬分注ノズル24の先端部分に配置された試薬の界面とノズル先端との間には、第2エア層112が配置されることとなる。これにより、ノズル先端に試薬の液滴が垂れ下がることにより分注精度の低下や、液滴の落下によるクロスコンタミの発生を防止することができる(図7(D)参照:ステップ260:試薬保護工程)。
【0053】
次に制御部11は、3軸アクチュエータ16におけるX軸機構部20とY軸機構部18に対して、試薬分注ノズル24を試薬分注位置まで移動させる駆動信号(第4移動信号)を出力する。なお、ここでいう試薬分注位置とは、捕集担体カートリッジホルダ56の上部や、発光計測チューブ60の上部等を言う(ステップ270:第4移動工程)。
【0054】
次に制御部11は、シリンジポンプ32のアクチュエータ38に対して、プランジャ36を押し込み、シリンジ34内に正圧を生じさせる駆動信号(試薬分注信号)を出力する。試薬分注信号を受けてアクチュエータ38が駆動することにより、正圧となったシリンジ34からは動作流体が排出され、分注動作用配管30を介して試薬分注ノズル24内に流れ込む。これにより、試薬分注ノズル24内における動作流体の占有面積が増える。ここで、試薬分注信号は、ノズル内に充填した試薬を吐出させると共に、上述した第1エア層110の一部が試薬分注ノズルの先端に残る程度、アクチュエータ38を駆動させるものとする。このような動作とすることにより、試薬自体は、分取した量のすべてを分注することができ、かつ動作流体までもが吐出されてしまうことを防ぐことができるからである(図7(E)参照:ステップ280:試薬分注工程)。
【0055】
次に制御部11は、3軸アクチュエータ16におけるX軸機構部20とY軸機構部18に対して、試薬分注ノズル24を排水口100における動作流体排出位置102まで移動させる駆動信号(一時退避信号)を出力する(ステップ290:一時退避工程)。
次に制御部11は、シリンジポンプ32のアクチュエータ38に対して、プランジャ36を押し込み、シリンジ34内に正圧を生じさせる駆動信号(動作流体吐出信号)を出力する。動作流体吐出信号を受けてアクチュエータ38が駆動することにより、正圧となったシリンジ34からは動作流体が排出され、分注動作用配管30を介して試薬分注ノズル24内に流れ込む。流れ込んだ動作流体がノズルの許容量を超えることにより、動作流体の一部が動作流体排出位置102に吐出されることとなる。なお、吐出された分量の動作流体は、分注動作用配管30に配された分配弁40を制御すると共にアクチュエータ38を動作させてプランジャ36を引き抜くことにより、制御用水タンク66から補給されることとなる(図7(F)参照:ステップ300:動作流体吐出工程)。
【0056】
次に制御部11は、シリンジポンプ32のアクチュエータ38に対して、プランジャ36を引抜き、シリンジ34内に負圧を生じさせる駆動信号(動作流体保護信号)を出力する。動作流体保護信号を受けてアクチュエータ38が駆動することにより、負圧となったシリンジ内には、分注動作用配管30および試薬分注ノズル30内に充填されていた動作流体が流れ込む。これにより、試薬分注ノズル24内における動作流体の占有面積は減り、試薬分注ノズル24内に充填された動作流体の界面とノズルの先端との間には、第1エア層110が配置されることとなる。なお、ここで配置される第1エア層110は、上述した待機工程において配置した第1エア層110と同等の容量とする(図7(G)参照:ステップ310:動作流体保護工程)。
【0057】
次に制御部11は、3軸アクチュエータ16におけるX軸機構部20とY軸機構部18に対して、試薬分注ノズル24を待機位置まで移動させる駆動信号(第5移動信号)を出力する(ステップ320:第5移動工程)。
なお、第5移動工程終了後再び試薬の分注を行う場合には、上述した第1移動工程(ステップ210)からの繰り返し制御が成されることとなる。
【0058】
上記のような構成の下、上記のような制御が成される試薬分取・分注機構によれば、試薬を分取・分注する試薬分注ノズル24を待機させておく際に、試薬分注ノズル24内部の動作流体が汚染されることを抑制することができる。また、移動動作時における液滴の落下を防止することができることより、クロスコンタミの発生を防ぐこともできる。これにより試薬の分取・分注を高精度に行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0059】
10………発光測定装置(バイオメイテクタ)、11………制御部、12………計測ユニット、14………試薬分注部、16………3軸アクチュエータ、18………Y軸機構部、20………X軸機構部、22………Z軸機構部、24………試薬分注ノズル、26………スライドガイド、28………固定ブロック、30………分注動作用配管、32………シリンジポンプ、34………シリンジ、36………プランジャ、38………アクチュエータ、40………分配弁、42………温水供給部、44………ペリスタルティックポンプ、46………ヒータ、48………温水供給ノズル、50………温水供給配管、52………吸引側配管、54………試薬・担体容器搭載部、56………捕集担体カートリッジホルダ、58………試薬ラック、60………発光計測チューブ、62………試薬カートリッジ、64………バッファ供給部、66………制御用水タンク、68………温水供給用水タンク、70………バッファ供給配管、72………濾過部、74………吸引ポンプ、76………吸引ヘッド、78………PMT部、80………捕集ユニット、82………捕集担体カートリッジ、84………送風ファン、86………インパクタノズルヘッド、88………排気フィルタ、90………回収フィルタ、100………排水口、102………動作流体排出位置、104………温水排出位置。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル内に配された動作流体により、試薬の分取量や分注量の制御を行う試薬分注ノズルによる試薬分取・分注方法であって、
動作流体の界面と、前記試薬分注ノズルにおけるノズル先端との間に第1エア層を配置する待機工程と、
前記試薬分注ノズルを分取対象とする試薬の直上位置まで移動させる第1移動工程と、
前記ノズル先端を前記試薬に浸漬させる第2移動工程と、
前記試薬分注ノズル内における前記動作流体の占有量を減らし、前記ノズル先端から前記試薬分注ノズル内に前記試薬を充填する試薬分取工程と、
前記試薬分注ノズルの先端を前記試薬から退避させる第3移動工程と、
分取した前記試薬の界面と、前記ノズル先端との間に第2エア層を配置する試薬保護工程と、
前記試薬保護工程を実施した後に試薬分注位置にまで前記試薬分注ノズルを移動させる第4移動工程と、
前記試薬分注ノズル内における前記動作流体の占有量を増やすことで、分取した前記試薬を吐出する試薬分注工程と、
前記試薬を分注した後、前記動作流体の界面と前記ノズル先端との間に前記第1エア層を配置する動作流体保護工程と、
前記動作流体の界面と前記ノズル先端との間に前記第1エア層を配置した状態で、前記試薬分注ノズルを待機位置まで退避させる第5移動工程とを有することを特徴とする試薬分注ノズルによる試薬分取・分注方法。
【請求項2】
前記第1移動工程と前記第2移動工程との間に、前記試薬分注ノズル内における前記動作流体の占有量を増やし、前記第1エア層の占有量を減らすエア層調整工程を有することを特徴とする請求項1に記載の試薬分注ノズルによる試薬分取・分注方法。
【請求項3】
前記試薬分注工程の後、前記試薬分注ノズルを動作流体排出位置へ移動させる一時退避工程と、
動作流体排出位置において、前記ノズル先端から前記動作流体の一部を吐出させる動作流体吐出工程とを有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の試薬分注ノズルによる試薬分取・分注方法。
【請求項4】
前記試薬分注工程において、前記第1エア層を残した後、前記一時退避工程へ移行することを特徴とする請求項3に記載の試薬分注ノズルによる試薬分取・分注方法。
【請求項5】
水平方向への移動軸をX軸およびY軸とし、垂直方向の移動軸をZ軸とした3軸アクチュエータと、当該3軸アクチュエータにより移動される試薬分注ノズルと、前記試薬分注ノズルに接続され、ノズル内に配された動作流体の制御を行うポンプ手段とを有する試薬分取・分注機構であって、
前記ポンプ手段に対して、前記ノズル内における前記動作流体の占有量を減らし、前記動作流体の界面と、前記試薬分注ノズルにおけるノズル先端との間に第1エア層を配置する第1エア層配置信号を出力し、
前記試薬分注ノズルに前記第1エア層が配置された後、前記3軸アクチュエータに対して、前記試薬分注ノズルを分取対象とする試薬の直上位置まで移動させる第1移動信号と、前記ノズル先端を前記試薬に浸漬させる第2移動信号とを出力し、
前記ノズル先端が前記試薬に浸漬した後、前記ポンプ手段に前記ノズル内における前記動作流体の占有量を減らして前記試薬を前記試薬分注ノズル内に充填する試薬分取信号を出力し、
前記3軸アクチュエータに対して、前記試薬分注ノズルの先端を前記試薬から退避させる第3移動信号を出力し、
前記ポンプ手段に対して、分取した前記試薬の界面と、前記ノズル先端との間に第2エア層を配置する試薬保護信号を出力し、
前記試薬分注ノズル内に前記第2エア層を配置した後、前記3軸アクチュエータに対して、試薬分注位置にまで前記試薬分注ノズルを移動させる第4移動信号を出力し、
前記試薬分注ノズルが前記試薬分注位置に到達した後、前記ポンプ手段に対して、前記試薬分注ノズル内における前記動作流体の占有量を増やして前記試薬を吐出させる試薬分注信号を出力し、
前記試薬分注ノズルから前記試薬が吐出された後、前記ポンプ手段に対して前記試薬分注ノズル内における前記動作流体の占有量を減らして前記動作流体の界面と前記ノズル先端との間に前記第1エア層を配置する動作流体保護信号を出力し、
前記3軸アクチュエータに対し、前記試薬を分注した後に前記第1エア層が配置された前記試薬分注ノズルを待機位置まで退避させる第5移動信号を出力する制御部を有することを特徴とする試薬分取・分注機構。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1移動信号と前記第2移動信号を出力する間に、前記ポンプ手段に対して前記試薬分注ノズル内における前記動作流体の占有量を増やすエア層調整信号を出力することを特徴とする請求項5に記載の試薬分取・分注機構。
【請求項7】
前記制御部は、前記試薬分注信号を出力した後、前記3軸アクチュエータに対して、前記試薬分注ノズルを動作流体排出位置へ移動させる一時退避信号と、
前記ポンプ手段に対して、前記動作流体排出位置へ移動させた前記試薬分注ノズルの先端から前記動作流体の一部を吐出させるように前記試薬分注ノズル内における前記動作流体の占有量を増やす動作流体吐出信号を出力することを特徴とする請求項5または請求項6に記載の試薬分取・分注機構。
【請求項8】
前記試薬分注信号は、前記試薬分注ノズル内に充填した前記試薬を全て吐出させると共に、前記第1エア層の一部を吐出させるように、前記動作流体の占有量を制御する信号であることを特徴とする請求項5乃至請求項7のいずれか1項に記載の試薬分取・分注機構。
【請求項9】
前記ポンプ手段をシリンジポンプとしたことを特徴とする請求項5乃至請求項8のいずれか1項に記載の試薬分取・分注機構。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−149721(P2011−149721A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9037(P2010−9037)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】