説明

試薬化合物、標識ストラテジーおよび質量分析ワークフローを用いたケトンおよびアルデヒド分析物の特異的分析

標識試薬、標識試薬のセット、および標識技術が、ケトン化合物もしくはアルデヒド化合物(ステロイドもしくはケトステロイドを含む分析物が挙げられるが、これらに限定されない)の相対的定量、絶対的定量、もしくはその両方のために提供される。上記分析物は、生物学的サンプル中の医学的化合物もしくは薬学的化合物であり得る。ケトン化合物もしくはアルデヒド化合物を標識し、分析し、そして定量するための方法もまた開示され、同様に、質量分析法も使用する方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連する出願との相互参照)
本願は、2009年5月31日に出願された、米国仮特許出願第61/182,748号のより早い出願日の利益を主張し、この仮特許出願は、その全体が、参照により本明細書中に援用される。
【背景技術】
【0002】
(背景)
ケトンおよびアルデヒドは、1個もしくは2個の他の炭素原子に連結したカルボニル基を有する極性化学官能基である。ケトン化合物およびアルデヒド化合物は、産業、農業、および医薬において重要な役割を果たしている。ケトンおよびアルデヒドはまた、ヒトの代謝および生化学において重要な因子である。特に、ケトステロイドは、ケトン含有ステロイド化合物のクラスであり、研究および臨床診断において独特に価値がある。なぜなら、これら化合物は、ホルモン調節された生物学的プロセスにおいて重要な因子であり、非常に低い濃度で強い生物学的活性を有するからである。多くのケトステロイドはまた、潜在的に価値のある薬学的因子であり、それらの身体での機能および代謝の分析は、医学的処置および疾患を検出するための診断技術の両方において有用である。
【0003】
ケトン化合物およびアルデヒド化合物の分析および測定は、困難である。なぜなら、これら化合物は、臨床的サンプルおよび生物学的サンプル(例えば、血漿)中に低レベルで存在し得るからである。標準的なクロマトグラフィー技術(例えば、化学的誘導体化の後に検出するためのGC−MS法)は、利用可能ではあるが、上記化学的誘導体化は、特異的ではない。例えば、非特許文献1を参照のこと。蛍光検出を使用する方法が利用可能であり、いくつかの特異的イムノアッセイ(ラジオイムノアッセイ(RA)が挙げられる)は、利用可能であるが、これらは通常、複数成分分析を提供しない。RAに伴う主要な問題は、特異性を欠き、および各ステロイドに対して異なるアッセイを行う必要性があることである。
【0004】
LC/MSストラテジーの文献中の例は、上記分析物の誘導体化を利用するが、上記イオン化効率は比較的低く、これらストラテジーは、上記アッセイが質量分析を使用する臨床的状況において見込みがあり、多重送信する能力を欠いていることが必要とされる検出限界を達成できなかった。生物学的サンプル中のステロイド分析はまた、種々の内分泌および代謝障害の評価および臨床的検出に重要である。臨床実験は、ステロイドのハイスループットスクリーニングのためのラジオイムノアッセイ(RA)を現在行っている。
【0005】
サンプル中のケトン化合物およびアルデヒド化合物を測定しようとすることによって提示された上記の挑戦はまた、目的の特定の化合物、またはケトン分析物もしくはアルデヒド分析物の一団について多数の生物学的サンプルを迅速にスクリーニングおよび/もしくは分析するという欲求によって拡大される。質量分析は、迅速なスループットを提供し得るが、ケトンステロイドおよびアルデヒドステロイドは、上記サンプル媒体中の化合物および低いサンプル濃度を計算することによる質量測定値における干渉が原因で、特に困難である。さらに、ケトン化合物およびアルデヒド化合物のいくつかのクラス、ならびに特に、ケトステロイドは、質量分析用のサンプルを調製するためにしばしば使用される伝統的なサンプル加工処理条件と適合しない。ケトステロイドはまた、MS/MS分析の間の不十分なイオン化効率および複雑なイオン化パターンに起因して、特に困難である。
【0006】
従って、ケトン化合物およびアルデヒド化合物の迅速かつ効率的な分析および定量のための技術は、非常に望まれているが、これら化合物の生物学的重要性が原因で、既存の技術は、上記化合物の化学に特有な感度、交叉反応物質および他の困難さに起因して、理想的ではない。
【0007】
ケトステロイドの感度の高い、選択的な、および正確な分析は、異常な副腎機能のモニタリングのために使用され得る。ポジティブMS/MSにおけるネイティブなケトステロイドのイオン化効率は、不十分であり得、しばしば、不十分な検出限界(LOD)を、特に、幼児および小児に由来するヒトサンプルを分析する場合に、生じる。それらのケト官能基を介するケトステロイドを誘導体化して、ヒドラジンを形成することは、例えば、非特許文献2(これは、本明細書にその全体が参考として援用される)に記載されるように、イオン化を改善し、感度を増強するために使用されてきた。
【0008】
MRM分析およびMS/MS条件は、清潔な溶媒中で十分に機能するが、複雑な生物学的サンプルを使用する場合、高いバックグラウンド(BKG)ノイズ(しばしば、同じ質量のQ1/Q3インターフェイスに由来する)が生成され、このことは、クロマトグラフィーを複雑にし、検出限界を低下させる。ケトステロイド、およびケト官能基もしくはアルデヒド官能基を含む分析物を定量するための方法が必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Song,J.ら,Journal of Chromatography B.,Vol.791,Issues 1-2,(127−135)2003
【非特許文献2】Kushnirら,Performance Characteristics of a Novel Tandem Mass Spectrometry Assay For Serum Testosterone,Clin Chem.52:1,120−128,2006
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
(要旨)
本教示は、サンプル中のアルデヒドおよびケトン(特に、ケトステロイド)の分析のための化合物、方法、およびストラテジーに関する。化合物の標識は、多くの重要な生物学的サンプル中のこれら化合物に適用され得る単純な化学を使用して、分析物の上記ケトン官能基もしくはアルデヒド官能基を誘導体化するように特に設計される。上記誘導体化は、ケトン基もしくはアルデヒド基をオキシムに変換し、それによって、より親水性の性質を上記分析物に付与する。特に、上記ケトン官能基もしくはアルデヒド官能基は、アミンオキシ化学を使用して誘導体化されて、質量分析によるイオン化および検出に適した標識された分析物を作り出す。いくつかの実施形態において、上記標識試薬は、質量レポーターおよびアミンオキシ基から構成され、その結果、上記イオン化されたレポーター基が検出可能である。言い換えると、上記標識は、中性子損失基(neutral loss group)およびアミンオキシ基を含み、その結果、上記荷電された分析物は、質量分析によって検出可能である。何れにしても、このような標識された分析物の質量分析は、改善された検出特徴(特に、感度の大きな増加および検出感度の大きな増加(10〜1000倍)が挙げられる)を生じる。このストラテジーはまた、サンプルマトリクス中のケトン化合物およびアルデヒド化合物を測定もしくは検出することにおいて固有の特徴の多くを克服する。上記標識および標識ストラテジーはまた、もっぱらプロトン化された分子イオンを生じ、質量分析におけるフラグメント化は、単純化されたMSスペクトルを得ることを生じる。
【0011】
本明細書に記載される方法は、相対的濃度、絶対的濃度、もしくはその両方を測定し得、1種以上のサンプル中の1種以上のステロイドに適用され得る。本発明の方法はまた、同位体置換の選択および上記化合物のための標識ストラテジーに依存して、同重体標識試薬および方法、ならびに質量示差的標識試薬および方法を含む。上記標識試薬の同位体富化されたアナログが使用され得、内部標準が、定量化のために生成され得る。米国特許出願公開第2005/068446 A1号は、同位体富化された化合物(compounded)の合成を開示し;質量分析ワークフローおよびストラテジーは、米国特許出願公開第2008/0014642 A1号に開示される(これらはともに、全体が本明細書に参考として援用される)。
【0012】
本教示は、ケトステロイド、ならびにケト官能基もしくはアルデヒド官能基を含む分析物を定量するための方法を提供する。いくつかの実施形態において、上記方法は、誘導体化化学および液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析(LC/MSMS)ワークフローを含み得る。上記方法は、ケトステロイドの検出限界を有意に増大させる永久的に荷電したアミンオキシ試薬を使用する工程を包含する。使用され得る例示的なアミンオキシ試薬は、式(I):
【0013】
【化1】

の試薬を含み、
ここでnは、1〜100の整数であり、Yは、以下のこれら部分:
【0014】
【化2】

のうちのいずれか1つであり得る。
【0015】
いくつかの実施形態において、nは、2〜50、もしくは2〜20、もしくは2〜10、もしくは2〜6、もしくは3〜8の整数である。いくつかの実施形態において、nは、3もしくは4であり得る。いくつかの実施形態において、Yは、これら4種のうちのいずれとも異なる荷電した部分であり得る。Yは、永久的に荷電した部分、例えば、永久的に荷電した、リン含有部分もしくは窒素含有部分であり得る。いくつかの実施形態において、キット(本明細書に記載されるアミンオキシ試薬のうちの1種以上を含む)が提供され得る。
【0016】
上記方法は、ケトステロイドの定量的分析のためのMRMワークフローを使用する工程を包含し得る。上記試薬は、個々のケト化合物もしくはケト化合物の一団の定量的分析のために同位体コード化され得る。低衝突エネルギーでの上記MS/MSフラグメント化は、非常に放射性降下物が少なく(clean)このことは、1つの主なシグナチャーイオンを生じる。上記シグナチャーイオンは、上記アミンオキシ誘導体化生成物からの中性子損失から生じ得る。上記MRM移動は、Q1における誘導体化ステロイドの質量およびQ3における中性子損失フラグメントの質量であり得る。本教示は、誘導体化を介してバックグラウンドノイズを有意に減少させるためのプロセスを提供し、このことは、改善された特異性を生じるQ3フラグメントの改善された感度および標的化された選択を生じる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本明細書で開示される標識試薬を使用して、4種のケトステロイド化合物の1工程誘導体化反応の模式図である。
【図2】図2は、ケトン分析物もしくはアルデヒド分析物を誘導体化するための4種の質量示差的試薬の4つの化学構造を示す。
【図3A】図3A〜3Dは、誘導体化ケトステロイド分析物および非誘導体化ケトステロイド分析物のMSスペクトルである:図3Aは、非誘導体化テストステロン(上)および誘導体化テストステロン(下)である。
【図3B】図3A〜3Dは、誘導体化ケトステロイド分析物および非誘導体化ケトステロイド分析物のMSスペクトルである:図3Bは、非誘導体化プロゲステロン(上)および誘導体化プロゲステロン(下)である。
【図3C】図3A〜3Dは、誘導体化ケトステロイド分析物および非誘導体化ケトステロイド分析物のMSスペクトルである:図3Cは、非誘導体化プレグネノロン(上)および誘導体化プレグネノロン(下)である。
【図3D】図3A〜3Dは、誘導体化ケトステロイド分析物および非誘導体化ケトステロイド分析物のMSスペクトルである:図3Dは、非誘導体化アルドステロン(上)および誘導体化アルドステロン(下)である。
【図4】図4は、誘導体化された(1pg/スポット)および非誘導体化(48pg/スポット)の、アルドステロン、テストステロン、およびプレグネノロンについての三連のMALDI−MRMピークである。
【図5】図5は、テストステロン、アルドステロン、およびプレグネノロンの濃度較正曲線である。
【図6】図6は、本明細書で開示される標識試薬に適した末端アミンオキシ基の化学構造、および末端アミンオキシ官能基にも含まれる四級アミノ物質バランス(mass balance)部分である。
【図7】図7は、本明細書に記載される技術を使用する、ケトン化合物もしくはアルデヒド化合物を誘導体化し、分析し、濃度を計算するための分析ストラテジーおよびワークフロー法の概説である。
【図8A】図8A〜8Bは、非誘導体化コルテキソロン(8A)および誘導体化コルテキソロン(8B)のMSスペクトルである。図8Aは、上記スペクトル全体にわたる複雑なフラグメント化パターンを示す一方で、図8Bは、単純化されたスペクトルと、117Daでの誘導体化分析物からの強いシグナルとを示す。
【図8B】図8A〜8Bは、非誘導体化コルテキソロン(8A)および誘導体化コルテキソロン(8B)のMSスペクトルである。図8Aは、上記スペクトル全体にわたる複雑なフラグメント化パターンを示す一方で、図8Bは、単純化されたスペクトルと、117Daでの誘導体化分析物からの強いシグナルとを示す。
【図9】図9は、誘導体化形態(a)および非誘導体化形態(b)にある1pgのテストステロン/エピテストステロンのMALDI分析である。
【図10】図10は、>99%であると計算された反応効率のグラフである。
【図11】図11は、誘導体化テストステロンおよび非誘導体化テストステロンの連続希釈から生成された較正曲線におけるアミンオキシ化学誘導体化の反応定量を示す。
【図12】図12は、シグナチャーイオンが、本教示の種々の実施形態に従うテストステロン構造および上記誘導体化試薬構造の両方からのフラグメントを含むCE=62eVを使用する、QAOテストステロンのMS/MSフラグメントおよびスペクトルである。
【図13】図13は、本教示の種々の実施形態に従う、使用するQAO誘導体化テストステロンのクロマトグラム、および中性子損失Q3フラグメントと比較した場合、標的化Q3フラグメントのMRM移動を示す。
【図14】図14は、QAOプロゲステロンの標的化MS/MSフラグメント化およびスペクトル、ならびにCE=62eVにおけるQAOテストステロンのMS/MSスペクトルを示す。
【図15】図15は、CE=45eVにおけるプロゲステロンのMS/MSスペクトルを示し、LC−MS/MS分析におけるバックグラウンドノイズ減少を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(発明の詳細な説明)
本明細書に記載される質量分析技術において分析物として使用される上記ケトン化合物およびアルデヒド化合物は、種々の供給源(例えば、生理学的流体サンプル、細胞もしくは組織溶解物サンプル、タンパク質サンプル、細胞培養サンプル、農産物サンプル、ならびに上記ケトン官能基およびアルデヒド官能基が上記分析物中に存在する本質的に任意のサンプル)中に見いだされる。ケトン化合物およびアルデヒド化合物への本発明の技術の適用性を実証するために、ケトステロイドは分析され、以下の実施例に測定される。上記ケトステロイドは、一般的な臨床的サンプルのマトリクス中の低濃度に起因して、特定の困難性を示し、上記技術、標識試薬およびこれに適用可能な方法は、ケトン化合物もしくはアルデヒド化合物に容易に適用される
さらに、本教示は、天然のおよび合成のケトン分析物もしくはアルデヒド分析物の両方に適用され得る。ケトステロイドとしては、DHT、テストステロン、エピテストステロン、デスオキシメチルテストステロン(DMT)、テトラヒドロゲストリノン(THG)、アルドステロン、エストロン、4−ヒドロキシエストロン、2−メトキシエストロン、2−ヒドロキシエストロン、16−ケトエストラジオール、16 α−ヒドロキシエストロン、2−ヒドロキシエストロン−3−メチルエーテル、プレドニゾン、プレドニゾロン、プレグネノロン、プロゲステロン、DHEA(デヒドロエピアンドロステロン)、17 OH プレグネノロン、17 OH プロゲステロン、17 OH プロゲステロン、アンドロステロン、エピアンドロステロン、およびD4A(δ 4 アンドロステンジオンが挙げられるが、これらに限定されず、本教示の種々の実施形態において分析され得る。
【0019】
本発明は、質量示差的標識のセットを含む、質量示差的タグを使用する試薬および方法を包含し、ここで上記セットのうちの1種以上の標識は、1種以上の重原子同位体を含む。質量示差的標識のセットはまた、異なる全体的な質量および異なる主なレポーターイオン質量もしくは物質バランス基を有する標識を調製することによって提供され得るが、質量示差的タグのセットのうちの全てのメンバーが、同位体富化される必要はない。本発明の試薬および方法は、質量示差的標識および親−娘イオン移動モニタリング(PDITM)を使用して、1種以上のサンプルにおけるケトン分析物およびアルデヒド分析物の分析を可能にする。本教示は、質量示差的タグ化試薬および質量分析を使用して、このような分析物の定性的かつ定量的な分析のために使用され得る。上記質量示差的タグとしては、非同重体の同位体コード化試薬が挙げられるが、これらに限定されず、本発明は、同位体富化された標準化合物の使用ありまたはなしで、ケトン化合物およびアルデヒド化合物の絶対的定量のための試薬および方法を含む。
【0020】
同位体富化される同重体タグが使用される場合、同重体標識のセットは、1種以上の重原子同位体を含み得る。同重体標識のセットは、同一のもしくは具体的に規定された範囲の集合物質量(aggregate mass)を有し得るが、異なる測定可能な質量の主なレポーター基もしくは荷電した分析物を有する。同重体試薬のセットは、質量分析を使用して、ケトン分析物化合物およびアルデヒド分析物化合物の定性的分析および定量的分析の両方を可能にする。例えば、同位体富化される同重体タグおよび親−娘イオン移動モニタリング(PDITM)は、サンプル中の1種以上のケトン化合物もしくはアルデヒド化合物(例えば、特定のケトステロイドもしくはケトステロイドの群)を測定もしくは検出し得る。
【0021】
本発明はまた、生物学的サンプル中のケトン化合物の相対的定量、絶対的定量、もしくはその両方のための標識試薬および標識試薬のセットのキットを包含し、標識試薬は、一般式(II):
(II) Z−R
によって表され得、塩形態もしくは水和物形態において提供および/もしくは使用され得る。一般に、式(II)において:(a)Zは、(i)置換されたかもしくは置換されていない、直鎖、分枝鎖もしくは環式のアルキル;置換されたかもしくは置換されていないアリール;置換されたかもしくは置換されていないヘテロアリール;置換されたかもしくは置換されていないアミノ;または置換されたかもしくは置換されていないチオ、あるいは(ii)アミノ基としての四級窒素から較正される質量レポーター基を表し;(b)Rは、式O−NHを有する、置換されたかもしくは置換されていない末端アミンオキシを表す。
【0022】
種々の局面において、本教示は、標識される分析物を提供し、ここで上記分析物は、少なくとも1つのケトン基および本明細書に記載される標識から構成される。上記標識されるケトン化合物は、一般的配置(III):分析物−オキシム−標識(これは、式(III):A−X−Rによって表され得る)によって表され得る。Aは、上記標識される化合物の形成前に、1種以上のケトン基もしくはアルデヒド基を含んだ化合物を表し;Xは、オキシム基を表し;そしてRは、上記の標識である。
【0023】
上記のように、本教示は、ケトステロイドの分析に限定されないが、得られるオキシム、および質量分析によって検出しやすいレポーター基もしくは荷電された分析物を得るために、ケトン基もしくはアルデヒド基と、末端アミンオキシ基から構成される標識もしくはタグとの反応によって、ケトン基もしくはアルデヒド基を含む任意の化合物に適用され得る。
【0024】
種々の実施形態において、上記標識試薬もしくは標識される分析物化合物は、以下のような置換されたかもしくは置換されていない末端アミンオキシを含み:
【0025】
【化3】

以下の種を含む:
【0026】
【化4】

本教示は、質量示差的標識、同重体標識、もしくはその両方、および親−娘イオン移動モニタリング(PDITM)を使用して、1種以上のサンプル中の1種以上のケトン化合物もしくはアルデヒド化合物の分析のために試薬および方法を提供し得る。本教示は、1種以上のサンプル中の1種以上の分析物の相対的濃度、絶対的濃度、もしくはその両方を決定するため野方法を提供し、サンプル中の複数の分析物の上記相対的濃度、絶対的濃度、もしくはその両方、複数のサンプル中の1種以上の分析物、またはこれらの組み合わせが、質量示差的タグ化試薬、同重体タグ化試薬、もしくはその両方、および質量分析を使用して多様な様式で決定され得ることによる方法を提供する。
【0027】
同重体標識のセットを含む実施形態において、上記リンカー基部分は、バランス基といわれ得る。例えば、4種の同重体標識のセットは、1種以上の分析物のセットに添加され、組み合わせて、MS/MS分析に供されて、上記標識されたケトン化合物もしくはアルデヒド化合物をフラグメント化する合わされたサンプルを形成し、異なる質量もしくは荷電した分析物の4種のレポーターイオンを生成する。上記標識は、レポーター器もしくは質量バランス基またはこれらの一部、あるいは質量バランス基単独もしくはその一部の重原子置換の適切な組み合わせによって、同重体にされ得る。
【0028】
上記重原子同位体分布は、質量分析において異なるレポーターイオンもしくは荷電した分析物シグナルを発し得る。混合物(例えば、異なる分析物、異なるサンプル由来の分析物、標準物質など)の標識された構成要素により生成される上記イオンシグナルは、それぞれの標識と関連する上記レポーターイオンシグナルを分析することによって、デコンボリューションされ得る。デコンボリューションは、上記混合物中の標識された構成要素の相対的量および/もしくは絶対的量を決定し得る。これら決定としては、時間経過研究(time course studies)、生体マーカー分析、マルチ分析、アフィニティープルダウン(affinity pull−downs)、およびマルチ制御実験が挙げられる。
【0029】
「親−娘イオン移動モニタリング」もしくは「PDITM」とは、分析状態およびワークフロー状態の有利な方法であり、これは、第1の質量分離器(しばしば、「MS」もしくは質量分析の一次元といわれる)の伝達される質量対荷電(m/z)範囲が、分子イオン(しばしば、「親イオン」もしくは「前駆イオン」といわれる)をイオンフラグメント形成器(例えば、衝突セル、光解離領域(photodissociation region)など)を伝達して、フラグメントイオン(しばしば、「娘イオン」といわれる)を生成するように特異的に選択され、第2の質量分離器(しばしば、「MS/MS」もしくは質量分析の二次元といわれる)の上記伝達されるm/z範囲は、1種以上の娘イオンを、上記娘イオンシグナルを測定する検出器に伝達するように選択されることによる技術をいう。この技術は、上記スペクトルにおける娘イオンの検出が、予期される娘イオン質量に対して上記検出器を「一時的に待機させる(parking)」ことによって集中させられる場合、独特の利点を提供する。モニターされる親イオン質量および娘イオン質量の組み合わせは、モニターされる「親−娘イオン移動」といわれ得る。モニターされる所定の親イオン−娘イオン組み合わせのための検出器における上記娘イオンシグナルは、「親−娘イオン移動シグナル」といわれ得る。
【0030】
例えば、親−娘イオン移動モニタリングの一実施形態は、マルチ反応モニタリング(MRM)(選択的反応モニタリングをもいう)である。MRMの種々の実施形態において、所定の親−娘イオン移動のモニタリングは、目的の親イオンを伝達するために、第1の質量分離器(例えば、目的の親イオンm/zに対して一時的に待機させられた第1の四重極)として使用すること、および目的の1種以上の娘イオンを伝達するために、上記第2の質量分離器(例えば、目的の娘イオンm/zに対して一時的に待機させられた第2の四重極)を使用することを含む。種々の実施形態において、PDITMは、親イオンを伝達するために、上記第1の質量分離器(例えば、目的の親イオンm/zに対して待機させられた四重極)を使用すること、および上記第2の質量分離器を、目的の1種以上の娘イオンのm/z値を含むm/z範囲に対してスキャンすることによって、行われ得る。
【0031】
例えば、タンデム質量分析(MS/MS)機器、もしくはより一般的には、多次元質量分析(MS)機器は、PDITM(例えば、MRM)を行うために使用され得る。適切な質量分析器システムの例としては、トリプル四重極、四重極−直線イオントラップ、四重極TOF、およびTOF−TOFのうちの1種以上を含むものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
種々の実施形態において、本教示の標識を使用して、1つ以上のサンプル中の1種以上のケトン分析物化合物もしくはアルデヒド分析物化合物を分析するために、(a)1種以上の分析物化合物を各々、式(III)の標識された分析物化合物を提供する式(II)の標識のセットに由来する異なる標識で標識する工程であって、上記標識された分析物化合物は各々、質量バランス部分もしくはレポーターイオン部分を有する、工程;(b)上記標識された分析物化合物の各々の少なくとも一部を組み合わせて、組み合わされたサンプルを生成する工程;(c)上記組み合わされたサンプルの少なくとも一部を、親−娘イオン移動モニタリングに供する工程;(d)上記移動された分析物もしくはレポーターイオンのうちの1種以上のイオンシグナルを測定する工程;および(e)上記標識されたケトン分析物化合物もしくはアルデヒド分析物化合物のうちの1種以上の濃度を、上記対応する分析物もしくはレポーターイオンの測定されたイオンシグナルと、標準化合物の1種以上の測定されたイオンシグナルとの比較に少なくとも基づいて決定する工程を包含する。よって、種々の実施形態において、1つ以上のサンプル中の複数の分析物化合物の濃度は、例えば、2種以上の標識された分析物化合物を組み合わせて、組み合わされたサンプルを生成し、上記組み合わされたサンプルをPDITMに供し、標識した分析物化合物のうちの2種以上の上記分析物もしくはレポーターイオンをモニタリングすることによって、マルチ様式で決定され得る。
【0033】
種々の実施形態において、1種以上の標識された毛ドン分析物化合物もしくはアルデヒド分析物化合物の濃度を決定する工程は、上記標識されたケトン分析物化合物もしくはアルデヒド分析物化合物のうちの1種以上の絶対的濃度を決定する工程、上記標識されたケトンもしくは分析物化合物のうちの1種以上の相対濃度、または両方の組み合わせを決定する工程を包含する。
【0034】
クロマトグラフィーカラムは、2種以上の標識した分析物化合物を分離するために使用され得る。例えば、上記サンプルのうちの1つ以上において見いだされた第1の標識された分析物化合物は、上記サンプルのうちの1つ以上において見いだされた第2の標識された分析物化合物から上記クロマトグラフィーカラムによって分離される。上記目的のサンプルのうちの1つ以上は、1種以上の標準化合物を含む標準サンプルを含み得、ここで上記方法において標準化合物に対応するレポーターイオンの測定されるイオンシグナルは、上記標準サンプルにおいて1種以上の標識された標準化合物の測定されたレポーターイオンシグナルに対応する。
【0035】
本教示の種々の実施形態において、標準化合物の濃度曲線は、(a)第1の濃度を有する、同位体富化されていない標準ケトン化合物もしくはアルデヒド化合物を提供する工程;(b)上記標準化合物を、標識のセットに由来する標識で標識する工程であって、ここで上記標識されたケトン標準化合物は、レポーターイオン部分を有する、工程;(c)上記標識された標準化合物の少なくとも一部を、クロマトグラフィーカラムに載せる工程;(d)上記クロマトグラフィーカラムからの溶離液のうちの少なくとも一部を、親−娘イオン移動モニタリングに供する工程;(e)上記伝達された分析物イオンもしくはレポーターイオンのイオンシグナルを測定する工程;(f)1種以上の異なる標準化合物濃度について工程(a)〜(e)を反復する工程;ならびに(g)上記標準化合物の濃度曲線を、2種以上の標準化合物濃度における上記伝達された分析物イオンもしくはレポーターイオンの測定されたイオンシグナルに少なくとも基づいて生成する工程、によって生成され得る。
【0036】
当該分野で容易に認識されるように、上記標準ケトン化合物もしくは標準アルデヒド化合物は、標準サンプル中に含まれ得、標準サンプルは、1種より多くの標準化合物を含み得る。上記のように、上記サンプルは、ケトン分析物もしくはアルデヒド分析物を含む研究供給源、臨床供給源、農業供給源、もしくは産業供給源から得られ得る。種々の実施形態において、上記標準化合物の濃度曲線は、(a)第1の濃度を有する、1種より多くの同位体富化されていない標準化合物を含む標準サンプルを提供する工程;(b)上記標準サンプルに標識を添加して、上記サンプル中の上記標準化合物のうちの1種以上を標識する工程であって、上記標識された標準化合物は各々、レポーターイオン部分を有する、工程;(c)上記標識されたサンプルの少なくとも一部を、クロマトグラフィーカラムに載せる工程;(d)上記クロマトグラフィーカラムからの溶離液の少なくとも一部を親−娘イオン移動モニタリングに供する工程;(e)上記伝達された分析物イオンもしくはレポーターイオンのイオンシグナルを測定する工程;(f)上記標準化合物のうちの1種以上の異なる濃度を含む1種以上の異なる標準サンプルについて工程(a)〜(e)を反復する工程;および(g)上記標準化合物のうちの1種以上についての濃度曲線を、2種以上の標準化合物濃度におけるその対応する標準化合物についての上記伝達された分析物イオンもしくはレポーターイオンの測定されたイオンシグナルに少なくとも基づいて生成する工程によって生成され得る。
【0037】
好ましい実施形態において、標識を上記標準サンプルに添加して、上記サンプル中の上記標準化合物のうちの1種以上を標識する工程は、末端アミンオキシ基が、上記分析物標準のケトン基もしくはアルデヒド基とともにオキシムを形成する1工程反応を含む。
【0038】
語句「質量示差的標識」、「質量示差的タグ」および「質量示差的標識試薬」は、本明細書で交換可能に使用される。語句「質量示差的標識のセット」、「質量示差的タグのセット」は交換可能に使用され、例えば、試薬もしくは化学部分のセットに言及し、ここで上記セットのメンバー(すなわち、個々の「質量示差的標識」もしくは「質量示差的タグ」)は、実質的に類似の構造的特性および化学的特性を有するが、上記セットのメンバー間の重同位体富化における差異に起因して、質量が異なる。質量示差的タグの上記セットの各メンバーは、イオンフラグメント化に供される際に、異なる娘イオンシグナルを生じ得る。イオンフラグメント化は、例えば、不活性ガスとの衝突(例えば、衝突誘導性解離(CID)、衝突活性化解離(CAD)など)によって、解離を生じる光子との相互作用(例えば、光誘導性解離(PID))によって、表面との衝突(例えば、表面誘導性解離(SID))によって、解離を生じる電子線との相互作用(例えば、電子誘導性解離(EID)、電子捕捉解離(ECD))、熱/黒体赤外線解離(thermal/black body infrared radiative dissociation)(BIRD)、ポストソース分解、もしくはこれらの組み合わせによるものであり得る。上記セットのメンバー間を区別するために使用され得る質量示差的タグもしくは質量示差的標識の娘イオンは、上記質量示差的タグもしくは質量示差的標識のレポーターイオンとして言及され得る。
【0039】
語句「同重体標識」、「同重体タグ」および「同重体標識試薬」は、本明細書で交換可能に使用される。語句「同重体標識のセット」、「同重体タグのセット」および「同重体標識試薬のセット」は、交換可能に使用され、例えば、上記セットのメンバー(個々の「同重体標識」、「同重体タグ」、もしくは「同重体標識試薬」)が、同一の質量を有するが、上記セットの各メンバーが、イオンフラグメント化(例えば、衝突誘導性解離(CID)、光誘導体解離(PID)などによって)に供される際に、異なる娘イオンシグナルを生成し得る試薬もしくは化学部分に言及する。同重体タグのセットは、式(I)もしくは式(II)の化合物、またはその塩形態もしくは水和物形態を含む。上記セットのメンバー間を区別するために使用され得る同重体タグの娘イオンは、上記同重体立つもしくは荷電した分析物のレポーターイオンであり得る。同重体タグのセットは、ケトン化合物もしくはアルデヒド化合物を標識するために使用され、実質的にクロマトグラフィーによって区別不能であるが、CID後にシグナチャーイオンを生じる標識された化合物を生成する。質量標識のセットの上記個々のメンバーの質量は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。上記個々の同位体置換が同じである場合、上記質量は同一であり得る。上記セットの特異的標識へと組み込まれる重元素もしくは軽元素について個々の原子を選択する際の差異はまた、上記同位体富化される置換基の特異的原子重量に基づいて、質量差を生じ得る。
【0040】
本明細書で使用される場合、「同位体富化される」とは、化合物(例えば、標識試薬)が、1種以上の重原子同位体(例えば、安定な同位体(重水素、13C、15N、18O、37Cl、もしくは81Brが挙げられるが、これらに限定されない))で合成によって富化されたことを意味する。同位体富化は、100%有効ではないので、儒家の状態がより低い上記化合物の不純物が存在し得、これらは、より低い質量を有する。同様に、過剰富化(望ましくない富化)が原因で、および天然の同位体存在量の変動が原因で、より多量の不純物が存在し得る。
【0041】
本明細書で使用される場合、「天然の同位体存在量」とは、存在している同位体が地球上に優勢であるかに基づいて、化合物において見いだされる1種以上の同位体のレベル(もしくは分布)に言及する。例えば、生きている植物材料から得られる天然の化合物は、代表的には、約0.6% 13Cを含む。
【0042】
用語「置換された」とは、ある分子の1種以上の原子(炭素、窒素、酸素などが挙げられるが、これらに限定されない)上の水素を置換している置換基を有する基を記載することが意図される。置換基としては、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルコキシル、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノが挙げられる)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドが挙げられる)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族もしくはヘテロ芳香族基が挙げられ得る。よって、語句「本明細書に記載されるような置換基」などは、上記の置換基のうちの1種以上もしくはこれらの組み合わせに言及する。
【0043】
用語「アルキル」とは、飽和した脂肪族基を含み、これは、「置換されていないアルキル」および「置換されたアルキル」の両方を含む。このうちの「置換されたアルキル」は、上記炭化水素骨格の1個以上の炭素上の水素を置換している置換基を有するアルキル基に言及する。用語「アルキル」は、直鎖アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルなど)、分枝鎖アルキル基(イソプロピル、tert−ブチル、イソブチルなど)、シクロアルキル(脂環式)基(シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル)、およびシクロアルキル置換されたアルキル基が挙げられる。用語「アルキル」はまた、天然および非天然のアミノ酸の側鎖を含む。
【0044】
「アルキルアリール」もしくは「アラルキル」基は、アリールで置換されたアルキル(例えば、フェニルメチル(ベンジル))である。
【0045】
用語「アリール」とは、5員および6員の単一環の芳香族基、ならびに多環式アリール基(例えば、三環式、二環式(例えば、ナフタレン、アントラセン、フェナントレンなど))を含む。上記芳香族環は、上記に記載されるような置換基で1つ以上の環位置において置換され得る。アリール基はまた、例えば、脂環式環もしくは複素環式環(これは、例えば、多環を形成するように芳香族ではない)と縮合もしくは架橋され得る。
【0046】
用語「アルケニル」とは、長さが類似の不飽和脂肪族基および上記に記載されるアルキルへの考えられる置換を含むが、少なくとも1個の二重結合を含む。例えば、用語「アルケニル」は、直鎖アルケニル基(例えば、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニルなど)、分枝鎖アルケニル基、シクロアルケニル(脂環式)基(シクロプロペニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニル)、アルキルもしくはアルケニル置換されたシクロアルケニル基、およびシクロアルキルもしくはシクロアルケニル置換されたアルケニル基が挙げられる。用語アルケニルは、「置換されていないアルケニル」および「置換されたアルケニル」の両方を含む。そのうちの「置換されたアルケニル」とは、上記炭化水素骨格の1個以上の炭素上の水素を置換している置換基を有するアルケニル基に言及する。
【0047】
用語「アルキニル」とは、長さが類似の不飽和脂肪族基および上記に記載されるアルキルに対する考えられる置換を含むが、これは、少なくとも1個の三重結合を含む。例えば、用語「アルキニル」とは、直鎖アルキニル基(例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、ノニニル、デシニルなど)、分枝鎖アルキニル基、およびシクロアルキルもしくはシクロアルケニル置換されたアルキニル基が挙げられる。用語アルキニルは、「置換されていないアルキニル」および「置換されたアルキニル」の両方を含む。そのうちの「置換されたアルキニル」は、上記炭化水素骨格の1個以上の炭素上の水素を置換している置換基を有するアルキニル基に言及する。
【0048】
用語「アシル」とは、アシル(CHCO−)もしくはカルボニル基を含む化合物および基を含む。用語「置換されたアシル」は、上記水素原子のうちの1個以上を置換している置換基を有するアシル基を含む。
【0049】
用語「アシルアミノ」とは、アミノ基にアシル基が結合されている基を含む。例えば、この用語は、アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイド基を含む。
【0050】
用語「アロイル」とは、カルボニル基にアリールもしくはヘテロ芳香族基が結合された化合物および基を含む。アロイル基の例としては、フェニルカルボキシ、ナフチルカルボキシなどが挙げられる。
【0051】
用語「アルコキシアルキル」、「アルキルアミノアルキル」および「チオアルコキシアルキル」は、上記のように、アルキル基を含み、これは、上記炭化水素骨格の1個以上の炭素を置換している酸素、窒素もしくは硫黄原子(例えば、酸素、窒素もしくは硫黄原子)をさらに含む。
【0052】
用語「アルコキシ」とは、酸素原子に共有結合された、置換されたおよび置換されていないアルキル、アルケニル、およびアルキニル基を含む。アルコキシ基の例としては、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、プロポキシ、ブトキシ、およびペントキシ基を含み、環式基(例えば、シクロペントキシ)を含み得る。
【0053】
用語「アミンオキシ」とは、標的とされたケトン分析物およびアルデヒド分析物に対して、ケトン部分もしくはアルデヒド部分と反応させて、オキシムを生じ得る末端O−NH基を有する標識試薬上の反応性基に言及する。
【0054】
用語「アミン」もしくは「アミノ」は、窒素原子が少なくとも1個の炭素もしくはヘテロ原子に共有結合されている化合物を含む。用語「アルキルアミノ」とは、上記窒素が少なくとも1個のさらなるアルキル基に結合されている基および化合物を含む。用語「ジアルキルアミノ」は、上記窒素原子が少なくとも2個のさらなるアルキル基に結合されている基を含む。用語「アリールアミノ」および「ジアリールアミノ」は、上記窒素がそれぞれ少なくとも1個もしくは2個のアリール基に結合されている基を含む。用語「アルキルアリールアミノ」、「アルキルアミノアリール」もしくは「アリールアミノアルキル」とは、少なくとも1個のアルキル基および少なくとも1個のアリール基に結合されているアミノ基に言及する。用語「アルカミノアルキル(alkaminoalkyl)」とは、同様にアルキル基に結合される窒素に結合されたアルキル、アルケニル、もしくはアルキニル基に言及する。
【0055】
用語「アミド」もしくは「アミノカルボキシ」とは、カルボニルもしくはチオカルボニル基の炭素に結合されている窒素原子を含む化合物もしくは基を含む。この用語は、「アルカミノカルボキシ(alkaminocarboxy)」基を含み、これは、カルボキシ基に結合されたアミノ基に結合された、アルキル、アルケニル、もしくはアルキニル基を含む。それは、カルボニルもしくはチオカルボニル基の炭素に結合されているアミノ基に結合されたアリールもしくはヘテロアリール基を含む、アリールアミノカルボキシ基を含む。用語「アルキルアミノカルボキシ」、「アルケニルアミノカルボキシ」、「アルキニルアミノカルボキシ」、および「アリールアミノカルボキシ」は、アルキル、アルケニル、アルキニルおよびアリール基は、それぞれ、窒素原子に結合され、続いて、カルボニル基の炭素に結合されている基を含む。
【0056】
用語「カルボニル」もしくは「カルボキシ」とは、酸素原子に二重結合で繋がれた炭素を含む化合物および基、ならびにこれらの互変異形態を含む。カルボニルを含む基の例としては、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、アミド、エステル、無水物などを含む。用語「カルボキシ基」もしくは「カルボニル基」とは、アルキル基がカルボニル基に共有結合されている「アルキルカルボニル」基、アルケニル基がカルボニル基に共有結合されている「アルケニルカルボニル」基、アルキニル基がカルボニル基に共有結合されている「アルキニルカルボニル基」、アリール基がカルボニル基に共有結合されている「アリールカルボニル」基のような基に言及する。さらに、上記用語はまた、1個以上のヘテロ原子が上記カルボニル基に共有結合されている基に言及する。例えば、上記用語は、例えば、アミノカルボニル基(ここで窒素原子が上記カルボニル基の炭素に結合されている(例えば、アミド))、アミノカルボニルオキシ基(ここで酸素および窒素原子はともに、上記カルボニル基の炭素に結合されている(例えば、「カルバメート」ともいわれる)基を含む。さらに、アミノカルボニルアミノ基(例えば、尿素)はまた、同様に、ヘテロ原子(例えば、窒素、酸素、硫黄など)および炭素原子に結合されるカルボニル基の他の組み合わせを含む。さらに、上記ヘテロ原子は、1個以上のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、アシルなどの基でさらに置換され得る。
【0057】
用語「エーテル」とは、2個の異なる炭素原子もしくはヘテロ原子に結合された酸素を含む、化合物もしくは基を含む。例えば、上記用語は、「アルコキシアルキル」を含み、これは、別のアルキル基に共有結合されている酸素原子に共有結合されたアルキル、アルケニル、もしくはアルキニル基に言及する。
【0058】
用語「エステル」とは、カルボニル基の炭素に結合されている酸素原子に結合した炭素もしくはヘテロ原子を含む、化合物および基を含む。用語「エステル」は、アルコキシカルボキシ基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、ペントキシカルボニルなど)を含む。上記アルキル、アルケニル、もしくはアルキニル基は、上記で定義されるとおりである。
【0059】
用語「ヒドロキシ」もしくは「ヒドロキシル」とは、−−OHもしくは−−Oを有する基を含む。
【0060】
用語「ヘテロ原子」とは、炭素もしくは水素以外の任意の元素の原子を含む。好ましいヘテロ原子は、窒素、および酸素である。用語「複素環」もしくは「複素環式」とは、1個以上のヘテロ原子を含む、飽和、不飽和、芳香族(「ヘテロアリール」もしくは「ヘテロ芳香族」)の、および多環式の環を含む。上記複素環式環は、置換されていてもよいし、置換されていなくてもよい。複素環式環の例としては、例えば、ベンゾジオキサゾール、ベンゾフラン、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾチオフェン、ベンゾオキサゾール、クロメン、デアザプリン、フラン、インドール、インドリジン、イミダゾール、イソオキサゾール、イソインドール、イソキノリン、イソチアゾール(isothiaozole)、メチレンジオキシフェニル、ナフチリジン(napthridine)、オキサゾール、プリン、ピラン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、キノリン、テトラゾール、チアゾール、チオフェン、およびトリアゾールが挙げられる。他の複素環としては、モルホリノ、ピペラジン(piprazine)、ピペリジン、チオモルホリノ、およびチアゾリジン(thioazolidine)が挙げられる。
【0061】
用語「多環式環」および「多環式環構造」とは、2個以上の環(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリールおよび/もしくはヘテロシクリル)を有する基であって、2個以上の炭素が、2個の隣り合う環に共通する(例えば、上記環は、「縮合環」である)ものを含む。隣接していない原子を介して結合される環は、「架橋」環といわれる。上記多環式環のうちの環の各々は、上記のような置換基で置換され得る。
【0062】
本明細書で使用される場合、用語「塩形態」とは、化合物の塩もしくは化合物の塩の混合物を含む。さらに、化合物の双性イオン形態はまた、用語「塩形態」に含まれる。アミン、もしくは他の塩基性基を有する化合物の塩は、例えば、適切な有機酸もしくは無機酸(例えば、塩酸、臭化水素、酢酸、過塩素酸など)との反応によって、得られ得る。四級アンモニウム基を有する化合物はまた、対アニオン(例えば、クロリド、ブロミド、ヨウ化物、アセテート、ペルクロレートなど)を含み得る。カルボン酸もしくは他の酸性官能基を有する化合物の塩は、上記化合物と適切な塩基(例えば、水酸化物塩基)とを反応させることによって、調製され得る。よって、酸性官能基の塩は、対カチオン(例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなど)を有し得る。
【0063】
本明細書で使用される場合、「水和物形態」とは、化合物もしくは混合物の任意の水和状態、または化合物の1個より多い水和状態に言及する。例えば、本明細書で議論される標識試薬は、半水和物、一水和物、二水和物などであり得る。さらに、本明細書で記載される標識試薬のサンプルは、一水和形態、二水和形態および半水和形態を含み得る。
【0064】
(標識試薬)
本明細書で記載されるのは、上記のように、一般式(I)もしくは一般式(II)の質量示差的標識のセットである。種々の実施形態において、提供されるのは、非塩形態および/もしくは非水和形態における一般式(I)もしくは一般式(II)の同重体標識の塩である。種々の実施形態において、上記標識の質量は、上記非塩形態および/もしくは非水和形態において約0.05 amu未満だけ異なる。提供される標識のセットは、一般式(I)もしくは一般式(II)の2種以上の化合物を含み、ここで上記標識のセットにおける化合物のうちの1種以上は、1個以上の重原子同位体を含む。種々の実施形態において、上記重原子同位体は、各々独立して、13C、15N、18O、33S、もしくは34Sである。
【0065】
式(I)もしくは式(II)の化合物は、広く種々の塩形態および水和形態(モノTFA塩、モノHCl塩、ビスHCl塩、もしくはビスTFA塩、またはこれらの水和物が挙げられるが、これらに限定されない)において提供され得る。式(I)もしくは式(II)のバリエーションは、WO2005/068446(これは、本明細書に具体的に参考として援用され、一般に、iTRAQ試薬として言及されている)において開示されている。
【0066】
種々の実施形態において、上記標識のセットのうちの化合物の1種以上は、2個以上の重原子;3個以上の重原子;および/もしくは4個以上の重原子で同位体富化されている。種々の実施形態において、重原子同位体を組み込んだ製法の標識のセットは、上記同位体が、少なくとも80%同位体純度、少なくとも93%同位体純度、および/もしくは少なくとも96%同位体純度で存在する。
【0067】
上記レポーター基は、米国特許出願公開第2008/0014642 A1号(これは、その全体が本明細書に具体的に参考として援用される)に記載されるように、1種以上の5員、6員もしくは7員の複素環式環から構成され得る。
【0068】
同重体タグのセットのうちの4種の同重体タグのセットは、レポーター部分およびバランス基部分を含み得る。種々の実施形態において、1つ以上のサンプルに由来する1種以上の分析物は、同重体タグで標識され、上記標識された分析物質量は、フィルタにかけられ(例えば、TOF MS、RF Multipole MS、イオン移動性MSなどで)、フラグメント化(例えば、衝突誘導性解離(CID)、光解離など)に供されて、質量分析によって検出され得るレポーターイオンを生じる。
【0069】
(レポーター基およびイオン)
本教示の同重体タグの上記レポーター基部分は、上記標識された分析物が、フラグメント化に供される場合に、標識された分析物からレポーターイオンを生じる基であり得る;実質的に一致した質量および/もしくは質量対電荷比を有するこのレポーターイオンは、質量分析によって決定され得る。荷電した分析物はまた、質量分析による検出のためのレポーター基として機能し得る。従って、上記レポーター基は、上記標識試薬の構成要素であり得るか、または上記分析物自体であり得る。いくつかの実施形態において、同重体タグのセットにおける異なる同重体試薬タグの上記レポーターイオンは、異なる質量および/もしくは質量対電荷比(m/z)を有する。異なるレポーター基、分析物、標準物質もしくはイオンは、異なるタグ間の質量もしくはm/zにおける差異を達成するために、1種以上の重原子同位体を含み得る。例えば、炭素(12C、13C、および14C)、窒素(14Nおよび15N)、酸素(16Oおよび18O)、硫黄(32S、33S、および34S)、および/もしくは水素(水素、重水素およびトリチウム)の重原子同位体は、レポーター基およびイオンの多様な基の調製において使用され得る。
【0070】
上記標識された分析物のイオンは、フラグメント化されて、それによって、検出可能な娘フラグメントイオンを生成する。上記検出された娘イオンシグナルは、例えば、分析物が由来したサンプルを同定するために使用され得る。上記検出された娘イオンシグナルは、例えば、上記サンプル中の分析物の相対的量もしくは絶対的量を決定するために使用され得る。上記絶対的量は、しばしば、濃度および/もしくは量として表される。例えば、サンプル中の標識された分析物の量は、娘イオンシグナルを、他の娘イオン、較正標準物質などのシグナルと比較することによって、決定され得る。いくつかの実施形態において、特定のサンプル中の1種以上の分析物の量のような情報は、各特定のサンプルを標識するために使用される上記同重体タグのレポーター基に対応する上記レポーターイオンと関連させられ得る。上記分析物の正体は、上記異なるレポーターイオンもしくは娘イオンに関する情報と相関して、それによって、1つもしくは複数のサンプルにおいて各標識された分析物の正体および量の決定を促進し得る。
【0071】
上記標識試薬が、異なるレポーター基から構成される場合、上記レポーター基は、固定された電荷を含み得るか、またはイオン化された状態になり得る。種々の実施形態において、固定された電荷を有するか、または塩、塩の混合物において、双性イオン形態において、もしくはこれらの組み合わせにおいて、分析物を標識するために、上記同重体タグを単離および/または使用するために、イオン化され得るレポーター基が利用され得る。上記レポーター基のイオン化は、質量分析器におけるその決定を促進する。イオン化される場合、上記レポーター基は、1つ以上の正味の正電荷もしくは負電荷を含み得る。従って、上記レポーター基は、1個以上の酸性基もしくは塩基性基を含み得る。なぜならこのような基の種々の実施形態は、質量分析器において容易にイオン化され得るからである。例えば、上記レポーター基は、1個以上の塩基性窒素原子(正電荷)もしくは1個以上のイオン化可能な酸性基(例えば、カルボン酸基、スルホン酸基もしくはリン酸基(負電荷))を含み得る。塩基性窒素を含むレポーター基の例としては、置換されたかもしくは置換されていない、モルホリン、ピペリジンもしくはピペラジンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
よって、上記レポーター基は、分析物の分析に代表的な条件下で、実質的にサブフラグメント化しないレポーターイオンを生成するように選択され得る。上記レポーターイオンは、上記レポーター基のアルキルアミドの窒素と上記バランス基との間の結合のフラグメント化を引き起こすように印加される解離エネルギーの条件下で、実質的にサブフラグメント化しない。「実質的にサブフラグメント化」しないレポーターは、上記レポーターイオンのフラグメントが、上記目的の分析物の成功裏の分析に適用される場合に、バックグラウンドノイズを超えて検出するのが困難であるかもしくはできないことを意味する。
【0073】
上記レポーターイオンの質量は、上記目的の分析物および/もしくは上記分析物の予測されるフラグメントのいずれかの質量と比較した場合に異なるように、選択され得る。例えば、特に、タンパク質もしくはペプチドが上記分析物である場合、上記レポーターイオン質量は、任意の天然に存在するアミノ酸もしくはペプチド、または予測されるこれらのフラグメントと比較した場合に異なるように、選択され得る。
【0074】
本明細書に記載される具体的実施形態において、上記親イオンは、同重体タグで標識されたケトステロイドであり、上記娘イオンは、上記同重体タグのレポーターイオンである。よって、所定の同重体標識されたステロイド親イオンのための検出器において測定されるレポーターイオンのイオンシグナルは、「標識されたケトステロイド−レポーターイオン移動シグナル」といわれ得る。同様に、所定の同重体標識された標準化合物のための検出器において測定されるレポーターイオンのイオンシグナルは、「標識された標準物質−レポーターイオン移動シグナル」といわれ得る。また、上記標識が質量バランス基から構成される場合、荷電した分析物のイオンシグナルは、「標識された分析物イオン移動シグナル」として特徴付けられ得る。
【0075】
(バランス基)
種々の実施形態によれば、同位体は、バランス基もしくはバランス部分(例えば、水素、炭素、窒素、酸素、硫黄、塩素、臭素などの同位体)として使用され得る。例示的バランス基もしくはバランス部分はまた、例えば、米国特許出願公開第2004/0219685 A1号(2004年11月4日公開)、同第2004/0219686 A1号(2004年11月4日公開)、同第2004/0220412 A1号(2004年11月4日公開)および同第2010/0112708 A1号(2010年5月6日公開)(これらは全て、それら全体が本明細書に参考として援用される)に記載されるものを含み得る。
【0076】
(適用)
分析され得る上記ケトン分析物化合物もしくはアルデヒド分析物化合物は、広く種々の供給源タイプ(例えば、生理学的流体サンプル、細胞もしくは組織の溶解物サンプル、タンパク質サンプル、細胞培養物サンプル、発酵ブロス培地サンプル、農産物サンプル、動物生成物サンプル、動物飼料サンプル、ヒト消費のための食品もしくは飲料のサンプル、これらの組み合わせなど)に由来し得る。上記サンプルは、異なる供給源、条件、もしくはその両方;例えば、コントロール 対 異なる時点からの(例えば、順序を形成するために)実験サンプル、疾患 対 正常、実験 対 疾患、汚染 対 非汚染など)に由来し得る。生理学的流体の例としては、血液、血清、血漿、汗、涙液、尿、腹腔液、リンパ液、膣分泌物、精液、脊髄液、腹水(ascetic fluid)、唾液、喀痰、乳房滲出液、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
(標識方法)
種々の局面において、本教示は、標識された分析物化合物を形成するために、ケト分析物を標識するための方法を提供する。種々の実施形態において、上記方法は、標識する一般式(I)もしくは一般式(II)の化合物を、ケトン含有化合物と反応させる工程を包含する。具体的には、ケトステロイドを、式Iの標識試薬で誘導体化し、具体的には、MeOH中の10% 酢酸の中で、室温において30分間にわたって図1におけるように標識した。
【0078】
本教示は、天然に生成されたケトステロイドおよび合成ケトステロイドの両方に適用され得る。ケトステロイドの例としては、任意のステロイド、ケトングラフ(ketone graph)を含む代謝産物もしくはその誘導体(例えば、コルチゾールのケト形態、11−デスオキシコルチゾール(化合物S)、コルチコステロン、DHT、テストステロン、エピテストステロン、デスオキシメチルテストステロン(DMT)、テトラヒドロゲストリノン(THG)、エストロン、4−ヒドロキシエストロン、2−メトキシエストロン、2−ヒドロキシエストロン、16−ケトエストラジオール、16α−ヒドロキシエストロン、2−ヒドロキシエストロン−3−メチルエーテル、プレドニゾン、プレドニゾロン、プレグネノロン、プロゲステロン、DHEA(デヒドロエピアンドロステロン)、17OHプレグネノロン、17OHプロゲステロン、17OHプロゲステロン、アンドロステロン、エピアンドロステロン、およびD4A(δ4アンドロステンジオン)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
実施例、図および以下の表に言及すると、ケトステロイド分析物(例えば、テストステロン、アルドステロン(aldosterene)、プレグネノロン、およびプロゲステロン)を標識試薬で標識する例が、示される。これら反応において、上記アミンオキシ部分は、上記ステロイド上の上記ケトンもしくはアルデヒドと反応して、上記標識される化合物上のアノキシム基(anoxime group)を形成し、標識された分析物を生じる。
【0080】
(分析方法)
本明細書に記載されるように、2つ以上のサンプル中の1種以上のケトン化合物もしくはアルデヒド化合物の濃度を決定するため野方法は、異なるサンプルを各サンプルに添加する工程、上記示差的に標識されたサンプルを合わせる工程、およびPDITMを使用して、上記サンプル中の上記分析物化合物のうちの1種以上の濃度を決定する工程によって、提供される。上記サンプルのうちの1つは、標準サンプル(例えば、コントロールサンプル、参照サンプル、既知濃度の化合物を含むサンプルなど)を含み得る。上記方法は、複数サンプルから複数化合物の分析をそのようにして提供し得る。
【0081】
特定の方法は、目的の2つ以上のサンプル中の1種以上のケトン化合物もしくはアルデヒド化合物を、目的の各サンプルに、タグのセットからの異なるタグを添加して、標識されたケトン分析物化合物もしくはアルデヒド分析物化合物の一団を形成することによって、標識する工程を包含する。上記タグのセットからの各タグは、本明細書に記載されるレポーターイオン部分を含み得るか、または上記イオン化された分析物は、上記レポーター基として機能し得る。上記標識されたケトン分析物化合物もしくはアルデヒド分析物化合物のうちの1種以上は、各分析物が得られたか、またはそこに含まれる上記サンプルに対して示差的に標識され得る。標識をケトン化合物もしくはアルデヒド化合物に添加する工程は、上記標識の第1の部分が式Z−R(ここでRは、末端アミンオキシ基であり、Zは、質量レポーター基もしくは質量バランス基である)から構成される1工程反応を含み得る。
【0082】
上記サンプルのうちの各々の部分は、合わせられて、合わされたサンプルを生じ得、その部分は、親−娘イオン移動モニタリングおよび上記伝達されたイオンのうちの1種以上のイオンシグナルを測定することによって分析され得る。上記伝達された親イオンm/z範囲は、上記標識された分析物化合物のm/z値を含み、上記伝達された娘イオンm/z範囲は、上記標識された分析物化合物のタグに対して得られたレポーターイオンのm/z値を含むか、または上記イオン化された分析物自体である。次いで、上記標識された分析物化合物のうちの1種以上の濃度は、上記対応する伝達レポーターイオンもしくは分析物イオンの測定されたイオンシグナルの、標準化合物の1種以上の測定されたイオンシグナルに対する比較に少なくとも基づいて、決定され得る。上記イオンシグナルは、例えば、上記イオンピークの強度(平均、中間(mean)、最大など)、上記イオンピークの面積、もしくはこれらの組み合わせに基づき得る。上記目的の2つ以上のサンプルのうちの1つ以上は、1種以上の上記標準化合物を含む標準サンプルであり得る。
【0083】
ケトン化合物もしくはアルデヒド化合物の濃度は、上記対応する標識されたアルデヒド、ケトン分析物化合物の測定されたシグナル−レポーターイオン移動シグナルを、以下のうちの1つ以上と比較することによって決定され得る:
(i)標準化合物−レポーターもしくは分析物イオン移動についての濃度曲線;および
(ii)上記標識されたケトン分析物化合物もしくはアルデヒド分析物化合物を有する上記組み合わされたサンプル中の標準化合物についての標準化合物−レポーターイオン移動シグナル。
【0084】
PDITMは、第1の質量分離器、およびイオンフラグメント生成機および第2の質量分離器を含む質量分析システムで行われ得る。PDITMスキャンの伝達された親イオンm/z範囲(上記第1の質量分離器によって選択される)は、上記標識された分析物化合物のうちの1種以上のm/z値を含むように選択され、PDITMスキャンの上記伝達された娘イオンm/z範囲(上記第2の質量分離器によって選択される)は、上記伝達された標識された分析物化合物のタグに対応する上記レポーターイオンのうちの1種以上のm/z値を含むように選択される。
【0085】
いくつかの実施形態において、上記標識された分析物の親、娘イオン伝達モニタリング(PDITM)は、トリプル四重極MSプラットフォームを使用して行われる。PDITMについてのさらなる詳細およびその使用は、米国特許出願公開第号2006/0183238 A1方(これは、その全体が本明細書に参考として援用される)に記載される。いくつかの実施形態において、上記アミンオキシ MSタグ化試薬は、MSMSの間に中性子損失を受け、荷電された分析物種であるレポーターイオンを残す。いくつかの実施形態において、上記アミンオキシ MSタグ化試薬は、MSMSの間にタグフラグメントであるレポーターイオンを形成する。
【0086】
上記2つ以上のサンプルに添加された上記タグは、1つの実験的測定内のタグのセットから選択される:(i)異なるサンプル(例えば、コントロールサンプル、処理されたサンプル、サンプルの時間配列)からの複数のアルデヒド分析物化合物もしくはケトン分析物化合物は、比較および/もしくは定量され得る;(ii)複数の濃度測定値が、異なるサンプルに由来する同じケトン化合物もしくはアルデヒド化合物に対して決定され得る;および(iii)臨床的サンプルの異なる単離物は、ベースラインサンプルに対して評価され得る;など。
【0087】
上記合わされたサンプルの少なくとも一部を、PDITMに供する工程は、上記合わされたサンプルの上記一部を、クロマトグラフィーカラム(例えば、LCカラム、ガスクロマトグラフィー(GC)カラム、もしくはこれらの組み合わせ)上に載せる工程、上記クロマトグラフィーカラムからの上記溶出液の少なくとも一部を、親−娘イオン移動モニタリングに供する工程、および上記伝達されたレポーターイオンのうちの1種以上のイオンシグナルを測定する工程を包含する。
【0088】
上記クロマトグラフィーカラムは、2種以上の標識された分析物化合物を分離するために使用され、これら分析物化合物は、上記標識された化合物の分析物部分が異なる。例えば、上記サンプルのうちの1つ以上において見いだされる第1の標識されたアルデヒド化合物もしくはケトン化合物は、上記クロマトグラフィーカラムによって、上記サンプルのうちの1つ以上において見いだされる第2の標識されたケトン分析物化合物から分離される。2種以上の異なる標識された分析物化合物は、上記異なる化合物が、実質的に同時に溶出されないように分離される。このようなクロマトグラフィーによる分離は、複数のサンプル中の複数の化合物の分析を、例えば、化合物に関するクロマトグラフィーによる保持時間を提供することによって、さらに促進し得る。
【0089】
上記標識された分析物化合物のうちの1種以上の濃度を決定する工程で使用される標準化合物の上記1種以上の測定されるイオンシグナルは、多くの方法で提供され得る。種々の実施形態において、1種以上の同位体富化されない標準化合物は、タグで標識され、上記1種以上の標識された標準化合物のうちの1種以上の少なくとも一部は、上記標識された分析物化合物の各々の少なくとも一部と合わされて、合わされたサンプルを生成する;続いて、この和されたサンプルのうちの少なくとも一部が、PDITMに供され、上記伝達されたレポーターイオンのうちの1種以上のイオンシグナルが測定される。
【0090】
上記タグのセットのタグは、1つ以上の標準サンプルに添加されて、1つ以上の標識された標準サンプルを提供する(各標準サンプルは、上記タグによって標識されている1種以上の同位体富化されていない標準化合物を含み、上記1つ以上の標準サンプルに添加されたタグは、上記目的のサンプルに添加されたタグとは異なる)。上記1つ以上の標識された標準サンプルのうちの1つ以上の少なくとも一部は、上記得目的のサンプルの各々の少なくとも一部と合わされて、合わされたサンプルを生成する;次いで、この合わされたサンプルの少なくとも一部は、PDITMに供され、上記伝達されたレポーターイオンのうちの1種以上のイオンシグナルが測定される。
【0091】
上記合わされたサンプル中の上記1種以上の標識された標準化合物のうちの1種以上に対応する上記レポーターイオンもしくは分析物イオンのうちの1種以上の上記測定されたイオンシグナルは、次いで、上記標識された分析物化合物のうちの1種以上の濃度を決定することにおいて使用され得、標準化合物のいくつかの値をプロットすることによって濃度曲線を生成するために使用され得る。よって、標識された分析物化合物の濃度を決定することは、上記対応するレセプターイオンもしくは分析物イオンの測定されたイオンシグナルを、上記合わされたサンプル中の上記1種以上の標識された標準化合物のうちの1種以上に対応する1種以上のレポーターイオンもしくは分析物イオンの測定されたイオンシグナルと比較することに少なくとも基づく。この合わされたサンプルの少なくとも一部を、PDITMに供する工程は、例えば、質量分析器システムへの直接導入;第1に、この合わされたサンプルの少なくとも一部をクロマトグラフィーカラムに載せ、続いて、上記クロマトグラフィーカラムからの溶出物の少なくとも一部を、PDITMに供する工程、および上記伝達されたレポーターイオンのうちの1種以上のイオンシグナルを測定する工程を包含し得る。
【0092】
本明細書で開示されるように、標準化合物に関するPDITMは、第1の質量分離器、ならびにイオンフラグメント生成機および第2の質量分離器を含む質量分析器システムで行われ得る。PDITMスキャンの上記伝達された親イオンm/z範囲(上記第1の質量分離器によって選択される)は、上記標識された標準化合物のうちの1種以上のm/z値を含むように選択され、PDITMスキャンの上記伝達された娘イオンm/z範囲(上記第2の質量分離器によって選択される)は、上記伝達された標準化合物に対応するレポーターイオンもしくは分析物イオンのうちの1種以上のm/z値を含むように選択される。
【0093】
上記標識された分析物化合物のうちの1種以上の濃度を決定することは、以下の両方に基づき得る:(i)上記対応するレポーターイオンもしくは分析物イオンの上記測定されたイオンシグナルを、1種以上の標準化合物の1種以上の濃度曲線に対応する1種以上のレポーターイオンもしくは分析物イオンの測定されたイオンシグナルと比較すること、および(ii)上記対応するレポーターイオンの上記測定されたイオンシグナルを、上記標識されたケトン分析物もしくはアルデヒド分析物と合わせた1種以上の標識された標準化合物に対応する1種以上のレポーターイオンの上記測定されたイオンシグナルと比較すること。同位体富化されていない標準化合物が提供され、第1の濃度を有し、そして上記タグのセットのタグで標識され、これは、合わされたサンプルを生成するために上記標識されたサンプルの各々の少なくとも一部と合わされ、次いで、この合わされたサンプルは、本明細書に記載されるようにさらに分析され得る。
【0094】
本開示は、1つ以上のサンプル中の1種以上のケトン分析物化合物もしくはアルデヒド分析物化合物の濃度を決定するための方法を提供する。上記方法は、1種以上のケトン化合物もしくはアルデヒド化合物を、式(I)もしくは式(II)のタグのセットからの異なるタグで各々標識する工程を包含する。ここでRは、末端アミンオキシ基から構成され、Zは、質量レポーター基もしくは質量バランス基から構成される。上記タグのセットからの各タグの上記Z基がレポーターイオン部分を含む場合、上記標識された分析物化合物の各々の少なくとも一部は、合わされたサンプルを生成するために合わされ得、上記合わされたサンプルの少なくとも一部は、親−娘イオン移動モニタリング(ここで上記伝達された親イオンm/z範囲は、上記標識された分析物化合物のm/z値を含み、上記伝達された娘イオンm/z範囲は、上記標識された分析物化合物のタグに対応するレポーターイオンのm/z値を含む)に供され得、上記伝達されたレポーターイオンのうちの1種以上のイオンシグナルが測定され得;次いで、上記標識された分析物化合物のうちの1種以上の濃度が、上記対応するレポーターイオンの測定されたイオンシグナルを、標準化合物の1種以上の測定されたイオンシグナルと比較することに少なくとも基づいて決定され得る。上記イオンシグナルは、例えば、上記イオンピークの強度(平均、中間(mean)、最大など)、上記イオンピークの面積、もしくはこれらの組み合わせに基づき得る。
【0095】
PDITMは、当該分野で公知の任意の適切な質量分析器(第1の質量分離器、ならびにイオンフラグメント生成機および第2の質量分離器を含む質量分析器システムが挙げられる)で行われ得る。PDITMスキャンの上記伝達された親イオンm/z範囲(上記第1の質量分離器によって選択される)は、上記標識された分析物化合物のうちの1種以上のm/z値を含むように選択され、PDITMスキャンの上記伝達された娘イオンm/z範囲(上記第2の質量分離器によって選択される)は、上記伝達された標識された分析物化合物のタグに対応する上記レポーターイオンのうちの1種以上のm/z値を含むように選択される。
【0096】
上記1種以上のケトン化合物もしくはアルデヒド化合物のサンプルは、質量示差的タグのセットから選択されるタグのうちの1種以上で標識され、その結果、同じ実験的測定内で:(i)異なるサンプル(例えば、コントロール、処理された)に由来する複数のケトン含有化合物もしくはアルデヒド含有化合物が、比較および/もしくは定量され得る;(ii)複数の濃度測定値が、同じサンプル由来の同じケトン化合物もしくはアルデヒド化合物に対して決定され得る;ならびに(iii)臨床的サンプルの異なる単離物が、ベースラインサンプルに対して評価され得る。
【0097】
上記合わされたサンプルのうちの少なくとも一部をPDITMに供する工程は、上記合わせたサンプルを質量分析器システムに、例えば、エレクトロスプレーイオン化(ESI)イオン源を使用する適切な溶液中の上記合わされたサンプルの導入によって、直接導入する工程を包含する。
【0098】
上記合わされたサンプル中の上記1種以上の標識された標準化合物のうちの1種以上に対応する上記レポーターイオンのうちの1種以上の測定されたイオンシグナルは、上記標識された分析物化合物のうちの1種以上の濃度を決定する。上記のように、上記標識が、質量バランス基および上記アミンオキシ基から構成される場合、上記荷電された分析物は、上記レポーター基として作用する。標識された分析物化合物の濃度を決定することは、上記対応するレポーターイオンもしくは分析物イオンの測定されたイオンシグナルを、上記合わされたサンプル中の上記1種以上の標識された標準化合物のうちの1種以上に対応する1種以上のレポーターシグナルもしくは分析物イオンの測定されたイオンシグナルに比較することに少なくとも基づく。この合わされたサンプルのうちの少なくとも一部をPDITMに供する工程は、例えば、質量分析器システムへの直接導入;第1に、この合わされたサンプルのうちの少なくとも一部をクロマトグラフィーカラムに載せる工程、続いて、上記クロマトグラフィーカラムからの溶出液のうちの少なくとも一部をPDITMに供する工程、上記伝達されたレポーターイオンもしくは分析物イオンのうちの1種以上のイオンシグナルを測定する工程;またはこれらの組み合わせを包含し得る。
【0099】
上記標識された分析物化合物のうちの1種以上の濃度を決定する工程は、上記対応する分析物イオンもしくはレポーターイオンの測定されたイオンシグナルを、1種以上の標準化合物のうちの1種以上の濃度曲線に対応する1種以上のレポーターイオンの測定されたイオンシグナルと比較することを含む。同位体富化されない標準化合物が提供され、第1の濃度を有し、タグのセットからのタグで標識される。上記標識された標準化合物のうちの一部は、親−娘イオン移動モニタリング(ここで上記伝達された親イオンm/z範囲は、上記標識された標準化合物のm/z値を含み、上記伝達された娘イオンm/z範囲は、上記標識された標準化合物のタグに対応するレポーターイオンもしくは分析物イオンのm/z値を含む)に供され、上記レポーターイオンもしくは分析物イオンのイオンシグナルが、測定される。上記標識する工程、ならびにPDITMおよび上記伝達されたレポーターイオンもしくは分析物イオンのイオンシグナルを測定する工程は、上記第1の濃度とは異なる少なくとももう1種の標準化合物濃度について反復されて、上記標準化合物の濃度曲線を生成する。
【0100】
本教示は、ケト官能基もしくはアルデヒド官能基を含むケトステロイドおよび分析物を定量するための方法を提供する。いくつかの実施形態において、上記方法は、誘導体化化学および液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析(LC/MSMS)ワークフローを含み得る。上記方法は、永久的に荷電したアミンオキシ試薬を使用する工程を包含し得、上記試薬は、ケトステロイドの検出限界を有意に増大させる。使用され得る例示的なアミンオキシ試薬は、式(I)のものを含む:
【0101】
【化5】


ここでYは、これら部分のうちのいずれか1種であり得る:
【0102】
【化6】


【0103】
いくつかの実施形態において、nは、2〜50、もしくは2〜20、もしくは2〜10、もしくは2〜6、もしくは3〜8の整数である。いくつかの実施形態において、nは、3もしくは4であり得る。いくつかの実施形態において、Yは、これら4種のうちのいずれかとは異なる荷電された部分であり得る。Yは、永久的に荷電した部分、例えば、永久的に荷電したリン含有部分もしくは窒素含有部分であり得る。いくつかの実施形態において、Yは、上記に示されるものとは異なる荷電された部分であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるアミンオキシ試薬のうちの1種以上を含むキットが、提供され得、例えば、式(I)の1種以上の永久的に荷電したアミンオキシ化合物を含む。
【0104】
上記方法は、ケトステロイドの定量的分析のためのMRMワークフローを使用する工程を包含する。上記試薬は、個々のケト化合物もしくはケト化合物の一団の定量的分析のために同位体コード化され得る。低衝突エネルギーでの上記MS/MSフラグメント化は、非常にクリーンであり、1種の優勢なシグナチャーイオンを生じる。上記シグナチャーイオンは、上記アミンオキシ誘導体化生成物からの中性子損失から生じ得る。上記MRM移動は、Q1における上記誘導体化ステロイドの質量およびQ3における上記中性子損失フラグメントの質量であり得る。本教示は、誘導体化を介してバックグラウンドノイズを顕著に低下させ、改善された特異性を生じるQ3フラグメントの改善された感度および標的化された選択を生じるためのプロセスを提供する。
【0105】
種々の実施形態によれば、本教示は、生物学的サンプルの複数工程クリーンアップおよびクロマトグラフィーによる分離と関連した問題なしに、バックグラウンドノイズを低下させるかもしくは排除する方法を提供する。いくつかの実施形態において、上記方法は、永久的に荷電したアミンオキシ試薬(QAO)でのケトステロイドの誘導体化化学、ならびに上記試薬および上記誘導体化されたステロイドのバックグラウンドの両方を含む標的化されたフラグメント化を利用することによって、バックグラウンドノイズを排除する。容易にイオン化された/イオン化可能な分子での誘導体化は、上記分析物に対する感度を増大させるESI MS/MSにおいてより良好なイオン化効率を生じる。上記Q3シグナチャーイオンであるフラグメントイオンが、構造的フラグメントもしくは上記試薬の一部と結合した誘導体化試薬を含むように選択される場合、上記感度および選択性の両方が、増強され得る。化合物と正確に同じQ1/Q3移動が検出される機会およびバックグラウンドノイズ干渉を作り出すことは、非常に低い。類似のQ1/Q3 MRM移動の可能性のみが、上記生物学的サンプル中の同重体ケトステロイドの存在である。上記同重体ケトステロイドは、干渉として出現するために、上記分析物と同じフラグメント化パターンを共有しなければならない。このような稀な状況において、上記同重体ケトステロイドは、上記分析物からクロマトグラフィーにより分離され得る。
【0106】
種々の実施形態によれば、上記試薬設計の付加された利点は、MSMSフラグメント化に対して、上記試薬は、フラグメントイオン、すなわち、上記誘導体化分析物上に電荷を有するQ3シグナチャーイオンを生成し、このことは、MS3分析に反応しやすくすることである。いくつかの実施形態において、上記方法は、ケト官能基もしくはアルデヒド官能基を有する分子のクラスに対して実行され得、その検出は、MS/MSによる超高感度分析のために誘導体化から利益を得ることができる。
【0107】
本教示は、ケトステロイドおよびケト官能基を含む分子のクラスの高感度かつ特異的分析を提供する。本教示は、より高いシグナル 対 ノイズ比と、MS/MSにおける非常に低いバックグラウンドノイズとを提供する。
【0108】
(キット)
本発明は、ケトン分析物化合物もしくはアルデヒド分析物化合物の分析のためのキットを提供する。上記キットは、1種以上の標識(2種以上の同重体タグおよび1種以上の試薬)、容器、酵素、緩衝液ならびに/もしくは使用説明書のセットを含む。本教示のキットは、支持体の1つ以上のセットを含み、各支持体は、切断可能なリンカーを介して上記支持体に共有結合された異なる同重体標識化合物を含む。切断可能な連結の例としては、化学的にもしくは光分解的に切断可能なリンカーが挙げられるが、これらに限定されない。上記支持体は、異なるサンプルと反応させられ得、それによって、サンプルの上記分析物が、上記それぞれの支持体と関連づけられた上記同重体タグで標識される。異なるサンプルに由来するケトン分析物は、異なる支持体と接触させられ得、従って、異なるレポーター/リンカー組み合わせで標識され得る。
【0109】
種々の実施形態によれば、上記キットは、複数の異なるアミンオキシタグ化試薬(例えば、本明細書に記載されるような試薬のセット)を含み得る。上記キットは、複数の異なるケト分析物もしくはアルデヒド分析物、例えば、複数の異なるステロイドもしくはケトステロイドを分析するように構成され得、上記標識は、複数の異なるそれぞれのタグ化試薬、例えば、分析物の各異なるタイプに対する異なるタグ化試薬で各々を標識する工程を包含し得る。分析されかつキットが検出するように構成され得る分析物は、ケト化合物もしくはアルデヒド化合物、例えば、ステロイドもしくはケトステロイドを含み得る。本教示の種々の実施形態によれば、1種以上のケトン分析物もしくはアルデヒド分析物をタグ化するための1種以上のアミンオキシMSタグ化試薬を含むキットが提供される。上記アミンオキシMSタグ化試薬は、本明細書に記載される構造のうちの1つを有する化合物を含み得る。
【0110】
上記キットは、公知のケトン化合物もしくはアルデヒド化合物、公知のステロイド、公知のケトステロイド、もしくはこれらの組み合わせを含む標準物質を含み得る。上記標準物質は、公知の化合物の既知濃度を含み得る。いくつかの実施形態において、上記キット中に含まれる上記アミンオキシMSタグ化試薬は、同重体タグのセットからの1種以上の同重体タグを含み得る。いくつかの実施形態において、上記キットは、同重体タグのセットからの複数の異なる同重体タグを含み得る。いくつかの実施形態において、上記キット中に含まれる上記アミンオキシMSタグ化試薬は、永久的に荷電したアミンオキシ試薬のセットからの1種以上の永久的に荷電したアミンオキシ試薬を含み得る。いくつかの実施形態において、上記キットは、永久的に荷電したアミンオキシ試薬タグのセットからの複数の異なる永久的に荷電したアミンオキシ試薬タグを含み得る。
【0111】
上記キットはまた、上記分析物を標識するための説明書、例えば、紙の説明書もしくは電子ファイルに(例えば、コンパクトディスクに)フォーマットされた説明書を含み得る。上記説明書は、アッセイを行うためのものであり得る。いくつかの実施形態において、上記キットは、サンプルが添加される必要のある単一の容器中の同質のアッセイ(homogeneous assay)を含み得る。上記キットの他の構成要素は、緩衝液、他の試薬、1種以上の標準物質、混合容器、1種以上の液体クロマトフラフィーカラムなどを含み得る。
【0112】
いくつかの実施形態において、複雑な生物学的マトリクスからケトステロイドの高感度定量、例えば、低pg/mL濃度の範囲での検出を可能にするケトステロイド分析キットが、提供される。
【0113】
(質量分析器)
広く種々の質量分析器システムは、PDITMを行うために本教示において使用され得る。適切な質量分析器システムは、イオンフラグメント生成器が2個の質量分離器の間のイオン飛行経路に配置された、2個の質量分離器を含む。適切な質量分離器の例としては、四重極、RFマルチポール、イオントラップ、飛行時間(time−of−flight)(TOF)、およびタイミングを合わせたイオン選択器と関連したTOFが挙げられるが、これらに限定されない。適切なイオンフラグメント生成機としては、衝突誘導性解離(CID,衝突補助解離(CAD)ともいわれる)、光誘導性解離(PID)、表面誘導性解離(SID)、ポストソース分解、電子線との相互作用(例えば、電子誘導性解離(EID)、電子捕捉解離(ECD))、熱放射との相互作用(例えば、熱/黒体赤外線解離(BIRD))によって、ポストソース分解、もしくはこれらの組み合わせの原則に従って操作するものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0114】
質量分析器のための適切な質量分析器システムの例としては、トリプル四重極、四重極−直線イオントラップ(例えば、4000 Q TRAP.RTM.(登録商標) LC/MS/MS System、Q TRAP.RTM.(登録商標) LC/MS/MS System)、四重極TOF(例えば、QSTAR.RTM.(登録商標) LC/MS/MS System)、およびTOF−TOFのうちの1つ以上を含むものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0115】
種々の実施形態において、上記質量分析器システムは、MALDIイオン源を含む。種々の実施形態において、上記合わされたサンプルのうちの少なくとも一部は、MALDIマトリクス材料と混合され、MALDIイオン化源付きの質量分析器を使用して、親−娘イオン移動モニタリングに供される。種々の実施形態において、上記合わされたサンプルのうちの少なくとも一部は、クロマトグラフィーカラム上に載せられ、上記溶出液のうちの少なくとも一部は、MALDIマトリクス材料と混合され、MALDIイオン化源つきの質量分析器を使用して、親−娘イオン移動モニタリングに供される。
【0116】
上記質量分析計システムは、親イオンを選択し、そのフラグメント娘イオンを検出するためのトリプル四重極質量分析計を含み得る。この実施形態において、上記第1の四重極は、上記親イオンを選択する。上記第2の四重極は、複数の低エネルギー衝突が、上記親イオンのうちのいくらかをフラグメントにすることを生じるように十分高い圧力および電圧で維持される。上記第3の四重極は、上記選択された娘イオンを検出器に伝達するように選択される。種々の実施形態において、トリプル四重極質量分析計は、上記イオン源と上記トリプル四重極との間に配置されたイオントラップを含み得る。上記イオントラップは、イオン(例えば、全てのイオン、特定のm/z範囲を有するイオンなど)を集め、充填時間(fill time)後、末端電極(end electrode)にパルスを印加して、上記選択されたイオンが上記イオントラップを出るようにすることによって、上記選択されたイオンを上記第1の四重極に伝達するように設定され得る。所望の充填時間は、例えば、イオン数、上記イオントラップ内の電荷密度、異なるシグナチャペプチドの溶出間の時間、デューティーサイクル、励起状態種もしくは多荷電イオンの減衰率、またはこれらの組み合わせに基づいて決定され得る。
【0117】
トリプル四重極質量分析計における四重極のうちの1つ以上は、直線状イオントラップとして(例えば、末端電極を付加して、上記四重極内の実質的に細長い円筒形の捕捉容積を提供することによって)構成可能であり得る。種々の実施形態において、上記第1の四重極は、上記親イオンを選択する。上記第2の四重極は、複数の低エネルギー衝突が上記親イオンのうちのいくつかをフラグメントにすることを生じるように十分に高い衝突ガス圧および電圧において維持される。上記第3の四重極は、フラグメントイオンを捕捉するように選択され、充填時間後に、上記選択された娘イオンを、末端電極にパルスを印加して、上記選択された娘イオンが上記イオントラップを出ることを可能にすることによって、検出器に伝達する。所望の充填時間は、例えば、フラグメントイオン数、上記イオントラップ内の電荷密度、異なるシグナチャペプチドの溶出間の時間、デューティーサイクル、励起状態種もしくは多荷電イオンの減衰率、またはこれらの組み合わせに基づいて決定され得る。
【0118】
上記質量分析計システムは、親イオンを選択し、そのフラグメント娘イオンを検出するための2つの四重極質量分離器およびTOF質量分析計を含み得る。種々の実施形態において、上記第1の四重極は、上記親イオンを選択する。上記第2の四重極は、複数の低エネルギー衝突が上記イオンのうちのいくつかをフラグメントにすることを生じるように十分に高い圧力および電圧で維持され、上記TOF質量分析計は、例えば、上記目的の娘イオンおよび生成された抽出されたイオンクロマトグラムを含む質量範囲を超えるイオンをモニタリングすることによって、上記検出器から離れた上記選択された娘イオンのタイムウインドウの外側に出現するイオンを偏向させることによって、上記検出器を上記選択された娘イオンの到着タイムウインドウへゲート制御することによって、またはこれらの組み合わせによって、検出のために娘イオンを選択する。
【0119】
上記質量分析計システムは、2つのTOF質量分析器およびイオンフラグメント生成機(例えば、CIDもしくはSID)を含み得る。種々の実施形態において、上記第1のTOFは、上記イオンフラグメント生成機の中に導入するために、上記親イオンを(例えば、上記フラグメント生成機から離れた上記選択された親イオンのタイムウインドウの外側に出現するイオンを偏向することによって)選択し、上記第2のTOF質量分析計は、例えば、上記目的の娘イオンおよび生成された抽出されたイオンクロマトグラムを含む質量範囲を超えるイオンをモニタリングすることによって、上記検出器から離れた上記選択された娘イオンのタイムウインドウの外側に出現するイオンを偏向することによって、上記検出器を、上記選択された娘イオンの到着タイムウインドウへと時間ゲート制御することによって、またはこれらの組み合わせによって、検出のために、上記娘イオンを選択する。上記TOF分析器は、直線状であってもよいし、反射式分析器(reflecting analyzer)であってもよい。
【0120】
上記質量分析計システムは、目的の親イオンを選択するための時限式イオン選択器を有する第1の無電界ドリフト領域を含むタンデムMS−MS機器、娘イオンを生成するためのフラグメント化チャンバ(もしくはイオンフラグメント生成機)、および検出するために選択された娘イオンを伝達するための質量分離器を含み得る。種々の実施形態において、上記時限式イオン選択器は、パルス印加イオン偏向器を含む。種々の実施形態において、上記イオン偏向器は、パルス印加偏向器として使用され得る。上記質量分離器は、イオン偏向器を含み得る。種々の実施形態において、上記フラグメント化チャンバは、イオンのフラグメント化を引き起こし、抽出を遅らせるように設計された衝突セルである。種々の実施形態において、上記フラグメント化チャンバはまた、飛行時間型質量分析器による上記フラグメントイオンの分析のための遅延型抽出イオン源として働き得る。
【0121】
いくつかの実施形態において、イオン化は、構造的に特異的なフラグメントイオンおよびQ3 MRMイオンを生成するために使用され得る。上記標識試薬は、上記構造的に特異的なフラグメントイオンに全体的にもしくは部分的に含まれ得る。上記方法は、上記Q3 MRMイオンに対する選択性および特異性の両方を提供し得る。いくつかの実施形態において、イオン化は、Q3において選択され得、次いで、構造的に特異的なイオンを生成するためにフラグメント化される優勢な中性子損失フラグメントイオンを生成するために使用され得る。これらフラグメントイオンは、MS3といわれる手順において同定および定量のために使用され得る。
【実施例】
【0122】
本発明の局面は、以下の実施例に鑑みてさらに理解され得る。この実施例は。網羅的ではなく、本教示の範囲を限定するとしてはいかようにも解釈されるべきではない。
【0123】
(実施例1-ケトステロイドのMALDI分析)
標識試薬の代表的合成(図2を参照のこと)は、以下のように行われる:
【0124】
【化7】

N−(2−N−Boc−ヒドロキシアミノエチル)フタルイミド: DMF(25mL)中のNaH(2.02g,50.56mmol,油中60%分散)の懸濁物に、DMF(25mL)中のBocNHOH(6.12g,133.15mmol)の溶液を、周囲温度で、窒素雰囲気下で添加漏斗から滴下した。添加完了後、上記反応混合物を、かすかに黄色の溶液が形成された場合に、55〜60℃へと20分間にわたって加熱した。次いで、DMF(50mL)中のN−(2−ブロモエチル)フタルイミド(7.79g,30.64mmol)の溶液を、上記反応混合物に20分間にわたって滴下し、上記反応を、55〜60℃においてさらに2時間にわたって続けた。減圧下でのDMFの除去後に、上記油状物を、EtOAc(300mL)と0.5M HCl(150mL)との間で分割した。EtOAc層をブライン(50mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、油状物へと濃縮した。上記油状物をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン中40〜70% EtOAc、330g シリカカラム)によって精製して、1.65g(18%)の所望の生成物(N−(2−N−Boc−ヒドロキシアミノエチル)フタルイミドを得た。ヘキサン中30% EtOAcにおいてR=0.42、シリカプレート;ES−MS, calculated MH = 307.1, found 307.1)。
【0125】
【化8】

N−Boc−ヒドロキシアミノエチル−アミン: N−(2−N−Boc−ヒドロキシアミノエチル)フタルイミド(1.65g,5.38mmol)を、20時間にわたる周囲温度において、THF(1M,25mL,25mmol)中のNHNH溶液で処理した。十分に換気された条件下で溶媒および揮発性物質を除去した後、上記固体残渣を、100mLのジクロロメタンで処理し、十分に混合し、濾過した。上記固体ケーキを、ジクロロメタン(25mL)で2回洗浄した。合わせたジクロロメタン濾液を、無色油状物へと濃縮した。上記油状物を、フラッシュクロマトグラフィー(120g シリカカラム,9:1:0.1 ジクロロメタン−MeOH−EtN)によって精製した。上記生成物を含む画分(ニンヒドリン染色)を合わせ、濃縮して、白色固体を得、これを、6M NaOH(50mL)とジクロロメタン(200mL)との間で分割した。ジクロロメタン層をNaSOで乾燥させ、濃縮して、所望の生成物であるN−Boc−ヒドロキシアミノエチル−アミンを油状物として得た(0.29g,31%)。ES−MS, calculated MH = 177.2, found 177.2。
【0126】
【化9】

Pip−AO−117およびPip−AO−114: THF(1mL)中のiTRAQ−114およびiTRAQ−117試薬(0.73mmol)の溶液に、THF(2mL)中のN−Boc−ヒドロキシアミノエチル−アミン(0.57mmol)の溶液、続いて、EtN(3.7mmol)を添加し、混合し、50℃において1時間にわたって加熱した。TLC(R=0.7,8.5:1:0.1 ジクロロメタン−MeOH−EtN。シリカプレート)は、1つの生成物の形成を示し、これを、フラッシュクロマトグラフィー(12g シリカカラム,9:1:0.1 ジクロロメタン−MeOH−EtN)によって精製した。純粋生成物を含む画分を濃縮し、ジオキサン(3ml)中の4M HClで45分間にわたって処理した。ジオキサンのエバポレーション後に、上記油状物をジクロロメタンで粉砕して、pip−AO−117およびpip−AO−114を白色固体として得た(66〜70% 収率)。ES−MS, calculated MH = 221.2, found 221.2。当業者によって容易に認識されるように、試薬115および試薬116、ならびに上記同位体富化されない種113の合成を、類似の合成経路によって生成する。
【0127】
MALDI-MRM機器を使用すると、低分子の高度に選択性の定量は、1サンプルあたり5秒未満の速度で行われ得、上記低質量範囲における上記MALDIマトリクスにより作り出されるバックグラウンドノイズを排除する。
【0128】
図1、上記化学構造および分子量を参照すると、特定のケトステロイドが示される。上記標識している化合物および本明細書に記載される方法を決定するために、4種の代表的なステロイドを選択した(図1):テストステロン(Te)、アルドステロン(AL)、プレグネノロン(Preg)およびプロゲステロン(Prog)。プロゲステロンを、内部標準物質(IS)として使用した。上記のように、誘導体化手順は、オキシム(X)を生じるためにアルデヒドもしくはケトンとのアミノオキシ(animooxy)(R)反応に依拠し、これは、標識されたケトン化合物もしくはアルデヒド化合物を生じる。
【0129】
誘導体化手順: Te、ALおよびPreg(各々0.1mg/mL)の混合物を、MeOH+10% AcOH中の上記試薬と反応させ、30分間にわたって室温でインキュベートした。上記反応系の体積は、100μLであり、ステロイド:試薬の比は、1:500当量であった。Progを、類似の条件下で別個に誘導体化した。上記誘導体化したステロイドを、MALDIプレートスポッティングの前に、ACN/H2O中に希釈した。上記ステロイドサンプル(S)を、過剰のマトリクス(M)と混合し、MALDIプレート上で乾燥させた。上記プレートを、上記イオン源におけるサンプルステージ上に載せた。レーザービームは、マトリクス中性子(M)、マトリクスイオン(MH)+、(MH)−、およびサンプル中性子(S)を生成した。MALDIプレートスポッティング: 上記ステロイドサンプルを、ACN/H2O 1/1 V/V +0.1% TFA(10mg/mL)中に溶解した上記MALDIマトリクスであるα−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸(CHCA)と混合した。0.75μLを、各ウェルにスポットし、風乾した。MALDI機器およびMRM条件: 分析を、低分子の分析のために最適化された高反復レーザーであるFlashLaserTM源付きの4000 QTRAP(登録商標)(ABI;Foster City,California)で行った。上記化合物依存性のおよびMRMパラメーターを、表1に記載する。サンプル分子を、マトリクスイオンからのプロトン転移によってイオン化する:MH++S→M+SH+,MH−+SaX+SH−。上記FlashLaserTM源(抗反復レーザーを備えている)は、標的プレート上にスポットされたサンプルから超高速シグナルを生成する。
【0130】
【表1】

図2は、式Z−R(ここでRは、本明細書に記載される末端アミンオキシO−NHであり、Zは、上記質量レポーター基である)を有する114、115、116および117と指定される試薬の化学構造である。
【0131】
図3A〜3Dは、誘導体化されていないケトステロイドおよび誘導体化されたケトステロイドの生成物イオンスキャンである。A:テストステロン(両方についてCE=30eV);B:プロゲステロン(それぞれ、CE=35eVおよび32eV);C:プレグネノロン(それぞれ、CE=40eVおよび35eV);およびD:アルドステロン(両方についてCE=35eV)。図3A、図3B、図3Cおよび図3Dの各々において誘導体化されたケトン化合物および誘導体化されていないケトン化合物のスペクトルの比較は、ハイスループット条件下で達成された感度および特異性の増大を示す。同様に、図4は、本明細書に記載される標識および分析方法、ならびにストラテジーに関して測定された誘導体化された、および誘導体化されていない、アルドステロン、テストステロンおよびプレグネノロンの三連のMALDI−MRMピークを示す。
【0132】
図5は、本明細書に記載される種の質量分析のために生成された0.07〜312pg/スポットにおける、テストステロン、アルドステロンおよびプレグネノロンの濃度較正曲線を示す。
【0133】
【表2】

中性ケトステロイドの誘導体化は、それらのMALDI−MRM感度を有意に増強することが判明した。図3A〜3Dおよび図4を参照すると、前駆対イオンとしての単純化したMS/MSフラグメント生成を効率的に生じた改善されたイオン化は、唯一の主要な生成物に変換される。機器の革新(MALDI−MRMのための高反復レーザー)と、化学(容易にイオン化可能な部分の導入)の組み合わせは、強力なハイスループット、高感度、および公徳異性のステロイド分析のための方法を生じた。この研究において調査した上記ケトステロイドを、<5秒以内の低fg/スポット濃度において同時に検出し得た。濃度曲線は、>3桁を超えてR2>0.99を生じた。MALDIスポッティングおよびサンプルクリーンアップは、慣用的な臨床的スクリーニングおよび標的分析のために容易に自動化される。
【0134】
(実施例2-ケトステロイドの誘導体化およびLC−MSを介する検出)
上記のように、ケトステロイドの上記ケトン基を、式Z−Rの標識と反応することによって、オキシム官能基(X)へと誘導体化する。もっぱらプロトン化される分子イオンは、ナトリウム(Na)もしくはカリウム(K)の付加なしに形成される。上記誘導体化されたケトステロイド分析物のフラグメント化は、上記レポーター基から生成される117Daの優勢なシグナチャーイオンを有する単純化されたスペクトルを生じる。図7を参照すると、本明細書に記載される誘導体化手順は、定量のための内部標準か物質として重いバージョンの使用を利用する。図7は、本明細書に記載されるケトン基もしくはアルデヒド基を含むステロイドの定量的分析のための単純なフローチャートである。最初に、上記分析物および標準物質を、アミンオキシ化学によって誘導体化し、続いて、上記標識された分析物およびサンプルを混合する。上記混合物を、例えば、LCによる(例えば、HPLCによる)クロマトグラフィー分離に供し、続いて、MRMによる質量分析に供する。定量は、1種以上の分析物および標準物質に由来するシグナルの相対的測定および絶対的測定によって可能にされる。また、Zは、質量バランス基(例えば、図6に示される四級アミン)含み得、上記正電荷は、質量分析によって検出されるように上記レポーター基として機能する上記分析物に移される。Rは、上記末端アミンオキシ部分を保持する。
【0135】
種々の実施形態によれば、上記アミンオキシMSタグ化試薬は、複数のアッセイにおいて相対的定量および絶対的定量のために使用され得る。いくつかの実施形態によれば、上記アミンオキシMSタグ化試薬は、2つの部分、3つの部分、4つの部分および他の複数部分からなるアッセイのために使用され得る。定量のための例示的方法は、図7を参照して示され、これは、2部分からなるアッセイのための絶対的定量かを図示する。図7に記載されるように、上記方法は、既知の分析物(この場合は、ステロイド)を含む第1のサンプルを標識する工程で始まり得る。上記第1のサンプルは、例えば、既知濃度の公知のステロイドを含む標準物質であり得る。上記第1のサンプルは、アミンオキシタグのセットからの第1のアミンオキシタグで標識され得る。次に、未知の濃度において未知のステロイドを有する第2のサンプルは、アミンオキシタグの同じセットからの第2のアミンオキシタグで標識され得る。次いで、上記標識された第1のサンプルは、上記標識された第2のサンプルと合わされて、混合物を形成し得る。
【0136】
混合に続いて、上記混合物は、分離(例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分離、もしくは逆相カラム上での液体クロマトグラフィー分離)に供され得る。上記標識されたステロイドは、上記カラムでのそれらの異なりかつ別個の保持時間に起因して、別個の時間で上記カラムから溶出し得る。上記逆相カラムから溶出されたピークは、上記第1のサンプルに由来する標識されたステロイドを含むピーク、および上記第2のサンプルに由来する上記標識されたステロイドを含むピークを含む。次に、上記カラムから溶出された各ピークは、親 娘イオン移動モニタリング(PDITM)に供され得る。上記第1のサンプルから生成された上記レポーターシグナルのピーク面積のシグナル強度の、上記第2のサンプルから生成されたものに対する比は、上記試験サンプル中のステロイドの相対的濃度を与える。上記標識された標準物質の濃度が既知である場合、上記サンプル中の分析物の特定の濃度は、図7に示されるように、決定され得る。
【0137】
誘導体化されたおよび誘導体化されていないテストステロン、プロゲステロン、エピアンドロステロン、プレグネノロンおよびプレドニゾロンから構成される8種のケトステロイドの一団を、逆相C8カラム(Luna C8,5μM,phenomenex)および10分間にわたる水/ギ酸勾配を使用してLC−MS分析に供した。質量分析は、MRMモードにおいてAPI 4000 QTRAPを使用した。誘導体化は、30分間にわたって室温で、MeOH中の10% 酢酸中であった。
【0138】
図8A〜8Bを参照すると、誘導体化されていないケトステロイドは、数種の間でのイオン流を分布させる蛍光にある。コルテキソロンの例が示され(図8A)、ここで強いNa+付加物が観察される。ケトステロイドの生成物イオンスペクトルは、非常に複雑なフラグメント化パターンを生成し、誘導体化されていないコルテキソロンの[M+H]+および[M+Na]+の両方は、スペクトル全体にわたって分布したフラグメントイオンを生じた(図8Aおよび図8B)。
【0139】
図8Bを参照すると、対照的に、誘導体化したケトステロイドのLC−MS分析は、強い[M+H]+とわずかなNa付加物もしくはK付加物を生じた(図3)。生成物イオンスペクトルは、117Daの誘導体化された分析物からの強いシグナチャで単純化した。上記ステロイド骨格からのフラグメント化はなお存在するが、上記イオン流の僅か数%を示した。
【0140】
同様に、図9は、誘導体化した形態(a)および誘導体化されていない形態(b)の、1pgのテストステロン/エピテストステロンのMRM分析を示す。上記誘導体化手順からの感度改善は、テストステロンおよびエピテストステロンについて示される。1pgの誘導体化されたテストステロンは、誘導体化されていないテストステロンと比較して、感度において10×増大を生じた。ピークショルダーは、上記誘導体化手順から作られたシス/トランス異性体の分離に起因して、誘導体化されたものについて観察される。3.96分での上記ピークは、デヒドロ−エピ−アンドロステロンである。これはまた、誘導体化混合物において示された。
【0141】
図10は、反応効率を示す。反応効率を、300pgの誘導体化したテストステロンおよびエピテストステロンを注入し、上記量の誘導体化されていない分析物を測定することによって評価した。反応効率を、>99%であると計算した。
【0142】
図11は、反応定量を示す。上記アミンオキシ反応の定量を試験するために、連続希釈(10fg〜10000fg)および誘導体化したサンプルを分析した。得られた較正曲線は線形であり、上記サンプルの誘導体化されていない形態の連続希釈に対して十分比較に耐えた(10fg〜10000fg)。
【0143】
【表3】

図中に示されるデータおよび付随する本文は、上記アミンオキシ部分を使用してオキシムを生じる、上記式Z−Rの標識を使用するケトン化合物の誘導体化が、上記ケトン化合物(この場合、上記代表的ケトステロイド)に依存して、10〜1000倍だけ反応の鈍さの増大を生じたことを示す。113Daの上記シグナチャーイオンは、MS/MSのためのQ3質量として使用され得る。
【0144】
(実施例3-永久的に荷電したアミンオキシ試薬を使用するケトステロイドの誘導体化)
図12は、本教示の種々の実施形態に従って、CE=62eV(ここで、上記シグナチャーイオンが、テストステロン構造および上記誘導体化している試薬構造の両方からのフラグメントを含む)を使用するQAOテストステロンのMS/MSフラグメントおよびスペクトルを示す。
【0145】
図13は、本教示の種々の実施形態に従って、中性子損失Q3フラグメントと比較して、標的とされたQ3フラグメントのMRM移動を使用して、QAO誘導体化したテストステロンのクロマトグラムを示す。測定は、中性子損失のMRM移動(403→344) 対 上記試薬プラス骨格フラグメント(304→162)を使用することを含んだ。認められ得るように、検出下限は、バックグラウンドノイズの顕著な低下に起因して、上記試薬および上記テストステロン骨格を含むQ3移動を使用して達成可能である。
【0146】
本教示の種々の実施形態によれば、上記方法は、ケトステロイドの上記標的化されたフラグメント化に適用される。例えば、図14は、上記標的化されたMS/MSフラグメント化、ならびにCE=62eVでのQAOプロゲステロンのスペクトルおよびQAOテストステロンのMS/MSスペクトルを示す。QAOプロゲステロンは、2個のケト官能基を有するので、ビスQAOプロゲステロンを生じる。
【0147】
図15は、CE=45eVにおいてプロゲステロンのMS/MSスペクトルを示す。図15は、実際のLC−MS/MS分析においてバックグラウンドノイズ低下を図示する。上記MRM移動272→213は、二重に荷電した種である上記ビスQAOプロゲステロンからの中性子損失であり、高いバックグラウンドノイズが顕著である。272→312.5の上記MRM移動は、上記二重に荷電したビスQAOから、上記試薬構造の一部および上記プロゲステロン構造の一部を含む特定のフラグメントへの移動である。より低いQ1質量からより高いQ3質量へのこのMRM移動は、さらにより特異的であり、特異性をさらに改善し、LC−MRM実験においてバックグラウンドノイズを低下させる。
【0148】
(実施例4-タグ化試薬のセット)
以下は、本教示の種々の実施形態に従う、4種のN−メチルピペラジン−アミンオキシ質量示差的試薬の例示的セットである:
【0149】
【化10】


【0150】
以下は、本教示の種々の実施形態に従う、N−メチルピペラジン−アミンオキシ同重体試薬の例示的セットである:
【0151】
【化11】


【0152】
以下は、本教示の種々の実施形態に従う、四級アミンオキシ質量示差的試薬の例示的セットである:
【0153】
【化12】


【0154】
以下は、本教示の種々の実施形態に従う、四級アミンオキシ同重体試薬の例示的セットである:
【0155】
【化13】


【0156】
本願において引用される全ての文献および類似の資料(このような文献および類似の資料の形式に拘わらず、特許出願、学術文献、書籍、学術論文、およびウェブページが挙げられるが、これらに限定されない)は、全ての目的で、それら全体が本明細書に明示的に参考として援用される。上記援用された文献および類似の資料の内の1つ以上が、本願(定義された用語、用語の使用法、記載される技術などが挙げられるが、これらに限定されない)とは異なるかもしくは本願に矛盾する場合、本願が優先する。
【0157】
本明細書で使用される小節のみだしは、系統化する目的に過ぎず、記載される事項を限定するとはいかようにも解釈されるべきではない。
【0158】
本教示は、種々の実施形態および実施例に関して記載されてきたが、本教示は、このような実施形態もしくは実施例に限定されるとは意図されない。一方、本教示は、当業者によって認識されるように、種々の変更、改変および等価物を包含する。
【0159】
上記教示は、その効果に対して述べていなければ、記載される順序もしくは要素に限定するとは解釈されるべきではない。形態および詳細における種々の変更は、本教示の範囲から逸脱することなく行われ得ることは理解されるべきである。例示すると、開示された方法の工程のいずれも、他の開示された工程のうちのいずれかと組み合わされて、本教示の種々の実施形態に従って、環含有化合物を分析するための方法を提供する。従って、本教示の範囲および趣旨、ならびにこれらの等価物の範囲内に入る全ての実施形態が、特許請求される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(II):Z−Rの2種以上の化合物を含む質量標識のセットであって、ここで該標識のセットにおける化合物のうちの1種以上は、1種以上の重原子同位体を含み、Zは、置換されたかもしくは置換されていない、直鎖、分枝鎖もしくは環式のアルキル;置換されたかもしくは置換されていないアリール;置換されたかもしくは置換されていないヘテロアリール;置換されたかもしくは置換されていないアミノ;または置換されたかもしくは置換されていないチオから構成される質量レポーター基を表し;そしてRは、末端アミンオキシ基を表す、質量標識のセット。
【請求項2】
は、以下:
【化14】

からなる基から選択される、請求項1に記載の標識のセット。
【請求項3】
前記標識のセットの一般式(II)の化合物のうちの1種以上は、2種以上の重原子で同位体富化されている、請求項1に記載の標識のセット。
【請求項4】
前記標識のセットの一般式(II)の化合物のうちの1種以上は、3種以上の重原子で同位体富化されている、請求項1に記載の標識のセット。
【請求項5】
前記重原子同位体は、各々独立して、13C、15N、18O、33S、もしくは34Sである、請求項1に記載の標識のセット。
【請求項6】
前記標識は、非塩化形態もしくは非水和形態では同重体であり、該同重体標識のうちの各々は、1種以上の重原子同位体を含む、請求項1に記載の標識のセット。
【請求項7】
前記標識のセットにおける各標識は、約1amuより大きい質量差異によって、該セットにおける別の標識とは区別される、請求項1に記載の標識のセット。
【請求項8】
前記2種以上の化合物のうちの少なくとも1つは、式:
【化15】

の化合物であり、nは、1〜100の整数であり、Yは、以下:
【化16】

からなる群より選択される、請求項1に記載の標識のセット。
【請求項9】
nは、2〜10の整数である、請求項8に記載の標識のセット。
【請求項10】
前記2種以上の化合物のうちの各々は、永久的に荷電したアミンオキシ試薬を個々に含む、請求項1に記載の標識のセット。
【請求項11】
請求項1に記載の質量標識のセット、および1種以上の他のアッセイ構成要素を含む、キット。
【請求項12】
前記1種以上の他のアッセイ構成要素は、緩衝液、試薬、分離カラム、およびアッセイを行うための指示書を含む、請求項11に記載のキット。
【請求項13】
サンプル中の分析物を質量分析するための方法であって、該方法は、
アルデヒド官能基もしくはケトン官能基を含む分析物を、末端アミンオキシ部分およびレポーター基を含む標識試薬で誘導体化して、標識された分析物を形成する工程;
該標識された分析物をイオン化に供する工程;ならびに
該分析物を、質量分析によって検出する工程、
を包含する、方法。
【請求項14】
サンプル中の前記分析物の濃度を検出する工程をさらに包含する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記標識試薬は、永久的に荷電したアミンオキシ試薬を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記標識試薬は、式:
【化17】

の化合物を含み、ここでnは、1〜100の整数であり、Yは、以下:
【化18】

からなる群より選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
nは、2〜10の整数である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記標識試薬は、以下:
【化19】

およびこれらの組み合わせ、からなる群より選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記標識された分析物をイオンフラグメント化に供して、イオン化されたレポーター基を生成する工程をさらに包含する、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記分析物を検出する工程は、質量分析器において前記レポーター基のイオンを検出する工程から構成される、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
検出する工程は、第1の伝達される親イオンおよび娘イオンフラグメントを、親−娘イオン移動モニタリングによって検出する工程から構成される、請求項13に記載の方法。
【請求項22】
前記標準化合物のアルデヒド官能基もしくはケトン官能基を誘導体化する工程、および前記分析物の相対的濃度を測定する工程をさらに包含する、請求項13に記載の方法。
【請求項23】
前記標識試薬は、2種以上の重原子で同位体富化される、請求項13に記載の方法。
【請求項24】
少なくとも2種の分析物の化合物は、前記標識試薬で誘導体化され、前記方法は、少なくとも2種の分析物の間の相対的濃度を決定する工程をさらに包含する、請求項13に記載の方法。
【請求項25】
少なくとも2種の分析物の化合物は、前記標識試薬で誘導体化され、前記方法は、少なくとも1種の分析物の絶対的濃度を決定する工程をさらに包含する、請求項13に記載の方法。
【請求項26】
前記イオン化は、構造的に特異的なフラグメントイオンおよびQ3 MRMイオンを生成し、前記標識試薬は、該構造的に特異的なフラグメントイオン中に、全体的もしくは部分的に含まれ、前記方法は、該Q3 MRMイオンの感度および特異性の両方を提供する、請求項13に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図4】
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【図5】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2012−529010(P2012−529010A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513061(P2012−513061)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/001598
【国際公開番号】WO2010/141075
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(510075457)ディーエイチ テクノロジーズ デベロップメント プライベート リミテッド (35)
【Fターム(参考)】