説明

試薬反応部材載置装置またはその方法

【課題】小型化および省電力化が可能な試薬反応部材載置装置を提供する。
【解決手段】銅基板13の下面13bの下には絶縁膜13mを介して、回路部16が形成されている。銅基板13は、その隅部を支持部14a,14bに支えられている。支持部14a,14bは、樹脂製である。これにより、レジスト13nの表面の大部分を、空気と接触状態として、銅基板13が、回路部16の発熱用トランジスタから伝達される熱を保持可能となる。また、保持部14a,14bを熱伝導率の小さな部材で構成することにより、発熱用トランジスタから伝達される熱よりも、銅基板13から支持部14a,14bへ伝達される熱の方が小さくすることができる。これにより、銅基板17がプリント配線板であるとともに試薬チップの載置台になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、検査器具における試料等の温度調節に関し、特に、温度調整部の小型化に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、体液成分を検査する検査器具における温度調整機構が開示されている。具体的には、板状のヒートブロックを恒温槽に内蔵して、この恒温槽に試薬チップをセットする。恒温槽の温度をサーミスタ等で検知して、ヒートブロックの出力を制御している。これにより、温度調節が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-233826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の構造では、以下のような問題があった。前記固まりであるヒートブロックを収納する恒温槽が必要となるだけでなく、前記恒温槽とは別に、温度制御する電子回路を設けたプリント基板が必要である。したがって、装置が大型化する。また、前記ヒートブロックはその形状から熱容量が比較的大きくなるため、消費電力が大きいという問題があった。
【0005】
この発明は、上記の問題点を解決して、小型化および省電力化が可能な試薬反応部材載置装置またはその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明にかかる吸光度計測装置は、A)計測対象液状物を試薬と反応させる試薬反応室が設けられた試薬反応部材を載置する載置部、B)以下のb1)発光部およびb2)受光部を有する計測部、b1)前記試薬反応室に光を照射する発光部、b2)前記試薬反応室を通過した光を受光する受光部、C)前記受光部の計測値に基づいて吸光度を演算する演算手段、を備えた吸光度計測装置において、
D)前記載置部は、以下のd1)銅基板およびd2)支持部を有しており、d1)第1平面が第1の絶縁膜で、前記第1平面とは逆側の第2の平面が第2の絶縁膜で覆われており、前記試薬反応部材を載置させた状態で前記試薬反応室の下部近傍まで存在する形状の銅基板、d2)前記銅基板を支える支持部、E)前記銅基板は、前記第2の絶縁膜が前記試薬反応部材を載置する側との逆側に位置するように設置されており、前記第2の絶縁膜側には、以下のe1)計測部およびe2)温度調整用電子回路部を有する計測機構付き電子回路部が設けられており、e1)前記銅基板の温度を計測する計測部、e2)発熱半導体を有し、前記計測部からの情報に基づき、前記銅基板の温度を所定温度に保つ温度調整用電子回路部、F)前記第2の絶縁膜は、前記電子回路部の発熱が前記銅基板に伝達される程度の厚みであり、G)前記第1の絶縁膜は、前記銅基板の熱が前記試薬反応室近傍に伝達される程度の厚みであり、H)前記金属基板の前記試薬反応部材を載置するのとは逆側の面の大部分を、空気と接触状態とすることにより、前記金属基板が、前記発熱半導体から伝達される熱を保持可能に構成するとともに、前記発熱半導体から伝達される熱よりも、前記金属基板を支える支持部へ伝達される熱の方が小さくなるよう前記金属基板と前記支持部との接触部を熱伝導率の小さな部材で構成している。
【0007】
したがって、前記発熱半導体の熱を効率的に保持することができる。また、銅基板はヒートブロックなどと比べると、熱容量が小さいので、暖まりやすく、また、消費電力も小さくすることができる。また、従来のようにヒートブロックを格納する恒温槽なども不要となるので小型化が可能となる。
【0008】
(2)本発明にかかる試薬反応部材載置装置は、計測対象液状物を試薬と反応させる試薬反応室が設けられた試薬反応部材を載置して、前記試薬反応室近傍を保温する機構を有する試薬反応部材載置装置であって、A)前記試薬反応部材を載置させた状態で前記試薬反応室の下部近傍まで存在する形状の金属基板、B)前記金属基板には、絶縁膜を介して以下のb1)計測部およびb2)温度調整用電子回路部を有する計測機構付き電子回路部が設けられており、b1)前記金属基板の温度を計測する計測部、b2)発熱半導体を有し、前記計測部からの情報に基づき、前記金属基板の温度を所定温度に保つ温度調整用電子回路部、C)前記絶縁膜は、前記電子回路部の発熱が前記金属基板に伝達される程度の厚みであり、D)前記金属基板と前記支持部との接触部を熱伝導率の小さな部材で構成するとともに、前記試薬反応部材を載置するのとは逆側の面の大部分を、前記接触部よりも熱伝導率の小さい部材と接触状態とし、これにより、前記発熱半導体の単位時間あたりの発熱量よりも、前記基板を支える支持部へ伝達される熱量の方が小さくなるよう構成した。
【0009】
したがって、前記発熱半導体の熱を効率的に保持することができる。また、金属基板はヒートブロックなどと比べると、熱容量が小さいので、暖まりやすく、また、消費電力も小さくすることができる。また、従来のようにヒートブロックを格納する恒温槽なども不要となるので小型化が可能となる。
【0010】
(3)本発明にかかる試薬反応部材載置装置は、計測対象液状物を試薬と反応させる試薬反応室が設けられた試薬反応部材を載置して、前記試薬反応室近傍を保温する機構を有する試薬反応部材載置装置であって、A)前記試薬反応部材を載置させた状態で前記試薬反応室の下部近傍まで存在する形状の基板、B)前記基板には、以下のb1)計測部およびb2)温度調整用電子回路部を有する計測機構付き電子回路部が設けられており、b1)前記金属基板の温度を計測する計測部、b2)発熱半導体を有し、前記計測部からの情報に基づき、前記基板の温度を所定温度に保つ温度調整用電子回路部、D)前記基板を、100w/mK以上の熱伝導率の材料で構成し、E)前記基板と前記支持部との接触部を熱伝導率の小さな部材で構成するとともに、前記試薬反応部材を載置するのとは逆側の面の大部分を、前記接触部よりも熱伝導率の小さい部材と接触状態とし、これにより、前記発熱半導体の単位時間あたりの発熱量よりも、前記基板を支える支持部へ伝達される熱量の方が小さくなるよう構成している。
【0011】
したがって、前記発熱半導体の熱を効率的に保持することができる。また、前記基板はヒートブロックなどと比べると、熱容量が小さいので、暖まりやすく、また、消費電力も小さくすることができる。また、従来のようにヒートブロックを格納する恒温槽なども不要となるので小型化が可能となる。
【0012】
(4)本発明にかかる試薬反応部材載置方法は、計測対象液状物を試薬と反応させる試薬反応室が設けられた試薬反応部材を載置する試薬反応部材載置方法であって、金属基板には、絶縁膜を介して以下のb1)計測部およびb2)温度調整用電子回路部を有する計測機構付き電子回路部を設け、b1)前記金属基板の温度を計測する計測部、b2)発熱半導体を有し、前記計測部からの情報に基づき、前記金属基板の温度を所定温度に保つ温度調整用電子回路部、C)前記絶縁膜は、前記電子回路部の発熱が前記金属基板に伝達される程度の厚みであり、D)前記金属基板と前記支持部との接触部を熱伝導率の小さな部材で構成するとともに、前記試薬反応部材を載置するのとは逆側の面の大部分を、前記接触部よりも熱伝導率の小さい部材と接触状態とし、これにより、前記発熱半導体の単位時間あたりの発熱量よりも、前記基板を支える支持部へ伝達される熱量の方が小さくなるよう構成し、これにより、前記金属基板に前記試薬反応室近傍を保温する機能を持たせている。
【0013】
したがって、前記発熱半導体の熱を効率的に保持することができる。また、銅基板はヒートブロックなどと比べると、熱容量が小さいので、暖まりやすく、また、消費電力も小さくすることができる。また、従来のようにヒートブロックを格納する恒温槽なども不要となるので小型化が可能となる。
【0014】
なお、本明細書において、「金属基板」とは、金属ベースのプリント配線板であり、金属がプリント配線板本体として物理的な強度を有するものをいう。金属の種類としては、たとえば、銅、アルミなどがある。また、「発熱半導体」とは、実施形態では、バイポーラトランジスタが該当するが、電流を流すことにより、発熱する半導体であれば、他のトランジスタでも、もちろん、トランジスタ以外であってもよい。また、「吸光度」とは、液体に光を照射したときに通過した光量と照射した光量との比の逆対数である。かかる吸光度は液体の濃度に比例するので、これを利用した分析が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明にかかる吸光度計測装置の載置部分の斜視図である。
【図2】図1のA−A断面、B−B断面を示す図である。
【図3】銅基板を裏から見た状態を示す。
【図4】2つのトランジスタを用いた温度調整回路図である。
【図5】試薬チップを示す図である。
【図6】試薬チップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に、この発明の一実施形態による試薬反応部材載置装置10の概要斜視図を示す。
試薬反応部材載置装置10は銅基板13および支持部14a,bを備えており、吸光度計測装置の一部分を構成する。
【0017】
銅基板13の構造について、図2を用いて説明する。図2Bに示すように、銅基板13は、銅板13kの上面13aの上に第1の絶縁膜であるレジスト13jが、銅板13kの下面13bの下には第2の絶縁膜である絶縁膜13mが形成されている。絶縁膜13mの下には、後述する回路部16の一部を構成するプリント配線13pが配置されており、プリント配線13pには前記回路部16の一部を構成する電子部品13qが半田付けされている。プリント配線13pは電子部品13qとともに、保護膜であるレジスト13nで覆われている。図3は、図2Bの矢印Cからの矢視図である。
【0018】
銅基板13には、8カ所の測定用貫通孔17が形成されている。貫通孔17のについては、図2Aに示すように、レジスト13j,nを貫通している。この貫通孔17の位置は、載置される試薬チップの試薬反応室の位置と合致する。これにより、後述するように、図示しない発光部から発せられた光が貫通穴、および試薬反応室を通過して、発光部とは反対側に設けられた受光部で受光できる。
【0019】
また、図1に示す回路部16は、図3に示すように、発熱半導体であるトランジスタ16q1,16q2、計測部であるサーミスタ16s、および主回路部16bを有する。回路部16を構成する電子回路について、図4を用いて説明する。図4に示す電子回路は、トランジスタ16q1,16q2の発熱を、サーミスタ16sで検出し、この検出電圧値を予め設定された電圧と比較器16hで比較して、フィードバック制御を行うものである。
【0020】
トランジスタ16q1,16q2およびサーミスタ16sは、図3に示すように、2つのトランジスタの間にサーミスタを挟むように配置している。
【0021】
本実施形態においては、プリント配線13p、銅板13k、絶縁膜13mの厚みが、それぞれ35μm、0.5mm、80μmの銅基板を用いて、これを上下反転させるとともに、さらに厚みがそれぞれ30μmのレジストを形成して、レジスト13j、13nとした。
【0022】
このように、一般的な金属ベースのプリント配線板に用いられる数mmの厚みの銅板ではなく、0.5mm程度と薄くすることにより、熱容量を極力小さくして放熱を抑え、温度を安定に制御できる。また、加工も容易である。
【0023】
銅基板13の保持について説明する。銅基板13は、図1に示すように、その隅部を支持部14a,14bに支えられている。支持部14a,14bは、樹脂製である。これにより、銅基板13のレジスト13nの表面の大部分が、空気と接触状態となり、銅基板13がトランジスタ16q1,16q2から伝達される熱を保持可能となる。また、保持部14a,14bを熱伝導率の小さな部材で構成することにより、トランジスタ16q1,16q2から伝達される熱よりも、銅基板13から支持部14a,14bへ伝達される熱の方が小さくすることができる。これにより、トランジスタ16q1,16q2の発熱をフィードバック制御すれば、銅基板13の温度を一定に制御可能となる。
【0024】
次に、載置部である銅基板13の上に載置される試薬チップについて図5、図6を用いて説明する。銅基板13には、試薬反応部材である試薬チップ100が載置される。図5Aは、試薬チップ100の平面図であり、図5Bは、図5Aに示す試薬チップ100のY−Y断面図であり、図5Cは、図5Aに示す試薬チップ100のα矢視図である。
【0025】
図5Aに示すように、試薬チップ100は、血液受け102と反応部103を組み合わせて構成される。血液受け102の下面には、反応部103の切り欠き139に嵌め込むための結合部125が設けられており、これにより血液受け102と反応部103とが一体的に固定される。
【0026】
図5Bに示すように、血液受け102の上面には、凹状の血液滴下口121および環状の隆起部123が設けられている。血液滴下口121の底部には貫通孔122が設けられる。血液滴下口121および隆起部123により血液滴下部が構成される。血液受け102には、試薬チップ100を持ち運ぶための取手部分120が設けられている。
【0027】
反応部103には、図5Aに示すように、8個の反応室133、および試薬チップ100を矢印D3方向および矢印α方向に位置決めするための切り欠き134が設けられている。なお、この切り欠き134は、図5Aに破線で示す載置台113の突起114に係止される。
【0028】
図6Aに示すように、反応部103は、上から上層フイルム138、中層フイルム136、下層フイルム137の順に積層した構造となっており、各フイルムを接着剤で貼り付けて形成される。図6B〜Dに、試薬チップ1の反応部3を構成する各フイルム(中層フイルム136、下層フイルム137、上層フイルム138)の詳細を示す。
【0029】
図6Bに示す中層フイルム136は、貫通孔131aと、複数の反応室133の側壁を構成する反応孔133aと、貫通孔131aから各反応孔133aへ分岐する流路135とを打ち抜いた空気透過性の多孔性膜(例えば、厚み0.1mm)によって成形される。図5Aに示す反応室133は、反応孔133aの下面を下層フイルム137で、上面を上層フイルム138で覆うことにより形成される空間である。
【0030】
流路135は、幅が0.3mm程度と細いものであり(中層フイルム136の厚みが0.1mmのとき、断面積は0.03m)、流路135より分岐した各反応室133の容量は、約40μLである。図5Aに示す各反応室133には、総コレステロール、グルコース、中性脂肪などの測定対象物を分析するための試薬がそれぞれ封入されている。
【0031】
図6Cに示す下層フイルム137には、反応室133の下面を構成する部分133bを除いて不透明印刷した樹脂材料(スチレン・アクリロニトリル樹脂など)が用いられる。
【0032】
図6Dに示す上層フイルム138には、反応室133の上面を構成する部分133cを除いて不透明印刷されている。上層フイルム138の材質としては、たとえば、スチレン・アクリロニトリル樹脂などが用いられる。上層フイルム138には、貫通孔131bが設けられる。
【0033】
中層フイルム136の貫通孔131aおよび上層フイルム138の貫通孔131bが、図5Aに示す反応部103の貫通孔131を構成する。また、上層フイルム138の枠体140に血漿分離膜132が嵌め込まれる。なお、これら上層フイルム137、下層フイルム138の厚みは、例えば100〜150μmである。
【0034】
試薬反応部材載置装置10の使用方法について説明する。
【0035】
試薬反応部材載置装置10に電源が投入されると、回路部16により、載置部13は所定温度に保温される。本実施形態においては、図6に示す電子回路16によりフィードバック制御を行うことにより、レジスト13jの表面温度を37±0.1℃に保つように設定した。この場合の消費電力は3.8ワットであった。これは、従来の半分以下である。
【0036】
この状態で、銅基板13の貫通孔17の上に図5に示す試薬チップ100の反応室133が位置するように載置されると、試薬チップ100の反応室133の近傍まで銅基板17が位置することとなる。したがって、銅基板17のトランジスタ16q1,16q2の発熱が試薬チップ100の反応室133の近傍まで伝達される。これにより、反応室133近傍が所定温度に保温される。この状態で、発光部(図示せず)は試薬反応部材の試薬反応室に光を照射し、受光部(図示せず)は前記試薬反応室を通過した光を受光し、演算手段(図示せず)は前記受光部の計測値に基づいて吸光度を演算する。
【0037】
このように、本実施形態においては、温度制御回路用のプリント配線板そのものが試薬チップの載置台になるので部品点数を減らすことができ、全体としてのサイズやコストが抑えられる。また、熱容量が小さいため、電源を投入してから温度が安定するまでの時間を短くすることができる。従来の生化学分析装置では数分から数十分かかるものが約1分以内で安定させることができた。また、熱容量が小さいため、消費電力を抑えることができる。このように省電力化されたことにより、温調機能が必須である生化学分析装置を電池で駆動させることも可能になる。このことは僻地医療や災害医療といった、必ずしも安定した電源が得られない場所での測定を可能とする。
【0038】
2.他の実施形態
本実施形態においては、金属基板として銅基板を用いたが、これは、アルミ基板と比べると、強度が大きいからである。すなわち、熱伝導率としてはアルミや他の金属程度であっても十分適用可能である。
【0039】
本実施形態においては試薬反応部材載置装置として構成した場合について説明したが、これを含む検査装置として構成することもできる。
【0040】
本実施形態においては、レジスト13nは空気と接触状態としたが、ウレタンなど熱伝導率の小さな物質と接触状態としてもよい。つまり、銅基板13と支持部14との接触部を熱伝導率の小さな部材で構成するとともに、試薬チップを載置するのとは逆側の面の大部分を、前記接触部よりも熱伝導率の小さい部材と接触状態とし、これにより、前記発熱半導体の単位時間あたりの発熱量よりも、前記基板を支える支持部へ伝達される熱量の方が小さくなるよう構成すればよい。
【0041】
また、金属基板以外でも、熱伝導率の大きな基板、具体的には、100w/mk以上の熱伝導率の物質であれば同様に適用することができる。
【0042】
また、本実施形態においては、基板全体を熱伝導率の大きな材質で構成したが、発熱源および計測部、さらに、被保温対象物の周辺だけ、このように構成するようにしてもよい。
【0043】
上記の実施例においては、トランジスタ2個とサーミスタ1個で構成しているが、それぞれの個数を増やして適切に配置することで、プリント板のサイズが大きくなっても裏面の温度分布を一定に保つことが出来る。たとえば、トランジスタ2個とサーミスタ1個とを1組として、この組を複数設けてもよい。また、トランジスタ1個とサーミスタ1個とを1組として、この組を複数設けるようにしてもよい。さらに、サーミスタ1個に対してトランジスタの数をさらに増やし、これを1組として複数設けるようにしてもよい。
【0044】
また、上記組を複数設ける場合、全体として均一の温度に制御するのではなく、組間で温度勾配が存在するように温度設定を行ってもよい。このように、各計測機構付き電子回路部の計測部を、前記試薬反応室が配列されている第1の方向と平行に設け、前記第1の方向に沿って、設定温度が徐々に変化するように設定することにより、異なる温度環境下での測定を一度に行うことが可能となる。例えば右から左に向かって1℃ずつ温度が違う等のように、異なる温度環境下での測定を一度に行うことができる。反応に最適な温度が分からず、その温度を決めるための測定をしたい場合があるからである。適用分野としては、例えば、遺伝子増幅法の1つであるPCR法などである。
【0045】
本実施形態においては、吸光度を計測する場合について説明したが、反射光に基づいて光学特性を計測する場合についても、同様に適用することができる。
【0046】
なお、本実施形態においては、銅板13kの上に、樹脂をスクリーン印刷したが、かかるレジストは、保護膜として採用したものであり、任意である。
【0047】
また、本実施形態においては、透過型の計測を行う場合を例として説明したので、載置台に貫通孔を設けた場合について説明した。これにより、貫通孔周辺部まで載置台が存在するので、より効率的に温度を伝えることができる。これに対して、反射型で計測する場合には、同じ側に発光部、受光部が設けられるので、かかる貫通孔は不要である。また、透過型であっても、貫通穴を設けるのではなく、試薬反応室の手前から先には載置台が存在しないようにしてもよい。
【0048】
本実施形態においては、試薬チップを載置する載置面とは逆側に、回路部を設けたので、省スペースが図られる。しかし、これに限定されず、同じ側に設けてもよい。たとえば、完全に平坦な保護膜で覆うようにしてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)計測対象液状物を試薬と反応させる試薬反応室が設けられた試薬反応部材を載置する載置部、
B)以下のb1)発光部およびb2)受光部を有する計測部、
b1)前記試薬反応室に光を照射する発光部、
b2)前記試薬反応室を通過した光を受光する受光部、
C)前記受光部の計測値に基づいて吸光度を演算する演算手段、
を備えた吸光度計測装置において、
D)前記載置部は、以下のd1)金属基板およびd2)支持部を有しており、
d1)第1平面が第1の絶縁膜で、前記第1平面とは逆側の第2の平面が第2の絶縁膜で覆われており、前記試薬反応部材を載置させた状態で前記試薬反応室の下部近傍まで存在する形状の金属基板、
d2)前記金属基板を支える支持部、
E)前記金属基板は、前記第2の絶縁膜が前記試薬反応部材を載置する側との逆側に位置するように設置されており、前記第2の絶縁膜側には、以下のe1)計測部およびe2)温度調整用電子回路部を有する計測機構付き電子回路部が設けられており、
e1)前記金属基板の温度を計測する計測部、
e2)発熱半導体を有し、前記計測部からの情報に基づき、前記金属基板の温度を所定温度に保つ温度調整用電子回路部、
F)前記第2の絶縁膜は、前記電子回路部の発熱が前記金属基板に伝達される程度の厚みであり、
G)前記第1の絶縁膜は、前記金属基板の熱が前記試薬反応室近傍に伝達される程度の厚みであり、
H)前記金属基板の前記試薬反応部材を載置するのとは逆側の面の大部分を、空気と接触状態とすることにより、前記金属基板が、前記発熱半導体から伝達される熱を保持可能に構成するとともに、前記発熱半導体から伝達される熱よりも、前記金属基板を支える支持部へ伝達される熱の方が小さくなるよう前記金属基板と前記支持部との接触部を熱伝導率の小さな部材で構成したこと、
を特徴とする吸光度計測装置。
【請求項2】
計測対象液状物を試薬と反応させる試薬反応室が設けられた試薬反応部材を載置して、前記試薬反応室近傍を保温する機構を有する試薬反応部材載置装置であって、
A)前記試薬反応部材を載置させた状態で前記試薬反応室の下部近傍まで存在する形状の金属基板、
B)前記金属基板には、絶縁膜を介して以下のb1)計測部およびb2)温度調整用電子回路部を有する計測機構付き電子回路部が設けられており、
b1)前記金属基板の温度を計測する計測部、
b2)発熱半導体を有し、前記計測部からの情報に基づき、前記金属基板の温度を所定温度に保つ温度調整用電子回路部、
C)前記絶縁膜は、前記電子回路部の発熱が前記金属基板に伝達される程度の厚みであり、
D)前記金属基板と前記支持部との接触部を熱伝導率の小さな部材で構成するとともに、前記試薬反応部材を載置するのとは逆側の面の大部分を、前記接触部よりも熱伝導率の小さい部材と接触状態とし、これにより、前記発熱半導体の単位時間あたりの発熱量よりも、前記基板を支える支持部へ伝達される熱量の方が小さくなるよう構成したこと、
を特徴とする試薬反応部材載置装置。
【請求項3】
計測対象液状物を試薬と反応させる試薬反応室が設けられた試薬反応部材を載置して、前記試薬反応室近傍を保温する機構を有する試薬反応部材載置装置であって、
A)前記試薬反応部材を載置させた状態で前記試薬反応室の下部近傍まで存在する形状の基板、
B)前記基板には、以下のb1)計測部およびb2)温度調整用電子回路部を有する計測機構付き電子回路部が設けられており、
b1)前記金属基板の温度を計測する計測部、
b2)発熱半導体を有し、前記計測部からの情報に基づき、前記基板の温度を所定温度に保つ温度調整用電子回路部、
D)前記基板を、100w/mK以上の熱伝導率の材料で構成し、
E)前記基板と前記支持部との接触部を熱伝導率の小さな部材で構成するとともに、前記試薬反応部材を載置するのとは逆側の面の大部分を、前記接触部よりも熱伝導率の小さい部材と接触状態とし、これにより、前記発熱半導体の単位時間あたりの発熱量よりも、前記基板を支える支持部へ伝達される熱量の方が小さくなるよう構成したこと、
を特徴とする試薬反応部材載置装置。
【請求項4】
計測対象液状物を試薬と反応させる試薬反応室が設けられた試薬反応部材を載置する試薬反応部材載置方法であって、
金属基板には、絶縁膜を介して以下のb1)計測部およびb2)温度調整用電子回路部を有する計測機構付き電子回路部を設け、
b1)前記金属基板の温度を計測する計測部、
b2)発熱半導体を有し、前記計測部からの情報に基づき、前記金属基板の温度を所定温度に保つ温度調整用電子回路部、
C)前記絶縁膜は、前記電子回路部の発熱が前記金属基板に伝達される程度の厚みであり、
D)前記金属基板と前記支持部との接触部を熱伝導率の小さな部材で構成するとともに、前記試薬反応部材を載置するのとは逆側の面の大部分を、前記接触部よりも熱伝導率の小さい部材と接触状態とし、これにより、前記発熱半導体の単位時間あたりの発熱量よりも、前記基板を支える支持部へ伝達される熱量の方が小さくなるよう構成し、これにより、前記金属基板に前記試薬反応室近傍を保温する機能を持たせること、
を特徴とする試薬反応部材載置方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate