説明

試薬容器、自動分析装置、及び試薬管理方法

【課題】検査項目に対応する試薬の組み合わせを間違えて連結してしまうことを防止する試薬容器、自動分析装置、及び試薬管理方法を提供する。
【解決手段】被検試料の測定項目毎に組み合わせて使用される2種の試薬を収容する試薬容器は、第1試薬を収容する第1の試薬容器1A1,1B1,1C1,・・・と、第2試薬を収容する第2の試薬容器1A2,1B2,1C2,・・・と、測定項目に応じて特有の凹凸部を表面に有する一対の連結面100を有する。この試薬容器は、連結面に設けられた凹凸部同士の連結を介して第1の試薬容器と第2の試薬容器とが連結されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被検試料の測定に使用される試薬を収容する試薬容器に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、生化学検査項目や免疫血清検査項目を対象とし、被検試料と試薬とを分注して混合し反応を測定する装置である。反応管に血液や尿等の被検試料と試薬とを分注してこれらを混合して反応させた後、反応によって生じる色調や濁りの変化を透過光を測定することにより、検体中の被測定物質または酵素の濃度や活性を測定する。
【0003】
この自動分析装置では、多数の検査項目の中から検査に応じて選択された検査項目の測定が行われる。そのために、被検試料の検査項目に応じて使用される試薬を収容した試薬容器を自動分析装置の試薬庫にセットする必要がある。一般的に、一つの検査項目では2種以上の試薬を組み合わせて用いることが多い。試薬容器の載置作業は、通常オペレータにより行われる。オペレータが検査項目に合わせて試薬の組み合わせを選択し、その試薬が収容された試薬容器を試薬庫にセットする。そして、オペレータは、自動分析装置に、どの試薬を試薬庫のどこにセットしたかを入力する。
【0004】
近年では、オペレータの負担軽減や、置き間違え等の人為ミスの防止を図る目的で、試薬容器に試薬の種類、ロット番号、使用期限等の情報に対応したバーコードラベルを貼付け、これを試薬保管庫に備え付けたバーコードリーダにより読取って試薬管理を自動で行うことが可能になっている。
【0005】
また、測定項目毎に使用する試薬容器を連結して一つに纏めて用いる試薬容器が用いられるようになってきた(例えば、「特許文献1」参照。)。この技術では、試薬容器に凹凸形状の連結面を設け、連結面の嵌合により2以上の試薬容器を連結するものである。この連結した試薬容器を試薬保管庫にセットするものである。この技術によると、少なくとも2以上の試薬容器が必ず特定の載置関係の下に載置されるため、オペレータの負担軽減を図ることができる。
【0006】
しかし、組み合わせる試薬容器は、オペレータにより選択される必要がある。そのため、オペレータが検査項目に対応する試薬の組み合わせを間違えて試薬容器を連結してしまう人為的ミスが発生するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−164509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、上述のような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、検査項目に対応する試薬の組み合わせを間違えて連結してしまうことを防止する試薬容器、自動分析装置、及び試薬管理方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1記載の本発明に係る試薬容器は、被検試料の測定項目毎に組み合わせて使用される少なくとも2種の試薬を収容する試薬容器であって、第1試薬を収容する第1の試薬容器と、第2試薬を収容する第2の試薬容器と、前記測定項目に応じて特有の凹凸部を表面に有する一対の連結面と、を備え、前記連結面に設けられた凹凸部同士の嵌合により、同一測定項目で使用される2種の試薬を収容した前記第1の試薬容器と前記第2の試薬容器とが連結されること、を特徴とする。
【0010】
また、前記連結面は、更に製造ロットに応じて特有の凹凸部を有するようにしてもよい(請求項2記載の発明に相当)。
【0011】
前記第1の試薬容器と前記第2の試薬容器の一方にのみ設けられ、前記第1の試薬容器と前記第2の試薬容器に収容される前記第1試薬と前記第2試薬の情報を含んだ試薬識別情報を有する記憶部を更に備えるようにしてもよい(請求項3記載の発明に相当)。
【0012】
また、上記課題を解決するために、請求項4記載の本発明に係る試薬容器は、被検試料の測定項目毎に組み合わせて使用される2種の試薬のうちの一方の試薬を内部に収容した試薬容器であって、他方の試薬の容器が有する凹凸部にのみ嵌合可能な凹凸部を表面に有する連結面と、を備え、前記連結面に設けられた凹凸部を介して前記他方の試薬の容器にのみ連結可能なこと、を特徴とする。
【0013】
前記連結面は、他方の試薬を収容し所定の製造ロットの容器が有する嵌合形状にのみ嵌合可能な凹凸部を表面に有するようにしてもよい(請求項5記載の発明に相当)。
【0014】
また、上記課題を解決するために、請求項6記載の本発明に係る自動分析装置は、試薬庫内の各種試薬のうちの少なくとも2種を測定項目に応じて選択し、選択した試薬と被検試料とを分注してその混合液から前記選択した測定項目に関する情報を測定する自動分析装置であって、各種測定項目に応じた各種の第1試薬を収容するとともに、側面に凹凸部を有し、前記試薬庫内に載置される各種の第1の試薬容器と、各種測定項目に応じた各種の第2試薬を収容するとともに、側面に凹凸部を有し、前記試薬庫内に載置される各種の第2の試薬容器と、前記測定項目に応じて特有の凹凸部を表面に有する一対の連結面と、を備え、同一の測定項目で使用される試薬を収容する前記第1の試薬容器と前記第2の試薬容器とは、その測定項目に応じた前記凹凸部の片側がそれぞれの前記連結面に取り付けられて、当該凹凸部の嵌合により連結された状態で前記試薬庫に載置されていること、を特徴とする。
【0015】
また、上記課題を解決するために、請求項7記載の本発明に係る試薬管理方法は、被検試料の測定項目毎に組み合わせて使用される少なくとも2種の試薬の測定項目毎、試薬毎、或いは製造ロット単位で行う試薬管理方法であって、前記試薬の一方を収容する第1の試薬容器と他方を収容する第2の試薬容器とに設けられた連結面に、測定項目毎、試薬毎、或いは製造ロット単位で特有の凹凸部を形成し、前記凹凸部を介して、同一測定項目に用いられ、或いは更に同一製造ロットの前記第1の試薬容器と前記第2の試薬容器とを連結すること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、一対の連結面に設けられた凹凸部が嵌合する試薬容器同士のみが連結可能となるため、第1試薬と第2試薬とを間違った組み合わせで載置してしまうことが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】試薬容器がセットされる自動分析装置の構成を示す図である。
【図2】試薬庫を示す斜視図である。
【図3】試薬ラックの外周側にセットされる第2の試薬容器の背面から見た斜視図である。
【図4】第1の試薬容器を背面から見た斜視図である。
【図5】第2の試薬容器の正面から見た斜視図である。
【図6】第1の試薬容器と第2の試薬容器とが連結された状態を示す図である。
【図7】各種の試薬容器が有する特有の連結面の具体例を示す図である。
【図8】試薬容器の変形例を示す斜視図である。
【図9】連結面の第1の変形例を示す図である。
【図10】連結面の第2の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る試薬容器の好適な実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0019】
図1は、試薬容器1(1A1,1A2,1B1,・・・)がセットされる自動分析装置の構成を示す図である。
【0020】
自動分析装置は、被検試料と試薬とを分注して混合し反応を測定することにより、被検試料に含まれる化学成分を分析する装置である。被検試料は、分析対象であり、例えば血液や尿等である。試薬は、被検試料の成分を化学反応させる薬品である。自動分析装置では、一の測定項目に対して2種以上の試薬が順に被検試料に混合されることが多い。
【0021】
この自動分析装置は、1サイクル毎に所定角度回転する反応ディスク8を有する。この反応ディスク8には、反応管7が環状に並べられて載置されている。反応管7は、被検試料と試薬とが分注される容器である。
【0022】
反応ディスク8の外周囲には、撹拌ユニット13、測光ユニット15、洗浄ユニット14が円周方向に沿って並べられている。
【0023】
撹拌ユニット13は、1サイクル毎に、撹拌位置に停止した反応管7内に分注された混合液を撹拌する。測光ユニット15は、混合液を収容した反応管7を測光位置から測定する測定手段である。測光ユニット15は、反応管7を挟んで配置される光源と受光部を有し、例えば、混合液の吸光度を測光する。洗浄ユニット14は、洗浄・乾燥位置に停止した反応管7内の測定を終えた混合液を吸引すると共に、反応管7内を洗浄・乾燥する。
【0024】
被検試料は、被検試料容器19に複数収容される。この被検試料容器19は、ディスクサンプラ9にセットされている。ディスクサンプラ9の近傍には、被検試料用分注プローブ18が配置される。被検試料用分注プローブ18は、所謂ストローであり、図示しないポンプによって1サイクル毎に内部に負圧がかけられることで、被検試料を吸引する。
【0025】
被検試料用分注プローブ18は、1サイクル毎に、ディスクサンプラ9上の吸引箇所に停止した被検試料容器19から被検試料を吸引し、反応管7内に吐出する。被検試料用分注プローブ18は、分注アーム12に支持される。
【0026】
被検試料用分注プローブ18は、分注アーム12の回動及び上下動によって、そのサイクル中に吸引位置に存在する被検試料容器19内にその先端が突入させられ、内部の負圧により被検試料を吸引させられる。
【0027】
そして、被検試料用分注プローブ18は、分注アーム12の回動及び上下動によって、そのサイクル中に規定位置に存在する空の反応管7内にその先端が突入させられ、被検試料が吐出させられる。
【0028】
試薬は、その種類毎に試薬容器1A1,1A2,1B1,1B2,1C1,1C2,・・・に収容される。A1、A2等は、測定項目と試薬を意味するものであり、例えば、A1は、測定項目Aの第1試薬を意味するものでる。特にこの意味を明示しない場合には、A1等を省略し、単に試薬容器1のように省略することがある。後述する連結面100等についても同様である。
【0029】
試薬容器1は、試薬を内容物として収容しておく器であり、被検試料の測定項目に対して選択的に反応する各種の第1試薬や、第1試薬と対の各種の第2試薬が収容されている。
【0030】
例えば、第1の試薬容器1A1には、測定項目Aに対して選択的に反応する第1試薬A1が収容され、第1の試薬容器1B1には、測定項目Bに対して選択的に反応する第1試薬B1が使用される。また、第2の試薬容器1A2には、測定項目Aで用いられ、第1試薬A1と対の第2試薬A2が収容され、第2の試薬容器1B2には、測定項目Bで用いられ、第1試薬B1と対の第2試薬B2が収容される。
【0031】
自動分析装置は、試薬庫5,6を有し、試薬容器1は、この試薬庫5に収納される。図2は、試薬庫5を示す斜視図である。
【0032】
図2に示すように、試薬庫5は、上面が開口した有底の円筒形状を有し、内部に試薬ラック5aが回動可能に収容されている。試薬容器1は、この試薬ラック5a内に載置される。試薬ラック5aも上面が開口した有底の円筒形状を有し、そのアニュラス空間(トーラス空間)に載置される。
【0033】
本実施形態に係る自動分析装置では、試薬容器1は、試薬ラック5aの半径方向に2列、各列は円周方向に並んで環状に載置される。第1の試薬容器1A1,1B1,1C1,・・・は、試薬ラック5aの内周側に環状に並んで収納されている。第2の試薬容器1A2,1B2,1C2,・・・は、試薬ラック5aの外周側に環状に並んで収納されている。尚、後述するように内周側の第1の試薬容器1と外周側の第2の試薬容器1とは、連結面100によって連結されることにより、一つの纏まった試薬容器1となっている。
【0034】
ここで、図3は、試薬ラック5aの外周側にセットされる第2の試薬容器1A2の背面から見た斜視図である。第2の試薬容器1A2は、底面が台形の柱形状を有し、上底側を背面とする。
【0035】
図3に示すように、第2の試薬容器1A2には、背面にバーコード2A12が貼り付けられている。このバーコード2A12は、貼り付けられている第2の試薬容器1A2に収容されている第2試薬A2の試薬識別情報と、この第2の試薬容器1A2と組み合わせて使用される第1の試薬容器1A1に収容されている第1試薬A1の試薬識別情報を含んだ記憶部である。試薬識別情報は、試薬の種類、ロット番号、使用期限等の情報が含まれている。
【0036】
尚、この試薬識別情報は、バーコード2以外にも、3次元バーコードやRFタグ等の記憶部に含まれていてもよい。
【0037】
試薬庫5には、その内周面に読取部20が設けられている。読取部20は、試薬識別情報がバーコード2の場合には、所謂バーコードリーダである。この読取部20は、外周側にセットされた第2の試薬容器1A2,1B2,1C2,・・・の背面に貼り付けられているバーコード2A12,2B12,2C12,・・・を読みとることで、試薬A1,A2,B1,B2,C1,C2,・・・がセットされた位置を特定する。
【0038】
そして、吸引した被検試料に予め割り当てられた測定項目で用いられる試薬がセットされた位置をこのバーコード2を基に特定して、その試薬を収容した第1の試薬容器1と第2の試薬容器1から試薬を吸引する。
【0039】
従って、同一測定項目の第1の試薬容器1と第2の試薬容器1とは、後述するように、試薬庫5内の特定の位置関係に載置される連結構造を有し、第1の試薬容器1と第2の試薬容器1とが連結により1つの試薬容器1に纏められる。この自動分析装置では、同一測定項目で使用される第1試薬及び第2試薬を収納した第1の試薬容器1と第2の試薬容器1とは、試薬ラック5aの半径方向に連結して一つの試薬容器1として収納される。
【0040】
例えば、測定項目Aで使用される第1試薬A1を収納した第1の試薬容器1A1と、第2試薬A2を収納した第2の試薬容器1A2とは、半径方向に並べて載置される。バーコード2が示す内容と異なる試薬を収納した第1の試薬容器1と第2の試薬容器とをセットにして並べた場合には、測定が不能になるか、満足する測定結果が得られない。
【0041】
尚、試薬庫5、6の近傍には、分注プローブ16、17が配置される。分注プローブ16は、試薬庫5内の規定吸引位置に存在する試薬容器1A1,1A2,1B1,1B2,1C1,1C2,・・・から1サイクル毎に試薬を吸引し、反応管7内に吐出する。自動分析装置は、バーコード2を基に試薬ラック5aを回動させることで、吸引した被検試料に割り当てられた測定項目に対応する第1試薬と第2試薬とを収納した第1の試薬容器1及び第2の試薬容器1とを規定吸引位置へ移動させる。
【0042】
分注プローブ16は、所謂ストローであり、図示しないポンプによって1サイクル毎に内部に負圧がかけられることで、第1試薬及び第2試薬を吸引する。分注プローブ16、17は、分注アーム10、11に支持される。分注アーム10は、図示しない駆動装置によって回動及び上下動が可能となっており、分注プローブ16は、この分注アーム10の回動及び上下動によって試薬容器1内にその先端を突入させられ、内部の負圧により第1試薬及び第2試薬を吸引させられる。
【0043】
以下、同一測定項目の第1の試薬容器1と第2の試薬容器1とを、特定の位置関係に載置させる第1の試薬容器1及び第2の試薬容器1の構造を説明する。図4及び5は、試薬容器1の外観を示す図である。図4は、第1の試薬容器を背面から見た斜視図であり、図5は、第2の試薬容器の正面から見た斜視図である。
【0044】
第1の試薬容器1A1は、測定項目Aで用いられる2種の試薬のうちの第1試薬A1を収納するための試薬容器であり、第2の試薬容器1A2は、所定の測定項目Aで用いられる2種の試薬のうちの第2試薬A2を収納するための試薬容器である。
【0045】
この測定項目Aで用いられる第1の試薬容器1A1と第2の試薬容器1A2は、試薬庫6の半径方向に並べてセットされる。第1の試薬容器1A1は、試薬庫の内周側にセットされ、第2の試薬容器1A2は、試薬庫の外周側にセットされる。
【0046】
第1の試薬容器1A1は、図4に示すように、底面が台形の柱形状を有し、内部が中空となっており、その内部に測定項目Aで用いられる第1試薬A1が収容される。自動分析装置には、台形の上底側を試薬庫中心に向けてセットされる。
【0047】
第1の試薬容器1A1は、台形の上底側を正面、台形の下底側を背面とすると、背面に特有の連結面100A1が設けられている。特有の連結面100A1とは、第1の試薬容器1A1に特有の嵌合形状を有している面である。尚、第1の試薬容器1A1は、他の測定項目B,C,・・・で用いられる第1の試薬容器1B1,1C1,・・・とその形状や容積は変わらない。従って、換言すると、特有の連結面100A1とは、測定項目Aに特有の嵌合形状、又は測定項目Aに用いられる第1試薬A1に特有の嵌合形状を有しているともいえる。
【0048】
この連結面100A1は、特有の嵌合形状として、特有の凹凸形状を呈している。具体的には、第1の試薬容器1A1の背面から突出したピン体101と、第1の試薬容器1A1の背面に穿設された差込孔102との組み合わせで構成され、このピン体101が突出する位置や本数、差込孔102が穿設される位置や数が特有となる。
【0049】
一方、第2の試薬容器1A2は、図5に示すように、底面が台形の柱形状を有し、内部が中空となっており、その内部に測定項目Aで用いられる第2試薬A2が収容される。試薬庫6には、台形の上底側を第1の試薬容器1A1の背面に向けてセットされる。第2の試薬容器1A2の上底の長さは、第1の試薬容器1A1の下底の長さと略同一である。
【0050】
第2の試薬容器1A2は、台形の上底側を正面、台形の下底側を背面とすると、正面に特有の連結面100A2が設けられている。特有の連結面100A2とは、第2の試薬容器1A2に特有の嵌合形状を有している面である。第2の試薬容器1A2についても、他の測定項目B,C,・・・で用いられる第2の試薬容器1B2,1C2,・・・とその形状や容積は変わらない。従って、換言すると、特有の連結面100A2とは、測定項目Aに特有の嵌合形状、又は測定項目Aに用いられる第2試薬A2に特有の嵌合形状を有しているともいえる。
【0051】
この連結面100A2は、第1の試薬容器1A1に設けられた連結面100A1と同様に、第2の試薬容器1A2の正面から突出したピン体101と、第2の試薬容器1A2の正面に穿設された差込孔102との組み合わせで構成されている。即ち、このピン体101が突出する位置や本数、差込孔102が穿設される位置や数が特有となる。
【0052】
但し、この連結面100A1と連結面100A2とは、これらの組み合わせについてのみ嵌合可能な特有の嵌合形状を有する。連結面100A1と連結面100A2とは、第1の試薬容器1A1の背面と第2の試薬容器1A2の正面とが向かい合わせになったときに、その領域の位置及び範囲が等しく、且つピン体101が突出している箇所と対向する箇所は差込孔102となり、差込孔102が穿設されている箇所と対向する箇所はピン体101となっており、ピン体101の突出長と差込孔102の深さとは同一である。
【0053】
例えば、測定項目Aに用いられる第1試薬A1を収容した第1の試薬容器1A1の連結面100A1は、連結面100A1を縦に3分割、横に2分割すると、背面から正面に向かう方向から見て左下にピン体101が突出し、右上及び右中に差込孔102が穿設されている。
【0054】
測定項目Aに用いられる第2試薬A2を収容した第2の試薬容器1A2の連結面100A2は、背面から正面に向かう方向から見て左下に差込孔102が穿設され、右上及び右中にピン体101が突出している。
【0055】
そして、他の測定項目、例えば測定項目Bに用いられる第1の試薬容器1B1や第2の試薬容器1B2の連結面100B1や連結面100B2は、そのピン体101や差込孔102の数や位置が連結面100A1や連結面100A2と異なる。
【0056】
従って、図6に示すように、第1の試薬容器1A1と第2の試薬容器1A2のみが連結可能となり、測定項目Aについて用いられる第1試薬と第2試薬とが必ずセットで試薬庫6に載置可能となる。この特有の連結面100については、測定項目Bで用いられる第1の試薬容器1B1と第2の試薬容器1B2も同様にこれらの組み合わせのみが嵌合可能な特有の連結面100B1,100B2を有する。測定項目C,D,E,・・・で用いられる試薬容器1C1,1C2,1D1,1D2,1E1,1E2,・・・についても同様である。
【0057】
図7は、各種の試薬容器1が有する特有の連結面100の具体例を示す図である。
【0058】
例えば、測定項目Aに用いられる第1試薬A1を収容する第1の試薬容器1A1は、連結面100A1を背面から正面へ向けてみて縦に3分割、横に2分割した場合、左上にピン体101が突出し、右下に差込孔102が穿設された連結面100A1を有する。
【0059】
このとき、この連結面100A1に嵌合可能な形状は、左上に差込孔102が穿設され、右下にピン体101が突出した連結面100A2のみであり、この連結面100A2は、測定項目Aに用いられる第2試薬A2を収容する第2の試薬容器1A2にのみ有する。
【0060】
従って、連結面100A1と連結面100A2とは、この組み合わせ以外には勘合せず、第1の試薬容器1A1と第2の試薬容器1A2のみが連結可能となる。
【0061】
また、測定項目Bに用いられる第1試薬B1を収容する第1の試薬容器1B1は、左上と左中にピン体101が突出し、右中と右下に差込孔102が穿設された連結面100B1を有する。
【0062】
このとき、この連結面100B1に嵌合可能な形状は、左上と左中に差込孔102が穿設され、右中と右下にピン体101が突出した連結面100B2のみであり、この連結面100B2は、測定項目Bに用いられる第2試薬B2を収容する第2の試薬容器1B2にのみ有する。
【0063】
従って、連結面100B1と連結面100B2とは、この組み合わせ以外には勘合せず、第1の試薬容器1B1と第2の試薬容器1B2のみが連結可能となる。
【0064】
即ち、測定項目Aに用いられる第2の試薬容器1A2には、測定項目Bに用いられる第1の試薬容器1B1は連結できず、第1の試薬容器1A1のみが連結可能なため、測定項目Aにおける試薬のセットミスが防止される。同様に、測定項目Bに用いられる第2の試薬容器1B2には、測定項目Aに用いられる第1の試薬容器1A1は連結できず、第1の試薬容器1B1のみが連結可能なため、測定項目Bにおける試薬のセットミスが防止される。
【0065】
次に、この試薬容器1の変形例について説明する。図8は、試薬容器1の変形例を示す斜視図である。
【0066】
この試薬容器1は、第1の試薬容器1についても、第2の試薬容器1についても連結面100が着脱可能となっている。第1の試薬容器1及び第2の試薬容器1は、連結面100が存在していた壁部が内部へ向けて押し込まれており、溝部3が形成されている。具体的には、第1の試薬容器1は、背面に溝部3が形成され、第2の試薬容器1は、前面に溝部3が形成されている。溝部3の形成位置、範囲、形状、及び深さは、試薬容器1A1,1A2,1B1,1B2,1C1,1C2・・・を問わず同一でかまわない。
【0067】
この試薬容器1A1,1A2,1B1,1B2,1C1,1C2,・・・は、それぞれアダプタ4A1,4A2,4B1,4B2,4C1,4C2,・・・を有する。アダプタ4は、それぞれ同一の直方体形状を有し、その大きさ、形状、及び高さは溝部3と同一か嵌め込み可能な程度に若干そのスケールを小さくする。
【0068】
このアダプタ4A1,4A2,4B1,4B2,4C1,4C2,・・・は、一面にそれぞれ連結面100A1,100A2,100B1,100B2,100C1,100C2,・・・等の固有の嵌合形状を有する。この連結面100が形成された面とは反対の面を背面とし、背面を溝部3に嵌め込むことで、アダプタ4は、試薬容器1に着脱自在に取り付けられる。
【0069】
このような試薬容器1の管理方法を説明する。図8に示すように、まず、測定項目Aに用いられる第1試薬A1を収容した第1の試薬容器1A1の溝部3には、連結面100A1等の固有の嵌合形状を有するアダプタ4A1を予め取り付けておく。また、測定項目Aに用いられる第2試薬A2を収容した第2の試薬容器1A2の溝部3には、第1の試薬容器1A1にアダプタ4A1を取り付けていれば、その連結面100A1とのみ嵌合可能な連結面100A2を有するアダプタ4A2を予め取り付けておく。
【0070】
自動分析装置において、測定項目Aについての分析を行う場合には、このアダプタ4A1を取り付けた第1の試薬容器1A1とアダプタ4A2を取り付けた第2の試薬容器1A2とを保管庫等から取り出す。そして、第1の試薬容器1A1の背面と第2の試薬容器1A2の正面とを向かい合わせにし、アダプタ4A1とアダプタ4A2とを嵌合させることにより、これら試薬容器1A1と1A2とを連結する。連結した試薬容器1A1と1A2とは、第1の試薬容器1A1を内周側にして自動分析装置の試薬庫5にセットする。
【0071】
このように、アダプタ4A1と4A2のように、予め唯一嵌合可能なアダプタ4同士を同一の測定項目に用いられる試薬を収容した第1の試薬容器1と第2の試薬容器1とに取り付けておくことで、これらの第1の試薬容器1と第2の試薬容器1のみが連結可能となり、分析の際に試薬の組み合わせを間違えることが防止される。
【0072】
即ち、例えば、第2の試薬容器1A2の背面に貼り付けられたバーコード2A12を読取部20で読みとることにより、セットされた試薬容器1の組み合わせは、測定項目Aに用いられる第1試薬A1と第2試薬A2であると認識されるが、この自動分析装置の認識とセットされた試薬の組み合わせとの相違が生じることはない。
【0073】
更に、この試薬容器1の変形例では、試薬容器1の本体については、溝部3を穿設するのみであるため、同一の金型からの量産が可能となり、試薬容器1の生産性を妨げることはない。
【0074】
図9及び図10は、連結面100の変形例を示す図である。
【0075】
図9に示すように、連結面100は、挿入関係のあるピン体101と差込孔102で構成する他、互いに締結可能な形状を有する鉤体103を形成するようにしてもよい。そして、この鉤体103の形状を測定項目に応じて異ならせることで、組み合わせて用いられない試薬同士がセットされてしまうことを防止できる。
【0076】
また、図10に示すように、連結面100は、形状が特徴的なピン体101と差込孔102で構成するようにしてもよい。形状が特徴的とは、その形状の他、ピン体101や差込孔102が存在する領域の向きや大きさが特徴的であることを含む。
【0077】
例えば、測定項目Aに用いられるアダプタ4A1と4A2の連結面100A1と100A2には、湾曲したピン体101とそれに対応する差込孔102、及び円柱のピン体101とそれに対応する差込孔102が形成されている。
【0078】
一方、測定項目Bに用いられるアダプタ4B1と4B2の連結面100B1と100B2には、円柱のピン体101とそれに対応する差込孔102、及び板状のピン体101とそれに対応する差込孔102が形成されている。さらに、2枚の板状のピン体101は、それぞれ延び方向が異なる。
【0079】
以上のように、第1試薬を収容する第1の試薬容器1と、第2試薬を収容する第2の試薬容器1とに、その側面に溝部3を穿設して、測定項目に応じて特有の嵌合形状を表面に有する一対のアダプタ4を着脱自在に取り付け、溝部3に取り付けられたアダプタ4同士の連結を介して第1の試薬容器1と前記第2の試薬容器1とを連結するようにした。これにより、この一対のアダプタ4の片側が取り付けられた試薬容器1のみが連結可能となるため、第1試薬と第2試薬とを間違った組み合わせで載置してしまうことが防止される。
【0080】
尚、本実施形態では、測定項目に応じてアダプタ4の組み合わせを選択するようにしたが、更に試薬のロット番号や使用期限に応じて更にアダプタ4の組み合わせを詳細化してもよい。例えば、測定項目Aに用いられる第1の試薬容器1A1と第2の試薬容器1A2であるが、製造年月日が異なる試薬を収容している場合には、使用期限毎に異なる特有の連結面100を有するアダプタ4を取り付けるようにする。これにより、試薬の管理を容易にすることが可能となる。
【0081】
また、第1の試薬容器1と第2の試薬容器1とで溝部3の範囲、形状、又は深さを変えてもよい。第1の試薬容器1A1と第1の試薬容器1B1等、異なる測定項目で使用される試薬を収容した試薬容器1については、それぞれ溝部3の形成位置、範囲、形状、及び深さを変えてもよい。この場合、それに応じてアダプタ4の形状を異ならせる必要がある。
【0082】
更に、本実施形態では2種の試薬を使用する場合について説明したが、本発明は、これに限られるものではなく、3種以上の試薬を組み合わせて測定に使用する場合にも適用することができる。即ち、その3種以上の試薬のうち、連結関係を有する2種の試薬については、その容器に上記で説明した特有の嵌合形状を設ける。または、その容器には、上記で説明した特有の嵌合形状を有したアダプタ4が備えられる。例えば、前記一対のアダプタ4を2個以上使用することで3種以上の試薬容器1を連結して測定に用いることができる。
【符号の説明】
【0083】
1 試薬容器
2 バーコード
3 溝部
4 アダプタ
5 試薬庫
6 試薬庫
7 反応管
8 反応ディスク
9 ディスクサンプラ
10 分注アーム
11 分注アーム
12 分注アーム
13 撹拌ユニット
14 洗浄ユニット
15 測光ユニット
16 分注プローブ
17 分注プローブ
18 被検試料用分注プローブ
19 被検試料容器
20 読取部
100 連結面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検試料の測定項目毎に組み合わせて使用される少なくとも2種の試薬を収容する試薬容器であって、
第1試薬を収容する第1の試薬容器と、
第2試薬を収容する第2の試薬容器と、
前記測定項目に応じて特有の凹凸部を表面に有する一対の連結面と、
を備え、
前記連結面に設けられた凹凸部同士の嵌合により、同一測定項目で使用される2種の試薬を収容した前記第1の試薬容器と前記第2の試薬容器とが連結されること、
を特徴とする試薬容器。
【請求項2】
前記連結面は、更に製造ロットに応じて特有の凹凸部を有すること、
を特徴とする請求項1記載の試薬容器。
【請求項3】
前記第1の試薬容器と前記第2の試薬容器の一方にのみ設けられ、前記第1の試薬容器と前記第2の試薬容器に収容される前記第1試薬と前記第2試薬の情報を含んだ試薬識別情報を有する記憶部を更に備えること、
を特徴とする請求項1記載の試薬容器。
【請求項4】
被検試料の測定項目毎に組み合わせて使用される2種の試薬のうちの一方の試薬を内部に収容した試薬容器であって、
他方の試薬の容器が有する凹凸部にのみ嵌合可能な凹凸部を表面に有する連結面と、
を備え、
前記連結面に設けられた凹凸部を介して前記他方の試薬の容器にのみ連結可能なこと、
を特徴とする試薬容器。
【請求項5】
前記連結面は、
他方の試薬を収容し所定の製造ロットの容器が有する嵌合形状にのみ嵌合可能な凹凸部を表面に有すること、
を特徴とする請求項4記載の試薬容器。
【請求項6】
試薬庫内の各種試薬のうちの少なくとも2種を測定項目に応じて選択し、選択した試薬と被検試料とを分注してその混合液から前記選択した測定項目に関する情報を測定する自動分析装置であって、
各種測定項目に応じた各種の第1試薬を収容するとともに、側面に凹凸部を有し、前記試薬庫内に載置される各種の第1の試薬容器と、
各種測定項目に応じた各種の第2試薬を収容するとともに、側面に凹凸部を有し、前記試薬庫内に載置される各種の第2の試薬容器と、
前記測定項目に応じて特有の凹凸部を表面に有する一対の連結面と、
を備え、
同一の測定項目で使用される試薬を収容する前記第1の試薬容器と前記第2の試薬容器とは、その測定項目に応じた前記凹凸部の片側がそれぞれの前記連結面に取り付けられて、当該凹凸部の嵌合により連結された状態で前記試薬庫に載置されていること、
を特徴とする自動分析装置。
【請求項7】
被検試料の測定項目毎に組み合わせて使用される少なくとも2種の試薬の測定項目毎、試薬毎、或いは製造ロット単位で行う試薬管理方法であって、
前記試薬の一方を収容する第1の試薬容器と他方を収容する第2の試薬容器とに設けられた連結面に、測定項目毎、試薬毎、或いは製造ロット単位で特有の凹凸部を形成し、
前記凹凸部を介して、同一測定項目に用いられ、或いは更に同一製造ロットの前記第1の試薬容器と前記第2の試薬容器とを連結すること、
を特徴とする試薬管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−64753(P2013−64753A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−267773(P2012−267773)
【出願日】平成24年12月7日(2012.12.7)
【分割の表示】特願2008−316780(P2008−316780)の分割
【原出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】