説明

試薬容器用蓋体及びそれを装着した試薬容器、試薬キット

【課題】先端部が液面に接触したこと検知するための静電センサを有する吸引具を備えた生体試料分析装置に用いられる試薬容器の開口に装着され、静電センサを誤動作させることなく、容器に蓋体を装着したままで、その吸引具が容器内に収容された試薬を吸引することができる試薬容器用蓋体を提供する。
【解決手段】本発明に係る試薬容器用蓋体は、試薬を吸引するための吸引具を有する生体試料分析装置に用いられる試薬容器の開口に装着される試薬容器用蓋体であって、試薬容器の開口に嵌入される嵌入筒部と、前記嵌入筒部の上部に設けられ、前記嵌入筒部より大きな外径を有し、装着時に試薬容器開口の端縁に当接する当接部を備えたフランジ部と、前記フランジ部の内側に試薬容器の開口を覆うように配置され、中央に吸引具を受け入れるための開口を有すると共に、複数の切り込みによって区分され、外力によって屈曲可能な蓋部とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試薬容器の開口に装着される試薬容器用蓋体及びそれを装着した試薬容器、試薬キットに関する。
【背景技術】
【0002】
容器に収容された血清や血漿などの検体と、反応試薬や希釈液などの試薬とから測定試料を調製し分析することが一般に行われている。血液凝固検査や免疫検査などにおいては、複数の検体及び反応試薬を連続的に分注装置で分注して、複数の測定試料を調製し、その反応を測定する自動分析装置が用いられている。これらの自動分析装置は、各測定項目で試薬の消費量が異なるため、それらの試薬の交換時期も異なる。また、多数の検体をセットし、多数の項目を測定するために、測定開始から終了までに長時間を有することもある。このため、自動分析装置に試薬が長時間セットされたままで使用されることがある。
【0003】
そのように試薬を分析装置に長時間セットしたままで放置しておくと、蒸発乾燥、埃等の混入などにより試薬の劣化が生じて分析結果に影響を及ぼすことがある。そこで、試薬の保存安定性を高めるため、試薬を吸引するとき以外は蓋で試薬容器の開口部を自動的に閉じる機構を設けた分析装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された分析装置においては、試薬容器の開口部を塞ぐ機構部を容器に対応させて装置内に設けなくてはならず、分析装置の構成が複雑になっていた。また、試薬容器の開口部を蓋で閉じる動作を適宜行う必要があるため装置の制御が煩雑になるという問題もあった。
【0005】
一方、試薬容器の開口を覆うプラスチック成形の蓋であって、蓋に備えられた天井壁の中央区域に互いに接近して同じサイズの凹所が配置され、隣接する凹所は自由上端部が尖った縁を形成する隔壁によって仕切られ、それぞれの凹所の底にピペット装置の針を突き刺すことが可能な試薬容器用の蓋が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
この特許文献2に記載の試薬容器の蓋を用いれば、試薬容器の開口を塞ぐ機構は不要となり、分析装置の構成が複雑になるという問題を解消することができる。
【0007】
【特許文献1】特開平8−160050号公報
【特許文献2】特開平7−191040号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2に記載の試薬容器の蓋においては、凹所の底を貫通可能な針状のピペットしか使用できないという問題がある。また、試薬容器から試薬を吸引する際には、ピペット針が凹所の底を貫通するため、必ず蓋とピペット針が接触してしまう。一方、特開2003−114239号公報に記載されているように、ピペットに設けられた静電容量式の液面センサを用いて試薬の液面検出等を行う技術が知られている。このように静電容量式の液面センサを備えたピペット針で引用文献2に記載された蓋を介して試薬を吸引する場合、蓋をピペット針が貫通する際の静電容量変化を液面センサが検出してしまうことがある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る試薬容器用蓋体は、試薬を吸引するための吸引具を有する生体試料分析装置に用いられる試薬容器の開口に装着される試薬容器用蓋体であって、試薬容器の開口に嵌入される嵌入筒部と、前記嵌入筒部の上部に設けられ、前記嵌入筒部より大きな外径を有し、装着時に試薬容器開口の端縁に当接する当接部を備えたフランジ部と、前記フランジ部の内側に試薬容器の開口を覆うように配置され、中央に吸引具を受け入れるための開口を有すると共に、複数の切り込みによって区分され、外力によって屈曲可能な蓋部とを備えることを特徴とする。
【0010】
このような構成により、簡単な構造で試薬の保存安定性を高めることができる。また、静電容量式の液面センサを備えた吸引具を用いる場合でも液面センサを誤動作させることなく、容器に蓋体を装着したままで、容器内に収容された試薬を吸引することができる。また、万一、吸引具が下降中に蓋部に接触した場合や、大径の吸引具を用いる場合であっても、複数の切り込みによって区分され、外力によって屈曲可能な蓋部が試薬容器の内側に変形することによって吸引具を受け入れることが可能である。
【0011】
上記試薬容器用蓋体の前記蓋部は、前記フランジ部の当接部近傍の内周面にその基部が配置されていることが好ましい。
【0012】
また、上記試薬容器用蓋体の前記フランジ部の内周面は、上部から下部に向かって開口面積が漸減するようにテーパー状に形成されていることが好ましい。
【0013】
また、上記試薬容器用蓋体の前記嵌入筒部の中央部近傍の外径は、試薬容器開口の内径より大きく、前記嵌入筒部の先端部には、その外径が漸減するようにテーパーが形成されていることが好ましい。
【0014】
このような構成により、蓋体が試薬容器に取り付けられる際には、蓋体を試薬容器へ挿入し易くするとともに、蓋体が試薬容器の開口に取り付けられた際には、試薬容器開口の内径より大きい嵌入筒部の中央部近傍が、試薬容器の内壁を押すようにして密着することにより、試薬容器に対する蓋体の取り付け強度を向上させることができる。
【0015】
上記試薬容器用蓋体の前記フランジ部は、その上面の外周部近傍にリブを備えることが好ましい。
【0016】
使用中の試薬を保管する必要がある場合、試薬容器内に収容された試薬の蒸発及び試薬の劣化を防ぐために、試薬容器にその開口を覆う外蓋を装着する。このとき、このような構成により、蓋体を試薬容器に装着したままであっても、リブにより、外蓋と蓋体との隙間を無くすことができ、外蓋と試薬容器との密封性を向上させることができる。
【0017】
上記試薬容器用蓋体は、前記蓋体が帯電防止処理されていることが好ましい。
【0018】
このような構成により、装置蓋体表面に電荷が蓄積されることを防止することができるため、生体試料分析装置の吸引具に、その先端部が液面に接触したこと検知するための静電容量式の液面センサが備えられている場合でも、蓋体に蓄積された電荷の影響による液面センサの誤動作を防止することができる。
【0019】
本発明に係る試薬容器は、開口を有する有底の容器本体と、前記容器本体の開口に装着可能な蓋体とを備え、前記蓋体は、前記容器本体の開口に嵌入される嵌入筒部と、前記嵌入筒部の上部に設けられ、前記嵌入筒部より大きな外径を有し、装着時に試薬容器開口の端縁に当接する当接部を備えたフランジ部と、前記フランジ部の内周面に試薬容器の開口を覆うように配置され、中央に吸引具を受け入れるための開口を有すると共に、複数の切り込みによって区分され、外力によって屈曲可能な蓋部と、を有することを特徴とする。
【0020】
本発明に係る試薬キットは、試薬と、開口を有し、前記試薬を収容するための有底の容器本体と、前記容器本体の開口に装着可能な蓋体とを備え、前記蓋体は、前記容器本体の開口に嵌入される嵌入筒部と、前記嵌入筒部の上部に設けられ、前記嵌入筒部より大きな外径を有し、装着時に試薬容器開口の端縁に当接する当接部を備えたフランジ部と、前記フランジ部の内周面に試薬容器の開口を覆うように配置され、中央に吸引具を受け入れるための開口を有すると共に、複数の切り込みによって区分され、外力によって屈曲可能な蓋部と、を有することを特徴とする。
【0021】
上記試薬キットは、前記蓋体を含む容器本体の上部を覆うための外蓋をさらに備えることが好ましい。
【0022】
このような構成により、使用中の試薬を保管する必要がある場合、蓋体を含む容器本体の上部を覆うための外蓋を容器本体に装着することにより、試薬容器内に収容された試薬の蒸発及び試薬の劣化を防ぐことが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る試薬容器用蓋体によれば、簡単な構造で試薬の保存安定性を高めることができる。また、生体試料分析装置に設けられた液面センサを誤動作させることなく、容器に蓋体を装着したままで、試料を吸引するための吸引具が容器内に収容された試薬を吸引することができる。さらに、複数の切り込みによって区分され、外力によって屈曲可能な蓋部によって、吸引具の受け入れ性能が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態に係る試薬容器用蓋体について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0025】
図1は、第1の実施形態の試薬容器用蓋体が、容器の開口に装着された状態を示す斜視図である。生体試料分析装置に用いられる試薬を収容する試薬容器100は、蓋体1と容器本体2とを備える。容器本体2は、試薬を収容することが可能な有底の容器である。この試薬は、血清や血漿などの検体と混合して、測定試料を調製するための緩衝剤や反応試薬である。この容器本体2の上端には、開口2aが形成されており、蓋体1は、この開口2aに装着される。また、試薬容器100には、内部に収容された試薬の蒸発を防ぐために、開口2aを含む試薬容器100の上部を覆う外蓋100a(図5)を装着することが可能である。
【0026】
図2は試薬容器用蓋体の上面図であり、図3は図2のA−A断面図であり、図4は、試薬容器用蓋体の側面図である。図2に示されるように蓋体1においては、フランジ部13の内側に、容器本体2の開口2aを覆うように蓋部14が設けられている。蓋部14は、7本の切り込み14aによって7つの部分に区分されており、その中心には吸引具を受け入れるための開口が設けられている。また、フランジ部13の上面の外周部には、図5に示される外蓋100aを装着する際に、外蓋100aと蓋体1との隙間を無くすためのリブ12が設けられている。
【0027】
図3及び図4に示されるように、蓋体1は、略円筒状の嵌入筒部11と、嵌入筒部11の上部に設けられたフランジ部13と、フランジ部13の内周面下部に設けられた蓋部14とを備えている。フランジ部13は嵌入筒部11より大きな外径と厚さを有し、嵌入筒部11より短い略円筒形状(略円環形状)を有しており、その下面が容器本体2の開口の端縁に対する当接部となっている。略円筒状の嵌入筒部11が容器本体2の開口2aに挿入されることにより、蓋体1が容器本体2に取り付けられ、フランジ部13の下面が容器本体2の開口の端縁に当接する。
【0028】
図4に示されるように、嵌入筒部11の外径は、フランジ部13近傍の上部位置から先端側の下部に向かうに従って徐々に大きくなって、中央部より若干先端側の位置で最も外径が大きくなっている。一方、嵌入筒部11の先端部には、先端に向かって外径が小さくなるようにテーパーが形成されており、先端部の外径が上述した上部位置の外径よりも小さくなっている。また、嵌入筒部11の中央部近傍位置の外径は容器本体2の開口2aの内径に比べて若干大きくなるように形成されている。なお、図3に示すように、この嵌入筒部11の厚さは、先端部を除いては、ほぼ一定であり、フランジ部13より厚さが薄く形成されている。
【0029】
このような嵌入筒部11の構成によって、嵌入筒部11を容器本体2に挿入し易くするとともに、容器本体2に対する蓋体1の取り付け強度を向上させることができる。
【0030】
図2に示されるように、蓋部14は、複数本の切り込み14aが形成されており、その中心には、試薬を吸引するための吸引具を受け入れるための開口が設けられている。この開口を設けることにより、例えば、受け入れる吸引具が特開2003−114239号公報に記載されているような試薬の液面検出を行うための静電容量式の液面センサが搭載されているピペットであっても、ピペットが蓋部14に接触して、液面センサが誤検知を行うことを防止することができる。
【0031】
切り込み14aは、蓋体1の開口の中央から放射状に等角度間隔で7本形成されている。このように、複数本の切り込み14aを形成することにより、蓋部14は7つに区分され、区分された蓋部14が外力で嵌入筒部11側に屈曲するようになっている。
【0032】
このような構成の蓋部14により、通常のピペットよりも大径の吸引具を受け入れることが可能になる。
【0033】
また、図3に示すように、蓋部14の下面は、フランジ部13の下面と概ね同一平面に配置されている。
【0034】
第1実施形態の蓋体1は、嵌入筒部11、フランジ部13および蓋部14が一体的に形成されている。また、この蓋体1は、帯電防止剤(エレコンSS PP-220S(大日精化株式会社製))を1.2重量%混合したポリプロピレンにより形成されている。このように、蓋体1に帯電防止剤を添加することにより、低湿度環境で、静電気を帯びた使用者が試薬容器をセットするために蓋体1に触れた場合であっても、蓋体1が静電気を帯びるのを防止することができる。このため、ピペットが静電容量式の液面センサを搭載する場合でも、蓋体1に帯電した電荷の影響によって、液面センサが誤動作する恐れがない。
【0035】
図5は、試薬容器100に外蓋100aが装着された状態を示す断面図である。外蓋100aが当接する容器本体2の外周面には、螺旋状の凸部(図示せず)が形成されており、容器本体2に当接する外蓋100aの内周面には、凸部と係合するように凹部(図示せず)が形成されている。この凸部と凹部とが互いに係合することにより、外蓋100aが試薬容器100に密着する。この際、フランジ部13の上面の外周部に設けられたリブ12が、外蓋100aと試薬容器100との隙間を密封することにより、試薬容器100に収容された試薬が外気と触れることを防ぎ、試薬の蒸発及び劣化を防止することができる。
【0036】
次に、第2実施形態の蓋体1を図6に示す。この蓋体1は、嵌入筒部11に切れ込みを有すること以外は、第1実施形態の蓋体1と略同様の構成を有している。このような切れ込みを嵌入筒部11に設けることによって、容器本体2への蓋体1の取り付け性能を向上させることができる。また、第2実施形態の蓋体1は、蓋部14に7本の切れ込みを備えており、嵌入筒部11にも7本の切れ込みを有している。そして、蓋部14の各切れ込みが、嵌入筒部11の各切れ込みと直線上の配置されるように形成されている。
【0037】
次に、上述のような試薬容器100を使用した生体試料分析装置200の一例について説明する。図7は、生体試料分析装置200の概略構成を示す斜視図である。生体試料分析装置200は、血液試料の凝固反応の検査に供される血液凝固測定装置である。この生体試料分析装置200は、血液試料の分注に使用される試料用分注アームユニット4と、試薬の分注に使用される試薬用分注アームユニット5、6と、キュベット及び試薬容器を保持するテーブルユニット7と、測定試料の凝固の程度を検出する光学式の検出ユニット8と、血液試料を搬送する搬送ユニット9と、血液試料を希釈するための緩衝液が収容された緩衝液容器を保持する緩衝液収納部10とを備えている。
【0038】
テーブルユニット7には、血液試料に凝固反応を起こさせるための反応試薬(PT試薬、塩化カルシウム溶液、トロンビン試薬、トロンボンテスト試薬およびAPTT試薬等)が収容された試薬容器100が複数セットされている。
【0039】
一方、緩衝液収納部10には、血液試料を希釈するための緩衝液(オーレンベロナール緩衝液)が収容された試薬容器100が複数セットされている。この緩衝液収納部10は、血液試料を希釈する際に、試料用分注アームユニット4に接近することが可能なように、左右方向に移動可能に設けられている。
【0040】
なお、これらの試料容器100は、接地された金属製フレーム(図示せず)上に載置されており、何れの試薬容器100にも、第1実施形態の蓋体1が装着されている。
【0041】
図8は、図7で示した試料用分注アームユニット4の構成を示す側面図である。試料用分注アームユニット4は、機構部41と、軸42と、アーム43と、保持具44と、ピペット3とを備えている。また、試料容器100は、金属製フレーム(図示せず)上に載置されている。
【0042】
機構部41には、上方向に向かって円柱状に延びた軸42が支持されている。この軸42は、機構部41によってその中心軸回りに回動し、また、上下方向に往復直線運動することが可能である。この軸42の上端には、アーム43がこの軸42に直交して取り付けられている。このアーム43の先端には、保持具44が取り付けられており、この保持具44に、注射針状のピペット3が下方向に延びるように保持されている。このような構成により、ピペット3は、軸42、アーム43、保持具44と一体的に軸42を中心とした円周方向に回転し、上下方向に往復直線運動することができる。
【0043】
ピペット3は、導電性の外管と電気絶縁性の内管とからなる二重管構造を有する。この外管には、液面検知信号検出用のリード線3aがハンダ付けされており、このリード線3aは、アーム43内に内蔵された液面検知回路3bに接続される。液面検知を行う場合は、ピペット3の先端が容器本体2内の液面に接触したときに、ピペット3の外管と金属製フレーム(図示せず)との間の静電容量Cが液により短絡されて直流信号レベルが所定値より低くなるので、ピペット3が液面に接触したことが検知される。さらに、ピペット3には、液の吸引、吐出を行うためのシリンジポンプ(図示せず)が接続されている。このシリンジポンプによって、ピペット3は、液の吸引・吐出することが可能となる。
【0044】
この試料用分注アームユニット4により、生体試料分析装置200の中央付近まで移動した緩衝液収納部10に載置された試薬容器に収容された緩衝液を吸引する。試薬容器に装着された蓋体1の蓋部14の中央には、ピペット3の外径より大きな内径を有する開口が形成されている。この開口によって、ピペット3が下降する際に、蓋部14に接触することを防止できる。ピペット3は、開口部を通過して下降し、その先端が緩衝液の液面に到達した後、緩衝液を所定の量だけ吸引する。次に、ピペット3は、搬送ユニット9によって搬送された血液試料を吸引して、測定試料を調製する。その後、テーブルユニット7にセットされたキュベット内に測定試料を吐出する。
【0045】
測定試料を収容したキュベットは、図示しない移送ユニットによりテーブルユニット7から検出ユニット8に移送され、図示しない加温ユニットにより、キュベットが所定時間、所定温度(約37℃)まで加温される。
【0046】
図9は、試薬用分注アームユニット5、6の構成を示す断面図である。試薬用分注アームユニット5、6は、試薬を吸引・吐出するための吸引管3cと吸引管3cで吸引した試薬を加温するためのヒータ30aを有する加温ピペット30を備える。なお、試薬用分注アームユニット5、6の他の構成は、試料用分注アームユニット4と略同一であるのでその説明を省略する。また、吸引管3cは、ピペット3と同様に導電性の外管と電気絶縁性の内管とからなる二重管構造を有する。この外管には、液面検知信号検出用のリード線3aがハンダ付けされており、このリード線3aは、アーム43内に内蔵された液面検知回路3bに接続される。この吸引管3cの周囲には、ヒータ30aが設けられており、ヒータ30aの外側は熱伝導率の低いポリウレタン樹脂製の断熱材で覆われている。
【0047】
このような加温ピペット30によって、試薬を吸引して、吸引した反応試薬を所定の温度(約37℃)まで加温することができる。そして、加温した測定試料を収容したキュベット内に加温した反応試薬を吐出する。
【0048】
その後、キュベット内に反応試薬が混入された測定試料の凝固の程度が光学的に検出される。検出ユニット8は、生物活性法を利用して血液の凝固時間を測定することが可能であり、また、合成基質法を利用して、血漿に反応試薬を添加したときの吸光度変化量を測定することが可能であり、また、免疫比濁法を利用して、血漿又は血清に反応試薬を添加したときの吸光度変化量を測定することが可能である。
【0049】
なお、本実施の形態においては、生体試料分析装置200として血液凝固測定装置を使用した場合について述べたが、これに限定されるものではなく、例えば、血球分析装置、免疫分析装置、尿中有形成分分析装置、尿定性分析装置、便分析装置、粒子分析装置等、他の測定装置であってもよい。
【0050】
なお、本実施の形態においては、切り込み14aは、7本とした場合について述べたが、これに限定されるものではなく、切り込み14aは、2〜6本でも良いし、8本以上としてもよい。
【0051】
なお、本実施の形態においては、蓋体1の材料として、ポリプロピレンを使用した場合について述べたが、これに限定されるものではなく、蓋体としての強度を有する合成樹脂であればよい。
【0052】
なお、本実施の形態においては、蓋体1を構成する合成樹脂に帯電防止剤(エレコンSS PP-220S)を混合して、蓋体を成形する場合について述べたが、これに限定されるものではなく、帯電防止剤を侵漬、噴霧又は塗布することによって、帯電防止処理を行ってもよい。
【0053】
なお、本実施の形態においては、蓋体1の表面に帯電防止剤(エレコンSS PP-220S)を混合して、蓋体を成形する場合について述べたが、これに限定されるものではなく、例えば、帯電防止剤として、アセチレンブラック、オイルファーネスブラック、サーマルブラック等のカーボン系の材料、Ag,Cu,Ni等の金属微粉末、ZnO,SnOg等の金属酸化物、Al、ステンレス等の金属繊維、各種界面活性剤等を使用してもよい。
【0054】
また、帯電防止剤として、側鎖にカルボキシル基および4級アンモニウム塩基をもつ架橋性共重合体高分子を含む樹脂材料を用い、蓋体1の表面にその材料による帯電防止層を設けてもよい。
【0055】
以下、本発明の実施の形態に係る試薬キットについて説明する。試薬キットは、生体試料分析装置100によって使用される反応試薬及び緩衝液が収容された容器本体2と蓋体1とからなる。この容器本体2には、その側面に試薬の種類を記載したシール(図示せず)及びその底面に試薬の種類を示すバーコード(図示せず)が貼符され、外蓋100aが装着されている。なお、容器本体2、蓋体1及び外蓋100aの構成は、前述のものと略同一であるのでその説明を省略する。この試薬キットは、出荷時には、容器本体2と蓋体1とが別々に包装される。そして、この試薬キットの使用時には、使用者が外蓋100aを容器本体2から外し、容器本体2に蓋体1を装着して、生体試料計測装置200にセットするだけで、使用することが可能である。また、この試薬キットの保管時には、蓋体1を装着したままで、その上から外蓋100aを装着して保管することができる。
【0056】
なお、試薬キットの出荷時に、あらかじめ容器本体2に蓋体1を装着しておいて、さらにその上に外蓋100aを装着して出荷してもよい、これにより、試薬キットの使用時に、使用者が容器本体2に蓋体1を装着するという煩雑な手間を省略することができ、外蓋100aを容器本体から外し、生体試料計測装置200にセットするだけで、使用することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明に係る試薬容器用蓋体は、導電性を有する吸引具と、当該吸引具の先端部が液面に接触したこと検知するための静電容量式の液面センサとを備えた生体試料分析装置に用いられる試薬容器の開口に装着され、液面センサを誤動作させることなく、容器に蓋体を装着したままで、試料を吸引するための吸引具が容器内に収容された試薬を吸引することができる等、本発明は優れた効果を奏し、試薬容器用蓋体として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】第1の実施形態の試薬容器用蓋体が、容器の開口に装着された状態を示す斜視図である。
【図2】試薬容器用蓋体の上面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】試薬容器用蓋体の側面図である。
【図5】試薬容器100に外蓋100aが装着された状態を示す断面図である。
【図6】第2の実施形態の試薬容器用蓋体を示す斜視図である。
【図7】生体試料分析装置200の概略構成を示す斜視図である。
【図8】図7で示した試料用分注アームユニット4の構成を示す側面図である。
【図9】試薬用分注アームユニット5の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0059】
1 蓋体
11 嵌入筒部
12 リブ
13 フランジ部
14 蓋部
14a 切り込み
2 容器本体
2a 開口
3 ピペット
3a リード線
3b 液面検知回路
3c 吸引管
30 加温ピペット
30a ヒータ
4 試料用分注アームユニット
41 機構部
42 軸
43 アーム
44 保持具
5、6 試薬用分注アームユニット
7 テーブルユニット
8 検出ユニット
9 搬送ユニット
10 緩衝液収納部
100 試薬容器
100a 外蓋
200 生体試料分析装置



























【特許請求の範囲】
【請求項1】
試薬を吸引するための吸引具を有する生体試料分析装置に用いられる試薬容器の開口に装着される試薬容器用蓋体であって、
試薬容器の開口に嵌入される嵌入筒部と、
前記嵌入筒部の上部に設けられ、前記嵌入筒部より大きな外径を有し、装着時に試薬容器開口の端縁に当接する当接部を備えたフランジ部と、
前記フランジ部の内周面に試薬容器の開口を覆うように配置され、中央に吸引具を受け入れるための開口を有すると共に、複数の切り込みによって区分され、外力によって屈曲可能な蓋部とを備える試薬容器用蓋体。
【請求項2】
前記蓋部は、前記フランジ部の当接部近傍の内周面にその基部が配置されている請求項1に記載の試薬容器用蓋体。
【請求項3】
前記フランジ部の内周面は、上部から下部に向かって開口面積が漸減するようにテーパー状に形成されている請求項1又は請求項2に記載の試薬容器用蓋体。
【請求項4】
前記嵌入筒部の中央部近傍の外径は、試薬容器開口の内径より大きく、前記嵌入筒部の先端部には、その外径が漸減するようにテーパーが形成されている請求項1〜3の何れか1項に記載の試薬容器用蓋体。
【請求項5】
前記フランジ部は、その上面の外周部近傍にリブを備える請求項1〜4の何れか1項に記載の試薬容器用蓋体。
【請求項6】
前記蓋体が帯電防止処理されている請求項1〜5の何れか1項に記載の試薬容器用蓋体。
【請求項7】
開口を有する有底の容器本体と、
前記容器本体の開口に装着可能な蓋体とを備え、
前記蓋体は、前記容器本体の開口に嵌入される嵌入筒部と、
前記嵌入筒部の上部に設けられ、前記嵌入筒部より大きな外径を有し、装着時に試薬容器開口の端縁に当接する当接部を備えたフランジ部と、
前記フランジ部の内周面に試薬容器の開口を覆うように配置され、中央に吸引具を受け入れるための開口を有すると共に、複数の切り込みによって区分され、外力によって屈曲可能な蓋部と、を有することを特徴とする試薬容器。
【請求項8】
試薬と、
開口を有し、前記試薬を収容するための有底の容器本体と、
前記容器本体の開口に装着可能な蓋体とを備え、
前記蓋体は、前記容器本体の開口に嵌入される嵌入筒部と、
前記嵌入筒部の上部に設けられ、前記嵌入筒部より大きな外径を有し、装着時に試薬容器開口の端縁に当接する当接部を備えたフランジ部と、
前記フランジ部の内周面に試薬容器の開口を覆うように配置され、中央に吸引具を受け入れるための開口を有すると共に、複数の切り込みによって区分され、外力によって屈曲可能な蓋部と、を有することを特徴とする試薬キット。
【請求項9】
前記蓋体を含む容器本体の上部を覆うための外蓋をさらに備える請求項8に記載の試薬キット。











【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2007−205728(P2007−205728A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−21566(P2006−21566)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】