説明

試薬置場

【課題】作業者が手動で試薬ボトルを試薬置場の所定位置に設置する際に、該試薬ボトルに付されているバーコードをバーコードリーダにより確実に読み取りをできるようにする。
【解決手段】複数の試薬ボトル1を挿入方向に沿って並載可能なトレイ12と、水平方向に挿入される該トレイ12を所定位置まで案内するガイド14、14Aと、該ガイド近傍に配設され、挿入されるトレイ12に並載されるボトル1の側面に記録されているバーコードを読み取るバーコードリーダ16と、前記ガイド14、14Aに挿入される前記トレイ12の挿入速度を抑制する速度抑制手段34と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試薬置場、特に血液等の検体の自動分析に使用する自動分注器に適用して好適な試薬置場に関する。
【背景技術】
【0002】
血液等の検体を自動分析するための自動分注器では、多くの試薬や検体を間違わずに確実に採取する必要があるため、これらを正確に管理することが重要となる。
【0003】
自動分注器で試薬や検体を管理するための技術としては、例えば特許文献1に、バーコードが貼付された容器を、回転ディスクの円周上に設置し、該ディスクを回転させ、所定位置に固定されているバーコードリーダによりバーコードに記録されている情報を読み取る方式が開示されている。
【0004】
従来の自動分注器では、固定されているバーコードリーダの近傍を、試薬ボトルや検体試験管を搬送ユニットを用いて移動させることにより、貼付されているバーコードを読み取る方法が一般的である。
【0005】
このように、従来の自動分注器では、試薬ボトルや検体試験管の移動は搬送ユニットにより行い、その移動速度はモータ等によりバーコードリーダの読み取りが可能な移動速度になるように制御されているため、バーコードの読み取りは殆ど失敗しない。
【0006】
【特許文献1】特開2004−317269号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、試薬ボトルや検体試験管等の容器を所定位置に設置する作業を作業者が手動で行なう場合、それらを設置する際の移動速度は作業者に委ねられてしまう。従って、移動速度が想定範囲を超えて速い場合には、バーコード読み取りの成功率が低くなるという問題がある。
【0008】
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、作業者が手動で試薬ボトルを試薬置場の所定位置に設置する際に、該試薬ボトルに付されているバーコードを、バーコードリーダにより確実に読み取ることができる試薬置場を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、試薬置場において、複数の試薬ボトルを挿入方向に沿って並載可能なトレイと、水平方向に挿入される該トレイを所定位置まで案内するガイドと、該ガイド近傍に配設され、挿入されるトレイに並載されるボトルの側面に記録されているバーコードを読み取るバーコードリーダと、前記ガイドに挿入される前記トレイの挿入速度を抑制する速度抑制手段と、を備えたことにより、前記課題を解決したものである。
【0010】
本発明においては、前記速度抑制手段が、前記トレイに付設された挿入方向に延びるラックと、該ラックに噛合する歯車が同軸に固定された回転軸と、該回転軸の回転に負荷を加えるトルクリミッタとを含むようにしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、試薬置場が、ガイドにトレイを挿入する際の挿入速度を抑制する速度抑制手段を備えるようにしたので、トレイの挿入速度をバーコードリーダの読み取り範囲内に抑えることが可能となるため、トレイに並載されている試薬ボトルのバーコードを確実に読み取ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明に係る一実施形態の試薬置場の使用状態の外観を示す斜視図である。この試薬置場10には、図示されているように、複数の試薬ボトル1がトレイ12を介して設置されるようになっている。
【0014】
ここで、使用される試薬ボトル1は、図2に拡大して示すように、横断面が矩形のキャビティが形成されている薄い箱型の容器からなり、一方の短辺側側面にはバーコード2を印刷したステッカーが貼り付けられている。
【0015】
この試薬ボトル1を、前記図1のようにトレイ12に厚さ方向に隙間なく一列に積載(並載)し、その状態で該トレイ12を、図中左側の挿入始端側正面から見た内部構造を示す図3に示される、下側ガイド14と上側ガイド14Aの間に挿入し、後端側へスライドさせて所定位置に挿入することにより、複数の試薬ボトル1を一括して設置できるようになっている。
【0016】
又、このようにトレイ12をスライドさせる際に、試薬ボトル1に貼付されたバーコード2を読み取るために、試薬置場3の一側のボトル近接位置にバーコードリーダ16が設置されている。
【0017】
このバーコードリーダ16によっては、図4に試薬ボトル1の上方から見たイメージを示すように、読み取り用のレーザ光Lは平面ミラー16Aにより向きが変えられて試薬ボトル1の側面に照射されると共に、上下方向(図4の紙面にて垂直方向)に走査されることにより、バーコード2の読み取りが行なわれるようになっている。なお、バーコードリーダ16は平面ミラー16Aを介することなく、直接バーコード2を読み取ることができる位置や向きに設置してもよい。
【0018】
また、この試薬置場10には、バーコードリーダ16による各試薬ボトル1のバーコード読み取りタイミングを検出し、読み取った試薬ボトルの挿入後の位置情報を取得するためのエンコーダ部20が設置されている。
【0019】
このエンコーダ部20は、前記図3及びその斜視図である図5に示されるようにトレイ12の裏面右側に固定され、挿入方向に延びるラック22と、該ラック22に噛合する歯車24と、該歯車24が軸中心が一致するように同軸に固定され、試薬置場10の対向する側壁10A、10Bに回転可能に支持されている回転軸26と、該回転軸26の右側壁10A近傍に固定され、一体的に回転する円周上に等間隔のスリットが形成されたスリット円板28と、該スリット円板28のスリットを挟む位置に配設された、スリットの回転量を測定するフォトカプラからなるセンサ30とを含んでいる。
【0020】
このエンコーダ部20により、トレイ12を試薬置場10に挿入すると、挿入方向に移動するラック22により歯車24が回転され、同軸上のセンサ30によりバーコードリーダ16の読み取りタイミングが検出され、挿入設定後の各試薬ボトル1に対する位置情報の対応付けが行なわれる。
【0021】
本実施形態の試薬置場では、更に、前記図3、図5に示されるように、左側壁10B近傍の回転軸26に、底部にねじ止めされたブラケット32に固定されたトルクリミッタ(速度抑制手段)34が連結されている。
【0022】
このトルクリミッタ34は、左側壁10B側から見た図6に示されるように、該トルクリミッタ34の軸中心位置に嵌挿された回転軸26に差し込まれた平行ピン36と上記ブラケット32との間に挟み込まれ、軸方向に位置決め固定されると共に、係止されている平行ピン36により、回転軸26の回転がトルクリミッタ34に伝達されるようになっている。
【0023】
このトルクリミッタ34は、トレイ12を下ガイド14、上ガイド14Aの間に差し込み、押し込むことにより回転する回転軸26の回転に負荷を加え、該トレイ12の挿入速度を抑制する働きをする。
【0024】
以上の構成において、試薬ボトル1を搭載したトレイ12を作業者が、取っ手12Aを掴んで試薬置場10の下側ガイド14と上側ガイド14Aの間に押し込んで挿入することにより、ラック22により歯車24が回転し、その回転が回転軸26を介してトルクリミッタ34に伝わる。そして、このトルクリミッタ34の下限トルクを制限する作用により、設定以上のトルクが加わらないと回転軸26が回転しないようになっているため、作業者がゆっくりと一定の力を加えないとトレイを挿入できないことになる。従って、作業者がむやみに速い速度でトレイ12を押し込むことができなくなり、その挿入速度を遅くすることが可能となることから、バーコードの読み取り成功率を高くすることが可能となる。
【0025】
又、試薬ボトル1には液体が充填されているので、トレイ12の試薬置場への挿入完了時にトレイ12の先端部が前壁面に衝突した際の衝撃により、試薬ボトル1から液体がこぼれ出ることがあるが、トルクリミッタ34によりトレイ12の挿入速度を遅くしているため、液体のこぼれを防止できる。
【0026】
以上詳述した本実施形態によれば、トレイの裏側に設置されたラック22により歯車24を回転させ、回転軸26によりトルクリミッタ34に回転を伝達する機構を採用したことにより、トレイ12の挿入速度を遅くし、バーコード2の読み取りの成功率を高めることができる。
【0027】
又、トルクリミッタ34の設定トルクを変更することにより、例えば男性には高いトルクを、女性には低いトルクを設定する等、作業者の性別に合せて、或いは年齢層に合せて、トレイ12の挿入速度を調節することが可能となる。
【0028】
又、トレイ12の挿入速度を遅くすることができるため、試薬置場への挿入完了時に、トレイ12が壁面に衝突する際の衝撃を緩和することができることから、試薬ボトル1から内部液体のこぼれを軽減し、ひいては防止できる。
【0029】
又、本実施形態の試薬置場は、トルクリミッタ34を設置したことにより、図7に示すようにバーコードリーダ16を取り外すことにより、バーコードを使用しない場合でも、トレイ12の試薬置場への挿入完了時の衝突に起用する、試薬ボトル1からの液体のこぼれを防止する機能を持たせることもできる。
【0030】
なお、前記実施形態では、速度抑制手段としてトルクリミッタを採用する場合を示したが、これに限定されず、挿入時に滑動するトレイに対して、摩擦抵抗を増大させる機構を採用するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る一実施形態の試薬置場の使用状態を示す斜視図
【図2】上記試薬置場に設置される試薬ボトルを拡大して示す斜視図
【図3】上記試薬置場をトレイ挿入始端方向から見た正面図
【図4】バーコードリーダによる読み取り状態を示す説明図
【図5】上記試薬置場のトレイ挿入始端位置を示す部分斜視図
【図6】回転軸に対するトルクリミッタの取付け状態を示す斜視図
【図7】上記試薬置場の使用変形例を示す前記図5に相当する斜視図
【符号の説明】
【0032】
1…試薬ボトル
2…バーコード
10…試薬置場
12…トレイ
14…下側ガイド
14A…上側ガイド
16…バーコードリーダ
20…エンコーダ部
22…ラック
24…歯車
26…回転軸
28…スリット円板
30…センサ
32…ブラケット
34…トルクリミッタ
36…平行ピン



【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の試薬ボトルを挿入方向に沿って並載可能なトレイと、
水平方向に挿入される該トレイを所定位置まで案内するガイドと、
該ガイド近傍に配設され、挿入されるトレイに並載されるボトルの側面に記録されているバーコードを読み取るバーコードリーダと、
前記ガイドに挿入される前記トレイの挿入速度を抑制する速度抑制手段と、を備えていることを特徴とする試薬置場。
【請求項2】
前記速度抑制手段が、前記トレイに付設された挿入方向に延びるラックと、該ラックに噛合する歯車が同軸に固定された回転軸と、該回転軸の回転に負荷を加えるトルクリミッタとを含むことを特徴とする請求項1に記載の試薬置場。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−58135(P2008−58135A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−234994(P2006−234994)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000003399)JUKI株式会社 (1,557)
【出願人】(000162478)協和メデックス株式会社 (42)
【Fターム(参考)】