説明

試薬転送装置

本発明は、固体相または液体相の試薬を器具上の或る位置から別な位置まで転送する装置を提供する。本発明の装置は保持するのに適した構成の上部と固体相または液体相の試薬を利用できる態様で保有するのに適した下部とを備えている。例えば、試薬はケージ構造の内部に保有されてもよいし、または、下部の外面に保持されてもよい。この装置を使う方法と、この装置と関連して使用する器具も、明細書および特許請求の範囲に記載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学薬効検定および生体化学薬効検定で使用される試薬を転送する装置と、そのような装置の使用法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化学薬効検定または生体化学薬効検定を遂行する際に、少量の試薬を、固体相であれ液体相であれ、或る血管から別な血管へ転送する必要があることは頻繁にある。このような効力検定が自動化プロセスまたは自動化処置手順を利用して遂行される機会が益々多くなっており、よって、様々な量の試薬を集剤して転送することができる自動化装置の必要が増している。
【0003】
固体相で入手することができる特定の試薬の具体例として、遺伝子増幅反応を実施するのに必要な試薬があり、特に、ポリメラーゼ連鎖反応すなわちPCRを実施するのに必要な試薬が挙げられる。市販のPCR既成ビード試薬がDNA増幅を実施するのに利用することができるが、その具体例として、アマーシャム・バイオサイエンシーズ・ユー・ケー(Amersham Biosciences UK)が販売している試薬がある。
【0004】
このようなPCR既成ビード試薬は標準PCRを実施するのに必要な成分を全て含有しており、そのような成分の具体例として緩衝試薬、塩、および、ポリメラーゼ酵素などの凍結乾燥体またはそれ以外の固体相が挙げられる。よって、このような既製品は、最終利用者が「家庭で混成された」プライマーやプローブなどと一緒に集成して薬効検定用カートリッジに仕立てるのに安定した試薬を提供する便利な手段となっている。最終使用者は大量生産の恩恵と、貯蔵年数が長い便利な貯蔵携帯の再生可能な調剤の恩恵に浴することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、一般に、ビード試薬は或る消耗可能形態から別な形態へ転送するのにピンセットを必要とする。これを効率よく達成するのは、特に自動化装置では困難である。
【0006】
液体相はピペットやその類似器具を使って移されるのが普通である。ピペットのような器具も使うのが比較的難しく、転送処置中に液垂れし易く、特に、転送作業が自動化で実施される場合にはそうなる恐れが高い。
【0007】
本件出願人は試薬を効率よく操作するための装置を開発してきた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、装置の1箇所から別な箇所へ固体相または液体相の試薬を転送する装置が提示されるが、この装置は、保持されるのに適した構成の上部と、試薬を固体相または液体相のいずれの状態であれ外部で利用できる態様で保持するのに適した構成の下部とから構成されている。
【0009】
本件で使用されているような「外部で利用できる態様」という表現は、試薬が周囲環境と接触状態になることを意味している。具体的に説明すると、試薬を装置の下部の外面上に設置したり、そうでなければ、例えば、液体中に装置の下部を浸漬することで装置下部の上に保持されている試薬を液中に放出することができるようになっている。本発明によると、装置の下部は、液状試料または固体状試料をそのままの状態で容易に収容することができるような特別な適応構成を備えている。
【0010】
好ましい実施形態では、装置の下部は着脱自在な開放ケージ構造を備えており、固体試薬と液体試薬のいずれかを保持することができるが、特に固体試薬を保持するのに適した構成になっている。
【0011】
本件で使用されているような「固体試薬」という語は、固体相である1種類以上の薬剤または化学物質のことを意味している。固体試薬の具体例としては、粉末、結晶、粒子、ビードなどが挙げられる。特に、固体試薬は複数試薬の組合せを含んでおり、一緒に混成して、上述のように、PCR既成ビードのようなビード状態であってもよい。試薬が水溶液のような液体相であるのが一般的である場合には、凍結乾燥または噴霧乾燥などのような従来周知の方法によって好適な固体相を準備するとよい。ビードまたは粒子は、溶加剤、分散剤、界面活性剤などの従来周知の薬剤を更に含有し、ビードまたは粒子が水のような各種液体中に浸漬されると溶解または分散するのが確実になるよう図ってもよい。
【0012】
ケージ構造は基部を備えており、この基部が、特に、少量の液体試薬を保有するよう意図されている場合には、隙間の無い基底と側壁が設けられているのが好適である。しかしながら、この部分の上方の位置には、1個以上の開口部が側壁に設けられている。ケージ構造が大型試薬ビードなどの固体試薬を保有するよう意図されている場合には、基底にも1個以上の開口部が設けられていてもよい。いずれの開口部も、ケージ構造の内部に保有されている試薬ビードのような固体試薬がケージ構造の外へ通り抜けてしまうことができないような寸法になっているべきである。しかしながら、このような開口部により、装置下部が浸漬されるとケージ構造の中に液体が入ることができるようになっているため、その時に、ケージ構造内に保有されている試薬が液中に分散または溶解する。
【0013】
ケージ構造は、それが浸漬されるのが要件となっている試薬混合物中で不活性である可塑剤から作成されているのが好適である。ケージ構造は、試薬充填する目的で、装置の上部から切り離すことができる。よって、スナップ嵌め構造、または、ねじ構造などの手段によって上部に固定するような構成にされるのが好適である。
【0014】
上述のようなケージ構造は、本発明の別な観点を形成している。
【0015】
代替の実施形態では、装置の上部はワンドを備えており、このワンドはその外面上に乾燥状態の試薬を保持することができる。乾燥状態の試薬は凍結乾燥か噴霧乾燥で準備されるのが好適であるが、凍結乾燥されるのが好ましい。
【0016】
本件で使用されているような「ワンド」という語は、反応容器などの中に導入することができ、或いは、反応容器などの中間位置に移動させるのに好適であれば、どのような構造であってもよいことを意味している。一般に、ワンドの形状は細長く、具体的には、棒状の管構造などであるが、側面が傾斜して注射筒のような側面形状または円錐の側面形状を成している。
【0017】
ワンドは本質的に中実でも中空でもよい。ワンドは、中空である場合には、磁石などのような付加的な構成部材に適合することができるようになっているとよい。この場合、ワンドの中に磁石を導入することで、ワンドは磁気シリカヘッドなどの磁気ヘッドのような磁性固体の集合体に対しても使えるようになり、ワンドは任意で抗体や抗体の結合断片などの結合試薬のような更に別な試薬を保有することができる。
【0018】
ワンドの外面の側面形状が設けられた領域の内側に試薬を収容できるようになっているのが好適である。側面形状が設けられたこのような領域には窪みまたは溝が設けられており、このような窪みや溝が表面積を増大させることで、より多量の試薬をその上で凍結乾燥させることができるようになっている。このような側面形状が設けられた領域はまた、複数の異なる領域の複数の異なる試薬を互いに別々に乾燥させるのを容易にするような構造になっているとよい。この構造が特に有用なのは、或る混合物の複数の異なる成分が凍結乾燥や長期貯蔵に不適合であるような場合である。
【0019】
従来公知の乾燥技術のうちでも、特に、従来周知の凍結乾燥技術を利用して、ワンドの外表面に試薬を堆積させるのが好適である。例えば、複数試薬の混合物が溶液中または好適な溶剤中に分散して形成され、ワンドがこの液中に浸漬される。溶剤は凍結乾燥によって除去され、ワンドの表面に試薬の皮膜を残存させる。ワンドが顕著な機械的削摩を被っていなければ、この試薬皮膜は、ロッドが好適な溶剤または溶液中に浸漬されるまで、適所に残留することになるが、浸漬時に試薬は溶解するか、または、液中に分散状態になる。
【0020】
このような溝または窪みの寸法はワンドの寸法とワンドが中で使われることになる装置の寸法で決まる。しかし、一般的には、どの窪みも直径と深さが0.5 mmから2 mmであり、同様に、溝は幅と深さが0.5 mmから2 mmである。
【0021】
どのような側面形状もワンドの下位面に好適に構成される。
【0022】
特定の実施形態では、ワンドの下面には張出した担体部が設けられており、この部分の側面形状は液体試薬または固体試薬を最適転送することができるような形状になっているとよい。例えば、張出し部は実質的に中空形状または管状形状を有しており、任意で、側壁にスリットが設けられていてもよい。張出し部を第1容器内の液体試薬に浸漬した結果として、表面張力のせいで少なくとも一時的に張出し部内に液体が留め置かれる。装置が必要に応じて移動させられると、液体が適切な第2容器内に分配されるが、これは、第2容器内の液中に浸漬するか、または、装置をそっと揺するか、いずれかの方法によって実施することができる。
【0023】
張出し部はまた、上述のように装填することができる乾燥した固体試薬を保持することもできる。
【0024】
ワンドは装置上部と一体になっていてもよいし、または、装置上部から取外し自在であってもよいが、そうするために、例えば、上述のように、スナップ嵌め構造、または、ねじを切った構造になっているようにするとよい。
【0025】
装置は少なくとも一部が使用後に使い捨てできるようになっているのが好適である。特に、ワンドは使い捨てできるとよい。
【0026】
ワンドは、その外面に乾燥試薬を保有して、本発明の更に別な観点を形成する。
【0027】
装置の上部は薬効検定器具の転送手段の内部に着脱自在に保持するのに適した構成になっているのが好適である。よって、装置上部の形状は、使用される薬効検定器次第で変更することができるようになっている。しかし、特定の具体例では、装置上部には1個以上の環状突縁、突起部、または、隆起部が設けられており、これらが薬効検定器具上の好適な把持手段と相互作用するような配置になっている。
【0028】
これに代わる例として、装置上部は磁石または強磁性素子を備えており、磁気伝達手段を使って、装置上部を停止させたり移動させたりすることができるようにしている。このような手段は、例えば、また別な中空ワンドを有しており、このワンドは上述のように、その中に取外し自在に磁石が挿入される。
【0029】
例えば、装置上部は軟鉄などのインサートを保持するのに適した構成にしてもよいし、または、鉄削り粉が混ざったポリプロピレンなどを含有する可塑材から成形されていてもよい。
【0030】
この事例における装置上部は「高足酒盃(ゴブレット)」形状の試薬担体を備えているのが好適であり、ここでは、高足酒盃の椀部の軟鉄インサートが高足酒盃の基部に挿入されているか、または、前記椀部が鉄削り粉が混ざったポリプロピレンなどを含有する可塑材から成形されているか、いずれかである。これにより、例えば、高足酒盃の「椀部(ボウル)」に挿入することのできる上述のような磁性ワンドを利用することにより高足酒盃を磁気的に持ち上げることができるようになるが、磁性ワンドの椀部への挿入により酒盃を持ち上げ、磁石を引っ込めることで酒盃を解放することができる。
【0031】
相補形の装填器具が設けられるのも好適である。この器具はその下部に乾燥した試薬を装填することができる。この器具は、複数の孔が設けられている凍結乾燥用区画のような本体部を備えており、これらの孔の中に本発明の装置が1個以上挿入されて、装置下部が本体部から外へ出て、封鎖可能なチャンバー内に突出するようになっているのが好ましい。この目的では装置は反転され、下部が上向になってチャンバー内に突出するようになっているのが好適である。
【0032】
液体相の試薬または複数試薬の混合物がチャンバーに添加されて、例えば、凍結乾燥のような処理を受けるが、これは、試薬が装置下部上に堆積状態になることを意味する。
【0033】
この処理の間中、本体部は2枚のプレートの間で締付けられて、1個以上の装置が適所に保持されるのを確実にするのが好適である。上位の締付け部材はチャンバーの上面を形成しており、封鎖可能な開口部が設けられて試薬を添加することができるようになっているのが好適である。
【0034】
装填器具、または、装填器具の少なくとも2枚のプレートは凍結乾燥中に遭遇する諸条件に耐えることができるような熱伝達材から作成されており、例えば、真鍮などのような金属か、または、市販の低温重合体などの、成形加工を施すことができて尚且つ熱伝達性の良好な可塑材が挙げられる。
【0035】
この種の装填器具は、特に上述のように本発明の装置と組合わせた場合、本発明の更に別な観点を形成する。
【0036】
本発明は反応容器内の液体に試薬を搬送する方法を更に提供するが、かかる方法は上述のように装置の下部の上に試薬を保持する装置を反応容器内に導入する工程と、試薬を反応容器内に放出する工程とを含んでいる。
【0037】
液体試薬の場合、これら試薬は装置を揺すって液体を適所に保持する表面張力が破られることにより放出される。これに代わる例として、または、固体試薬の場合、試薬放出は、装置の下部の少なくとも一部を反応容器内の液中に浸漬してから、試薬を液中に溶解または分散させることによって達成されるのが好適である。
【0038】
この液体は、薬効検定の次の段階に必要な溶剤または溶液であるのが好適である。例えば、PCRビードのようなPCR試薬を含有している試薬の場合、装置を再懸濁緩衝剤中に潜没させることにより試薬を分散させることができる。これとは異なる事例では、試薬をDNA/RNA抽出物に添加したいと望むことがある。
【0039】
上述の方法は、試薬を効率よく転送することができるという点で極めて有用である。更に、この方法は自動化に特に適っており、広範な薬効検定器具に装備することができる。
【0040】
本発明の特に好ましい実施形態では、更に、この装置はその下部上に試薬を装填する。
【0041】
試薬は、好適な従来周知の方法のいずれかを利用して、装置に予備装填することができる。乾燥試薬をワンドに装填することが既に前段までに説明されている。PCRビードのような試薬はピンセットなどを用いて、上述のようなケージ構造に添加することができるが、この作業はケージ構造が装置の上部に装着される前に実施される。ピペットなどを使って液体を導入することができるが、このような作業は薬効検定器具とは別なところで実行されるため、器具それ自体を汚すことを回避することができる。
【0042】
次に、所要の反応容器内に試薬を放出するように装置を移動させるが、反応容器を装置に近づけるように移動させてもよいが、いずれの方法であれ、使用中の特定の薬効検定および薬効検定器具に適合している方法で行うのが好適である。
【0043】
この作業は自動化で実行するのが好適である。これは、例えば、装置を垂直方向上向きに移動させて、装置を第1容器から完全に取外してから水平方向に移動させる等して、装置を第2容器と整列させてから更に下向きに移動させて、装置の下部を第2容器内の液中に浸漬するとよい。これに代わる例として、例えば、装置を上向に移動させることによって装置を第1容器から取外した後で、両容器それ自体を移動させて、第2容器が装置より下位に配置されるようにするとよい。続いて、装置を単純に下降させて、必要に応じて第2容器の中に入れるとよい。
【0044】
好適な転送手段は当該技術で周知であり、コンベアーベルトや円形コンベアーなどがその具体例である。
【0045】
両容器として好適なのは反応容器ならどんなものでもよく、例えば、個別の反応容器やプレートに設けられた反応ウエルなどが挙げられるが、また、必要ならば、転送手段をこれら容器を移動させるのに適した構成にするとよい。
【0046】
特定の自動化薬効検定器具は、本発明の装置を使用することの恩恵を得ることができるが、同時係属中の国際特許出願PCT/GB04/003363号の明細書と特許請求の範囲に記載されており、かかる出願の内容は、ここに援用することにより本件の一部を成すものとする。本件に記載されている装置は試料を高度に複雑な多段階処理に付すことができる。本発明の装置は、
(i)プラットフォームを備え、前記プラットフォームは、
(a)試料を受容するのに好適なチャンバーと、
(b)機能的構成部材とを有しており、さらに、
(ii)上昇および降下を行うことができるとともに、機能的構成部材に着脱自在に装着することで機能的構成部材をアームと一緒に上昇および降下させることができるようにする手段を有するアームと、
(iii)プラットフォームを移動させることでチャンバーまたは機能的構成部材をアームと整列させることができるようにする手段とを備えている。
【0047】
この装置は広範な応用例を有しており、また、広範な用途に適する構成にすることができる。「機能的構成部材」という語は、装置のアームに反転自在に装着することができるように設計されている装置の一部材を意味するものと定義される。機能的構成部材は、本件開示から明らかになるように、広範な用途を有するように設計することができる。1個以上の機能的構成部材の特殊な用途は、装置の特殊な用途次第で、当業者なら容易に認識することができる。例えば、機能的構成部材は液体試料と相互作用する手段を含んでいることもある。このような手段は、加熱、冷却、光学的処理、音波処理などのような何らかの物理的処理を試料に施すことができる。これに代わる例として、機能的構成部材は、例えば、カッターとして作用して薄膜封鎖を細片に分断し、チャンバーの上を覆い、フィルターを導入するといった処理を行うことにより、チャンバーそれ自体と相互作用する手段を含んでいることがある。更に、機能的構成部材は試料または試料に含有されている分析物を装置のまた別なチャンバーへ移動させる回収部材として作用することもある。
【0048】
したがって、この明細書では、本発明の装置は国際特許出願PCT/GB04/003363号の装置の特殊な機能的構成部材を含んでいることもある。特に、本発明の装置は、自動化PCRプロセスで使用する目的で試料容器内にPCR試薬を転送するのに好適な構成部材を備えていることになる。
【0049】
本発明の特定の実施形態では、プラットフォームは本質的に円形であり、輪番式に移動する。これにより、プラットファームはチャンバーまたは機能的構成部材をアームまたはそれ以外の物理的手段と整列させることができる。これはまた、複数の異なる構成部材が含まれている場合には装置の寸法を最小限に留めることができるという利点を有している。任意であるが、プラットフォームには検知機構が備え付けられており、アームまたはそれ以外の、プラットフォームより上方に配置された物理的処理手段より下方へプラットフォームを移動させると、機能的構成部材またはチャンバーを正確に設置することができるようになっていてもよい。しかしながら、プラットフォーム上に保持されている反応容器を容易に遠心処理に付することができるという点でも、有利である。
【0050】
国際特許出願PCT/GB04/003363号の装置の好ましい実施形態では、機能的構成部材は外皮部材を備えており、外皮部材は、磁性試薬ビーズを吸着するとともに外皮部材上に分析物または反応物を不動状態に維持しておくことができる磁石とビーズとの間に界面を設けている。外皮部材はプラットフォーム上に配置されており、磁石が外皮部材の内側に在る場合に上述の物質の複合体を外皮部材に吸着するような素材から作成されているのが好ましい。このような実施形態では、装置は磁石を備えており、磁石は装置のアームと同じ場所に配置され、アームを降下させることで磁石を外皮部材の中に入れて磁界を供与し、上昇させることで磁石を外皮部材の外に出して磁界を除去することができるようになっているのが好ましい。次に、外皮部材は、磁性試薬ビーズを包含している装置のチャンバー内に設置される。磁石を降下させることで外皮部材の中に入れ、磁性試薬ビーズを外皮部材に結着させる。次に、外皮部材と磁石を上昇させる。プラットフォームを移動させることで、新たなチャンバーが整列状態となってから、外皮部材と磁石を降下させ、磁石を取り出す。磁石が取り出されると、磁性試薬ビーズは外皮部材から脱落して第2チャンバーの中に入る。アームによる外皮部材の微妙な上下運動のおかげで、磁性試薬ビーズが外皮部材にくっ付いたまま残留することが確実に無くなり、また、そのことが磁性試薬ビーズを新たなチャンバー内の試薬や溶液と混合するようにも作用する。これに代わる例として、分析物は何らかの好適な手段によってビーズから溶離させることができる。
【0051】
磁石とアームは互いに相互作用しながらも互いの動作に影響を及ぼすことは無いように設計されているため、磁石が適所に在っても無くても、外皮部材を独立して上昇および降下させることができるようになっている。
【0052】
特定の実施形態では、外皮部材は、上述のようなワンドまたは高足酒盃状の実施形態として形成されている場合には、本発明に従って固体試薬を転送するために使用することもできる。
【0053】
上述の装置を組入れた薬効検定を実行するための装置は、本発明の更に別な観点を形成している。
【0054】
よって、特定の実施形態では、本発明は上述のような装置と、第1容器から第2容器に装置を転送する手段とを備えている器具を更に提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0055】
ここで添付図面を参照しながら、本発明を具体例として詳細に説明してゆく。
図1は、或る範囲の隆起部(3)と突起部(4)が設けられている上部(2)を備えている装置(1)であって、隆起部と突起部により、装置は薬効検定器具(図示せず)の把持アームによって着脱自在に保持されるのに適した構成になっている。装置の下部(5)はスナップ嵌め式に装置の上部(2)の基底上に取付けられる。
【0056】
下部(5)には多数の垂直方向に配置された開口(6)が設けられており、これら開口により下部に包含されている試薬ビーズに液体が接近できる。
【0057】
装置の下部(5)が上部(2)に嵌合する前に、試薬ビーズ(7)は下部(5)に添加されている。開口は、例えば、装置を移動している最中に下部(2)から外へ試薬ビーズ(7)が落下しそうにない寸法である。
【0058】
したがって、器具が内蔵する或る試薬容器から別な試薬容器へ至便かつ確実にビーズ(7)を転送することができるが、そのために、上部(2)を薬効検定器具の把持アームに取付けてから、アームを使って必要に応じて装置を移動させることになる。
【0059】
下部(5)が、反応容器内の液中、例えば、試料を含有しているPCR再懸濁緩衝剤中に浸漬されると、ビーズ(7)は溶解する。その後、薬効検定は必要に応じて継続することができる。必要ならば、ビーズの溶解後に、例えば、器具の転送手段を使って、装置(1)を反応容器から取外すことができる。
【0060】
本発明の代替の実施形態が図2に例示されている。この実施形態のワンドは細長いシャフト部(8)を有している。上部(9)には1対の環状突縁(4)が設けられており、これら突縁のおかげで上部を装置に装着し、装置を或る位置から別な位置へ自動的に移動させることができる。
【0061】
シャフト(8)の下面(10)に十字形の溝(11)(図3を参照のこと)が設けられており、この溝の中に凍結乾燥された試薬が収容される。
【0062】
ワンドの下面(10)を浸漬するだけで、溝(11)に収容されていた試薬を溶解する結果となる。
【0063】
よって、本発明は或る容器から別な容器へ試薬を転送する至便かつ確実な手段を提供する。
【0064】
代替の実施形態が図4に例示されている。この実施形態では、上部(12)は上端開放型のカップまたは高足酒盃のような形状になっており、転送手段を導入することができる。
【0065】
この事例におけるワンド(8)には張出し部(13)が設けられており、この張出し部は中を掘り抜いて作った基部(14)と環帯沿いに互いに離隔された複数の溝(15)とを有している。このような設計は、液体試薬を収集してから一時的に利用できる態様で表面張力により試薬を保持するのには特に有用である。
【0066】
上部(12)は軟鉄インサート(27)がその中に楔止めされる(図5を参照のこと)。これにより、当該技術で周知のような磁石または磁性ワンドなどを利用して、装置を移動させることができるようになる。図5に例示されている実施形態では、この装置は、国際特許出願PCT/GB04/003363号の器具で使用するための反応容器(16)内に載置されている。この反応容器それ自体に突縁(17)が設けられており、把持アームを使って反応容器を移動させることができる。
【0067】
図6および図7は、本発明の他の実施形態の装置が上述の器具の中にどのように包含されているかを例示している。例えば、図6においては、図1に例示されているような装置が、図4に全体図が例示されているような高足酒盃式の装置の頂面に積載されている場合の器具を例示している。図7は、図2および図3の実施形態が同様に反応容器内に収容することができることを例示している。
【0068】
このような組合せは多大な柔軟性を供与することで、多数の互いに異なる種類の薬効検定および反応をこの器具で遂行することができるようにしている。
【0069】
図8は、試薬製剤器具または試薬装填器具が本発明の装置上に固体試薬を装填するのに特に適した構成になっているの例示した概略側面断面図である。この実施例では、装置(20)は、高足酒盃状の上部(19)を有している可塑性ワンド(18)を備えており、この上部は鉄スラグのような小型磁石を収容し、或いは、上部は鉄削り粉を充填した重合体から作成されて、上部を磁気的に容易に持ち上げることができるようにしている。
【0070】
装置(20)の下部の下面(21)には、図2および図3の装置に設けられているものに類似している十字形の溝が設けられている。
【0071】
装填器具それ自体は、複数の孔(24)が設けられている(図9)凍結乾燥用区画(22)を備えており、これら孔は各々が装置(20)を収容する形状に設定されて、下面(21)が区画(22)から外へ突出するようになっている。装置(20)は、区画(22)の適所に在る場合には、第1締付けプレート(23)により適所に固定されるが、この締付けプレートは区画(22)の上に、ねじ止めされている。次に、区画(22)は反転され、液体試薬が下面(22)上に分散されることにより十字形の溝の中に入る。次いで、第2締付けプレートまたは上位締付けプレート(24)が、ねじにより区画(22)に固定される。上位プレート(24)は、前記プレートと区画(22)の上面との間にチャンバー(25)が定められ、そのチャンバーの中に下面(21)が突出するようにように設計されている。上位プレート(24)には更に孔(26)が設けられており、この孔はゴム栓(図示せず)のような止め具を使って閉鎖することができる。
【0072】
ゴムガスケット(図示せず)が設けられて、本体部(22)に対してプレート(23、24)を封鎖するのが好適である。
【0073】
凍結乾燥用の栓を孔(26)に挿入した後で、器具は凍結乾燥処置を受けることができる。
【0074】
これに代わる例として、液体試薬を添加する前に凍結乾燥用区画が事前凍結される場合には、試薬は、通例は体積が5マイクルリットル(μL)であるが、分配後数秒のうちの凍結する。
【0075】
続いて、凍結乾燥された試薬が装填された装置は、必要ならば磁性上昇装置を使ってプレート(23)を取外してから装置を持ち上げることにより、回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の装置の第1実施形態を例示した側面図である。
【図2】本発明の装置の第2実施形態を例示した斜視頂面図である。
【図3】図2のワンドを例示した斜視底面図である。
【図4】本発明の装置の第3実施形態を例示した斜視側面図である。
【図5】図4の装置を包含している器具を破断したところを例示した側面断面図である。
【図6】図1および図4の装置を包含している類似器具を例示した側面断面図である。
【図7】図2および図3の装置を包含している類似器具を例示した側面断面図である。
【図8】相補形装填器具を破断したところを例示した側面断面図である。
【図9】図8の装置の上面被覆が取外されて複数の孔の配置を例示した頂面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体相または液体相の試薬を器具上の或る位置から別な位置まで転送する装置であって、前記装置は、保持されるのに適した構成の上部と、固体相または液体相の試薬を利用できる態様で、装置外部で保有するのに適した下部とを備えることを特徴とする、試薬転送装置。
【請求項2】
前記下部は、その外面に試薬を保有するのに適した構成になっていることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記装置の前記下部は、着脱自在な開放状態のケージ構造を備えており、前記ケージ構造が固体試薬または液体試薬を保持するのに適した構成になっていることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記ケージ構造は、固体試薬を保持するのに適した構成になっていることを特徴とする、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記固体試薬は、ビーズの形態を呈していることを特徴とする、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記ケージ構造は1個以上の開口部が、その側壁に設けられていることを特徴とする、請求項3から請求項5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
前記ケージ構造は、スナップ嵌め構造、または、ねじを切った構造により前記上部に装着することができることを特徴とする、請求項3から請求項6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
前記下部はワンドを有しており、前記ワンドには試薬を収容することができる領域または側面形状が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記ワンドは側面形状が設けられて、側面形状が設けられた領域内に試薬を収容することができるようにしたことを特徴とする、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記側面形状が設けられた領域には、窪みまたは溝が設けられていることを特徴とする、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記側面形状は、前記ワンドの下面に配置されるのが好適であることを特徴とする、請求項9または請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記ワンドの前記下面には、張出し担体部が設けられていることを特徴とする、請求項8に記載の装置。
【請求項13】
前記張出し担体部は、実質的に形状が中空または管状であることを特徴とする、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
使用後は少なくとも一部が使い捨てにすることができることを特徴とする、請求項1から請求項13のいずれかに記載の装置。
【請求項15】
前記装置の前記上部は、薬効検定器具の転送手段の内部に保持されるのに適した構成になっていることを特徴とする、請求項1から請求項14のいずれかに記載の装置。
【請求項16】
前記上部には1個以上の環状突縁、突起、または、隆起部が設けられており、これら突縁、突起、または、隆起部により上部は薬効検定器具の転送手段の内部に着脱自在に保持することができることを特徴とする、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記上部には磁石または強磁性素子が設けられており、磁性転送手段を使って上部を保持して移動することができるようにしたことを特徴とする、請求項15に記載の装置。
【請求項18】
前記上部は鉄削り粉と混合された可塑材から成形されていることを特徴とする、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記上部は「高足酒盃」状の試薬担体部であり、高足酒盃状部材の椀部は磁性インサートが保有されていることを特徴とする、請求項17に記載の装置。
【請求項20】
前記装置はその外部に試薬が装填されることを特徴とする、請求項1から請求項19のいずれかに記載の装置。
【請求項21】
請求項3から請求項7のいずれかに記載の装置において使用するケージ構造。
【請求項22】
複数の孔が設けられている本体部を備えている試薬装填器具であって、前記複数の孔の中には請求項1から請求項19のいずれかに記載の装置を1個以上挿入することが可能であり、前記下部が本体部から外へ出てから封鎖可能なチャンバーの中に突出するようにしたことを特徴とする、試薬装填器具。
【請求項23】
前記本体部は凍結乾燥用区画であることを特徴とする、請求項22に記載の器具。
【請求項24】
請求項1から請求項19のいずれかに記載の装置と、前記装置を収容することができる請求項22または請求項23に記載の試薬装填器具との組合せ。
【請求項25】
反応容器内の液中に試薬を搬送する方法であって、前記方法は、請求項20に記載の装置を反応容器内に導入する工程と、試薬を反応容器内に放出する工程とを含むことを特徴とする、試薬搬送方法。
【請求項26】
前記試薬は液体であり、これら試薬は前記装置を揺することにより放出されることを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
試薬放出は、前記反応容器内の液中に前記装置の下部の少なくとも一部を浸漬してから、試薬を液中で溶解または分散させることができるようにすることにより達成されることを特徴とする、請求項25に記載の装置。
【請求項28】
前記試薬はPCR試薬であり、前記液体は再懸濁緩衝剤またはDNA/RNA抽出物であることを特徴とする、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記装置は自動転送手段を使って移動させられることを特徴とする、請求項27または請求項28に記載の方法。
【請求項30】
請求項1から請求項20のいずれかに記載の装置を包含している器具と、前記装置を第1容器から第2容器に転送する手段。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2008−535476(P2008−535476A)
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−556666(P2007−556666)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【国際出願番号】PCT/GB2006/000689
【国際公開番号】WO2006/090180
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(390040604)イギリス国 (58)
【氏名又は名称原語表記】THE SECRETARY OF STATE FOR DEFENCE IN HER BRITANNIC MAJESTY’S GOVERNMENT OF THE UNETED KINGDOM OF GREAT BRITAIN AND NORTHERN IRELAND
【Fターム(参考)】