説明

試験サンプルにおけるMycobacteriumtuberculosis複合体生物の存在を決定するためのプローブおよびキット、ならびに捕捉プローブを使用するグラム陽性桿菌または真菌の増幅方法

【課題】試験サンプルにおけるMycobacterium tuberculosis複合体生物の存在を決定するためのプローブおよびキット、ならびに捕捉プローブを使用するグラム陽性桿菌または真菌の増幅方法の提供。
【解決手段】本発明は、試験サンプルにおけるMycobacterium tuberculosis複合体生物の存在を決定するために有用なオリゴヌクレオチドに関する。本発明のオリゴヌクレオチドは、検出プローブ、ヘルパープローブ、捕捉プローブ、および増幅オリゴヌクレオチドに組み込んでもよく、それらの種々の組み合わせにおいて使用してよい。本出願はさらに、グラム陽性細菌および真菌由来の核酸を増幅する方法であって、該核酸を捕捉プローブを介して固相支持体の上に固定し、該核酸に結合したプライマーを伸長することによって増幅する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2006年5月24日に出願された米国仮特許出願第60/803,127号の利益を主張する。米国仮特許出願第60/803,127号の内容は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、試験サンプルにおけるMycobacterium tuberculosis複合体(「TB複合体」)生物の存在を決定するために有用な、検出プローブ、ヘルパープローブ、捕捉プローブ、増幅オリゴヌクレオチド、方法、およびキットに関する。TB複合体は、M. tuberculosisの外に、M. africanum、M. bovis、M. bovis BCG、M. microtiを含む。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
結核(”TB”)は、TB複合体のメンバーによって引き起こされる細菌感染である。活性の肺TBを有する人が、咳、くしゃみ、または痰を吐き、汚染された飛沫を空気中に放出することによって伝染が起こる。この放出された細菌の吸引が、もっとも一般的な感染方式である。感染性の高い人は、本疾患を、年間10から15名の人に伝染させることが可能である。世界人口の約3分の1がTB細菌によって感染されているが、その大多数は、無症状の潜伏感染(”LTBI”)である。LTBI例については、10名の内の1名が、活性TB感染に進み、これは、治療されずに放置されると、50%の死亡率を有する。有能な免疫系を欠く人々(すなわち、小児)、または、免疫無防備化された人々(すなわち、物質乱用、免疫抑制剤、HIV/AIDS、糖尿病、腎不全など)は、もっとも危険である。
【0004】
世界保健機構は、1993年、TBを、地球規模で健康を脅かす緊急事態と宣言した。毎年、ほぼ9百万の新規症例と2百万のTB関連死亡例というこの緊急事態に対し、HIV、および、多剤耐性菌(”MDR−TB”)の漸増する脅威が火に油をそそいでいる。MDR−TBについては、毎年、30万の新規症例があり、5千万を超える人々が、TBのMDR株に潜伏感染している。HIVおよびTBに共時感染される人々は、活性TB疾患にもっとも罹りやすい。TBの蔓延を防止するための鍵は、速やかで正確な診断であることが認められている。TB診断学は、発症患者の診断においてばかりでなく、治療剤監視においても使用することが可能である。したがって、TB複合体生物に対して特異的で、かつ、技術者を危険にさらす汚染性飛沫を形成する可能性を最小とする、高感度アッセイが求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の要旨
本発明は、TB複合体のメンバーに対して特異的な高感度アッセイを提供することによってこの要求に応える。このアッセイは、試験サンプル(例えば、痰、気管支・肺胞洗液、または胸水サンプル)において、TB複合体微生物が存在するかどうかを決定するのに有用なオリゴヌクレオチドをその特長とする。この本発明を特徴づけるオリゴヌクレオチドは、試験サンプルに存在する、TB複合体標的核酸の検出、固定、および/または増幅に有用な、検出プローブ、ヘルパープローブ、捕捉プローブ、および/または増幅オリゴヌクレオチドの中に含まれてもよい。
【0006】
本発明の一局面では、検出プローブであって、試験サンプルにおける少なくとも一つのTB複合体生物の存在を示す、検出可能なプローブ:標的ハイブリッドを形成する、TB複合体生物の内のいずれかの23SリボソームRNA(”rRNA”)、またはリボソームDNA(”rDNA”)から得られる標的核酸に含まれる標的配列に対し優先的にハイブリダイズする検出プローブが提供される。好ましい検出プローブは、下記:
配列番号1:ggaggatatgtctcagcgctacc、
配列番号2:ggaggauaugucucagcgcuacc、
配列番号3:ggtagcgctgagacatatcctcc、および、
配列番号4:gguagcgcugagacauauccucc
から成る群から選ばれる参照配列の15連続塩基内の、少なくとも12、13、14、または15個を含む、標的結合領域を有する。
【0007】
本発明による検出プローブは、ストリンジェントハイブリダイゼーション条件下において、試験サンプル中に存在するTB複合体由来の核酸にはハイブリダイズするが、非TB複合体生物由来の核酸に対してはハイブリダイズしないことが好ましい。特に、本発明の検出プローブは、TB複合体由来核酸に対しては優先的にハイブリダイズするが、TB複合体生物に対しもっとも近縁の生物と見なされるMycobacterium celatum由来の核酸に対してはハイブリダイズしない。試験目的のためには、M. celatumは、Manassas, VAの米国基準菌株保存機関(ATCC No.51130)から入手することが可能である。
【0008】
本発明の検出プローブは、TB複合体由来核酸に対し所望の選択性および特異性を実現するのに適切な、任意の長さの標的結合領域を有してもよい。標的結合領域の塩基配列は、長さが、12、13、14、または15と、35塩基の間であることが好ましく、長さが15と25塩基の間であることがより好ましい。検出プローブの塩基配列は、好ましくは、最大15、20、25、30、35、40、50、または100塩基である。好ましくは、検出プローブの標的結合領域は、参照配列を含むか、それと重複するか、事実上それから成るか、実質的にそれと一致するか、それから成るか、または、その中に含まれる。より好ましくは、検出プローブの塩基配列は、参照配列から事実上成るか、実質上それと一致するか、それから成るか、または、その中に含まれる。
【0009】
標的結合領域は、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、DNAとRNAの組み合わせから成ってもよいし、あるいは、その全体または一部が、例えば、修飾されたバックボーン(例えば、ペプチド核酸)、修飾された糖成分(例えば、2’−O−メチルリボース置換)、塩基類縁体(例えば、イノシン)、または、プリンまたはピリミジン塩基の既知の誘導体(例えば、デアザ−、またはアザ−プリン、およびデアザ−、またはアザ−ピリミジン)などを有する核酸類縁体であってもよい。この標的結合領域はさらに、アデニン、シトシン、グアニン、チミン、またはウラシルに対して水素結合しない分子を、その分子が、検出プローブが、試験サンプルにおけるTB複合体生物由来核酸に選択的、特異的に結合する能力を妨げない限り、含んでもよい。そのような分子の例としては、ただしその分子が、2本鎖の安定性に著しく悪影響を及ぼさない限り、非塩基性ヌクレオチド、および普遍型塩基類縁体、例えば、5−ニトロインドールが挙げられる。例えば、Guo et al., “Artificial Mismatch Hybridization,” 米国特許第5,780,233号を参照されたい。なお、この特許の内容を、引用により本明細書に含める。
【0010】
本発明の検出プローブは、標的結合領域の塩基配列の外に、ストリンジェントハイブリダイゼーション条件下ではTB複合体生物のいずれの核酸に対しても安定に結合しない、一つ以上の塩基配列を含んでもよい。付加的塩基配列は、それが、ストリンジェントハイブリダイゼーション条件下ではTB複合体生物のいずれの核酸に対しても安定に結合しない限り、または、標的核酸に対するプローブの安定なハイブリダイゼーションを妨げない限り、任意の所望の塩基配列から構成されていてもよい。例として述べるのであるが、付加的塩基配列は、捕捉プローブの、固定用プローブ結合領域を構成してもよい。この固定用プローブ結合領域は、固相支持体に直接的または間接的に結合されるポリヌクレオチドの5’ポリdT(チミン)領域に対して、アッセイ条件下で、ハイブリダイズする3’ポリdA(アデニン)領域から構成される。さらに、付加塩基配列は、RNAポリメラーゼによって認識される5’配列であるか、または、RNAポリメラーゼによる開始または伸長を強化する5’配列(例えば、T7プロモーター)であってもよい。第1配列が、例えば、自己ハイブリダイズプローブ(すなわち、アッセイ条件下において、標的配列の不在下に互いにハイブリダイズすることが可能な異なる塩基領域を持つプローブ)、例えば、「分子ビーコン」の中に組み込まれる場合は、一つを超える付加塩基配列が含まれてもよい。分子ビーコンは、Tyagi et al., “Detectably Labeled Dual Conformation Oligonucleotide Probes, Assays and Kits,” 米国特許第5,925,517号に開示される。なお、この開示の内容を、引用により本明細書に含める。分子ビーコンは、二つの塩基配列によって区画されるか、該塩基配列と重複する標的結合領域を含み、「ステム」または「アーム」と呼ばれる、この二つの塩基配列は、少なくとも一部は互いに相補的である。分子ビーコンに関するさらに詳細な記述が、下記の「TB複合体生物のリボソーム核酸に対する検出プローブ」という表題のセクションに記載される。付加的塩基配列は、標的結合領域に直接接合されてもよいし、あるいは、例えば、非ヌクレオチドリンカー(例えば、ポリエチレングリコール、または非塩基性領域)を介して接合されてもよい。
【0011】
必要とはされないが、本発明の検出プローブは、少なくとも一つの検出可能なラベル、または一群の相互活動ラベルを含むことが好ましい。このラベルは、適切なものであれば、いずれの標識物質であってもよく、例えば、ただしこれらに限定されないが、放射性同位元素、酵素、酵素補因子、酵素基質、染料、ハプテン、化学発光分子、蛍光分子、燐発光分子、電気化学発光分子、発色団、言明条件下では標的核酸に対して安定にハイブリダイズできない塩基配列領域、およびそれらの混合物が挙げられる。特に好ましい条件では、ラベルは、アクリジニウムエステル(AE)、好ましくは4−(2−スクシニミジルオキシカルボニルエチル)−フェニル−10−メチルアクリジニウム−9−カルボキシレートフルオロスルフォネート(以後、「標準AE」と呼ぶ)である。プローブペア、または自己ハイブリダイズ性プローブにおいて有用な、相互作用ラベル群としては、例えば、ただしこれらに限定されないが。酵素/基質、酵素/補因子、発光因子/消光因子、発光因子/アダクト、染料ダイマーおよびFoerresterエネルギー転移の、諸ペアが挙げられる。Morrison, “Competitive Homogeneous Assay,”米国特許第5,928,862号(2分子プローブ)を参照されたい。なお、この特許の内容を引用により本明細書に含める。さらに、Tyagi et al., 米国特許第5,925,517号(単分子プローブ)を参照されたい。相互作用を持つ発光因子/消光因子ペア、例えば、フルオレセインおよびDABCYLは特に好ましい。
【0012】
本発明はさらに、ストリンジェントハイブリダイゼーション条件下において、前述の検出プローブのいずれかと、該プローブに対する標的核酸の間に形成される、安定な2本鎖核酸を含む組成物を考慮の対象とする。
【0013】
さらに別の局面において、本発明は、試験サンプル中にTB複合体生物が存在するか否かを決定するために有用な、プローブミックスを考慮の対象とする。このプローブミックスは、例えば、前述のTB複合体検出プローブの内の一つ、および、少なくとも一つのヘルパープローブを含んでもよく、該ヘルパープローブは、ストリンジェントハイブリダイゼーション条件下に、TB複合体生物のいずれかの23S rRNAまたはrDNAから得られる標的核酸に含まれる標的配列に対し安定に結合し、かつ、下記:
配列番号5:cggctgagaggcagtacagaaagtgtcgtggttagcgg、
配列番号6:cggcugagaggcaguacagaaagugucgugguuagcgg、
配列番号7:ccgctaaccacgacactttctgtactgcctctcagccg、
配列番号8:ccgcuaaccacgacacuuucuguacugccucucagccg、
配列番号9:gggtaaccgggtaggggttgtgtgtgcggggttgtg、
配列番号10:ggguaaccggguagggguugugugugcgggguugug、
配列番号11:cacaaccccgcacacacaacccctacccggttaccc、および、
配列番号12:cacaaccccgcacacacaaccccuacccgguuaccc、
から成る群から選ばれる参照配列の、15連続塩基の内、少なくとも12、13、14、または15個を含む塩基配列を有する。
【0014】
本発明によるヘルパープローブは、試験サンプル中の標的配列に対し特異性を示す必要はない。好ましいヘルパープローブの塩基配列は、長さが、12、13、14、または15、および25、30、35、40、または50塩基である。好ましくは、ヘルパープローブの塩基配列は、参照配列を含むか、それと重複するか、事実上それから成るか、実質的にそれと一致するか、それから成るか、または、その中に含まれる。より好ましくは、ヘルパープローブの塩基配列は、参照配列から事実上成るか、実質的にそれと一致するか、それから成るか、または、その中に含まれる。
【0015】
本発明はさらに、ストリンジェントハイブリダイゼーション条件下において、前述の検出プローブのいずれかと、該プローブに対する標的核酸の間に形成される、安定な2本鎖核酸を含む組成物を考慮の対象とする。
【0016】
本発明の別の局面では、試験サンプル中に存在するTB複合体生物から得られる23S
rRNAまたはrDNA標的核酸を単離、精製するために、捕捉プローブが提供される。この捕捉プローブは、長さが最大100塩基であり、アッセイ条件下に、TB複合体由来標的核酸配列に含まれる標的配列に安定に結合する、標的結合配列を含み、かつ、下記:
配列番号13:cggaatcacaattgttttctcctcctacggg、
配列番号14:cggaaucacaauuguuuucuccuccuacggg、
配列番号15:cccgtaggaggagaaaacaattgtgattccg、
配列番号16:cccguaggaggagaaaacaauugugauuccg、
配列番号17:ggaatcacaattgttttctcctcc、
配列番号18:ggaaucacaauuguuuucuccucc、
配列番号19:ggaggagaaaacaattgtgattcc、および、
配列番号20:ggaggagaaaacaauugugauucc、
から成る群から選ばれる参照配列の、15連続塩基の内、少なくとも12、13、14、または15個を含むか、それと重複するか、事実上それから成るか、実質的にそれと一致するか、それから成るか、または、その中に含まれ、かつ、それを含む。
【0017】
本発明による捕捉プローブの標的結合領域の塩基配列は、長さが、最大20、25、30、または40塩基であることが好ましい。より好ましくは、捕捉プローブの標的結合配列は、参照配列と重複するか、事実上それから成るか、実質的にそれと一致するか、それから成るか、または、その中に含まれる。
【0018】
本発明の捕捉プローブは、リガンド−ライゲート結合ペア、例えば、アビジン−ビオチン結合を介して固相支持体に固定されてもよいが、下記に定義する、固定用プローブ結合領域を含むことが好ましい。好ましい捕捉プローブの固定用プローブ結合領域は、試験サンプル中に存在する固相支持体に結合されるオリゴヌクレオチドに対し、アッセイ条件下において、安定に結合することが可能である限り、任意の塩基配列から構成されていてよい。好ましくは、固定用プローブ結合領域は、ポリdA、すなわち、捕捉プローブの3’末端に配置されるホモポリマー尾部である。この実施態様では、固相支持体に結合するオリゴヌクレオチドは、アッセイ条件下に捕捉プローブのポリdA尾部に安定に結合するのに十分な長さの5’ポリdT尾部を含むことが考えられる。好ましい実施態様では、固定用プローブ結合領域は、長さが約30アデニンのポリdA尾部を含み、捕捉プローブは、標的結合領域および固定用プローブ結合領域を接合するための、長さが約3チミンのスペーサー領域を含む。
【0019】
本発明はさらに、増幅アッセイにおいてTB複合体生物の存在を決定するのに有用な増幅オリゴヌクレオチドをその特徴とする。好ましい実施態様では、任意のTB複合体生物由来の23S rRNAまたはrDNAに含まれる標的領域を増幅するための、少なくとも一つの増幅オリゴヌクレオチドが提供される。この実施態様において、増幅オリゴヌクレオチドは、増幅条件下に、標的核酸に含まれる標的配列、またはその相補体に安定に結合する標的結合領域を有する第1増幅オリゴヌクレオチドであり、かつ、下記:
配列番号21:cggaatcacaattgttttctcctcctacggg、
配列番号22:cggaaucacaauuguuuucuccuccuacggg、
配列番号23:cccgtaggaggagaaaacaattgtgattccg、および、
配列番号24:cccguaggaggagaaaacaauugugauuccg、から成る群から選ばれる参照配列の、15連続塩基の内、少なくとも12、13、14、または15個を含む塩基配列を有する。
【0020】
別の好ましい実施態様では、TB複合体由来核酸を増幅するための増幅オリゴヌクレオチドは、増幅条件下に、標的核酸に含まれる標的配列、またはその相補体に安定に結合する標的結合領域を有する第2増幅オリゴヌクレオチドであり、かつ、下記:
配列番号25:ggaatcacaattgttttctcctcc、
配列番号26:ggaaucacaauuguuuucuccucc、
配列番号27:ggaggagaaaacaattgtgattcc、および、
配列番号28:ggaggagaaaacaauugugauucc、
から成る群から選ばれる参照配列の、15連続塩基の内、少なくとも12、13、14、または15個を含む塩基配列を有する。
【0021】
本発明の増幅オリゴヌクレオチドは、長さが、好ましくは12、13、14、または15から、20、25、30、35、または40塩基である標的結合領域を有する。好ましくは、増幅オリゴヌクレオチドの標的結合領域は、参照配列を含むか、それと重複するか、事実上それから成るか、実質的にそれと一致するか、それから成るか、または、その中に含まれる。この増幅オリゴヌクレオチドは、RNAポリメラーゼによって認識され、RNAポリメラーゼによる開始または伸長を強化する5’配列を任意に含む。配列番号29:aatttaatacgactcactatagggagaのT7プロモーター配列が好ましいが、他のプロモーター配列を用いてもよい。
【0022】
本発明の増幅オリゴヌクレオチドは、少なくとも二つの増幅オリゴヌクレオチドから成る複数組として使用することが可能であるが、前述の第1および第2増幅オリゴヌクレオチドのそれぞれの実施態様を含むことが好ましい。一般に、増幅オリゴヌクレオチドの組は、センスおよびアンチセンス増幅オリゴヌクレオチドの少なくともそれぞれ一方ずつを含むが、複数の、同じセンスのプライマーを用いてもよい。増幅オリゴヌクレオチドの組の少なくとも一方のメンバーは、RNAポリメラーゼによって認識されるか、または、RNAポリメラーゼによる開始または伸長を強化する5’配列(例えば、T7プロモーター配列)を含むことが好ましい。センスおよびアンチセンス増幅オリゴヌクレオチドが、ポリメラーゼの存在下に伸長可能であることは本発明の要件ではない。例えば、Becker et al., “Single−Primer Nucleic Acid Amplification Methods,”米国特許出願第2006−0046265
A1を参照されたい。なお、この文書の内容を、引用により本明細書に含める。
【0023】
本発明はさらに、増幅条件下において、前述の増幅オリゴヌクレオチドのいずれかと、標的核酸またはその相補体との間に形成される、安定な2本鎖核酸を含む組成物を考慮の対象とする。
【0024】
本発明はさらに、試験サンプルの中にTB複合体生物がほんの少しでも存在するかどうかを決定するための方法をその特徴とする。ある実施態様では、本発明は、試験サンプルの中にいずれかのTB複合体生物が少しでも存在するかどうかを決定するための方法であって、(a)プローブが、TB複合体由来核酸に対し優先的にハイブリダイズすることを可能とする条件下で、前述の、TB複合体生物検出用プローブの一つに、試験サンプルを接触させて、検出に好適なプローブ:標的ハイブリッドを形成すること;および(b)試験サプルにおいていずれかのTB複合体生物の有無を伝える表示として、ハイブリッドが試験サンプル中に存在するかどうかを決定すること、を含む方法を提供する。この方法はさらに、試験サンプル中に存在するTB複合体生物の量を評価するための手段として、試験サンプル中に存在するハイブリッドの量を定量する工程を含んでもよい。サンプル中の生物の数を近似する、数多くの方法が従来技術には知られる。例えば、Wittwar et al.,”PCR Method for Nucleic Acid Quantification Utilizing Second or Third Order Rate Constants,”米国特許第6,232,079号;Sagner et al., “Method for the Efficiency−Correlated Real−Time Quantification of Nucleic Acids,”米国特許第6,691,041号;McMillan et al., “Methods for Quantitative Analysis of a Nucleic Acid Amplification Reaction,”米国特許第6,911,327号;および、Chismar et al., “Method and Algorithm for Quantifying Polynucleotide,”米国特許出願US 2006−0292619 A1(前記参考文献のそれぞれの内容を、引用により本明細書に含める)を参照されたい。
【0025】
試験サンプル中にいずれかのTB複合体生物が存在するかどうか、または、試験サンプル中に存在するいずれかのTB複合体生物の量を決定するための方法は、検出プローブの標的配列に対するハイブリダイゼーションを促進するために、前述のヘルパープローブの内の少なくとも一つ、および/または、標的配列またはその相補体を含む、TB複合体由来核酸を単離、精製するために、前述の捕捉プローブの内の少なくとも一つ、および/または、標的配列またはその相補体を含む、TB複合体由来核酸の領域を増幅するのに好適な、前述の増幅オリゴヌクレオチドの内の少なくとも一つに、適宜、試験サンプルを接触させる工程をさらに含む。
【0026】
本発明はさらに、試験サンプル中にいずれかのTB複合体生物が存在するかどうかを決定するためのキットを考慮の対象とする。これらのキットは、TB複合体由来核酸に含まれる標的配列に対して特異的な、前述の検出プローブの内の少なくとも一つを含み、かつ、試験サンプルにおける任意のTB複合体生物の存在または量を決定するための案内書を任意に含む。キットは、検出プローブの標的配列に対するハイブリダイゼーションを支援するために、前述のヘルパープローブの内の少なくとも一つ、および/または、標的配列またはその相補体を含む、TB複合体由来核酸を、標的核酸の増幅または直接検出の前に、試験サンプルの他の成分から分離するために、前述の捕捉プローブの内の少なくとも一つ、および/または、標的配列またはその相補体を含む、TB複合体由来核酸の領域を増幅するのに好適な、前述の増幅オリゴヌクレオチドの内の少なくとも一つ、をさらに適宜に含む。
【0027】
本発明のさらに別の局面において、標的核酸配列を獲得し、その増幅を開始するための方法であって、下記の工程:a)崩壊が難しい生物、例えば、マイコバクテリア生物(例えば、TB複合体生物)を殺し、崩壊させるのに十分な時間、崩壊性組成物および条件にサンプルを曝露し、標的核酸をサンプル中に放出させること、ここに、溶解性組成物は、界面活性剤、標的核酸に含まれる標的核酸配列を増幅するための増幅オリゴヌクレオチド、および、標的核酸を固相支持体に固定するための捕捉プローブを含み;b)工程a)の後、サンプルにおいて、捕捉プローブ、標的核酸、および増幅オリゴヌクレオチドを含むハイブリッド複合体を形成すること;c)ハイブリッド複合体を固相支持体に固定し、工程b)において形成されるハイブリッド複合体の部分ではないサンプル成分を除去すること;および、d)増幅オリゴヌクレオチドが酵素的に伸長されて、標的核酸配列の相補的コピーを形成するように、標的核酸を増幅条件に曝露すること、を含む方法が提供される。生物は、化学的、機械的、および/または熱的に崩壊してよいが、機械的手段、例えば、超音波振動の支援無しに崩壊することが好ましい。生物の殺傷および崩壊を実行するために、サンプルを、約60℃から少なくとも約95℃の温度に、少なくとも約15、20、または30分加熱することが可能である。界面活性剤は、陽イオン活性剤、例えば、約0.1から約5%(v/v)の最終濃度で存在する、ラウリル硫酸リチウムであることが好ましい。方法の工程a)における生物の崩壊に悪影響を及ぼすことなく工程b)のハイブリダイゼーションを促進するために、塩濃度は、約0.6Mから約0.9Mであることが好ましい。この方法は、痰サンプルを含む呼吸器サンプルについて使用するのに好適であり、他のグラム陽性桿菌、真菌、および、同様に崩壊の困難な生物について使用してよい。
【0028】
本発明のその他の特徴および利点は、本発明の好ましい実施態様に関する下記の説明および特許請求の範囲から明白であろう。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
試験サンプルにおいてTB複合体生物に属する核酸を単離するために使用される捕捉プローブであって、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、および配列番号20から成る群から選ばれる塩基配列の15連続塩基の内、少なくとも12個を含む標的結合領域を有し、アッセイ条件下においてTB複合体核酸に安定に結合し、かつ、固相支持体の上に前記TB複合体核酸を固定するための手段を含む、捕捉プローブ。
(項目2)
前記標的結合領域が、配列番号13、配列番号14、配列番号15、および配列番号16から成る群から選ばれる塩基配列の15連続塩基の内、少なくとも12個を含む、項目1に記載の捕捉プローブ。
(項目3)
前記標的結合領域が、配列番号13、配列番号14、配列番号15、および配列番号16から成る群から選ばれる塩基配列の少なくとも15連続塩基を含む、項目1に記載の捕捉プローブ。
(項目4)
前記標的結合領域が、配列番号13、配列番号14、配列番号15、および配列番号16から成る群から選ばれる塩基配列を含む、項目1に記載の捕捉プローブ。
(項目5)
前記捕捉プローブが、配列番号13、配列番号14、配列番号15、および配列番号16から成る群から選ばれる塩基配列、および前記TB複合体核酸を固相支持体の上に固定するための前記手段から成る、項目1に記載の捕捉プローブ。
(項目6)
前記標的結合領域が、配列番号17、配列番号18、配列番号19、および配列番号20から成る群から選ばれる塩基配列の15連続塩基の内、少なくとも12個を含む、項目1に記載の捕捉プローブ。
(項目7)
前記標的結合領域が、配列番号17、配列番号18、配列番号19、および配列番号20から成る群から選ばれる塩基配列の少なくとも15連続塩基を含む、項目1に記載の捕捉プローブ。
(項目8)
前記標的結合領域が、配列番号17、配列番号18、配列番号19、および配列番号20から成る群から選ばれる塩基配列を含む、項目1に記載の捕捉プローブ。
(項目9)
前記捕捉プローブが、配列番号17、配列番号18、配列番号19、および配列番号20から成る群から選ばれる塩基配列、および前記TB複合体核酸を固相支持体の上に固定するための前記手段から成る、項目1に記載の捕捉プローブ。
(項目10)
試験サンプルにおけるTB複合体生物の存在の決定において使用するためのキットであって:
項目1から9のいずれか1項に記載の捕捉プローブ;および、
検出プローブであって、その塩基配列が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、および配列番号4から成る群から選ばれる塩基配列から成る前記検出プローブ、
を含む、前記キット。
(項目11)
前記検出プローブが、検出可能なラベルを含む、項目10に記載のキット。
(項目12)
第1ヘルパープローブをさらに含み、前記第1ヘルパープローブの塩基配列は、配列番号5、配列番号6、配列番号7、および配列番号8から成る群から選ばれる塩基配列から成る、項目10または11に記載のキット。
(項目13)
第2ヘルパープローブをさらに含み、前記第2ヘルパープローブの塩基配列は、配列番号9、配列番号10、配列番号11、および配列番号12から成る群から選ばれる塩基配列から成る、項目10から12のいずれか1項に記載のキット。
(項目14)
第1増幅オリゴヌクレオチドであって、その塩基配列が、配列番号21、配列番号22、配列番号23、および配列番号24から成る群から選ばれる塩基配列から成る第1増幅オリゴヌクレオチドと、任意に、RNAポリメラーゼによって認識されるかまたはRNAポリメラーゼによる開始または伸長を強化する5’配列とをさらに含む、項目10から13のいずれか1項に記載のキット。
(項目15)
第2増幅オリゴヌクレオチドであって、その塩基配列が、配列番号25、配列番号26、配列番号27、および配列番号28から成る群から選ばれる塩基配列から成る第2増幅オリゴヌクレオチドと、任意に、RNAポリメラーゼによって認識されるかまたはRNAポリメラーゼによる開始または伸長を強化する5’配列とをさらに含む、項目10から14のいずれか1項に記載のキット。
(項目16)
試験サンプルにおけるTB複合体生物の存在の決定において使用されるキットであって:
項目1から9のいずれか1項に記載の捕捉プローブ;および、
第1および第2増幅オリゴヌクレオチドの内の少なくとも一つ、
を含み、前記第1増幅オリゴヌクレオチドの塩基配列は、配列番号21、配列番号22、配列番号23、および配列番号24から成る群から選ばれる塩基配列と、任意に、RNAポリメラーゼによって認識されるかまたはRNAポリメラーゼによる開始または伸長を強化する5’配列とから成り、前記第2増幅オリゴヌクレオチドの塩基配列は、配列番号25、配列番号26、配列番号27、および配列番号28から成る群から選ばれる塩基配列と、任意に、RNAポリメラーゼによって認識されるかまたはRNAポリメラーゼによる開始または伸長を強化する5’配列とから成る、前記キット。
(項目17)
前記第1増幅オリゴヌクレオチドを含む、項目16に記載のキット。
(項目18)
前記第2増幅オリゴヌクレオチドを含む、項目16または17に記載のキット。
(項目19)
サンプル中に存在するグラム陽性桿菌または真菌から標的核酸配列を得て、そして増幅を開始するための方法であって:
a)グラム陽性桿菌および真菌から選ばれる生物を殺し、崩壊させるのに十分な時間、崩壊性組成物および条件にサンプルを曝露し、それによって標的核酸をサンプル中に放出させる工程であって、ここで、前記崩壊性組成物は、界面活性剤、前記標的核酸に含まれる標的核酸配列を増幅するための増幅オリゴヌクレオチド、および前記標的核酸を固相支持体に固定するための捕捉プローブを含む、工程;
b)工程a)の後、前記サンプルにおいて、前記捕捉プローブ、前記標的核酸、および前記増幅オリゴヌクレオチドを含むハイブリッド複合体を形成する工程;
c)前記ハイブリッド複合体を前記固相支持体に固定し、工程b)において形成される前記ハイブリッド複合体の部分ではないサンプル成分を除去する工程;および、
d)前記増幅オリゴヌクレオチドが酵素的に伸長されて、標的核酸配列の相補的コピーを形成するように、前記標的核酸を増幅条件に曝露する工程、
を含む、前記方法。
(項目20)
工程b)の温度が、工程a)の温度よりも低い、項目19に記載の方法。
(項目21)
工程a)の温度が、工程b)の温度よりも低い、項目19または20に記載の方法。
(項目22)
前記サンプルが、工程b)の前に、約60℃から少なくとも約95℃の温度を含む条件下、前記崩壊性組成物に約15分から少なくとも約60分曝露される、項目19から21のいずれか1項に記載の方法。
(項目23)
前記サンプルが、少なくとも約95℃の温度を含む条件下、前記崩壊性組成物に、少なくとも約15分曝露される、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記増幅オリゴヌクレオチドが、RNAポリメラーゼによって認識されるプロモーター配列を含む、項目19から23のいずれか1項に記載の方法。
(項目25)
前記界面活性剤が陽イオン活性剤である、項目19から24のいずれか1項に記載の方法。
(項目26)
前記界面活性剤が、ラウリル硫酸リチウムである、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記界面活性剤が、工程a)において、約0.1から約5%(v/v)の濃度で存在する、項目25または26に記載の方法。
(項目28)
前記界面活性剤が、工程a)において、約0.1から約3%(v/v)の濃度で存在する、項目25または26に記載の方法。
(項目29)
前記界面活性剤が、工程a)において、約0.1から約1.5%(v/v)の濃度で存在する、項目25または26に記載の方法。
(項目30)
前記界面活性剤が、工程a)において、約0.1から約0.3%(v/v)の濃度で存在する、項目25または26に記載の方法。
(項目31)
前記生物を崩壊するために機械的手段が使用されない、項目19から30のいずれか1項に記載の方法。
(項目32)
前記生物を崩壊するために超音波振動が使用されない、項目19から30のいずれか1項に記載の方法。
(項目33)
工程a)−c)の塩濃度が、約0.6Mから約0.9Mである、項目19から32のいずれか1項に記載の方法。
(項目34)
前記固相支持体が、磁性粒子またはビーズである、項目19から33のいずれか1項に記載の方法。
(項目35)
前記サンプルが、呼吸器サンプルである、項目19から34のいずれか1項に記載の方法。
(項目36)
前記呼吸器サンプルが痰である、項目35に記載の方法。
(項目37)
前記生物が真菌である、項目19から36のいずれか1項に記載の方法。
(項目38)
前記生物が、グラム陽性桿菌である、項目19から36のいずれか1項に記載の方法。
(項目39)
前記生物がマイコバクテリアである、項目38に記載の方法。
(項目40)
前記生物が、TB複合体生物である、項目39に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0029】
好ましい実施態様の説明
本発明は、TB複合体メンバーの、23S rRNAまたはrDNAから得られる核酸を標的とするオリゴヌクレオチドであって、試験サンプルにおけるTB複合体生物の存在または量を決定するのに特に有用なオリゴヌクレオチドを記載する。このオリゴヌクレオチドは、種々のやり方で、例えば、検出プローブ、ヘルパープローブ、捕捉プローブ、および/または増幅オリゴヌクレオチドとして機能することによって、TB複合体生物の検出を支援する。本発明の検出プローブは、ストリンジェントハイブリダイゼーション条件下において、TB複合体生物から得られる核酸中に存在する標的配列に優先的にハイブリダイズして、検出可能な2本鎖を形成することが可能であり、該2本鎖は、試験サンプルにおける、一つ以上の、TB複合体メンバーの存在を示す。本発明のプローブは、TB複合体生物と、その既知の、系統学的にもっとも近縁な菌種とを区別することが可能であると考えられる。本発明のヘルパープローブは、ストリンジェントハイブリダイゼーション条件下において、TB複合体生物由来の核酸中に存在する標的配列にはハイブリダイズすることが可能であり、かつ、検出プローブ:標的核酸2本鎖の形成を強化するために使用することが可能である。本発明の捕捉プローブは、アッセイ条件において、TB複合体生物由来の核酸中に存在する標的配列にハイブリダイズすることが可能であり、かつ、臨床標本の他の成分から、標的核酸を分離するために使用することが可能である。本発明の増幅オリゴヌクレオチドは、アッセイ条件において、TB複合体生物由来の核酸中に存在する標的配列にハイブリダイズすることが可能であり、かつ、例えば、TB複合体由来核酸の多数コピーを生成する増幅反応におけるプライマーとして使用することが可能である。これらのプローブおよび増幅オリゴヌクレオチドは、試験サンプルにおけるTB複合体メンバーの検出および/または定量のためのアッセイにおいて使用することが可能である。
【0030】
A.定義
下記の用語は、異なる意味を有すると明示されない限り、本明細書では表示の意味を有する。
【0031】
「サンプル」または「試験サンプル」とは、標的生物、または、標的生物から得られる核酸を含むことが疑われる任意の物質を意味する。この物質は、例えば、未処理の臨床標本、例えば、呼吸器標本、標本を含むバッファー媒体、標本と標的生物に属する核酸を放出させるための崩壊剤とを含む媒体、または、反応容器においてもしくは反応材料または装置の上で分離および/または精製される標的生物から得られる核酸を含む媒体であってもよい。特許請求の範囲において、「サンプル」および「試験サンプル」という用語は、生の形状における標本、または、標本中の標的生物から得られる核酸を放出、単離、および精製するための処理の任意の段階における標本を指してもよい。したがって、使用請求項の方法において、「サンプル」または「試験サンプル」への各言及は、処理の種々の段階における一つのまたは複数の標的生物から得られる核酸を含むことが疑われる物質を指してもよく、その請求項における物質の最初の形状に限定されない。
【0032】
「崩壊させる」または「崩壊」とは、細胞に関連して、核酸がそれから放出されることを可能とする変性状態を引き起こすこと、または、その状態にあることを意味する。本明細書で用いる「崩壊させる」および「崩壊」という用語は、核酸が放出されるために、細胞の溶解または破壊を要しない。
【0033】
「標的核酸」または「標的」とは、標的核酸配列を含む核酸を意味する。
【0034】
「標的核酸配列」、「標的配列」、または「標的領域」とは、1本鎖核酸分子のヌクレオチド配列の全てまたは一部を含む、特異的デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド配列を意味する。
【0035】
「オリゴヌクレオチド」または「オリゴマー」とは、共に連結される、二つ以上のヌクレオシドサブユニットまたは核酸塩基から構成されるポリマーを意味する。オリゴヌクレオチドは、DNAおよび/またはRNA、およびその類縁体であってもよい。ヌクレオシドサブユニットの糖基は、リボース、デオキシリボース、および、その類縁体、例えば、リボフラノウラシル成分への2’−O−メチル置換を有するリボヌクレオシドであってもよい。(2’置換を有するヌクレオシドサブユニットを含み、検出プローブ、捕捉プローブ、および/または増幅オリゴヌクレオチドとして有用なオリゴヌクレオチドが、Becker et al., “Method for Amplifying Target Nucleic Acids Using Modified Primers,”米国特許第6,130,038号に開示される。)ヌクレオシドサブユニットは、オリゴヌクレオチドの、その相補的、標的核酸配列に対するハイブリダイゼーションを妨げない、フォスフォジエステル結合、修飾結合、または、非ヌクレオチド成分によって接合されてもよい。修飾結合としては、標準的フォスフォジエステル結合が、異なる結合、例えば、フォスフォロチオエート結合、またはメチルフォスフォネート結合によって置換される結合が挙げられる。核酸塩基サブユニットは、例えば、DNAの天然のデオキシリボースリン酸バックボーンを、擬似ペプチドバックボーン、例えば、核酸塩基サブユニットを、カルボキシメチルリンカーによって中央の二次アミンに結合する、2−アミノエチルグリシンバックボーンで置換することによって接合してもよい。(擬似ペプチドバックボーンを有するDNA類縁体は、通常、「ペプチド核酸」または”PNA”と呼ばれ、Nielsen et al., “Peptide Nucleic Acids,”米国特許第5,539,082号に開示される)。本発明によって考慮の対象とされる、オリゴヌクレオチドまたはオリゴマーの、他の、非限定的例としては、2環性および3環性ヌクレオシドを含む核酸類縁体、および、「ロック核酸」、「ロックヌクレオシド類縁体」、または”LNA”と呼ばれるヌクレオチド類縁体が挙げられる。(ロック核酸は、Wang, “Comformationally Locked Nucleosides and Oligonucleotides,”米国特許第6,083,482号;Imanishi et al., “Bicyclonucleotide and Oligonucleotide Analogues,” 米国特許第6,268,490号;および、Wengel et al., “Oligonucleotide Analogues,” 米国特許第6,670,461号に開示される)。修飾オリゴヌクレオチドが、ストリンジェントハイブリダイゼーション条件下、または増幅条件下において標的核酸に対してハイブリダイズすることが可能である限り、いずれのものであれ、核酸類縁体は本発明の考慮の対象とされる。検出プローブの場合、修飾オリゴヌクレオチドはさらに、ストリンジェントハイブリダイゼーション条件下で標的核酸に優先的にハイブリダイズすることができなければならない。
【0036】
ある定められた配列のオリゴヌクレオチドは、当業者には既知の技術によって、例えば、化学的または生化学的合成法によって、および、組み換え核酸分子、例えば、細菌またはレトロウィルスベクターによるインビトロまたはインビボ発現によって生産してもよい。本開示の意図するところでは、オリゴヌクレオチドは、野生型染色体DNAからも、そのインビボ転写産物からも成るものではない。オリゴヌクレオチドの一つの使用は、検出プローブとしてである。オリゴヌクレオチドはさらに、捕捉プローブおよび増幅オリゴヌクレオチドとして使用してもよい。
【0037】
「検出プローブ」または「プローブ」とは、その標的配列に対し、ストリンジェントハイブリダイゼーション条件下で検出するのに安定なプローブ:標的ハイブリッドを形成するのに十分に相補的な塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを含む構造を意味する。当業者であれば理解されるように、オリゴヌクレオチドは、ヒトの介入無しでは天然では見られない(例えば、外来核酸によって組み換えられ、単離され、ある程度精製された)形状を持つ単離核酸分子、またはその類縁体である。本発明のプローブは、標的領域の外側のヌクレオチドに対して相補的な、さらに別のヌクレオシドまたは核酸塩基を有してもよい。ただし、そのようなヌクレオシドまたは核酸塩基は、ストリンジェントハイブリダイゼーション条件下のハイブリダイゼーションを妨げてはならない。さらに、非相補的配列、例えば、標的捕捉配列(一般に、ポモポリマー列、例えば、ポリA、ポリT、またはポリU尾部)、プロモーター配列、RNA転写のための結合部位、制限エンドヌクレアーゼ認識部位、または、所望の二次または三次構造、例えば、検出および/または増幅の促進に使用が可能な、触媒活性部位またはヘアピン構造を付与する配列、を含めてもよい。ある定められた配列のプローブは、当業者に既知の技術、例えば、化学的合成法、および、組み換え核酸分子によるインビトロまたはインビボ発現によって生産してもよい。
【0038】
「安定」または「検出に安定」とは、反応混合物の温度が、核酸2本鎖の融解温度より少なくとも2℃低いことを意味する。反応混合物の温度は、核酸2本鎖の融解温度よりも少なくとも5℃低い方がより好ましく、反応混合物の融解温度よりも少なくとも10℃低い方がさらに好ましい。
【0039】
「実質的に相同」、「実質的に一致」、または「実質的に一致する」とは、対象オリゴヌクレオチドが、参照塩基配列(RNAおよびDNA等価物を除く)中に存在する、少なくとも10個の連続塩基領域に対して、少なくとも80%相同、好ましくは少なくとも90%相同、および、もっとも好ましくは100%相同な、少なくとも10個の連続塩基領域を含む塩基配列を有することを意味する。(当業者であれば、オリゴヌクレオチドの、標的配列に対するハイブリダイゼーションを可能としながら、他方では、受容不可能なレベルの非特異的ハイブリダイゼーションを阻止する、種々の相同性パーセントとなるように、ハイブリダイゼーションアッセイに対し修飾を施すことが可能であることを簡単に理解するであろう)。類似の程度は、二つの配列を構成する核酸塩基の順序を比較することによって決定され、この二つの配列の間に存在するかもしれない、他の構造的差については、その構造差が、相補的塩基との水素結合を妨げない限り、考慮しない。さらに、二つの配列の間の相同性の程度は、少なくとも10個の連続塩基から成る各組に存在する塩基ミスマッチの数として表すことが可能であり、その差は0から2塩基差の範囲にあってもよい。
【0040】
「RNAおよびDNA等価物」とは、同じ相補的塩基対のハイブリダイゼーション特性を有するRNAおよびDNA分子を意味する。RNAおよびDNA等価物は、異なる糖成分(すなわち、リボース対デオキシリボース)を有するが、RNAにおけるウラシル、およびDNAにおけるチミンの存在において異なっていてもよい。RNAおよびDNA等価物の間の差は、相同性の差には寄与しない。なぜなら、等価物は、ある特定配列に対し同じ程度の相補性を有するからである。
【0041】
「ハイブリダイゼーション」または「ハイブリダイズする」とは、二つの、完全に、または部分的に相補的な核酸鎖が、特定のハイブリダイゼーションアッセイ条件下において、平行方向に、好ましくは逆平行方向に一緒に合わさって、2本鎖領域を有する安定な構造を形成する能力を意味する。この2本鎖構造の、2本の構成鎖は、時にハイブリッドと呼ばれるが、水素結合によって一緒に保持される。これらの水素結合は、もっとも一般的には、単一核酸鎖上のアデニンおよびチミンまたはウラシル(AおよびTまたはU)、またはシトシンおよびグアニン(CおよびG)の間に形成されるが、塩基ペアは、これらの「正規」ペアのメンバーではない塩基の間にも形成することが可能である。非正規的塩基ペアは、従来技術で周知である(例えば、ROGER L. P. ADAMS ET AL., THE BIOCHEMISTRY OF THE NUCLEIC ACIDS (11th ed. 1992)を参照されたい)。
【0042】
「優先的にハイブリダイズする」とは、ストリンジェントハイブリダイゼーション条件下において、検出プローブが、その標的核酸にハイブリダイズして、少なくとも一つの対象生物の存在を示す安定なプローブ:標的ハイブリッドを形成することは可能であるが、非標的生物、特に系統発生的にごく近縁な生物の存在を示す、十分な数の安定なプローブ:標的ハイブリッドは形成されないことを意味する。したがって、プローブは、非標的核酸に対してよりも、標的核酸に対して十分により高度にハイブリダイズするので、当業者であれば、適宜、TB複合体生物由来核酸の存在(または不在)を正確に検出し、試験サンプルにおいて、その存在を、系統発生的近縁種の存在から区別することが可能となる。一般に、オリゴヌクレオチド配列と、その標的配列の間の相補性の程度を下げることは、そのオリゴヌクレオチドの、その標的領域に対するハイブリダイゼーションの程度または率を減少させる。しかしながら、一つ以上の非相補的ヌクレオシドまたは核酸塩基の包含が、非標的生物に対するオリゴヌクレオチドの識別能力を助長する場合がある。
【0043】
優先的ハイブリダイゼーションは、従来技術で既知で、本明細書に記載される、例えば、下記の実施例に記載される技術を用いて測定することが可能である。優先的ハイブリダイゼーションは、試験サンプルにおける標的ハイブリダイゼーション信号と、非標的ハイブリダイゼーション信号の間には少なくとも10倍差があることを要求する。ただし、この差は、少なくとも100倍差であることが好ましく、より好ましくは少なくとも1000倍差である。もっとも好ましくは、試験サンプルにおける非標的ハイブリダイゼーション信号は、たかだか背景信号レベルである。
【0044】
「ストリンジェントハイブリダイゼーション条件」または「ストリンジェント条件」とは、検出プローブが、標的核酸(好ましくは、TB複合体生物由来のrRNAまたはrDNA)には優先的にハイブリダイズするが、近縁の非標的生物(例えば、M. celatum)由来の核酸に対してはハイブリダイズしないことを可能とする条件を意味する。ストリンジェントハイブリダイゼーション条件は、いくつかの要因、例えば、GC含量とプローブ長、プローブ配列と、試験サンプル中に存在する可能性のある非標的配列、および標的配列との類似性の程度に応じて変動してよい。ハイブリダイゼーション条件としては、ハイブリダイゼーション試薬または溶液の温度および組成が挙げられる。本発明のプローブによってTB複合体生物由来標的核酸を検出するのに好ましいハイブリダイゼーションアッセイ条件は、塩濃度が約0.6−0.9Mの範囲にある場合、約60℃の温度に一致する。具体的ハイブリダイゼーションアッセイ条件は、下記において、実施例セクション、および、「TB複合体生物のリボソーム核酸に対する検出プローブ」という表題を持つセクション中に記載される。他の、受容可能なストリンジェントハイブリダイゼーション条件は、当業者であれば簡単に確かめることが可能である。
【0045】
「アッセイ条件」とは、オリゴヌクレオチドの、標的核酸に対する安定なハイブリダイゼーションを可能とする条件を意味する。アッセイ条件は、該オリゴヌクレオチドの、標的核酸に対する優先的ハイブリダイゼーションを要求しない。
【0046】
本発明のオリゴヌクレオチドに関して使用される場合、「事実上...から成る」または「事実上...から成っている」とは、該オリゴヌクレオチドは、指定の塩基配列と実質的相同な塩基配列を有するが、最大4個の塩基をさらに付加されてもよく、および/または、2個の塩基をそれから欠失させてもよいことを意味する。したがって、これらの語句は、配列長制限と、配列変動制限の両方を含む。オリゴヌクレオチドが、その公称特性、例えば、ストリンジェントハイブリダイゼーション条件下において、非標的核酸に対してよりも、その標的核酸に対して優先的にハイブリダイズすることが可能である能力を有することを妨げない付加または欠失は、いずれのものであれ、特異的塩基配列の非実質的変動である。オリゴヌクレオチドは、ある指定の核酸配列に対し、まったく付加も欠失も無く、実質的に類似の塩基配列を含んでもよい。しかしながら、ある指定の塩基配列から事実上成る(または、事実上成る)オリゴヌクレオチドを含むプローブまたはプライマーは、該プローブの、標的核酸に対するハイブリダイゼーションには参加せず、かつ、そのようなハイブリダイゼーションにも影響を及ぼさない、他の核酸分子を含んでもよい。
【0047】
「2本鎖核酸」、「2本鎖」、「核酸ハイブリッド」、または「ハイブリッド」とは、2本鎖の、水素結合される領域を含む、安定な核酸構造を意味する。このようなハイブリッドとしては、RNA:RNA、RNA:DNA、およびDNA:DNA2本鎖分子、および、その類縁体が挙げられる。この構造は、任意の既知の手段によって、例えば、プローブ連結ラベルを要しない手段によって検出することが可能なほど十分に安定である。例えば、検出法は、質量変化に対し、その表面において光学的に活性で、感受性を持つ、プローブ塗布基質を含んでもよい。質量変化は、光に対する光学的活性基質の、種々の反射的および透過的特性をもたらし、これによって、固定される標的核酸の存在または量が示される。(この例示の、光学的検出形状は、Nygren et al., “Devices and Methods for Optical Detection of
Nucleic Acid Hybridization,” 米国特許第6,060,237号に開示される)。標識プローブの使用を必要としない、2本鎖核酸形成検出のための、他の手段としては、臭化エチジウムなどの介在試薬を含む結合試薬の使用が挙げられる。例えば、Higuchi, “Homogenous Methods for
Nucleic Amplification and Detection,” 米国特許第5,994,056号を参照されたい。
【0048】
「増幅オリゴヌクレオチド」または「プライマー」とは、標的核酸に対してハイブリダイズし、核酸合成開始のためのプライマーおよび/またはプロモーター鋳型(例えば、相補鎖を合成し、それによって機能的プロモーター配列を形成するための)として活動することが可能なオリゴヌクレオチドを意味する。この増幅オリゴヌクレオチドは、RNA合成を開始するように設計される場合、プライマーは、標的配列に対して非相補的であるが、RNAポリメラーゼ、例えば、T7、T3、またはSP6 RNAポリメラーゼによって認識される塩基配列を含んでもよい。増幅オリゴヌクレオチドは、プライマー伸長の速度または量を阻止または低減するように修飾される3’末端を含んでもよい。(例えば、McDonough et al., “Methods of Amplifying
Nucleic Acids Using Promoter−Containing
Primer Sequences,” 米国特許第5,766,849号は、修飾または阻止される3’末端を有するプライマー、およびプロモーター−プライマーを開示する)。本発明の増幅オリゴヌクレオチドは、化学的に合成されるか、またはベクターから得られてもよいが、それらは、天然に生ずる核酸分子ではない。
【0049】
「核酸増幅」または「標的増幅」とは、少なくとも一つの標的核酸配列を有する核酸分子の数を増すことを意味する。本発明による標的増幅は、直線的か、指数関数的のどちらかであってよいが、ただし、指数関数的増幅が好ましい。
【0050】
「増幅条件」は、核酸増幅を可能とする条件を意味する。受容可能な増幅条件は、当業者であれば、使用される特定の増幅法に基づいて、通例の実験操作以上のことをまったく行うことなく簡単に確かめることが可能であろう。
【0051】
「アンチセンス」、「反対方向」または「負方向」とは、参照、すなわちセンス核酸分子に対して完全に相補的な核酸分子を意味する。
【0052】
「センス」、「同一方向」、または「正方向」とは、参照核酸分子に対して完全に相同な核酸分子を意味する。
【0053】
「アンプリコン」、または「増幅産物」とは、核酸増幅反応において生成され、標的核酸から得られる核酸分子を意味する。アンプリコンまたは増幅産物は、標的核酸と同じか、または反対方向であってもよい標的核酸配列を含む。
【0054】
「得られる」とは、その言及される核酸が、生物から直接獲得されるか、または、核酸増幅の産物であることを意味する。したがって、生物から「得られる」核酸は、天然ではその生物に存在しないアンチセンスRNA分子であってもよい。
【0055】
「捕捉プローブ」とは、標的核酸に結合し(好ましくは、検出プローブによって標的される領域とは別領域で)、かつ、直接間接に固相支持体に結合し、そのため、試験サンプル中の標的核酸を固定、分離することを可能とするオリゴヌクレオチドを意味する。この捕捉プローブは、標的核酸にハイブリダイズする標的結合領域を含む。捕捉プローブは、該捕捉プローブを固相支持体に固定するための、リガンド−ライゲート結合ペアを含んでもよいが、好ましい捕捉プローブは、固相支持体に結合する固定用プローブにハイブリダイズする、固定用プローブ結合領域を含む。捕捉プローブは、ストリンジェント条件下に、標的核酸配列、および固定用プローブの両方にハイブリダイズすることが好ましいが、捕捉プローブの標的結合領域および固体プローブ結合領域は、異なるハイブリダイゼーション条件の下でその標的配列に結合するように結合するように設計されてもよい。このようにして、捕捉プローブは、先ず、溶液中の反応動態に有利な条件下で標的核酸にハイブリダイズし、次いで、固定用プローブ結合領域の、固定プローブに対するハイブリダイゼーションを可能とする条件に調整するように設計されてもよい。標的結合領域および固定用プローブ結合領域は、同じオリゴヌクレオチド内に含まれ、直接互いに接してもよいし、または、一つ以上の、任意に修飾されるヌクレオチドによって隔てられてもよいし、あるいは、これらの領域は、非ヌクレオチドリンカーによって互いに接合されてもよい。
【0056】
「標的結合領域」とは、アッセイ条件下において、標的核酸中に存在する標的配列、該標的配列のDNAまたはRNA等価物、または、標的配列の相補体に安定に結合する、オリゴヌクレオチドの部分を意味する。アッセイ条件は、ストリンジェントハイブリダイゼーション条件か、または増幅条件であってもよい。
【0057】
「固定用プローブ結合領域」とは、アッセイ条件下において固定プローブにハイブリダイズする、オリゴヌクレオチドの部分を意味する。
【0058】
特許請求項の「ホモポリマー尾部」とは、少なくとも10個の同一塩基から成る、連続塩基配列(例えば、10個の隣接アデニンまたはチミン)を意味する。
【0059】
「固定用プローブ」とは、捕捉プローブを、固定支持体に接合するためのオリゴヌクレオチドを意味する。捕捉プローブを、標的核酸および固定用プローブにハイブリダイズさせるために使用される条件下において、それらの条件が同じであるか、異なるかに関係無く、安定な状態を維持する結合または相互作用を介して、固定用プローブは、固相支持体に直接または間接に接合される。固定用プローブは、結合標的核酸を、サンプル中の未結合物質から分離するのをやり易くする。
【0060】
「単離する」または「単離」とは、試験サンプル中に存在する標的核酸の少なくとも一部が、反応容器内で、または反応装置または固体担体上で、固定的または放出可能的に濃縮され、そのため、該容器、装置、または担体から該標的核酸が著明に失われることなく、該標的核酸の精製が可能となることを意味する。
【0061】
「精製する」または「精製」とは、試験サンプルの一つ以上の成分が、該試験サンプルの一つ以上の、他の成分から引き離されることを意味する。精製されるサンプル成分としては、ウィルス、核酸、または、水溶液相、一般には、さらに不要の物質、例えば、タンパク、炭水化物、脂質、非標的核酸、および/または標識プローブを含んでもよい、特に、水溶液相に溶解した核酸が挙げられる。好ましくは、精製工程は、サンプル中に存在する不要成分の少なくとも70%、より好ましくは少なくとも約90%、および、さらに好ましくは少なくとも約95%を除去する。
【0062】
「系統発生的に近縁な」とは、それらの生物は、進化的な意味で互いに緊密な関係を持っており、したがって、より関係がゆるい生物同士よりも、高度の全体的核酸配列相同性を持つことが予想されることを意味する。系統樹において、隣接位置、および一つ置いた隣の位置を占める生物同士は近縁関係にある。隣接位置または一つ置いて隣の位置よりも遠ざかる位置を占める生物同士であっても、それらが著明な全体的核酸配列相同性を有する限り、近縁である。
【0063】
B.ハイブリダイゼーション条件およびプローブ設計
本発明の検出プローブを、ある場合には、増幅オリゴヌクレオチドを、TB複合体由来標的核酸に対して優先的にハイブリダイズさせるが、試験サンプル中に存在することが疑われる他の非標的配列に対してはハイブリダイズさせないように、ハイブリダイゼーション反応条件、もっとも重要なのは、ハイブリダイゼーション温度およびハイブリダイゼーション液における塩濃度を選択することが可能である。塩濃度を低下させ、および/または、温度を上昇させると(高,条件)、2本鎖ハイブリッド分子中の対向核酸塩基の間の水素結合が破られるにつれて、核酸ハイブリダイゼーションの程度が低下する。このプロセスは「融解」と呼ばれる。
【0064】
一般に、もっとも安定なハイブリッドは、最大数の、隣接する、完全にマッチした(すなわち、水素結合)ヌクレオチド塩基対を有するものである。このようなハイブリッドは、通常、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェント度が上昇するにつれて、もっとも最後に融解すると予想される。しかしながら、一つ以上のミスマッチ、「非正規」、または不完全塩基対(核酸のヌクレオチド配列のその位置に、比較的弱い、または不在塩基ペア形成をもたらす)を含む2本鎖核酸領域であっても、比較的高いストリンジェント条件下においても十分に安定で、そのため、ハイブリダイゼーションアッセイにおいて、試験サンプル中に存在するかもしれない、他の、選ばれない核酸と交差反応をすることもなく、核酸ハイブリッドの形成および検出を可能とさせる場合がある。
【0065】
したがって、一方では、標的核酸のヌクレオチド配列と、系統発生的には、異なるが、近縁の生物に属する、非標的核酸のヌクレオチド配列との類似性、他方では、特定の検出プローブまたは増幅オリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列と、標的および非標的核酸のヌクレオチド配列の間の相補性の程度に応じて、一つ以上のミスマッチは、プローブに含まれるオリゴヌクレオチド、または増幅オリゴヌクレオチドの、標的核酸にはハイブリダイズするが、非標的核酸にはハイブリダイズしない能力を必ずしも損なうことはない。
【0066】
プローブ:標的ハイブリッドの融解温度(T、ある任意の反応混合物において、可能性として2本鎖になり得る分子の半分が、1本鎖の、変性状態となる温度と定義される)と、プローブと、試験サンプル中に存在することが予想されるが、検出を求めていない、系統発生的にもっとも近縁な生物のリボソームRNA(rRNA)、またはリボソームDNA(rDNA)との間に形成されるミスマッチハイブリッドのTとの差を最大にするように、本発明の検出プローブは、選ばれ、選択され、および/または設計される。未標識増幅オリゴヌクレオチドおよび捕捉プローブは、本発明において有用であるために、検出プローブほど極端に高い特異性を有する必要はないのであるが、これらも、指定の増幅、アッセイ、またはストリンジェントハイブリダイゼーション条件下において、他の核酸に対してよりも、一つ以上の標的核酸に対して優先的にハイブリダイズするように設計される。
【0067】
rRNA分子においては、二次構造(一部は、分子内水素結合による)と、機能の間には緊密な関係がある。この事実は、一次ヌクレオチド配列における進化的変化に対し、二次構造の維持をもたらすようにとの制限を課す。例えば、もしも、2本螺旋の一方の「鎖」の一塩基が変化した場合(分子内水素結合のため、両「鎖」は、同じrRNA分子の一部である)、相補性を、したがって必要な二次構造を維持するために、通常、他方「鎖」の一次配列にも補償的置換が起こる(これは共変動と呼ばれる)。このため、保存的一次配列および保存的二次構造要素の両方に基づいて、二つの極めて異なるrRNA配列が整列されることが可能となる。本発明に記載される検出プローブにとって可能な標的配列は、整列配列の相同性変動に注目することによって特定される。
【0068】
各可変域における配列進化がもっとも多様である。この多様性のため、TB複合体生物の内、系統発生的に比較的遠い近縁種の、rRNAの対応可変域の方が、系統発生的により近い近縁種のrRNAよりも大きな差を示す。TB複合体生物と、他の生物との間には十分な変動が観察され、そのため、好ましい標的部位を特定し、かつ、試験サンプルにおいて非TB複合体生物に対して、特に、TB複合体生物に対するもっとも近縁の生物であるM. celatumに対して、TB複合体生物を区別するのに有用な検出プローブを設計することが可能となった。
【0069】
恐らく一意である可能性のある標的ヌクレオチド配列を単に特定するだけでは、その配列を含むTB複合体のrRNAまたはrDNAにハイブリダイズする、機能的に種特異的な検出プローブを製造することは保証されない。外にも様々な要因によって、属特異的、または種特異的プローブのための標的部位としての核酸配座の適性が決定される。本明細書に記載されるものと同様、ハイブリダイゼーション反応の程度および特異性は、いくつかの要因によって影響されるので、それらの要因の一つ以上を操作することによって、ある特定のオリゴヌクレオチドの正確な感度および特異性が、そのヌクレオチドがその標的に対し完全に相補的であるか否かとは無関係に、決定される。各種アッセイ条件の重要性および作用は、当業者には既知であり、Hogan et al., “Nucleic
Acid Probes for Detection and/or Quantitation of Non−Viral Organisms,”米国特許第5,840,488号;Hogan et al., “Nucleic Acid Probes to Mycobaterium gordonae,” 米国特許第5,216,143号;およびKohne, “Method for Detection, Identification and Quantitation of Non−Viral Organisms,” 米国特許第4,851,330号に開示される。なお、前述の各参考文献を、引用により本明細書に含める。
【0070】
ハイブリダイゼーションの所望の温度、およびハイブリダイゼーション液の組成(例えば、塩濃度、界面活性剤、および他の溶質)も、2本鎖ハイブリッドの安定性に大きく影響する可能性がある。属特異的または種特異的プローブを構築する際には、イオン強度、および、プローブが標的にハイブリダイズされる温度などの条件も考慮に入れなければならない。ハイブリッド核酸の熱安定性は、一般に、反応混合物のイオン強度と共に増す。一方、水素結合を破る化学的試薬、例えば、フォルムアミド、尿素、ジメチルスルフォキシド、およびアルコールは、ハイブリッドの熱安定性を大きく下げることが可能である。
【0071】
標的に対するプローブの特異性を最大にするために、本発明の対象プローブは、高いストリンジェント条件下にその標的にハイブリダイズするように設計された。このような条件下では、高度の相補性を有する単一核酸鎖だけが互いにハイブリダイズする。このような高度の相補性を持たない単一核酸鎖はハイブリッドを形成しない。したがって、アッセイ条件のストリンジェント度が、ハイブリッドを形成するために、二つの核酸鎖の間に形成されなければならない相補程度の量を決定する。プローブと標的核酸の間に形成されるハイブリッドと、プローブと、試験サンプル中に存在する非標的核酸の間に形成される可能なハイブリッドとの間の安定性の差を最大にするようにストリンジェント度は選ばれる。
【0072】
非標的核酸に対する相補性についてはGおよびC富裕領域を回避し、かつ、非標的配列に対してはできるだけ多くの不安定性ミスマッチを含むようにプローブを構築することによって、非標的生物の配列に対して完全な相補性を持つ検出プローブの長さを最小にすることによって適正な特異性を実現してもよい。あるプローブが、ある特定種類の生物のみを検出するのに適切であるかどうかは、主に、プローブ:標的ハイブリッド、対、プローブ:非標的ハイブリッドの間の熱安定差に依存する。プローブ設計の際、このT値の差をできるだけ大きくすべきである(好ましくは、2−5℃以上)。Tの操作は、プローブ長およびプローブ組成(例えば、GC含量対AT含量)に対する変化によって実行することが可能である。
【0073】
一般に、オリゴヌクレオチドプローブの至適ハイブリダイゼーション温度は、任意の2本鎖について融解温度よりも約5℃低い。至適温度未満の温度でインキュベーションすると、ミスマッチの塩基配列同士がハイブリダイスし、したがって、特異性を下げることがある。プローブが長ければ長いほど、塩基対の間により多くの水素結合が起こり、一般にTはより高くなる。GおよびCのパーセントを増すことはT値を上げる。これは、G−C塩基対は、余分の水素結合を示し、したがって、A−T塩基対よりも高い熱安定性を示すからである。このような考察は従来技術で既知である。(例えば、J. SAMBROOK ET AL., MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, ch. 11 (2nd ed. 1989)を参照されたい)。
【0074】
を決定するための好ましい方法は、Arnold et al., “Homogenous Protection Assay,” 米国特許第5,283,174号に開示される、周知のHybridization Protection Assay
(HPA)を用いてハイブリダイゼーションを測定する。なお、この特許の内容を、引用により本明細書に含める。Tは、HPAを用いて下記のようにして測定することが可能である。プローブ分子を、アクリジニウムエステルによって標識し、コハク酸リチウムバッファー(0.1Mコハク酸リチウムバッファー、pH4.7、20mM EDTA、15 mM アルドリチオール−2、1.2M LiCl、3%(v/v)純アルコール、2%(w/v)ラウリル硫酸リチウム)において、過剰量の標的を用いてプローブ:標識ハイブリッドを形成させる。次に、このプローブ:標識ハイブリッドを含む溶液の分液を、コハク酸リチウムバッファー液に希釈し、予想T(通常55℃)よりも低い種々の温度で始めて5分間インキュベートし、2−5℃刻みで上げていく。次に、この溶液を、弱アルカリホウ酸バッファー(600 mMホウ酸、240 mM NaOH、1%(v/v) TRITON(登録商標)X−100界面活性剤、pH8.5)で希釈し、等温か、またはより低い温度(例えば、50℃)で10分インキュベートする。
【0075】
この条件下では、単一鎖プローブに付着したアクリジニウムエステルは加水分解されるが、一方、ハイブリダイズしたプローブに付着したアクリジニウムエステルは、比較的加水分解から保護される。したがって、加水分解処理後に残留するアクリジニウムエステルの量は、ハイブリッド分子の数に比例する。この残留アクリジニウムエステルは、溶液に過酸化水素およびアルカリを加えることによって残留アクリジニウムエステルから生成される化学発光を監視することによって測定することが可能である。化学発光は、発光光度計、例えば、LEADER(登録商標) HC+ Luminometer (Gen−Probe Incorporated; San Diego, CA; Cat. No. 4747)によって測定することが可能である。得られたデータは、最大信号(通常、最低温度で得られる)のパーセント・対・温度としてプロットされる。Tは、最大信号の50%が残留する温度と定義される。上記の方法の外に、Tは、当業者には既知の同位元素法によって決定してもよい(例えば、Hogan et al., 米国特許第5,840,488号を参照)。
【0076】
その標的に対する検出プローブの特異性を確かめるには、高いストリンジェント度の条件下で標的核酸のみにハイブリダイズするプローブを設計することが望ましい。高いストリンジェント度条件下では、高度に相補的な配列のみがハイブリッドを形成する。したがって、アッセイ条件のストリンジェント度は、安定なハイブリッドが形成されるために、二つの配列の間に必要とされる相補性の量を決める。ストリンジェント度は、プローブ:標的ハイブリッドの安定性と、可能なプローブ:非標的ハイブリッド間の安定性との差を最大とするように選ばなければならない。
【0077】
特異的ストリンジェントハイブリダイゼーション条件の例が、下記の実施例セクションに示される。もちろん、当業者であれば、本開示に基づいて別のストリンジェントハイブリダイゼーション条件を決めることが可能である。(例えば、SAMBROOK ET AL.,上記、ch. 11を参照されたい)。
【0078】
標的核酸配列領域の長さ、したがって、プローブ配列の長さも重要である場合がある。ある場合には、ある特定領域から、位置および長さが異なるいくるかの配列は派生することがあり、これを用いて、所望のハイブリダイゼーション特性を有するプローブを設計することが可能となる場合がある。別の場合では、一プローブの方が、ただ一塩基でしか違わない別プローブよりも、特異性に関して著しく優れる場合がある。完全には相補的でない核酸同士がハイブリダイズすることは可能であるが、一般に、完全に相補的な最長塩基が、塩基組成と同様、ハイブリッド安定性を決める。
【0079】
ハイブリダイゼーションに対して抑制的な強力な内部構造を形成することが知られるrRNAの領域は、あまり好ましくない標的領域である。同様に、広範な自己相補性を有するプローブも、下記に論じる特定の例外を除いては、一般に回避すべきである。1本鎖が、全体として、または部分的に、分子内または分子間ハイブリッドに関与する場合、その鎖は、反応条件の変更無しでは、新規分子間プローブ:標的ハイブリッドの形成に関与する能力は低い。リボソームRNA分子は、水素結合によって、きわめて安定な分子内螺旋および二次構造を形成することが知られる。ハイブリダイゼーション条件下では実質的に1本鎖状態を維持する標的核酸領域に対するプローブを設計することによって、プローブと標的間のハイブリダイゼーションの速度および範囲を増してもよい。
【0080】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の産物同様、ゲノム性リボソーム核酸(rDNA)標的も、2本鎖形として天然に出現する。これらの2本鎖標的は、元々、プローブとのハイブリダイゼーションに対しては抑制的であり、ハイブリダイゼーション前に変性を必要とする。適切な変性およびハイブリダイゼーション条件は、従来技術で既知である(例えば、Southern, E.M., J. Mol. Biol., 98:503(1975)を参照)。
【0081】
その標的核酸に対し、完全にマッチしたオリゴヌクレオチドの融解温度の推定値を与える、いくつかの数式が利用可能である。そのような一つの式は下記の通り:T = 81.5 + 16.6 (log10[Na+] + 0.41(割合G+C)−(600/N)(式中、N=ヌクレオチドの数で表したオリゴヌクレオチドの長さ)。これは、長さが14から、60−70ヌクレオチドのオリゴヌクレオチドのT について優れた推定値を与える。このような計算から、次のような経験的確認、またはTの「微調整」が、従来技術で周知のスクリーニング技術を用いて実行される。ハイブリダイゼーションおよびオリゴヌクレオチドプローブに関するさらに詳細については、SAMBROOK ET AL.,上記、ch. 11を参照されたい。この文献は、従来技術においても特に著名なものであるが、さらに、ハイブリッドのTに対するミスマッチの作用の推定式も与える。したがって、二つ以上の生物のリボソームRNA(またはrDNA)の任意の領域の既知のヌクレオチド配列から、これらの生物を互いに区別するオリゴヌクレオチドが設計される。
【0082】
C. 核酸増幅
好ましくは、本発明の増幅オリゴヌクレオチドは、オリゴデオキシヌクレオチドであり、核酸ポリメラーゼによる伸長産物合成のための基質として使用されるほど十分に長い。至適増幅オリゴヌクレオチド長は、いくつかの要因、例えば、反応温度、増幅オリゴヌクレオチドの構造および塩基組成、および、増幅オリゴヌクレオチドがどのように使用されるかなどを考慮しなければならない。例えば、至適特異性のためには、増幅オリゴヌクレオチドは、一般に、標的核酸配列の複雑さに応じて、少なくとも12塩基長でなければならない。もしもこのような特異性が必須ではないならば、より短い増幅オリゴヌクレオチドを用いてもよい。そのような場合、鋳型核酸との安定なハイブリッド複合体を形成するために、反応は、より低い温度で実行することが望ましい場合がある。
【0083】
所望の特徴を持つ増幅オリゴヌクレオチドおよび検出プローブを設計するための有用な指針は、下記の、「オリゴヌクレオチドの調製」という表題のセクションに記載される。増幅およびプローブ探査のための至適部位は、TB複合体核酸の、少なくとも二つ、好ましくは三つの保存領域を含む。これらの領域は、長さが約15から350塩基であるが、好ましくは長さが約15から150塩基である。
【0084】
一組の増幅オリゴヌクレオチド(例えば、プライマーおよび/またはプロモーター−プライマー)によって観察される増幅の程度は、いくつかの要因に、例えば、その特異的標的配列に対して増幅オリゴヌクレオチドがハイブリダイズする能力、および、酵素的に伸長、コピーされる能力などに依存する。異なる長さおよび塩基組成の増幅オリゴヌクレオチドを使用してもよいが、本発明において好まれる増幅オリゴヌクレオチドは、約42℃の予想T を有する、15から40塩基の標的結合領域を持つ。
【0085】
プローブハイブリダイゼーションに影響を及ぼすパラメータ、例えば、T 、相補性、および、標的配列の二次構造なども、増幅オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションに、したがって、増幅オリゴヌクレオチドの性能にも影響を及ぼす。非特異的伸長(プライマー−ダイマー、または非標的コピー形成)の程度も、増幅効率に影響を及ぼす場合がある。したがって、増幅オリゴヌクレオチドは、自己相補性または交差相補性が、特にその配列の3’末端において低くなるように選ばれる。にも拘わらず、後述の「信号プライマー」は、自己相補性領域を含むように修飾され、それによってそれらを、その用語は下記に定義される通りの「分子トーチ」または「分子ビーコン」信号プライマーに変換することが可能であることに注意しなければならない。非正規のプライマー伸長を抑えるため、長いホモポリマーストレッチおよび高いGC含量は回避される。設計のこの局面を支援するためにコンピュータプログラムの利用が可能であり、例えば、Oligo Etc. Inc.からOligo Tech 分析プログラムが市販されており、World
Wide Webのwww.oligosetc.com/analysis.phpにおいて、該URLでハイパーテキスト転送プロトコール(http)を用いることによって入手することが可能である。
【0086】
本発明の増幅オリゴヌクレオチドと組み合わせて使用される核酸ポリメラーゼは、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドのいずれか、または両方を鋳型依存性に組み込んで、核酸ポリマー、または鎖とする、化学的、物理学的、または生物学的仲介因子を指す。核酸ポリメラーゼの例としては、DNA指向DNAポリメラーゼ、RNA指向DNAポリメラーゼ、およびRNA指向RNAポリメラーゼが挙げられる。DNAポリメラーゼは、鋳型依存性に、かつ、5’から3’方向に核酸合成を実行する。2本鎖核酸における2本鎖が典型的な逆平行方向性を持つために、この方向は、鋳型の3’領域から鋳型の5’領域へと進む。DNA指向DNAポリメラーゼの例としては、大腸菌のDNAポリメラーゼ、Thermus aquaticus (Taq)から得られた熱安定DNAポリメラーゼ、および、Bacillus stearothermophilis (Bst)から得られたDNAポリメラーゼIの大型断片が挙げられる。RNA指向DNAポリメラーゼの例としては、各種レトロウィルスの逆転写酵素、例えば、Moloneyマウス白血病ウィルス(MMLV)逆転写酵素、または鳥類骨芽球症ウィルス(AMV)逆転写酵素が挙げられる。
【0087】
大抵の核酸増幅反応時には、核酸ポリメラーゼは、標的核酸を鋳型として用いてプライマーの3’末端にヌクレオチド残基を付加し、このようにして、標的核酸の領域に対し、部分的に、または完全に相補的なヌクレオチド配列を持つ、第2核酸鎖を合成する。多くの核酸増幅反応では、得られる2本鎖構造を含む2本鎖は、増幅反応を進行させるためには、化学的または物理的手段によって分離しなければならない。それとは別に、新たに合成された鋳型は、例えば、鎖の移動、または元の標的鎖の一部または全てを消化する核分解酵素の使用によって、第2プライマー、または、他のプロモーター−プライマーによるハイブリダイゼーションのために利用可能とされる。このようにして、この過程が数サイクル繰り返され、標的ヌクレオチド配列を有する核酸分子の数の増加をもたらす。
【0088】
第1または第2増幅オリゴヌクレオチドのどちらか、またはその両方は、プロモーター−プライマーであってもよい。ある用途では、増幅オリゴヌクレオチドは、Kacian
et al., “Nucleic Acid Sequence Amplification Method, Composition and Kit,” 米国特許第5,554,516号、および Becker et al., 米国特許公開第US−2006−0046265−A1に開示されるように、センス鎖に対して相補的なプロモーター−プライマーのみから成る。なお、これらの内容を引用により本明細書に含める。プロモーター−プライマーは、通常、標的核酸分子またはプライマー伸長産物(単数または複数)中に存在するヌクレオチド配列に対して相補的ではないオリゴヌクレオチドを含む(例えば、Kacian et al., “Nucleic Acid Sequence Amplification Method,” 米国特許第5,399,491号を参照されたい、なお、この内容を引用により本明細書に含める)。これらの非相補的配列は、増幅オリゴヌクレオチドの相補的配列の5’側に配置されてもよく、かつ、核酸ポリメラーゼの活動によって2本鎖とされる場合、RNA合成の起点を提供してもよい。このように与えられるプロモーターは、標的核酸配列の多数のRNAコピーのインビトロ転写を可能とする。本明細書においてプライマーが参照される場合、そのような参照は、参照の文脈が明白に別様を指示しない限り、プロモーター−プライマーのプライマー局面をも含むことが理解されよう。
【0089】
ある増幅システムでは(例えば、Dattagupta et al., “Isothermal Strand Displacement Nucleic Acid Amplification,” 米国特許第RE39,007号を参照されたい、なお、この内容を引用により本明細書に含める)、増幅オリゴヌクレオチドは、鎖移動を支援する5’非相補的ヌクレオチドを含んでもよい。さらに、5’エキソヌクレアーゼ活性を有する核酸ポリメラーゼと組み合わせて使用する場合、増幅オリゴヌクレオチドは、酵素消化を阻止するために、その5’末端に修飾を有していてもよい。それとは別に、核酸ポリメラーゼは、は、5’エキソヌクレアーゼ活性を除くように、例えば、そのようなヌクレアーゼ活性を持たない活性ポリメラーゼ断片を生成するプロテアーゼによる処理によって、修飾されてもよい。このような場合、プライマーに対し、その5’末端において修飾する必要はない。
【0090】
1. オリゴヌクレオチドの調製
本発明の検出プローブ、捕捉プローブ、および増幅オリゴヌクレオチドは、従来技術で既知の方法によって簡単に調製することが可能である。オリゴヌクレオチドは、固相法を用いて合成するのが好ましい。例えば、Caruthersは、フォスフォジエステル結合によってヌクレオチドを接合するための、標準的フォスフォロアミダイト固相化学法の使用を記載する。Caruthers et al., “Chemical Synthesis of Deoxynucleotides by the Phosphoramidite Method,” Methods Enzymol., 154:287 (1987)を参照されたい。シアノエチルフォスフォロアミダイト前駆体を用いる、自動化固相化学的合成法が、Baroneによって記載される。Barone et al., “In Situ Activation of bis−dialkylaminephosphines - a New Method for Synt
hesizing Deoxyoligonucleotides on Polymer Supports,” Nucleic Acids Res., 12(10):4051 (1984)を参照されたい。同様に、Bhatt, “Method and Reagent for Sulfurization of Organophosphorous Compounds,” 米国特許第5,449,769号は、フォスフォロチオエート結合を含むオリゴヌクレオチドを合成するための手順を開示する。さらに、Riley et al., “Process for the Purification of Oligomers,” 米国特許第5,811,538号は、メチルフォスフォネート結合を含む、異なる結合を有するオリゴヌクレオチドの合成法を開示する。さらに、オリゴヌクレオチドの有機合成法は、当業者には既知であり、例えば、SAMBROOK ET AL., 上記、ch.10に記載される。前述の参考文献は、それぞれ、引用により本明細書に含める。
【0091】
ある特定のオリゴヌクレオチドの合成後、該オリゴヌクレオチドを精製し、その品質をコントロールするために、いくつかの異なる手順を利用してよい。適切な手順としては、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、または、高圧液体クロマトグラフィーが挙げられる。これらの手順はいずれも当業者には周知される。
【0092】
本発明のオリゴヌクレオチドは、検出プローブであれ、捕捉プローブ、または増幅オリゴヌクレオチドであれ全て、その性能を強化するため、または、増幅産物の特徴解明をやり易くするため、化学基によって修飾されてよい。
【0093】
例えば、バックボーン修飾オリゴヌクレオチド、例えば、フォスフォロチオエート、メチルフォスフォネート、2’−O−アルキルを持つもの、または、ある種のポリメラーゼの核酸分解活性に対して、またはヌクレアーゼ酵素に対して耐性を付与するペプチド基は、増幅またはその他の反応における上記酵素の使用を可能とすることが考えられる。修飾のもう一つの例として、プローブまたはプライマーの核酸鎖中のヌクレオチド間に組み込まれるが、プローブのハイブリダイゼーション、またはプライマーのハイブリダイゼーションおよび伸長を妨げない、非ヌクレオチドリンカーの使用が挙げられる。(Arnold et al., “Non−Nucleotide Linking Reagents for Nucleotide Probes,” 米国特許第6,031,091号を参照されたい、なお、この内容を引用により本明細書に含める)。本発明のオリゴヌクレオチドはさらに、所望の修飾および天然ヌクレオチドの混合物を含んでもよい。
【0094】
増幅オリゴヌクレオチド、特にプロモーター−プライマーの3’末端は、Kacian
et al., 米国特許第5,554,516号、およびBecker et al., 米国特許公開US−2006−0046265−A1に開示されるように、DNA合成の開始を阻止または抑制するように修飾またはブロックされてもよい。プライマーの3’末端は、従来技術で周知の種々の方法で修飾することが可能である。例示として述べると、プロモーター−プライマーい対する適切な修飾としては、下記の付加、すなわち、リボヌクレオチド、3’デオキシヌクレオチド残基(例えば、コルジセピン)、2’,3’−ジデオキシヌクレオチド残基、修飾ヌクレオチド、例えば、米国特許第6,031,091号においてArnold et al.によって開示されるもの、アルカン−ジオール修飾(Walker et al., “Backbone−Modified Oligonucleotides Containing a Butanediol−1,3 Moeity as a ‘Various Segment’ for the Deoxyribosyl Moiety-Synthesis and Enzy
me Studies,” Nucleic Acids Res. 18(8):2065 (1990)を参照されたい、なお、この内容を引用により本明細書に含める)、あるいは、修飾は、単に、標的核酸配列に対して非相補的なプライマー配列に対して3’側の領域から成っていてもよい。さらに、異なる3’ブロックプロモーター−プライマー、または3’ブロックおよび非ブロックプロモーター−プライマーの混合物が、本明細書に記載されるように、核酸増幅の効率を増すようになってもよい。
【0095】
上に開示されるように、プライマーの5’末端は、ある核酸ポリメラーゼ中に存在する5’−エキソヌクレアーゼ活性に対して耐性を持つように修飾されてもよい。このような修飾は、Arnold et al., 米国特許第6,031,091号に開示されるものと同様の技術を用いて、プライマーの5’末端ヌクレオチドに対して非ヌクレオチド基を付加することによって実行することが可能である。
【0096】
一旦合成されたならば、選ばれたオリゴヌクレオチドを、任意の周知の方法で標識してよい(例えば、SAMBROOK ET AL., 上記、ch. 10を参照)。有用なラベルとしては、放射性同位元素の外、非放射性リポーター基が挙げられる。同位元素ラベルとしては、H、35S、32P、125I、57Co、および14Cが挙げられる。同位元素ラベルは、従来技術で既知の技術、例えば、ニックトランスレーション、末端標識、第2鎖合成、逆転写の使用、および化学的方法によってオリゴヌクレオチドの中に導入することが可能である。放射性標識プローブを使用する場合、ハイブリダイゼーションは、オートラジオグラフィー、シンチレーションカウンティング、またはガンマカウンティングによって検出することが可能である。検出法の選択は、標識に使用される特定の放射性同位元素に依存する。
【0097】
非放射性物質も、標識のために使用することが可能であり、核酸配列の中に、または核酸配列の末端に導入してよい。修飾ヌクレオチドを、酵素的または化学的に組み込んでもよい。プローブの化学的修飾は、プローブの合成時、またはその後、例えば、Arnold et al., 米国特許第6,031,091号によって開示される、非ヌクレオチドリンカー基を用いて実行してもよい。非同位元素ラベルとしては、例えば、蛍光分子(個々のラベル、またはラベルの組み合わせ、例えば、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)ペアは、Tyagi et al., “Detectably Labeled Dual Conformation Oligonucleotide Probes,” 米国特許第5,925,517号によって開示される)、化学発光分子、酵素、補因子、酵素基質、ハプテン、または他のリガンドが挙げられる。
【0098】
本発明の検出プローブについては、プローブは、アクリジニウムエステルを持つ、非ヌクレオチドリンカーを用いて標識することが好ましい。アクリジニウムエステル標識付着は、Arnold et al., “Acridinium Ester Labeling and Purification of Nucleotide Probes,” 米国特許第5,185,439号に開示されるように実行してよい。なお、この内容を引用により本明細書に含める。
【0099】
2. TB複合体リボソーム核酸の増幅
本発明の増幅オリゴヌクレオチドは、TB複合体生物由来のリボソーム核酸の23S領域に向けられる。この増幅オリゴヌクレオチドは、核酸増幅アッセイにおいてTB複合体生物の存在を検出するために使用される検出プローブ(またはその成分)の標的配列の、少なくとも一つに対し、側接、重複、または、その中に含まれてもよい。前述したように、増幅オリゴヌクレオチドはさらに、その5’末端に、非相補的塩基であって、RNAポリメラーゼに結合し、標的配列を鋳型として用いてRNA転写を指令することが可能なプロモーター配列を含む非相補的塩基を含んでもよい。配列番号29のような、T7プロモーター配列を使用してもよい。
【0100】
本発明の増幅オリゴヌクレオチドは、増幅条件下において、TB複合体生物の23S rRNAまたはrDNA由来の標的核酸の標的領域を増幅することが可能である。一実施態様では、好ましくは長さが最大40塩基の標的結合領域を含む第1増幅オリゴヌクレオチドが提供される。このオリゴヌクレオチドは、増幅条件下に、標的核酸に含まれる標的配列、またはその相補体に対し安定にハイブリダイズする。第1増幅オリゴヌクレオチドの標的結合領域は、配列番号21、配列番号22、配列番号23、または配列番号24の塩基配列の、15個の連続塩基の内、少なくとも12個を含むか、それと重複するか、事実上それから成るか、実質的にそれと一致するか、それから成るか、または、その中に含まれ、かつそれを含む。
【0101】
別の実施態様では、好ましくは長さが最大40塩基の標的結合領域を含む第2増幅オリゴヌクレオチドが提供される。このオリゴヌクレオチドは、増幅条件下に、標的核酸に含まれる標的配列、またはその相補体に対し安定にハイブリダイズする。第2増幅オリゴヌクレオチドの標的結合領域は、配列番号25、配列番号26、配列番号27、または配列番号28の塩基配列の、15個の連続塩基の内、少なくとも12個を含むか、それと重複するか、事実上それから成るか、実質的にそれと一致するか、それから成るか、または、その中に含まれ、かつそれを含む。
【0102】
本発明の増幅オリゴヌクレオチドは、TB複合体由来核酸増幅用の、少なくとも二つの増幅オリゴヌクレオチドから成るセットとして提供されることが好ましい。増幅オリゴヌクレオチドの各セットは、少なくとも一つのアンチセンス増幅オリゴヌクレオチド、および少なくとも一つのセンス増幅オリゴヌクレオチドを有することが好ましい。増幅オリゴヌクレオチドの好ましいセットは、前述の第2増幅オリゴヌクレオチドの少なくとも一つと組み合わせた、前述の第1増幅オリゴヌクレオチドの少なくとも一つを含む。より好ましくは、増幅オリゴヌクレオチドのセットは、転写に基づく増幅過程において使用され、増幅オリゴヌクレオチドの少なくとも一つは、RNAポリメラーゼによって認識されるプロモーター配列を含む。
【0103】
本発明の増幅オリゴヌクレオチドは、修飾を、例えば、3’および/または5’末端のブロック(前述)、または、配列の付加、例えば、ただしこれらに限定されないが、RNAポリメラーゼによって認識される特異的ヌクレオチド配列(例えば、T7、T3、またはSP6 RNAポリメラーゼのためのプロモーター配列)、RNAポリメラーゼによるRNA転写の開始または伸長を強化する配列、または、分子間ペア形成を実現し、二次または三次核酸構造の形成を奨励する配列などを有してもよい。
【0104】
増幅オリゴヌクレオチドは、現在知られるか、または後に開発される、任意の好適な核酸増幅手法において使用される。既存の増幅手法としては、いずれの従来技術で周知の、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、転写介在増幅(TMA)、核酸配列使用増幅(NASBA)、自己持続性配列複製(3SR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、鎖転移増幅(SDA)、およびループ介在等温増幅(LAMP)が挙げられる。例えば、Mullis,
“Process for Amplifying Nucleic Acid Sequences,”米国特許第4,683,202号;Erlich et al., “Kits for Amplifying and Detecting Nucleic Acid Sequences,” 米国特許第6,197,563号;Walker et al., Nucleic Acids Res., 20:1691−1696 (1992); Fahy et al., “Self−sustained
Sequence Replication (3SR): An Isothermal Transcription−Based Amplification System Alternative to PCR,” PCR Methods and
Applications, 1:25−33(1991); Kacian et al., 米国特許第5,399,491号;Kacian et al., “Nucleic Acid Sequence Amplification Methods,” 米国特許第5,480,784号;Davey et al., “Nucleic Acid Amplification Process,” 米国特許第5,554,517号;Birkenmeyer et al., “Amplification of Target Nucleic Acids Using Gap Filling Ligase Chain Reaction,” 米国特許第5,427,930号;Marshall et al., “Amplification of RNA Sequences Using the Ligase Chain Reaction,” 米国特許第5,686,272号;Walker, “Strand Displacement Amplification,” 米国特許第5,712,124号;Notomi et al., “Process for Synthesizing Nucleic Acid,” 欧州特許出願第1 020 534 A1;Dattagupta et al., “Isothermal Strand Displacement Amplification,” 米国特許第6,214,587号;およびHELEN H. LEE ET AL., NUCLEIC ACID AMPLIFICATION TECHNOLOGIES: APPLICATION TO DISEASE DIAGNOSIS (1997)を参照されたい。(前記各増幅参考文献を、引用により本明細書に含める)。上記の「核酸増幅」の定義に合致する、任意の、他の増幅過程も、本発明人らによって考慮の対象とされる。
【0105】
本発明の増幅オリゴヌクレオチドは、好ましくは未標識であるが、検出プローブと組み合わせて、または該プローブを除いて標的核酸の検出をやり易くするために一つの以上のリポーター基を含んでもよい。増幅標的配列を検出するためには、広く各種の方法が利用可能である。例えば、ヌクレオチド基質または増幅オリゴヌクレオチドは、新たに合成されるDNAの中に組み込まれる検出可能なラベルを含むことが可能である。次に、この得られた標識増幅産物は、未使用の標識ヌクレオチド、または増幅オリゴヌクレオチドから分離されて、ラベルは、分離された産物分画において検出される。(例えば、Wu, “Detection of Amplified Nucleic Acid Using Secondary Capture Oligonucleotides and
Test Kit,” 米国特許第5,387,510号を参照されたい)。
【0106】
しかしながら、もしも増幅オリゴヌクレオチドが、例えば、相互作用を持つラベルペア、例えば、ドナー/アクセプター染料ペアを形成する二つの染料に連結するように修飾される場合、分離工程は必要とされない。この修飾増幅オリゴヌクレオチドは、増幅オリゴヌクレオチドが標的核酸にハイブリダイズせず、そのために二つの染料が物理的に隔てられたままでいる限り、染料ペアの一方のメンバーの蛍光は、染料ペアの他方メンバーによって消光されたままとなるように設計することが可能である。さらに、増幅オリゴヌクレオチドは、この二つの染料の間に制限エンドヌクレアーゼの認識部位を配置させて含むように修飾することが可能であり、そのため、この修飾増幅オリゴヌクレオチドと標的核酸の間にハイブリッドが形成されると、制限エンドヌクレアーゼ認識部位が2本鎖となり、適切な制限エンドヌクレアーゼによる切断またはニック形成のため利用可能となる。次に、ハイブリッドの切断またはニック形成は、二つの染料を引き離すので、消光低減のために蛍光に変化がもたらされ、これは、試験サンプルにおける標的生物の存在を示すものとして検出することが可能である。「信号プライマー」と呼ばれる、この種の修飾増幅オリゴヌクレオチドは、Nadeau et al., “Detection of Nucleic Acids by Fluorescence Quenching,” 米国特許第6,054,279号によって開示される。なお、この内容を引用により本明細書に含める。
【0107】
有用な検出可能ラベルとして使用が可能な物質は従来技術で周知であるが、例えば、放射性同位元素、蛍光分子、化学発光分子、発色団の外、リガンド、例えば、ビオチンおよびハプテンが挙げられる。後者の場合、直接的には検出可能ではないが、その特異的結合パートナー、例えば、それぞれ、アビジンおよび抗体の標識形と反応することによって簡単に検出することが可能である。
【0108】
もう一つの方法は、検出可能に標識されるオリゴヌクレオチドプローブとハイブリダイズし、任意の従来法によって、得られるハイブリッドを測定することによって増幅産物を検出することである。特に、化学発光性アクリジニウムエステル標識オリゴヌクレオチドプローブを、標的配列にハイブリダイズさせ、ハイブリダイズしないプローブ上に存在するアクリジニウムエステルを選択的に加水分解し、残留アクリジニウムエステルから発せられる化学発光を発光計において測定することによって、産物を定量することが可能である。(例えば、Arnold et al., 米国特許第5,283,174号、およびNORMAN C. NELSON ET AL., NONISOTOPIC PROBING, BLOTTING, AND SEQUENCING, ch. 17 (Larry J. Kricka ed., 2d ed. 1995)を参照されたい)。
【0109】
D. サンプル処理
標的配列の増幅または検出前のサンプル処理は、標的配列を、サンプル中に存在する非標的核酸から区別するために必要であるか、または有用である。呼吸器サンプル(例えば、痰、気管支・肺胞洗液、および胸水サンプル)は、先ず、既知の手順、例えば、NALC−NaOHまたはNaOH消化にしたがって処理される。例えば、GABY E. PFYFFER ET AL., MANUAL OF CLINICAL MICROBIOLOGY, ch. 36 (Patrick R. Murray et al.
eds., 8th ed. 2003)を参照されたい。なお、この内容を、引用により本明細書に含める。Mycobacterium tuberculosisは、他の供給源、例えば、肺組織、リンパ節、血液、および脳脊髄液において見出すことが可能である。
【0110】
サンプル処理手順は、例えば、不均一アッセイにおいて、液相からの、核酸および/またはオリゴヌクレオチドの直接的または間接的固定を含んでもよい。いくつかの手順では、この固定は、複数のハイブリダイゼーション事象を必要とする場合がある。Ranki
et al., “Detection of Microbial Nucleic
Acids by a One−Step Sandwich Hybridization Test,” 米国特許第4,486,539および4,563,419号は、例えば、一工程核酸「サンドイッチ」ハイブリダイゼーション法を開示する。この方法は、標的相補鎖を有する固相結合核酸、および、標的核酸の、ある一定領域に対して相補的な、標識核酸プローブの使用を含む。Stabinsky, “Methods and
Kits for Performing Nucleic Acid Hybridization Assays,” 米国特許第4,751,177号は、「介在因子」ポリヌクレオチドを含む方法を開示する。報告によれば、この方法によって、固定プローブの固相支持体からの漏出のために生じる、Rankiの方法につきものの感度問題が克服されるという。標的核酸を直接固定する代わりに、Stabinsky法では、介在因子ポリヌクレオチドが、溶液において遊離状態で形成される標的ポリヌクレオチド:プローブポリヌクレオチド複合体に結合し、間接的に固定するために用いられる。
【0111】
サンプル処理のためには、既知の任意の固相支持体、例えば、基質、および溶液中の遊離粒子などを使用してよい。固相支持体は、例えば、ニトロセルロース、ナイロン、ガラス、ポリアクリレート、混合ポリマー、ポリスチレン、シランポリプロピレンであってもよいが、好ましくは、サンプルの回収、および/または、未結合核酸またはその他のサンプル成分の除去をやり易くするために、磁性粒子である。特に好ましい支持体は、単分散性であり(すなわち、サイズが±5%で均一)、一貫した結果を与える磁気球である。これは、自動化過程において使用するのに特に有利である。例えば、Ammann et al., “Automated Process for Isolating and Amplifying a Target Nucleic Acid Sequence,” 米国特許第6,335,166号を参照されたい。なお、この内容を引用により本明細書に含める。
【0112】
固相支持体の上に標的核酸を固定するためのオリゴヌクレオチドは、アッセイ条件下において安定である限り、いずれの結合または相互作用によって固相支持体に直接または間接に接合されてもよい。本明細書では「固定用プローブ」と呼ばれる、このオリゴヌクレオチドは、直接標的核酸に結合してもよく、あるいは、塩基配列領域、例えば、ホモポリマー列(例えば、ポリdT)、または、捕捉プローブ上に存在する相補的塩基配列領域にハイブリダイズする、単純な、短い、反復配列(例えば、AT反復)を含んでもよい。固定用プローブが、中間基の不在下に固相支持体に接合される場合、直接的接合が起こる。例えば、直接接合は、共有結合、配位結合、またはイオン性相互作用を介して行われてもよい。間接的接合は、固定用プローブが、一つ以上のリンカーを介して固相支持体に接合される場合に起こる。「リンカー」は、少なくとも二つの異なる分子を結合して安定な複合体にするための手段であり、結合パートナー組から成る一つ以上の成分を含む。
【0113】
結合パートナー組のメンバーは、互いを認識し、結合することが可能である。結合パートナー組は、例えば、受容体とリガンド、酵素と基質、酵素と補因子、酵素と助酵素、抗体と抗原、糖とレクチン、ビオチンとストレプトアビジン、リガンドとキレート剤、ニッケルとヒスチジン、実質的に相補的なオリゴヌクレオチド同士、および相補的なホモポリマー核酸、またはポリマー核酸のホモポリマー部分であってもよい。結合パートナー組の成分は、結合に参加するメンバーの領域である。
【0114】
使用が簡単で速やかであるという点で実際的に有利な、好ましいサンプル処理システムは、本明細書では「固定用プローブ結合領域」と呼ばれる、捕捉プローブの塩基配列に対して相補的な塩基配列を含む固定用プローブを含む。この捕捉プローブはさらに、アッセイ条件下において標的核酸に含まれる標的配列に特異的にハイブリダイズする、本明細書では「標的結合領域」と呼ばれる塩基配列を含む。(標的核酸のある領域に対する、捕捉プローブの標的結合領域の特異性は、分離工程後、サンプル中に残留する、非標的核酸の数を最小化する点で望ましいが、特異性は、捕捉プローブが標的核酸を単離するためにのみ使用されるものであるならば、本発明の捕捉プローブの要件ではない)。もしも、捕捉プローブが、その後の標的配列増幅のために標的核酸を単離するために使用されるのでないならば、捕捉プローブはさらに、標的結合領域の中、またはその近傍に付着させて、検出可能なラベル、例えば、置換または未置換のアクリジニウムエステルを含んでもよい。この標識捕捉プローブは、捕捉プローブなどの1本鎖核酸を検出することなく、ハイブリッド核酸を特異的に検出するための、均一または半均一アッセイにおいて使用されてもよい。このシステムによって使用が可能な、好ましい均一アッセイは、ハイブリダイゼーション保護アッセイ(HPA)であり、これにはついては、上で、「ハイブリダイゼーション条件およびプローブ設計」という表題のセクションにおいて論じている。このHPA方式によれば、標的核酸にハイブリダイズしなかった、捕捉プローブ連結ラベルは、弱塩基の添加によって加水分解されるが、一方、捕捉プローブ:標的ハイブリッドに連結するラベルは、加水分解から保護されると考えられる。
【0115】
この後者のアッセイの利点は、標的検出のために、本明細書に記載される、他のサンプル処理手順では必要とされる、複数の事象(例えば、捕捉プローブ:標的、およびプローブ:標的、またはプローブ:アンプリコン)の代わりに、単一の標的特異的ハイブリダイゼーション事象(捕捉プローブ:標的)のみが必要とされることである。さらに、アッセイにおけるオリゴヌクレオチドの数が少ないので、アッセイがより速やかに、最適化することがより容易になる傾向がある。なぜなら、標的核酸が捕捉され、検出される全体的速度は、ハイブリダイズするのがもっとも遅いオリゴヌクレオチドによって制限されるからである。捕捉プローブの標的結合領域は、別アッセイシステムにおいて、より低い特異性を持つが、それでも依然として、捕捉プローブが、非標的核酸によって著明に飽和されることを回避するのに十分なほど稀である。したがって、二つの別々の、特異的標的配列が、これらの別システムにおいて特定されるという要件は、適切な標的の特定に制限を課すことが考えられる。一方、捕捉プローブが、同時に検出プローブとしても機能する場合は、ただ一つのこのような標的配列が必要とされるだけである。
【0116】
どちらの方法を採用するにしろ、アッセイは、試験サンプルにおける標的核酸の存在を検出するための手段を含む必要がある。標的核酸を検出するためには種々の方法が、当業者には周知であり、例えば、検出可能ラベルの存在を要しない手段もある。にも拘わらず、検出可能ラベルを含むプローブが好ましい。標的核酸の存在検出するための標識プローブは、標的核酸中に含まれる標的配列に対し、実質的に相補的で、特異的にハイブリダイズする塩基配列を含まなければならないと考えられる。一旦プローブが標的核酸に安定に結合し、その結果、標的:プローブハイブリッドが直接・間接に固定されたならば、未結合プローブを洗い流すか、または不活性化すると、残った結合プローブを検出および/または測定することが可能となる。好ましいサンプル処理システムは、検出および核酸増幅要素を結合させる。これらのシステムは先ず、捕捉プローブを用いて標的核酸を直接・間接に固定し、特に、細胞破片、非標的核酸、および増幅抑制因子を、サンプル含有容器から除去することによって、捕捉された標的核酸を精製し、次いで標的核酸中に含まれる標的配列を増幅する。次に、増幅産物を、好ましくは溶液において標識プローブによって検出する。(標的核酸は、増幅時、固定状態にあってもよく、あるいは、適切な条件を用いて、例えば、先ず、捕捉プローブ:標的複合体のTm、および/または、捕捉プローブ:固定用プローブ複合体のT上回る温度でインキュベートすることによって、増幅前に固相支持体から溶出させてもよい)。このシステムの好ましい実施態様は、Weisburg et al., “Two−Step Hybridization and Capture of a Polynucleotide,” 米国特許第6,110,678号に開示される。なお、この内容を引用により本明細書に含める。このシステムでは、捕捉プローブは、標的核酸にハイブリダイズし、固定プローブは、異なるハイブリダイゼーション条件下において捕捉プローブ:標的複合体にハイブリダイズする。第1組のハイブリダイゼーション条件下では、捕捉プローブの標的核酸に対するハイブリダイゼーションが、捕捉プローブの固定用プローブに対するハイブリダイゼーションよりも優先される。したがって、この第1組の条件下では、捕捉プローブは、固相支持体に結合せずむしろ溶液中に存在する。このため、遊離捕捉プローブの濃度は最大とされ、標的核酸へのハイブリダイゼーションに対する有利な液相反応動態が利用される。捕捉プローブが、標的核酸にハイブリダイズするのに十分な時間が経過した後、第2組のハイブリダイゼーション条件が与えられ、これにより、捕捉プローブ:標的複合体の固定用プローブに対するハイブリダイゼーションが可能とされ、標的核酸が溶液において単離される。次に、固定標的核酸は精製され、標的核酸中に存在する標的配列は増幅され、検出される。未精製サンプル(例えば、臨床サンプル)を取り扱う場合、サンプル中に存在する物質による酵素抑制および/または核酸分解を防止するため、一般に、一つ以上の洗浄工程を含む精製手順が望ましい。
【0117】
好ましい増幅法は、Kacian et al., “Nucleic Acid Sequence Amplification Methods,” 米国特許第5,480,789号に開示される転写介在増幅法である。なお、この文献の内容を引用により本明細書に含める。この方法によれば、標的の一部に対して相補的な3’領域、および5’プロモーター領域、および、標的の一部と同じヌクレオチド配列を有する、プロモーター−プライマーを、標的RNA分子に接触させる。このプライマーおよびプロモーター−プライマーは、標的分子の上に存在するセンス鎖、およびその相補体の両方、したがって、アンプリコンの長さおよび配列を含む、増幅される標的領域の境界を定める。この好ましい実施態様では、増幅オリゴヌクレオチドおよび固定標的RNAは、有効量の、Moloneyマウス白血病ウィルス由来逆転写酵素およびT7 RNAポリメラーゼ、リボヌクレオチドおよびデオキシリボヌクレオチド三リン酸塩、および必要な塩および補因子の存在下に、42℃で接触させられる。この条件下において、核酸増幅は起こり、主に、標的核酸の方向とは反対の方向を持つRNAアンプリコンの生成をもたらす。次に、このアンプリコンは、例えば、Arnold et al., 米国特許第5,283,174号に開示されるように、HPAに基づき、標的核酸と同じ方向性の、アクリジニウムエステル標識ハイブリダイゼーションアッセイプローブを用いて、溶液中で検出することが可能である。
【0118】
固定用プローブおよび捕捉プローブの3’末端は、それらが、核酸ポリメラーゼ活性のための鋳型として使用されることを阻止または抑制するために、「キャップされる」か、またはブロックされることが好ましい。キャップ形成は、3’末端に対する、3’デオキシリボヌクレオチド(例えば、コルジセピン)、3’,2’−ジデオキシヌクレオチド残基、非ヌクレオチドリンカー、例えば、Arnold et al. 米国特許第6,031,091号に開示されるもの、アルカン−ジオール修飾、または非相補的ヌクレオチド残基の付加を含んでもよい。
【0119】
当業者であれば、上述の方法論は、前述のように、または明白な修飾と共に、他の、種々の増幅スキーム、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、Qβレプリカーゼ介在増幅、自己持続配列複製(3SR)、鎖転移増幅(SDA)、核酸配列使用増幅(NASBA)、ループ介在等温増幅(LAMP)、およびリガーゼ連鎖反応(LCR)などのスキームに対応が可能であることを認めるであろう。
【0120】
E. TB複合体生物のリボソーム核酸を単離するための捕捉プローブ
本発明の捕捉プローブは、TB複合体生物の23S rRNAまたはrDNA由来の核酸に結合し、単離するように設計される。したがって、捕捉プローブは、標的結合領域、および固定用プローブ結合領域の両方を含むことが好ましい。捕捉プローブの標的結合領域は、アッセイ条件下において、TB複合体由来核酸に含まれる標的配列に対してハイブリダイズする塩基配列を含む。必須ではないが、標的結合領域は、アッセイ条件下において、非標的核酸の存在下に標的配列に対する特異性を示すことが好ましい。固定用プローブ結合領域は、試験サンプル中に存在する固相支持体に直接・間接に接合するポリヌクレオチド、またはポリヌクレオチド配列を含むキメラを含む固定用プローブにハイブリダイズする塩基配列を有する。この標的結合領域および固定用プローブ結合領域は、互いに、直接に、または、例えば、ヌクレオチド塩基配列、非塩基配列、または非ヌクレオチドリンカーを介して接合されてもよい。
【0121】
好ましい実施態様では、本発明による捕捉プローブは、長さが最大100塩基であり、アッセイ条件下でTB複合体由来核酸に対して安定に結合する標的結合し、かつ、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、および配列番号20の塩基配列から成る群から選ばれる塩基配列の、15個の連続塩基の内、少なくとも12個を含むか、それと重複するか、事実上それから成るか、実質的にそれと一致するか、それから成るか、または、その中に含まれ、かつそれを含む、標的結合領域を含む。これらの好ましい捕捉プローブの固定用プローブ結合領域は、試験サンプルに提供される固相支持体に直接・間接に接合される固定用プローブに、アッセイ条件下にハイブリダイズする塩基配列を含む。好ましくは、固定用プローブ結合領域は、固定用プローブの5’末端に配置されるホモポリマー領域(例えば、ポリdT)に対して相補的な、捕捉プローブの3’末端に配置されるホモポリマー領域(例えば、ポリdA)を含む。固定用プローブ結合領域は、配列番号30:tttaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaの塩基配列から成ることが好ましい。(尾部は、標的結合部分と、オリゴ(dA)30配列の間に配置させた5’−ttt−3’スペーサ配列を含む、これは、固定用プローブ結合領域に対する結合に関して、捕捉プローブにより屈曲性を与えるためである)。固定用プローブ結合領域には、他の塩基配列、例えば、短い反復配列などを組み込んでもよい。
【0122】
不要な、交差ハイブリダイゼーション反応を防止するため、本発明の捕捉プローブは、標的結合領域のヌクレオチド塩基配列以外のもので、試験サンプル中に存在する可能性のある任意の生物由来の核酸に対し、アッセイ条件下で安定に結合する可能性のある、他のヌクレオチド塩基配列を排除することが好ましい。この方法に一致して、かつ、形成される捕捉プローブ:標的複合体の固定を最大にするために、固定用プローブ結合領域のヌクレオチド塩基配列は、該配列が、アッセイ条件下において、固定用プローブに存在するヌクレオチド塩基配列に対しては安定に結合するが、試験サンプル中に存在する可能性のある任意の生物由来の核酸に対しては結合しないように設計されることが好ましい。
【0123】
捕捉プローブの、標的結合領域および固定用プローブ結合領域は、捕捉プローブ:標的複合体が、捕捉プローブ:固定プローブ複合体のTよりも高いTを持つように選ばれてもよい。このようにして、捕捉プローブの、固定用プローブに対するよりも、標的プローブに対するハイリダイゼーションの方を優先する第1組の条件が課せられ、これによって、捕捉プローブの標的配列に対するハイブリダイーゼションにとって至適な液相ハイブリダイゼーション動態が実現される。捕捉プローブが、標的配列に結合するために十分な時間が経過したならば、第2組の、よりストリンジェント度の低い条件が課せられてもよい。これは、捕捉プローブの、固定用プローブへのハイブリダイゼーションを可能とする。
【0124】
本発明の捕捉プローブはさらに、試験サンプルにおける標的配列の直接的検出のために、ラベル、または一対の相互作用ラベルを含んでもよい。ラベル、ラベルの組み合わせ、および、プローブを標識するための手段の、非限定的例は、上の、「オリゴヌクレオチドの調製」という表題のセクション、および、下記の、「TB複合体生物のリボソーム核酸に対する検出プローブ」という表題のセクションに記載される。標的核酸にハイブリダイズした捕捉プローブの存在を検出するために特に有用な方法は、「ハイブリダイゼーション条件およびプローブ設計」という表題のセクションにおいて上述した、ハイブリダイゼーション保護アッセイ(HPA)である。HPAは、標的核酸にハイブリダイズしたプローブと、ハイブリダイズしないまま残留するプローブとを区別する均一アッセイである。HPA反応容器から検出される信号は、試験サンプルにおける標的生物の存在または量に関する表示を与える。
【0125】
直接検出アッセイにおいて応用されるにも拘わらず、捕捉プローブのもっとも一般的使用は、標的核酸に含まれる標的配列の増幅前の、標的核酸の単離および精製においてである。増幅前に、標的核酸を単離、精製することによって、不要な増幅反応(すなわち、非標的核酸の増幅)の数を厳しく制限することが可能である。そして、捕捉プローブ自身が、増幅試薬の存在下および増幅条件下において、核酸ポリメラーゼに対する鋳型として機能することがないよう防止または抑制するために、増幅プローブの3’末端をキャップまたはブロックしてもよい。キャップ剤の例としては、3’末端における、3’デオキシリボヌクレオチド、3’,2’−ジデオキシヌクレオチド残基、非ヌクレオチドリンカー、アルカン−ジオール修飾、および非相補的ヌクレオチド残基が挙げられる。
【0126】
好ましい実施態様では、TB複合体生物を含むことが疑われるサンプルは、崩壊組成物を含む界面活性剤に、TB複合体生物を殺し、該生物から標的核酸を放出させるのに十分な温度および期間において曝露される。(この方法は、崩壊が困難な他の生物、例えば、他のグラム陽性桿菌、真菌などの生物についても使用が可能であると考えられる)。TB複合体生物は、汚染噴霧によって伝染されるきわめて感染性の高い因子であるから、サンプル処理の際にTB複合体生物を殺すことは重要である。TB複合体生物を殺すためには、崩壊組成物に曝露させたサンプルを、約60℃の温度で少なくとも約1時間から、約95℃の温度で少なくとも約15分、好ましくは約20分、より好ましくは少なくとも約30分加熱する。熟練した分子生物学者であれば、本明細書に示される案内に基づいて、TB複合体および他の生物の殺傷および溶菌を実行するため、すぐに温度および時間パラメータを調整することが可能であろう。
【0127】
界面活性剤は、マイコバクテリアを溶菌するのに十分な量として提供されるが、好ましくは約0.1から約5%(v/v)、より好ましくは約0.1から約3%(v/v)、さらに好ましくは約0.1から約1.5%(v/v)、およびもっとも好ましくは約0.1から約0.3%(v/v)の、最終反応濃度における陽イオン性界面活性剤である。溶菌は、低い全体イオン強度においてもっとも効果的であることが見出されているので、崩壊性組成物の他の一価の分子と組み合わされる場合は、界面活性剤によって寄与される一価分子を最小に維持することが望ましい。さらに、界面活性剤は、表示の濃度において放出されるヌクレアーゼをもっとも効果的に不活性化する。適切な陽イオン性界面活性剤の例としては、ラウリル硫酸リチウム(LLS)、およびドデシル硫酸ナトリウム(SDS)が挙げられる。ただし、高濃度ではSDSよりも可溶性が高いのでLLSの方が好ましい。
【0128】
界面活性剤の外に、溶菌組成物はさらに、捕捉プローブおよび増幅オリゴヌクレオチドを含む。これらはいずれも、標的核酸と、捕捉プローブおよび増幅オリゴヌクレオチドとの間に形成されるハイブリッドの融解温度よりも低い温度を含む、第2組条件下で放出された標的核酸と複合体を形成する。崩壊性組成物およびサンプルを含む混合物の塩濃度は、好ましくは約0.6Mから約0.9Mの範囲、すなわち、TB複合体生物の殺傷および溶菌を実質的に妨げずに、捕捉プローブおよび増幅オリゴヌクレオチドの、標的核酸に対するハイブリダイゼーションを促進することが見出されている範囲である。増幅オリゴヌクレオチドは、第2組の条件下において、核酸ポリメラーゼの存在下に、標的核酸に結合し、酵素的に伸長されることが可能である限り、いずれのプライマーであってもよく、例えば、転写に基づく増幅反応において有用なプロモーター−プライマーが挙げられる。好ましい実施態様では、崩壊性組成物はさらに、いずれも、第2組の条件下で捕捉プローブと複合体を形成する、内部コントロール、および連結増幅オリゴヌクレオチドを含む。
【0129】
捕捉プローブ、標的核酸、および増幅オリゴヌクレオチドを含む複合体の形成の後、該複合体は、固相支持体の上に固定され、反応容器中で単離され、一方、サンプル中に存在する増幅抑制因子は、複合体から除去される。この方法で使用することが可能な、捕捉プローブおよび固相支持体の例としては、上に記載したものが挙げられるが、磁性粒子またはビーズによって構成される固相支持体が好ましい。なぜなら、これらは、標的核酸を精製するために必要な時間および操作工程を制限するからである。磁気性粒子は、標準的洗浄過程の際、反応容器に隣接して、またはその中に戦略的に配置される磁石によって、遠心無しに、局在化させることが可能である。多くの洗浄バッファー中に存在する界面活性剤は、増幅抑制因子を構成するので、洗浄工程の後で、抑制性界面活性剤を全く含まないか、低濃度でしか含まないバッファーを用いて1回以上濯ぐことが好ましい。洗浄過程後、標的核酸は、標的核酸中に含まれる標的配列の増幅を可能とする試薬および条件に曝露してもよい。このような試薬としては、その例が本明細書に記載される、特定の増幅反応を実行するために必要な、ポリメラーゼ、ヌクレオシド三リン酸塩、および、補因子が挙げられる。増幅の条件は、殺傷および溶菌工程後に捕捉プローブ:標的核酸:増幅複合体を形成するのに必要な温度よりも低い温度を含んでもよい。
【0130】
TB複合体生物由来の標的核酸を獲得し、増幅するための前述の方法は、種々のサンプルタイプ、例えば、呼吸器サンプル(例えば、痰)、脳脊髄液、胃吸引物、および胸水などに使用するのに好適である。痰サンプルが使用される場合、粘液溶解剤としてN−アセチル−L−システイン、サンプル中に存在する非マイコバクテリア生物を崩壊させるための脱汚染剤として水酸化ナトリウム、および、アセチルシステインの不活性化を防止するためのクエン酸ナトリウムを用い、消化−脱汚染過程後、沈殿として調製することが好ましい。PATRICIA T. KENT ET AL., PUBLIC HEALTH MYCOBACTERIOLOGY A GUIDE FOR THE LEVEL
III LABORATORY, pp. 36−39 (U.S. Department of Health and Human Services 1985)を参照されたい。なお、この内容を引用により本明細書に含める。都合のよいことに、本法は、これらの病原性生物(例えば、Mycobacterium tuberculosis)の殺傷と崩壊の同時的実行を可能とする。さらに、この方法では、生物を崩壊するのに、機械的手段、例えば、渦巻き攪拌、超音波振動、フレンチプレス、およびガラスビーズ磨砕は必要とされない。機械的崩壊手段は、核酸輸送汚染または生存生物の形で、汚染性飛沫を拡散させる危険性を増大させるので忌避される。さらに、増幅を開始するのに必要とされる増幅オリゴヌクレオチドも崩壊組成物中に存在するので、反応時間は、増幅オリゴヌクレオチドが別に加えられる場合よりもはるかに速くなる。
【0131】
F. TB複合体生物のリボソーム核酸に対する検出プローブ
本発明のこの実施態様は、新規検出プローブに関する。ハイブリダイゼーションとは、相補的核酸から成る、2本の単一鎖が会合して、水素結合される2本鎖を形成することである。検出することを求める核酸配列(「標的配列」)に対してハイブリダイズすることが可能な核酸配列は、その標的配列のためのプローブとして使用することが可能である。ハイブリダイゼーションは、相補的核酸鎖、例えば、DNA/DNA、DNA/RNA、およびRNA/RNAの外、単一鎖核酸同士であって、その間に形成されたハイブリッドの内の一方、または両方が、少なくとも一つの修飾ヌクレオチド、ヌクレオシド、核酸塩基、および/または、塩基対塩基結合を含む、単一鎖核酸同士の間に起こってよい。いずれにしろ、十分な相補性を有する2本の単一鎖はハイブリダイズして、2本の鎖が、相補性塩基ペアの間の水素結合によって一緒に保持される2本鎖構造を形成する。前述したように、一般に、Aは、TまたはUに対して水素結合され、一方、Gは、Cに対して水素結合される。したがって、ハイブリダイズした鎖にそう任意の点において、古典的塩基対ATまたはAU、TAまたはUA、GCまたはCGが見出される。したがって、第1単一核酸鎖が、第2鎖に対して十分に相補的な連接塩基を含み、かつ、この二つの鎖が、そのハイブリダイゼーションを促進する条件下において互いに近づけられると、2本鎖核酸が出現する。したがって、適切な条件下では、2本鎖核酸ハイブリッドが形成される。
【0132】
ハイブリダイゼーションの速度および程度は、いくつかの要因の影響を受ける。例えば、2本鎖の一方が、ハイブリッドに全体的に、または部分的に関わっている場合、その鎖は、新規ハイブリッドの形成に参加することができにくくなることが暗に想定される。プローブを、対象配列の相当部分が単一鎖となるように設計することによって、ハイブリダイゼーションの速度および程度は大いに強調される。さらに、もしも標的が、ゲノムに組み込まれた配列である場合、それは、当然のことながら、PCR産物の場合と同様、2本鎖形として存在する。これらの2本鎖標的は、当然ながら、単一鎖プローブによるハイブリダイゼーションに対しては抑制的であり、ハイブリダイゼーション工程前に、変性(少なくとも、プローブによって標的とされる領域は)を必要とする。さらに、十分な自己相補性が存在する場合、分子内ハイブリッドおよび分子間ハイブリッドが形成される可能性がある。ハイブリダイゼーションに対し抑制的な、強力な内部構造を形成することが知られる、または予想される核酸の領域は、比較的好ましくない。そのような構造の例としては、ヘアピンループが挙げられる。同様に、広範な自己相補性を有するプローブも避けるべきである。これらの望ましくない構造は全て、注意深いプローブ設計によって避けることが可能であり、これらのタイプの相互作用を探索するために、市販のコンピュータプログラム、例えば、Oligo Tech分析ソフトウェアが利用可能である。
【0133】
しかしながら、ある用途では、少なくともある程度の自己相補性を示すプローブは、検出前に先ずハイブリダイズしないプローブの除去を要することがないので、試験サンプルにおけるプローブ:標的2本鎖の検出をやり易くする点で望ましい。「分子トーチ」は、Becker et al., “Molecular Torches,” 米国特許第6,361,945号によって開示される、一種の自己相補性プローブである。なお、この内容を引用により本明細書に含める。分子トーチは、「標的結合ドメイン」および「標的閉鎖ドメイン」と呼ばれる、異なる、自己相補性領域を有する。これらの領域は、接合領域によって接続され、指定のハイブリダイゼーションアッセイ条件下において互いにハイブリダイズする。変性条件に曝露されると、分子トーチの相補性領域(完全に、または部分的に相補性であってよい)は融解し、このため、標的結合ドメインは、指定のハイブリダイゼーションアッセイ条件が回復された場合、標的配列に対するハイブリダイゼーションために利用可能となる。そして鎖転移条件に曝露されると、標的配列の一部は、標的結合ドメインに結合し、その標的結合ドメインから、標的閉鎖ドメインを移動させる。分子トーチは、標的結合ドメインの方が、標的閉鎖ドメインよりも、標的配列に対しより優れてハイブリダイズするように設計されている。分子トーチの標的結合ドメインおよび標的閉鎖ドメインは、相互作用性ラベル(例えば、発光子/消光子)を含み、この二つのラベルは、分子トーチが標的核酸にハイブリダイズした場合と違って、分子トーチが自己ハイブリダイズした場合は、異なる信号が発せられるように配置され、そのため、それに連結する生存ラベルまたは複数ラベルを有するハイブリダイズしないプローブの存在下においても、試験サンプルにおけるプローブ:標的2本鎖を検出することが可能となる。
【0134】
自己相補性を有する検出プローブのもう一つの例は、Tyagi et al. 米国特許第5,925,517号によって開示される分子ビーコンである。分子ビーコンは、標的相補性配列、標的核酸の不在下ではプローブを閉鎖的立体配座に保持するアフィニティーペア(または核酸アーム)、および、プローブが閉鎖立体配座にある時は、相互作用を持つラベルペアを含む。標的核酸と、標的相補性配列とのハイブリダイゼーションは、アフィニティーペアのメンバーを引き離し、それによって、プローブを開放立体配座に転位する。この開放立体配座への転位は、ラベルペアの相互作用の低下のために検出可能である。ラベルペアは、例えば、蛍光発色団および消光子、例えば、DABCYLおよびEDANSであってもよい。
【0135】
プローブがその標的にハイブリダイズする速度は、プローブ領域における標的二次構造の熱安定性の一尺度である。ハリブリダイゼーション速度の標準的測定値は、C1/2であり、これは、リットル当たりのヌクレオチドの分子数・掛ける・秒として測定される。したがって、これは、プローブの濃度・掛ける・その濃度で最大ハイブリダイゼーションの50%が起こる時間である。この値は、種々の量のプローブを、一定量の標的に対し、一定時間ハイブリダイズさせることによって決定される。C1/2は、標準手法によってグラフ的に見出される。プローブ:標的ハイブリッド融解温度は、当業者には周知の同位元素法によって定量してもよい。任意のハイブリッドの融解温度(T)は、使用されるハイブリダイゼーション液に応じて変動する。
【0136】
好ましいプローブは、標的核酸、またはその相補体に対し、塩濃度が約0.6−0.9Mの範囲内にある時の約60℃の温度に相当するストリンジェントハイブリダイゼーション条件下において、それとハイブリダイズすることが可能なほど十分な相補性を持つ。好ましい塩は、塩化リチウムを含むが、他の塩、例えば、塩化ナトリウムおよびクエン酸ナトリウムも、ハイブリダイゼーション液に使用することが可能である。高ストリンジェント度ハイブリダイゼーション条件の例として、交互に挙げると、0.48Mリン酸ナトリウムバッファー、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム、および1 mMのそれぞれEDTAとEGTA、約60℃の温度、または、0.6M LiCl、1%ラルリル硫酸チリウム(LLS)、60 mMクエン酸リチウム、および10 mMのそれぞれEDTAとEGTA、約60℃の温度である。
【0137】
したがって、第1局面では、本発明は、ストリンジェントハイブリダイゼーション条件下において、TB複合体由来核酸に対して優先的にハイブリダイズする検出プローブのお陰で、TB複合体由来核酸を、非TB由来複合体由来核酸(例えば、M. celatum)から区別することが可能な検出プローブをその特徴とする。具体的には、検出プローブは、TB複合体由来核酸中に存在する標的配列に対して実質的に相補的な塩基配列を有する、任意に修飾されるオリゴヌクレオチドを含む。
【0138】
ハイブリダイゼーションアッセイの場合、標的核酸配列の長さ、したがって、プローブ配列の長さが重要なことがあり得る。ある場合、ある特定領域から、所望のハイブリダイゼーション特徴を有するプローブを生成する、位置および長さが異なるいくつかの配列が得られることがある。別の場合では、一方の配列の方が、単に一塩基だけ異なる他方よりも優れたハイブリダイゼーション特徴を有することがある。完全に相補的ではない核酸でもハイブリダイズすることは可能であるが、完全に相同な塩基配列の最長鎖が、通常、主にハイブリッド安定性を決める。異なる長さおよび塩基配列のプローブを使用してもよいが、本発明において好まれるプローブは、長さが最大100塩基、より好ましくは12から35塩基、もっとも好ましくは長さが15から25塩基である。
【0139】
検出プローブは、TB複合体生物のいずれかの23S rRNAまたは rDNA中に存在する標的配列に対し実質的に相補的な塩基配列を含む。したがって、この検出プローブは、ストリンジェントハイブリダイゼーション条件下においてTB複合体生物のいずれかから得られる標的配列に対し安定にハイブリダイズすることが可能である。検出プローブはさらに、標的照準核酸領域の外側に、TB複合体由来核酸に対し相補的であっても、なくともよいが、試験サンプル中に存在する可能性のある、非標的生物由来の核酸に対しては相補的ではない、別の塩基を有していてもよい。
【0140】
本発明のプローブは、固相支持体に接合される固定オリゴヌクレオチド中に存在する実質的に相補的な塩基配列に対して、指定のハイブリダイゼーション条件下においてハイブリダイズすることが可能な塩基配列(標的配列にハイブリダイズすることが意図される塩基配列とは異なる)から構成される捕捉尾部を含む。この固定オリゴヌクレオチドは、好ましくは、磁性粒子に接合される。この磁性粒子は、プローブが標的核酸に対してハイブリダイズすることが可能な、十分な時間が経過した後で、精製工程時、反応容器において単離することが可能である。(このような精製工程を実行するために使用することが可能な装置の例として、DTS(登録商標)400 Target Capture System (Gen−Probe; Cat. No. 5105)がある。プローブ:標的ハイブリッドの融解温度が、プローブ:固定オリゴヌクレオチドハイブリッドの融解温度よりも高くなるように、プローブは設計される。このようにして、異なる組のハイブリダイゼーションアッセイ条件を用いて、プローブが、固定オリゴヌクレオチドにハイブリダイズする前に、プローブが、標的核酸にハイブリダイズすることを促がし、そうするによって、遊離プローブの濃度を最大とし、好適な液相ハイブリダイゼーション動態を実現することが可能となる。この「二段階」標的捕捉方は、Weisburg et al.
米国特許第6,110,678号に開示される。本発明に簡単に適応させることが可能な、他の、標的捕捉スキームも、従来技術で周知であり、例えば、Ranki et al., 米国特許第4,486,539号;Stabinsky, 米国特許第4,751,177号;およびBoom et al., “Process for Isolating Nucleic Acid,” 米国特許第5,234,809号に開示される。なお、これらをそれぞれ引用により本明細書に含める。
【0141】
TB複合体検出プローブについては、「標的核酸配列」、「標的ヌクレオチド配列」、「標的配列」、および「標的領域」という用語は全て、TB複合体生物の23S rRNAまたは rDNA中に存在する核酸配列、または、それに対して相補的な配列であって、近縁種の核酸中には同一形として存在しない配列を指す。標的配列に対して相補的なヌクレオチド配列を有する核酸は、本明細書の別の場所に開示される標的増幅技術によって生成されてもよい。
【0142】
TB複合体生物にもっとも近縁な生物は、M. celatumである。本発明の検出プローブは、他のマイコバクテリア生物に対し、とりわけM. celatum由来の核酸に対して、TB複合体生物由来の核酸を優先的に区別する。さらに、本発明のTB複合体検出プローブは、ストリンジェントハイブリダイゼーション条件下で該プローブと安定にハイブリダイズしない、任意の非TB複合体核酸から、TB複合体由来核酸を区別するために使用することが可能である。
【0143】
一実施態様では、本発明のTB複合体検出プローブは、長さが最大100塩基であることが好ましく、配列番号1、配列番号2、配列番号3、または配列番号4の塩基配列の15連続塩基の内、少なくとも12個を含むか、それと重複するか、事実上それから成るか、実質的にそれと一致するか、それから成るか、または、その中に含まれ、かつそれを含む。ある好ましい方式では、本発明による検出プローブは、Arnold et al.
米国特許第5,185,439および6,031,091号の教示にしたがって、プローブに接合するアクリジニウムエステルを含む。このプローブは、ストリンジェントハイブリダイゼーション条件下において、試験サンプル中に存在する非TB複合体生物由来の核酸に対してよりも、TB複合体生物由来の標的核酸に対し優先的にハイブリダイズする。特に、プローブは、使用の条件下で、M. celatum由来の核酸に対しては、検出のための安定なハイブリッドを形成しない。
【0144】
一旦合成されたならば、プローブは、任意の周知の方法を用いて、検出可能なラベルまたはリポーター基によって標識してもよい。(例えば、SAMBROOK ET AL.,上記、ch.10を参照されたい)。プローブは、標的配列の検出をやり易くするために、検出可能な成分、例えば、放射性同位元素、抗原、または化学発光成分によって標識されてもよい。有用なラベルとしては、放射性同位元素の外、非放射性リポーター基が挙げられる。同位元素ラベルとしては、H、35S、32P、125I、57Co、および14Cが挙げられる。同位元素ラベルは、従来技術で既知の技術、例えば、ニックトランスレーション、末端標識、第2鎖合成、逆転写、および化学的方法によってオリゴヌクレオチドの中に導入することが可能である。放射性標識プローブを使用する場合、ハイブリダイゼーションは、オートラジオグラフィー、シンチレーションカウンティング、またはガンマカウンティングによって検出することが可能である。検出法の選択は、標識に使用される特定の放射性同位元素に依存する。
【0145】
非放射性物質も、標識のために使用することが可能であり、内部のヌクレオチドの間に、またはオリゴヌクレオチドの末端に導入してよい。オリゴヌクレオチドの化学的修飾を、オリゴヌクレオチドの合成時、またはその後に、従来技術で既知の技術を用い、Arnold et al., 米国特許第6,031,091号によって開示される、非ヌクレオチドリンカー基を用いて実行してもよい。非同位元素ラベルとしては、例えば、蛍光分子、電気化学発光分子、発色団、酵素、酵素補因子、酵素基質、染料、およびハプテン、または他のリガンドが挙げられる。もう一つの有用な標識技術は、ストリンジェント条件下において標的核酸に対して安定にハイブリダイズすることができない塩基配列である。本発明のプローブは、アクリジニウムエステルによって標識されることが好ましい。(アクリジニウムエステル標識付着は、Arnold et al., 米国特許第5,185,439号に開示される)。
【0146】
次に、この選択された検出プローブは、一つ以上のTB複合体生物を含むことが疑われる試験サンプルに接触させることが可能である。一般に、試験サンプルは、さらに未知の生物を含む供給源から得られる。通常、試験サンプルの供給源は、患者標本、例えば、痰、気管支肺胞洗液、または胸水サンプルである。プローブを、試験サンプル由来の核酸に接触させた後、プローブおよびサンプル由来核酸は、試験サンプル中に存在する他の生物由来の核酸の存在下において、プローブの、TB複合体生物由来の標的核酸に対する優先的ハイブリダイゼーションを可能とする条件下にインキュベートすることが可能である。
【0147】
TB複合体生物由来の標的核酸配列に対する結合を促進するために、検出プローブはさらに、一つ以上の未標識のヘルパープローブと組み合わされてもよい。検出プローブが、試験サンプル中に存在する標的核酸にハイブリダイズした後、得られたハイブリッドは、従来技術で周知の、種々の方法によって、例えば、ヒドロキシアパタイト吸着、および放射活性監視によって分離、検出してもよい。他の技術としては、Arnold et al. 米国特許第5,283,174号に開示されるように、ハイブリダイズしなかったプローブに連結するラベルを選択的に分解し、ハイブリダイズしたプローブに連結する残留ラベルの量を測定することを含むものが挙げられる。本発明は、特に、後者の技術を好む。
【0148】
G. TB複合体生物の検出に使用されるヘルパープローブ
本発明のもう一つの実施態様は、ヘルパープローブに関する。前述のように、ヘルパープローブは、検出プローブの、その意図する標的核酸に対するハイブリダイゼーションを促進させるために使用することが可能であり、そのため、検出プローブは、ヘルパープローブが無い場合に予想される状態よりも、もっと簡単にプローブ:標的核酸2本鎖を形成することが可能となる。(Hogan et al., “Means and Method for Enhancing Nucleic Acid Hybridization,” 米国特許第5,030,557号を参照されたい、なお、この内容を引用により本明細書に含める)。各ヘルパープローブは、ストリンジェントハイブリダイゼーション条件下において、ヘルパープローブ:標的核酸2本鎖を形成することができるほど、標的核酸に対して十分な相補性を持つオリゴヌクレオチドを含む。任意のヘルパープローブについて使用されるストリンジェントハイブリダイゼーション条件は、連結検出プローブが標的核酸に対し優先的にハイブリダイズするように使用される条件によって決定される。
【0149】
ストリンジェントハイブリダイゼーション条件下においても、1本鎖RNAおよびDNAの領域が、二次および三次構造に関与する場合がある。このような構造は、標的核酸に対する検出プローブのハイブリダイゼーションを立体的に抑制、またはブロックすることがある。標的核酸に対するヘルパープローブのハイブリダイゼーションは、該標的核酸の二次および三次構造を変え、標的核酸を、検出プローブによる接近に対しより受容的にする。その結果、ヘルパープローブは、検出プローブ:標的核酸2本鎖の反応速度および/または融解温度を強調する。ヘルパープローブは、一般に、検出プローブの標的領域の近くに位置する核酸配列にハイブリダイズするように選ばれる。
【0150】
本発明の、TB複合体検出プローブと共に使用することが可能なヘルパープローブは、TB複合体由来核酸内の核酸配列を標的とする。同様に、TB複合体検出プローブと共に使用することが可能なヘルパープローブは、TB複合体由来核酸内の核酸配列を標的とする。各ヘルパープローブは、ストリンジェントハイブリダイゼーション条件下においてTB複合体生物のいずれかから得られた核酸中に存在する塩基領域を標的とし、安定にハイブリダイズする、任意に修飾されるオリゴヌクレオチドを含む。ヘルパープローブ、およびの関連検出プローブは、同じ標的核酸配列内に含まれる、異なる標的配列を有する。本発明のヘルパープローブは、好ましくは長さが最大100塩基、より好ましくは長さが約12から50塩基、さらに好ましくは長さが18から40塩基である。
【0151】
本発明において有用な、好ましいTB複合体ヘルパープローブは、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、または配列番号12の塩基配列の15連続塩基の内、少なくとも12個を含むか、それと重複するか、事実上それから成るか、実質的にそれと一致するか、それから成るか、または、その中に含まれ、かつそれを含む。ヘルパープローブは、二つのセットとして用いられることが好ましく、このセットにおいて、第1ヘルパープローブは、配列番号5、配列番号6、配列番号7、または配列番号8の塩基配列の15連続塩基の内、少なくとも12個を含むか、それと重複するか、事実上それから成るか、実質的にそれと一致するか、それから成るか、または、その中に含まれ、かつそれを含み、かつ、第2ヘルパープローブは、配列番号9、配列番号10、配列番号11、または配列番号12の塩基配列の15連続塩基の内、少なくとも12個を含むか、それと重複するか、事実上それから成るか、実質的にそれと一致するか、それから成るか、または、その中に含まれ、かつそれを含む。前記二つ以上のヘルパープローブと共に使用される、好ましいTB複合体検出プローブは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、または配列番号4の塩基配列の15連続塩基の内、少なくとも12個を含むか、それと重複するか、事実上それから成るか、実質的にそれと一致するか、それから成るか、または、その中に含まれ、かつそれを含み、この検出プローブは、ストリンジェントハイブリダイゼーション条件下において、試験サンプル中に存在する非TB複合体生物由来核酸に対してよりも、TB複合体由来の標的核酸に対して優先的にハイブリダイズする。特に、このプローブは、使用される条件下において、M. celatum核酸とは、検出のための安定なハイブリッドを形成しない。
【0152】
H. アッセイ法
本発明は、試験サンプルにおいて、TB複合体生物由来の核酸の存在または量を定量するための種々の方法を提供する。当業者であれば、使用される正確なアッセイ条件、プローブ、および/または増幅オリゴヌクレオチドは、特定のアッセイ方式およびサンプルの供給源に応じて変動することを理解するであろう。
【0153】
本発明の一局面は、ストリンジェントハイブリダイゼーション条件下において、試験サンプル中に存在する非TB複合体生物由来核酸に対してよりも、TB複合体由来の標的核酸に対して優先的にハイブリダイズすることが可能な検出プローブに、試験サンプルを、ストリンジェントハイブリダイゼーション条件下において接触させることによって、試験サンプルにおけるTB複合体生物の存在または量を決定するための方法に関する。この方法において、本発明の検出プローブは、長さが最大100塩基であることが好ましく、配列番号1、配列番号2、配列番号3、または配列番号4の塩基配列の15連続塩基の内、少なくとも12個を含むか、それと重複するか、事実上それから成るか、実質的にそれと一致するか、それから成るか、または、その中に含まれ、かつそれを含む。この検出プローブはさらに、試験サンプルにおける検出をやり易くするためにラベルを含んでもよい。好ましい方式では、本法の検出プローブは、Arnold et al. 米国特許第5,185,439および6,031,091号の教示にしたがって、プローブに接合するアクリジニウムエステルを含む。
【0154】
好ましい一実施態様では、試験サンプルにおけるTB複合体生物の存在または量を決定するための方法はさらに、標的核酸配列に対するプローブのハイブリダイゼーションをやり易くするための、一つ以上のヘルパープローブと試験サンプルを接触させる工程を含んでもよい。ヘルパープローブは、検出プローブの添加の前、または後に、サンプルに添加してもよいが、ヘルパープローブと検出プローブは、同時に試験サンプルに与えられるのが好ましい。本法において使用される好ましいヘルパープローブの塩基配列は、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、または配列番号12の塩基配列の15連続塩基の内、少なくとも12個を含むか、それと重複するか、事実上それから成るか、実質的にそれと一致するか、それから成るか、または、その中に含まれ、かつそれを含む。好ましくは、本法では、一対のヘルパープローブが試験サンプルに与えられ、その際、第1ヘルパープローブは、配列番号5、配列番号6、配列番号7、または配列番号8の塩基配列の15連続塩基の内、少なくとも12個を含むか、それと重複するか、事実上それから成るか、実質的にそれと一致するか、それから成るか、または、その中に含まれ、かつそれを含み、かつ、第2ヘルパープローブは、配列番号9、配列番号10、配列番号11、または配列番号12の塩基配列の15連続塩基の内、少なくとも12個を含むか、それと重複するか、事実上それから成るか、実質的にそれと一致するか、それから成るか、または、その中に含まれ、かつそれを含む。好ましくは、本法のヘルパープローブは、検出プローブと共に使用され、その際、検出プローブの塩基配列は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、または配列番号4の塩基配列の15連続塩基の内、少なくとも12個を含むか、それと重複するか、事実上それから成るか、実質的にそれと一致するか、それから成るか、または、その中に含まれ、かつそれを含み、かつ、検出プローブは、ストリンジェントハイブリダイゼーション条件下において、試験サンプル中に存在する非TB複合体生物由来核酸に対してよりも、TB複合体由来の標的核酸に対して優先的にハイブリダイズする。
【0155】
本発明のもう一つの局面は、試験サンプルにおけるTB複合体由来核酸を増幅する方法であって、一つ以上の増幅オリゴヌクレオチドで、核酸ポリメラーゼに接触させられると、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、または配列番号28の塩基配列を介して結合し、伸長を誘発する増幅オリゴヌクレオチドと接触させることによって前記増幅を実行する方法に関する。この増幅オリゴヌクレオチドは、RNAポリメラーゼによって認識されるか、または、RNAポリメラーゼによる開始または伸長を強化する核酸配列を任意に含む。本法に使用することが可能な増幅オリゴヌクレオチドの組み合わせは、上に、「TB複合体リボソーム核酸の増幅」なる表題の下に記載される。
【0156】
好ましい実施態様では、試験サンプルにおけるTB複合体由来核酸を増幅する方法はさらに、ストリンジェントハイブリダイゼーション条件下において、試験サンプル中に存在する非TB複合体生物由来核酸に対してよりも、TB複合体由来の標的核酸に対して優先的にハイブリダイズすることが可能な検出プローブと、ストリンジェントハイブリダイゼーション条件下において、試験サンプルを接触させる工程を含む。試験サンプルは、一般に、増幅のための十分な時間が過ぎた後で検出プローブと接触させられるが、増幅オリゴヌクレオチドと検出プローブは、検出プローブが、前述の分子トーチのような自己ハイブリダイズ性プローブである場合と同様、試験サンプルに対し任意の順序で加えてよい。試験サンプルを検出プローブと接触させるこの工程は、試験サンプルにおけるTB複合体生物の存在または量が決定可能となるように行われる。本法で使用される、好ましい検出プローブは、上の「TB複合体生物のリボソーム核酸に対する検出プローブ」という表題のセクションに記載される。
【0157】
本発明のさらに別の局面は、試験サンプル中のTB複合体生物由来の標的核酸を固定する方法であって、試験サンプルに、標的結合領域および固定プローブ結合領域を持つ捕捉プローブを、捕捉プローブが標的核酸配列に対して安定に結合することを可能とする、第1セットのハイブリダイゼーション条件下において与え、それによって捕捉プローブ:標的複合体を形成し、かつ、捕捉プローブが、試験サンプル中の固定用プローブに対して安定に結合することを可能とする、第2セットのハイブリダイゼーション条件下において与え、それによって固定用プローブ:標的複合体を形成することを含む方法に関する。第1および第2セットのハイブリダイゼーション条件は、同じであっても、異なっていてもよく、捕捉プローブ:標的複合体は、第2セットのハイブリダイゼーション条件下では安定な状態を持続する。この捕捉プローブの標的結合領域は、、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、および配列番号20の塩基配列の15個の連続塩基の内、少なくとも12個を含むか、それと重複するか、事実上それから成るか、実質的にそれと一致するか、それから成るか、または、その中に含まれ、かつそれを含む。好ましくは、精製工程は、固定工程の後に行われ、固定される標的核酸に含まれる標的配列の増幅または特異的検出を妨げるか、または阻止する可能性のある、試験サンプルの一つ以上の成分を除去する。TB複合体由来核酸を固定し、任意に精製する方法は、TB複合体生物由来標的核酸を増幅し、および/またはその存在を検出するための前述の、いずれの方法よりも先行してよい。精製工程が含まれる場合、標的核酸は、固定プローブから間接的に溶出されてもよいし、あるいは、標的配列の増幅または検出の前にサンプル条件を変えることによって、固定用プローブ:捕捉プローブ:標的複合体の捕捉プローブから直接溶出されてもよい。
【0158】
I. 診断システム
本発明はさらに、キット形状の診断システムを考慮の対象とする。本発明の診断システムは、包装材料の中に、少なくとも1回のアッセイのために十分な量において、本発明の検出プローブ、捕捉プローブ、および/または増幅オリゴヌクレオチドの内のいずれかを含むキットを含んでもよい。典型的には、キットはさらに、手に触れられる形状(例えば、紙、電子媒体、例えば、ディスク、CD−ROM、DVD、またはビデオテープ)に記録される案内で、試験サンプルにおけるTB複合体生物の存在または量を決定するための増幅および/または検出アッセイにおける包装されるプローブおよび/または増幅オリゴヌクレオチドの使用に関する案内を含む。
【0159】
この診断システムの各種成分は、様々の形状において提供されてよい。例えば、必要酵素、ヌクレオチド三リン酸塩、プローブ、および/またはプライマーは、凍結乾燥試薬として提供されてもよい。これらの凍結乾燥試薬は、凍結乾燥前にあらかじめ混ぜ合わされ、再構成された場合、アッセイにすぐに使用されるよう、各成分が適正な比率を持つ完全な混合物を形成するようになっていてもよい。さらに、本発明の診断システムは、キットの凍結乾燥試薬を再構成するための再構成試薬を含んでいてもよい。TB複合体生物由来の標的核酸を増幅するための好ましいキットでは、酵素、ヌクレオチド三リン酸、および、酵素の必要補因子は、単一凍結乾燥試薬として提供され、これは再構成されると、本増幅法において使用される適正な試薬を形成する。これらのキットにおいて、凍結乾燥プライマー試薬も提供されてよい。別の好ましいキットでは、凍結乾燥プローブ試薬が提供される。
【0160】
典型的包装材料としては、固定された境界内に、本発明の検出プローブおよび/または増幅オリゴヌクレオチドを保持することが可能な固体基質、例えば、ガラス、プラスチック、紙、フォイル、微粒子などが挙げられよう。したがって、例えば、包装材料としては、選ばれたプローブまたはプライマーの、ミリグラム以下量(例えば、ピコグラムまたはナノグラム)を含むために使用されるガラスバイアルが挙げられるが、あるいは、材料は、本発明のプローブまたはプライマーが動作可能的に固定される、すなわち、本発明の増幅および/または検出法に参加することが可能となるように結合される、マイクロタイタープレートのウェルであってもよい。
【0161】
案内は、通常、試薬、および/または試薬の濃度、および、例えば、サンプルの量当たり使用される試薬の相対量であってもよい、少なくとも一つのアッセイ法パラメータを示す。さらに、維持、期間、温度、およびバッファー条件などの仕様も含まれてよい。
【0162】
本発明の診断システムは、試験サンプルにおけるTB複合体生物の存在または量の増幅および/または決定に使用するために、個別であると、前述の好ましい組み合わせの内の一つであるとを問わず、本明細書に記載される検出プローブ、ヘルパープローブ、捕捉プローブ、および/または増幅オリゴヌクレオチドの内のいずれかを有するキットを考慮の対象とする。
【実施例】
【0163】
J. 実施例
本発明の、様々の局面および実施態様を具体的に示す実施例を下記に提示する。これらの実施例は、実際に行った実験の詳細を正確に反映するものと考えられるが、一方、現実に実行された実験と、下記に記載される実験的詳細の間には、これらの実験の結論には影響を及ぼさない、いくつか些細な食い違いが存在する可能性があり得る。当業者であれば、これらの実施例は、本発明を、本明細書に記載される特異的実施態様に限定することを意図するものではないことを理解するであろう。
【0164】
1. 生物の崩壊
下記の実施例における全体細胞は、下記の「試薬」セクションに記載される、界面活性剤含有バッファーにおいて化学的に、熱的に崩壊される。細胞崩壊を促進する外に、このバッファーは、試験サンプルにおけるRNアーゼの活性を抑制することによって放出RNAを保護する。バッファーはさらに、標的核酸配列の単離、精製、および増幅において使用される増幅プライマーおよび捕捉プローブを含む。
【0165】
2. オリゴヌクレオチド合成
下記の実施例において特に注目されるオリゴヌクレオチドとして、検出プローブ、ヘルパープローブ、増幅オリゴヌクレオチド、および捕捉プローブが挙げられる。これらのオリゴヌクレオチドは、標準的フォスフォロアミダイト化学を用いて合成された。その種々の方法は従来技術において周知である。例えば、Caruthers et al., Methods in Enzymol., 154:287(1987)を参照されたい。合成は、Expedite(商標)8909 Nucleic Acid Synthesizer (Applied Biosystems; Foster City, CA)を用いて実行した。さらに、検出プローブは、Arnold et al.,
米国特許第5,585,481および5,639,604号に記載されるように、非ヌクレオチドリンカーを含むように合成し、Arnold et al., 米国特許第5,185,439号に記載されるように、化学的発光剤アクリジニウムエステルによって標識した。
【0166】
3. 転写介在増幅
下記の実施例における標的配列の増幅は、例えば、Kacian et al. 米国特許第5,399,491および5,480,784号、および、LEE ET AL.,上記、ch.8によって開示される、転写介在増幅(TMA)によって行った。TMAは、逆転写酵素およびRNAポリメラーゼを用い、標的配列のコピー数において10億倍を超える増加を可能とする等温増幅過程である(下記の「酵素試薬」参照)。TMA反応は、その一方が、5’RNAポリメラーゼ特異的プロモーター配列を有する、一対の増幅オリゴヌクレオチドの存在下に、逆転写酵素によって、1本鎖標的配列を2本鎖DNA中間体に変換することを含む。この実施態様では、このDNA中間体は、RNAポリメラーゼによって認識される、2本鎖プロモーター配列を含み、標的配列の、数百コピーのRNAへの転写を指令する。次に、これらの転写RNAはそれぞれ、2本鎖DNA中間体に変換が可能であり、これは、さらに別のRNAを生産するために使用される。したがって、TMA反応は指数関数的に進行する。下記の実施例に使用されるTMAの具体的詳細は下記に記載される。
【0167】
4. 試薬
種々の試薬が、下記の実施例では特定されるが、例えば、標本希釈バッファー、標的捕捉試薬、増幅試薬、プライマー試薬、酵素試薬、プローブ試薬、選択試薬、および検出試薬が挙げられる。これらの試薬の処方およびpH値(関係ある場合)は下記の通りであった。
【0168】
標本希釈バッファー 標本希釈バッファーは、300 mM HEPES、3%(w/v)ラウリル硫酸リチウム、44 mM LiCl、120 mM LiOH、40mM
EDTA、20 nM TB複合体捕捉プローブ、60 nM TB複合体T7プロモーター−プライマー、17.6 nM IC捕捉プローブ、32 nM IC T7プロモーター−プライマー、0.1 Fg/FL 1ミクロン磁気粒子Sera−Mag(商標)MG−CMカルボン酸修飾型(Seradyn, Inc.; Inidianalpolis, Indiana; Cat No. 24152105−050450)で、オリゴ(dT)14を共有的に結合させたもの、2 M LiOHによってpH7.4に調整したものを含んでいた。
【0169】
洗浄液 「洗浄液」は、10 mM HEPES、6.5 mM NaOH、1 mM
EDTA、0.3%(v/v)エチルアルコール、0.02%(w/v)メチルパラベン、0.01%(w/v)プロピルパラベン、150 mM NaCl、および0.1%(w/v)ラウリル硫酸ナトリウムで、4 M NaOHでpH7.5の調整したものを含んでいた。
【0170】
増幅試薬 「増幅試薬」は、26.7 mM rATP、5.0 mM rCTP、33.3 mM rGTP、および5.0 mM rUTP、125 mM HEPES、8%(w/v)トレハロース、1.33 mM dATP、1.33 mM dCTP、1.33 mM dGTP、および1.33 mM dTTPで4 M NaOHによってpH7.7に調整したものを含む3.5 mL用英気の凍結乾燥形であった。
【0171】
増幅試薬再構成液 増幅試薬は、0.4%(v/v)エチルアルコール、0.10%(w/v)メチルパラベン、 0.02%(w/v)プロピルパラベン、33mM KCl、30.6 mM MgCl、0.003%フェノールレッドを含む「増幅試薬再構成液」によって、9.5 mLの充填容量に再構成させた。
【0172】

酵素試薬 「酵素試薬」は、20 mM HEPES、125 mM N−アセチル−L−システイン、0.1 mM EDTA、0.2%(v/v) TRITON7 X−100界面活性剤、0.2 Mトレハロース、900 RTU/FL Moloneyマウス白血病ウィルス(“MMLV”)逆転写酵素、および200 U/FL T7 RNAポリメラーゼで、4M NaOHでpH7.0に調整したものを含む1.35 mL液の凍結乾燥形であった。(MMLV逆転写酵素については、1逆転写酵素単位(”RTU”)は、基質として(ポリ(rA)−p(dT)12−18)を用い、20分37℃においてDE81フィルター結合産物に取り込まれる、1 nmol dTMPの量と定義され、T7 RNAポリメラーゼについては、1活性単位(“U”)は、20分37℃における5.0 fmol RNA転写物の生産と定義される)。
【0173】
酵素試薬再構成液 酵素試薬は、50 mM HEPES、1 mM EDTA、10%(v/v) TRITON7 X−100界面活性剤、120 mM KCl、および20%(v/v)グリセロールを含み、4M NaOHでpH7.0に調整したものを含む「酵素試薬再構成液」によって3.4 mLの充填容量に再構成させた。
【0174】
プローブ試薬 「プローブ試薬」は、100 mMコハク酸、2%(v/v)ラウリル硫酸リチウム、100 mM LiOH、15 mMアルロリチオール−2、1.2 M
LiCl、20 mM EDTA、3%(v/v)エチルアルコール、1 nM検出プローブを含み、2M LiOHによってpH4.7に調整したものを含んでいた。
【0175】
選択試薬 「選択試薬」は、600 mMホウ酸、182.5 mM NaOH、および1%(v/v) TRITON(登録商標)X−100界面活性剤を含み、4M NaOHでpH8.5に調整したものを含んでいた。
【0176】
検出試薬 「検出試薬」は、1 mM硝酸、および32 mM H、30%(v/v)を含む検出試薬I、および、1.0 NaOH、および2%(w/v) ZWITTERGENT(登録商標)3−14界面活性剤を含む検出試薬IIであった。
【0177】
オイル試薬 「オイル試薬」は、シリコンオイルであった(United Chemical Technologies, Inc., Bristol, PA; Cat. No. PS038)。
【0178】
実施例1
他のマイコバクテリア生物に対してよりもMycobacterium tuberculosis複合体生物を指向する増幅アッセイの特異性
この実験は、他のマイコバクテリア種の存在下に、TB複合体のメンバーに属する23S rRNAを標的とする増幅アッセイの特異性を定量するために行った。前述のように、TB複合体のメンバーは、M. africanum、減弱されたBCGワクチン株M. microtiおよびM. tuberculosisを含むM. bovisを含む。本実験では、M. microti生物は増殖しないので、このTB複合体種に関しては特異性データはない。系統発生的には、M. celatumが、TB複合体生物に対しもっとも近縁と考えられており、したがって、TB複合体のメンバーを検出するためのアッセイは、M. celatum由来の核酸に検出可能となるほどにハイブリダイズしてはならない。
【0179】
本実験のマイコバクテリア種は、試験のために十分な量の生物を得るために標準的微生物学技術にしたがって培養された。GABY E. PFYFFER ET AL., MANUAL OF CLINICAL MICROBIOLOGY, ch. 36 (Patrick R. Murray et al., eds., 8th ed.
2003)を参照されたい。試験される各菌種について、1 μlループ量の細胞(約3x10のコロニー形成単位)を、250 μLの0.01%(v/v) ラウリル硫酸リチウム(“LLS”)液、および、2,000コピーの内部コントロール(”IC”)転写物を含む、Ten−Tube−Unit(Gen−Probe, CA; Cat. No. TU0022)の反応管に移した。サンプルにおける汚染細菌による干渉を制限するために、内部コントロールは、HIV−1核酸から得られた非競合性配列(内部コントロールの検出領域は、HIV−1のスクランブル配列であった)である。二つの複製体、それぞれ、M. tuberculosis rRNA陽性コントロール(2.5
fg/複製体)、および陰性コントロール(0.01%(v/v) LLS)を含む反応チューブを調製し、試験した。
【0180】
細胞を崩壊させ、標的核酸を放出するために、250 μLの標本希釈バッファーを反応管に加え、次いで、反応管を、密封カード(Gen−Probe; Cat. No.
2085)で蔽い、渦巻き攪拌し、95℃で30分インキュベートした。標本希釈バッファーの各250 μL分液は、15 pmol のTB複合体捕捉プローブ、5 pmolのTB複合体T7プロモーター−プライマー、4.4 pmolのIC捕捉プローブ、および8.0 pmolのIC T7プロモーター−プライマーを含んでいた。TB複合体捕捉プローブは、配列番号31:ggaaucacaauuguuuucuccucctttaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaを含み、この配列は、TB複合体生物の23S rRNAに結合するための2’−O−メチルリボヌクレオチドから構成される5’標的結合領域(配列番号32)、3’オリゴ(dA)30固定プローブ結合領域、および、磁気粒子上に固定されるオリゴ(dT)14に対する結合について、捕捉プローブにより屈曲性を持たせるために、標的結合部分と、固定プローブ結合領域の間に挿入される5’−ttt−3’スペーサ配列、を含む。IC捕捉プローブは、内部コントロールに対して特異的な5’標的結合領域、および、TB複合体捕捉プローブのものと同じ3’固定プローブ結合領域およびスペーサを含んでいた。TB複合体T7プロモーター−プライマーは、配列番号33:aatttaatacgactcactatag ggagaccaggccacttccgctaaccの配列を有する順行(アンチセンス)プライマーであり、この配列は、TB複合体生物の23S rRNAに結合するための3’標的結合部分(配列番号21)、および、5’T7プロモーター配列(配列番号29)から成っていた。IC T7プロモーター−プライマーも、内部コントロールに対して特異的な3’標的結合部分、および、TB複合体T7プロモーター−プライマーと同じT7プロモーター配列を有する、順行(アンチセンス)プライマーであった。95℃のインキュベーション後、反応管の内容物を室温で10分放置して冷却し、捕捉プローブの標的結合領域、およびプロモーター−プライマーを、それぞれの標的とハイブリダイズさせ、かつ、捕捉プローブの固定プローブ結合領域(オリゴ(dA)30)については、磁気粒子の上に固定されるオリゴ(dT)14に結合させた。
【0181】
サンプルの冷却後、DTS(登録商標)400 Target Capture System (Gen−Probe; Cat. No. 5105)を用いて、磁気粒子を単離し、洗浄した。DTS(登録商標)400 Target Capture Systemは、TTUを配置し、それに磁界を当てるための試験管ベイを有する。TTUを、磁界の存在下5分間DTS(登録商標)400 Target Capture Systemの試験管ベイに設置し、反応管内部で磁気粒子を単離し、その後、サンプル液をTTUから吸引した。次に、各反応管に、1 mLの洗浄液を供給し、密封カードで蔽い、渦巻き攪拌し、磁気粒子を再縣濁した。このTTUを、DTS(登録商標)400 Target Capture Systemの試験管ベイに戻し、約5分室温で放置し、その後、洗浄液を吸引した。
【0182】
この標的捕捉工程後、75 μLの再構成増幅試薬を各反応管に加えた。再構成増幅試薬の各75 μLは、15 pmol のTB複合体T7プロモーター−プライマー、15 pmolの非TB複合体プライマー、8 pmolのIC T7プロモーター−プライマー、および、15 pmolの非T7 ICを含んでいた。非T7プライマーはいずれも逆行(センス)プライマーであった。非T7 TB複合体プライマーは、配列番号25の塩基配列を持ち、非T7 ICプライマーは、内部コントロール内に含まれる配列を持っていた。次に、反応管に、200 μLのオイル試薬を与え、密封カードで蔽い、渦巻き攪拌した。増幅を開始するために、25 μLの再構成酵素試薬を各反応管に加え、反応管を再び密封カードで蔽い、反応管の内容物を、手動で優しく掻きまぜた。混合後、反応管を、42℃の水浴中で30分インキュベートした。
【0183】
TB複合体および内部コントロール増幅産物の検出のために、反応管を水浴から取り出し、100 μLのプローブ試薬を各反応管に加えた。各100 μLは、100 fmolのTB複合体検出プローブ、2.5 pmolのTB複合体第1ヘルパープローブ(配列番号5)、2.5 pmolのTB 複合体第2ヘルパープローブ(配列番号9)、および2 fmolのIC検出プローブを含んでおり、これを加えた。TB複合体検出プローブは、配列番号1の塩基配列、および、ヌクレオチド13および14の間に配置される非ヌクレオチドリンカーによってプローブに接合される標準的AEラベル、5’から3’への読み取り、を有していた。IC検出プローブは、非ヌクレオチドリンカーによって、プローブに接合されるオルト−フルオロ−AEラベルを有していた。反応管は、密封カードで蔽い、渦巻き攪拌し、次いで、62℃の水浴中で15分インキュベートして、プローブを、反応管中に存在する増幅産物にハイブリダイズさせた。次に、反応管を水浴から取り出し、室温に5分放置して冷却し、その後、各反応管に250 μLの選択試薬を加えた。反応管を密封カードで蔽い、渦巻き攪拌し、その後、62℃の水浴中で10分インキュベートして、ハイブリダイズしないプローブに連結するアクリジニウムエステルラベルを加水分解した。次に、反応管を室温に7分放置して冷却し、その後LEADER(登録商標) HC+ Luminometer (Gen−Probe; Cat. No. 5201)において、検出試薬1の自動注入、次いで検出試薬2の自動注入を行って分析した。
【0184】
結果は、下記の表1に要約されるが、本実験のTB複合体アッセイは、TB複合体由来核酸を、他のマイコバクテリア種由来の核酸と交差反応することなく、増幅し、検出することを示す。この実験では、内部コントロール信号は、RLU(相対的光度単位)値が、30,000と299,999RLUの間にある場合、陽性と見なされ、TB複合体アッセイ信号は、RLUが≧300,000 RLUである場合、陽性と見なされた。表1に記載される結果はさらに、サンプルは、内部コントロールの増幅を抑制しないこと、および、分解過程は、標的配列の増幅を阻止しないことを示した。
【0185】
表1 非TB複合体マイコバクテリア生物に対してよりもTB複合体生物を指向する増幅アッセイの特異性
【0186】
【表1−1】

【0187】
【表1−2】

実施例2 他の非マイコバクテリア生物に対してよりもMycobacterium tuberculosis複合体生物を指向する増幅アッセイの特異性
本実験は、各種非マイコバクテリア生物の存在下に実施例1のTB複合体アッセイの特異性を評価した。本実験に含まれる生物は、系統発生の交差断面を提供するため、および/または、呼吸器生物であるという理由で、TB複合体生物に対する近縁性に基づいて選ばれた。内部コントロールは含めなかった。その他の点では、オリゴヌクレオチド、試薬、および、本実験の工程は、実施例1のものと事実上同じであった。結果は、下記の表2に要約されるが、本実験のTB複合体アッセイは、陽性コントロールは増幅し、検出するが、非マイコバクテリア種由来の核酸とは交差反応を示さないことを示す。
【0188】
表2 非TB複合体生物に対してよりもTB複合体生物を指向する増幅アッセイの特異性
【0189】
【表2−1】

【0190】
【表2−2】

【0191】
【表2−3】

これまでに、本発明が、いくつかの好ましい実施態様を参照しながらかなり詳細に記載され、表示されたわけであるが、当業者であれば、本発明の他の実施態様も簡単に理解するであろう。したがって、本発明は、付属の特許請求項の精神および範囲内に包含される全ての修飾および変異種を含むことが意図される。
【数1】

【数2】

【数3】

【数4】

【数5】

【数6】

【数7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。

【公開番号】特開2013−106617(P2013−106617A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2013−43956(P2013−43956)
【出願日】平成25年3月6日(2013.3.6)
【分割の表示】特願2009−512313(P2009−512313)の分割
【原出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(500506530)ジェン−プロウブ インコーポレイテッド (58)
【Fターム(参考)】