説明

試験パッチ装置および方法

流体源を用いて表面上の成分の試料を採取する試験パッチ装置が、流体を上記流体源から送出するために毛管層を有する遷移領域と、表面と接触する収集材を有する抽出領域と、分析を行うために流体を収集するセンサリザーバを有する収集領域とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2007年7月13日出願の「試験パッチ装置および方法」と題する同時係属中の米国仮特許出願第60/949737号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、一般に、表面汚染物質試験用装置に関し、より具体的には、表面に施される表面処理の有効性の尺度としてpH、塩化物の存在、または導電率等の少なくとも1つの特性についてその表面の試験を行う装置および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
保護被覆材による表面処理を定期的に行う産業分野では、多くの場合、被処理面の様々な部分を試験して、保護被覆材が適切に塗布されたかどうかを判定する必要がある。あるいは、鋼表面などの処理を行う前に、被処理面すなわち被塗装面で腐食が起こらないように、その表面から汚染物質および塩化物塩等の塩を完全に取り除かなければならない。そのため、表面上の種々の汚染物質の存在を判定するための様々な先行技術装置が存在する。
【0004】
一例として、鋼表面の塩素イオンによる汚染が造船業において広範な問題となっている。塩素イオンによる汚染は、鋼材が海風および海水に近接していること、またその未処理材の近くで凍結道路の塩処理が行われるなど、一見わかりにくい理由により生じる。表面が汚染されると、腐食が極めて急速に進むおそれがある。こうした悪影響は汚染面を処理または被覆する際に現れるため、そうした悪影響を回避するために、表面の洗浄、試験および処理を迅速に行わなければならない。さらに、塩化物が付着した表面に塗装を行うと、バラストタンク等、浸漬用途の材料に不具合が生じ、当然、これにより多大な不便が生じ、多額の修理費用が必要となる。
【0005】
塩分濃度、pH、または導電率等の様々な特性について表面試験ができる多くの先行技術機器は通常、複雑で、試験遂行に多数の手順が必要な労働集約型アセンブリである。よく知られた例では、被処理面への塩化物の付着を測定する手段として、ブレスルパッチ(Bresle patch)やサンプラが用いられている。ブレスルパッチはラテックス膜および発泡ゴム製ガスケットを備える。発泡ゴム製ガスケットを接着剤で表面に固定すると、このガスケットと表面との間に防水試料抽出ポケットができる。この防水試料抽出ポケットに、典型的には注射器で、蒸留水または脱イオン水を注入する。短時間パッチを擦って水をかき混ぜた後、典型的には注射器などで水を抜き取り、この水を、塩素イオン含有量等の成分特性について化学試薬を使用して分析する。この化学分析は、典型的には、試薬および使用説明書付きで提供される「キット」を用いて行われる。抽出した水を、pH、電気導電率、または塩素イオンの存在等の他の特性について、これを目的として従来より当技術分野で周知の測定装置で分析することも可能である。
【0006】
成分特性に関する表面試験方法としては、他にも当技術分野において知られている例はあるが、いずれも、1種類の試料の収集および分析に時間とエネルギーをかなり要する。多くの先行技術装置では、悪条件の産業製造環境の下で、様々な注射器、水および試薬の瓶、表面試験パッチおよびその他の道具を調節して組み合わせなければならない。また、広い表面範囲の試験を行うときは、表面処理を開始するまでの短時間で、その範囲の多数の場所で試料を収集しなければならないため、上記先行技術による方法は極めて不都合である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、当技術分野では、安定して正確な結果を得られると同時に、ユーザが繰返しかつ迅速に実施可能な、表面の成分特性に関する試験装置および方法が求められている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態による試験パッチ装置の平面図である。
【0009】
【図2】本発明の一実施形態による試験パッチ装置の分解立面図である。
【0010】
【図3】本発明の一実施形態による試験パッチ装置の立面図である。
【0011】
【図4】本発明の一実施形態による試験パッチ装置の概略上面図である。
【0012】
【図5】本発明の一実施形態による試験パッチ装置の概略側面図である。
【0013】
【図6】本発明の一実施形態による粘着片の上面図である。
【0014】
【図7】本発明の一実施形態による、線7−7に沿って見た粘着片の図である。
【0015】
【図8】本発明の一実施形態による粘着片および試験パッチ装置の等角図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1〜図5を参照すると、本発明の一実施形態によれば、成分特性の存在について表面2を試験する試験パッチ装置10は、溶媒3の供給アンプル20と、遷移領域150、抽出領域200および収集領域250を含む試験パッチ100とを有する。表面2は、何らかの成分が存在し得る表面であれば、どの表面でもよい。本発明の一実施形態では、表面2の例として、例えば船舶の部材として用いられる金属表面が挙げられる。本発明10のこの典型的な実施形態では、検出対象の成分の例として、塩化物が挙げられる。塩化物は、未塗装面または被覆面に悪影響を及ぼしかねないため、被覆加工を最終段階で不良としないよう、その塗装または被覆加工を行う前に除去しなければならない成分である。
【0017】
アンプル20には、後に詳述のように、成分の抽出を目的として溶剤の飽和に使用する蒸留水3等、一定供給量の溶媒3が投入されている。アンプル20内の蒸留水3(または分野ごとに必要とされる他の溶媒)は、装置を使用する段階まで、アンプル20の出口領域近くに位置する隔膜22または栓によって装置100から隔離された状態になっている。装置10の使用する時点で、遷移領域150の端部152でアンプル20の膜22を穿孔することができる。本発明の一実施形態では、端部152を、隔膜22の穿孔を容易にする形状とする、つまり先に行くほど細くすることができる。あるいは、膜22を、アンプル20が押されるなどして加圧されると破れ、これにより水を遷移領域150に放出するように設計してもよい。
【0018】
本発明のさらに別の実施形態では、発泡体による栓58または類似物を、アンプル20の出口部分または遷移領域150に備えてもよい。発泡体による栓58は、アンプル20が遷移領域150の端部152に係合すると破れる、すなわち開口するものである。さらに、アンプル20を独立した個別部材として装置10に設けてもよく、こうすると遷移領域150の端部152内外に配置できるようになるため、様々な種類のアンプル20が本発明と併用可能となることに留意されたい。
【0019】
試験パッチ100は、支持板110を備えて、この上にパッチ100の部材を取り付けるまたは組み立ててもよい。支持板110に防水層を設けてもよく、典型的な実施形態では、この防水層はポリカーボネート材料で形成される。後に詳述するように、組立てやすさと、装置110の他の要素の取り付けおよび位置決め用に基板を設けることとを目的として、支持板110を試験パッチ装置10の実質的に全長に延在させることができる。
【0020】
次に、図1、図4および図5を参照すると、遷移領域150に複数の層を設けることができる。支持板110は、毛管状のプラスチック層154に固定される。毛管状プラスチック層154は、水をアンプル20から遷移領域150を介して抽出領域200内へ輸送するように設計されている。加えて、防水プラスチック材料で形成された蓋156が、毛管層154を覆う層として設けられており、これにより、毛管層154の上部および底部が支持板110と蓋156とで包囲される。従って、水3は、アンプル20から毛管層154を通ってそこから抽出領域200内へ必ず流入することになる。本発明の流体動力学は、本発明10の構成層およびその相互接続を概略的に描いた図4および図5を参照することで完全に理解できる。
【0021】
図1、図2および図3で明らかなように、遷移領域150は、複数の構成層を通じて、抽出領域200に接続して隣接している。図1および図2において最も明らかなように、遷移領域150と抽出領域200との間は、単一の層または表面によって境界が定められているのではなく、複数の材料層経た遷移である。
【0022】
抽出領域200は、支持板層110を備える。この支持板層が、試験表面2から離れて位置する上部パッチ表面となる。さらに、支持板層110は、遷移領域150、抽出領域200および収集領域250と、その相互の寸法関係とに対する構造上の支持体となっている。抽出領域200内で支持板110に隣接しているのが、接着層206を有する防水性独立発泡体層204であり、これが、可撓性である防水支持層207を固定している。支持層207は、例えば、0.254ミリメートル(.010インチ)厚さのポリカーボネートプラスチックで構成することができる。支持層207は試料収集材208に隣り合って連続している。試料収集材208は吸収性繊維のパッドで構成されており、このパッドが、収集材208に進入した水3の流路となり、内部の繊維方向がその向きを規定している。収集材208およびリザーバ252が共に水3で完全に飽和していない限り、収集材208は、その側部からの水3の漏出を防ぎつつ、水3に対して画定された流路となる。加えて、収集材208は、試験表面2の所定の面積を覆う接触領域209を含む。
【0023】
支持層207で、隣接する収集材208の表面を完全に覆い、互いに密着した状態にしてもよい。加えて、その2層間の密接な接触を維持するために、収集材208と支持層207との間に接着層を設けて、この2層間の密着状態を維持してもよい。本発明のさらに別の実施形態では、収集材208を支持層207全体にしっかり延伸させて設け、これを接着剤で固定することにより、または、収集材208を抽出領域200の両端で支持板110と接触させる機械的圧縮により、支持層207と収集材208との間の接触状態を維持する。
【0024】
発泡体層204は圧縮性であるが、圧縮力に抵抗する弾力性も有する。換言すると、発泡体層204は事実上伸縮性である。また、支持層207が可撓性であるため、収集材208が試料表面に接触して、抽出領域200に近い支持板110に圧力が加えられると、発泡体層204および支持層207が協働して、収集材208の接触領域209と表面2との間の接触を維持しつつ、一様ではない表面形状に収集材208を確実に追従させる。このようにすれば、接触領域209(およびその所定の接触面積)が多種類にわたる表面2上にも維持されるので、未処理鋼、船体、管類を含む数多くの表面試験環境でよく見られる、変則的な表面の、粗い部分、凹凸部分、湾曲部分、平坦部分についても正確な試験を行うことができる。従って、本発明は、パッチ10と表面2との間に再現可能な接触面積を維持することができ、これにより、例えば所定の単位面積における汚染物質の濃度を正確に判定することができる。
【0025】
試料収集材208は、上述の収集材208を通して水3を毛管流動させつつ、同時に、接触領域209に接触している表面2から塩やその他の成分を抽出できる複数の材料を含むことができる。本発明の一実施形態では、収集材208は吸収性繊維材料の層を1層または複数層含み、これにより、試料表面2からの流れ輸送機構を得て、成分試料を収集する。この他の代表的な収集材208の例として、合成または天然材料で作られた様々なスポンジ様材料、フェルト繊維マット、紙繊維マットまたは紡糸繊維マットを挙げられる。これらは、水と抽出領域200の表面とを連続的に接触した状態に保ちながら、水溶媒3を抽出領域200全体から引き込む適当な毛管力または毛管作用を提供するとともに、粗い凹凸表面への追従に適した材料である。収集材208は、アンプル20から供給される蒸留水で収集材208が飽和するように、毛管層154と流体連通している。収集材208に毛管特性および表面張力特性を持たせれば、収集材208から接触範囲209を介して接触表面2への溶媒3(一実施形態において脱イオン水)の運搬を可能にしつつ、収集材208の縁部からの溶媒3の排出または漏出をさらに防ぐことができる。従って、この溶媒3の損失を防止するため、収集材208に、複数の毛管性繊維を遷移領域から収集領域250へ方向づけて含めることができる。
【0026】
さらに、収集材208を、吸収性繊維またはそれと同等の材料で構成することも可能である。この材料は、収集材208の側面から、および収集材208と接触範囲209で接触している表面2の領域周辺からの流体3の流出を防ぎつつ、収集材208の前方部(遷移領域150に近接した部分)からその後方部(収集領域250に近接した部分)までの流体3の流動、および収集材208と接触している表面2のあらゆる領域における流体3の流出入を可能とするものである。本発明のこの特徴により、流体3が表面2から「失われる」すなわち漏出するために、表面上に存在する成分が減少し、成分濃度の測定値が不正確になることを確実に防ぐことができる。本発明の一実施形態では、収集材208を吸収性繊維のパッドで構成して、水または溶媒3を収集材208内に引き込み、かつ収集材208内を通過させる。
【0027】
次に、図6、図7および図8を参照すると、本発明は、粘着片300をさらに有する。粘着片300は、接着剤材料の層または被覆材を一方の側に有する、プラスチック材料による可撓性片を含む。この粘着片300が試験パッチ10および表面2の両方に接触して、表面2にパッチ10を固定する。より具体的には、図8に図示するように、粘着片300は、接着剤によって表面2に固定される2つの端部302を有し、中央部分304が、接着剤によって、抽出領域200の直上の支持板110に固定される。従って、粘着片300を用いれば、粘着片300を(抽出領域200の直上の)支持板110上に表面2上で押し付けるだけで、抽出領域200の接触範囲209を表面2に密着させることになる。粘着片300を、好ましくは、試験パッチ10の長手方向軸に対して直角に配置する。
【0028】
粘着片300は伸縮性または弾力性であるため、接触範囲209が表面2と接触し続けるように、抽出領域200全体に圧力を加えながら、端部302にて表面2と接触し続ける。加えて、発泡体層204および支持層207が、接触範囲209全体に正確かつ均等に力を分配するように作用するので、粘着片300は、収集材208と表面2との間の接触を維持する単純かつ効果的な機構となる。当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく、粘着片300の代わりに、種々の挟持機構または弾性機構を使用可能であることが理解されよう。また、本発明の一実施形態では、粘着片300に、粘着片300を使用する段階まで粘着片300を覆ってその接着剤を保護する接着剤剥離層306、例えばプラスチック薄膜を設ける。
【0029】
抽出領域200は、収集領域250へと移行して収集領域250に接続されている。収集領域250で、水3(または他の溶媒)の溶液および抽出された塩(または他の成分)が収集され、さらに分析される。収集領域250は、流体リザーバ252を備え、その容量を、抽出領域100内の流体を超える大きさにすることができる。本発明のこの特徴により、抽出領域200から収集領域250へと正の流体流動が可能となり、これにより、さらに安定した試料が得られる。本発明の一実施形態では、リザーバ252は、抽出領域200に収容できる流体体積の10倍の容積である。リザーバ252が収集材208と接触してこれと流体連通していることにより、抽出領域200と収集領域250との間に流体輸送路が得られる。毛管層154および流体リザーバ252の寸法および表面張力特性が、溶媒3、ひいては抽出された塩またはその他の成分を収集材208から引き抜き、流体リザーバ252内へ流入させる駆動力となる。
【0030】
本発明の別の実施形態では、リザーバ252は、抽出領域200から収集領域250への流体流動を補助し、かつ試験をする溶媒3試料を含有する収集材208または同等の繊維マット収集材を含む。リザーバ252内に収集された流体3は電気層254と接触する。電気層254は、リザーバ252内に収集された溶液3を分析するために複数の電極258が印刷または積層された基板256を備えるものであればよい。電極258を信号生成装置または読取り装置(図示せず)に接続しやすくするように、電気層254は支持板110とリザーバ252との間あたりに配置されていればよい。本発明の一代替実施形態では、電気層254を支持板110上に直接印刷または積層して組立て易さを向上させるとともに材料費を削減する。最後に、試験パッチ10を組立て易くするため、リザーバ252および電気層254を防水性プラスチック膜260内に封入してもよい。本発明の一実施形態では、読取り装置(図示せず)への電気的接続を容易にするために、電極258の一部を膜260で覆わない状態に残してもよい。
【0031】
図1において最も明らかなように、毛管流路270が支持板110内に設けられてリザーバ252と接触している。これにより、流体3は、毛管流路270を通り、毛管流路270内に位置する染料スポット272を横切って流動する。毛管流路270、染料スポット272および電気層254を、孔274を設けた防水プラスチック層276で覆うことができる。孔274は、リザーバ252に水を充填している間、空気を逃す役割を果たす。染料スポット272は例えば少量の蛍光染料を含んでいてもよい。リザーバ252に水を充填している間、毛管流路270の一端において孔274は空気を逃すことができる。リザーバ252が水3で充填されると、水が毛管流路270内に引き込まれるため、染料が染料スポット272から毛管流路内を上昇する。従って、この染料の筋または線が、技師またはユーザに対して、リザーバ252が満杯になり、試験パッチ100の分析または読取り段階にあることを示す視覚的な指標となる。本発明の別の実施形態では、電気層254は、追加電極280を、毛管層270を横切って互いに近接して配置して含む。本発明のこの実施形態では、毛管流路270が水を含み、試験パッチ100が分析段階にあることを確認するために、電極280間で信号の生成が可能である。
【0032】
本発明の別の実施形態では、可撓性ワイヤまたは同様の材料を装置10全長のかなりの部分で長手方向に設け、その部分を、取り付ける表面に追従しやすい形状に撓曲または屈曲させる。例えば、そのワイヤを折り曲げるだけで、アンプル20および遷移領域150の一部を、水が確実に抽出領域200へ流れるように方向づけることができる。
【0033】
操作時は、アンプル20を遷移領域150の端部152に差込み、水が毛管層154を通って抽出領域200内へ流入するようにして装置を使用する。接着剤剥離層306を外した後、粘着片300および収集材208が表面2と接触するようにして、試験パッチ装置10を試験対象である表面2上に固定する。あるいは、粘着片300で試験パッチ装置10を試験表面2上に固定するのは、アンプル20を遷移領域150の端部152に差込む前でもよい。水3および収集された塩は毛管層154を通って収集材208内へ流入し、さらにそこからリザーバ252内へ流入する。染料スポット272が毛管流路270への流体の流入を示したら、試験パッチ装置10を表面から取外す。これと同時に、電極258が読取り装置に電気接続されるため、当技術分野で広く知られているように、読取り装置から電極258へ既知の電気信号が発せられ、検出された信号の減衰量よりリザーバ252に収容された溶液の導電率が計算される。
【0034】
試験対象の表面上に付着した塩およびその導電率の測定について本発明の説明を行ったが、当業者であれば、本発明の試験パッチ100内の電気層254には、本発明の範囲から逸脱することなく、種々の印刷されたセンサおよび電極を使用可能であることが理解されよう。一例として、本発明の装置および方法を用いて取得した成分データの温度補正を行うために、電気層254内にサーミスタを含めることができる。これは、成分データの測定が温度感知式である場合、または試験対象の成分が多数ある場合に特に有用である。
【0035】
本発明のさらに別の実施形態では、リザーバ252または遷移領域150に化学試薬をドープまたは注入して、所定の化学反応で特定成分を選択的に反応させる。一実施形態では、使用している溶媒の色を試薬で変化させて、塩化物のような特定成分の有無を視覚的に確認できるようにする。あるいは、試験パッチ100が、抽出溶液中の選択成分だけを測定するように、リザーバ252または遷移領域150にドープした化学試薬で抽出溶液を変性してもよい。
【0036】
以上、本発明を、その好ましい実施形態と考えられる例を用いて本明細書に図示および説明し、本発明によって得られる、先行技術よりも優れた効果および利点を例示した。しかし、本発明は上述した特定の実施形態に限定されるものではない。従って、本願明細書に図示および説明した本発明の形態は、例示のみを目的としていると解釈すべきであり、本願明細書に添付の請求項に記載の本発明の範囲から逸脱しない範囲で、他の実施形態を選択することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体源を用いて表面上の成分の試料を採取する試験パッチ装置であって、
流体を前記流体源から送出するための毛管層を有する遷移領域と、
前記流体を収容するための前記毛管層と流体連通した収集材を有して、前記表面と接触する抽出領域と、
前記流体を自領域に流入させるために前記抽出領域の前記収集材と流体連通したセンサリザーバを内部に有する収集領域と、
を有する試験パッチ装置。
【請求項2】
前記センサリザーバに電気信号を印加してその内部にある前記流体の導電率を判定するための、前記センサリザーバと接触している複数の電極をさらに有する、請求項1に記載の流体源を用いて表面上の成分の試料を採取する試験パッチ装置。
【請求項3】
前記遷移領域の前記毛管層を包囲する少なくとも1層の防水層をさらに有する、請求項1に記載の試験装置。
【請求項4】
前記遷移領域、前記抽出領域および前記収集領域を固定する支持板をさらに有する、請求項1に記載の試験装置。
【請求項5】
前記装置の全長に延在する防水支持板をさらに有する、請求項4に記載の試験装置。
【請求項6】
前記センサリザーバに電気信号を印加してその内部に収容された前記流体の導電率を判定するための、前記センサリザーバと接触し、かつ前記センサリザーバと前記支持板との間に位置する複数の電極をさらに有する、請求項5に記載の試験装置。
【請求項7】
流体を前記収集材から前記センサリザーバへ輸送するための、前記収集材および前記センサリザーバと接触している流体輸送層をさらに有する、請求項4に記載の試験装置。
【請求項8】
前記抽出領域が、前記収集材に接触した独立発泡体層を有して、前記収集材および前記発泡体層が凸凹表面に追従できるようにした、請求項1に記載の試験装置。
【請求項9】
前記収集材の規定領域を前記表面に対して均等に圧縮するための、前記収集材と前記発泡体層との間に配置された防水性支持シムをさらに有する、請求項8に記載の試験装置。
【請求項10】
前記収集材が、流体を前記収集材の前方部から後方部へ、さらに前記収集材に接している前記表面のあらゆる領域との間を流出入させると同時に、前記収集材の側部、および前記収集材に接触している前記表面領域の周囲からの前記流体の流出は防止する、請求項1に記載の試験装置。
【請求項11】
前記遷移領域から前記収集領域までの前記流体の流動が、前記遷移領域の毛管層、前記収集材および前記センサリザーバの毛管作用および吸収性能によって制御される、請求項10に記載の試験装置。
【請求項12】
前記抽出領域が、前記装置を前記表面に固定するための、前記収集材の一部を取り囲む接着剤層をさらに有する、請求項1に記載の試験装置。
【請求項13】
前記センサリザーバが、流体を収容するための収集材を内部に有する、請求項1に記載の試験装置。
【請求項14】
前記収集領域を包囲して、前記抽出領域からの流体の漏出を防ぐ防水プラスチック層をさらに有する、請求項1に記載の試験装置。
【請求項15】
前記装置を前記表面に方向付けるための、前記装置の実質的に全長に延伸する可撓性ワイヤをさらに有する、請求項1に記載の試験装置。
【請求項16】
前記リザーバが前記抽出領域の流体体積よりも大きな流体容積を有する、請求項1に記載の試験装置。
【請求項17】
前記リザーバが前記抽出領域の流体体積よりも10倍大きい流体容積を有する、請求項1に記載の試験装置。
【請求項18】
流体を含み、前記遷移領域の前記毛管層と流体連通するアンプルをさらに有する、請求項1に記載の試験装置。
【請求項19】
前記アンプルが、前記遷移領域の任意形状をした端部に係合すると前記流体を放出する密封部材である、請求項18に記載の試験装置。
【請求項20】
前記収集材が繊維製の吸収パッドである、請求項1に記載の試験装置。
【請求項21】
前記電極が可撓性基板上に配置されている、請求項1に記載の試験装置。
【請求項22】
前記毛管層から前記収集材へ、さらに前記収集材から前記センサリザーバへ流体を輸送するため、前記毛管層、前記収集材および前記センサリザーバと接触している流体輸送層をさらに有する、請求項1に記載の試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−533841(P2010−533841A)
【公表日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−516263(P2010−516263)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/069761
【国際公開番号】WO2009/012138
【国際公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(510010344)イノベイティブ プロダクティビティ インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】