説明

試験プレート一時保管装置を備えた自動分析機

【課題】使用していない検査体が残っている試験プレートを一時的に保管することができる試験プレート一時保管装置を備えた自動分析機を提供する。
【解決手段】検体中の被検出物質と反応して発色する検査用試薬部を保持した検査体を一枚のディスク上に複数配置してなる試験プレートAを用いる分析機であって、前記試験プレートの各検査体の試薬部に検体を点着する点着機構40と、検体が点着された試薬部の呈色反応を光学的に測定する光学測定手段87と、前記点着機構による点着位置T6及び前記光学測定手段による測定位置T7に前記試験プレートを移送する移送手段とを備え、全ての検査体を使い切れなかった試験プレートAを一時的に除湿保管する試験プレート一時保管装置82を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体中の被検出物質と反応して発色する検査用試薬部を保持した検査体を一枚のディスク上に複数配置してなる試験プレートを一時的に保管する一時保管装置を備えた自動分析機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、病院等では、尿に含まれる各種成分を分析し、その分析結果から患者の健康状態を判断するために、患者から尿を採取して、これを分析することが行われている。
尿の分析は、大きく分けて定性分析、定量分析及び沈査分析という3種類の分析方法がある。
定性分析は、尿中に特定の成分が存在しているか否かを判断するための分析であり、短冊状の支持体に複数の検査用試薬部を保持した試験紙等の検査体を用意し、この検査体の試薬部に尿を点着させた後、各試薬部の呈色反応を、反射光度法等の光学的手法により測定するように構成された専用の定性分析装置を用いて分析が行われる。
定量分析は、尿中の特性成分の量を測定する分析であり、専用の定量分析装置で分析が行われる。
沈査分析は、尿中の沈査物を測定する分析であり、専用の沈査分析装置及び顕微鏡にて分析が行われる。
上記したように、各分析で専用装置を用いているため、分析の種類毎に尿が入れられた試験管が必要となるが、尿は通常、ハルンカップと呼ばれる紙コップに採取されるため、分析前にハルンカップから複数の試験管に尿を分注する必要がある。
これに関して、出願人は、試験管へ尿を分注せずに定性分析を行うことができ、同時に、必要に応じて、定量分析や沈査分析のためにハルンカップから試験管への尿の分注及び試験管への患者識別ラベルの自動貼付けを行うことができる自動分注機構を備えた定性分析装置を提案した(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−275697号公報
【特許文献2】特願2011−29846
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した自動分注機構を備えた定性分析装置は、細長い支持体に複数の試薬パッドを設けた試験紙を複数枚収容し、収容した試験紙を1枚づつ取り出して点着位置及び測定位置に順次送るように構成されているものであるが、このように、1枚づつ独立した試験紙を順次取り出して送るためには複雑な移送構造が必要になる。また、1枚づつ独立した試験紙の場合、試験紙が小さいので、移送中に試験紙が落下したりずれたりすることがあり、試験紙が無駄になることが多い。また、上記したように試験紙を1枚づつ取り出して点着位置及び測定位置に送る構造だと、試験紙を直列的に送る必要があるので試験紙における呈色反応を経時的に観察することもできない。さらに、1枚づつ独立した試験紙は、検体を点着した時に、試験紙から検体が垂れて装置を汚す可能性がある等、改善の余地があるものであった。
出願人は、上記した問題を解決するために、使い捨てのディスク本体の上に、複数の試薬部を備えた一検体用の検査体を、相互に間隔を開けて放射状に複数配置して成る試験プレートを提案した(特許文献2)。
この試験プレートによれば、一枚のプレート上に一検体用の検査部が複数設けられているので、1枚づつ独立した試験紙を用いていたことによる従来の問題点は全て解決される。
しかし、一度に連続して試験プレート上にある全ての検査体を使用する場合は問題ないが、例えば、試験プレート上に設けられた検査体の数より、検査をすべき検体の数が少ない場合には、使用していない検査体が無駄になってしまうという問題がある。
本発明は、上記した問題点に鑑みて、使用していない検査体が残っている試験プレートを一時的に保管することができる試験プレート一時保管装置を備えた自動分析機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した目的を達成するために、本発明に係る試験プレート一時保管装置を備えた自動分析機は、検体中の被検出物質と反応して発色する検査用試薬部を保持した検査体を一枚のディスク上に複数配置してなる試験プレートを用いる分析機であって、前記試験プレートの各検査体の試薬部に検体を点着する点着機構と、検体が点着された試薬部の呈色反応を光学的に測定する光学測定手段と、前記点着機構による点着位置及び前記光学測定手段による測定位置に前記試験プレートを移送する移送手段とを備えた自動分析機において、全ての検査体を使い切れなかった試験プレートを一時的に除湿保管する試験プレート一時保管装置を設けたことを特徴とする。
前記試験プレート一時保管装置は、内部に吸湿材が設けられたハウジングを有し得、前記ハウジングの底面に開口部が形成され、前記開口部が下方から押し上げ可能な蓋体で密閉的に閉鎖されるように構成され得る。このように構成された試験プレート一時保管装置は、前記移送手段の移送経路中に配置され得、かつ、前記移送手段により試験プレートを蓋体の下方まで移送した後、試験プレートを上昇させると、試験プレート及び/又は移送手段の一部で前記蓋体を押し上げて前記開口部を開放した後、前記試験プレート及び/又は移送手段の一部が前記開口部を密閉的に閉鎖できるように構成され得る。
好ましくは、前記ハウジングの内部には、水分解装置又は加熱装置等の吸湿材を乾燥させる手段が設けられ得る。
また、自動分析装置に、分析に供するための複数の試験プレートを収容する保管装置を設け、前記保管装置の下方に試験プレート取り出し用の開口を設け、該開口がシャッターによって開閉するように構成し、かつ、前記移送手段を、前記保管装置の前記下方の開口から一枚づつ試験プレートを取り出して点着位置及び測定位置に試験プレートを移送するように構成し、前記試験プレート一時保管装置を前記シャッターと一体に設けてもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る試験プレート一時保管装置を備えた自動分析機は、検体中の被検出物質と反応して発色する検査用試薬部を保持した検査体を一枚のディスク上に複数配置してなる試験プレートを用いる分析機であって、前記試験プレートの各検査体の試薬部に検体を点着する点着機構と、検体が点着された試薬部の呈色反応を光学的に測定する光学測定手段と、前記点着機構による点着位置及び前記光学測定手段による測定位置に前記試験プレートを移送する移送手段とを備えた自動分析機において、全ての検査体を使い切れなかった試験プレートを一時的に除湿保管する試験プレート一時保管装置を設けているので、使用していない検査体が残っている試験プレートを、そのまま移送手段で試験プレート一時保管装置に移送して該試験プレート一時保管装置において低湿度状態に保たれた室内で保管することができるため、試験プレートが無駄にならない。
また、前記一時保管装置が試験プレート及び/又は移送手段の一部で前記蓋体を押し上げて前記開口部を開放した後、前記試験プレートが前記開口部を密閉的に閉鎖できるように構成することで、移送手段により自動的に試験プレートを一時保管装置に収容することが可能になる。
前記ハウジングの内部に、水分解装置又は加熱装置等の吸湿材を乾燥させる手段を設けた場合には、吸湿材の吸湿能力を自動的に再生することができるので、一時保管装置内の吸湿材を取り替える必要がなくなる繰り返し一時保管装置を利用することが可能になる。
さらに、自動分析装置に、分析に供するための複数の試験プレートを収容する保管装置を設け、前記保管装置の下方に試験プレート取り出し用の開口を設け、該開口がシャッターによって開閉するように構成し、かつ、前記移送手段を、前記保管装置の前記下方の開口から一枚づつ試験プレートを取り出して点着位置及び測定位置に試験プレートを移送するように構成し、前記試験プレート一時保管装置を前記シャッターと一体に設けることにより、試験プレート一時保管装置を配置するスペースを別途用意する必要がなく、装置全体がコンパクトになる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係る試験プレート一時保管装置を備えた分析機を有する自動分注機構付自動分析装置の各機構のレイアウトを示す概略上面図である。
【図2】分注用試験管供給収容機構20を取り外した状態の分析機を示す概略上面図である。
【図3】ハルンカップ供給収容機構10の概略斜視図である。
【図4】分注用試験管供給収容機構20の概略斜視図である。
【図5】自動分注ユニットの概略斜視図である。
【図6a】先頭のハルンカップ1が読取位置Tにある時のラック11とカップ回転手段18との関係を示す図である。
【図6b】図6(a)の部分拡大図である。
【図6c】読取位置Tにおいてカップ回転手段18によりハルンカップ1が回転させられる状態を示す図である。
【図6d】図6(c)の部分拡大図である。
【図7】(a)〜(c)は分注機構の動作を説明する図である。
【図8】(a)〜(c)は点着機構の動作を説明する図である。
【図9】分析機80の概略斜視図である。尚、この図では光学測定手段は省略されている。
【図10】保管装置82の概略斜視図である。
【図11】保管装置82の背面部分の断面図である。
【図12】試験プレート切り出しユニット83の概略斜視図である。
【図13】シャッターユニット84の概略斜視図である。
【図14】(a)及び(b)は一時保管装置を構成するシャッター84aの断面図である。
【図15】ターンテーブルユニット85の概略斜視図である。
【図16】シュータユニット86の概略斜視図である。
【図17】試験プレートの上面図である。
【図18】(a)は図17におけるA−A断面図、(b)は図17におけるB−B断面図である。
【図19】(a)は図17におけるC−C断面図、(b)は図17におけるD−D断面図、(c)は図17におけるE−E断面図を夫々示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、添付図面に示した一実施例を参照しながら試験プレート一時保管装置を備えた分析機の実施の形態について説明していく。
【0009】
図1は、本発明に係る試験プレート一時保管装置を備えた分析機を有する自動分注機構付自動分析装置(以下、単に自動分析装置と称する。)の各構のレイアウトを示す概略上面図である。
図面に示すように、この自動分析装置は、ハルンカップ供給収容機構10、分注用試験管供給収容機構20、分注機構30、点着機構40、読取機構50、ラベル印字・貼付機構60、及び分析機80を備えている。
前記ハルンカップ供給収容機構10、分注用試験管供給収容機構20、分注機構30、点着機構40、読取機構50及びラベル印字・貼付機構60は一つの自動分注ユニットして構成され、分析機80と分離可能である。前記自動分注ユニットは、分析機80と分離した状態で、独立して自動分注機として動作し得る。
また、分析機80は、点着機構40を付加することで独立した分析機として動作し得る。
自動分注ユニットにおいて、ハルンカップ供給収容機構10と分注用試験管供給収容機構20とは、上下に重ねて配置されている。具体的には、分注用試験管供給収容機構20が、ハルンカップ供給収容機構10の上方に配置されている。
以下、自動分析装置を構成する各機構の構成について詳細に説明する。
【0010】
(ハルンカップ供給収容機構10の説明)
図2は分注用試験管供給収容機構20を取り外した状態の自動分析装置を示す概略上面図、図3はハルンカップ供給収容機構10の概略斜視図、図4は、分注用試験管供給収容機構20の概略斜視図、図5は、自動分注ユニットの概略斜視図である。
前記ハルンカップ供給収容機構10は、
患者の尿が採取された処理前のハルンカップ1をラック11に収容し、ラック単位でハルンカップを収容する処理前カップ収容部12と、
処理前カップ収容部12と並べて配置され、分注や点着等の処理に供された後のハルンカップ1をラック単位で回収して収容する処理後カップ収容部13と、
処理前カップ収容部12及び処理後カップ収容部13に沿って配置され、処理前カップ収容部12から処理後カップ収容部13へハルンカップ1をラック単位で移送するラック移送手段14とを備えている。
処理前カップ収容部12は、上記したハルンカップ用ラック11を複数列並べて収容できるように構成され、収容したラック11を次々にラック移送手段14に供給することができるように構成されている。
ラック移送手段14は、
処理前カップ収容部12及び処理後カップ収容部13に沿ってのび、読取手段によりハルンカップから患者識別情報を読み取るための読取位置T1及び分注点着機構40によりハルンカップから尿を吸引するための吸引位置T2を通過する移送用通路15aと、
前記移送通路15aに沿ってのび、処理前カップ収容部12から該通路15上に供給されたラック11を、それに収容されたハルンカップ単位で処理後カップ収容部13に向けて動かす爪付無端コンベア15bと
を有し、
最終的に、ラック11を通路15から処理後カップ収容部13に押し出すことができるように構成されている。
処理後カップ収容部13には、上記したハルンカップ用ラック11を複数列並べて収容できるように構成されている。
尚、図中、符号17は緊急カップ供給ユニットを示しており、この緊急カップ供給ユニットは、緊急時に処理前カップ収容部12に収容されていないハルンカップ用ラックを移送用通路15に供給するために用いられる。
【0011】
(カップ回転機構の説明)
前記ハルンカップ供給収容機構10は、読取位置T1において、ハルンカップ用ラック11と協動してハルンカップ1を回転させるカップ回転手段18を備えている。
図6(a)は、先頭のハルンカップ1が読取位置Tにある時のラック11とカップ回転手段18との関係を示す図、図6(b)は図6(a)の部分拡大図、図6(c)は読取位置Tにおいてカップ回転手段18によりハルンカップ1が回転させられる状態を示す図、そして図6(d)は図6(c)の部分拡大図である。
図3、図5及び図6に示すように、ラック11は、上板11a、底板11b、前板11c及び後板11dから成り、側面が開放されている。
上板11aには、ハルンカップ1を挿入可能な開口11eが形成されている。この開口11eの直径は、ハルンカップ1の底面の直径より大きく、かつ、ハルンカップ1の上面の直径より小さくされている。これにより、テーパー状に形成されたハルンカップ1を、この開口11eから挿入すると、ハルンカップ1の上部がこの開口11eで保持される。
底板11bには、ハルンカップ1の底面より直径が小さい開口11fが形成されている。また、底板11bより上方には、規制板11gが設けられており、この規制板11gには、ハルンカップ1の底面より直径が大きい開口11hが形成されている。
各開口11fには、回転用ディスク11iが設けられている。この回転用ディスク11iは、ハルンカップ1が載せられる上側部分11jと、底板11bに移動可能に嵌め込まれる下側部分11kとから成る。上側部分11jの寸法は、ハルンカップ1が搭載可能であり、かつ、規制板11gに設けられた開口11hを通らない寸法である。具体的には、例えば、上側部分11jは、ハルンカップ1より大きい直径を有し、かつ、規制板11gに設けられた開口11hより大きい直径部分を有し得る。
回転用ディスク11iの下側部分11kの直径は、底板11bに形成された開口11fの直径とほぼ同じか、それより僅かに小さい。
また、回転用ディスク11iの下側部分11kの厚みは、回転用ディスク11iが上方に持ち上げられて規制板11gで規制された時でも、下側部分11kが底板11bの開口11fから外れないように設定される。
カップ回転手段18は、移送通路15aの読取位置T1に設けられている。
カップ回転手段18は、読取位置T1においてラック1の回転用ディスク11iを下方から押し上げながら回転させるように構成されている。
このように回転用ディスク11iを下方から押し上げながら回転させるように構成することにより、カップ回転手段18を回転用ディスク11iに係合させるための特別な構成、具体的には、摩擦係合、キー係合又は磁力係合させるための構成を必要としないのでカップ回転手段18及び回転用ディスク11iの構造を簡単化することが可能になる。
しかし、カップ回転手段18の構成は本実施例に限定されることなく、回転用ディスク11iに下方から摩擦係合、キー係合又は磁力係合するように構成し、回転用ディスク11iを押し上げることなく回転させるように構成してもよいことは勿論である。
また、この実施例では、ハルンカップ用ラック11に回転用ディスク11iを設けて、カップ回転手段18が前記回転用ディスク11iを介してハルンカップ1を回転させるように構成されているが、この構成は本実施例に限定されることなく、例えば、回転用ディスク11iを設けずに、ハルンカップ1を直接持ち上げて回転させるように構成してもよい。この場合には、規制板11gは必ずしも必要ではない。
【0012】
(試験管供給収容機構20の説明)
試験管供給収容機構20は、
分注処理前の複数の空の試験管2を収納した試験管用ラック21を収納する分注前試験管収容部22と、
前記分注前試験管収容部22と並べて配置され、分注後の試験管2を前記ラック単位で回収して収容する分注後試験管収容部23と、
分注前試験管収容部22及び分注後試験管収容部23に沿って配置され、分注前試験管収容部22から分注後試験管収容部23へ試験管2をラック単位で移送するラック移送手段24とを備えている。
前記分注前試験管収納部22は、ラック21を複数列並べて収納できるように構成されており、収容されたラック21をラック移送手段24の移送通路25上に押し出すように構成されている。
ラック移送手段24は、
分注前試験管収納部22から分注後試験管収容部23までのび、ラベル印字・貼付機構60により患者識別ラベルの貼付けを行うラベル貼付及び読取位置T3と、分注点着機構40により分注を行うための分注位置T4とを通過する移送通路25を有し、分注前試験管収納部22から該通路25上に供給されたラック21を、それに収容された試験管単位で分注後試験管収容部23に向けて動かし、最後に、ラック21を通路25から分注後試験管収容部23に押し出すことができるように構成されている。
前記移送通路25は、ハルンカップ収容供給機構10の移送通路15と平行に配置されている。
分注後試験管収容部23は、分注後の試験管をラック単位で複数列収容できるように構成されている。
尚、図中、符号27は緊急試験管供給ユニットを示しており、この緊急試験管供給ユニットは、緊急時に分注前試験管収容部12に収容されていない試験管用ラック用ラックを移送用通路25に供給するために用いられる。
【0013】
(レイアウトの説明)
上記したように構成された分注用試験管供給収容機構20は、その両側に一対の脚部26を有し、該脚部26がハルンカップ供給収容機構10上に搭載され、これにより、分注用試験管供給収容機構20は、ハルンカップ供給収容機構10の上方に重ねた状態で配置される。
また、分注用試験管供給収容機構20の奥行き寸法は、ハルンカップ供給収容機構10の奥行き寸法より小さくされ、ハルンカップ供給収容機構10及び分注用試験管供給収容機構20を雛壇状にレイアウトして使用することを可能にしている。ハルンカップ供給収容機構10及び分注用試験管供給収容機構20を雛壇状にレイアウトすることにより、使用者は、同じ位置に立ってハルンカップ及び又は試験管の追加作業や取出し作業を行うことができるようになる。
また、好ましくは、ハルンカップ供給収容機構10は、基礎台(符号なし)の上に、前後にスライド可能に設けられており、必要に応じてハルンカップ供給機構10を手前に引き出してメンテナンスを行うことができるように構成され得る。
【0014】
(分注機構30及び点着機構40の説明)
分注機構30及び点着機構40は、ハルンカップ供給収容機構10及び分注用試験管供給収容機構20に沿って配置されている。
分注機構30は、上下に昇降可能な軸31と、一端が軸31に固定され軸31を中心に回動可能なノズル部材32と、ノズル部材32用の洗浄ポット33とを有する。
分注が必要な時に、ノズル部材32は、吸引位置T2にあるハルンカップ1から尿を吸引した後(図7(a)参照)、軸31によってハルンカップ1から引き上げられた後、さらに上方にある分注用試験管供給収容機構20まで上昇され、分注位置T4にある試験管2に吸引した尿を分注し(図7(b)参照)、その後、洗浄ポット33で洗浄される(図7(c)参照)。
点着機構40は、上下に昇降可能な軸41と、一端が軸41に固定され軸41を中心に回動可能なノズル部材42と、ノズル部材42用の洗浄ポット43とを有する。
点着が必要な時に、ノズル部材42は、吸引位置T2にあるハルンカップ1から尿を吸引した後(図8(a)参照)、軸41によってハルンカップ1から引き上げられ、分析機構80の点着測定位置T5にある試験プレートAに尿を点着する(図8(b)参照)。この時、ノズル部材42による点着は、後述する85aと協働して点着開始位置T6にある検査部A9の全ての試薬部A11に対して行われる。点着が終了した後、ノズル部材42は洗浄ポット43で洗浄される(図8(c)参照)。
【0015】
(読取機構50の説明)
次に、読取機構50について説明する。
読取機構50は、ハルンカップ用の読取機構51と試験管用の読取機構52とを有する。
ハルンカップ用の読取機構51は、ハルンカップ供給収容機構10における読取位置T1に対応する位置に設けられている。ハルンカップ1には、予め、そのハルンカップ1に採取された尿に対応する患者を識別可能な識別情報がバーコードで印字されたラベルが貼り付けられている。
読取機構51は、読取位置T1において、前記カップ回転手段18によってハルンカップ1が回転されている間に、ハルンカップ1に貼り付けられたバーコードを読み取るように構成されている。
試験管用の読取機構52は、分注用試験管供給収容機構20におけるラベル貼付及び読取位置T3に対応する位置に設けられている。試験管用の読取機構52は、試験管2を回転させながら試験管2に貼り付けたラベルのバーコードを読み取るように構成されており、試験管2の回転中に後述するラベル印字・貼着手段60によって試験管2に患者の情報をバーコード(及び文字)の形態で印字したラベルを貼り付け、同時に、試験管2に貼り付けたラベルの情報を読み取る。
【0016】
(ラベル印字・貼付機構60の説明)
試験管供給収容機構20における分注前試験管収容部22と分注後試験管収容部23との間には、ラベル印字・貼付機構60が設けられている。
このラベル印字・貼付機構60は、ハルンカップ用の読取機構51でハルンカップ1のバーコードから読み取った患者の識別情報に基づいて、ラベルに前記患者の識別情報をバーコード(及び文字)の形態で印字した後、ラベル貼付及び読取位置T3にある試験管2の表面に印字済ラベルを貼り付けるように構成されている。
【0017】
(分析機80の説明)
分析機80は、本発明に係る試験プレート一時保管装置を備えた分析機であり、自動分注ユニットとは別のユニットとして構成され、自動分注ユニットに並べて配置して使用される。
図1、図2及び図9に示すように分析機80は、フレームユニット81の上に、保管装置82、試験プレート切り出しユニット83、シャッターユニット84、ターンテーブルユニット85、シュータユニット86及び光学測定手段87を配置してなる。
図10は保管装置82の概略斜視図である。図面に示すように、保管装置82は、試験プレートAを複数枚積み重ねて収容することができるように構成された密閉室を形成するハウジング82aを備え、ハウジング82aのその前面に試験プレートAの補充用のドア82bがあり、その底面に試験プレートAを排出するための開口82cが形成されている。
また、ハウジング82aの背面には除湿ユニット82dが設けられている。
図11は、除湿ユニット82dを含むハウジング82aの背面部分の概略断面図である。
図面に示すように除湿ユニット82dは、例えばシリカゲルから成る吸湿材82eと、吸湿材82eに隣接して配置された除湿装置82fとから成る。
前記除湿装置82fは、固体高分子電解質膜82gと、該固体高分子電解質膜82gを挟むように配置された多孔性電極(陽極)82h及び多孔性電極(陰極)82iとから成り、多孔性電極(陽極)82h及び多孔性電極(陰極)82iに直流電圧を印加することにより、多孔性電極(陽極)82hで吸湿材82e側(即ち、密閉室内)の湿気を水素イオンと酸素に分解する。そして、分解された水素イオンは固体高分子電解質膜82g内を移動して多孔性電極(陰極)82iにおいて密閉室の外の空気中の酸素と反応して水分子となって放出される。
試験プレートAの取り出し又は補充のためにドア82b又はシャッターユニット84が開かれ保管装置82の密閉室内の湿度が上がると、始めに吸湿材82eにより湿気が急速に吸収されて密閉室内の湿度を急速に下げ、その後、除湿装置82fが吸湿材82eの湿気を水分解して密閉室の外に放湿する。これにより、吸湿材82eが乾燥して吸湿能力が再生されるため、繰り返しドア82b又はシャッターユニット84が開かれ保管装置82の密閉室内の湿度が上昇しても、その都度、吸湿材82eにより急速な吸湿が行われ、密閉室内は常に低湿度状態に保たれる。
ところで、吸湿材を再生するために吸湿材を加熱する場合、吸湿材の加熱により湿度の高い空気が発生するため、それを外部に排気しなければならない。このため、従来は、吸湿材がある部屋と低湿度に保つ部屋とを区画して、低湿度に保つ部屋の除湿の時には吸湿材がある部屋と低湿度に保つ部屋とを開放して、低湿度に保つ部屋の空気を積極的に吸湿材がある部屋に取り込むために密閉室全体の空気をファン等で循環させる必要があったが、試験プレートAのように検体中の被検出物質と反応して発色する検査用試薬部を保持した試験紙のような検査体を含む物を保管する場合には、空気の循環により試薬部に湿度の高い空気が触れる時間が長くなり、そのことが試薬部を劣化させる原因になるため室内の空気を循環させることは望ましくない。
これに対して、除湿装置82fは、固体高分子電解質膜82gを介した電極82hから電極82iへの水素イオンの移動により湿気を外部に放湿するので、吸湿材82eを再生する時に、吸湿材82eの周囲に高湿度の空気が発生させない。従って、本実施例の保管装置82では、密閉室内の空気をファン等で循環させることなく吸湿材82eを再生しながら密閉室内を低湿度に保つことが可能になるため、試薬部を劣化させることなく試験プレートAを保管することが可能になる。
【0018】
上記したように構成された保管装置82の内部には試験プレート切り出しユニット83が設けられている。図12は試験プレート切り出しユニット83の概略斜視図であり、図面に示すように、この試験プレート切り出しユニット83は、積み重ねて収容された試験プレートAのフランジA3に係止して試験プレートAを保持する一対の爪83aを有し、後述するシャッターユニット86と連動して、爪83aを用いて、積み重ねられた試験プレートAを一番下から一枚づつ下方へ排出するように構成されている。図中、符号83bは、最下位置にある試験プレートを検出するセンサを示し、符号83cは、最下位置の一つ手前にある試験プレートを検出するセンサである。
【0019】
シャッターユニット84は、保管装置82の下方に配置されており、保管装置82の開口82cを開閉するシャッター84aを有する(図13参照)。
このシャッターユニット84における前記シャッター84aは、本発明に係る試験プレート一時保管装置も構成している。
図14(a)は、シャッター84aの断面図を示している。
図面に示すように、シャッター84aは、内部に密閉空間が形成されたハウジング84bを備えている。このハウジング84bは、内部が中間壁84cによって上下の二つの部屋に区画されており、上室の上蓋84dは取り外し可能であり、装着時には保管装置82の開口82cを開閉するシャッターとして機能する。
中間壁84cには、先に説明した除湿装置82fと同様の構成の除湿装置84eが配置され、さらに下室の内部には吸湿材84fが配置されている。これにより、下室の内部の湿気は吸湿材84fによって吸湿され、吸湿材84fの湿気は除湿装置84eによって上室に放湿されるため、下室は常に低湿度状態に保たれる。上室は上蓋84dを定期的に外すことにより換気される。
下室の底面には、試験プレートAを下側から押し当てることにより、後で詳述する試験プレートAのディスク本体A2が嵌合可能な寸法の開口84gが形成されており、この開口84gを密閉的に塞ぐように内側から底蓋84hが載置されている。底蓋84hの裏面には、下方に伸びるフランジ84iが設けられている。
図中、符号84j及び84kは、開口84gを囲むように設けられたOリングである。
上記したように構成された一時保管装置を構成するシャッター84aによれば、通常は、底蓋84hが開口84gを塞いでハウジング84bにおける下側の部屋は密閉され、該部屋は吸湿材84f及び除湿装置84eによって低湿度状態に保たれる。
後述するターンテーブルユニット85によって、使用していない試験紙(検査体)が残っている試験プレートAを載せたままのターンテーブル85aが、シャッター84aの下方に移送され、その後上昇されると、試験プレートAが底蓋84hのフランジ84iに当接して底蓋84hを押し上げ、試験プレートAのディスク本体A2が開口84gに嵌合され、試験プレートAのフランジA3とOリング84kでハウジング84bにおける下側の部屋が密閉される(図13(b))。この状態において、試験プレートAのディスク本体A2は、密閉されたハウジング84bにおける下側の部屋に位置する。ハウジング84bにおける下側の部屋は、開口84gが一時的に開放され、かつ、ディスク本体A2が入ってきたことにより湿度が上昇するが、吸湿材84fにより急速な吸湿が行われ、室内は低湿度状態に保たれる。また、この実施例では、除湿装置84eが設けられているので、時間の経過と共に吸湿材84fは除湿装置84eの作用で乾燥して再利用可能な状態になる。
上記したように、保管装置82のシャッターを構成するシャッターユニット84に、一時保管装置を設けることにより、使用していない試験紙(検査体)が残っている試験プレートAを一時的に低湿度状態に保たれた密閉室で保管しておくことが可能になり、試験プレートAを効率よく使用することが可能になる。
尚、この実施例では、一時保管装置にも除湿装置84eを設けているが、一時保管装置は一時的に試験プレートAを保管しておくためだけのもので、試験プレートAを保管していない時間に開放して換気をすることも可能であるため除湿装置84eは必ずしも必須ではない。また、前記したように一時保管装置は試験プレートAを保管していない時間があるため、例えば、加熱手段からなる除湿装置を設けて、吸湿材84fを加熱乾燥して再生するように構成してもよい。
また、この実施例では、試験プレートAで底蓋84hを押し上げ、試験プレートAのディスク本体A2が開口84gに嵌合され、試験プレートAのフランジA3とOリング84kでハウジング84bにおける下側の部屋を密閉するように構成されているが、この構成は本実施例に限定されることなく、例えば、ターンテーブルユニット85等で底蓋84hを押し上げて、開口84gを密閉的に塞ぐように構成してもよい。
【0020】
ターンテーブルユニット85は、試験プレートAを載せて回転可能なターンテーブル85aと、ターンテーブル85aを、保管装置82の下方位置から図1及び図2に示す点着測定位置T5まで水平方向に移動可能な横送り機構85bと、ターンテーブル85aを上下に昇降可能な昇降機構85cとを有する(図15参照)。
シュータユニット86は、図16に示すように、試験プレートAを搭載できる幅に配置された一対のコンベア86aを有する。
光学測定手段87は、点着測定位置T5の上方に配置され、尿が点着された試験プレートAの呈色反応を光学的に測定する。
【0021】
ここで、上記した分析機80で用いられる試験プレートAの構造について簡単に説明していく。
図17は、試験プレートの一実施例の上面図であり、図18(a)は図17におけるA−A断面図、図18(b)は図17におけるB−B断面図である。また、図19(a)は図17におけるC−C断面図、図19(b)は図17におけるD−D端面図、図19(c)は図17におけるE−E断面図を夫々示している。
これらの図面に示すように、試験プレートAは、周囲に下方に延びる外周壁A1が形成された円盤状のディスク本体A2を有する。また、外周壁A1の下端には径方向外方に伸びるフランジA3が形成されている。
試験プレートAの中心には、自動分析機のターンテーブル85aに係止する係止部A4が形成され、この係止部A4を囲むようにドーナツ状の溝A5が形成されており、このドーナツ状の溝A5の周囲にはドーナツ状の突起A6が形成されている。
【0022】
試験プレートAのディスク本体A2の上面には、放射方向に伸びる細長い凹部から成る検査部A9が相互に間隔をあけて複数形成されている(本実施例では22個)。各検査部A9を形成する凹部の側壁には、内部に試験紙を収容して保持するように複数の突起A10が形成されている。
各検査部A9には、検体中の被検出物質と反応して発色する試薬を担持した複数の検査用試薬部A11をストリップ上に設けて成る試験紙A12が取り付けられており、各検査部A1が一検体用の検査部として機能する。尚、図19においては試験紙A12は省略されているが、基本的には、全ての検査部A9に試験紙A12を装着して用いられる。
さらに試験プレートAのディスク本体A2には、電子コード化した個別識別子をバーコードの形態等で印字したラベルA13が貼り付けられている。また、前記ラベルA13には、光学測定用の内部標準となる色見本も印刷され得る。前記個別識別子には、個々の使い捨て試験プレートAを識別可能な識別情報に加えて、色見本が印刷されている場合には、色見本(光学測定用の内部標準となる色見本)に関する色情報が含まれ得る。色見本の色情報は、具体的には、例えば、RGB値及び明暗値であり得る。
尚、この実施例では、個別識別子及び色見本を印字したラベルA13をディスク本体A2に貼り付けているが、個別識別子及び色見本は、ディスク本体A2に直接印字してもよく、また、個体識別子はタグ等で構成してもよい。
【0023】
試験プレートAは、その中央部分と、その外周部分とのそれぞれ係止部を有する。
試験プレートAの中央部分に設けられたドーナツ状の溝A5の側壁には、径方向内方に突起する内側係止部A7が不当間隔で4箇所に形成されている(図17及び図18参照)。これらの内側係止部A7は図18に示すように、溝A5の側壁の高さ方向中間位置から下端まで、側壁の高さ方向に沿って略垂直にのびるように形成されている。
また、試験プレートAの外周壁A1には、径方向内方に凹む溝状の外側係止部A8が不当間隔で12箇所に形成されている。これらの外側係止部A8は、外周壁A1の高さ方向に沿って外周壁A1の上端から下端までのびるように形成されている(図17及び図19参照)。これら外側係止部A8は、前記したように隣接する外側係止部A8間の間隔が不等間隔である。
【0024】
この実施例では、上記したように構成された試験プレートAと、試験プレートAとは内側係止部A7及び外側係止部A8との間隔が異なる第二の試験プレート(図示せず)とを交互に重ねた集合体が保管装置82に収容されて用いられる。
【0025】
上記したように、係止部A7及びA8を設けることにより、試験プレートAを積み重ねた時に、上側の試験プレートAの溝A5の底面が下側の試験プレートAの内側係止部A7の上に載り、上側の試験プレートAの外側係止部A8が下側の試験プレートAのディスク本体A2の上に載り、上下の試験プレートAが完全に嵌り合うことがない。
また、係止部A7及びA8を不等間隔に設けた二種類の試験プレートAを交互に積み重ねて使用しているため、上側の試験プレートAの係止部A8の位置と、下側の試験プレートAの係止部A8の位置が全て合致してしまう可能性はなく、よって、試験プレートを複数枚重ねた試験プレート集合体に上方又は下方から力が加えられても、上下の試験プレートが相互に嵌り合うことはない。
また、何らかの原因で、同一種類の試験プレートAが連続して重ねられたとしても、係止部A7及びA8を不等間隔に設けているので、上側の試験プレートAの係止部A8の位置と、下側の試験プレートAの係止部A8の位置が全て合致してしまう可能性は極めて低い。
さらに、全ての内側係止部A7が溝A5の側壁の高さ方向中間位置から下端まで、側壁の高さ方向に沿って略垂直にのびるように形成され、外側係止部A8が外周壁A1の高さ方向に沿って上端から下端までのびるように形成されているため、成形時に係止部が型に引っかかることがなくなるため離型性が良好になり、大量生産が可能になる。
【0026】
上記したように構成された分析機80の作用を簡単に説明する。
ドライボックス82の内部には、予め複数の試験プレートAが複数枚積み重ねて収容されている。
この時、ターンテーブル85aは、保管装置82の下方に位置し、シャッターユニット84のシャッター84aは閉じた状態にされ、試験プレート切り出しユニット83の爪83aは、最下位置にある試験プレートAに係止している。
装置が作動すると、試験プレート切り出しユニット83の爪83aが最下位置にある試験プレートAを解放する。それにより、積み重ねられた試験プレートAは全体が下方に落下し、最下位置にある試験プレートAはシャッターユニット84のシャッター84aの上に載る。この状態で、試験プレート切り出しユニット83の爪83aが最下位置より一つ手前にある試験プレートに係止して、当該試験プレートAを保持する。
この時、同時にターンテーブルユニット85の昇降機構85cがターンテーブル85aを、シュータユニット86のコンベア86aより上方まで上昇させる。
この状態で、シャッターユニット84がシャッター84aを開き、シャッター84aの上に保持された最下位置にある試験プレートをターンテーブル85a上に落とす。
ターンテーブル85a上に試験プレートAが載ると、シャッターユニット84はシャッター84aを閉じ、ターンテーブルユニット85の横送り機構85bがターンテーブル85aを点着測定位置T5まで移動する。このシャッター84aの開閉動作により保管装置82内の湿度は一時的に上昇するが、吸湿材82eにより急速な吸湿が行われ、保管装置82の密閉室内は常に低湿度状態に保たれる。また、吸湿材82eは除湿装置82fの作用で時間の経過と共に乾燥し吸湿可能な状態に再生される。
ターンテーブルユニット85は、試験プレートAが点着測定位置T5にセットされると、点着が行われる前に試験プレートAを回転させる。光学測定手段87は、試験プレートAの個体識別子の情報を読み取り、試験プレートAの識別情報を記憶すると共に、各検査部A9の各試薬部A11の色を光学的に測定し、劣化により使用不能な検査部A9の有無を確認する。使用不能な検査部A9が見つかった場合には、その使用不能な検査部A9を飛ばして点着測定を行うようにターンテーブルユニット85及び点着機構40を動作させるか、又は、使用不能な検査部A9を不図示のモニター等で使用者に表示して、その検査部A9の試験紙A12を交換するよう使用者に促す。また、光学測定手段87は、試験プレートAに光学測定用の内部標準となる色見本が設けられている場合には、試験プレートAの色見本及び個体識別子に含められた色見本の色情報を読み取り、読み取った情報に基づいて校正を行う。
試験プレートAの事前チェックの終了後、点着機構40とターンテーブルユニット85とを連動して動かして、点着位置T6にある検査部A8の試薬部A11に対して一検体の点着が行われる。
ターンテーブルユニット85は、一つの検査部A8における試薬部A11に対する点着が完了すると、試薬プレートAを回転させる。そして、検査部A8が光学測定手段87による測定位置T7を通過する時に、光学測定手段87は、例えばCCD等を用いて検査部A8の各試薬部A11の呈色反応を光学的に測定する。
ターンテーブルユニット85は、試薬プレートAを一回転させた後、前に点着が行われた検査部A8の次の検査部A8を点着位置T6で停止させる。
その後、点着機構40とターンテーブルユニット85とを連動して動かして、次の検体の点着が開始され、該検体の点着が完了すると、ターンテーブルユニット85は再び試験プレートAを回転させる。この回転の間に、前に点着が行われた検査部A8と、次に点着が行われた検査部A8は共に測定位置T7を通過する。光学測定手段87は、測定位置T7を通過する両方の検査部A8の各試薬部A11の呈色反応を光学的に測定する。これにより、光学測定手段87は、所定の時間間隔をあけて同一の検査部A8の試薬部A11の呈色反応を複数回、経時的に測定ことになる。
ターンテーブルユニット85は、上記したように、各検査部A8の点着が完了する毎に試験プレートAを回転させるように構成されていてもよいが、直ぐに次の点着処理が行われない場合には、所定の時間間隔で定期的に試験プレートAを回転させるように構成してもよい。
また、ターンテーブルユニット85は、必要に応じて、使用者による操作で任意のタイミングで試験プレートAを回転させることができるように構成してもよい。さらにまた、ターンテーブルユニット85による試験プレートAの回転速度、回転時間間隔及び又は回転回数、並びに、ターンテーブルユニット85による試験プレートAの回転に応じた光学測定手段87による測定タイミングは、不図示の適当なインターフェイスを介して任意に設定することができるように構成され得る。
光学測定手段87による各検査部A8の測定結果は、個別識別子から読み取った試験プレートAの識別情報及び試験プレートAにおける検査部A8の位置と共に適当な記憶手段に記憶される。
試験プレートAには、複数の検査部A8が設けられているため、一回の検査で全ての検査部A8が使用されるとは限らない。全ての検査部A8が使用されなかった場合、ターンテーブルユニット85は横送り機構85bにより試験プレートAを載せたままターンテーブル85aを保管装置82の下方、即ち、シャッターユニット84におけるシャッター84aの下方まで動かす。ターンテーブル85aがシャッター84aの下方に到達した後、ターンテーブル85aは昇降機構85cによって上昇させられる。このターンテーブル85aの上昇により、試験プレートAが底蓋84hのフランジ84iに当接して底蓋84hを押し上げ、試験プレートAのディスク本体A2が開口84gに嵌合され、試験プレートAのフランジA3とOリング84kでハウジング84bにおける下側の部屋が密閉される。この状態で昇降機構85cは停止される。試験プレートAは、次に試験プレートAを使用する時まで、シャッター84a(即ち、一時保管装置)内の低湿度状態の部屋に保管される。必要に応じて、再び点着位置T6に移送されて再利用される。
このような場合でも、前記したように光学測定手段87による各検査部A8の測定結果が、個別識別子から読み取った試験プレートAの識別情報及び試験プレートAにおける検査部A8の位置と共に記憶手段に記録されているので、試験プレートAの事前チェックの段階で、試験プレートAの識別情報に基づいて、未使用の検査部A8の位置を自動的に認識することができる。
試験プレートAの全ての検査部A8を使用し終わった後、ターンテーブル85aは、横送り機構85bによって再び保管装置82の下方まで戻される。ターンテーブル85aは、保管装置82の下方に到達した後、昇降機構85cによって下方に下げられる。これにより、ターンテーブル85a上に載せられた試験プレートは、シュータユニット86のコンベア86a上に載る。シュータユニット86は、そのコンベア86aに試験プレートが載せられると、コンベア86aを作動して、試験プレートを廃棄方向へ送り廃棄する。
【0027】
(装置全体の作用の説明)
次に、上記したように構成された分析機の作用について説明していく。
予め、試験プレートAを保管装置82にセットしておく。
始めに、使用者が、患者から採取した尿が収容されたハルンカップ1をラック11に入れて、処理前カップ収容部12にセットする。また、空の試験管2を収納した試験管用ラック21を分注前試験管収容部22にセットしておく。
先頭のハルンカップ1が読取位置T1に到達すると、ハルンカップ用の読取機構51がハルンカップ1を回転させ、その回転中に、ハルンカップ1の患者識別情報を読み取る。
不図示の制御装置は、前記した患者識別情報に基づいて、定性分析や定量分析等の化学分析依頼の有無や定量分析に必要な試験管の数及び量等の分析情報を確認する。
化学分析が必要な場合であって、試験プレートAが点着測定位置T5にない場合には、分析機構80を作動して、ドライボックス82から試験プレートAをターンテーブル85a上に1枚取り出し、取り出した試験プレートAを点着測定位置T5まで移送する。
不図示の制御装置は、点着測定位置T5へ移送した試験プレートAの個別識別子A11から個別識別情報を読み取ると共に、試験プレートAにおいて、これから点着が行われる検査部A9の位置を認識し(検査部A9の位置は、ターンテーブル85aの回転距離を検出することにより認識することができる)、これらの情報と前記ハルンカップ1から読み取った患者識別情報とを関連付けして記憶する。
一方、前記ハルンカップ1の患者識別情報の読取が終了した後、ラック11はハルンカップ一つ分だけ、処理後カップ収容部13側に送られる。この状態において、前記ハルンカップ1は、尿吸引位置T2に到達し、次のハルンカップ1が読取位置T1に到達する。
また、上記した動作と並行して、分注前試験管収容部22から試験管用ラック21が移送通路25に押出され、次いで、ラック21は、先頭の試験管2がラベル貼付及び読取位置T3に到達する位置まで移送される。そして、定量分析及び/又は沈査分析が必要な場合には、制御装置が前記ハルンカップ1から読み取られた患者識別情報及びそれに対応する分析情報に基いてラベル・印字貼付機構60及び試験管用の読取機構52を動作させて、試験管2に、前記ハルンカップ1の患者識別情報に対応する患者識別情報を印字したラベルを貼り付ける。この試験管2へのラベルの貼付け処理は、前記ハルンカップ1から読み取られた患者識別情報及びそれに対応する分析情報に基いて必要な数の試験管2に対して行われる。
試験管用の読取機構52は、試験管2に貼り付けられたラベルの情報を読み取り、ハルンカップ1から読み取られた患者識別情報との照合を行う。
一方、前記ハルンカップ1が、尿吸引位置T2に到達すると、攪拌手段45の攪拌棒が前記ハルンカップ1の尿の中に挿入され、同時に、分注機構30のノズル部材32及び点着機構40のノズル部材42が前記ハルンカップ1の尿の中に挿入される。
ハルンカップ1の中の尿の攪拌が終了した後、攪拌棒は適当な洗浄手段で洗浄される。攪拌が終了すると同時に、各ノズル部材32及び42に必要な量の尿が吸引される。
点着機構のノズル部材42は、尿を吸引した後、点着測定位置T5に移送された試験プレートAの検査部A9まで移動し、ターンテーブル85aと協働して検査部A9の試薬部A11に尿を点着する。
同時に、分注機構30のノズル部材32は軸31によって上昇され、分注位置T4まで移動し、ラベル貼付け後の試験管2に尿の分注を行う。試験管2への尿の分注は、前記ハルンカップ1から読み取られた患者識別情報に対応する分析情報に従って、必要な量、必要な数だけ行われる。
上記した分注処理は、分析のみの場合には行われない。また、分析処理は、分注処理のみの場合には行われない。
点着後の試験プレートAは、前述したようにターンテーブル85aによって回転させられ光学測定手段87による測定に供される。
測定結果は、前記ハルンカップ1から読み取った患者識別情報と関連付けて記憶される。
分注機構30のノズル部材32及び点着機構40のノズル部材42は、分注処理及び点着処理が終了すると、各々、洗浄ポット33及び43まで移動され、これらの洗浄ポット33及び43で洗浄される。
上記したハルンカップ1に関する分注処理及び点着処理が行われている間に、バーコードリーダ53により次のハルンカップ1の患者識別情報の読み取りが行われ、前のハルンカップ1の分注及び点着処理が終了すると、続けて、次のハルンカップ1の分注及び点着処理が行われる。
【符号の説明】
【0028】
T1 読取位置
T2 吸引位置
T3 ラベル貼付及び読取位置
T4 分注位置
T5 点着測定位置
T6 点着開始位置
T7 測定位置

A 試験プレート
A1 外周壁
A2 ディスク本体
A3 フランジ
A4 係止部
A5 ドーナツ状の溝
A6 ドーナツ状の突起
A7 突起部
A8 突起部
A9 検査部
A10 突起
A11 試薬部
A12 試験紙
A13 個別識別子を印字したラベル

1 ハルンカップ
2 試験管

10 ハルンカップ供給収容機構
11 ラック
11a 上板
11b 底板
11c 前板
11d 後板
11e 開口
11f 開口
11g 規制板
11h 開口
11i 回転用ディスク
11j 上側部分
11k 下側部分
12 処理前カップ収容部
13 処理後カップ収容部
14 移送手段
15a 移送通路
15b 爪付無端コンベア
16 レール
17 緊急カップ供給ユニット
18 カップ回転手段

20 分注用試験管供給収容機構
21 試験管用ラック
22 分注前試験管収容部
23 分注後試験管収容部
24 ラック移送手段
25 移送通路
26 脚部
27 緊急試験管供給ユニット

30 分注機構
31 軸
32 ノズル部材
33 洗浄ポット

40 点着機構
41 軸
42 ノズル部材
43 洗浄ポット

50 読取機構
51 ハルンカップ用の読取機構
52 試験管用の読取機構

60 ラベル印字・貼付機構

80 分析機
81 フレームユニット
82 保管装置
82a ハウジング
82b ドア
82c 開口
82d 除湿ユニット
82e 吸湿材
82f 除湿装置
82g 固体高分子電解質膜
82h 多孔性電極(陽極)
82i 多孔性電極(陰極)
83 試験プレート切り出しユニット
83a 爪
83b センサ
83b センサ
84 シャッターユニット
84a シャッター(一時保管装置)
84b ハウジング
84c 中間壁
84d 上蓋
84e 除湿装置
84f 吸湿材
84g 開口
84h 底蓋
84i フランジ
84j Oリング
84k Oリング
85 ターンテーブルユニット
85a ターンテーブル
85b 横送り機構
85c 昇降機構
86 シュータユニット
86a コンベア
87 光学測定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体中の被検出物質と反応して発色する検査用試薬部を保持した検査体を一枚のディスク上に複数配置してなる試験プレートを用いる分析機であって、
前記試験プレートの各検査体の試薬部に検体を点着する点着機構と、
検体が点着された試薬部の呈色反応を光学的に測定する光学測定手段と、
前記点着機構による点着位置及び前記光学測定手段による測定位置に前記試験プレートを移送する移送手段と
を備えた自動分析機において、
全ての検査体を使い切れなかった試験プレートを一時的に除湿保管する試験プレート一時保管装置を設けた
ことを特徴とする試験プレート一時保管装置を備えた自動分析機。
【請求項2】
前記試験プレート一時保管装置が、内部に吸湿材が設けられたハウジングを有し、前記ハウジングの底面に開口部が形成され、前記開口部が下方から押し上げ可能な蓋体で密閉的に閉鎖されるように構成され、かつ、
前記試験プレート一時保管装置を、前記移送手段の移送経路中に配置し、さらに、
前記移送手段により試験プレートを蓋体の下方まで移送した後、試験プレートを上昇させると、試験プレート及び/又は移送手段の一部で前記蓋体を押し上げて前記開口部を開放した後、前記試験プレート及び/又は移送手段の一部が前記開口部を密閉的に閉鎖できるように前記一時保管装置を構成した
ことを特徴とする請求項1に記載の試験プレート一時保管装置を備えた自動分析機。
【請求項3】
前記ハウジングの内部に、吸湿材を乾燥させる手段が設けられている
ことを特徴とする請求項2に記載の試験プレート一時保管装置を備えた自動分析機。
【請求項4】
前記吸湿材を乾燥させる手段が、水分解装置又は加熱装置である
ことを特徴とする請求項3に記載の試験プレート一時保管装置を備えた自動分析機。
【請求項5】
自動分析装置が、分析に供するための複数の試験プレートを収容する保管装置を備え、前記保管装置が、下方に試験プレート取り出し用の開口を備え、該開口がシャッターによって開閉するように構成され、
前記移送手段が、前記保管装置の前記下方の開口から一枚づつ試験プレートを取り出して点着位置及び測定位置に試験プレートを移送するように構成され、
前記試験プレート一時保管装置が前記シャッターと一体に設けられている
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の試験プレート一時保管装置を備えた自動分析機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6a】
image rotate

【図6b】
image rotate

【図6c】
image rotate

【図6d】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2013−79924(P2013−79924A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221379(P2011−221379)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(591086854)株式会社テクノメデイカ (50)
【Fターム(参考)】