説明

試験区形成装置及び方法

本発明は評価試験区形成装置を提供する。本発明による圃場に所定面積を有する評価試験区を形成するための評価試験区形成装置は、各端部に接合連通穴が形成され、接合連通穴を互いに整合させた状態で環状円形状を形成するように湾曲させることができる可撓性の隔離プレートと、整合させた接合連通穴を貫通して、隔離プレートの環状円の内外を互いに連通させると共に、隔離プレートの端部同士を密着させるための連通締め付け手段とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験区形成装置及び方法に関し、特に、水田圃場に農業用化学薬品の評価試験区を形成するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
新たに開発された農業用化学薬品については、その販売の準備として、例えば雑草に対する薬効や、稲などに対する薬害、或いはまた、有用生物への影響等に関して予め評価する必要がある。
この目的で、水田試験圃場において新開発薬品の模擬試験が行われている。この試験では、水田圃場内に、これと隔離された所定面積の試験区を形成し、この試験区に所定量の薬品が投与される。
【0003】
上記試験区を形成するための試験区形成装置として、従来から、例えば、図1、図2に示すような装置が知られている。
これらの図に参照番号1で全体的に示される試験区形成装置は、可撓性の波板からなる隔離壁2を有する。隔離壁2は、全体的に環状の正方形に形作られ、下端部が水田圃場Pの地面Gに差し込まれているので、水田圃場Pと同一環境であるが、周囲の水田圃場Pから実質的に隔離された所定面積の試験区Tが隔離壁2の内部に形成される。
この試験区Tに水を供給するため、隔離壁2にはこれを水平方向に貫通する連通パイプ3が設けられ、この連通パイプ3を介して水田圃場Pに張られた水が部分的に試験区T内に引き入れられる。連通パイプ3は、例えば塩化ビニル製であり、試験区T内に延びる内端部3Aと水田圃場Pに延びる外端部3Bとを有する。
試験区Tに張られる水の深さは、一般的に、2cm〜10cm、好ましくは、4cm〜5cmである。そのような所望の水深を得るため、連通パイプ3は地面Gから所望の高さに設けられる。他方、何らかの事情により水田圃場Pの水深が減少したときでも、一度得た試験区T内の所望の水深の減少を防止するための逆流防止手段4が連通パイプ3に設けられている。
【0004】
この逆流防止手段4は可撓性のビニールチューブからなり、該ビニールチューブの外方開口端部4Aは、連通パイプ3の内端部3Aにその外周壁面を覆うように取り付けられている。可撓性チューブの内方開口端部4Bには、水平方向に位置決めされた対向した一対の折り目がつけられている。これらの折り目は、外力が加えられない状態で、内方開口端部4Bを弱い力で閉じるような働きをする。
また、内方開口端部4Bには、内方開口端部4Bに浮力を与える浮力提供要素5が設けられている。浮力提供要素5は、例えば、割れ物を搬送する際に用いられる所謂エアークッションによって構成されている。
浮力提供要素5は、水田圃場Pから試験区Tへの水の流入が止まると、試験区T内に溜められた水の水面に浮き、内方開口端部4Bは閉じられているので、その後、図2に示すように、水田圃場Pの水位が連通パイプ3より下方に下がった場合であっても、試験区Tの水が水田圃場Pに流出しない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した試験から薬品の正確なデータを得るためには、試験区Tは正確な所定面積を有するように水田圃場Pに形成されなければならない。このような正確な所定面積を有する試験区Tを形成するためには、先ず、水田圃場Pにおいて厳密な測量を行い、これに基づいて、例えば、位置の指標となる杭を打ち、これらの杭に糸を張り、糸に沿って隔離壁2、すなわち、波板を位置決めするという作業工程で行われなければならない。しかしながら、このような作業は非常に煩わしい。
【0006】
また、一枚の波板を使用して試験区Tを形成する場合でさえ、波板の一方の端部と他方の端部とによって一つの接合部が形成されることになるから、接合部における端部と端部との間の隙間からの水の流出入を防止しなければならない。従来は、波板の端部の波型面に沿って互いに単に重ね合わせた状態で、波板を水田圃場Pの地面Gに差しこむだけの場合があった。これでは、波板の端部同士の密着性が不十分であった。他方、このような波板の接合部分に杭立てや土盛りなどの補強作業を行うことによって波板の端部同士の密着性を向上させることもできるが、この場合には、試験区Tを形成するための作業工程が更に追加されることになり、また、このような追加の作業は相当の熟練を要していた。
【0007】
更に、一枚の波板を、順次、四箇所も折り曲げて矩形の試験区Tを形成する煩わしさを軽減するため、二枚以上の波板を使用することがあるが、先に説明した短所を持つ波板の端部の接合部を増加させてしまう。
更にまた、隔離壁2に連通パイプ3を取り付けるためには隔離壁2に取付穴をあける必要がある。この取付穴を予め隔離壁2の適当な位置にあけておいたのでは、所定面積を有するように矩形の隔離壁2を形作ったところ、前記取付穴が矩形の隔離壁2のコーナー部付近に配置されてしまうこともあり、これでは、連通パイプ3を隔離壁2に取り付けることができない。従って、このような取付穴は、試験区Tを実際に形成する現場である水田圃場において隔離壁2にあけなければならなかった。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するために発明されたものであって、測量作業なしに所定面積の試験区を形成すると共に、補強作業なしに接合部の密着性を向上させることができる試験区形成装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本願第一発明による、圃場に所定面積を有する評価試験区を形成するための評価試験区形成装置は、各端部に接合連通穴が形成され、且つ、該接合連通穴を互いに整合させた状態で環状円形状を形成するように湾曲させることができる可撓性の隔離プレートと、前記整合させた接合連通穴を貫通して前記隔離プレートの環状円の内外を互いに連通させると共に、前記隔離プレートの端部同士を密着させるための連通締め付け手段とを有することを特徴とする。
【0010】
上記目的を達成するため、本願第二発明による、圃場に所定面積を有する評価試験区を形成するための評価試験区形成装置は、各端部に接合連通穴が形成され、且つ、接合連通穴を互いに整合させた状態で全体として一つの環状円形状を形成するように湾曲させることができる少なくとも二つの可撓性の隔離プレートと、前記整合させた接合連通穴を貫通して前記環状円の内外を互いに連通させると共に、前記隔離プレートの端部同士を密着させるための連通締め付け手段とを有することを特徴とする。
【0011】
上記第一、第二発明では、前記隔離プレートの環状円の内から外への液体の流れを阻止するために前記連通締め付け手段に設けられた逆流防止手段を有するのが好ましい。
上記第一、第二発明では、また、前記環状円の外から内への、及び、前記隔離プレートの環状円の内から外への液体の流れを選択的に阻止するために前記連通締め付け手段に設けられた逆流防止手段を有するのが好ましい。
更に、上記第一、第二発明では、前記連通締め付け手段が互いに係合可能な一対のパイプを有し、これらパイプのうちの一方のパイプが雄ねじ部とフランジ部とを有し、他方のパイプが前記一方のパイプの雄ねじ部に螺合する雌ねじ部とフランジ部とを有するのが好ましい。
更にまた、上記第一、第二発明では、前記隔離プレートの環状円の外から内への、及び、環状円の内から外への液体の流れを選択的に阻止するための前記逆流防止手段が、前記パイプのうちの少なくとも一つのパイプを曲げることによって構成されるのが好ましい。
【0012】
上記目的を達成するため、本願第三発明による、圃場に、それぞれが所定面積を有すると共に互いに連通され且つ結合された二つの評価試験区を形成するための評価試験区形成装置は、それぞれが、各端部に接合連通穴が形成され、且つ、該接合連通穴を互いに整合させた状態で環状円形状を形成するように湾曲させることができる二つの可撓性の隔離プレートと、一方の前記隔離プレートの整合させた接合連通穴及び他方の前記隔離プレートの整合させた接合連通穴を貫通して、これらの隔離プレートの環状円同士を連通させると共に、これらの隔離プレートの端部同士を密着させるための連通締め付け手段とを有することを特徴とする。
【0013】
上記目的を達成するため、本願第四発明による、圃場に所定面積を有する評価試験区を形成するための評価試験区形成方法は、各端部に接合連通穴が形成された可撓性の隔離プレートを、前記記接合連通穴を互いに整合させるために環状円形状に湾曲させることと、前記整合させた接合連通穴を貫通し、前記隔離プレートの環状円の内外を互いに連通させると共に前記隔離プレートの端部同士を密着させることと、このようにして得られた環状円隔離プレートを前記圃場に設置することとを含むことを特徴とする。
【0014】
上記目的を達成するため、本願第五発明による、圃場に所定面積を有する評価試験区を形成するための評価試験区形成方法は、各端部に接合連通穴が形成された少なくとも二つの可撓性の隔離プレートを、全体として一つの環状円形状に湾曲させると共に、前記隔離プレートの隣接する端部の接合連通穴同士を互いに整合させて用いることと、前記整合させた接合連通穴を貫通し、前記隔離プレートの環状円の内外を互いに連通させると共に前記隔離プレートの端部同士を密着させることと、このようにして得られた環状円隔離プレートを前記圃場に設置することとを含むことを特徴とする。
【0015】
上記目的を達成するため、本願第六発明による、圃場に、それぞれが所定面積を有すると共に互いに連通され且つ結合された二つの評価試験区を形成するための評価試験区形成装置は、各端部に接合連通穴が形成された可撓性の第一隔離プレートを、前記接合連通穴を互いに整合させるために環状円形状に湾曲させることと、各端部に接合連通穴が形成された可撓性の第二隔離プレートを、前記接合連通穴を互いに整合させるために環状円形状に湾曲させることと、前記第一隔離プレートの整合させた接合連通穴及び前記第二隔離プレートの整合させた接合連通穴を貫通し、前記第一、第二隔離プレートの環状円同士を連通させると共に、これらの隔離プレートの前記端部同士を密着させることと、このようにして得られた二つの環状円隔離プレートを前記圃場に設置することとを含むことを特徴とする。
【0016】
上記目的を達成するため、本願第七発明による、圃場に所定面積を有する評価試験区を形成するための評価試験区形成装置は、各端部に接合穴が形成され、且つ、該接合穴を互いに整合させた状態で環状円形状を形成するように湾曲させることができる可撓性の隔離プレートと、前記整合させた接合穴を貫通して前記隔離プレートの端部同士を密着させるための締め付け手段とを有することを特徴とする。
【0017】
上記目的を達成するため、本願第八発明による、圃場に所定面積を有する評価試験区を形成するための評価試験区形成方法は、各端部に接合穴が形成された可撓性の隔離プレートを、前記接合穴を互いに整合させるために環状円形状に湾曲させることと、前記隔離プレートの端部同士を密着させるために前記整合させた接合穴に締め付け手段を通すことと、このようにして得られた環状円隔離プレートを前記圃場に設置することとを含むことを特徴とする。
【0018】
上記本願第一発明では、各端部に形成された接合連通穴同士を整合させるように隔離プレートを湾曲させることができるように構成したので、隔離プレートを簡単に環状円に形成することができる。しかも、接合連通穴間を所定距離に寸法決めしておくことによって、所望の面積を有する隔離プレートの環状円を容易に形成することができる。また、連通締め付け手段によって、隔離プレートの環状円の内外を互いに連通させると共に、隔離プレートの端部同士を密着させるので、端部での密着性が向上し、従来技術におけるような補強作業が不要となる。
【0019】
上記本願第二発明では、隣接した隔離プレートの端部に形成された接合連通穴同士を整合させるように、少なくとも二つの隔離プレートを、全体として一つの環状円形状を形成するように湾曲させることができるように構成したので、環状円の隔離プレートを簡単に形成することができる。しかも、各隔離プレートの接合連通穴間を所定距離に寸法決めしておくことによって、所望の面積を有する隔離プレートの環状円を容易に形成することができる。また、連通締め付け手段によって、隔離プレートの環状円の内外を互いに連通させると共に、隔離プレートの端部同士を密着させるので、端部での密着性が向上し、従来技術におけるような補強作業が不要となる。
【0020】
上記本願第三発明では、各端部に形成された接合連通穴同士を整合させるように、二つの隔離プレートを湾曲させることができるように構成したので、二つの隔離プレートの環状円を簡単に形成することができる。しかも、それぞれの隔離プレートの接合連通穴間を所定距離に寸法決めしておくことによって、所望の面積を有する二つの隔離プレートの環状円を容易に形成することができる。また、連通締め付け手段によって、二つの隔離プレートの環状円同士を連通させると共に、二つの隔離プレートの端部同士を密着させるので、密着性が向上する。
【0021】
上記本願第四発明では、隔離プレートを湾曲させることによって環状円を形成するので、接合連通穴間を所定距離に寸法決めしておくことによって、所望の面積を有する隔離プレートの環状円を容易に形成することができる。また、隔離プレートの環状円の内外を互いに連通させると共に、隔離プレートの端部同士を密着させるので、従来技術におけるような補強作業が不要となる。
【0022】
本願第五発明では、少なくとも二つの隔離プレートを、全体として一つの環状円を形成するように湾曲させる構成としたので、接合連通穴間を所定距離に寸法決めしておくことによって、所望の面積を有する二つの隔離プレートの環状円を容易に形成することができる。また、隔離プレートの環状円の内外を互いに連通させると共に、二つの隔離プレートの端部同士を密着させるので、従来技術におけるような補強作業が不要となる。
【0023】
本願第六発明では、二つの隔離プレートを湾曲させることによって二つの環状円を形成するので、それぞれ、隔離プレートの接合連通穴間を所定距離に寸法決めしておくことによって、それぞれが所望の面積を有する隔離プレートの環状円を容易に形成することができる。また、二つの隔離プレートの環状円同士を連通させると共に、二つの隔離プレートの端部同士を密着させるので、従来技術におけるような補強作業が不要となる。
【0024】
上記本願第七発明では、各端部に形成された接合穴同士を整合させるように隔離プレートを湾曲させることができるように構成したので、隔離プレートの環状円を簡単に形成することができる。しかも、接合穴間を所定距離に寸法決めしておくことによって、所望の面積を有する隔離プレートの環状円を容易に形成することができる。また、締め付け手段によって、隔離プレートの端部同士を密着させることができる。本発明では、隔離プレートの環状円の内外を互いに連通させることを要しない。締め付け手段は、互いに係合可能な一対の雄形部材及び雌形部材を有し、これらの部材のうちの一方が整合させた接合穴を貫通して他方の部材と係合され、これにより、隔離プレートの端部同士が締めつけられるのが好ましい。好ましくは、これらの雄形部材及び雌形部材は中実である。
【0025】
上記本願第八発明では、隔離プレートを湾曲させることによって環状円を形成するので、接合穴間を所定距離に寸法決めしておくことによって、所望の面積を有する隔離プレートの環状円を容易に形成することができる。また、整合させた接合穴に締め付け手段を通すことによって、隔離プレートの端部同士を密着させるので、隔離プレートの端部同士の密着性を高めるための作業は不要である。本発明では、隔離プレートの環状円の内外を互いに連通させることを要しない。締め付け手段は、互いに係合可能な一対の雄形部材及び雌形部材を有し、これらの部材のうちの一方が整合させた接合穴を貫通して他方の部材と係合され、これにより、隔離プレートの端部同士が締めつけられるのが好ましい。好ましくは、これらの雄形部材及び雌形部材は中実である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。これらの実施形態は、本発明を、水田圃場で用いられる評価試験区形成装置に適用したものである。
【0027】
図3を参照すると、本発明の第一実施形態による評価試験区形成装置が参照番号11で示されている。この評価試験区形成装置11は、背景技術の項で説明した従来技術と同様に、水田圃場P(の地面G)に設置され、試験区Tを形成するのに使用される。
評価試験区形成装置11は、図3に示される一つの隔離プレート12を有する。この隔離プレート12は、図4から良くわかるように、一枚の可撓性シートからなり、例えば、塩化ビニルで作ることができる。隔離プレート12は二つの端部12A、12Bを有し、これらの端部には、それぞれ、接合連通穴13A、13Bが形成されている。
【0028】
評価試験区形成装置11はまた、以下に記載の機能を果たす連通締め付け手段14も有する。図4に示す隔離プレート12を、図3に示すように、接合連通穴13A、13B同士を整合させるために環状円形状に湾曲させると、連通締め付け手段14は、接合連通穴13A、13Bを貫通して隔離プレート12の環状円形の内外を互いに連通させると共に、端部12A、12B同士を密着させる。
【0029】
図5にはっきりと示すように、連通締め付け手段14は、互いに係合可能な一対の外側雌パイプ15及び内側雄パイプ16を有する。外側雌パイプ15は、全体的に円筒状の円筒本体15Aと、円筒本体15Aの接合側端部に形成された締め付け部、すなわち、フランジ部15Bとを有し、接合側端部には雌ねじ15Cが切られている。内側雄パイプ16は、全体的に円筒状の円筒本体16Aと、円筒本体16Aに形成された締め付け部、すなわち、フランジ部16Bと、フランジ部16Bから延びる円筒延長部とを有し、円筒延長部には雄ねじ16Cが切られている。尚、内側雄パイプ16には、従来の試験区形成装置1において説明した逆流防止手段4が取り付けられている。より詳細には、内側雄パイプ16の円筒本体16Aの外面を覆うように、逆流防止手段4の外方開口端部4Aが取り付けられている。この逆流防止手段4のその他の構造、機能については既に説明したので、ここでは繰り返し説明はしない。
【0030】
隔離プレート12の整合させた接合連通穴13A、13Bに連通締め付け手段14を取り付けるときには、例えば、環状円形状に形作られた隔離プレート12の内側から、内側雄パイプ16の雄ねじ16Cが形成された円筒延長部を隔離プレート12の接合連通穴13A、13Bに通して、フランジ部16Bを隔離プレート12に当接させる。接合連通穴13A、13Bを内側雄パイプ16の雄ねじ16Cの直径よりも僅かに大きい寸法と形状で形成して、内側雄パイプ16から手を離しても、内側雄パイプ16が隔離プレート12から容易に脱落しないようにするのが好ましい。
【0031】
隔離プレート12から外方に(水田圃場Pに向かって)突出する内側雄パイプ16の雄ねじ16Cに外側雌パイプ15の雌ねじ15Cを螺合させて、外側雌パイプ15のフランジ部15Bを隔離プレート12に当接させ、内側雄パイプ16のフランジ部16Bと外側雌パイプ15のフランジ部15Bとによって隔離プレート12の端部12A、12Bを締めつける。
【0032】
環状円形隔離プレート12への連通締め付け手段14の取り付けにより、環状円形隔離プレート12の内外を互いに連通させると同時に、端部12A、12B同士を密着させることができる。
このようにして形成された評価試験区形成装置11を水田圃場Pの地面Gに差しこむことによって、試験区Tを簡単に形成することができる。
【0033】
ところで、隔離プレート12の各種寸法は、形成すべき試験区Tの面積及び試験区Tに供給されることになる水の水位に応じて決定される。
例えば、1m2の試験区Tを形成することが必要な場合には、図4に示す状態において隔離プレート12の接合連通穴13A、13B間の距離は354cmである。この隔離プレート12によって形成される環状円形隔離プレート12(図3)の円周は354cmであるので、円周率を3.14とするとき、環状円形隔離プレート12の直径、半径は、それぞれ、112.73885cm、56.369426cmとなる。従って、環状円形隔離プレート12内の面積、すなわち、試験区Tの面積は9977.3883cm2となり、1m2に略等しい。試験区Tのより厳密な面積1m2が望ましい場合には、隔離プレート12の接合連通穴13A、13B間の距離を、より厳密に計算された数値にすれば良い。
【0034】
本発明の評価試験区形成装置11によれば、隔離プレート12の接合連通穴13A、13B間の距離を、上述したように、予め計算によって求めた数値に基づいて形成することができるので、従来の試験区形成装置1におけるような水田圃場Pでの測量作業を必要とすることなく、所望の面積の試験区Tを容易に形成することができる。
また、本発明の評価試験区形成装置11では、隔離プレート12に連通用のパイプ15、16を取り付けるための接合連通穴13A、13Bを予め形成しておくことができ、このような接合連通穴13A、13Bを予め形成しておくことによる不利益もないため、従来の試験区形成装置1におけるような水田圃場Pでの煩わしい穴あけ作業がなくなる。
【0035】
更に、本発明の評価試験区形成装置11では、パイプ15、16が取り付けられる接合連通穴13A、13Bが環状円形隔離プレート12の接合される端部12A、12Bに設けられると同時に、隔離プレート12の端部12A、12Bが互いに密着するように締め付けられるので、隔離プレート12の接合される端部12A、12B間の隙間を、従来の試験区形成装置1で生じる隙間に比して小さくすることができる。このように、従来の試験区形成装置1において行われる補強作業が不要である。
【0036】
図6は、本発明による第二実施形態の評価試験区形成装置21を示す。
評価試験区形成装置21は、第一実施形態の評価試験区形成装置11の隔離プレート12と同一の構成の二つの隔離プレート22A、22Bと、第一実施形態の評価試験区形成装置11の連通締め付け手段14と同一の連通締め付け手段14とを有する。
評価試験区形成装置21を図6に示すように組立てるときには、評価試験区形成装置11の隔離プレート12と同様に、隔離プレート22A、22Bをそれぞれ環状円に湾曲にして形成し、各隔離プレートの両端部に形成された接合連通穴同士を整合させる。その後、隔離プレート22Aの整合させた接合連通穴と、隔離プレート22Bの整合させた接合連通穴とを、隔離プレート22A、22Bの外面同士が接するように互いに整合させる。そして、例えば、環状円形状に形作られた隔離プレート22Aの内側から、連通締め付け手段14の内側雄パイプ16の雄ねじ16Cが形成された円筒延長部を、隔離プレート22A、22Bの四つの接合連通穴に通して、フランジ部16Bを隔離プレート12に当接させ、内側雄パイプ16の雄ねじ16Cが形成された円筒延長部を環状円形状に形作られた隔離プレート22B内に突出させる。
【0037】
そして、隔離プレート22B内に突出する内側雄パイプ16の雄ねじ16Cに外側雌パイプ15の雌ねじ15Cを螺合させて、外側雌パイプ15のフランジ部15Bを隔離プレート22Bに当接させ、それによって、内側雄パイプ16のフランジ部16Bと外側雌パイプ15のフランジ部15Bとによって隔離プレート22A、22Bの四つの端部を締めつける。
このようにして形成された評価試験区形成装置21を水田圃場Pの地面Gに差しこむことによって、連通締め付け手段14によって互いに連通され且つ結合された二つの試験区T1、T2を形成する。
この評価試験区形成装置21は、水田水の流出による薬害試験を行うのに適している。詳述すると、例えば、試験区T1に新薬を投与し、試験区T2には新薬を投与しない場合の試験区T1、試験区T2内における変化を観察することによって、互いに連通する二つの隣接した水田の一方にのみ薬剤を投与した場合に、この薬剤が他方の水田に与える影響を擬似検証することができる。
【0038】
図7は、評価試験区形成装置11で使用される連通締め付け手段14の改良した実施形態である連通締め付け手段30を示す。
連通締め付け手段14の外側雌パイプ15の円筒本体15Aが略水平に真っ直ぐに延びているのに対して、連通締め付け手段30は、円筒本体30Aが曲げられている外側雌パイプ30を有するということ以外は、連通締め付け手段30は連通締め付け手段14と略同一の構造を有する。
このように円筒本体30Aに角度をつけることにより、すなわち、パイプ15をエルボ(継手)に構成することにより、周囲の水田圃場Pから試験区Tへの水の流入、及び、試験区Tから周囲の水田圃場Pへの水の流出を任意に、又は、選択的に止めることができる。すなわち、角度付き円筒本体30Aは選択的逆流防止手段を構成する。
【0039】
例えば、図7に示すように、試験区Tが所望の水深を有するときに、周囲の水田圃場Pの水深が試験区Tの所望の水深を越えてしまう場合、円筒本体30Aの開口部30aが上方を向くように、外側雌パイプ30を隔離プレート12に対して単に回転させることによって、水田圃場Pから試験区Tへの望ましくない水の流入を阻止することができる。さらに、試験区Tが所望の水深で満たされているときに、周囲の水田圃場Pの水深が試験区Tの所望の水深を下回っている場合、連通締め付け手段30によって試験区Tから水田圃場Pへ水が流出することを阻止することができる。
【0040】
本発明は、上述した実施形態に限定されることなく以下のような種々の変更が可能である。
例えば、評価試験区形成装置21では、逆流防止手段4を用いない態様を説明したが、試験内容に応じて、逆流防止手段4を試験区T1、T2に設けても良いのは明らかである。従ってまた、評価試験区形成装置21においても、試験区T1、試験区T2間の水の流入を任意に、又は、選択的に止める目的で、連通締め付け手段14に代えて連通締め付け手段30を用いても良い。
また、連通締め付け手段14、30では、外側パイプが雄型であり、内側パイプが雄型であったけれども、外側パイプが雄型とし、内側パイプが雌型としても良い。連通締め付け手段30においては、内側パイプをエルボ(継手)としても良い。
【0041】
更に、評価試験区形成装置11では、一つの隔離プレート12を使用して1m2の試験区Tを形成したが、二つの隔離プレート12を使用することによって4m2の試験区Tを容易に形成することができる。すなわち、一方の隔離プレート12の接合連通穴13Aと他方の隔離プレート12の接合連通穴13Bとを整合させて、これら整合させた接合連通穴が形成された端部を連通締め付け手段14、21で互いに係合させて締め付け、同様に、一方の隔離プレート12の接合連通穴13Bと他方の隔離プレート12の接合連通穴13Aとを整合させて、これら整合させた接合連通穴が形成された端部を連通締め付け手段14、30で互いに係合させて締め付ける。これにより、4m2の試験区Tが形成される。使用される(各)連通締め付け手段14には逆流防止手段4を設けるのが好ましい。
【0042】
上述したように、逆流防止手段4、連通締め付け手段30は水田圃場から試験区への望ましくない水の流入を阻止する手段として機能し、連通締め付け手段30はまた、試験区Tから水田圃場Pへの望ましくない水の流出を阻止する手段として機能する。しかし、これら手段に代えて既存の逆止弁構造を用いても良い。
【0043】
本発明による試験区形成装置及び方法は、農薬試験の他、栽培試験や、肥料試験など各種試験一般に広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】従来の試験区形成装置を示す概略図である。
【図2】図1に示す試験区形成装置の部分拡大図である。
【図3】本発明の第一実施形態による試験区形成装置を示す概略図である。
【図4】図3に示す試験区形成装置を構成する隔離プレートの正面図である。
【図5】図3に示す試験区形成装置の部分拡大図である。
【図6】本発明の第二実施形態による試験区形成装置を示す概略図である。
【図7】本発明の第一実施形態による試験区形成装置の連通締め付け手段の改良した実施形態を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場に所定面積を有する評価試験区を形成するための評価試験区形成装置であって、各端部に接合連通穴が形成され、且つ、該接合連通穴を互いに整合させた状態で環状円形状を形成するように湾曲させることができる可撓性の隔離プレートと、前記整合させた接合連通穴を貫通して前記隔離プレートの環状円の内外を互いに連通させると共に、前記隔離プレートの端部同士を密着させるための連通締め付け手段とを有する評価試験区形成装置。
【請求項2】
圃場に所定面積を有する評価試験区を形成するための評価試験区形成装置であって、各端部に接合連通穴が形成され、且つ、該接合連通穴を互いに整合させた状態で全体として一つの環状円形状を形成するように湾曲させることができる少なくとも二つの可撓性の隔離プレートと、前記整合させた接合連通穴を貫通して前記環状円の内外を互いに連通させると共に、前記隔離プレートの端部同士を密着させるための連通締め付け手段とを有する評価試験区形成装置。
【請求項3】
前記隔離プレートの環状円の内から外への液体の流れを阻止するために前記連通締め付け手段に設けられた逆流防止手段をさらに有する請求項1又は請求項2に記載の評価試験区形成装置。
【請求項4】
前記隔離プレートの環状円の外から内への、及び、環状円の内から外への液体の流れを選択的に阻止するために前記連通締め付け手段に設けられた逆流防止手段をさらに有する請求項1又は請求項2に記載の評価試験区形成装置。
【請求項5】
前記連通締め付け手段が互いに係合可能な一対のパイプを有し、これらパイプのうちの一方のパイプが雄ねじ部とフランジ部とを有し、他方のパイプが前記一方のパイプの雄ねじ部に螺合する雌ねじ部とフランジ部とを有する請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の評価試験区形成装置。
【請求項6】
前記隔離プレートの環状円の外から内への、及び、環状円の内から外への液体の流れを選択的に阻止するための前記逆流防止手段が、前記パイプのうちの少なくとも一つのパイプを曲げることによって形成される請求項5に記載の評価試験区形成装置。
【請求項7】
圃場に、それぞれが所定面積を有すると共に互いに連通され且つ結合された二つの評価試験区を形成するための評価試験区形成装置であって、それぞれが、各端部に接合連通穴が形成され、且つ、該接合連通穴を互いに整合させた状態で環状円形状を形成するように湾曲させることができる二つの可撓性の隔離プレートと、一方の前記隔離プレートの整合させた接合連通穴及び他方の前記隔離プレートの整合させた接合連通穴を貫通して、これら隔離プレートの環状円同士を連通させると共に、これら隔離プレートの端部同士を密着させるための連通締め付け手段とを有する評価試験区形成装置。
【請求項8】
圃場に所定面積を有する評価試験区を形成するための評価試験区形成方法であって、各端部に接合連通穴が形成された可撓性の隔離プレートを、前記接合連通穴を互いに整合させるために環状円形状に湾曲させることと、前記整合させた接合連通穴を貫通し、前記隔離プレートの環状円の内外を互いに連通させると共に前記隔離プレートの端部同士を密着させることと、このようにして得られた環状円隔離プレートを前記圃場に設置することとを含む評価試験区形成方法。
【請求項9】
圃場に所定面積を有する評価試験区を形成するための評価試験区形成方法であって、各端部に接合連通穴が形成された少なくとも二つの可撓性の隔離プレートを、全体として一つの環状円形状に湾曲させると共に、前記隔離プレートの隣接する端部の接合連通穴を互いに整合させて用いることと、前記整合させた接合連通穴を貫通し、前記隔離プレートの環状円の内外を互いに連通させると共に前記隔離プレートの端部同士を密着させることと、このようにして得られた環状円隔離プレートを前記圃場に設置することとを含む評価試験区形成方法。
【請求項10】
圃場に、それぞれが所定面積を有すると共に互いに連通され且つ結合された二つの評価試験区を形成するための評価試験区形成方法であって、各端部に接合連通穴が形成された可撓性の第一隔離プレートを、前記接合連通穴を互いに整合させるために環状円形状に湾曲させることと、各端部に接合連通穴が形成された可撓性の第二隔離プレートを、前記接合連通穴を互いに整合させるために環状円形状に湾曲させることと、前記第一隔離プレートの整合させた接合連通穴及び前記第二隔離プレートの整合させた接合連通穴を貫通し、前記第一、第二隔離プレートの環状円同士を連通させると共に、これらの隔離プレートの前記端部同士を密着させることと、このようにして得られた二つの環状円隔離プレートを前記圃場に設置することとを含む評価試験区形成方法。
【請求項11】
圃場に所定面積を有する評価試験区を形成するための評価試験区形成装置であって、各端部に接合穴が形成され、且つ、該接合穴を互いに整合させた状態で環状円形状を形成するように湾曲させることができる可撓性の隔離プレートと、前記整合させた接合穴を貫通して前記隔離プレートの端部同士を密着させるための締め付け手段とを有する評価試験区形成装置。
【請求項12】
圃場に所定面積を有する評価試験区を形成するための評価試験区形成方法であって、各端部に接合穴が形成された可撓性の隔離プレートを、前記接合穴を互いに整合させるために環状円形状に湾曲させることと、前記隔離プレートの端部同士を密着させるために前記整合させた接合穴に締め付け手段を通すことと、このようにして得られた環状円隔離プレートを前記圃場に設置することとを含む評価試験区形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−513619(P2007−513619A)
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−543497(P2006−543497)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【国際出願番号】PCT/EP2004/014114
【国際公開番号】WO2005/067695
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(500584309)シンジェンタ パーティシペーションズ アクチェンゲゼルシャフト (352)