説明

試験手順決定装置

【課題】試験を短時間で実施できる試験手順を得られる試験手順決定装置を得ること。
【解決手段】パラメータ値一覧記憶部1に記憶された複数のパラメータのパラメータ値の変更に要する時間を表す情報を記憶するパラメータ変更条件記憶部3と、複数のパラメータの各々について、取り得るパラメータ値を一巡させる最小所要時間を算出し、算出結果に基づいて、パラメータ値の変更に要する時間の総和が最小となるように、各パラメータのパラメータ値の変更順序を決定するパラメータ値変更順序決定部12と、パラメータ値変更順序決定部12が決定した変更順序に従って各パラメータのパラメータ値を直交表2に割り付けるパラメータ割付部13とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験手順決定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、試験対象が正しいか否かを、直交表を用いて少ない試験回数で判断する方法が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−156644号公報(第4頁第3行〜第5頁第5行)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような直交表を用いた試験での手順を決定するにあたっては、直交表の各行に対応した任意の試験条件から次の試験条件に遷移するための時間を短縮することは考慮されていなかった。そのため、試験に要する時間が長くなってしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、試験を短時間で実施できる試験手順を得られる試験手順決定装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、試験条件を複数のパラメータのパラメータ値の組み合わせによって表し、複数の試験条件の各々に対応する複数のパラメータ値の組み合わせを直交表に割り付けて試験の実行順序を決定する試験手順決定装置であって、各々のパラメータについて、取り得るパラメータ値を一巡させる最小所要時間を算出する所要時間算出手段と、所要時間算出手段の算出結果に基づいて、パラメータ値の変更に要する時間の総和が最小となるように、各パラメータのパラメータ値の変更順序を決定するパラメータ値変更順序決定手段と、パラメータ値変更順序決定手段が決定した変更順序に従って各パラメータのパラメータ値を直交表に割り付けるパラメータ値割付手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、試験条件の遷移時間の総和が小さくなるように直交表にパラメータを割り付けることができるため、試験時間の短縮を図れるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、実施の形態に係る試験手順決定装置の構成を示す図である。
【図2】図2は、各パラメータが取り得るパラメータ値の一例を示す図である。
【図3】図3は、各パラメータの変更に要する時間を示す図である。
【図4】図4は、試験手順決定動作の流れを示すフローチャートである。
【図5】図5は、従来の方法によってパラメータ値を割り付けた直交表の一例を示す図である。
【図6】図6は、実施の形態に係る試験手順決定装置がパラメータ値を割り付けた直交表の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明にかかる試験手順決定装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
実施の形態.
図1は、本発明の実施の形態に係る試験手順決定装置の構成を示す図である。試験手順決定装置は、直交表2、パラメータ値一覧記憶部1、パラメータ変更条件記憶部3、パラメータ値変更時間取得部11、パラメータ値変更順序決定部12、及びパラメータ割付部13を有する。
【0011】
直交表2の各行が一項目の試験に対応し、各パラメータが取るパラメータ値一つずつの組み合わせが一項目の試験条件として指定される。
【0012】
図2は、各パラメータが取り得るパラメータ値の一例を示す図である。図示する例では3種類のパラメータA、B、Cを組み合わせて試験するものとする。図3は、各パラメータの変更に要する時間を示す図である。各パラメータ値は、図3に示す「前」の値から「後」の値へ変更する場合に、同じ行に示す変更時間を要して切り替えられるとする。なお、図3に示されていない順序(a2→a1など)でのパラメータの変更は行うことはできず、このような順序でパラメータを変更する必要がある場合には図示されている順序での変更を連続して行う(a2→a3→a1など)ことによって実現するものとする。
【0013】
試験手順決定装置の動作について説明する。図4は、試験手順決定動作の流れを示すフローチャートである。ここでは、任意の2パラメータ間でパラメータ値の組み合わせが全て同じ回数出現するように、図3に示す特性を持つパラメータ値を直交表2に割り付けることを考える。ここではLの直交表2にパラメータ値を割り付けるものとする。図2に示したように、パラメータA、B、Cはそれぞれ、3水準であるため、Lの直交表に割り付けられるパラメータの組み合わせは全組み合わせよりも少数となる。
【0014】
まず、パラメータ値変更時間取得部11は、パラメータ値一覧記憶部1から各パラメータが取り得る値を、パラメータ変更条件記憶部3からパラメータ値を変更するのに必要な時間(図3に示す情報)をそれぞれ取得する(ステップS1)。
【0015】
次に、パラメータ値変更順序決定部12は、第1パラメータから第nパラメータまでのn個のパラメータの序列を決定する。また、パラメータ値変更順序決定部12は、第1〜第nパラメータの各々について、試験すべき全てのパラメータ値に順次変更する際に、パラメータ値を変更させる順序を決定する(ステップS2)。ここで、nはパラメータの総数を示す。この際、パラメータ値変更順序決定部12は、パラメータ値を一巡させる最小の変更時間をパラメータごとに求める。パラメータ値変更順序決定部12は、パラメータ値を一巡させる最小の変更時間が最大となるパラメータを、第1パラメータとする。
【0016】
例えば、パラメータCについては、c2→c3→c1の順に変更することで、パラメータ値を一巡させる変更時間は最小となり、その値は20分となる。パラメータ値を一巡させる最小の変更時間を求めるにあたっては、ステップS1で取得した図3に示した表を参照し、変更時間が最大となるc1→c2の変更を回避し、それ以外の変更を経て全てのパラメータを変更する順序での変更時間の中から最小となる変更時間を求めればよい。
【0017】
同様に、パラメータ値を一巡させる最小の変更時間は、パラメータAでは3分、パラメータBでは7分となる。この結果、パラメータ値を一巡させる最小の変更時間が最も大きいパラメータはパラメータCであるため、パラメータ値変更順序決定部12はパラメータCを第1パラメータとして決定する。また、第1パラメータの値変更順序を、c2→c3→c1と決定する。
【0018】
次にパラメータ値変更順序決定部12は、第1パラメータを除いた各パラメータについて、全てのパラメータ値を一巡して元に戻る際の最小変更時間を求める。パラメータ値変更順序決定部12は、このようにして求めた最小変更時間が最大となるパラメータを第2パラメータとする。そして、パラメータ値変更順序決定部12は、第2パラメータの全てのパラメータ値を一巡して元のパラメータ値に戻る時間が最小となる変更順序において、変更時間が最大となる変更後のパラメータ値から開始し、全てのパラメータ値を一巡する順序を一つ選び、それを第2パラメータの値変更順序とする。例えば、第1パラメータとして決定したパラメータCを除いたパラメータA、パラメータBに関して、全てのパラメータ値を一巡して元のパラメータ値に戻る際の最小の変更時間は、パラメータAは5分、パラメータBは14分である。そこで、パラメータ値変更順序決定部12は、全てのパラメータ値を一巡して元のパラメータ値に戻る際の最小の変更時間が最大のパラメータBを第2パラメータとする。このとき、パラメータBの全てのパラメータ値を一巡して元のパラメータ値に戻る時間が最小となる変更順序において、最大変更時間についての変更後のパラメータ値b2から開始し、全てのパラメータ値を一巡する順序として、パラメータ値変更順序決定部12は、b2→b3→b1と決定する。
【0019】
同様にして、第3パラメータから第nパラメータまで、各々の変更順序を求める。ここでは、パラメータ値変更順序決定部12は、第1パラメータとして決定したパラメータC、第2パラメータとして決定したパラメータBを除いたパラメータAを第3パラメータとする。このとき、パラメータAの全てのパラメータ値を一巡して元のパラメータ値に戻る時間が最小となる変更順序において、変更時間が最大の2分となる変更後のパラメータ値a2又はa3から開始し、全てのパラメータ値を一巡する順序として、a2→a3→a1及びa3→a1→a2が得られる。パラメータ値変更順序決定部12は、a2→a3→a1を第3パラメータの値変更順序と決定する。
【0020】
その後、パラメータ割付部13は直交表2にパラメータ値を割り付ける(ステップS3)。ここでは9行の(Lの)直交表2にパラメータ値を割り付けることを想定しているため、パラメータ割付部13は、まず左端の列に第1パラメータの値を3個ずつ割り付ける。この際、第1パラメータの値変更順序に従って割り付ける。すなわち、第1パラメータはパラメータ値が一巡して元の値に戻ることがないようにNo.1〜No.3はc2、No.4〜No.6はc3、No.7〜No.9はc1を割り付ける。
【0021】
次に、パラメータ割付部13は、第2パラメータの値を、第1パラメータの右隣の列に値変更順序b2→b3→b1に従って割り付ける。ここで、第1パラメータと第2パラメータとの直交性を保つために、第2パラメータのパラメータ値は一つずつ割り付ける。この際、二巡目では、一巡目の最後のパラメータ値であるb1から割り付けを開始することによって、第2パラメータの値が変化することによって試験時間が増加するのを抑制する。ただし、第2パラメータ以降のパラメータを割り付ける際には、二巡目以降については既に割り付けたパラメータとの組み合わせが重複しない(直交性が損なわれない)ように、必要に応じて各巡目での割り付けの開始パラメータを変更する。すなわち、二巡目として、No.4〜No.6にはb1、b2、b3を割り付ける。三巡目も同様に、二巡目の最後のパラメータ値(b3)から割り付けを開始する。ここではパラメータの組み合わせに重複は生じないため、各巡目で割り付け開始パラメータの変更は行っていない。
【0022】
次に、パラメータ割付部13は、第3パラメータの値を、第2パラメータの右隣の列に値変更順序a2→a3→a1に従って1個ずつ割り付ける。この際、第2パラメータと同様に、二巡目以降では、前の巡目の最後のパラメータ値から割り付けを開始することによって、第3パラメータの値が変化することによって試験時間の増加の抑制を試みる。しかし、ここでは二巡目でNo.4〜No6にa1、a2、a3を割り付けると、一巡目での第2パラメータと第3パラメータとの組み合わせと重複して直交性が損なわれてしまうため、第3パラメータはa2から割り付けを開始し、a2、a3、a1をNo.4〜No.6に割り付けることによって、パラメータの組み合わせの重複を回避する。同様の理由により、三巡目ではa2、a3、a1をNo.7〜No.9に割り付ける。
【0023】
図5は、従来の方法によってパラメータ値を割り付けた直交表の一例を示す図である。パラメータCのパラメータ値が一巡するごとにパラメータBのパラメータ値を変化させ、パラメータBのパラメータ値が一巡するごとにパラメータAのパラメータ値を変化させるようにパラメータ値が割り付けられている。この直交表に従う場合、No.1の試験条件(すなわちAの値がa1、Bの値がb1、Cの値がc1)で試験を実施し、その試験の完了後にNo.2の状態(すなわちAの値がa1、Bの値がb2、Cの値がc2)に遷移させる。このためにはBの値をb1からb2に、Cの値をc1からc2にそれぞれ変更する必要があり、この遷移には、図3に示したようにそれぞれ7分、40分を要する。このため、図5のNo.2の行の「前のNo.からの遷移時間」の列の値は7+40となっている、これは、No.1からNo.2への遷移には47分を要することを表している。なお、図5においては、試験条件を遷移させるために変更したパラメータに下線を付して明示している。例えば、No.1→No.2の試験条件の遷移の際には、パラメータBがb1→b2に、パラメータCがc1→c2にそれぞれ変化するため、No.2のb2及びc2に下線が付されている。No.1からNo.9の全試験を完了するまでに必要となる遷移時間の合計を求めると164分となる。
【0024】
図6は、本実施の形態に係る試験手順決定装置がパラメータ値を割り付けた直交表2の一例を示す図である。なお、図6においても、試験条件を遷移させるために変更したパラメータに下線を付して明示している。直交表2に従って試験を行う場合、遷移時間の合計は61分となる。従って、図5に示した手順よりも試験に要する時間を103分短縮できる。
【0025】
このように、本実施の形態に係る試験手順決定装置は、パラメータ値変更順序決定部でパラメータを取り得る全てのパラメータ値に順次変更する際に、各パラメータ値を変更する時間の合計が最小となるパラメータの変更順序を決定し、パラメータ割付部において、試験条件の遷移時間の総和が小さくなるように各パラメータを直交表に割り付けるため、試験の実施に要する時間が短くなるように直交表を作成できる。すなわち、パラメータ値を一巡させる最小の変更時間が大きいパラメータほど、パラメータ値が一巡する回数を少なくすることによって、試験の実施に要する時間が短くなるように直交表を作成できる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
以上のように、本発明に係る試験手順決定装置は、試験条件の遷移に要する時間を短縮できる点で有用であり、特に、変更に要する時間の差が大きいパラメータ値を含むパラメータを直交表に割り付けるのに適している。
【符号の説明】
【0027】
1 パラメータ値一覧記憶部
2 直交表
3 パラメータ変更条件記憶部
11 パラメータ値変更時間取得部
12 パラメータ値変更順序決定部
13 パラメータ割付部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験条件を複数のパラメータのパラメータ値の組み合わせによって表し、複数の試験条件の各々に対応する複数のパラメータ値の組み合わせを直交表に割り付けて試験の実行順序を決定する試験手順決定装置であって、
各々のパラメータについて、取り得るパラメータ値を一巡させる最小所要時間を算出する所要時間算出手段と、
前記所要時間算出手段の算出結果に基づいて、前記パラメータ値の変更に要する時間の総和が最小となるように、前記各パラメータのパラメータ値の変更順序を決定するパラメータ値変更順序決定手段と、
前記パラメータ値変更順序決定手段が決定した変更順序に従って前記各パラメータのパラメータ値を前記直交表に割り付けるパラメータ値割付手段とを有することを特徴とする試験手順決定装置。
【請求項2】
前記パラメータ値割付手段は、取り得るパラメータ値を一巡させる最小所要時間が長いパラメータほどパラメータ値の変更回数が少なくなるように、前記パラメータ値を前記直交表に割り付けることを特徴とする請求項1記載の試験手順決定装置。
【請求項3】
前記パラメータ値割付手段は、取り得るパラメータ値を一巡したパラメータを、直前のパラメータ値から開始して前記変更順序に従った順序で変更するようにパラメータ値を前記直交表に割り付けることを特徴とする請求項1又は2記載の試験手順決定装置。
【請求項4】
前記パラメータ値割付手段は、割付済みのパラメータのパラメータ値との直交性を損なわないようにパラメータ値を前記直交表に割り付けることを特徴とする請求項3記載の試験手順決定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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