説明

試験測定機器及び方法

【課題】3次元イメージの不一致の測定を迅速且つ容易に行う。
【解決手段】ビデオ波形モニタの表示100上で、サンプル用カーソル145を用いて右目用イメージの特定ピクセルを識別する一方、不一致用カーソル150を用いて左目用イメージの特定ピクセルを識別する。識別した右目用イメージの特定ピクセル及び識別した左目用イメージの特定ピクセルに基づいて、測定不一致の値を自動計算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビデオの試験測定機器及び方法に関し、特に、3次元(3D)イメージの不一致を測定する試験測定機器及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3D映画の制作において、不一致(disparity)とは、対象に対する左目のビューと右目のビューにおける対応ピクセルの水平方向の間隔である。不一致の量及び極性は、3Dプレーンにおける対象の深さを決定する。これにより、対象が通常のイメージ・プレーンよりも近いか又は離れているようになる。不一致が負ならば、即ち、右目のイメージが左目のイメージの左ならば、不一致の対象は、通常のイメージ・プレーンよりも近くに現れる。不一致が正ならば、即ち、右目のイメージが左目のイメージの右ならば、不一致の対象は、通常のイメージ・プレーンよりも更に離れて、即ち、更に遠くに現れる。不一致が大きすぎると、観察者の頭痛のたねになるか、又は、観察者を不快にする。不一致が小さすぎると、3D効果が下がる。不一致の測定は、3Dビデオ制作に必要であり、カメラの設定、プロダクション、ポスト・プロダクション、品質保証などに用いることができる。コンピュータで作成したグラフィックをライブ素材と組合せるので、ビデオ・ポスト・プロダクションでの測定がますます重要となってきており、ここで、不一致を判断することは、これら2つの技術を一緒にまとめるのに重要である。
【0003】
不一致を測定するには、従来、種々のアプローチを用いた。あるアプローチでは、ユーザは、ピクチャを拡大し、ルーラ(画面上の定規)により対象のずれを測定した。このアプローチは簡単であるが、粗雑であり、不正確になりやすい。より洗練されたアプローチは、ビデオ波形モニタを用いることである。このアプローチでは、ユーザは、第1測定用のサンプル用カーソルを手動で動かし、第2測定用のサンプル用カーソルを手動で動かし、これら2つの測定の差を計算し、計算結果をビデオ・フォーマットの幅によりピクセル単位で除算して、ビデオ水平分解能幅に対する不一致をピクセル単位で求める。このアプローチは、より正確であるが、時間がかかり、ユーザがビデオ・フォーマットの詳細をはっきりと把握していなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−104425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、不一致の測定を迅速且つ容易に行える方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様は、次のようになる。
(1)第1イメージのピクセルを識別するサンプル用カーソルを制御する手段と;第2イメージのピクセルを識別する不一致用カーソルを制御する手段と;上記第1イメージのピクセル及び上記第2イメージのピクセルに基づいて測定不一致値を求める手段とを具えた試験測定機器。
(2)上記不一致用カーソルは、上記サンプル用カーソルの移動に追従する態様1の試験測定機器。
(3)上記第1イメージ及び上記第2イメージは、コンポジット・イメージとして表示される態様1の試験測定機器。
(4)上記第1イメージ及び上記第2イメージは、2つの独立したイメージとして表示される態様1の試験測定機器。
(5)サンプル用カーソルを用いて第1イメージのピクセルを識別し;不一致用カーソルを用いて第2イメージのピクセルを識別し;上記第1イメージのピクセル及び上記第2イメージのピクセルに基づいて測定不一致値を計算する試験測定方法。
(6)上記不一致用カーソルは、上記サンプル用カーソルの移動に追従する態様5の試験測定方法。
(7)上記第1イメージ及び上記第2イメージは、コンポジット・イメージとして表示される態様5の試験測定方法。
(8)上記第1イメージ及び上記第2イメージは、2つの独立したイメージとして表示される態様5の試験測定方法。
【発明の効果】
【0007】
よって、本発明の試験測定機器によれば、不一致用カーソルを用いて、3Dイメージの不一致測定を迅速且つ容易に行える。動作において、ユーザは、第1イメージのピクセルを特定するサンプル用カーソルを用いることができると共に、第2イメージのピクセルを特定する不一致用カーソルを用いることができる。次に、本発明の試験測定機器は、これら2つのピクセルに基づいて、不一致の測定値を自動的に提供できる。
【0008】
本発明の目的、利点及び新規な特徴は、添付図を参照した以下の詳細な説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施例によるビデオ波形モニタの表示を示す図である。
【図2】本発明の第2実施例によるビデオ波形モニタの表示を示す図である。
【実施例】
【0010】
図1は、本願出願人のテクトロニクス社製WFM8000型波形モニタの如きビデオ波形モニタによる本発明の第1実施例の表示100を示す。表示100は、被試験イメージ、従来のサンプル用カーソル145、本発明の実施例による不一致用カーソル150を示す。これらの全てについて、詳細に後述する。なお、第1イメージのピクセルを識別するサンプル用カーソルを制御する手段、第2イメージのピクセルを識別する不一致用カーソルを制御する手段、第1イメージのピクセル及び第2イメージのピクセルに基づいて測定不一致値を求める手段は、ビデオ波形モニタを制御するマイクロプロセッサ及びその制御ソフトウェアなどにより構成できる。また、ビデオ波形モニタは、従来技術であるため、その具体的な構成の説明は省略する。
【0011】
被試験イメージは、3D試験に一般的に用いる従来の試験イメージである。これは、コンポジット・イメージであり、2つの別々の1080iイメージである左目用イメージ及び右目用イメージを具えている。各イメージは、1920×1080アクティブ・ピクセルのピクチャ領域を有し、単一のイメージに重ね合わされる。左目用イメージ及び右目用イメージの両方は、いくつかの共通要素を含んでおり、これらのデータは完全に同じである。これら共通要素は、エッジの周囲に配置される。イメージ・レジストレーション(位置合わせ)、水平分解能、カラー・バー、4:3セーフ領域などに、これら共通要素を用いる。3Dコンテンツは、中心の矩形105内に完全に配置され、左標的110、右目標的115、垂直ポール120、立体ラベル「3D」125、立体ラベル「TV」130、テキスト・レベル「Left Eye Open」135、テキスト・ラベル「Right Eye Open」から構成される。ポール120は、底部で不一致がゼロで、頂部で負の不一致である。これは、ポールの頂部が観察者方向に伸びている外見となる。立体ラベル「3D」125は、負の不一致であるので、通常のビュー(イメージ)・プレーンよりも観察者に近づいて現れる。立体ラベル「TV」130は、正の不一致であるので、通常のビュー・プレーンよりも観察者から離れて現れる。「Left Eye Open」テキスト135は、左目用イメージ内にのみ現れ、「Right Eye Open」テキスト140は、右目用イメージ内にのみ現れる。これらテキストには、3D効果がなく、一方の目専用にデザインされたイメージを観察するのにその一方の目を近づけた観察者が、組合せイメージを区別するためにのみ用いる。左標的110において、外側のリングが通常のビュー・プレーンにあり、内側のリングが離れて現れ、球も離れて現れる。右標的115において、外側のリングが通常のビュー・プレーンにあり、内側のリングが近づいて現れ、球も近づいて現れる。図1は、白黒イメージの図として表すが、ビデオ波形モニタ上に表示すると、このイメージはカラーで表される。
【0012】
サンプル用カーソル145(「ピクセル用カーソル」としても参照される)が実線の十字カーソルとして示され、不一致用カーソルのリードアウト155内のテキスト・ラベル「S」に対応する。サンプル用カーソル145により、ユーザは、ビデオ波形モニタ上での分析用にイメージの特定サンプル(又はピクセル)を識別できる。
【0013】
不一致用カーソル150は、点線の垂直線として示され、不一致用カーソルのリードアウト155内のテキスト・ラベル「Di」に対応する。
【0014】
動作において、ユーザは、左目用ビュー内の対象のエッジ上にサンプル用カーソル145を配置して、左目用イメージの特定ピクセルを特定する。次に、ユーザは、右目用ビュー内の対象の同じ又は対応のエッジ上に不一致用カーソル150を配置して、右目用イメージの特定ピクセルを特定する。(代わりに、サンプル用カーソル145を用いて、右目用イメージの特定ピクセルを特定してもよく、不一致用カーソル150を用いて、左目用イメージの特定ピクセルを特定してもよい。)不一致用カーソルのリードアウト155は、特定されたピクセルに基づいて、測定された不一致の値を提供する。例えば、実施例において、不一致用カーソルのリードアウト155は、サンプル用カーソル145に対して正又は負のピクセル数を表示する。別の実施例において、不一致用カーソルのリードアウト155は、ビデオ水平分解能幅での百分率にて、測定した対象の不一致を表示する。例えば、図1において、不一致用カーソルのリードアウト155は、「Disparity cursors -5.93% of screen width(不一致用カーソルがスクリーン幅の−5.93%)」の読出し(表示)を行う。これは、ビデオ波形モニタに既存のビデオ・フォーマットの水平分解能及びピクセル差に基づいた自動計算である。
【0015】
実施例において、不一致用カーソル150は、サンプル用カーソル145の動きに追従する。すなわち、ユーザがサンプル用カーソル145を移動すると、不一致用カーソル150が同じ方法で自動的に移動する。よって、不一致測定が一定に維持される。また、第2対象の測定は、サンプル用カーソル145の場所を調整して迅速に行える。この方法で、いくつかの同様な対象を迅速に測定でき、期待された深さに対して比較できる。
【0016】
本発明は、図1に示す実施例に限定されないことが理解できよう。例えば、図2に示す他の実施例において、表示200において、左目用イメージ205及び右目用イメージ210を別々に示し分析してもよい。3D制作で一般的なように、2つの別々のビデオ・フィード(ビデオの流れ)を2台の別々のカメラから供給する場合に、図2に示す実施例は特に有用である。他の実施例において、パレード・モード(各コンポーネントを並べて表示するモード)又は重ね合わせモード(各コンポーネントを重ねて表示するモード)において、RGB、YCbCr及びXYZ波形トレースの如きビデオ信号波形上に不一致用カーソルを用いる。他の実施例において、立体写真の如き他のコンポジット・イメージ又は「左マイナス右」の如き差イメージと共に不一致用カーソルを用いることができる。別の実施例において、不一致用カーソルを用いて、垂直不一致を求めることもできる。
【0017】
サンプル用カーソル145を実線の十字カーソルとして示し、不一致用カーソルを点線として示したが、これらの例は説明のためのみであることが理解できよう。また、サンプル用カーソル及び不一致用カーソルは、代わりに、実線、点線、破線、又は色付き線の任意の組合せ、十字、円、点、マウス・ポインタ、又はビデオ内の対象のエッジを示すことができる他のカーソルを用いて表してもよい。
【0018】
ビデオ波形モニタの表示は、被試験イメージを「デシメーション(間引き)」するので、小さな表示上に示すことができる。これは、不一致を測定しようとする際に、エラーを生じる。このエラーを避けるために、実施例(図示せず)において、ビデオ波形モニタに接続された外部モニタ上に被試験イメージの完全な高分解能(HD)表示と共にサンプル用カーソル及び不一致用カーソルを一緒に示す。ユーザは、この外部表示を用いて、一層細かなカーソル調整ができるので、より正確な不一致測定ができる。
【0019】
本発明は、ビデオ試験測定機器の分野で非常に進歩したものであることが上述から理解できよう。本発明の説明のために特定実施例について図示し説明したが、本発明の要旨を逸脱することなく種々の変更が可能なことが理解できよう。
【符号の説明】
【0020】
100 表示
105 中心の矩形
110 左標的
115 右標的
120 垂直ポール
125、130 立体ラベル
135、140 テキスト・ラベル
145 サンプル用カーソル
150 不一致用カーソル
155 リードアウト
200 表示
205 左目用イメージ
210 右目用イメージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1イメージのピクセルを識別するサンプル用カーソルを制御する手段と、
第2イメージのピクセルを識別する不一致用カーソルを制御する手段と、
上記第1イメージのピクセル及び上記第2イメージのピクセルに基づいて測定不一致値を求める手段と
を具えた試験測定機器。
【請求項2】
サンプル用カーソルを用いて第1イメージのピクセルを識別し、
不一致用カーソルを用いて第2イメージのピクセルを識別し、
上記第1イメージのピクセル及び上記第2イメージのピクセルに基づいて測定不一致値を計算する試験測定方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−134953(P2012−134953A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250728(P2011−250728)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(391002340)テクトロニクス・インコーポレイテッド (234)
【氏名又は名称原語表記】TEKTRONIX,INC.
【Fターム(参考)】