説明

試験管の検知方法及び検知装置

【課題】血液検体の各分離位置と分離範囲としての空気封入高さ、血清収容高さ、シリコン分離剤収容高さ等を高精度に検出できる試験管の検知方法を提供することにある。
【解決手段】血清Aと血餅Cとがシリコン分離剤Bによって分離され、血清Aと栓2との間に空気Dが封入された状態の血液検体が収容された試験管1の検知方法において、前記試験管1を挟んでX線を照射するX線管11と該X線管11から前記試験管1を透過したX線透視像を撮像する撮像装置として固体撮像素子12とを対向して設け、前記試験管1を透過したX線透視像を撮像することにより、前記試験管1の情報を検知することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、血液検体が収容された試験管の内部情報を検知する試験管の検知方法及び検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血液を遠心分離機等を用いて血清と血餅とに分離する場合、その分離が的確に行なわれるように、試験管の中にシリコン分離剤を入れた分離剤入り試験管が使用されている。この試験管を使用すると、遠心分離処理後の試験管1内には、図2に示すように、血清Aと血餅Cとがシリコン分離剤Bによって分離され、血清Aと栓2との間に空気Dが封入された状態を呈する血液検体が得られる。
【0003】
前記のように、血清Aと血餅Cとがシリコン分離剤Bによって分離され、血清Aと栓2との間に空気Dが封入された状態の血液検体について、次の処理(分取・分注機のノズルを栓2から血清Aの位置に達するように突き刺して、試験管1内部の血清Aを分取する作業など)を行なう場合、血液検体の分離位置、即ち空気Dと血清Aとの分離位置e、血清Aとシリコン分離剤Bとの分離位置f、血餅Cとシリコン分離剤Bとの分離位置gと、分離範囲としての空気封入高さd、血清収容高さa、シリコン分離剤収容高さb及びそれに関係した栓高さhを検知することが要求される。
【0004】
なお、前記空気Dの封入高さd、血清Aの収容高さa、シリコン分離剤Bの収容高さbは試験管1内部の血餅Cの量によって全て異なるので、これらのレベルが的確に検知されないと、分取・分注機によって血清Aを分注する際に、分取・分注機のノズルがシリコン分離剤Bに接触してシリコン分離剤Bを吸い上げたり、前記ノズルが血清Aの中間高さ位置に停止して血清Aをシリコン分離剤Bの上部に残すことになる等の問題が発生する。
【0005】
前記のような血液検体の検知装置として、血清と血餅とがシリコン分離剤で分離された状態で収容されている試験管に検出コイルを嵌合させ、この検出コイルに所定周波数の測定信号を供給しながら当該検出コイルと試験管とを相対的に移動させることにより、前記測定信号に生じる信号レベル変化に基づいて血清と血餅との分離位置を検出するようにした試験管の検知装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
病院などにおいて、被採血者から採血を行なった場合、採血した血液検体を試験管に収容している。そして、採血日時、被採血者の情報、例えば氏名、性別、年齢等を、図2に示すように、ラベル3にバーコード印刷し、このラベル3を試験管1の外周面に貼付けている。
【0007】
例えば、病院で採用している採血管セットシステムは、病院の受付け場所(室)で、被採血者の情報の収録、収録した情報のラベルへの記録して、同ラベルを採血管への貼付け、ラベルが貼付けられた試験管を採血実行場所(室)への搬送等が行なわれる。また採血実行場所(室)では搬入された試験管に貼付けられているラベルからの情報の読み取り、読み取った情報の表示、受付け場所(室)に待機している被採血者の呼び出し、採血実行場所(室)に現れた被採血者の採血作業を行うことが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2002−323479号公報
【特許文献2】特許第2739928号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、前記特許文献1に開示の検知装置は、検出コイルを用いた磁気的な検出手段を採用しているため、血液検体の各分離位置と分離範囲としての空気封入高さ、血清収容高さ、シリコン分離剤収容高さ及びそれに関係した栓高さを正確に検知することが困難であり、また装置構造が複雑で設備費が高価になるという問題があった。
【0009】
検知装置として、検出コイルを用いた磁気的な検出手段に代って、光、電波、空気圧を用いた検知方法が知られているが、検知誤差が大きく、また外周面にバーコード印刷を施したラベルが貼付けられている試験管においては、検知できない場合もある。
【0010】
この発明は、前記事情に着目してなされたもので、その目的は、血液検体の各分離位置と分離範囲としての空気封入高さ、血清収容高さ、シリコン分離剤収容高さ及びそれに関係した栓高さ等の情報を高精度に検出することができ、また装置構造が簡単で設備費を安価にすることができる試験管の検知方法と検知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、前記の目的を達成するために、請求項1は、血清と血餅とが分離剤によって分離され、血清と栓との間に空気が封入された状態の血液検体が収容された試験管の検知方法において、前記試験管を挟んでX線を照射するX線管と該X線管から前記試験管を透過したX線透視像を撮像する撮像装置とを対向して設け、前記試験管を透過したX線透視像を撮像することにより、前記試験管の情報を検知することを特徴とする。
【0012】
請求項2は、請求項1の前記試験管の情報は、試験管の栓高さ、空気位置、血清位置、分離剤位置、血餅位置の少なくともいずれか一つであることを特徴とする。
【0013】
請求項3は、請求項1の前記撮像装置は、前記試験管を透過したX線透視像を撮像する固体撮像素子であることを特徴とする。
【0014】
請求項4は、血清と血餅とが分離剤によって分離され、血清と栓との間に空気が封入された状態の血液検体が収容された試験管の検知装置において、前記試験管を垂直状態に保持する保持装置と、前記試験管の一側に設けられ該試験管にX線を照射するX線管と、前記試験管の他側に設けられ該試験管を透過したX線透視像を撮像する撮像装置と、
前記撮像装置の撮像信号を処理して前記試験管の情報を検知する手段とを具備したことを特徴とする。
【0015】
請求項5は、請求項4の前記撮像装置は、前記試験管を透過したX線透視像を撮像する固体撮像素子であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
この発明の試験管の検知方法及び検知装置は、試験管にX線を照射し、試験管を透過したX線透視像を撮像することにより、試験管内の分離剤が傾いていても、また外周面にラベルが貼り付けてあっても、試験管の内部情報等を正確に検知でき、また装置構造を簡単にして設備費の低減を計ることができるなどの効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態を図面に従い具体的に説明する。
【0018】
図1は、この発明の第1の実施形態に係る試験管の検知装置を示すものであり、図中1は図2に示した検知対象となる試験管である。この試験管1は、高さが、例えば100mm、75mmで、直径が16mmφ、13mmφである。この試験管1内には、血清Aと血餅Cとが分離剤、例えばシリコン分離剤Bによって分離され、血清Aと栓2との間に空気Dが封入された状態の血液検体が収容されている。10は前記試験管1を垂直状態に保持する保持装置としての試験管保持台である。
【0019】
試験管保持台10上で、前記試験管1の一側には試験管1の全体に向ってX線を照射するX線管11が設けられている。前記試験管1の他側には試験管1を透過したX線透視像を撮像する撮像装置としてCCD等の固体撮像素子12が設けられている。そして、X線管11と固体撮像素子12とによってX線テレビジョンシステムが構成され、試験管1の情報、例えば試験管1の栓高さ、空気位置d、血清位置a、分離剤位置b、血餅位置cの画像が高速でしかもリアルタイムで得られるようになっている。
【0020】
X線管11はX線高電圧発生装置13に接続されている。固体撮像素子12には画像処理装置14を介して画像データがシーケンサー、パソコン、1チップマイコン等のCPU15に取り込まれるようになっている。
【0021】
前記実施形態によれば、X線高電圧発生装置13からX線管11に高電圧が印加されると、X線管11からX線が試験管保持台10に垂直状態に保持された試験管1に対して高さ方向の全体に亘って照射される。試験管1に照射されたX線は試験管1の栓2、試験管1内の血清A、シリコン分離剤B、血餅C及び空気Dを透過し、X線透視像は固体撮像素子12によって撮像される。
【0022】
固体撮像素子12によって撮像された画像は画像処理装置14を介してCPU15に取込まれ、試験管1の情報、例えば試験管1の栓高さ、空気位置d、血清位置a、分離剤位置b、血餅位置cの画像が得られる。この場合、試験管1の外周面にバーコード印刷を施したラベルが貼付けられていても、X線はラベルを透視して試験管1の内部の情報を透視できる。また、シリコン分離剤Bが破線で示すように傾いていても、またシリコン分離剤Bの上層が血清Aと、下層が血餅Cと混合して分離状態が明確でない場合も、この情報をX線透視像として固体撮像素子12によって正確に撮像される。
【0023】
なお、前記実施形態では、試験管1、X線管11及び固体撮像素子12を固定的に設置し、X線管11からのX線透視像を撮像する固体撮像素子12とを対向して設けたが、X線管11及び固体撮像素子12を試験管1の高さ方向に上下動する駆動機構に支持して一定速度で上下動し、試験管1の栓2からシリコン分離剤Cの位置まで検知するようにしてもよい。また、X線管11及び固体撮像素子12を対向して固定的に設置し、試験管1を高さ方向に上下動する駆動機構に支持して一定速度で上下動し、試験管1の栓2からシリコン分離剤Cの位置まで検知するようにしてもよい。
【0024】
また、撮像装置としてCCD等の固体撮像素子12を用いたが、撮像装置としては、イメージインテンシファイアを備えたテレビカメラを設置したX線テレビジョンシステム(I.I)とし、X線透視像をモニターに画像として映し出すようにしてもよい。
【0025】
また、前記のように構成された試験管の検知装置は、検体入り試験管1が図示しない搬送装置(ベルトコンベア等)により本検知装置まで搬送されてくると、この試験管1は図示しないロボットアームにより本検知装置の試験管保持台10に移されて垂直状態に保持され、この保持状態でX線を照射して検知するように、搬送装置との組合わせも可能である。
【0026】
なお、この発明は前記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、前記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を組合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明の第1の実施形態を示す試験管検知装置の構成図。
【図2】検体入りの試験管の構成図。
【符号の説明】
【0028】
1…試験管、2…栓、A…血清、a…血清収容高さ、B…シリコン分離剤、b…シリコン分離剤収容高さ、C…血餅、D…空気、d…空気封入高さ、11…X線管、12…固体撮像素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血清と血餅とが分離剤によって分離され、血清と栓との間に空気が封入された状態の血液検体が収容された試験管の検知方法において、
前記試験管を挟んでX線を照射するX線管と該X線管から前記試験管を透過したX線透視像を撮像する撮像装置とを対向して設け、前記試験管を透過したX線透視像を撮像することにより、前記試験管の情報を検知することを特徴とする試験管の検知方法。
【請求項2】
前記試験管の情報は、試験管の栓高さ、空気位置、血清位置、分離剤位置、血餅位置の少なくともいずれか一つであることを特徴とする請求項1記載の試験管の検知方法。
【請求項3】
前記撮像装置は、前記試験管を透過したX線透視像を撮像する固体撮像素子であることを特徴とする請求項1記載の試験管の検知方法。
【請求項4】
血清と血餅とが分離剤によって分離され、血清と栓との間に空気が封入された状態の血液検体が収容された試験管の検知装置において、
前記試験管を垂直状態に保持する保持装置と、
前記試験管の一側に設けられ該試験管にX線を照射するX線管と、
前記試験管の他側に設けられ該試験管を透過したX線透視像を撮像する撮像装置と、
前記撮像装置の撮像信号を処理して前記試験管の情報を検知する手段と、
を具備したことを特徴とする試験管の検知装置。
【請求項5】
前記撮像装置は、前記試験管を透過したX線透視像を撮像する固体撮像素子であることを特徴とする請求項4記載の試験管の検知装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−200949(P2006−200949A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−10820(P2005−10820)
【出願日】平成17年1月18日(2005.1.18)
【出願人】(592031422)
【Fターム(参考)】