説明

試験管用トレイ

【課題】横置きにしたときにはトレイとして機能し、縦置きにしたときには試験管立てとして機能するトレイを提供する。
【解決手段】本発明のトレイ1は、上面が開口した箱状のトレイ本体1Aと、該トレイ本体1Aの対向する一組の側面板の一つに試験管差込用孔5を多数穿設して成り、トレイ本体1Aを横置きにしたときにはトレイとして機能し、縦置きにしたときには試験管立てとして機能するようにしている。また上面が開口したケース2を準備し、トレイ1を複数整列配置することにより、トレイ1の集合体としての試験管立て17を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横置きにすると試験管を寝かした状態で収納するためのトレイとして機能し、縦置きにすると患者別等に仕分けした試験管立てとして機能するトレイに関するもである。
【背景技術】
【0002】
総合病院や大学の付属病院、その他の医療機関において行われる血液検査は、医師等の指示に応じた検査項目ごとに試験管(採血管及びスピッツ等を含む)を選択してこれを取り出し、取り出した試験管に患者情報を印字したラベルを貼付して医師からの指示書を添えて患者の室又はナースステーション等の採血場所へ搬送している。そして、採血し後の試験管を検査工程へ搬送し、検査処理している。これらの試験管の搬送は、上面側開口したトレイに入れて行う方式か、又は試験管立てに立てた姿勢で収納して行う方式か、更にはビニール袋等に袋詰めして行うパック方式が用いられている。本発明は、そのちの試験管立て方式の技術に関するものである。
【0003】
而して、試験管立て方式の従来技術としては、特許文献1及び2に記載されたものがある。特許文献1に記載された従来技術は、ベース部に前面側と上面側が開口した凹部を設け、該凹部の両側面に試験管の底部受け部材をスライド自在に嵌合装着できる溝部を形成し、該溝部を多段式に設けることで底部受け部材の高さを調節自在となしている。そして、ベース部に支柱を介して上部受け部材を取り付け、上部受け部材に試験管を挿通する保持穴を設けている。この保持穴には、リング状のスペーサを脱着自在に装着することで、試験管の径の大きさに対応できるようにしている。
【0004】
一方、特許文献2に記載された従来技術は、試験管を立てた状態で収納するための複数個の収容凹部が形成された内ラックと、該内ラックを複数列並べて収納し、左右に開閉できる把手を持って搬送できるようにした外ラックとで構成されている。
【特許文献1】特開2001−318104号公報
【特許文献2】特開平11−19072号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、前記特許文献1及び特許文献2に示す試験管立ての技術では、試験管を立てた状態での使用ができるだけである。そのため、通常は、採血前は、広いパン状のトレイの上に試験管を寝かした状態で準備しておき、採血した後等に試験管を試験管立てへ立てた状態で収納し、この状態で検査工程へ運搬するようにしていた。
このように、まだ採血していない空の試験管の運搬はトレイで行い、採血後の試験管の運搬は試験管立てで行っているため、トレイと試験管立てとの二種類の試験管収納容器を必要とするという欠点があった。
【0006】
本発明は従来の前記課題に鑑みてこれを改良除去したものであって、横置きにしたときにはトレイとして機能し、縦置きにしたときには試験管立てとして機能する試験管用のトレイを提供すると共に、これをケース内に複数配列して収納できるようにした試験管立てを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
而して、前記課題を解決するために本発明が採用した請求項1の手段は、四つの側面板と底板とからなり、横置きの状態で上面が開口した箱状のトレイ本体を有し、側面板のうちの一つに試験管差込用孔が多数穿設されて成り、トレイ本体の底板を底面にしてトレイ本体を横置きにしたときにはトレイ本体内に試験管を寝かした状態で多数収納することができ、トレイ本体の試験管差込用孔が多数穿設された側面板に対向する側面板を底面にしてトレイ本体を縦置きにしたときには試験管差込用孔から挿通された試験管の頭部側が前記試験管差込用孔の多数穿設された側面板よりも外方へ突出した状態で試験管を立てて収容することができ、試験管立てとして機能することを特徴とする試験管用トレイである。
【0008】
本発明が採用した請求項2の手段は、試験管差込用孔の穿設された側面板の内側に該側面板と平行する中板を設け、該中板に前記側面板の試験管差込用孔と同じ孔を穿設した請求項1に記載の試験管用トレイである。
【0009】
本発明が採用した請求項3の手段は、試験管差込用孔の穿設された側面板の内側に中板を配設し、該中板の上端側をトレイ本体の試験管差込用孔が設けられた側面板の上端面側寄りに位置させると共に、中板の下端側を前記試験管差込用孔が設けられた側面板から離れて位置させており、中板と前記トレイ本体の試験管差込用孔の穿設された側面板との間に試験管が入り込まないようになっている請求項1に記載の試験管用トレイである。
【0010】
本発明が採用した請求項4の手段は、試験管差込用孔には、試験管の挿通を案内し、安定して支持するための筒状部を備えたホルダーが装着されている請求項1に記載の試験管用トレイである。
【0011】
本発明が採用した請求項5の手段は、中板がトレイ本体の対向する一組の内側面に設けたスライド溝に脱着自在に取り付けられる請求項2に記載の試験管用トレイである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明にあっては、トレイを横置きにしたときには、パン状のトレイ本来の機能を発揮し、患者ごとに取り揃えた複数の試験管を寝かした状態で収納することができる。従って、上面側が広く開口しており、試験管の取扱いが便利である。また試験管は当初から横に寝かした状態で収容されるので、倒れる等の心配も不要である。
これに対して、採血した後であって、トレイを縦置きにしたときには、対向する一組の側面の一つに形成した試験管差込用孔を通じて試験管を立てて収容することができる。このように、請求項1の発明のトレイは、試験管立てを兼用することのできるトレイであり、使い勝手が極めてよい。
【0013】
請求項2の発明にあっては、試験管差込用孔の穿設された側面板の内側に該側面板と平行する中板を設け、該中板に前記側面板の試験管差込用孔と同じ孔を穿設したから、トレイ本体を縦置きにしたときに、上下に並ぶ側面板と中板とが間隔をおいて試験管を支えるようになり、試験管の安定した支持が得られる。
【0014】
請求項3の発明にあっては、中板が傾斜して設けられているので、横置きでトレイとして使用する場合に、前記傾斜した中板が試験管の摺動案内面として機能し、試験管の円滑且つソフトなトレイへの供給が可能である。また中板とトレイ本体の試験管差込用孔が設けられた側面板との間に、試験管が入り込むということもない。
【0015】
請求項4の発明にあっては、トレイの試験管差込用孔に、筒状部を備えたホルダーを装着している。ホルダーの筒状部は、試験管を挿入するときに、ガイドの役目を果たし、また挿入後はみだりに試験管が移動しないようにこれを保持することができる。従って、試験管を立てて収容したときに、試験管が安定して支持されるようになる。
【0016】
請求項5の発明にあっては、請求項2の発明の中板がスライド自在に脱着でき、横置きでトレイとして使用するときに、中板を取り外しておくことで、広く利用することが可能である。また縦置きで試験管立てとして利用するときは、中板をスライド溝へ嵌合装着すれば、試験管の安定した直立姿勢での支持構造が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明の構成を図面に示す発明の実施の形態に基づいて説明すると次の通りである。図1は本発明の第1の実施の形態に係るものであり、図(A)はトレイ1の中板2を取り外した状態を示す斜視図、図(B)はトレイ1を縦置きで試験管立てとして利用した場合の縦断面図、図(C)はトレイ1を横置きにした状態の縦断面図である。同図の図(A)に示す如く、トレイ1は、横置きの状態で上面側が開口した箱状のトレイ本体1Aを有している。トレイ本体1Aの対向する一組の側面板3A,3Bのうち、縦置きで使用するときに上面となる位置の側面板3Aには、試験管6を差し込むための孔5が二列状にそれぞれ五つずつ形成されている。この試験管差込用孔5は、その直径の大きさを変えることにより、大径の試験管を差し込むためのもの又は小径の試験管を差し込むためのもの等に区別して使用することが可能である。
【0018】
またトレイ本体1Aの他方の対向する一組の側面板3C,3Dの内側面のうち、前記試験管差込用孔5の形成された側面板3A寄りの位置に、開口端面側から底板側に至るスライド溝7が形成されている。このスライド溝7には、側面板3Aと平行に配設される中板2が脱着自在に嵌合装着されるようになっている。中板2には、前記側面板3Aの試験管差込用孔5と同じ試験管差込用孔8が設けられており、上下の各孔5,8が同一軸心線上に並ぶように設けられている。
【0019】
このように構成されたトレイ1は、採血前の状態では、同図の図(C)に示すように、トレイ本体1Aを横置きにし、複数の試験管6を寝かした状態で収納して持ち運びするような使用形態がなされる。このとき、中板2は図(C)に示すように、スライド溝7へ装着したままであってもよく、また必要であればスライド溝7から取外してトレイ内へ寝かして置くこともできる。取り外しておけば、より沢山の試験管6を収納することが可能である。なお、試験管6は、医師からの指示に基づいて血液検査を必要とする患者ごとに、その検査項目に応じて試験管6の種類が選択され、試験管自動ラベリング装置等において、患者情報等を印刷した識別ラベルが自動的に貼付されている。これであれば、看護師等が容易に運搬することが可能であり、取扱いが便利である。検査項目別に試験管6が準備された患者ごとのトレイ1は、採血室へ運搬され、各試験管6に採血がなされる。そして、採血作業が終了した後は、同図の図(B)に示すように、トレイ本体1Aを縦置きにし、採血した試験管6を側面板3Aと、中板2との上下の試験管差込用孔5,8に貫通して差し込んで試験管立てとして利用することができる。このとき、側面板3Aと中板2の試験管差込用孔5,8とは、試験管6が移動又は揺動しないように立てた姿勢を保持し、試験管6を安定させる働きがある。
【0020】
図2は本発明の第2の実施の形態に係るトレイ11を示すものであり、図(A)は平面図、図(B)はその中板12を示す平面図、図(C)は正面図、図(D)は左側面図、図(E)は右側面図、図(F)は底面図である。なお、図1の場合と同一部材は同一符号を付している。図1に示す第1の実施の形態の場合と異なるところは、中板12をトレイ本体11Aに対して固定方式とした点、側面板3A及び中板12に設けた試験管差込用孔を大小の二種類とした点の二点である。試験管差込用孔5Aは、大径の試験管を差し込むためのものであり、試験管差込用孔5Bは小径の試験管を差し込むためのものである。
【0021】
トレイ11の使用態様については、前記第1の実施の形態の場合と同じであり、採血前の状態ではトレイ本体11Aを横置き状態でトレイとして使用し、採血後にあっては、縦置き状態で試験管立てとして使用する。このようにしてその患者に必要な複数の試験管6が一つのトレイ本体11Aに収納されると、当該一つのトレイ11を一つの試験管立てとして利用し、次の検査室へ看護師が搬送したりする。
【0022】
図3は本発明の第3の実施の形態に係るトレイ13を示すものであり、図(A)はトレイ13を横置きにした状態の縦断面図、図(B)はトレイ13を縦置きで試験管立てとして利用した場合の縦断面図である。この実施の形態では、第1の実施の形態における中板2に変えて斜めに傾斜して設置した中板14を用いるようにしている。傾斜した中板14は、その上端側がトレイ本体13Aの試験管差込用孔5を設けた側面板3Aの上端面側寄りに位置しており、中板14と前記側面板3Aとの間に試験管6が入り込まないようになっている。なお、上端側の両部材は、図面では当接した場合を示しているが、両部材間に試験管6が入り込まないだけの隙間が設けられていても問題はない。
【0023】
このように、第3の実施の形態のトレイ13は、中板14が傾斜して設けられているので、横置きでトレイとして使用する場合に、前記傾斜した中板14が試験管6の摺動案内面として機能し、試験管6の円滑且つソフトなトレイへの供給が可能である。また使用中において、中板14とトレイ本体13Aの試験管差込用孔5が設けられた側面板3Aとの間に、試験管が入り込むということもない。
【0024】
図4乃至図6は本発明の第4の実施の形態に係るものであり、図4の図(A)はトレイ15を縦置きにした場合の平面図、図(B)は同正面図、図(C)は同右側面図である。また図5はトレイ15を縦置きにした場合の斜視図である。図6はトレイ15を複数並列してケース16内へ収納し、試験管立て17とした場合の斜視図である。トレイ15は、開口面側の全周縁にリブ18が突出形成されている。またトレイ本体15Aの対向する一組の側面板19A,19Bのうち、縦置きで使用するときに上面となる位置の側面板19Aには、試験管6を差し込むための孔20A,20Bが二列状にそれぞれ五つずつ形成されている。試験管差込用孔20Aは、大径の試験管を差し込むためのものであり、試験管差込用孔20Bは小径の試験管を差し込むためのものである。
【0025】
更に、試験管差込用孔20A,20Bには、ホルダー21が脱着自在に嵌合装着されている。ホルダー21は、側面板19Aの外側に位置してこれに係止される頭部21Aと、トレイ15の内部側に突出状に配設される筒部21Bとを有している。該筒部21Bは、試験管6の差し込みを案内する役目と、差し込み後は試験管6がみだりに移動しないようにこれを保持する役目とを有している。
【0026】
次に、このように構成されたトレイ15の使用態様について説明する。採血前の状態にあって、トレイ単体をトレイ本来の機能を発揮すべく使用する場合は、トレイ本体15Aを横置きの状態とし(図4の図(B)を平面図とした状態と同じ)、同図の鎖線で示すように、トレイ本体15A内に試験管6を寝かした状態で収納すればよい。試験管6は、医師からの指示に基づいて血液検査を必要とする患者ごとに、その検査項目に応じて試験管6の種類が選択され、試験管自動ラベリング装置等において、患者情報等を印刷した識別ラベルが自動的に貼付されている。これであれば、看護師等が容易に運搬することが可能であり、取扱いが便利である。検査項目別に試験管6が準備された患者ごとのトレイ1は、採血室へ運搬され、各試験管6に採血がなされる。
【0027】
そして、採血作業が終了した後は、図1の各部に示すように、トレイ本体15Aを縦置きにし、試験管差込用孔20A,20Bへ装着したホルダー21へ採血後の試験管6を差し込み、試験管立てとして利用することができる。このとき、試験管6は、ホルダー21の筒部21Bに保持されており、揺動したり、移動したりすることがない。このようにしてその患者に必要な複数の試験管6が一つのトレイ本体15Aに収納されると、当該一つのトレイ15を一つの試験管縦として利用し、次の検査室へ看護師が搬送することも可能である。
【0028】
また同様にして複数の患者の試験管6をそれぞれ別のトレイ本体15Aに収納し、図6に示すように、これをケース16へ縦置きの状態で整列配置し、複数のトレイ15の集合体とした試験管立て17を構成することも可能である。尚、ケース16の対向する一組の側面板22A,22Bには、トレイ本体15Aのリブ18を係合するための溝23が穿設してあり、トレイ15の装着後はトレイ15が倒れたり、むやみに移動しないように工夫されている。この場合は、10個のトレイ15をケース16内へ収納することが可能であり、一つの試験管立て17で患者10人に対応することが可能である。
【0029】
図7及び図8は本発明の第5の実施の形態に係るものであり、図7の図(A)はトレイ24を横置きの状態でトレイ本来の機能を発揮すべく使用する場合を示す斜視図、図(B)はトレイ24を縦置きの状態で試験管立てとして利用する場合を示す斜視図、図(C)はトレイ24の試験管差込用孔25A,25Bに装着するホルダー26を示す斜視図である。また図8はトレイ24を立てた状態で複数個、ケース27へ整列配置した場合の試験立て28を示す斜視図である。
【0030】
トレイ24は、ケース27の内面側の横幅に相当する長さを有し、図7の図(A)に示すように、横置きの状態で上面側が開口した箱状を成している。そして、対向する一組の側面板29A,29Bのうち、縦置きで使用するときに上面となる位置の側面板29Aには、試験管6を差し込むための孔30A及び30Bが二列状に複数個形成されている。試験管差込用孔30Aは、大径の試験管を差し込むためのものであり、試験管差込用孔30Bは小径の試験管を差し込むためのものである。またトレイ24の対向する残りの一組の側面板29C,29Dの外側には、前記ケース27の係止溝38と係合するための凸状のリブ32を備えた係止凸部33が設けられている。そして、試験管差込用孔25A及び25Bが形成された側面板29Aの前記係止凸部33の部分には、患者ごとの指示書34を装入するための細幅のポケット35が設けられている。
【0031】
また、試験管差込用孔25A及び25Bには、図7の図(C)に示す、ホルダー36が着脱自在に嵌合装着されている。ホルダー36は、側面板29Aの外側に位置してこれに係止される頭部36Aと、トレイ24の内部側に延長して配設される筒部36Bとを有し、筒部36Bは試験管6の差し込みを案内する役目と、差し込み後は試験管6がみだりに移動しないようにこれを保持する役目とを有している。
【0032】
一方、図8の斜視図に示す如く、試験管立て28を構成するためのケース27は、前記トレイ24を縦置きの状態で複数のものが一列状に配列収納されるようになっている。そして、ケース27の長手方向の対向する側板37A及び37Bに、所定間隔ごとの係止溝38が上端面側から所定寸法だけ下方へ向けて形成されている。係止溝38は、後述するトレイ24の両側面に形成された凸状のリブ32と係合することにより、トレイ24の転倒を防止するためのものである。またケース27は、短手方向の両端板37C及び37Dに左右に開閉できる把手39A及び39Bが取り付けられている。更に、一方側の端板37Dの上部側には、検査内容についての指示書40等を装入するためのポケット41が設けられている。
【0033】
次に、このように構成されたトレイ24及びこれを集合してケース27内へ収納した試験管立て28の使用態様を説明する。例えば、医師から血液検査を必要とする患者に対して個別に検査内容等についての指示が出されると、試験管自動ラベリング装置等において、その検査内容に応じた試験管6の種別が選択されて取り出される。これと同時に、患者名等を印刷した識別ラベル43が印刷され、取り出された試験管6の外表面に自動的に貼付される。識別ラベル43の貼付された試験管6は、図7の図(A)に示すように、横置きにした状態のトレイ24内へ患者ごとの指示書34と共に収納される。これであれば、看護師等が容易に運搬することが可能であり、取扱いが便利である。
【0034】
然る後は、特定の患者に対応するトレイ24を、図7の図(B)に示すように立てた状態にし、選択された各検査項目別の試験管6をホルダー36を介して試験管差込孔25A,25Bへ差し込み、立てた状態でこれに保持させる。また患者ごとの指示書34は、ポケット35へ装入しておく。これで、一応、一つのトレイ24が一つの試験管立てとして機能し、患者ごとの試験管立てとして運搬することが可能である。
【0035】
また図8に示すように、患者ごとに複数の試験管6を立てて収納してなるトレイ24を複数準備し、これをケース27内へ収納配置して複数のトレイ24の集合体としての試験管立て28を構成するようにしてもよい。このとき、把手39A,39Bは左右へ開いておき、その状態でトレイ24の両側面板29C,29Dに設けた凸状のリブ32が、ケース27の両側面板37A,37Bの係止溝38へ嵌合するように上方から降ろせばよい。これにより、トレイ24はケース27に対して拘束され、転倒したり、移動することがない。また試験管立て28に何らかの原因で多少の衝撃が加わった場合等であってもトレイ24が転倒するようなことはなく、試験管6を保護することが可能である。
【0036】
このようにしてその患者に必要な複数の試験管6とその指示書34等が一つのケース27に収納されると、同様にして別の患者の試験管6及び指示書34等を別のトレイ24に収納し、一つのケース27に対して患者別に合計十人分のトレイ24が準備される。なお、トレイ24は縦置きの状態では、正面側が開口した面となっており、該開口面を通じて採血後の試験管6に血液が入っているか否かを確認することができる。
【0037】
このようにして、一つの試験管立て28の準備が完了すると、試験管立て28は自動搬送装置等を介して目的とする病室又はナースステーション等へ搬送される。目的の場所では、看護師が患者ごとのトレイ24を取り出し、ポケット35に収納された指示書34等で確認しながら該当する患者の検査内容に応じた採血を行う。そして、トレイ24へ試験管6を戻し、一人の患者に対する全部の採血が終了すると、トレイ24をケース27へ戻すようにしている。採血した後の試験管6は、トレイ24の開口面から採血された血液を確認することができるので、まだ採血してない試験管6との区別が容易である。このようにしてケース27に収納された全てのトレイ24の全部の採血が完了すると、試験立て28を次の検査工程等へ自動搬送装置等を介して搬送している。
【0038】
このような試験管6の搬送方式であれば、医師から採血の指示が出された後、試験管6の種別の選択、識別ラベルの貼付、試験管6の搬送、採血、採血した試験管6の収集、検査に至るまでの血液検査業務の全体にわたって一貫して患者ごとの複数の試験管6を一つの集合体としてトレイ24に収容した状態で取り扱うことができ、極めて便利である。そのため、試験管6の取り違えが発生したりすることもなく、また採血する看護師又は医師等も、患者ごとの試験管6の取り出し及びその検査内容の確認等が容易である。更に、検査工程においては、試験管6を検査機器へ供給するために、所定の移し換えを行うがその場合に検体の取り違えが発生するようなこともない。
【0039】
なお、上記各実施の形態において、トレイはこれを横置き状態でトレイ本来の機能を発揮すべく使用するときは、これを段積みすることが可能であり、省スペースを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るものであり、図(A)はトレイの中板を取り外した状態を示す斜視図、図(B)はトレイを縦置きで試験管立てとして利用した場合の縦断面図、図(C)はトレイを横置きにした状態の縦断面図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係るトレイを縦置きにした状態の図面であり、図(A)は平面図、図(B)はその中板を示す平面図、図(C)は正面図、図(D)は左側面図、図(E)は右側面図、図(F)は底面図である。
【図3】本発明の第3の実施の形態に係るトレイを示すものであり、図(A)はトレイを横置きにした状態の縦断面図、図(B)はトレイを縦置きで試験管立てとして利用した場合の縦断面図である。
【図4】本発明の第4の実施の形態に係るものであり、図(A)はトレイを縦置きにした場合の平面図、図(B)は同正面図、図(C)は同右側面図である。
【図5】本発明の第4の実施の形態に係るものであり、トレイを縦置きにした場合の斜視図である。
【図6】本発明の第4の実施の形態に係るものであり、トレイを複数並列してケース内へ収納し、試験管立てとした場合の斜視図である。
【図7】本発明の第5の実施の形態に係るものであり、図(A)はトレイを横置きにした状態を示す斜視図、図(B)はトレイを縦置きにした状態を示す斜視図、図(C)はホルダーを示す斜視図である。
【図8】本発明の第5の実施の形態に係る試験管立てを示す全体斜視図である。
【符号の説明】
【0041】
1…トレイ、1A…トレイ本体、2…中板、3A,3B…側面板、5…試験管差込用孔、
7…スライド溝、8…試験管差込用孔、16…ケース、17…試験管立て、21…ホルダ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
四つの側面板と底板とからなり、横置きの状態で上面が開口した箱状のトレイ本体を有し、側面板のうちの一つに試験管差込用孔が多数穿設されて成り、トレイ本体の底板を底面にしてトレイ本体を横置きにしたときにはトレイ本体内に試験管を寝かした状態で多数収納することができ、トレイ本体の試験管差込用孔が多数穿設された側面板に対向する側面板を底面にしてトレイ本体を縦置きにしたときには試験管差込用孔から挿通された試験管の頭部側が前記試験管差込用孔の多数穿設された側面板よりも外方へ突出した状態で試験管を立てて収容することができ、試験管立てとして機能することを特徴とする試験管用トレイ。
【請求項2】
試験管差込用孔の穿設された側面板の内側に該側面板と平行する中板を設け、該中板に前記側面板の試験管差込用孔と同じ孔を穿設した請求項1に記載の試験管用トレイ。
【請求項3】
試験管差込用孔の穿設された側面板の内側に中板を配設し、該中板の上端側をトレイ本体の試験管差込用孔が設けられた側面板の上端面側寄りに位置させると共に、中板の下端側を前記試験管差込用孔が設けられた側面板から離れて位置させており、中板と前記トレイ本体の試験管差込用孔の穿設された側面板との間に試験管が入り込まないようになっている請求項1に記載の試験管用トレイ。
【請求項4】
試験管差込用孔には、試験管の挿通を案内し、安定して支持するための筒状部を備えたホルダーが装着されている請求項1に記載の試験管用トレイ。
【請求項5】
中板がトレイ本体の対向する一組の内側面に設けたスライド溝に脱着自在に取り付けられる請求項2に記載の試験管用トレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−162542(P2010−162542A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57956(P2010−57956)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【分割の表示】特願2004−362505(P2004−362505)の分割
【原出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【出願人】(000186566)小林クリエイト株式会社 (169)
【Fターム(参考)】