説明

試験薬服用情報収集器

【課題】新薬の治験において、治験用内服薬の服用時刻を手軽に検出して収集する。
【解決手段】試験薬用ケース1には、1回分の治験用内服薬を入れるエリアが複数ある。各エリアの蓋を、非接触型電子タグ2を付けたシールで封止する。治験用内服薬を服用するとき、試験薬用ケース1の蓋が開かれると、非接触型電子タグ2のアンテナ部が切断される。試験薬用ケース1を、読取器4が内蔵された収納箱3に戻して収納箱3を閉じると、読取器4は、非接触型電子タグ2と通信して、受信データと通信時刻を記録する。各非接触電子タグ2の最後の通信時刻を求め、治験用内服薬の服用時刻とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験薬服用情報収集器に関し、特に、非接触型電子タグを利用して試験薬の服用時刻を検出する試験薬服用情報収集器に関する。
【背景技術】
【0002】
新薬を開発したときには、被験者に服用させて、効能や副作用などを確認する治験を行う。従来の治験では、非常に多くの被験者を宿泊施設に缶詰にして、試験薬の服用の有無や服用時刻を確認している。また、医薬品にICタグを付加してトレースすることも行われている。以下に、医薬品を管理する従来技術の例をあげる。
【0003】
特許文献1に開示された「薬剤収容物」は、患者の手に渡った後においても、薬剤に関する情報のトレースを可能とするものである。図3に示すように、本体部の収容部に、最小服用単位の薬剤を個別に収容する。本体部に収容された最小服用単位の薬剤ごとに、ICタグに固有の薬剤IDを保持する。ICタグに保持された情報を読み出すことにより、単に薬剤の種類を識別するだけでなく、最小服用単位の薬剤を個々に識別できる。院外処方箋薬のように、患者が病院や薬局から薬剤を持ち帰り、病院外で服用する薬剤についても、それがどのような薬剤であり、いつ誰が処方し、いつ誰が調剤した薬剤であるのか、使用期限はいつであるのか等をトレースできる。
【特許文献1】特開2005-211601号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の治験方法では、手間がかかりコストが嵩むという問題がある。また、医薬品に非接触型電子タグを添付して追跡する方法では、医薬品の服用時刻を認識できないので、治験に利用することができない。
【0005】
本発明の目的は、上記従来の問題を解決して、新薬の治験において、試験薬の服用時刻を手軽に検出して収集できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明では、薬剤収納部と蓋部と非接触型電子タグとを有する試験薬用ケースと、非接触型電子タグと通信する読取器を内蔵し試験薬用ケースを収納する収納箱とを具備する試験薬服用情報収集器の非接触電子タグに、無線通信機能を有するIC部と、蓋部が開かれる際に切断されるアンテナ部とを備え、読取器に、収納箱が閉じられたときに非接触型電子タグと通信して受信データと受信時刻を記録する手段を備えた構成とした。
【0007】
また、試験薬を収納する薬剤収納部と、薬剤収納部を覆う蓋部と、薬剤収納部を蓋部で覆った状態でシールするシール部材と、シール部材に取り付けられた非接触型電子タグと、非接触型電子タグと通信する読取器とを具備する試験薬服用情報収集器の非接触電子タグに、無線通信機能を有するIC部と、蓋部が開かれる際に切断されるアンテナ部とを備え、読取器に、非接触型電子タグと通信して受信データと受信時刻を記録する手段を備えた構成とした。
【発明の効果】
【0008】
上記のように構成したことにより、治験における試験薬の服用時刻を手軽に検出して収集でき、被験者を拘束することなく治験が可能となる。また、在宅での治験が可能となり、コスト削減とともに、より実生活に近い環境での治験が手軽に行えるようになる。また、非接触電子タグを用いることにより、非接触電子タグを単純に張り替えるだけで、試験薬用ケースの再利用が簡単にできる。貼る位置も、蓋を開けるときに非接触電子タグが壊れるような位置であれば、どのように貼っても良く、非常に手軽に準備ができる。個々の医薬品を非接触電子タグのユニークな識別符号で管理できるので、どの薬をのんだということが明確に管理できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図1と図2を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0010】
本発明の実施例1は、蓋が開かれる際にアンテナ部が切断される非接触型電子タグを有する試験薬用ケースを、読取器を内蔵する収納箱に収納して閉じたときに、非接触型電子タグと通信して受信データを記録する試験薬服用情報収集器である。
【0011】
図1は、本発明の実施例1における試験薬服用情報収集器の試験薬用ケースと収納箱の概念図である。図1(a)は、試験薬用ケースの各エリアに治験用内服薬(試験薬)を収納して非接触型電子タグでシールした状態を示す図である。図1(b)は、試験薬用ケースの1つのエリアから治験用内服薬を取り出した状態を示す図である。図1(c)は、試験薬用ケースを収納する収納箱の斜視図である。収納箱は二重底になっており、非接触型電子タグの読取器が内蔵されている。図1(d)は、試験薬用ケースを収納する収納箱の断面図である。
【0012】
図1において、試験薬用ケース1は、1回分の治験用内服薬を収納するエリアを複数備えたケースである。非接触型電子タグ2は、読取器からの電波を受信して動作電力とし、無線で読取器と通信してデータを送信するとともに、受信したデータを記憶するものである。メモリを持たずにIDコードのみを送信するものでもよい。シール材に貼り付けられたIC部とアンテナ部を有し、シール材が切られる際に、アンテナ部が切断されるようになっている。収納箱3は、読取器を内蔵し、試験薬用ケースを収納する箱である。自室など適当なところに置くことができる。読取器4は、非接触電子タグと通信し、データを取得する装置である。アンテナ5は、読取器が非接触型電子タグと通信するためのアンテナである。
【0013】
上記のように構成された本発明の実施例1における試験薬飲用情報収集器の機能と動作を説明する。図1(a)に示すように、1回分の治験用内服薬を、試験薬用ケース1の1つのエリアにそれぞれ収納して、非接触型電子タグ2で封止する。図1(b)に示すように、試験薬用ケース1の蓋を開けると、封止している非接触型電子タグ2のアンテナ部が破壊される。1回分の治験用内服薬を服用して、試験薬用ケース1を、図1(c)に示す収納箱3に格納して蓋を閉じたときに、読取器4が非接触電子タグ2と通信を行う。図1(d)に示すように、試験薬用ケース1を収納する収納箱3の底部に、読取器4のアンテナ5が設置されている。
【0014】
読取器4は、収納箱3の蓋が閉められたとき、蓋のスイッチなどにより蓋閉めを検出して、非接触型電子タグ2と交信する。読取器4は、時計とメモリを内蔵しており、読取器4が非接触電子タグ2と通信して取得した情報と、そのときの時刻とを記録する。試験薬用ケース1の治験用内服薬をすべて服用した後、収納箱3をセンターに回収してデータを取り出し、解析する。収集した時系列の通信記録の時刻情報をもとに、各非接触電子タグ2の最後の通信時刻を求める。非接触電子タグ2の最後の通信時刻を、治験用内服薬の服用時刻とする。
【0015】
上記のように、本発明の実施例1では、試験薬飲用情報収集器を、蓋が開かれる際にアンテナ部が切断される非接触型電子タグを有する試験薬用ケースを、読取器を内蔵する収納箱に収納して閉じたときに、非接触型電子タグと通信して受信データを記録する構成としたので、治験における試験薬の服用時刻を手軽に検出して収集できる。
【実施例2】
【0016】
本発明の実施例2は、蓋が開かれる際にアンテナ部が切断される非接触型電子タグを有する試験薬用ケースに読取器を内蔵し、非接触型電子タグと通信して受信データを記録する試験薬飲用情報収集器である。
【0017】
図2は、本発明の実施例2における試験薬飲用情報収集器の試験薬用ケースの概念図である。図2(a)は、試験薬用ケースの各エリアに治験用内服薬を収納して非接触型電子タグでシールした状態を示す図である。図2(b)は、試験薬用ケースの1つのエリアから治験用内服薬を取り出した状態を示す図である。図2(c)は、試験薬用ケースの断面図である。試験薬用ケースは二重底になっており、非接触型電子タグの読取器が内蔵されている。
【0018】
図2において、試験薬用ケース1は、治験用内服薬を、各エリアに1回分ずつ収納するケースである。ポケットに入れて携帯できる程度の大きさのものである。非接触型電子タグ2は、読取器からの電波を受信して動作電力とし、無線で読取器と通信してデータを送信するとともに、受信したデータを記憶するものである。メモリを持たずにIDコードのみを送信するものでもよい。シール材に貼り付けられたIC部とアンテナ部を有し、シール材が切られる際に、アンテナ部が切断されるようになっている。読取器4は、非接触電子タグと通信し、データを取得する手段である。アンテナ5は、読取器が非接触型電子タグと通信するためのアンテナである。
【0019】
上記のように構成された本発明の実施例2における試験薬服用情報収集器の機能と動作を説明する。図2(a)に示すように、治験用内服薬を、試験薬用ケース1の各エリアに1回分ずつ収納して、非接触型電子タグ2を付けたシールで封止する。試験薬用ケース1の底部に、読取器4のアンテナ5が設置されている。読取器4は、適当な時間間隔で非接触電子タグ2と通信する。読取器4は、時計とメモリを内蔵しており、読取器4が非接触電子タグ2と通信して取得した情報と、そのときの時刻とを記録する。試験薬用ケース1の治験用内服薬をすべて服用した後、試験薬用ケース1をセンターに回収してデータを取り出し、解析する。収集した時系列の通信記録の時刻情報をもとに、各非接触電子タグ2の最後の通信時刻を求める。非接触電子タグ2の最後の通信時刻を、治験用内服薬の服用時刻とする。
【0020】
このように、非接触電子タグを使うことにより、非接触電子タグを単純に張り替えるだけで、試験薬用ケースの再利用が簡単にできる。貼る位置も、蓋を開けるときに非接触電子タグが壊れるような位置であれば、どのように貼っても良く、非常に手軽に準備ができる。個々の医薬品を非接触電子タグのユニークな識別符号(ID)で管理できるので、どの薬をのんだということが明確に管理できる。さらに、読取器4と携帯電話を近距離無線通信手段で接続すれば、服用時刻を通知したり、服用忘れを警告したり、読取データをセンターの装置に送信したりすることも可能である。また、携帯電話から体温や脈拍などのデータを読取器4に送って、試験薬の服用時の体調を記録することもできる。さらに、体調モニタ装置と組み合わせて、オンラインでセンターと結ぶことで、試験薬の服用時の状態をリアルタイムで監視することも可能である。
【0021】
上記のように、本発明の実施例2では、試験薬服用情報収集器を、蓋が開かれる際にアンテナ部が切断される非接触型電子タグを有する試験薬用ケースに読取器を内蔵し、非接触型電子タグと通信して受信データを記録する構成としたので、治験における試験薬の服用時刻を手軽に検出して収集できる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の試験薬服用情報収集器は、新薬の治験などにおいて、試験薬の服用時刻を検出して収集する装置として最適である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施例1における試験薬服用情報収集器の概念図である。
【図2】本発明の実施例2における試験薬服用情報収集器の概念図である。
【図3】従来の非接触電子タグ付PTPシートの説明図である。
【符号の説明】
【0024】
1 試験薬用ケース
2 非接触型電子タグ
3 収納箱
4 読取器
5 アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤収納部と蓋部と非接触型電子タグとを有する試験薬用ケースと、前記非接触型電子タグと通信する読取器を内蔵し前記試験薬用ケースを収納する収納箱とを具備する試験薬服用情報収集器であって、前記非接触電子タグは、無線通信機能を有するIC部と、前記蓋部が開かれる際に切断されるアンテナ部とを備え、前記読取器は、前記収納箱が閉じられたときに前記非接触型電子タグと通信して受信データと受信時刻を記録する手段を備えたことを特徴とする試験薬服用情報収集器。
【請求項2】
試験薬を収納する薬剤収納部と、前記薬剤収納部を覆う蓋部と、前記薬剤収納部を前記蓋部で覆った状態でシールするシール部材と、前記シール部材に取り付けられた非接触型電子タグと、前記非接触型電子タグと通信する読取器とを具備する試験薬服用情報収集器であって、前記非接触電子タグは、無線通信機能を有するIC部と、前記蓋部が開かれる際に切断されるアンテナ部とを備え、前記読取器は、前記非接触型電子タグと通信して受信データと受信時刻を記録する手段を備えたことを特徴とする試験薬服用情報収集器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−175263(P2007−175263A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−376874(P2005−376874)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(307004420)株式会社バンテックLITIシステムズ (4)
【Fターム(参考)】