説明

詰め物

本発明は、連続した水相で構成される詰め物に関し、前記詰め物は、0.5から0.93の水分活性(Aw)および詰め物の総重量を基準として25重量%未満の脂肪含有量を有し、および、粒子の少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、およびさらにより好ましくは少なくとも15%は、サイズが10μm以上である少なくとも1つの非ゼラチン化デンプンを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続的な水相で構成される詰め物に関し、前記詰め物は、0.5から0.93の水分活性(Aw)および組成物の総重量を基準にして25重量%未満の脂肪含有量を有し、および少なくとも1種の非ゼラチン化デンプンを含有し、前記非ゼラチン化デンプンの粒子の少なくとも5%は、10μm以上の粒経を有する。
【背景技術】
【0002】
食品製品の感覚刺激特性および食感を維持しつつ、食品製品中の脂肪および砂糖の含有量を低減することは、農栄養産業(agroalimentary industry)にとっての大きな課題である。特に、連続的な水相の詰め物を有するクッキーおよびケーキの分野において、脂肪および砂糖の含有量を低減することは、困難である。それにも関わらず、そのような低減は、肥満と闘うために非常に望ましい。
【0003】
詰め物をしたクッキーおよびケーキは、一般的に、消費者に非常に評価されているが、しかし、そのような製品は、しばしば、カロリーに富み、および、特に、脂肪および砂糖由来のカロリーの比率が大きすぎるため、栄養的にアンバランスである。
【0004】
そのような不都合を軽減するために、脂肪および/または砂糖の量が少ない、様々な、詰め物をしたクッキーおよびケーキが提案されている。そのようなライトな製品は、しばしば、伝統的な、詰め物をしたクッキーおよびケーキよりも、満足させる力が少なく、およびしたがって、即時のまたは引き延ばされた空腹感をもたらす。したがって、消費者は、しばしば、伝統的な相当製品と比べてより大量のこれらのライトな製品を食べるか、またはライトな製品に加えて何か他のものを食べる。ライトな製品のより低いカロリー貢献の影響は、それ故、付加的なカロリー供給によって相殺される。
【0005】
したがって、タンパク質の添加が提案された。しかしながら、これらは、高濃度で使用される場合に製品に粘着性の食感を与え、その上、高価である。また、可溶性および不溶性の繊維の添加が提案された。しかしながら、これらの解決策は、数々の不都合を示す。可溶性の繊維が満足感を増大させることは真実であるが、しかし、それらの使用は、しばしば、膨張、鼓張または加速された通過のような消化系障害と結びついている。一般的に、不溶性繊維は、腸の刺激を引き起こし、および必ずしも感覚刺激的に許容されない。ポリオール類は、しばしば、砂糖風味の製品中の砂糖類の全部または一部を置換するために使用される。しかし、それらの使用もまた、それらの高い価格、それらの使用が子供たちに推奨されないという事実、および可溶性繊維と同一の消化系障害、および消費者の間での悪い印象のような数々の不都合を示す。
【0006】
ゼラチン化デンプンを、予めゼラチン化されたデンプンとして、またはほとんどの場合には、製造工程の間(特に、低温殺菌または滅菌の間)に天然デンプンを加熱調理(cooking)することによってのいずれかで、詰め物の増粘剤(食感剤)として添加することが知られている。
【0007】
その上、前記ゼラチン化された天然デンプンは、特に非常に低水分の製品に関して、徐々に老化(retrogression)を受け、これは、食感の変更、すなわち離漿をもたらす。そのような現象を回避するために、デンプンは、時々、化学的または物理的に改質される。
【0008】
しかしながら、改質は、消費者にとってのそのようなデンプンの興味を大きく低減させる。なぜならば、そのようなデンプンは、自然原料よりはむしろ添加物として受け取られるからである。
【0009】
加えて、水和および熱の影響下での加熱調理は、食品の血糖指数を増大させる原因となる。例えば、ニンジンは、生のとき35の血糖指数を有する。水煮されるとすぐに、そのデンプンのゼラチン化のために、その血糖指数は85まで上昇する。高い血糖指数を有する栄養素に富む食品は、 特に、低い血糖指数を有する食品についての栄養学者の推奨に合致しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の1つの目的は、したがって、上述の不都合の全部または一部を軽減し、および、特に、脂肪または砂糖類に由来するカロリーを低減させ、および複合糖質(complex carbohydrates)からもたらされるカロリー部分を増大させる栄養学者の推奨に、より合致した詰め物を提案することである。
【0011】
別の目的は、先行技術の詰め物よりも高いおよび/または長時間にわたる満足させる力を有する詰め物を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的を達成するために、本発明は、0.5から0.93の水分活性(Aw)、および詰め物の総重量を基準として25重量%未満の脂肪含有量を有する連続的な水相で構成され、および少なくとも1種の非ゼラチン化デンプンを含有し、前述の非ゼラチン化デンプンの粒子の少なくとも5%は10μm以上の粒経を有する詰め物を提案する。
【0013】
当業者は、非ゼラチン化デンプンを認識するための様々な技術を知っている;最も簡単なのは、偏光顕微鏡下での観察であり:非ゼラチン化粒は、「マルタ十字架」(複屈折性)のような形状に見え、一方、ゼラチン化粒は、この特徴を失う。
【0014】
本発明に従う詰め物は、チョコレート、バニラ、ミルク、カラメル、コーヒー、ヘーゼルナッツ、ミントまたは果物風味の詰め物のような砂糖風味の詰め物、または塩味風味の詰め物、すなわちチーズ、肉、魚、スパイス類、野菜類であることができる。
【0015】
材料の水分活性(Aw)は、同一温度における材料の水蒸気圧および純水の蒸気圧の間の比として定義される。この概念は、適切な測定方法を完全に知る当業者によく知られている。ほとんどの場合、水分活性は、材料の水分含有量に比例しない。したがって、82重量%の水分含有量を有する果物ヨーグルトの水分活性(Aw)は、例えば0.99であり、一方、同様に0.99の水分活性を有するバターは、16重量%の水分含有量を有する。慣例として、本発明における全てのAwを、25℃で、およびレシピ製造の24時間後から3日後に測定した。
【0016】
本発明に従う詰め物の水分活性は、概して、0.5から0.93である。1つの実施形態において、本発明に従う詰め物のAwは、有利には0.5から0.8、好ましくは0.65から0.75、およびさらにより好ましくは0.68から0.72である。そのような本発明に従う詰め物は、それらのパッケージ内において、15および25℃の間の範囲の温度での保存に関して、少なくとも1週間、好ましくは少なくとも1ヶ月にわたって、適当である。
【0017】
別の実施形態において、本発明に従う詰め物のAwは、有利には0.80から0.93、好ましくは0.85から0.92、およびさらにより好ましくは0.87から0.90である。そのような本発明に従う詰め物は、それらのパッケージ内において、1から10℃の範囲の温度での冷蔵保存に関して、少なくとも1週間、好ましくは少なくとも1ヶ月にわたって、または、冷凍保存に関して、少なくとも1ヶ月、好ましくは少なくとも6ヶ月にわたって、適当である。
【0018】
有利には、本発明に従う乳製品の詰め物の乾燥物質の含有量は、80重量%未満、好ましくは70重量%未満、およびさらにより好ましくは60重量%未満である。
【発明の効果】
【0019】
本出願人は、少なくとも1種の非ゼラチン化デンプンを添加することによって、栄養組成を改善し、および連続的な水相で構成される詰め物の満足させる力を増大させることが可能であることを見出したというメリットを有し、および栄養学者達の推奨に従って、それらの栄養組成を改善する。実際に、非ゼラチン化デンプンを添加することによって、(ゆっくりと消化されることができる糖質によってもたらされるカロリー)/(カロリー総量)の比は増大され、これは、本発明に従う詰め物を摂取した後の空腹感の発生を遅延させる。
【0020】
非ゼラチン化デンプンの添加は、(ゆっくりと消化されることができる糖質によってもたらされるカロリー)/(カロリー総量)の比を増大させるだけでなく、詰め物の砂糖および/または脂肪の含有量を低減させることも可能にする。したがって、本発明に従って、伝統的な詰め物、すなわちライトなものよりも高いおよび/または延長された満足させる力を有する、砂糖、特にショ糖の量が少ない詰め物を提供することが可能である。
【0021】
したがって、本発明に従って、伝統的なライトな連続的な水相の詰め物よりも高いおよび/または延長された満足させる力を有する、脂肪および/または砂糖類の量が少ない、連続的な水相からなる詰め物を提供することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に従う詰め物は、詰め物の総重量を基準として、25重量%未満の脂肪含有量を有する。好ましくは、脂肪含有量は、詰め物の総重量を基準として、0から25重量%、好ましくは0から21重量%、および有利には0から15、および好ましくは5から15重量%である。
【0023】
砂糖類とは異なり、非ゼラチン化デンプンは、甘くなくおよび水溶性でなく、およびしたがって、本発明に従う詰め物が、しばしば、舌または喉の奥をヒリヒリさせると認識される、慣用の非常に甘い製品と同様のまたはそれよりも良好でさえある感覚刺激性の特徴を示すことは、驚くべきことである。
【0024】
本発明に従って、非ゼラチン化デンプンであるということを条件に、全てのタイプのデンプンを、詰め物中に使用することができる。用語「非ゼラチン化デンプン」は、デンプンが、予めゼラチン化されておらず、また、製造工程の間または消費前の調製工程の間にゼラチン化されてもいないことを意味する。もちろん、異なる起源のデンプン混合物を使用してもよい。
【0025】
本発明の目的のために使用することのできるデンプンは、小麦デンプン、米デンプン、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、ソルガムデンプン、タピオカデンプン、ジャガイモデンプン、キャッサバデンプンおよびそれらの混合物を含む。
【0026】
本発明に従って、非ゼラチン化デンプンの粒子の少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、およびさらにより好ましくは 少なくとも15%は、10μm以上のサイズを有する。このようにして、非ゼラチン化デンプン添加後の詰め物の粘度増大と、(複合糖質によってもたらされるカロリー)/(総カロリー)の比の増大との間に、良好な妥協がもたらされる。
【0027】
1つの有利なモードの実施形態において、非ゼラチン化デンプン粒子の少なくとも90%は、サイズが2μmおよび100μmの間、好ましくは5μmおよび45μmの間の範囲に及ぶ。
【0028】
有利には、非ゼラチン化デンプンは天然デンプンである。ゼラチン化デンプン、およびタンパク質およびマルトデキストリンを含むほとんどの他の親水コロイドとは異なり、天然デンプンは概して低吸水性を示す。したがって、連続的な水相で構成される詰め物への天然デンプンの添加は、粘度のわずかな増大をもたらすに過ぎないが、一方、前述のゼラチン化デンプンまたは他の親水コロイドは、粘度の重大な増大を引き起こすことになる。したがって、天然デンプンの使用は、出発製品の粘度に近い粘度を保持しながら、ゼラチン化デンプンと比べてより多くの量のデンプンを加えることを可能にする。
【0029】
その上、天然デンプンは、非変性天然製品であり、市販品の包装上にそのようにラベル表示しなければならない食品添加物の一部ではない。
【0030】
加えて、天然デンプンは、とりわけ、子供向け製品において特に望ましくない緩下剤効果を有するポリオール類および可溶性繊維と異なり、消化の不都合を何ら示さない。ゼラチン化されていないという事実が、天然デンプンがゆっくりと消化されることができることを保持し、これは、(ゆっくりと消化されることができる糖質によってもたらされるカロリー)/(カロリー総量)の比を増大させることを可能にする。したがって、本発明に従う詰め物への天然デンプンの添加は、伝統的な連続的な水相で構成される詰め物と比べて、特に、砂糖類および/または脂肪が少ない連続的な水相で構成される食品組成物と比べて、延長された満足感を伴う。また、特に、栄養学者の推奨に従って、カロリー分布は、複合糖質、脂肪および砂糖類の間で、よりバランスが取れている。
【0031】
加えて、天然デンプンの密度は高く、これが立体の密集を制限し、およびその顆粒は、連続的な水相を構成する水にアクセスしやすい孔をほとんど示さない。両方の特徴は、デンプン顆粒のような、懸濁液中の固形物を含有する詰め物の粘度の増大を制限するために重要である。
【0032】
また、概して2μmおよび100μmの間、および概して5μmおよび45μmの間の範囲に及ぶ天然デンプンの粒度分布は、連続的な水相で構成される詰め物における使用に理想的である。このように、天然デンプンは、余分な微粒子も、余分な大粒子も含まない。微粒子の存在は、詰め物の粘度を増大させ、およびしたがって、一般的に、脂肪および/または水の含有量の増大を必要とする。それとは反対に、大粒子の存在は、口の中における砂のような感覚を詰め物に与える。必要に応じて、所望の食感および特性に従って、様々な起源のデンプンを様々な比率で混合することによって、小サイズおよび大サイズの顆粒の間のバランスを調整することができる。
【0033】
天然デンプンのうちで、小麦デンプンは、2μmから45μmの理想的な粒度分布を示ので、および安いので、好ましい。
【0034】
また、コーンスターチおよびキャッサバデンプンは、それらの粒度分布から、好ましいデンプンの1つである。
【0035】
天然デンプンの他の利点は、その自然の味質および白い色であり、これは、幅広い商品、すなわち、バニラ風味の詰め物のような、ほとんど香りのない商品おける使用を可能にする。最後に、天然デンプンは、安価な原料であり、および連続的な水相で構成される詰め物中で粉砕することなしに使用することができ、これは、単純化された製造工程およびより高い生産性を可能にする。
【0036】
しかしながら、粉砕することなしには到達し得ない、またはほとんど到達し得ない特定の粒度分布を得るために、粉砕されたデンプンを使用することも可能である。
【0037】
天然デンプンに加えて、本発明に従う過乾燥デンプン、例えば、平衡状態での相対湿度未満にもたらされた水分含有量を有する非ゼラチン化デンプンを使用することもできる。また、天然デンプンおよび過乾燥デンプンまたは異なる種類の過乾燥デンプンの混合物の使用を考えてもよい。
【0038】
非ゼラチン化デンプンは、概して、デンプン粉末の形態で提供されるが、しかし、全部または一部において、非ゼラチン化デンプンに富む粉(flour)として、またはデンプンに富む粉混合物として提供されることもできる。デンプン粉末の使用は、たとえデンプンに富む粉の使用の場合であっても、特に費用の点で、有利であり得る。
【0039】
デンプン粉末は、すなわち、粉と比べて、それが組み入れられる製品の特徴をあまり変更しないので、好ましい。このように、デンプン粉末は、タンパク質が存在しないことから、それを含有する製品を、粉と比べて粘着性でなくする。加えて、デンプン粉末は、デンプン粉末が、単離されたデンプン粒を主に含有し、および粉のように粉砕された細胞を含有しないので、粉よりも微細な粒度分布を示す。最後に、デンプン粉末は、粉と比べて、より自然な味質およびより白い色を有する。
【0040】
デンプンに富む粉は、天然または過乾燥粉であることができる。例えば、小麦粉、トウモロコシ粉または米粉のような穀粉(cereal flours)、またはジャガイモ粉のような塊茎粉(tuber flours)を使用することができる。例えば、12重量%のタンパク質、13%の水を有する83重量%のデンプン、1重量%の脂肪および4重量%の繊維に相当し得る小麦粉を挙げることができる。
【0041】
1つの実施形態において、本発明に従う詰め物のデンプン含有量は、詰め物の重量を基準として、乾燥重量で、2から40%、好ましくは4から40%、およびさらにより好ましくは4から26、7から22、10から22、および13から18%である。小麦デンプンは、概して、13%の水および87%の乾燥デンプンを含有する。40%の小麦デンプンの使用は、したがって、34.8%の乾燥デンプンを提供する。
【0042】
デンプン粒は、詰め物の水相中の縣濁物を形成するので、当業者は、従って、好ましくは、 デンプン粒の沈降を回避または制限するために、本発明に従う詰め物のために、低いフロー閾値を選択する。しかしながら、場合によっては、デンプン粒の沈降は、許容されてもよい。
【0043】
本発明に従う詰め物は、甘味または塩味の味質の組成物であることができる。
【0044】
本発明に従う詰め物は、詰め物の総重量を基準として、0から70重量%、好ましくは0から50重量%、およびさらにより好ましくは10から40、10から30、10から25、および有利には10から20重量%の砂糖含有量を有する。本発明に従う塩味の味質の詰め物の場合において、砂糖含有量は、概して、詰め物の総重量を基準として、0重量%から55重量%、好ましくは0から35重量%、およびさらにより好ましくは0から25重量%、およびさらに5から25重量%、および特に5から15重量%である。本発明に従う甘味の味質の詰め物は、詰め物の総重量を基準として、0から70重量%、好ましくは0から50重量%、およびさらにより好ましくは10から40、10から30、15から25、および有利には15から20重量%を有する。
【0045】
本出願の意味において、用語「砂糖類」は、複数形で、それら自体で提供されるモノおよびジサッカリド、またはそれらを含有する原料によって提供されるモノおよびジサッカリドを指す。
【0046】
1つの有利な実施形態において、本発明に従う詰め物は、詰め物の総重量を基準として、0から30重量%、好ましくは0から20重量%、およびさらにより好ましくは0から15、および有利には5から10重量%のショ糖含有量を有する。
【0047】
また、ショ糖を全く含有しない本発明に従う詰め物を考えてもよく、甘味風味は、フルクトースおよび/またはポリオール類、強い砂糖代替物(例えば、アスパルテームまたはacesulfameK)またはそれらの混合物のような甘味料によってもたらされることができる。
【0048】
本発明に従う詰め物は、加えて、とりわけ、乳化剤、塩、香味料、保存料、様々な形態のココア(好ましくは脱脂されたまたは大いに脱脂されたココアパウダー)、丸ごとまたは大きい塊の果物、大きい塊または粉末の形態のマッシュされた果物または野菜、果物のスラリー、ジャム、ヘーゼルナッツ、または他の粉砕された乾燥果物、穀類(cereals)、スパイス類、ハーブ類、可溶性または不溶性の食物繊維、イーストまたはそれらの抽出物を含んでいてもよい。
【0049】
乳化剤は、詰め物の分野で通常使用されるもの、すなわち、レシチン、アンモニウムフォスファチド、ポリグリセロールポリリシノレート(PGPR)、モノおよびジグリセリド、またはそれらの混合物である。
【0050】
香味料は、天然または合成であってもよい。天然の香味料のうち、バニラ、カラメル、シナモン、および合成の香味料のうち、バニリンおよび、いちごまたはラズベリーのようないくつかの果物を模した香味料を挙げることができる。
【0051】
天然デンプンは、詰め物の質、概して、すなわちその安定性を損ない得る一定のレベルの微生物をもたらす。そのような劣化の危険性は、すなわち、0.6から0.73の水分活性(Aw)を有する詰め物において低く、0.74から0.89のAwに関して、より高く、および0.90から0.99のAwに関して非常に高い。また、当業者によく知られるそのような危険性は、pH、温度および保管の期間にも依存する。そのような現象を回避するために、製品は冷蔵されることができ、および/または、その寿命に従って、天然デンプンを詰め物中に組み入れる前に、天然デンプンを低温殺菌または滅菌(すなわち、照射による)のいずれかをし、または詰め物に保存料を添加することができる。「保存料」は、組成物中の微生物、特に、イーストおよび/または白カビおよび/またはバクテリアの増殖を抑制または遅延する化合物を意味する。本発明に従う詰め物に添加される保存料は、詰め物の分野において通常使用されるものであり、および、特に、ソルビン酸およびその塩(E200からE203)、安息香酸およびその塩(E210からE219)、亜硫酸塩および誘導体(E220からE228)、ナタマイシン、ナイシン、プロピオン酸カルシウム、およびそれらの混合物を含む。
【0052】
好ましくは、保存料は、Awが0.72より大きい場合、および特に、0.80より大きい場合に使用される。好ましい保存料の例は、ソルビン酸カリウムである。
【0053】
本発明に従う詰め物を、当業者によく知られているこれらのタイプの製品のための伝統的な製造工程に従って得ることができる。すなわち、650g/lから1100g/l、好ましくは750g/lから1000g/lの密度を得るために、詰め物を製造中にわずかに通気することができる。通気されない詰め物は、概して、約1100から1300g/lの密度を有する。
【0054】
デンプンのゼラチン化は、当業者によく知られている現象である。それは、吸水によるデンプン顆粒の重要な膨潤によって特徴付けられ、および加熱が強度すぎる場合には、破裂に至りさえする。直接的に明らかな重要性は、水性媒体中での高い粘度およびデンプンの「可溶化」であり、一方、いくつかの非ゼラチン化顆粒は、単に、懸濁液中に分散されるに過ぎない。ゼラチン化デンプンの「可溶化」は、非ゼラチン化デンプン顆粒の分散に付随する濁りの消失をもたらす。
【0055】
ゼラチン化は、ある一定の温度を越える水の存在下で生じる。それは、急速かつ単純な現象であり、すなわち、同一の媒体中の同一の天然デンプンの顆粒のほとんど全ては、ある温度T+/−3℃の温度で、ゼリー状になる。そのようなゼラチン化は、不可逆的である。
【0056】
しかしながら、天然デンプンのゼラチン化の温度は、デンプンの種類(nature)および水性食品媒体の組成に従って変化する。したがって、例えば収穫の日付がどうであれ、純水中のキャッサバデンプンに関するゼラチン化の温度は70℃であり、ジャガイモデンプンのゼラチン化の温度は63℃、コーンスターチのゼラチン化の温度は76℃、小麦デンプンのゼラチン化の温度は82℃である(測定方法:Brabender viscoamylograph中に配置される8%の水中デンプン懸濁液のゼラチン化の温度;ダブルエンベロープによって1.5℃/分で加熱)。ゼラチン化媒体の組成の影響に関しては、砂糖含有量の増大は、水の減少と同様に、ゼラチン化の温度を上昇させる。
【0057】
したがって、本発明の文脈において、考慮に入れるゼラチン化の温度は、純水中ではなく、水性食品媒体中の使用される天然デンプンのゼラチン化の温度である。
【0058】
したがって、本発明に従う詰め物中の天然の状態のデンプンを維持するためには、詰め物の調製の間および/またはその後の使用の間に、そのゼラチン化温度を越えるまで加熱しないことが肝要である。好ましくは、その調製の間および/またはそれに続き、本発明に従う詰め物を、使用されるデンプンのゼラチン化温度よりも7℃低い最高温度まで加熱する。様々なデンプンの混合物を使用する場合、最も低いゼラチン化温度が律する。
【0059】
例えば、本発明に従う詰め物を、ソフトケーキを詰め物するために使用する場合には、詰め物は、好ましくは、ケーキを焼いた後、ケーキが依然として熱いうちに導入される。詰め物の温度は、天然デンプンのゼラチン化温度を越えないように選択される。
【0060】
本発明に従う詰め物は、特に、加熱調理した穀類製品のための詰め物、またはバーまたはフレッシュバイトのための詰め物として有用である。本願において使用される際に、用語「加熱調理した穀類製品(cooked cereal products)」は、乾燥クッキー、ウエハース、トースト、穀類のバー、ソフトケーキ、ドーナッツ、シュークリームペストリーを含む。
【0061】
用語「バーまたはフレッシュバイト(bars and fresh bites)」は、詰め物で詰め物をした、チョコレートの殻、またはブラック、ミルク、ホワイトまたは(すなわち、乾燥果物、赤い果物、コーヒーで)風味付けしたイミテーションチョコレートを示す。
【0062】
本発明の目的は、したがって、0.78から0.93のAwの、本発明に従う詰め物を含有するバーまたはフレッシュバイトである。好ましくは、このバーまたはフレッシュバイトは、その包装中で、少なくとも2週間にわたって、1および10℃の間の温度で保存される。
【0063】
本発明の別の目的は、本発明に従う詰め物を含有する加熱調理した穀類製品である。
【0064】
本発明に従う加熱調理した穀類製品は、すなわち、乾燥クッキーの2つの層の間に本発明に従う詰め物の少なくとも1つの層を含む乾燥クッキーであることができる。
【0065】
また、それは、少なくとも2つの部分、好ましくは、ウエハースの2つの層が、本発明に従う詰め物の1つの層によって分離されている詰め物をしたウエハースであることもできる。好ましくは、詰め物をしたウエハースは、本発明に従う詰め物の1つの層によって互いから分離されているウエハースの2つから4つの層を含む。
【0066】
また、本発明に従う加熱調理した穀類製品は、中が空洞のビスケット、すなわち、タルトまたはバルケット中に入れられた本発明に従う詰め物で構成されることもできる。
【0067】
好ましくは、本発明に従う加熱調理した穀類製品は、ソフトケーキである。ソフトケーキは、本発明に従う詰め物のコアを含んでいてもよく、これは、例えば、注射によって導入されることもできる。また、ソフトケーキは、ソフトケーキの少なくとも1つの表面上に本発明に従う詰め物を塗布し、および次いでこれを巻くことによって得られるロールケーキであることもできる。また、ソフトケーキは、ソフトケーキの少なくとも2つの層の間に、本発明に従う詰め物の少なくとも1つの層を含むこともできる。また、ソフトケーキは、ソフトケーキの1つの層およびチョコレートまたはイミテーションチョコレートの殻の間に、本発明に従う詰め物の少なくとも1つの層を含むこともできる。
【0068】
概して、本発明に従う加熱調理した穀類製品は、最終製品の総重量を基準として、16重量%から55重量%、有利には20重量%から45重量%、好ましくは25重量%から35重量%、およびさらにより好ましくは、付加的な栄養的利益のために25重量%から30重量%、またはさもなければ付加的な感覚刺激性の利益のために28から35重量%の本発明に従う詰め物を含有する。
【0069】
本発明に従う加熱調理した穀類製品は、有利には、加熱調理した穀類製品の総重量を基準として、1.5重量%から25重量%、好ましくは2から20重量%、さらにより好ましくは、2から15重量%、およびさらに5から12重量%の脂肪を含有する。
【0070】
本発明に従う加熱調理した穀類製品は、有利には、加熱調理した穀類製品の総重量を基準として、20重量%から63重量%、好ましくは27から58重量%、さらにより好ましくは27から48重量%、およびさらに35から46重量%の砂糖類を含有する。さらにより好ましくは、それは、加熱調理した穀類製品の総重量を基準として、18重量%から48重量%、好ましくは18から38重量%、さらにより好ましくは18から28重量%、およびさらに20から25重量%の砂糖類を含む。
【0071】
詰め物のAwが0.5から0.8、好ましくは0.65から0.75、およびさらにより好ましくは0.68から0.72である場合は、密封包装の後、本発明に従う加熱調理した穀類製品を、15および25℃の間の範囲の温度で、少なくとも1週間にわたって、好ましくは少なくとも1ヶ月にわたって保存する。詰め物のAwが0.80から0.93、好ましくは0.85から0.92、およびさらにより好ましくは0.87から0.90である場合は、本発明に従う加熱調理した穀類製品を、密封包装の後、1および10℃の間の範囲の温度で、少なくとも1週間にわたって、好ましくは少なくとも1ヶ月にわたって保存し、または少なくとも1ヶ月にわたって、好ましくは少なくとも6ヶ月にわたって冷凍貯蔵する。
【実施例】
【0072】
実施形態の以下の例は、本発明を、その範囲を多少なりとも制限することなく、説明する。
【0073】
実施例1:チョコレート風味の詰め物
デンプンを含まない伝統的な詰め物に相当する対照の詰め物、および本発明に従う詰め物を含む、連続的な水相で構成されるチョコレート風味の詰め物2つを調製する。前記詰め物のそれぞれの組成を、以下、第1表中に示す。
【0074】
詰め物を以下の方法で調製する。全ての原料を、粉末として秤量し、および次いで混合する。チョコレートを40℃で溶かし、およびこれに菜種油、レシチン、同様にPGPRを、必要に応じて添加する。チョコレート調製物を、次いで、全体的に均質化するまで混合する。次いで、Rayneri V.M.I Trimix TXR50ミキサーを用いて水溶性流体を均質化し、および、攪拌しながら(攪拌速度:1000から3000rpm)混合物上に粉末の形態である原料を注ぎ入れ、さらに5分間にわたって攪拌をし続ける。次いで、均質化された40℃の暖かさのチョコレート調製物を、攪拌下で、水溶性流体/粉末混合物中に組み入れて、完全な均質物を得る。このようにして得られた詰め物の性質を、以下、第2表中に示す。
【0075】
【表1】

【0076】
【表2】

【0077】
本発明に従う詰め物の砂糖含有量は、脂肪含有量と同様に、対照の詰め物と比較して、感知しうるほどに低減されている。
【0078】
砂糖および脂肪の低減にかかわらず、本発明に従う詰め物は、やや低減された、しかし、対照の詰め物のものに非常に近い甘味風味を示す。その上、チョコレート風味の味質は、口の中での食感(硬さ、砂糖ボンボン、粒度分布、ペースト状)と同様に、標準に非常に近いままである。
【0079】
加えて、本発明に従う詰め物は、(ゆっくりと消化されることができる糖質によってもたらされるカロリー)/(カロリー総量)の比が、本発明に従う詰め物における天然デンプンの添加によって、1%から17%に増大する。
【0080】
実施例2:チョコレート風味で詰め物をしたソフトケーキ
21gのソフトケーキを、標準的な方法に従って焼く。当業者に知られるそのようなソフトケーキは、重量で、13%の脂肪、61.8%の糖質(そのうち22.4%が砂糖(モノおよびジサッカリド、17%のショ糖を含む))、6.3%のタンパク質および16.5%の水を含む。
【0081】
そのようなソフトケーキを用いて、実施例1由来の対照の詰め物を含有する対照のソフトケーキのバッチ、および実施例1の本発明に従う詰め物を含有する本発明に従うソフトケーキのバッチを含む、伝統的なチョコレート風味で詰め物をしたソフトケーキに相当する、詰め物をしたソフトケーキ2ロットを調製する。
【0082】
それらを焼いた直後に、2本針の注入システムを使用して、9gのそれぞれの詰め物でソフトケーキを詰め物する(すなわち、30%の詰め物および70%のソフトケーキ)。詰め物は、28から35℃の温度で注入される。そのように詰め物をしたケーキを、20℃に冷却する。
【0083】
本発明に従って詰め物をしたソフトケーキは、対照と厳密に同一の外観を有し、ケーキの味質およびそのソフトな食感は変化していない。本発明に従うケーキは、匂い、甘さ、詰め物の食感の点で、対照に非常に近似していることが理解される。砂糖ボンボン、粒度分布、およびペースト性は、非常に近似しており、および消費者の一団によって、有意に異なるものではないことが理解された。
【0084】
密封包装の後、本発明に従うソフトケーキは、22℃で、少なくとも4ヶ月間にわたって保存が利く。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続的な水相で構成される詰め物であって、前記詰め物は、0.5から0.93の水分活性(Aw)、および詰め物の総重量を基準として25重量%未満の脂肪含有量を有し、および、粒子の少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、およびさらにより好ましくは少なくとも15%は10μm以上のサイズを有する少なくとも1種の非ゼラチン化デンプンを含有することを特徴とする詰め物。
【請求項2】
デンプンが天然デンプンであることを特徴とする請求項1に記載の詰め物。
【請求項3】
デンプン含有量が、詰め物の総重量を基準として、乾燥重量で、2から40%、好ましくは4から40%、およびより好ましくは4から26%、7から22%、10から22%、および13から18%であることを特徴とする請求項1または2に記載の詰め物。
【請求項4】
デンプン粒子の少なくとも90%が、2μmおよび100μm、好ましくは5μmおよび45μmの間の範囲に及ぶ粒度分布を有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の詰め物。
【請求項5】
前記デンプンが、小麦デンプン、米デンプン、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、ソルガムデンプン、タピオカデンプン、ジャガイモデンプン、キャッサバデンプン、およびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の詰め物。
【請求項6】
Awが0.5から0.8、好ましくは0.65から0.75、およびさらにより好ましくは0.68から0.72であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の詰め物。
【請求項7】
Awが0.80から0.93、好ましくは0.85から0.92、およびさらにより好ましくは0.87から0.90であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の詰め物。
【請求項8】
乾燥物質の含有量が80重量%未満であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の詰め物。
【請求項9】
脂肪含有量が、詰め物の総重量を基準として、0から25重量%、好ましくは0から21重量%、および有利には0から15、および好ましくは5から15重量%であることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の詰め物。
【請求項10】
砂糖含有量が、詰め物の総重量を基準として、0から70重量%、好ましくは0から50重量%、およびさらにより好ましくは10から40、10から30、10から25、および有利には10から20重量%であることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の詰め物。
【請求項11】
ショ糖含有量が、詰め物の総重量を基準として、0から30重量%、好ましくは0から20重量%、およびさらにより好ましくは0から15、および有利には5から10重量%であることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の詰め物。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載の詰め物を含むことを特徴とする加熱調理した穀類製品。
【請求項13】
乾燥ビスケットまたはウエハースの2つの層の間に前記詰め物の少なくとも1つの層を含む乾燥ビスケットで構成されることを特徴とする請求項12に記載の加熱調理した穀類製品。
【請求項14】
前記詰め物が、中が空洞のビスケットの中、またはソフトケーキの層およびチョコレートまたはイミテーションチョコレートの殻の間に入れられることを特徴とする請求項12に記載の加熱調理した穀類製品。
【請求項15】
前記加熱調理した穀類製品がソフトケーキであることを特徴とする請求項12に記載の加熱調理した穀類製品。
【請求項16】
詰め物のコアを含むソフトケーキで構成されることを特徴とする請求項15に記載の加熱調理した穀類製品。
【請求項17】
前記ソフトケーキの少なくとも1つの表面上に詰め物を塗布し、および次いでそれを巻くことによって得られるロールソフトケーキであることを特徴とする請求項15に記載の加熱調理した穀類製品。
【請求項18】
ソフトケーキの少なくとも2つの層の間に前記詰め物の少なくとも1つの層を含むソフトケーキで構成されることを特徴とする請求項15に記載の加熱調理した穀類製品。
【請求項19】
ソフトケーキの1つの層、およびチョコレートまたはイミテーションチョコレートの殻の間に前記詰め物の少なくとも1つの層を含むソフトケーキで構成されることを特徴とする請求項15に記載の加熱調理した穀類製品。
【請求項20】
最終製品の総重量を基準として、16重量%から55重量%、有利には20重量%から45重量%、好ましくは25重量%から35重量%、およびさらにより好ましくは、付加的な栄養的利益のために25重量%から30重量%または付加的な感覚刺激性の利益のために28から35重量%のいずれかの、本発明に従う詰め物を含むことを特徴とする請求項12から19のいずれかに記載の加熱調理した穀類製品。
【請求項21】
加熱調理した穀類製品の総重量を基準として、1.5重量%から25重量%、好ましくは2から20重量%、さらにより好ましくは2から15重量%、およびさらに5から12重量%の脂肪を含むことを特徴とする請求項12から20のいずれかに記載の加熱調理した穀類製品。
【請求項22】
加熱調理した穀類製品の総重量を基準として、20重量%から63重量%、好ましくは27から58重量%、さらにより好ましくは27から48重量%、およびさらに35から46重量%の砂糖を含むことを特徴とする請求項12から21のいずれかに記載の加熱調理した穀類製品。
【請求項23】
請求項1から11のいずれかに記載の詰め物を含み、詰め物は0.78から0.93のAwを有することを特徴とするバーまたはフレッシュバイト。

【公表番号】特表2010−502235(P2010−502235A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527863(P2009−527863)
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際出願番号】PCT/FR2007/051886
【国際公開番号】WO2008/031972
【国際公開日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(508247877)クラフト・フーヅ・グローバル・ブランヅ リミテッド ライアビリティ カンパニー (53)
【Fターム(参考)】