説明

詰替え容器

【課題】口栓等の別部材を使用することなく、大面積の注出口が形成でき、折り曲げ部の位置がずれにくく、万一ずれた場合であっても、注出口の開封操作が容易かつ確実にできる詰替え容器を提案する。
【解決手段】基材とシーラント層を有する1枚の積層体を折り曲げて、折り曲げ部6と本体表面積層体2と本体裏面積層体3を形成してなり、折り曲げ部6は、注出ノズルシール部24と共に、内容物を注ぎ出すための注出ノズルを形成しており、注出ノズルシール部24に設けられた開封用切目線35によって分離形成された開封つまみ34を持って開封予定線36に沿って切り離すことにより注出口31を形成するものであり、開封予定線36上には、開封予定線36に平行な複数の傷線からなる易カット加工33が施されており、本体表裏面積層体2,3に施された複数の傷線の先端同士を結ぶ1本のハーフカット線7が、折り曲げ部6の稜線に沿って形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体洗剤、柔軟剤などのトイレタリー用品や、食用油、インスタントコーヒーなどの食品等を収納する詰め替え容器に関する。
【背景技術】
【0002】
液体洗剤や柔軟仕上げ剤などのトイレタリー用品や、食用油、インスタントコーヒーなどの食品は、それぞれ使いやすいような形状の専用容器に収納されている。専用容器は、構造もしっかりしており、従って高価であることから、内容物が無くなった段階で、繰り返し使用することができるように、内容物のみを詰替える詰替え容器入りの製品が別途販売されていることが多い。
【0003】
例えば液体洗剤の容器は、洗剤を使用する時にその都度適切な量を計量して取り出す必要があるため、軽量カップに注ぎやすいように、注出口にノズルを備えた剛性のあるプラスチック容器が、繰り返し使用容器として用いられている。この容器に対して、内容物を補充するための詰め替え用の容器としては、軟包装フィルムからなる柔軟な容器に、注出口を形成した容器や、口栓を取付けた容器が一般的に使用されている。
【0004】
繰り返し使用する剛性の容器は、もっぱら注出し易いように設計されているため、繰り返し使用する容器に対して、詰替え容器から内容物を補充する詰替え操作の利便性を考慮したものでは、必ずしもなかった。
【0005】
また一方、詰替え容器も、もっぱら安価に製造することに重点を置くあまり、必ずしも詰替え操作の利便性を考慮したものではなかった。
【0006】
繰り返し使用する容器に設けられたノズルを利用して、詰替え容器の開封を行うことができ、さらに詰替え中に、詰替え容器が自立するために、手で保持しなくてもよい詰替え容器が提案されている。この手放し詰め替え容器は、繰り返し使用する容器の開口部に着脱可能かつ脱落不能に連結される結合部材と、詰め替え容器本体を密封する容器密封部材とを備えた詰め替え容器である(特許文献1参照)。
【0007】
特許文献1に記載された詰め替え容器は、繰り返し使用する容器と詰め替え容器を結合するために、口栓部に、結合部材と容器密封部材という2つの部材を用いているため、容器のコストが高いものとならざるを得ない。また詰め替え容器を、繰り返し使用する容器の開口部にねじ込んで使用する構造であるため、両者の結合は確実であるが、反面、操作が面倒であるばかりでなく、口栓のコスト面においても不利であるという欠点があった。
【0008】
コストの面からは、図5に示したような表裏2枚の包装フィルムの周縁をシールしてなる包装袋が有利である。この詰替え用包装袋は、容器の口径に見合った任意の巾の注出口を設けることができるが、表裏2枚のフィルムの端縁部をシールして注出口部を形成した場合、内容物を注出する際、開口部がシールされた両端に引張られ、表裏のフィルムが疑似密着状態となり、注出口が閉塞してしまうという問題や、注出口が折れ曲がり易く、詰替え操作中に注出口が繰り返し使用する容器から外れてしまうといった問題がある。
【0009】
この注出口が閉塞したり、折れ曲がったりする問題を解決するために、注出口部にフィルムとは別部材のパーツを挿入したり(特許文献2参照)、注出口部付近のフィルムを膨らませて立体形状とすることで、開口面積を確保したりするものが多く提案されている(特許文献3参照)。
【0010】
しかしこれらの包装袋は、別部材を取り付ける工程や、フィルムに深いエンボス加工を施す工程などが増加するという問題の他、充填時に包装袋の供給部において包装袋を整然と積み上げて揃えることができないという問題や、表裏2枚のフィルムをシールしてなる注出口は、両端にシール部が存在するため、その分だけ開口巾が狭くなり、十分な開口面積を確保することができないという基本的な問題があった。十分な開口面積が確保できないと、詰替え時の注出に要する時間は長くなってしまう。
【0011】
この問題を解決するために、包装袋を構成するフィルムを折り曲げて、注出口の片側を形成し、注出口のシール部を片側だけとする包装袋が提案されている(特許文献4、5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2004-99082号公報
【特許文献2】特開平5-132069号公報
【特許文献3】特許第4110940号
【特許文献4】特開平11-236053号公報
【特許文献5】特開2008-18991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献4、5に示されたような、注出口の片側が折り曲げられたフィルムで構成されている包装袋の場合、注出口が閉塞する問題や、注出口部の開口面積が不足するという問題は解消されるが、特許文献5に示された軟質包装袋の注出口に見られるように、注出時の操作のし易さを考慮して注出口を斜めに設定した場合、開封操作性が不安定になるという問題が生じることが判明した。
【0014】
図6(1)は、特許文献5に開示された軟質包装袋を示した図であり、図6(2)は、注出口部分の拡大図である。出願人の出願になるこの軟質包装袋は、注出口部分に、切れ目線aとV字状の切欠きbと切れ目線aを覆うように設けられた網点状の傷加工cを備えているにも拘わらず、V字状の切欠きbの位置が多少ずれたような場合には、包装袋の裂け目が切れ目線aから外れてしまい、本来の切れ目線aの位置で開封できないという問題が生じる可能性があることが分かった。
【0015】
そこでこの問題を解決するために、出願人は特許願2010−133859号において、注出口を形成する開封予定線上に、開封予定線に平行な複数の傷線からなる易カット加工を施し、さらに開封用切目線の先端部を、開封予定線と平行な方向に向かって曲げることにより、開封性の安定化を図った。
【0016】
しかし、この手段によっても、実際の生産においては、ごくまれに表裏面の易カット加工の傷線の位置と表裏面の積層体の折り曲げ位置とが位置ずれを生じると、注出ノズル先端部をうまく切り取ることができない場合が生じることが判明したのである。
【0017】
本発明の解決しようとする課題は、1枚の積層体を折り曲げて注出ノズル部を形成し、口栓等の別部材を使用することなく、大面積の注出口が形成できる詰替え容器において、折り曲げ部の位置がずれにくく、万一ずれた場合であっても、注出口の開封操作が容易かつ確実にできる詰替え容器を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、基材とシーラント層を少なくとも有する1枚の積層体を、シーラント層を内側にして折り曲げて、折り曲げ部と本体表面積層体と本体裏面積層体を形成し、基材とシーラント層を少なくとも有する1枚の積層体を、シーラント層を外側にして折り曲げて底テープとし、前記本体表面積層体と本体裏面積層体の間に挿入して、周縁をシールしてなるスタンディングパウチ形状の詰替え容器であって、前記折り曲げ部は、前記表面積層体および裏面積層体および注出ノズルシール部と共に、内容物を注ぎ出すための斜め上方を向く注出ノズルを形成しており、該注出ノズルの先端は注出ノズル先端シール部によってシールされており、前記注出ノズルシール部に設けられた開封用切目線によって分離形成された開封つまみを持って開封予定線に沿って切り離すことにより注出口を形成するものであり、前記開封予定線は、前記折曲部に対して傾斜しており、前記本体表面積層体上および本体裏面積層体上の開封予定線上には、それぞれの開封予定線に平行な複数の傷線からなる易カット加工が施されており、前記本体表裏面積層体に施された複数の傷線の先端同士を結ぶ1本のハーフカット線が、前記折り曲げ部の稜線に沿って形成されていることを特徴とする詰替え容器である。
【0019】
本発明に係る詰替え容器は、注出口を形成すべき開封予定線に平行する複数の傷線からなる易カット加工を有し、この複数の傷線の先端同士を結ぶ1本のハーフカット線を設けたので、折り曲げ部を形成する際に、このハーフカット線が折り曲げ位置を誘導するため本来の正確な位置に折り曲げ部が形成される。
【0020】
また万一折り曲げ位置がずれた場合であっても、このハーフカット線が開封時の切れ目を誘導するため、確実に注出口が形成される。
【0021】
また、請求項2に記載の発明は、前記折り曲げ部の稜線に沿って形成されたハーフカット線が、前記注出ノズル先端シール部を避けて形成されていることを特徴とする請求項1に記載の詰替え容器である。
【0022】
また、請求項3に記載の発明は、前記開封用切目線の先端部が、前記開封予定線と平行な方向に向かって折れ曲がっていることを特徴とする請求項1または2に記載の詰替え容器である。
【0023】
また、請求項4に記載の発明は、前記注出用ノズルを形成する本体表面積層体および本体裏面積層体の相対する位置に、注出用ノズルの経路に平行して、外側に膨らんだ細長の凸状部を複数個有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の詰替え容器である。
【0024】
また、請求項5に記載の発明は、前記折り曲げ部の一部を切り開き、内容物充填用開口部としたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の詰替え容器である。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る詰替え容器は、基材とシーラント層を少なくとも有する1枚の積層体を、シーラント層を内側にして折り曲げて、折り曲げ部と本体表面積層体と本体裏面積層体を形成し、周縁をシールしてなる詰替え容器であるから、プラスチックボトルや、プラスチック製の口栓を使用した容器などと異なり、軟包装用積層体のみから製造することができるため、安価に製造することができる。
【0026】
また、本発明に係る詰替え容器は、1枚の積層体を、シーラント層を内側にして折り曲げて、折り曲げ部を形成し、該折り曲げ部は、前記表面積層体および裏面積層体および注出ノズルシール部と共に、内容物を注ぎ出すための注出ノズルを形成したので、大面積の
注出口を安定して確保することが可能となり、その結果円滑かつ迅速な詰め替え操作が可能となった。
【0027】
また、基材とシーラント層を少なくとも有する1枚の積層体を、シーラント層を外側にして折り曲げて底テープとし、本体表面積層体と本体裏面積層体の間に挿入して周縁をシールしてなるスタンディングパウチ形状としたので、自立性を有する大容量の詰替え容器とすることが可能となり、本発明の特徴を十分に生かせるものとなる。
【0028】
また、本発明に係る詰替え容器は、注出口を形成する開封予定線が、前記折曲部に対して傾斜しているため、容器を傾けて内容液を注出する際の操作性が良い。
【0029】
また、開封予定線上には、開封予定線に平行な複数の傷線からなる易カット加工が施されているため、開封つまみを引き上げると、積層体の裂け目が自然に開封予定線に沿って進み、所定の位置に注出口を形成することが容易に可能である。
【0030】
また本発明に係る詰替え容器は、本体表裏面積層体に施された複数の傷線の先端同士を結ぶ1本のハーフカット線を、折り曲げ部の稜線に沿って形成したので、折り曲げ部を形成する際に、このハーフカット線が折り曲げ位置を誘導するため本来の正確な位置に折り曲げ部が形成されるという効果がある。
【0031】
また万一折り曲げ位置がずれた場合であっても、このハーフカット線が開封時の切れ目を誘導するため、確実に注出口が形成されるという効果をも有する。
【0032】
請求項2に記載の発明においては、前記折り曲げ部の稜線に沿って形成されたハーフカット線が、注出ノズル先端シール部を避けて形成されているため、注出ノズル先端シール部を形成する際に、シール部の積層体が割れて内層であるシーラント層がはみ出して糸を引くといった障害を防止することができる。
【0033】
請求項3に記載の発明においては、開封用切目線の先端部が、開封予定線と平行な方向に向かって折れ曲がっているため、開封時の切れ目がより確実に開封予定線に沿って進行するという効果がある。
【0034】
請求項4に記載の発明においては、注出用ノズルを形成する本体表面積層体および本体裏面積層体の相対する位置に、注出用ノズルの経路に平行して、外側に膨らんだ細長の凸状部を複数個設けたので、内容物を注出する際、表裏面の積層体が付着しにくくなるため、注出流路が閉塞したり、また注出ノズルが折れ曲ったりする問題が生じにくくなる。
【0035】
請求項5に記載の発明においては、前記折り曲げ部の一部を切り開き、内容物充填用開口部としたので、他のシール部分を充填用開口部とすることができないような形状の容器であっても、安定した充填操作が可能となる。
【0036】
本発明に係る詰替え容器は、ノズルキャップを有する繰り返し使用する容器のノズルを前記注出ノズルに挿入可能とした場合、水平に保持した注出ノズルに前記繰り返し使用する容器のノズルを挿入した後に、注出ノズルが垂直になるように容器を傾けることにより、迅速な詰め替えを可能とした詰替え容器となり、本発明の効果が最大限に発揮される。すなわち、本発明に係る詰替え容器は、1枚の積層体を折り曲げた折り曲げ部の存在によって、注出口が自然に開くので、目的とする容器のノズルを挿入し易く、またノズルに合わせて注出口の寸法を設計することにより、ノズルにぴったり合った注出口とすることができる。このため、水平に保持した注出ノズルに繰り返し使用する容器のノズルを挿入した後に、注出ノズルが垂直になるように傾けることにより、迅速な詰替え操作が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、本発明に係る詰替え容器の一実施態様を示した模式図である。
【図2】図2は、図1のX−X’断面を示した断面模式図である。
【図3】図3(1)は、図1の注出ノズル部分の詳細を示した拡大図である。 図3(2)は、図3(1)において、折り曲げ部とハーフカット線の位置がずれた場合を示した模式図である。
【図4】図4は、易カット加工の傷線とハーフカット線の関係を示した仮想展開図である。
【図5】図5は、従来の詰替え容器の一例を示した模式図である。
【図6】図6は、特許文献5に記載された軟質包装袋とその注出口を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下本発明に係る詰替え容器について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明に係る詰替え容器の一実施態様を示した模式図である。また図2は、図1のX−X’断面を示した断面模式図である。また図3(1)は、図1の注出ノズル部分の詳細を示した拡大図である。
【0039】
本発明に係る詰替え容器(1)は、図2に示したように、基材(11)とシーラント層(12)を少なくとも有する積層体(10)からなる詰替え容器であって、図1に示したように、1枚の積層体を、シーラント層を内側にして折り曲げて、折り曲げ部(6)と本体表面積層体(2)と本体裏面積層体(3)を形成し、周縁をシールしてなる詰替え容器である。
【0040】
折り曲げ部(6)は、表面積層体(2)および裏面積層体(3)および注出ノズルシール部(24)と共に、内容物を注ぎ出すための注出ノズル(32)を形成しており、注出ノズル(32)の先端は注出ノズル先端シール部(25)によってシールされており、開封予定線(36)に沿って切り離すことにより注出口(31)を形成する。
【0041】
注出ノズル先端シール部(25)の下部には、注出ノズルシール部(24)に設けられた開封用切目線(35)によって分離形成された開封つまみ(34)が形成されている。この開封つまみ(34)を持って開封予定線(36)に沿って切り離すことにより注出口(31)が形成される。
【0042】
開封予定線(36)は、折曲部(6)の稜線に対して傾斜しており、開封予定線上には、開封予定線(36)に平行な複数の傷線からなる易カット加工(33)が施されている。開封用切目線(35)の先端部(35a)は、本実施態様においては、開封予定線(36)と平行な方向に向かって折れ曲がっている。
【0043】
図4は、易カット加工(33)部の傷線とハーフカット線(7)の関係を示した仮想展開図である。このように本体表裏面積層体(2)、(3)に施された複数の傷線の先端同士を結ぶ1本のハーフカット線(7)が、折り曲げ部(6)の稜線に沿って形成されている。
【0044】
1枚の積層体を折り曲げて折り曲げ部(6)を形成する前にハーフカット線(7)を形成しておくことにより、折り曲げ加工を行う際に、ハーフカット線(7)が折り曲げ位置を誘導するため、本来の正確な位置に折り曲げ部(6)を形成することができる。
【0045】
また図3(2)に示したように、万一折り曲げ位置がずれた場合であっても、ハーフカット線(7)が存在することにより、開封用切目線(35)から出発した表裏面の切れ目がハーフカット線(7)で合体するため、注出口が確実に開口する。
【0046】
図1に示した実施態様においては、注出ノズル(32)を形成する本体表面積層体(2)および本体裏面積層体(3)の相対する位置に、注出用ノズルの経路に平行して、外側に膨らんだ細長の凸状部(8)を3個づつ設けてある。
【0047】
凸状部(8)が存在することにより、注出ノズル部における表裏面の積層体同士が付着して流路が閉塞したり、注出ノズル部が折れ曲ったりすることが防げる。
【0048】
本発明に係る詰替え容器は、折り曲げ部(6)を有することで以下の特長を有する。
折り曲げ部(6)は、1枚の積層体をシーラント層(12)を内側にして天部で折り曲げて形成したものであり、折り曲げ部(6)は、折り曲げ部の下部に設けた注出ノズルシール部(24)および本体表面積層体(2)、本体裏面積層体(3)と共に、注出口(31)に至る内容物の流出路を形成している。折り曲げ部(6)における積層体の戻ろうとする弾性の働きにより、流出路の断面は、常に上部が膨らんだ状態となる。このため、注出口(31)の断面積を広く確保することが可能となり、一度に大量の内容物を排出することが可能となる。
【0049】
また本発明に係る詰替え容器における他の特長として、注出ノズルシール部(24)に設けられた開封用切目線(35)によって分離形成された開封つまみ(34)を持って開封予定線(36)に沿って切り離すことにより注出口(31)を形成する構造を挙げることができる。開封予定線(36)は、折曲部(6)に対して傾斜しており、開封予定線上には、開封予定線(36)に平行な複数の傷線からなる易カット加工(33)が施されており、開封用切目線(35)の先端部(35a)は、易カット加工部内に到達しているため、開封用切目線(35)から出発した切れ目は、易カット加工の傷線に誘導されて確実に開封予定線(36)に沿って進む。
【0050】
この時、開封用切目線の先端部(35a)が、開封予定線(36)と平行な方向に折れ曲っている場合には、この開封時の切れ目の進行は、さらに安定する。
【0051】
また開封つまみ(34)が、V字型の切込等によって形成されていると、注出口シール部と完全に分離しているので、ぶらぶらして不必要に引っ掛かったりする場合があるが、本発明のように切目線によって形成されている場合には、ぶらぶらしたりしないという利点がある。
【0052】
図1に示した実施態様においては、本体表面積層体(2)と本体裏面積層体(3)は、サイドシール部(22)とボトムシール部(23)においてシールされて袋状となっている。また折り曲げ部(6)の一部を切り開いて、内容物充填用開口部(41)としてある。このように、容器の天部に充填用の開口部が存在すると、内容物の充填操作がやり易くなる利点がある。
【0053】
図1に示した実施態様においては、折り曲げ部(6)が詰替え容器(1)の上部に水平に配置されているが、詰替え容器の側面に垂直に配置されていてもよい。
【0054】
なお開封予定線(36)は、開封位置を示す仮想的な線であるが、開封位置を明らかにするために、実際に印刷表示等を行っても良い。また、易カット加工(33)は、本体表面積層体(2)および本体裏面積層体(3)の外側面に連続して設けたハーフカット線であることが好ましい。このようにすることにより、開封予定線(36)の部分を手で引き裂いて注出口(31)を容易に形成することが可能となる。ハーフカット線は、刃物によって形成する方法と、レーザー加工によって形成する方法が一般に用いられているが、レーザー加工による方法の方が均一で安定した切れ目を形成できるので好ましい。レーザーの種類としては、炭酸ガスレーザーがより好ましい。開封予定線(36)は、折り曲げ部(6)の稜線に対して垂直ではなく、図1のように斜めにすることにより、注出時の操作性が向上する。
【0055】
本発明に係る詰替え容器に使用する積層体(10)としては、通常軟包装袋に使用される積層体を用いることができる。基材(11)としては、1層ないしは数層からなる紙や金属箔や合成樹脂フィルムを使用する。一例を挙げれば、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリオレフィン系エラストマー等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)等のポリエステル系樹脂、セロハン、三酢酸セルロース(TAC)等のセルロース系樹脂、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)樹脂、エチレン−酢酸ビニル系共重合樹脂(EVA)、アイオノマー樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリスチレン系樹脂(PS)、ポリ塩化ビニル系樹脂(PVC)、ポリ塩化ビニリデン系樹脂(PVDC)、ポリカーボネート樹脂(PC)、フッ素系樹脂、ウレタン系樹脂等の合成樹脂フィルムおよび紙、金属箔等が単体または、複合して使用される。基材(11)には、必要に応じて印刷層や接着剤層が含まれる。
【0056】
紙としては、上質紙、片アート紙、コート紙、キャストコート紙、模造紙などを用いることができる。積層体に紙を用いた場合には、深いエンボス加工により紙に割れが生じることがあるので、本発明に係る詰替え容器に用いる場合は、凸エンボスおよび凹エンボスとして、筋状のエンボスを採用することにより、紙を用いた積層体を安定して使用することができる。環境配慮の点からも、紙を用いることは有効である。
【0057】
シーラント層(12)としては、ポリオレフィン系樹脂が一般的に使用され、具体的には、低密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・αオレフィン共重合体などのエチレン系樹脂や、ホモポリプロピレン樹脂、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・エチレンブロック共重合体、プロピレン・αオレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂などが使用される。またこれらの樹脂を複合した多層フィルムが使用されることもある。
【0058】
積層体の具体的な構成例としては、PET/印刷層/接着剤層/延伸ポリアミド樹脂フィルム(以下ONYと略す)/接着剤層/LLDPEからなる構成のフィルムや、ONY/接着剤層/LLDPE、ONY/接着剤層/ONY/接着剤層/LLDPE、紙/LDPE/アルミニウム箔/LDPE、紙/LDPEなどが挙げられる。
【0059】
図1に示したようなスタンディングパウチ形状の容器は、底テープ(4)が広がるため、大容量の容器とすることが容易に可能である。従って、本発明に係る詰替え容器における注出時間が短くて済むという特徴を十分に生かすことができる。
【0060】
折り曲げ部6は、1枚の積層体をシーラント層を内側にして天部で折り曲げて、形成さ
れており、折り曲げ部6は表面積層体2および裏面積層体3および注出ノズルシール部24と共に、注出口に至る内容物の流出路を形成している。このようにすることにより、特に内容物が液体の場合には、内容物を注出する際、内容物が直線状の流出路を円滑に流れるために、迅速な注出を可能とする。この特徴は、この実施態様においては、容器が大容量であるためにより一層効果的なものとなっている。
【0061】
図1に示した詰替え容器を製造するには、容器の高さに相当する巾のほぼ2倍の巾にスリットした積層体をシーラント層面を内側にして天部で折り曲げて対向させ、本体表面積層体(2)と本体裏面積層体(3)とし、これを連続的に供給し、この間にシーラント層面が外側になるように二つ折りにした底テープ(4)を連続的に供給し、必要なシールを行った後に、打ち抜いて容器とする。
【0062】
このように、本発明に係る詰替え容器は、特別のプラスチック製の口栓等を使用せずに、大面積の注出口を確保することが可能であり、またこの注出口の大きさは、目的とする繰り返し使用容器の口栓の形状に合わせて自由に設計することができるので、迅速な詰替え操作が可能な専用詰替え容器として極めて価値の高いものである。
以下実施例に基づいて、本発明に係る詰替え容器についてさらに具体的に説明する。
【実施例1】
【0063】
本体表面積層体および本体裏面積層体として以下の構成からなる積層体を使用した。
<積層体の構成>
PET(東レ社製P60、12μm)/印刷層/接着剤層(東洋モートン社製TM272、3g/m(dry))/ONY(ユニチカ社製ONMB、15μm)/接着剤層(同上)/LLDPE(東セロ社製TUX−FCS、150μm)
底テープとして以下の構成からなる積層体を使用した。
<積層体の構成>
ONY(ユニチカ社製ONM、25μm)/LLDPE(同上、120μm)
【0064】
上記の積層体を用いて、図1に示した形状のスタンディングパウチを作製した。パウチサイズは、巾130mm、高さ260mm、底折込35mmとした。開口部の巾は、約18mmである。
充填用開口部としては、折り曲げ部の一部をカットし、充填用開口部とした。また注出ノズル先端部の注出口となるべき開封予定線上に、レーザー加工による複数のハーフカット線からなる易カット加工を施した。さらに表裏面の複数の傷線の交点を通るように1本のハーフカット線を注出ノズル先端シール部とポイントシール部の位置を避けて設けた。
【0065】
なおこれら一連のレーザー加工は、積層体を折り曲げて折り曲げ部を形成する以前に実施した。また注出ノズルシール部に開封用切込線を設け、その先端は、開封予定線に平行になるように折り曲げた。
こうして得られた詰替え容器の、開封性を調べたところ、100%の確率で開封予定線に沿って開封が行われ、注出口が形成されることが分かった。
【符号の説明】
【0066】
1・・・詰替え容器
2・・・本体表面積層体
3・・・本体裏面積層体
4・・・底テープ
6・・・折り曲げ部
7・・・ハーフカット線
8・・・凸状部
10・・・積層体
11・・・基材
12・・・シーラント層
21・・・トップシール部
22・・・サイドシール部
23・・・ボトムシール部
24・・・注出ノズルシール部
25・・・注出ノズル先端シール部
26・・・ポイントシール部
31・・・注出口
32・・・注出ノズル
33・・・易カット加工
34・・・開封つまみ
35・・・開封用切目線
35a・・・開封用切目線先端部
36・・・開封予定線
a・・・切れ目線
b・・・V字切欠き
c・・・網点状の傷加工
41・・・内容物充填用開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材とシーラント層を少なくとも有する1枚の積層体を、シーラント層を内側にして折り曲げて、折り曲げ部と本体表面積層体と本体裏面積層体を形成し、
基材とシーラント層を少なくとも有する1枚の積層体を、シーラント層を外側にして折り曲げて底テープとし、前記本体表面積層体と本体裏面積層体の間に挿入して、周縁をシールしてなるスタンディングパウチ形状の詰替え容器であって、
前記折り曲げ部は、前記表面積層体および裏面積層体および注出ノズルシール部と共に、内容物を注ぎ出すための斜め上方を向く注出ノズルを形成しており、
該注出ノズルの先端は注出ノズル先端シール部によってシールされており、前記注出ノズルシール部に設けられた開封用切目線によって分離形成された開封つまみを持って開封予定線に沿って切り離すことにより注出口を形成するものであり、
前記開封予定線は、前記折曲部に対して傾斜しており、
前記本体表面積層体上および本体裏面積層体上の開封予定線上には、それぞれの開封予定線に平行な複数の傷線からなる易カット加工が施されており、
前記本体表裏面積層体に施された複数の傷線の先端同士を結ぶ1本のハーフカット線が、前記折り曲げ部の稜線に沿って形成されていることを特徴とする詰替え容器。
【請求項2】
前記折り曲げ部の稜線に沿って形成されたハーフカット線は、前記注出ノズル先端シール部を避けて形成されていることを特徴とする請求項1に記載の詰替え容器。
【請求項3】
前記開封用切目線の先端部は、前記開封予定線と平行な方向に向かって折れ曲がっていることを特徴とする請求項1または2に記載の詰替え容器。
【請求項4】
前記注出用ノズルを形成する本体表面積層体および本体裏面積層体の相対する位置に、注出用ノズルの経路に平行して、外側に膨らんだ細長の凸状部を複数個有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の詰替え容器。
【請求項5】
前記折り曲げ部の一部を切り開き、内容物充填用開口部としたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の詰替え容器。

【図2】
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【図4】
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【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−107693(P2013−107693A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255981(P2011−255981)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】