説明

詰替え容器

【課題】詰替え作業時に内容物が手指に付着するなどの不具合を起すことなしに容易かつスムーズに内容物を移し替えることができる詰替え容器を提案する。
【解決手段】詰替え容器1は、容器本体3とその口部9に設けられた注出栓13とを備え、注出栓13は、口部9に保持され充填空間Mにつながる開口部19aが形成されたベース19と、該ベース19に回動自在に保持され内側に内容物の注出通路Pを形成する筒体26であって、傾倒姿勢にて開口部19aを閉塞する一方、その引き起こしによる起立姿勢にて開口部19aと注出通路Pとが整列して内容物の注出を可能にする筒体26と、を有し、ベース19に、筒体26の周りを取り囲み、筒体26の、傾倒姿勢から起立姿勢への移行時に、該筒体26に引っ掛けられて破断されベース19に空気置換用の貫通孔35を出現させるバージンバンド37を設け、充填空間M内に貫通孔35と協働して該充填空間Mと外部とを連通する空気置換用のパイプ43を設けてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物の充填空間につながる口部を有する容器本体と、この容器本体の口部に設けられた注出栓とを備える詰替え容器に関し、とくに、容易かつスムーズな詰替え作業を実現しようとするものである。
【背景技術】
【0002】
シャンプーやリンス、洗剤、消臭除菌剤あるいは化粧品などを入れる容器は、内容物の適量取り出しを可能とするために、ポンプのような吐出器が容器の口部に装着されて市場を流通しており、内容物を使いきった後は、別途に市販されている詰替え容器から新たな内容物を移し替えて元の容器(詰替えが行われる容器)を再利用することによって資源の有効活用が図られている。
【0003】
ところで、詰替え容器は、パウチタイプの容器や薄肉のブロー成形容器など剛性の低い容器が適用されることが多いため変形し易く、内容物の詰替えが行い難いばかりか内容物が手指に付着するおそれもあった。この問題を解消するため、特許文献1には、容器本体の口部に、該口部に係合保持されるベースと、該ベースに回動可能に保持されその引き起こしによる起立姿勢でベースに形成した開口部と整列して内容物の注出を可能にする筒体と、からなる注出栓を装着してなる詰替え容器が開示されている。このような詰替え容器によれば、詰替えが行われる容器の口部に、注出栓の筒体を引っ掛けて当該筒体を引き起こすだけで詰替え容器内の内容物を移し替えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−157096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1にて提案された詰替え容器は、容器全体を逆さにした状態で内容物の注出を行うものであり、内容物の注出により内部が減圧化して内容物のスムーズな注出を行い得ない場合があってこの点について改善の余地があった。
【0006】
それゆえ、本発明は、詰替え作業時に内容物が手指に付着するなどの不具合を起すことなしに容易かつスムーズに内容物を移し替えることができる詰替え容器を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の詰替え容器は、内容物の充填空間につながる口部を有する容器本体と、この容器本体の口部に設けられた注出栓と、を備える詰替え容器であって、前記注出栓は、前記口部に保持され前記充填空間につながる開口部が形成されたベースと、該ベースに回動自在に保持され内側に内容物の注出通路を形成する筒体であって、前記ベースに対する傾倒姿勢にて前記開口部を閉塞する一方、その引き起こしによる起立姿勢にて前記開口部と前記注出通路とが整列して内容物の注出を可能にする筒体と、を有し、前記ベースに、前記筒体の周りを取り囲み、前記筒体の、前記傾倒姿勢から前記起立姿勢への移行時に、該筒体に引っ掛けられて破断され前記ベースに空気置換用の貫通孔を出現させるバージンバンドを設け、前記充填空間内に前記バージンバンドの破断によって出現する前記貫通孔と協働して該充填空間と外部とを連通する空気置換用のパイプを設けたことを特徴とするものである。
【0008】
なお、本発明の詰替え容器にあっては、前記バージンバンドは、前記貫通孔を塞ぐ一端部が前記ベースに破断可能に連結されるとともに、他端部が前記ベースに破断不能に連結されてなることが好ましい。
【0009】
また、本発明の詰替え容器にあっては、前記バージンバンドの前記他端部の、前記筒体と対向する側面とは反対側の側面に切込みまたは凹部を設けてなることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の詰替え容器によれば、注出栓を詰替えが行われる容器の口部にあてがって、容器本体を傾けるだけでベースの開口部の開放および空気置換用の貫通孔の開放を行うことができ、注出栓を手指で直接触ることなく容易に詰替え作業を行うことができるとともに、詰替え容器内の内容物の流出に伴ってベースに形成された貫通孔を通して空気置換を行うことができるので、スムーズな詰替え作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明にしたがう一実施形態の詰替え容器の断面図である。
【図2】図1の詰替え容器を、キャップを開放した状態で示す平面図である。
【図3】図1の詰替え容器における注出栓を示す斜視図である。
【図4】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図5】図1の詰替え容器の注出栓を、内容物の詰替えが行われる容器の口部へあてがった様子を示す断面図である。
【図6】図5の状態から詰替え容器の容器本体を傾けた(底部を持ち上げた)様子を示す断面図である。
【図7】図6の状態から詰替え容器の容器本体をさらに傾けた様子を示す断面図である。
【図8】図6の状態において、バージンバンドが破断する様子を示した注出栓の斜視図である。
【図9】図7の状態から詰替え容器の容器本体を真っ逆さまに傾けて内容物の移し替えを行う様子を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図中における符号1は、詰替え用の内容物を収容可能な詰替え容器を示す。詰替え容器1は、内側に内容物の充填空間Mを区画する容器本体3を備え、容器本体3は、筒状の胴部5と、胴部5の上端に連設され、そこから上方に向かうに連れて径が小さくなるテーパー状の肩部7と、該肩部7の上端に立設された口部9と、上記胴部5の下端を閉塞する底部11を有している。容器本体3としては、内容物の注出による内容物の減少に伴って容器本体3そのものの減容を可能とする袋状ないし薄肉のブローボトル、あるいは人の把持によって変形および復元可能なスクイズ容器を用いることができるが、これらに限定されず、内容物の注出に際して容器本体3を変形させない剛性の大きいボトルを用いることもできる。
【0014】
また、詰替え容器1は、容器本体3の口部9に装着され、詰替えが行われる容器C(図5参照)の口部C1にあてがって容器本体3内の内容物を注出する注出栓13を備えている。
【0015】
注出栓13は、容器本体3の口部9にアンダーカット係合することによって着脱自在に保持されるベース15を有する。ベース15は、容器本体3の口部9の周りを取り囲む環状壁17と、この環状壁17の上端に一体に連結されて容器本体3の口部9で形成される開口を覆う天面壁19と、天面壁19の裏面から垂下して該口部9の内周面に嵌入されるインナーリング21とを有する。ベース15は、容器本体3の口部9にねじ係合によって保持するようにしてもよい。
【0016】
さらにベース15の天面壁19には、充填空間Mと外部とを連通する開口部19aが形成されており、また、開口部19aの両側方には、図2および図3に明瞭に見ることができるように、開口部19aを挟みこむようにして相互対向する一対の支持壁23,24が立設されている。各支持壁23,24には、対向する支持壁24,23に向かって突出する軸部23a,24aが形成されている。
【0017】
注出栓13はさらに、上述の支持壁23,24間に配置されるとともに該支持壁23,24の軸部23a,24aに回転可能に支持され、内側に内容物の注出通路Pを形成する筒体26を有している。具体的には、筒体26は、天面壁19の開口部19aを囲む部分に形成された凹曲面部19bに沿って摺動する凸曲面28aを外面に形成するドラム部28と、該ドラム部28の前端から延びるノズル部30とを一体に有し、上記注出通路Pはこれらのドラム部28およびノズル部30の双方を貫通して形成される。ドラム部28の両側端面にはそれぞれ、支持壁23,24の軸部23a,24aを受ける軸受部32a,33aが設けられており、これにより、筒体26は、ベース15に対する傾倒姿勢(筒体26が横倒しになった姿勢)にて凸曲面28aによってベース15の開口部19aを閉塞する一方、軸部23a,24aを基点とする引き起こしによる起立姿勢(筒体26が容器の軸心と略平行となる姿勢)にて開口部19aと注出通路Pとが整列して内容物の注出を可能とする。
【0018】
また、図1に示すように、上記凹曲面部19bには、開口部19aに沿って環状に延びるとともにドラム部28の凸曲面28aに圧接し該凸曲面28aと協働して開口部19aをシールする突条19cが形成されている。さらに、図1に示すように、筒体26の傾倒姿勢にて、ノズル部30とベース15の天面壁19との間には、詰替えが行われる容器Cの口部C1を差し込むことができる程度の隙間Gが設けられている。当該隙間Gは、天壁面19の、凹曲面部19bの前方に連設されたストッパ壁(以下、「傾倒側ストッパ壁」という。)19dにノズル部30の下面を当接させることよって形成される。ここでは、ノズル部30の先端下側部を延長し、すなわちノズル部30の先端部を段状にして、該先端部が詰替えが行われる容器Cの口部C1に確実に引っ掛かるよう構成している。なお、ノズル部30の先端部の形状は図示例に限定されず、ノズル部30の先端下側部のみならず先端上側部も延長してノズル部30の先端面を平坦な形状としてもよい。さらに、ドラム部28の外壁には、図3に明瞭に見ることができるように、少なくとも1つ(この例では2つ)の突起28b,28cが設けられてり、これらの突起28b,28cは、筒体26が起立して注出通路Pと開口部19とが整列した際に(図9参照)、凹曲面部19bの後方に連設されたストッパ壁(以下、「起立側ストッパ壁」という。)19eに当接して筒体26を位置決めする。
【0019】
このようになる詰替え容器1において、ベース15の天面壁19には、図3および図4に明瞭に見ることができるように、筒体26のノズル部30の周りを取り囲み、筒体26の、上記傾倒姿勢から上記起立姿勢への移行時に、該筒体26のノズル部30に引っ掛けられて破断されベース15の天面壁19に空気置換用の貫通孔35を出現させる(すなわち、開放させる)門型のバージンバンド37が設けられている。バージンバンド37の一端部37aは、天面壁19の、貫通孔35の周縁部に薄肉の弱化部39を介して破断可能に連結されており、バージンバンド37の他端部37bはベース15の天面壁19に破断不能に連結されている。また、バージンバンド37の該他端部37bには、筒体26と対向する側面とは反対側の側面に凹部(切込みでもよい。)41が形成されている。
【0020】
また、上記詰替え容器1において、充填空間M内には、バージンバンド37の破断により出現した上記貫通孔35と協働して上記充填空間Mと外部とを連通する空気置換用のパイプ43が設けられており、該パイプ43は、天面壁19の裏面に設けられたパイプホルダ45に嵌合、保持されている。パイプ43は、その長さが、充填空間M内に予定した量の内容物が充填されている状態で容器本体3を逆さにし、バージンバンド37の破断により貫通孔35が開放され、内容物の詰め替えが始まる際に、パイプ43の末端が内容物の表面から露出する長さとなるよう設定されている。
【0021】
なお、図示の実施形態の詰替え容器1において、符号47は、不使用時に筒体26を覆い隠すキャップであり、該キャップ47は注出栓13の後端にヒンジ49を介して一体に連結されている。
【0022】
次いで、上記構成を有する詰替え容器1の作用を説明する。
【0023】
使用者は先ず、図5に示すように、傾倒姿勢にある筒体26のノズル部30とベース15の天面壁19との間の隙間Gに、詰替えが行われる容器Cの口部C1の上端を差し込む。次いで、図6に示すように、ノズル部30の先端を口部9に引っ掛けながら詰替え容器1の容器本体3を傾けることにより、筒体26は起立される。そして、図7および図8に示すように、容器本体3をさらに傾けて筒体26をさらに引き起こすと、筒体26の周囲を囲うバージンバンド37が引っ張られてバージンバンド37の一端部が弱化部39を起点に破断し、ベース15の天面壁19に空気置換用の貫通孔35が出現し、さらに筒体26を引き起こすことにより、筒体26の注出通路Pとベース15の開口部19aとが整列して、充填空間M内の内容物が開口部19aおよび注出通路Pを経て流出すると同時に、ベース15に設けられた貫通孔35を通して空気が詰替え容器1内へと導入される(すなわち、空気置換が行われる。)。
【0024】
したがって、この詰替え容器1によれば、注出栓13を詰替えが行われる容器Cの口部C1にあてがって、容器本体3を傾けるだけでベース15の開口部19aの開放および空気置換用の貫通孔35の開放を行うことができ、注出栓13を手指で直接触ることなく容易に詰替え作業を行うことができるとともに、詰替え容器1内の内容物の流出に伴ってベース15に形成された貫通孔35を通して空気置換を行うことができるので、スムーズな詰替え作業を行うことができる。
【0025】
また、この詰替え容器1によれば、バージンバンド37が破断していないことをもって、詰替え容器1が未開封であることを判断でき、言い換えれば、不正な開封があった場合にはそれを一目で判別することができる。
【0026】
また、本実施形態の詰替え容器1によれば、バージンバンド37の、貫通孔35を塞ぐ一端部37aをベース15に破断可能に連結するとともに、他端部37bをベース15に破断不能に連結したことから、バージンバンド37の一端部37aを破断させた際に、該他端部37bにてバージンバンド37をベース19に保持させておくことができ、詰替え時にバージンバンド37が詰替えが行われる容器C内へ落下するのを防止することができる。
【0027】
さらに、本実施形態の詰替え容器1によれば、バージンバンド37の他端部37bの、筒体26と対向する側面とは反対側の側面に凹部(切込みでもよい。)41を設けたことから、バージンバンド37が破断した後に、該凹部41を基点にバージンバンド37を屈折させ易くすることができので、バージンバンド37が筒体26の回動を阻害するのを防止することができ、筒体26を円滑に回動させることができる。
【0028】
さらに、本実施形態の詰替え容器1によれば、傾倒側ストッパ壁19dによって、筒体26のノズル部30とベース15の天面壁19との間に、詰替えが行われる容器Cの口部C1を差し込むことができる隙間Gを形成したことから、筒体26を詰替えが行われる容器Cの口部C1に確実に引っ掛けることができて、筒体26を容易に起立させることができる。
【0029】
さらに、本実施形態の詰替え容器1によれば、ドラム部28の外壁に突起28b,28cを設けるとともに、筒体26を起立させた際に該突起28b,28cが当接する起立側ストッパ壁19eを設けたことから、筒体26を起立させた際の注出通路Pと開口部19aの位置合わせを確実に行うことができる。
【0030】
しかも、本実施形態の詰替え容器1によれば、上記凹曲面部19bに、開口部19aに沿って延びとともにドラム部28の凸曲面28aに圧接し該凸曲面28aと協働して開口部19aをシールする突条19cを設けたことから、筒体26が傾倒姿勢にある状態において開口部19aを介した内容物の漏れ出しを確実に防止することができるとともに、突条19cは凸曲面28aに対して線接触するものであるから、摺動抵抗が少なく筒体26の回動が阻害されることもない。
【0031】
以上、図示例に基づき本発明を説明したが、本発明は上述の実施形態のものに限定されず、特許請求の範囲の記載範囲内で適宜に変更することができる。例えば、上記実施形態では、ベースの支持壁に軸部を設けて筒体を回動自在に支持するようにしたが、筒体に軸部を設けるとともに支持壁に該軸部を受ける軸受部を設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
かくして、本発明により、詰替え作業時に内容物が手指に付着するなどの不具合を起すことなしに容易かつスムーズに内容物を移し替えることができる詰替え容器を提案することが可能となった。
【符号の説明】
【0033】
1 詰替え容器
3 容器本体
9 口部
13 注出栓
15 ベース
26 筒体
35 貫通孔
37 バージンバンド
41 凹部
M 充填空間
P 注出通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物の充填空間につながる口部を有する容器本体と、この容器本体の口部に設けられた注出栓と、を備える詰替え容器であって、
前記注出栓は、前記口部に保持され前記充填空間につながる開口部が形成されたベースと、該ベースに回動自在に保持され内側に内容物の注出通路を形成する筒体であって、前記ベースに対する傾倒姿勢にて前記開口部を閉塞する一方、その引き起こしによる起立姿勢にて前記開口部と前記注出通路とが整列して内容物の注出を可能にする筒体と、を有し、
前記ベースに、前記筒体の周りを取り囲み、前記筒体の、前記傾倒姿勢から前記起立姿勢への移行時に、該筒体に引っ掛けられて破断され前記ベースに空気置換用の貫通孔を出現させるバージンバンドを設け、
前記充填空間内に前記バージンバンドの破断によって出現する前記貫通孔と協働して該充填空間と外部とを連通する空気置換用のパイプを設けたことを特徴とする詰替え容器。
【請求項2】
前記バージンバンドは、前記貫通孔を塞ぐ一端部が前記ベースに破断可能に連結されるとともに、他端部が前記ベースに破断不能に連結されてなる、請求項1に記載の詰替え容器。
【請求項3】
前記バージンバンドの前記他端部の、前記筒体と対向する側面とは反対側の側面に切込みまたは凹部を設けてなる、請求項2に記載の詰替え容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−79084(P2013−79084A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218638(P2011−218638)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】