説明

詰替パウチ、詰替パウチの検査方法及び詰替パウチの製造方法

【課題】
ノズル部の先端部分を切り取って、内容物を他の容器に詰め替えるための注ぎ口となる注出口を形成するための切取り線の形成位置に、ずれが生じているか否かの判定を容易にすることができ、不良品の選別に手間を要さず、また、不良品の発生を容易に知ることができる詰替パウチ、詰替パウチの検査方法及び詰替パウチの製造方法を提供する。
【解決手段】
切取り線18をノズル部16に形成するに際して、切取り線18がノズル部16の所定位置に形成されているかどうかを判定するためのマーカー20を、切取り線18との相対的な位置関係が一定となるように、詰替パウチ10の任意の位置に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗剤、漂白剤、柔軟剤、洗濯糊、シャンプー、リンス等の詰替用の容器などとして用いられ、これらの内容物を他の容器に詰め替えて使用するにあたり、内容物を注出するためのノズル部を備えた詰替パウチ、詰替パウチの検査方法及び詰替パウチの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リサイクル意識の高まりとともに、プラスチックボトルやガラス瓶等の他の容器に内容物を詰め替えて使用する詰替用の容器として、内容物を注出するためのノズル部を設けた詰替パウチが多く用いられるようになってきている。
この種の詰替パウチは、ノズル部の先端部分を切り取って開封することで、ノズル部に注出口が形成されるようになっているが、通常、ノズル部には、その開封が容易となるように、注出口となる部位に沿って切取り線を形成するなどの易開封加工が施されている(例えば、特許文献1等)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−327255号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種の詰替パウチは、一般に、樹脂フィルム等の軟包材からなる長尺状の素材原反を順次繰り出しながら製袋することにより製造されるが、その製袋過程において、例えば、ヒートシール加工、易開封加工、カット加工などの各工程が流れ作業的に行われる。このとき、素材原反の繰り出しが精度よく行われていれば特に問題はないが、素材原反が蛇行して繰り出されたりすると、各工程での加工位置にずれが生じてしまう。
【0005】
特に、易開封加工において形成される切取り線は、内容物が注出される注出口の形状を決定するものであり、切取り線を形成する位置や、切取り線の形状は、ノズル部の開封性のみならず、内容物の注出性、ノズル部を他の容器の注入口に挿入する際の挿入性などを総合的に勘案して決定されるため、切取り線の位置ずれは、これらの製品特性を著しく損ねてしまう。
【0006】
このため、切取り線の位置がずれて製造されたものは、不良品として取り除かなければならないが、そのずれ量がわずかであっても、上記製品特性に与える影響は大きく、目視による選別は困難であった。特に、素材の表面にレーザーによる溝加工を施して切取り線を形成した場合、切取り線はノズル部の形状や印刷に隠れて見え難くなっており、不良品を選別するには、切取り線が形成されている位置を見定めた後に、どの程度のずれがあるかを実際に測定するなどしなければならず、非常に手間を要するものであった。
【0007】
また、切取り線の位置ずれが許容範囲を超えた初期の段階で検知されれば、その時点で製造を停止して素材原反をセットし直すことにより、不良品の発生を最小限に抑えることができるが、素材原反を繰り出す際の蛇行は一見してわかるものではなく、切取り線の位置ずれは微小量ずつ徐々に大きくなっていく。しかも、切取り線の位置ずれを検知するには、前述したように煩雑な作業を必要とする。
このため、切取り線の形成位置にずれが生じたことに気が付かないまま製造が続行されてしまうことも多々あり、このような場合には、大量の不良品が発生して歩留まりが低下するだけでなく、選別作業にも多くの人手を要し、生産効率が著しく低下するという製造上の問題もあった。
【0008】
本発明は、以上のような従来の技術が有する問題を解決するために提案されたものであり、ノズル部に形成された切取り線の位置にずれが生じているか否かの判定を容易にすることができ、不良品の選別に手間を要さず、また、不良品の発生を容易に知ることができる詰替パウチ、詰替パウチの検査方法及び詰替パウチの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る詰替パウチは、内容物を他の容器に詰め替える際に前記内容物を注出するためのノズル部を備え、前記ノズル部には、前記ノズル部の先端部分を切り取って、注出口を形成するための切取り線が形成された詰替パウチであって、前記切取り線が前記ノズル部の所定位置に形成されているかどうかを判定するためのマーカーを、前記切取り線との相対的な位置関係が一定となるように形成した構成としてある。
【0010】
このような構成を採用することで、切取り線そのものを見て、その形成位置の適否を判定するのではなく、切取り線に較べて格段に見易く形成されたマーカーによって、切取り線が所定の位置に形成されているかどうかを判定することができ、これにより、不良品の選別を容易に行うことができる。
【0011】
本発明に係る詰替パウチにおいて、相対的な位置関係が一定となるように切取り線とマーカーとを形成するには、前記切取り線と前記マーカーとをほぼ同時に形成するのが好ましい。また、切取り線の形成位置がずれてしまうことによる不具合の発生は、特に、前記切取り線が曲線状に形成されていると顕著になるが、本発明に係る詰替パウチによれば、このようなものにおいても不良品の選別を容易に行うことができる。
【0012】
また、前記マーカーは、前記先端部分のヒートシール部に形成することができ、これにより、例えば、詰替パウチの頂部上縁及び側部側縁からマーカーまでの距離を、定規などの簡易な測定器具で容易に測定することができるようになり、切取り線の位置ずれの実測も容易に行える。
【0013】
また、本発明に係る詰替パウチは、前記切取り線及び前記マーカーが、前記ノズル部の表裏両面に形成されている構成とすることができる。
このような構成を採用することにより、詰替パウチのノズル部の表面側に形成された切取り線と、裏面側に形成された切取り線のそれぞれが所定の位置に形成されているかどうかを容易に判定できるだけでなく、表面側と裏面側とで切取り線の位置ずれの方向が異なり、開封性が悪くなってしまうというような不具合があっても、これを容易に発見することができる。
【0014】
また、本発明に係る詰替パウチは、前記ノズル部の基部に、前記他の容器の注入口の開口周縁と係合する係合部が形成されている構成とすることができる。
このような構成を採用した場合であっても、本発明によれば、切取り線の形成位置がずれてしまい、ノズル部の先端部分を切り取ったときに、係合部が消失又は欠落してしまうというような不具合があるものも容易に発見することができる。
【0015】
また、本発明に係る詰替えパウチの検査方法は、内容物を他の容器に詰め替える際に前記内容物を注出するためのノズル部を備えた詰替パウチにおいて、前記ノズル部の先端部分を切り取って注出口を形成するために前記ノズル部に形成された切取り線が、前記ノズル部の所定位置に形成されているかどうかを判定する検査方法であって、前記切取り線を前記ノズル部に形成するに際して、前記切取り線との相対的な位置関係が一定となるようにマーカーを形成しておき、前記マーカーが、詰替パウチの前記ノズル部の所定範囲内に位置しているかどうかによって、前記切取り線が前記ノズル部の所定位置に形成されているかどうかを判定する方法としてある。
これにより、ノズル部の所定位置に切取り線が形成されているかどうかを、マーカーが形成されている位置によりに判定し、これによって不良品の選別が容易に行えるようになる。
【0016】
本発明に係る詰替えパウチの検査方法にあっては、前記マーカーが、詰替パウチの前記ノズル部における前記先端部分のヒートシール部に形成されるようにすることができ、この場合に、前記マーカーが、詰替パウチの前記ノズル部における前記先端部分のヒートシール部に形成されていないものは、前記切取り線が、前記ノズル部の所定位置に形成されていないと判定できるようにしておけば、不良品の選別がより容易になる。
【0017】
また、本発明に係る詰替パウチの製造方法は、長尺状の素材原反を順次繰り出しながら、内容物を注出するためのノズル部を備えた詰替パウチを製袋していく過程で、前記ノズル部の先端部分を切り取って前記ノズル部に注出口を形成するための切取り線を形成する詰替パウチの製造方法であって、前記切取り線を形成するに際して、前記切取り線が前記ノズル部の所定位置に形成されているかどうかを判定するためのマーカーを、前記切取り線との相対的な位置関係が一定となるように形成する方法としてある。
これにより、切取り線の位置ずれによる不良品の発生を容易に知ることができ、不良品の発生に気が付かずに製造を続行して、大量の不良品が発生してしまうというような事態を有効に回避することができる。
【0018】
また、本発明に係る詰替パウチの製造方法は、前記切取り線及び前記マーカーを、レーザーマーカーにより同一工程において形成するのが好ましく、これにより、切取り線とマーカーとの相対的な位置関係を容易に一定とすることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、切取り線がノズル部の所定位置に形成されているかどうかを判定するためのマーカーを、切取り線との相対的な位置関係が一定となるように形成したことにより、切取り線そのものを見て、その形成位置の適否を判定するのではなく、切取り線に較べて格段に見易く形成されたマーカーが所定の範囲内に形成されているかどうかによって、切取り線の位置ずれを判定し、これにより、不良品の選別を容易に行うことができる。
【0020】
さらに、切取り線が所定の位置に形成されていない不良品の発生を容易に知ることができるため、不良品の発生に気が付かずに製造を続行して、大量の不良品が発生してしまうというような事態を有効に回避することができ、不良品が発生しだした初期の段階で製造を停止すれば、不良品の発生を最小限に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0022】
[詰替パウチ]
図1は、本実施形態に係る詰替パウチの概略を示す平面図であり、詰替パウチ10は、樹脂フィルム等の軟包材で形成された胴部11と底部12とから構成されている。胴部11の側部周縁には、底部12を折り畳んだ状態でサイドシール13が施されているとともに、胴部11と底部12との間には、ボトムシール14が施されている。
【0023】
このような詰替パウチ10は、表面材1aと裏面材1bとの間に、底部材1cを折り畳んで挟み込み(図6参照)、これらの長尺状の素材原反1を順次繰り出しながら、ヒートシール加工、易開封加工、カット加工などの各工程を流れ作業的に行うことによって製造されるが(図7参照)、製造方法の詳細については後述する。
【0024】
図1に示す例では、詰替パウチ10の頂部は未シール部とされているが、通常、詰替パウチ10の頂部は、未シール状態で内容物の充填工程まで搬送され、内容物が充填された後にトップシールが施される。
内容物が充填された詰替パウチ10は、折り畳まれた状態の底部12が折り線12aのところで拡がり、詰替パウチ10が円錐又は角錐状になって、自立させることが可能となる。
【0025】
また、図示する例において、図中左上側の胴部11のコーナーには、斜め上方に突出するノズル部16が形成されている。ノズル部16には、ノズル部16に交差する切取り線18が形成されており、その切り取り開始位置にはノッチ15が形成されている。
切取り線18は、ノズル部16の先端部分19を切り取って開封するために形成されるものであり、先端部分19を切取り線18に沿って切り取った後のノズル部16には、内容物を他の容器に詰め替える際の注ぎ口となる注出口16aが形成される(図5参照)。
【0026】
また、図示する例では、図中左側のサイドシール13の途中部位からノズル部16の基部に至るまで、サイドシール13を部分的に傾斜させて逃げ部17が形成されている。
逃げ部17は、詰め替え作業を行う際に、詰替パウチ10と、内容物が詰め替えられる他の容器との干渉を避けるために形成されるものであり、ノズル部16の基部の逃げ部17側には、他の容器の注入口の周縁と係合して、詰替パウチ10の姿勢を安定させるための係合部17aが形成されている。
【0027】
このような形状を備えた、本実施形態に係る詰替パウチ10において、切取線18は、例えば、光学反射式のレーザーマーカーを使用して、軟包材の表面に溝加工を施すことにより形成することができる。
光学反射式のレーザーマーカーは、ミラーの光軸(角度)を操作することによってレーザーの焦点を移動させることができ、ミラーの光軸(角度)操作により複雑な模様やパターンを容易に加工することができる。レーザーとしては、樹脂フィルムの種類に応じた選択的な加工が可能となる炭酸ガスレーザを用いるのが好ましい。
【0028】
このとき、切取り線18は、一本の連続する溝や、一本の破線状の溝により形成するのではなく、例えば、連続する複数の溝を並列させた溝の集合として形成するのが好ましい。これにより、ノズル部16の開封性や、開封時における開封方向の安定性が向上し、ノズル部16の先端部分19を指で切り取って容易に所定の形状の注出口16aを形成することが可能となる。
なお、このような切取り線18には、本出願人が特開2003−94532号で提案した易開封加工を適用することができる。
【0029】
図示する例では、ほぼ等間隔に並んだ曲線状の五本の溝によって、切取り線18を形成している。切取り線18を構成する各溝は、ノズル基部16b側に凸状に湾曲して形成されている。
切取り線18をこのような態様で形成すれば、ノズル部16の開封性を損なわない範囲で、ノズル部16の先端部分19を切り取って注出口16aを形成した後のノズル部16の側縁を長くすることができる。これにより、ノズル部16全体の長さを確保することができる。その結果、内容物が詰め替えられる他の容器の注入口に、ノズル部16を容易に挿入することができるようになるため、詰め替え作業を行う際に内容物がこぼれたりするのを防ぐことができる。
さらに、切取り線18を上記したように形成すれば、注出口16aが湾曲状に形成され、ノズル部16の断面積を実質的に拡げることができ、内容物の注出量を増大させて、詰め替え作業を迅速に終了させることができる。
【0030】
このように、切取り線18は、注出口16aの形状を決定するものであるため、切取り線18が適正な位置からずれて形成されていると、ノズル部16の開封性、内容物の注出性、ノズル部16を他の容器の注入口に挿入する際の挿入性など、詰替パウチ10の製品特性に大きく影響する。
ここで、切取り線18が適正な位置に形成されたものと対比して、切取り線18の形成位置がずれた場合の例を以下に示す。
【0031】
図2は、詰替パウチ10を製造するに際して、順次繰り出される素材原反の適正な位置に切取り線18が形成された状態を示している。切取り線18は、ある程度の余裕をもって素材原反に形成されるが、ノズル部16からはみ出した部分は、詰替パウチ10の輪郭線に沿ってカットされ、これにより、図4に示すような切取り線18がノズル部16に形成される。そして、切取り線18に沿ってノズル部16の先端部分19を切り取ると、図5に示すような注出口16aが形成される。
【0032】
これに対し、図3は、適正な位置に切取り線18が形成された状態(図2)に重ねて、切取り線18がずれて形成された状態を概念的に示しており、図中実線で適正位置に切取り線18が形成された状態の輪郭線を示す。
図3中に一点鎖線で示す輪郭線は、切取り線18を形成する際に素材原反が図中下方にずれ、相対的に切取り線18が図中上方にずれて形成された例を示している。また、図3中に二点鎖線で示す輪郭線は、切取り線18を形成する際に素材原反が図中上方にずれ、相対的に切取り線18が図中下方にずれて形成された例を示している。
なお、図示する例は、理解を容易にするために、素材原反の繰り出しに蛇行が生じた場合を想定し、送り方向に直交する方向にだけ切取り線18がずれて形成される例を示したが、実際には送り方向におけるずれも考慮しなければならず、切取り線18の位置ずれは、実際にはより複雑に生じる。
【0033】
このようにして、切取り線18が適正な位置からずれて形成されると、ノズル部16の開封性が損なわれてしまったり、開封後のノズル部16の形状や、注出口16aの形状が意図した形状と異なってしまい、内容物の注出性、ノズル部16を他の容器の注入口に挿入する際の挿入性などの製品特性までも損なわれてしまったりする。また、ノズル部16の基部に形成される係合部17aが、先端部分19とともに切り取られ、消失又は欠落してしまうこともある。
このような不具合は、図示する例のように、切取り線18を曲線状に形成する場合に特に顕著となる。
【0034】
切取り線18が適正な位置から、その許容範囲を超えてずれて形成されたものは、前述したような不具合があるため、不良品として取り除かなければならない。
しかし、前述したように、製品特性に与える影響は、微小なずれでも大きく、特に、素材の表面にレーザーによる溝加工を施して切取り線18を形成したものは、ノズル部16の形状や、詰替パウチ10に施された印刷に隠れて切取り線18が見え難くなっており、切取り線18それ自体の位置が適正かどうかを判定することによって、不良品を選別するのは困難である。
【0035】
このため、本実施形態では、切取り線18を形成するに際して、切取り線18がノズル部16の所定位置に形成されているかどうかを判定するためのマーカー20を、図2に示す切取り線18との位置関係を維持したまま、切取り線18とともにノズル部16に形成することで、切取り線18との相対的な位置関係が一定となるように形成してある。これにより、切取り線18が適正な位置からずれて形成された不良品を容易に選別できるようにしてある。
すなわち、本実施形態によれば、製造された詰替パウチ10が良品であるか、不良品であるかを検査する際に、切取り線18そのものを見て、切取り線18の形成位置の適否を判定するのではなく、切取り線18に較べて格段に見易く形成されているマーカー20により、切取り線18がノズル部16の所定の位置に形成されているかどうかを判定することができ、これによって不良品の選別が容易に行えるようになる。
【0036】
具体的には、図3に二点鎖線で示した例のように、切取り線18が上方にずれて形成されていれば、マーカー20も上方にずれて形成され、図3に一点鎖線で示した例のように、切取り線18が下方にずれて形成されていれば、マーカー20も下方にずれて形成されるため、マーカー20が、ノズル部16の所定の範囲内に位置しているかどうかによって、切取り線18がノズル部16の所定の位置に形成されているかどうかを判定し、これにより、製造された詰替パウチ10が良品であるか、不良品であるかを検査すればよい。
【0037】
このとき、図示する例のように、コーナーに近く、かつ平坦なノズル部16の先端部分19におけるヒートシール部に、マーカー20を形成すれば、詰替パウチ10の頂部上縁及び側部側縁からマーカー20までの距離を、定規などの簡易な測定器具で容易に測定することができ、これにより、どの程度の位置ずれが生じているかの実測も容易に行えるようになる。
【0038】
なお、切取り線18の位置ずれを実際に測定しようとすると、ノズル部16の形状などに応じて、製品ごとに異なる基準を定めて測定をしなければならないが、本実施形態ではその必要はなく、マーカー20を形成する位置を決めておけば、すべての製品について同じように測定することができる。また、ノズル部16やその近傍には、一般に、内容物の注出性をよくするために立体加工が施されており、切取り線18の位置ずれを実際に測定するには、そのような立体加工を避けて測定しなければならず、測定には煩雑な作業を伴うが、本実施形態ではその必要もない。
【0039】
マーカー20を形成する位置は、その形成位置が所定の範囲内にあるかどうかが容易に判定できるような場所であれば、図示する例には限定されないが、詰替パウチ10の密封性を極力損なわないようにするために、ヒートシールが施されている部位に形成するのが好ましい。
また、マーカー20は、切取り線18との相対的な位置関係が一定となるように形成されれば、その形成手段は特に限定されないが、前述したような光学反射式のレーザーマーカーを用いて、切取り線18を形成するのと同一の工程において、切取り線18とほぼ同時に形成するのが、切取り線18とマーカー20との相対的な位置関係を容易に一定とすることができるため好ましい。
【0040】
さらに、図示する例にあっては、マーカー20を「+」のマーキングにより形成したが、マーカー20の形状そのものも特に限定されず、例えば「○」、「△」、「◇」、「□」、「☆」等の各種のマーキングを施してもよく、穿孔を施すことによってマーカー20を形成してもよい。また、マーカー20を形成する部分には、詰替パウチ10に施される他の印刷模様に影響を及ぼさない範囲で、格子模様などの印刷をするなどして、ずれ量を目測できるようにすることもできる。
【0041】
マーカー20を形成する大きさも任意であり、例えば、ノズル部16の先端部分19におけるヒートシール部にマーカー20を形成する場合には、マーカー20の形状や大きさと、ヒートシール部の形状や大きさとを適宜設定するなどして、ヒートシール部からマーカー20がはみ出すなどしていれば、切取り線18の位置ずれが許容範囲を超えていると判断できるようにすることもできる。
特に、詰替パウチ20のノズル部16における先端部分19のヒートシール部にマーカー20が形成されていなければ、ノズル部16の所定位置に切取り線18が形成されていないと判定できるように設定すれば、良品であるか、不良品であるかが一目瞭然となり、製造された詰替パウチ10の検査が格段に容易になる。
【0042】
また、切取り線18は、通常、詰替パウチ10のノズル部16の表面側と裏面側との両面に形成されるが、それぞれの面に形成される切取り線18との相対的な位置関係が一定となるように、マーカー20も表面側と裏面側との両面に形成しておけば、表面側に形成された切取り線18と、裏面側に形成された切取り線18のそれぞれが、所定の位置に形成されているかどうかを容易に判定することができる。
特に、詰替パウチ10のノズル部16の表面側と裏面側とで、切取り線18の位置ずれが、ともに許容範囲にあったとしても、切取り線18の位置ずれの方向が表面側と裏面側とで異なって、表面側に形成される切取り線18と、裏面側に形成される切取り線18とが交差した状態になっていると、開封性が悪くなってしまう。このような不具合を容易に発見する上でも、詰替パウチ10のノズル部16の表裏表面にマーカー20を形成するのが好ましい。
【0043】
また、本実施形態において、詰替パウチ10に使用する軟包材の材料としては特に制限はない。軟包材を構成するのに適した樹脂材料としては、例えば結晶性ポリプロピレン、結晶性プロピレン−エチレン共重合体、結晶性ポリブテン−1、結晶性ポリ4−メチルペンテン−1、低−、中−、或いは高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、イオン架橋オレフィン共重合体(アイオノマー)等のポリオレフィン類;ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体等の芳香族ビニル共重合体;ポリ塩化ビニル、塩化ビニリデン樹脂等のハロゲン化ビニル重合体;アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体の如きニトリル重合体;ナイロン6、ナイロン66、パラまたはメタキシリレンアジパミドの如きポリアミド類;ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート等のポリエステル類;各種ポリカーボネート;ポリオキシメチレン等のポリアセタール類等の熱可塑性樹脂等を挙げることができる。また、これらの熱可塑性樹脂の他に、紙を使用しても良い。これらの材料からなる軟包材は、未延伸、一軸延伸、あるいは二軸延伸して用いられる。
【0044】
さらに、詰替パウチ10に使用する軟包材は、これらの軟包材を単層で、或いは、二種以上を積層して構成することができ、また、これらの軟包材の一種、あるいは、二種以上と、アルミニウム等の金属箔、金属又は金属酸化物の蒸着フィルム,紙、セロファン等を貼合わせて構成することもできる。好ましい軟包材としては、例えば、延伸ナイロンフィルムを外層とし、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンフィルムを内層とする二層構成、延伸ポリエステルフィルムを外層とし、ポリオレフィンフィルムを内層とする二層構成、及びこれらの内、外層フィルム間にアルミニウム等の金属箔を積層した三層構成のフィルム等が挙げられ、これらの積層フィルムの製造に際しては、各層間に必要に応じて接着剤、アンカー剤を介在させることもできる。
【0045】
そして、上記軟包材の層構成は、詰替パウチ10に充填する内容物の性状に応じて選択され、例えば、詰替洗剤用の詰替パウチのように低コストが要求される場合は、二層構成の積層フィルムを使用し、調味料の詰替パウチのように保存性が要求される場合は、アルミニウム箔を含む三層構成以上の積層フィルムを使用すれば良い。
【0046】
[詰替パウチの製造方法]
次に、本発明に係る詰替パウチの製造方法の一実施形態について説明する。図7は、本実施形態における詰替パウチ10の製造工程を概略的に示す工程図であり、詰替パウチ10は、前述したような軟包材からなる長尺状の素材原反1を順次繰り出しながら製袋することにより製造される。
具体的には、図6に示すように、詰替パウチ10の表面側を形成する表面材1aと、裏面側を形成する裏面材1bとの間に、底部12を形成する底部材1cを折り畳んで挟み込み、これらを重ねた素材原反1を順次繰り出しながら、以下に説明するようなヒートシール加工、易開封加工、カット加工などの各工程を流れ作業的に行うことによって製造される。
【0047】
ヒートシール加工を施すにあたっては、まず、ボトムシール装置101により、ボトムシール14が施される。これにより、底部材1cが、表面材1aと裏面材1bとのそれぞれにヒートシールされて一体になり、折り線12aで折り畳まれた底部12が形成される。
ついで、サイドシール装置102により、サイドシール13が施される。このとき、図1中右側のサイドシール13が施される側部周縁に相当する一工程前の部位と、図1中左側のサイドシール13が施される側部周縁に相当する一工程後の部位とが同時にヒートシールされる。これにより、表面材1aと裏面材1bとがサイドシール13により袋状に一体化され、ヒートシール加工が完了する。
【0048】
次に、易開封加工を施すが、このとき、ノズル部16に相当する部位に切取り線18が形成されるとともに、切取り線18との相対的な位置関係が一定となるように、切取り線18とマーカー20とがほぼ同時に形成される。このとき、切取り線18とマーカー20とは、図2に示す位置関係が維持された状態でノズル部16に形成される。
図示する例にあっては、第一レーザー加工装置103により、表面材1a側に切取り線18及びマーカー20が形成され、第二レーザー加工装置104により、裏面材1b側に切取り線18及びマーカー20が形成される。
本実施形態では、光学反射式のレーザーマーカーにより、切取り線18とマーカー20を形成するのが好ましく、このとき、切取り線18とマーカー20とが同一過程でほぼ同時に形成されるようにミラーの光軸移動をプログラムすれば、切取り線18とマーカー20との相対的な位置関係を容易に一定とすることができる。
【0049】
最後に、カット装置105によりカット加工を施して、詰替パウチ10の輪郭線に沿ってカットし、詰替パウチ10が製造される。
なお、本実施形態では、製造効率を向上させるために、二つの詰替パウチ10が同時に製造されるようにしているが、詰替パウチ10は一つずつ製造されるようにしてもよい。
【0050】
以上のようにして製造される詰替パウチ10は、切取り線18との相対的な位置関係が一定となるマーカー20が形成されているため、マーカー20が所定の範囲内に形成されているか否かにより、切取り線18が所定の位置に形成されているかどうかを判定し、これによって不良品の発生を容易に知ることができる。
また、切取り線18及びマーカー20は、詰替パウチ10のノズル部16の表面側と裏面側との両面に形成されるため、切取り線18の位置ずれの方向が表面側と裏面側とで異なり、表面側に形成される切取り線18と、裏面側に形成される切取り線18とが交差することにより、開封性が悪くなってしまったものも容易に発見することができる。
【0051】
したがって、本実施形態に係る詰替パウチの製造方法によれば、切取り線18の位置ずれによる不良品の発生を容易に知ることができ、不良品の発生に気が付かずに製造を続行して、大量の不良品が発生してしまうというような事態を有効に回避することができる。
すなわち、不良品が発生しだした初期の段階で、不良品の発生を容易に知ることができ、その時点で製造を停止し、素材原反1をセットし直すことにより、不良品の発生を最小限に抑えることができる。
【0052】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
【0053】
例えば、本出願人が、特開2004−67142号、特開2004−90932号などにおいて先に提案した、内容物の注出性をよくするための立体加工をノズル部16やその近傍に施すなどのような、この種の詰替パウチに適用可能な種々の構成を任意に追加することができる。
【0054】
また、切取り線18の形状も、前述した実施形態のような曲線状のものに限らず、直線状、V字状、又はこれらと曲線とを組み合わせた形状など、種々の形状を採用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上説明したように、本発明に係る詰替パウチは、洗剤、漂白剤、柔軟剤、洗濯糊、シャンプー、リンス等の詰替用容器などとして好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に係る詰替パウチの一実施形態の概略を示す平面図である。
【図2】適正な位置に切取り線が形成された状態を示す説明図である。
【図3】適正な位置に切取り線が形成された状態と対比して、切取り線の形成位置がずれた状態を示す説明図である。
【図4】ノズル部の要部拡大図である。
【図5】図4に示すノズル部の先端部分を切取り線で切り取って、注出口が形成された状態を示す要部拡大図である。
【図6】本発明に係る詰替パウチの製造方法の一実施形態に用いられる素材原反の構成の一例を示す斜視図である。
【図7】本発明に係る詰替パウチの製造方法の一実施形態における製造工程の概略を示す工程図である。
【符号の説明】
【0057】
1 素材原反
10 詰替パウチ
16 ノズル部
16a 注出口
17a 係合部
18 切取り線
19 先端部分
20 マーカー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を他の容器に詰め替える際に前記内容物を注出するためのノズル部を備え、前記ノズル部には、前記ノズル部の先端部分を切り取って、注出口を形成するための切取り線が形成された詰替パウチであって、
前記切取り線が前記ノズル部の所定位置に形成されているかどうかを判定するためのマーカーを、前記切取り線との相対的な位置関係が一定となるように形成したことを特徴とする詰替パウチ。
【請求項2】
前記切取り線と前記マーカーとをほぼ同時に形成してなる請求項1に記載の詰替パウチ。
【請求項3】
前記切取り線が、曲線状に形成されている請求項1又は2に記載の詰替パウチ。
【請求項4】
前記マーカーが、前記先端部分のヒートシール部に形成されている請求項1、2又は3に記載の詰替パウチ。
【請求項5】
前記切取り線及び前記マーカーが、前記ノズル部の表裏両面に形成されている請求項1〜4のいずれかに記載の詰替パウチ。
【請求項6】
前記ノズル部の基部に、前記他の容器の注入口の開口周縁と係合する係合部が形成されている請求項1〜5のいずれかに記載の詰替パウチ。
【請求項7】
内容物を他の容器に詰め替える際に前記内容物を注出するためのノズル部を備えた詰替パウチにおいて、前記ノズル部の先端部分を切り取って注出口を形成するために前記ノズル部に形成された切取り線が、前記ノズル部の所定位置に形成されているかどうかを判定する検査方法であって、
前記切取り線を前記ノズル部に形成するに際して、前記切取り線との相対的な位置関係が一定となるようにマーカーを形成しておき、前記マーカーが、詰替パウチの前記ノズル部の所定範囲内に位置しているかどうかによって、前記切取り線が前記ノズル部の所定位置に形成されているかどうかを判定することを特徴とする詰替パウチの検査方法。
【請求項8】
前記マーカーが、詰替パウチの前記ノズル部における前記先端部分のヒートシール部に形成されるようにした請求項7に記載の詰替パウチの検査方法。
【請求項9】
前記マーカーが、詰替パウチの前記ノズル部における前記先端部分のヒートシール部に形成されていないものは、前記切取り線が、前記ノズル部の所定位置に形成されていないと判定する請求項8に記載の詰替パウチの検査方法。
【請求項10】
長尺状の素材原反を順次繰り出しながら、内容物を注出するためのノズル部を備えた詰替パウチを製袋していく過程で、前記ノズル部の先端部分を切り取って前記ノズル部に注出口を形成するための切取り線を形成する詰替パウチの製造方法であって、
前記切取り線を形成するに際して、前記切取り線が前記ノズル部の所定位置に形成されているかどうかを判定するためのマーカーを、前記切取り線との相対的な位置関係が一定となるように形成することを特徴とする詰替パウチの製造方法。
【請求項11】
前記切取り線及び前記マーカーを、レーザーマーカーにより同一工程において形成する請求項10に記載の詰替パウチの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−117307(P2006−117307A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−309681(P2004−309681)
【出願日】平成16年10月25日(2004.10.25)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】