説明

認知症・物忘れ検査装置

【課題】音楽による脳の音感領域への快い刺激を利用し、正確で、容易かつ簡便な認知症・物忘れ検査装置を提供する。
【解決手段】音楽と音楽に関連する検査質問が保存された記憶部10aと、音楽を出力する音声出力手段5と、検査質問を表示する表示手段2と、検査質問に対して被験者が回答を入力する入力手段3と、入力された回答から被験者の認知症又は物忘れの症状レベルを判定する検査処理手段1と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音楽を利用して、認知症・物忘れの検査とそのレベルを判断する検査装置に関わる。
【背景技術】
【0002】
従来、認知症の簡易診断方法として広く一般に行なわれているのは「長谷川式簡易知能評価スケール」で評価方法と点数で構成されている。例えば、「今日は何年何月何日、何曜日ですか」と言う質問は、1つの正解を1点とし合計4点とされる質問である。
そして、上述のような質問の正誤の判定を支援するために、特許文献1記載のような認知症診断支援システムがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−282992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、これらの方法は専門家による判断が必要な診断であり、容易に物忘れや認知症を検査することができないという問題があった。
また、これ等の質問項目は、主として左脳(論理、理論、計算、言語、判断力等)の領域の現状を調査しているに過ぎず、右脳(直感、感性、音楽、芸術、閃き、イメージを捉えての創造等)の領域の現状については欠落しているという問題があった。
【0005】
その理由として音楽や絵画などの芸術や感性はどちらかと言えばその方面の才気あふれる特殊な分野で芸術的才能と論理的思考とは別個のものであるという固定観念が大勢を占めていたからに他ならない。
最近の脳科学によれば、脳は普通の人で全体の僅か3%しか使用していないとの報告もあり、人間の脳にはまだまだ未知の分野が多いのが実情である。確かな事実は人以外の動物は殆ど感性のまま生きているといっても過言でなく、人類の遠い祖先も動物と同じく感性のおもむくまま生活していたものと思われる。それが頭脳すなわち知恵の発達に伴い感性が次第に論理下に追いやられ、知識編重主義が次第に幅を効かせてきた。これが認知症や物忘れが生まれる原因の一つになったものと推測される。
【0006】
本発明者は、人間は右脳と左脳のバランスの上に立って物事を深く捉えることで、人格が形成され人間らしさがはぐくまれるという点、また、多くのノーベル賞受賞者がそうであるように感性(右脳)を磨けば優れた理論が構築されるという点、また、音楽はリラクゼーションだけでなく療法としても殊に精神科領域の疾患には有効とされて徐々に広まって来ていながらも、音楽を認知症や物忘れの検査に積極的に利用されてはいなかった点に着目した。
【0007】
本発明は、音楽による脳の音感領域への快い刺激を利用して、正確で、容易かつ簡便な認知症・物忘れの判定とその進行程度を判断する検査装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、上記課題を解決するために本発明は、音楽と該音楽に関連する検査質問が保存された記憶部と、上記音楽を出力する音声出力手段と、上記検査質問を表示する表示手段と、上記検査質問に対して被験者が回答を入力する入力手段と、入力された上記回答から上記被験者の認知症又は物忘れの症状レベルを判定する検査処理手段と、を備えたものである。
【0009】
また、音楽と該音楽に関連する検査質問が保存された記憶部と、上記音楽を出力する音声出力手段と、上記検査質問を表示する表示手段と、上記検査質問に対して被験者が回答を入力する入力手段と、入力された上記回答から上記被験者の認知症又は物忘れの症状レベルを判定する検査処理手段と、上記被験者の過去の判定結果を記録した記録部と、を備え、検査処理手段は、上記記録部からの過去の判定結果と現在の判定結果とを比較し認知症又は物忘れの症状レベルの改善具合を評価して、上記表示手段に評価結果を表示させるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の認知症・物忘れ検査装置によれば、音楽を利用して右脳に働きかけ脳全体を正確に把握して容易かつ迅速に検査を行なうことができる。音楽を利用することで被験者に検査への興味を向上させると共に、検査に対する嫌悪感を軽減させて、スムーズに検査を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の全体斜視図である。
【図2】本発明を説明するブロック図である。
【図3】第1の実施の形態を説明するフローチャート図である。
【図4】フローチャート図である。
【図5】表示手段の表示画面の一例を示す図である。
【図6】表示手段の表示画面の一例を示す図である。
【図7】表示手段の表示画面の一例を示す図である。
【図8】表示手段の表示画面の一例を示す図である。
【図9】表示手段の表示画面の一例を示す図である。
【図10】表示手段の表示画面の一例を示す図である。
【図11】表示手段の表示画面の一例を示す図である。
【図12】表示手段の表示画面の一例を示す図である。
【図13】表示手段の表示画面の一例を示す図である。
【図14】表示手段の表示画面の一例を示す図である。
【図15】表示手段の表示画面の一例を示す図である。
【図16】第2の実施の形態を説明するフローチャート図である。
【図17】表示手段の表示画面の一例を示す図である。
【図18】表示手段の表示画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の認知症・物忘れ検査装置は、音楽を用いて認知症・物忘れを判定・評価等の検査をする装置であって、図1及び図2に示すように、データやプログラムが記憶可能なハードディスク等の記憶保持部10と、記憶保持部10へのデータの読み書きや演算が可能なCPU(中央処理装置)等の演算処理部13と、演算結果やプログラム等のデータを一時的に記憶するRAM(ランダムアクセスメモリ)やROM(リードオンリーメモリ)等の一時記憶部14と、を有するコンピュータ等の検査処理手段1を備えている。
【0013】
記憶保持部10は、検査用の音楽と検査用の音楽に関連する検査質問を保持した記憶部10aを有している。
また、音楽を出力するスピーカ等の音声出力手段5と、検査質問を表示する液晶モニタ又はブラウン管モニタ等の表示手段2と、検査質問に対して被験者が回答を入力するためのタッチパネル等の入力手段3と、を備えている。
検査処理手段1は、入力された回答をもとに演算処理部13にて演算処理して、被験者の認知症又は物忘れの症状レベルを判定するものである。
【0014】
本発明の第1の実施の形態は、記憶部10aに、認知症又は物忘れを判定するための第1検査用の音楽及び第1検査用の音楽に関連する検査質問と、認知症又は物忘れの症状レベルを判定するための第2検査用の音楽及び第2検査用の音楽に関連する検査質問と、を保持している。また、検査質問の回答用選択肢、検査質問の正解も保存されている。
【0015】
記憶部10aは、第1検査用の多数の音楽(歌)が種類(ジャンル)に関連付けされて保持している。第1検査用の音楽は誰もが慣れ親しんだ童謡や小学唱歌等である。
第1検査用の音楽の種類とは、季節の歌、動物の歌、自然の歌、遊びの歌、である。また、5曲を1組として各種類に2組保存されている。つまり各種類は合計10曲ずつ分類され保存されている。
【0016】
例えば、季節の歌とは、「お正月」「うれしいひなまつり」「春の小川」「チューリップ」「さくらさくら」「鯉のぼり」「たなばたさま」「里の秋」「ジングルベル」「雪」等である。動物の歌とは、「池の鯉」「うさぎのダンス」「かたつむり」「おうまの親子」「かもめの水兵さん」「おさるのカゴ屋」「ぞうさん」「七つの子」「からすの赤ちゃん」「歌をわすれたカナリヤ」「虫の声」等である。
自然の歌とは、「花」「赤とんぼ」「雨降りお月さん」「海」「浜辺の歌」「ヤシの実」「我は海の子」「夕焼け小焼け」「荒城の月」「箱根八里」等である。
遊びの歌とは、「あんたがたどこさ」「かわいい魚屋さん」「おもちゃのチャチャチャ」「かごめかごめ」「肩たたき」「シャボン玉」「通りゃんせ」「むすんでひらいて」「背くらべ」「ないしょ話」等である。
【0017】
第1検査用の検査質問は、2〜4の選択問題(質問)であって、「この歌の題名は何でしょうか」「この歌の季節(時間)はいつ頃でしょうか」「この歌に出てこなかった言葉を選んでください」「この歌から何を感じますか」等である。なお、「この歌から何を感じますか」は参考質問であって、正解・不正解はなく回答は正解個数に含まれない。
【0018】
第2検査用の音楽は、多数の音楽が種類に関連付けされて(分類されて)保持されている。第2検査用の音楽は、被験者が青春時代に家庭内や街角等でよく流れていたいわゆる流行歌である。第2検査用の音楽の種類とは、戦前の(流行)歌、昭和20年代の(流行)歌、昭和30年代の(流行)歌、である。5曲を1組として各種類に2組保存されている。つまり各種類は合計10曲ずつ保存されている。
なお、これ等の歌は何れも歌の主人公(人や動物)が明らかで老若男女の区別、季節感、昼夜(時間帯)の区別、何をしようとしているのか等の情景が明瞭で情緒のあるものを選択している。
【0019】
例えば、戦前の歌とは、「湖畔の宿」「赤い灯青い灯」「君恋し」「異国の丘」「別れのブルース」「丘を越えて」「旅の夜風」「国境の町」「支那の夜」「蘇州夜曲」「名月赤城山」等である。
昭和20年代の歌とは、「憧れのハワイ航路」「上海帰りのリル」「お富さん」「東京の花売娘」「青い山脈」「悲しき口笛」「りんごの歌」「長崎の鐘」「湯の町エレジー」「星の流れに」「高原列車は行く」等である。
昭和30年代の歌とは、「ここに幸あり」「別れの一本杉」「王将」「北帰行」「高校三年生」「人生劇場」「いつでも夢を」「アカシアの雨が止むとき」「上を向いて歩こう」「古城」等である。
【0020】
第2検査用の検査質問は、2〜4択の選択問題であって、「題名」「主人公の老若男女」「主人公の状況」「季節」「時間帯」等の歌詞の内容や、「歌を聞いて被験者がどう感じたか」等である。
具体的には、「この歌の題名は何でしょうか」「この歌の主人公は男性ですか女性ですか」「この歌の季節はいつ頃でしょうか」「この歌の時間はいつ頃でしょうか」「主人公は今何をしていますか(何をしようとしていますか又は何処にいますか)」「この歌に出てこなかった言葉を選んでください」「この歌から何を感じますか」等ある。つまり、第2検査用の検査質問は、第1用の検査質問に比較すれば少々難易度の高いものである。
【0021】
これらの第2の検査用の検査質問は正解に点数を関連付けている。
例えば、「この歌の題名は何でしょうか」及び「この歌の主人公は男性ですか女性ですか」は各1点。「この歌の季節はいつ頃でしょうか」及び「この歌の時間はいつ頃でしょうか」は各2点。「主人公は今何をしていますか(何をしようとしていますか又は何処にいますか)」及び「この歌に出てこなかった言葉を選んでください」は各3点。「この歌から何を感じますか」は参考質問であり0点。1曲(歌)の検査質問につき12点の点数を付与している。
【0022】
さらに、記憶部10aは、第1・2検査用の音楽の歌詞と、第1・2検査用の音楽に関連付けられた静止画や動画等の背景画を保持している。背景画は、音楽の内容と関連の深い風景や人物の様子である。例えば、「お正月」の場合は凧揚げをする子供の絵や、猫とコタツの絵等である。1曲に複数の背景画を関連付けて保存している。
【0023】
検査処理手段1は、入力手段3を介して入力された第1検査の回答から、第1検査の合計正解個数を演算して、認知症又は物忘れを判定する。
例えば、第1検査に於て、5曲で検査した場合(正解・不正解のある質問が計15質問)は、正解個数が1個未満(0個)の場合は認知症(又はその恐れが高い)と診断する。2個以上の場合は、物忘れの可能性が高く第2検査を受けるべきと判定する。なお、1個の場合は、第1検査をもう一度受けるべき(再検査)又は専門家の判断を仰ぐべきと判定する。
【0024】
さらに、検査処理手段1は、第2検査に於て、各曲の正解点数の演算と第2検査の合計正解点数の演算とを行なう。合計正解点数から、認知症又は物忘れの症状レベル(正常、軽度、中程度、重度)を判定する。
例えば、第2検査に於て、5曲で検査した場合は、60点で満点であり、24点以上で正常、12〜24点未満で軽度の物忘れ、6〜12点未満で中程度の物忘れ、1点〜6点未満で重度の物忘れ、1点未満(0点)で認知症(の恐れが高い)、と診断する。
【0025】
上述した本発明の第1の実施の形態は、被験者の認識番号の入力等の所定操作が行なわれたあと、図3のステップS1に於て、第1検査用の音楽を用いて検査を行なう。次にステップS2に於て、第1検査質問の正解個数を演算する。正解個数が所定数以上であれば、ステップS3に進む。所定数未満であればステップS6に進む。また、正解個数が所定個数未満の場合は、第1検査を再び受けるようにステップS1に戻るようにしても良い。
具体的には、第1検査は5曲で行なう。5曲で検査した合計の正解個数が2個以上あれば、ステップS3に進む。1個の場合は、第1検査を再検査としステップS1に戻る。1個未満(0個)の場合は、ステップS6に進む。また、第1検査を再検査させる場合、表示手段2が、再検査となった音楽と異なる種類の音楽を選択させるように表示させる。
【0026】
そして、ステップS3に於て、第2検査用の音楽を用いて検査を行なう。次のステップS4に於て、第2検査質問の正解点数を演算する。正解点数が所定点数以上であれば、ステップS5に進む。所定数未満であればステップS6に進む。
具体的には、第2検査は5曲で60点を満点として行なう。1点以上でステップS5に進む。1点未満(0点)でステップS6に進む。
【0027】
ステップS5に進んだ場合は、物忘れ(記憶障害)の症状レベルの判定を決定する。また、ステップS6に進んだ場合は、認知症(の恐れが高い)と診断する。
具体的には、ステップS5では、24点以上で正常、12〜24点未満で軽度の物忘れ、6〜12点未満で中程度の物忘れ、1点〜6点未満で重度の物忘れ、という判定を決定する。
判定決定後、ステップS7に進み、表示手段2に判定結果(検査結果)を表示して、検査を終了する。
【0028】
ここで、第1検査についてさらに説明する。検査が開始されると、図4のステップS10に於て、表示手段2は検査に使用する歌の種類を被験者に選択させる画面を表示する。
具体的には図5に示すような第1検査に使用する音楽(童謡)の種類を被験者に問う質問と、音楽の種類と、音楽の種類に対応する選択用のボタン50を表示する。また、音声出力手段5から質問を音声にて出力する。なお、図5に於て、「何でもよい」とは、第1検査用の音楽の4種類を混合して5曲1組としたものである。つまり、第1検査は5種類の選択肢が表示される。各種類の「その1」と「その2」の2組の内どちらか一方を選択するように表示する。
なお、タッチパネルから成る入力手段3は、表示された内容に対応するように、表示手段2の表示画面の近傍に設けられており、被験者が表示された表示画面の操作ボタン50に指やタッチペン等を接近させることで入力手段3に接触し質問に対する応答が入力される。
【0029】
検査処理手段1は、被験者が選択した種類に対応する音楽及び題名を記憶部10aから読み出す。表示手段2は、図6に示すように、音楽(歌)の題名、スタート用のボタン50、を表示する。音声出力手段5は、題名を音声出力する。
「スタート」が入力されると、題名が表示されたまま、音声出力手段5から歌の前奏が出力される。
【0030】
前奏が終了すると図4のステップS11に進む。音声出力手段5から歌が出力される。また、図7に示すように、表示手段2は、歌の歌詞と、歌に関連する背景画を表示する。背景画を歌(歌詞)に合わせて切り替える。例えば、「夕焼け小焼け」の場合は、夕焼けの空、山のお寺、手をつないだ子供と空を飛ぶカラス、等の絵に順次切り替える。
【0031】
歌の1番が終了すると、図4のステップS12に進み、表示手段2は、図8に示すように検査質問及び回答の選択肢を分割画面にして表示する。また、「文字拡大」に対応するボタン50の入力が確認されると、その検査質問画面のみが1面全体に表示する。回答が入力されれば、再び分割画面となる。検査質問表示中に、音声出力手段5は、検査質問に対応する歌のメロディ(伴奏)を繰り返し出力する。また、検査質問を音声出力する。
【0032】
1曲目の検査質問の回答入力が全てされると、図4に示すステップS13に進む。検査処理手段1によって、正解個数が演算される。表示手段2は、図9に示すように、1曲の正解個数を表示する。
【0033】
図4のステップS14に於て、第1検査は5曲で検査を行なう。検査処理手段1は5曲検査したか確認し、残りがあれば、「次へ」に対応するボタン50の入力に伴って、図10に示すように表示手段2に次の音楽の題名を表示させる。5曲の検査が終わるまで、ステップS11からステップS13を繰り返す。
【0034】
5曲の検査が終了すると、ステップS15に進む。検査処理手段は、合計正解個数を演算する。表示手段2は合計正解個数を表示する。第1検査は終了する。
【0035】
次に、第2検査は、第1検査と同様に5曲を用いて、図4のフローチャート図のように進めるが、音楽は第2検査用のもの(流行歌)である。
【0036】
図11に示すように、表示手段2に第2検査に使用する歌の種類(ジャンル)を被験者に選択させる画面を表示する。なお、「何でもよい」とは、第2検査用の音楽の3種類を混合して5曲1組としたものである。つまり、第2検査は4種類の選択肢が表示される。
【0037】
そして、図12に示すように、音楽(歌)の題名、スタート用のボタン50、を表示する。音声出力手段5は、題名を音声出力する。スタートが入力されると、題名が表示されたまま、音声出力手段5から歌の前奏が出力される。
【0038】
前奏が終了すると、図13に示すように、表示手段は、歌の歌詞と、歌に関連する背景画を表示する。背景画を、歌(歌詞)に合わせて切り替える。音声出力手段5から歌が出力される。
【0039】
歌が終了すると、図14に示すように検査質問及び回答の選択肢を分割画面にして表示する。音声出力手段5は、検査質問表示中に、検査質問に対応する歌の曲(メロディ、伴奏)を出力する。また、検査質問を音声出力する。
回答が入力された後、検査処理手段1は検査の点数を演算する。図15に示すように表示手段2は、正解点数を表示する。その後、第2検査を終了する。
【0040】
次に、本発明の第2の実施の形態(すなわち、認知症や物忘れの改善に有効な検査装置ともいえる形態)について説明する。
第1の実施の形態と同様に、回答を演算処理して被験者の認知症又は物忘れの症状レベルを判定する検査処理手段1と、記憶部10aを有する記憶保持部10と、表示手段2と、入力手段3と、音声出力手段5と、を備えている。
【0041】
そして、記憶保持部10は、被験者の過去の判定結果を保存した記録部10bを有している。過去の判定結果は、検査前に入力されている被験者の識別記号や電子カルテ等に関連付けて保存されている。
【0042】
検査処理手段1は、記録部10bからの過去の判定結果と現在の判定結果と比較して認知症又は物忘れの症状レベルの改善具合を評価するものである。表示手段2は、評価結果を表示する。
【0043】
また、記憶部10aには、検査に使用する音楽として、懐メロ(昔の流行歌)や演歌、ムード歌謡、民謡、映画音楽、軍歌、ジャズ、コマーシャルソング、等の音楽が25曲ずつ保存されている。
【0044】
また、各曲の題名、歌詞、背景画、さらに、各音楽の前奏曲のみ、歌詞が差し替えられた替え歌、リズムや速度をジャズ風やラテン風等に変化させ編曲(アレンジ)したもの、が保存されている。
【0045】
第2の実施の形態は、被験者の識別記号等の入力等の所定操作が行なわれ検査がスタートすると、図16のステップS51に於て、歌の種類を選択する画面が、図17に示すように表示される。そして、種類の選択入力が行なわれると、ステップS52に進んで、図18に示すように、表示手段2は、検査する内容のコースの選択を問う画面を表示する。
コースは、標準コース、背景画コース、前奏曲コース、替歌コース、編曲コース、の5コースである。記憶部10aにはコース毎に異なる検査質問が保存されている。
【0046】
標準コースとは、上述の第2検査のように、音声出手段5から前奏にはじまり歌声が出力されると共に表示手段2に歌詞や背景が表示されるものである。1曲ごとの正解点数が演算され、その後、合計(5曲)の正解点数が表示されるコースである。
【0047】
背景画コースとは、上述の第2検査に用いられた背景画のみが、10枚5秒間隔で表示手段2に表示され、その背景画に関連する歌の題名や歌手名、映画のタイトルや俳優名等を質問するコースである。この検査質問のうち何れか又は所定数の正解で正解の歌が出力される。回答はタッチペンによる記入式とするのが望ましい。
【0048】
前奏曲コースとは、前奏曲のみが出力されている間に歌の題名を質問するコースである。正解した場合は、回答に費やした秒数に応じて歌の1番〜3番が流れる。不正解の場合は、正解が表示手段2に表示される。回答はタッチペンによる記入式とするのが望ましい。
【0049】
替歌コースとは、前奏曲がながれた後、本来の歌詞にない言葉(歌声)を出力し、1番が終わると伴奏曲のみが出力して、本来の歌の題名を質問するコースである。正解の場合は、上述の第2検査のような検査質問が表示される。回答が入力された後、演算によって求められた正解点数が表示される。
【0050】
編曲コースとは、歌の伴奏曲(メロディ)がジャズ風やラテン風等に編曲された歌を出力して、本来の歌の題名を質問するコースである。
【0051】
図16のステップS56に於て、選択されたコースの検査質問を行なう。回答が入力されると、ステップS57に於て、検査処理手段1によって検査質問の難易度や正解個数又は正解点数から、認知症又は物忘れの症状レベルを判定する。そして、ステップS58に於て、表示手段2に判定結果を表示する。また、記録部10bに被験者の識別記号や日付、電子カルテ等と関連付けて判定結果を保存する。
【0052】
次のステップS56に於て、検査処理手段1は、記録部10bに今、判定された被験者の過去の判定結果があるか検索する。過去(前回)の判定結果がなければ、現在の判定結果を表示した後、検査を終了する。過去の判定結果があれば、ステップS57に進んで、過去の判定結果と現在の判定結果とを比較して認知症又は物忘れの症状レベルの改善具合を評価する。即ち、現在の症状が、回復傾向にあるか、悪化傾向にあるかの進行具合(傾向)を検査する。二重丸等の記号や数値で容易かつ簡潔に表示する。
【0053】
その後、ステップS58に進んで、過去の判定結果と現在の判定結果を比較した表、症状の改善具合をグラフにしたもの、数値化したもの、歌の種類毎やコース毎に評価したもの、を評価表として表示する。その後、検査を終了する。
【0054】
なお、「長谷川式簡易知能評価スケール」及び「総合的診断」(問診、視診、心理・知能・機能テスト、画像検査、全身の健康診断)を行なった結果と、本発明の装置による判定結果とは、20名中19名が一致し、簡易かつ迅速ながらも本発明の装置が正確であることが実証された。
さらに、1年間かけて、10名の被験者を何度も反復検査したところ、次第に頭脳が活性化し、認知症(痴呆)や物忘れの状態が除々に緩和・改善されることがわかった。
以前から「歌は世につれ、世は歌につれ」との言い慣らされた言葉があり、歌は世相を反映すると共に我々の人生には心の歌があり、歌と二人三脚で人生を歩んできたといっても過言ではない。即ち、感性を最も刺激するものは音楽(歌)であり、音楽より優るものは恐らくないであろう。感性はいつしか神経回路(脳梁)を伝わって記憶の扉をこじ開ける。そして、音楽(特に、懐メロやムード歌謡、コマーシャルソング)は、被験者の歩んできた人生と重なり合い当時の体験、風俗、食べ物、町の風景、携わって来た仕事、仲間、はてはその歌の歌手名や舞台衣装迄もが忘却の彼方から蘇らせ、脳が除々に活性化したためと考えられる。また、音楽は、楽しく愉快なものであるため、反復することが苦痛とはならず、右脳をリラックス状態にした音楽による感性の反復トレーニングとなり、かなり進んだ認知症や物忘れであっても、次第に左脳への回路が繋がり揺り動かし共鳴することによって脳梁が開きネットワークが形成して、歌と当時の感性や情景等が結び付き当時の記憶が走馬灯のように蘇り、人生への意欲を取り戻したからともいえる。
【0055】
なお、本発明は、設計変更可能であって、例えば、背景画は写真や動画としても良い。第1の実施の形態に於て記憶部10aに記憶される音楽は10曲以上でもよい。記憶保持部10は、DVD、CD、USBメモリ等の外部記憶媒体を保持したドライブ(読み書き)装置であっても良い。また、入力手段3をマウスやキーボード、マイク等としても良い。また、検査用の音楽を、被験者の好みの種類(演歌、懐メロ、クラシック、ジャズ等)から実際に視聴して選択してもらった好きな歌を、複数集めて、オーダーメイド型の検査用の音楽(歌集)として記憶部10aに保存させても良い。また、流行歌を年代別に限らず、歌詞や歌手等で分類しても良い。
【0056】
また、検査処理手段1をサーバーとし、インターネットやLAN(ローカルエリアネットワーク)等の情報通信網を介して、表示手段2、入力手段3、音声出力手段5等に有線又は無線接続して検査を行なうも自由である。なお、本発明に於て、被験者が操作入力等を行なうように説明したが、被験者が検査質問に対しての回答を口頭や筆記で行ない、身内や介護士等の医療従事者が代行して入力手段3に入力等を行なうも自由である。また、判定及び評価として表示された内容は、図示省略するが、プリンタ等の外部出力器によって正解個(点)数や評価(表)等を印刷可能に構成してもよい。
また、正解とは関係しない参考質問の回答内容を記録部10bに記録し、医師等が判定結果と共に検査時の被験者の状態を知る資料として、診断や治療への参考にし得る。
【0057】
以上のように、本発明は、音楽と音楽に関連する検査質問が保存された記憶部10aと、音楽を出力する音声出力手段5と、検査質問を表示する表示手段2と、検査質問に対して被験者が回答を入力する入力手段3と、入力された回答から被験者の認知症又は物忘れの症状レベルを判定する検査処理手段1と、を備えたので、音楽を利用して右脳に働きかけ脳全体を正確に把握して検査を行なうことができる。少ない医療従事者で多くの人を容易かつ迅速に認知症か否かを見極めることができる。音楽によって被験者の興味を向上させると共に、異常行動や異常言動を抑え、さらに、社会的不安を解消させつつ検査を被験者にスムーズに受けさせることができる。音楽を用いた楽しく愉快な検査となって、検査に対する嫌悪感を軽減させ、被験者に苦痛を与えず繰り返し検査を行なうことができる。検査の音楽により繰り返し刺激された感性はいつしか神経回路(脳梁)を伝わって記憶の扉をこじ開ける。そして、音楽と共に当時の体験、風俗、食べ物、町の風景、携わって来た仕事、仲間、はてはその歌の歌手名や舞台衣装迄もが忘却の彼方から蘇らせ、脳を除々に活性化させる。結果として感性が磨かれ、脳全体を蘇らせて認知症・物忘れを改善することができる。
【0058】
また、音楽と音楽に関連する検査質問が保存された記憶部10aと、音楽を出力する音声出力手段5と、検査質問を表示する表示手段2と、検査質問に対して被験者が回答を入力する入力手段3と、入力された回答から被験者の認知症又は物忘れの症状レベルを判定する検査処理手段1と、被験者の過去の判定結果を記録した記録部10bと、を備え、検査処理手段1は、記録部10bからの過去の判定結果と現在の判定結果とを比較し認知症又は物忘れの症状レベルの改善具合を評価して、表示手段3に評価結果を表示させるので、音楽を利用して右脳に働きかけ脳全体を正確に把握して検査を行なうことができる。少ない医療従事者で多くの人を容易かつ迅速に認知症か否かを見極めることができる。音楽によって被験者の興味を向上させると共に、異常行動や異常言動を抑え、さらに、社会的不安を解消させつつ検査を被験者にスムーズに受けさせることができる。音楽を用いた楽しく愉快な検査となって、検査に対する嫌悪感を軽減させ、被験者に苦痛を与えず繰り返し検査を行なうことができる。また、評価結果の表示により自発的に検査を受けようとする向上心を被験者におこさせることができる。検査用の音楽により繰り返し刺激された感性はいつしか神経回路(脳梁)を伝わって記憶の扉をこじ開ける。そして、音楽と共に当時の体験、風俗、食べ物、町の風景、携わって来た仕事、仲間、はてはその歌の歌手名や舞台衣装迄もが忘却の彼方から蘇らせ、脳を除々に活性化させる。結果として感性が磨かれ、脳全体を蘇らせて認知症・物忘れを改善することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 検査処理手段
2 表示手段
3 入力手段
5 音声出力手段
10a 記憶部
10b 記録部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音楽と該音楽に関連する検査質問が保存された記憶部(10a)と、上記音楽を出力する音声出力手段(5)と、上記検査質問を表示する表示手段(2)と、上記検査質問に対して被験者が回答を入力する入力手段(3)と、入力された上記回答から上記被験者の認知症又は物忘れの症状レベルを判定する検査処理手段(1)と、を備えたことを特徴とする認知症・物忘れ検査装置。
【請求項2】
音楽と該音楽に関連する検査質問が保存された記憶部(10a)と、上記音楽を出力する音声出力手段(5)と、上記検査質問を表示する表示手段(2)と、上記検査質問に対して被験者が回答を入力する入力手段(3)と、入力された上記回答から上記被験者の認知症又は物忘れの症状レベルを判定する検査処理手段(1)と、上記被験者の過去の判定結果を記録した記録部(10b)と、を備え、
検査処理手段(1)は、上記記録部(10b)からの過去の判定結果と現在の判定結果とを比較し認知症又は物忘れの症状レベルの改善具合を評価して、上記表示手段(3)に評価結果を表示させることを特徴とする認知症・物忘れ検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−178920(P2010−178920A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−25234(P2009−25234)
【出願日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(506426100)アンスラックス スポアーズ キラー コーポレーション リミテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】ANTHRAX SPORES KILLER CO.,LIMITED
【住所又は居所原語表記】HONG KONG,KOWLOON,MONGKOK,RECLAMATION STREET 576,SUN FAI COMMERCIAL CENTRE,UNIT A7/F
【Fターム(参考)】