認知症治療用のピペリジンおよび関連の化合物
式Iの化合物:γセクレターゼの作用を調節し、このためアルツハイマー病および関連の病態の治療における使用を発見する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体の治療上の処置における使用のための化合物に関する。特に、アルツハイマー病などの脳におけるβ−アミロイドペプチドの沈着を伴う疾患を治療するために有用、またはそのような疾患に関連した認知症の発症を予防もしくは遅らせるために有用なカルボキシ官能性1,2−二置換ピペリジンおよび関連の化合物を提供する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病(AD)は、認知症の最も一般的な形態である。この診断については、米国精神医学会(American Psychiatric Association)によって発行された精神障害の診断と統計の手引き(第4編)(the Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders、4th ed.)において記載されている(DSM−IV)。本疾患は、記憶および全般的な認知機能の進行性の喪失という臨床的特徴、ならびに患者の皮質領域および連合脳領域における細胞外タンパク様斑の沈着という病理学的特徴を有する神経変性障害である。これらの斑は、主にβ−アミロイドペプチド(Aβ)の繊維性凝集を含む。Aβは、酵素のβ−セクレターゼおよびγ−セクレターゼの関与する別々の細胞内タンパク質分解イベントを通して、アミロイド前駆体タンパク質(APP)から形成される。γ−セクレターゼによって媒介されたタンパク分解部位の変異性により、異なる鎖長のAβを生じさせる(例、Aβ(1−38)、Aβ(1−40)およびAβ(1−42))。また、Aβ(4−42)などのN末端切断が、おそらくβ−セクレターゼによって媒介されたタンパク分解部位の変異性の結果として脳で発見される。便宜上、本明細書では、「Aβ(1−40)」および「Aβ(1−42)」などの表現は、そのようなN末端切断型変異体(N−terminal truncated variant)を含む。細胞外液(extracellular medium)への分泌後、Aβは、最初は可溶性の凝集を形成し、この凝集は、ADにおける重要な神経毒性因子と広く信じられており(Gongら、PNAS、100(2003)、10417−22を参照のこと。)、最終的に、ADの病理学的特徴である不溶性の沈着および高密度な老人斑(neuritic plaque)となる。
【0003】
脳におけるAβ沈着を伴う他の痴呆性の状態は、脳アミロイド血管症、遺伝性アミロイド性脳出血(オランダ型)(hereditary cerebral hemorrhage with amyloidosis、Dutch−Type;HCHWA−D)、多発脳梗塞性認知症、ボクサー認知症およびダウン症候群を含む。
【0004】
斑形成過程における様々な介入が、ADに対する治療上の処置として提案されてきた(例えば、HardyおよびSelkoe、Science、297(2002)、353−6を参照のこと。)。提案されてきたそのような治療法は、例えば、β−またはγ−セクレターゼの阻害によってAβの産生を遮断または弱めるというものである。また、グリコゲン生成酵素キナーゼ3(GSK−3)の阻害の特にGSK−3αの阻害により、Aβの産生を遮断できることが報告されている(Phielら、Nature、423(2003)、435−9を参照のこと。)。
【0005】
別の提案された治療法は、Aβの凝集を遮断する化合物を投与し、Aβに選択的に結合する抗体を投与することを含む。
【0006】
別の提案された治療は、Aβ(1−42)の産生を選択的に弱めるためにγ−セクレターゼの作用を調節するということである。これは、Aβの短鎖のアイソフォームの優先的分泌を生じさせるが、自己凝集および斑形成の傾向を減少させ、このため、より容易に脳から除去され、および/またはより神経毒性が少ないと信じられている。この効果を示す化合物は、特定の非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)およびこれらの類似体を含む(WO01/78721およびUS2002/0128319およびWeggenら、Nature、414(2001)212−16;Moriharaら、J.Neurochem.、83(2002)、1009−12;ならびにTakahashiら、J.Biol.Chem.、278(2003)、18644−70を参照のこと。)。また、PPARαおよび/またはPPARδの活性を調節する化合物は、Aβ(1−42)を低下させる効果を有することが報告されている(WO02/100836)。一酸化窒素を放出することができるNSAID誘導体は、抗神経炎症効果の改善を示し、および/または動物モデルにおける大脳内のAβ沈着を減少することが報告されている(WO02/092072;Jantzenら、J.Neuroscience、22(2002)、226−54)。US2002/0015941は、容量性カルシウム流入活性を増強する薬剤がAβ(1−42)を低下させることができることを教えている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現在、特定のカルボキシ官能性1,2−二置換ピペリジンおよび関連の化合物がAβ(1−42)の産生を選択的に阻害する所望の特性を有することが発見されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩もしくは水和物を提供する
【0009】
【化3】
[式中、pは、0または1であり;
qは、0、1、2または3であり;
Vは、残る原子価がH、R2もしくはX−Z、またはそのいずれかの組合せに結合することを通して満たされる、結合または炭素原子を表し;
Wは、Wが窒素原子を表す場合、Vは炭素原子を表し、部分X−ZはWに結合するという条件で、残る原子価がH、R2もしくはX−Z、またはそのいずれかの組合せに結合することを通して満たされる、窒素原子または炭素原子を表し;
Xは、WがNを表す場合、Xは結合を表さないという条件で、結合またはC(R1)2またはCH2C(R1)2を表し;
Yは、結合またはCH2またはCH2CH2を表し;
Zは、CO2Hまたはテトラゾール環を表し;
各R1は、独立にHまたは6個までの炭素原子の非芳香族炭化水素基を表し;または2つのR1基は、C3−6脂環式基を完成させ;
R2は、6個までの炭素原子の非芳香族炭化水素基を表し;
R3およびR4は、それぞれHを表すか、またはVおよびWがそれぞれ炭素原子を表す場合、R3およびR4は、一緒になってCH2CH2架橋を表し;
各R5は、独立にハロゲン、0−3つのフッ素置換基を担持するC1−6アルキル、0−3つのフッ素置換基を担持するC1−6アルコキシ、またはC2−6アルケニルを表し;
R6は、Het−Aを表し(Aは、結合、CH2または1,4−フェニレンを表し、Hetは、ハロゲン、C1−4アルキル、CF3、C1−4アルコキシおよびC1−4アルコキシカルボニルから選択される3つまでの置換基を場合によって担持するか、またはそれ自体がハロゲン、C1−4アルキル、C1−4アルコキシもしくはC1−4アルコキシカルボニルで場合によって置換されたフェニル置換基を場合によって担持する10個までの環原子の複素環系を表す。);
R7は、CF3置換基を場合によって担持する10個までの炭素原子の炭化水素基を表す。]。
【0010】
式Iにおいて変化が複数回生じる場合、あらゆる特定の発生時に前記変化によって得られたアイデンティティは、あらゆる別の発生時に得られたアイデンティティとは無関係である。
【0011】
本明細書では、「炭化水素基」という表現は、単に炭素および水素原子から成る基を指す。特に明記しないかぎり、そのような基は、単独または示された炭素原子の最大数と一致したいずれかの組合せで、直鎖、分枝または環状構造を含む可能性があり、これらは芳香族を含む飽和または不飽和である可能性がある。
【0012】
本明細書では、「C1−Xアルキル」(Xは、1より大きい整数である。)という表現は、構成炭素原子数が1からxの範囲以内である、直鎖および分枝アルカリ基を指す。特定のアルキル基は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルおよびt−ブチルである。「C2−6アルケニル」、「ヒドロキシC1−6アルキル」「ヘテロアリールC1−6アルキル」「C2−6アルケニル」および「C1−6アルコキシ」などの派生の表現は、類似した様式で解釈されるものとする。
【0013】
「C3−6脂環式」という表現は、3から6個の環炭素原子を含む環状非芳香族炭酸水素基を指す。例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンテニル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルを含む。
【0014】
「複素環式」という用語は、少なくとも1個の環原子がN、OおよびSから選択される一環もしくは二環性系を指す。特に明記しないかぎり、本用語は、芳香族系を含む飽和および不飽和系の両方を含む。複素環基は、特に明記しないかぎり、環炭素または環窒素を通して結合される可能性がある。
【0015】
本明細書では、「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を含み、このうち、特に明記しないかぎり、フッ素および塩素が好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
薬物における使用のために、式Iの化合物は、薬学的に許容される塩の形態であることができる。しかし、別の塩は、式Iの化合物または薬学的に許容されるそれらの塩の調製に有用である可能性がある。本発明の化合物の適した薬学的に許容される塩は、例えば、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酢酸、安息香酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、炭酸またはリン酸などの薬学的に許容される酸の溶液と本発明による化合物の溶液を混合させることによって形成させることができる。代わりに、薬学的に許容される塩を、適切な塩基とカルボン酸基の中和によって形成させることができる。したがって、形成される薬学的に許容される塩の例は、ナトリウムまたはカリウム塩などのアルカリ金属塩;アンモニウム塩;カルシウムまたはマグネシウム塩類などのアルカリ土類金属塩;ならびにアミン塩(ピリジニウム塩を含む。)および四級アンモニウム塩などの適切な有機塩基で形成された塩を含む。
【0017】
光学的および幾何学的の両方で、式Iによって含まれるすべての異性体の形態が、単独で、またはあらゆる比率の混合物として、本発明の範囲内であることが理解されよう。したがって、次式の部分が、
【0018】
【化4】
V−Wによって完成された環に関してシスまたはトランス配置である可能性がある。さらに、シスまたはトランス配置の特定の化合物が2つの鏡像異性体の形態を有し、この両方とも、単一のホモキラル化合物、またはあらゆる比率のラセミ混合物であるかにかかわらず、本発明の範囲内である。あらゆる誤解を避けるために、(A)および(B)などの構造式は、
【0019】
【化5】
本明細書では、特に明記されていないかぎり、明白にアスタリスクでマークされた炭素原子の相対配置であるが、これらの絶対配置ではないと解釈しなければならない。
【0020】
式Iにおいて、Wが窒素原子を表す場合、Vは結合でなく、部分X−ZはWに結合しなければならないという条件で、Vは、結合または炭素原子を表し、Wは、窒素原子または炭素原子を表す。したがって、式Iは、VおよびWのアイデンティティによって、ピロリジン、ピペリジンおよびピペラジン誘導体を含む。好ましい実施形態において、Vは、炭素原子を表し、このため、ピペリジンまたはピペラジン環を完成する。最も好ましくは、VおよびWは、共に炭素原子を表し、このため、ピペリジン環を完成する。VおよびWの一方または両方が炭素原子を表す場合、前記炭素原子の残る原子価は、H、R2もしくはX−Z、またはそのあらゆる組合せへの結合を通して満たされる。
【0021】
部分X−Zは、VおよびWによって表される環位置を含むあらゆる利用可能な環位置で結合することができるが、Wが窒素を表すときは、X−ZはWに結合しなければならない。好ましくは、X−Zは、部分CHR6R7に結合している窒素原子に隣接したいずれかの位置にも結合していない。したがって、好ましいピペリジン環の場合に、X−Zは、3、4または5位、好ましくは3または4位、最も好ましくは4位に典型的に結合している。誤解を避けるために、ピペリジン環の窒素原子は、1位と考えられ、YおよびR4に結合した炭素原子は、2位と考えられる。
【0022】
Zは、CO2Hまたはテトラゾール環を表し、特に、Zは、CO2Hまたは1,2,3,4−テトラゾール−5−イルを表すが、好ましくはCO2Hを表す。
【0023】
基Xは、各R1が独立にHもしくは6個までの炭素原子の非芳香族炭化水素基を表すか;または2つのR1基がC3−6脂環式基(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンテニルまたはシクロペンチルなど)を完成させる、結合、C(R1)2またはCH2C(R1)2を表す。好ましくは、1つのR1基がHであり、別のものがHまたはC1−6アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピルもしくはブチルなど)である。Xに関する特定のアイデンティティは、Wが窒素原子を表す場合、Xは結合であることはできないという条件で、結合、CH2、CH(CH3)、CH2CH2、シクロペンタン−1,1−ジイル、およびシクロペント−3−エン−1,1−ジイルを含む。好ましくは、Xは、結合またはCH2を表し、最も好ましくは、XはCH2を表す。
【0024】
Yは、結合、CH2またはCH2CH2、好ましくは結合またはCH2、および最も好ましくは結合を表す。
【0025】
基R2は(存在すると)、VまたはWで表された炭素原子を含み、部分X−Zが結合している炭素原子を含む、環上のあらゆる利用可能な位置で結合することができる。1つの特定の実施形態において、pは0であり、R2は存在しない。別の特定の実施形態において、pは1であり、VおよびWはピペリジン環を完成し、R2および部分X−Zは、その4位に共に結合している。別の特定の実施形態において、pは1であり、VおよびWはピペリジン環を完成し、R2は3位に結合しており、部分X−Zは4位に結合している。別の特定の実施形態において、pは1であり、R3はHであり、VおよびWはピペリジン環を完成し、R2は6位に結合しており、部分X−Zは4位に結合している。R2の典型的なアイデンティティは、メチル、エチルまたはn−プロピルなどのC1−6アルキル、およびアリルなどのC2−6アルケニルを含む。
【0026】
R3およびR4がそれぞれHを表すか、またはVおよびWがそれぞれ炭素原子を表す場合、R3およびR4は、一緒になって−CH2CH2−を表し、したがって架橋された二環式構造を完成する。R3およびR4が一緒になって−CH2CH2−を表す場合、pは好ましくは0であり、Yは好ましくは結合である。特定の実施形態において、R3およびR4は、共にHを表す。
【0027】
式Iにおいて、qは、好ましくは1または2、最も好ましくは1である。各R5は、独立にハロゲン(特にF)、0−3つのフッ素置換基を担持するC1−6アルキル、0−3つのフッ素置換基を担持するC1−6アルコキシ、またはC2−6アルケニルを表す。1つのR5が存在する場合、非常に適切に(しかし、必ずしも必要でなく)4位に結合される。(R5)qに対する典型的なアイデンティティは、2−CF3、3−CF3,4−CF3、2,4−ジ(CF3)、2−F−4−CF3、4−OCF3、4−アリール、4−n−プロピル、4−イソプロピルおよび4−tert−ブチルを含む。一実施形態において、(R5)qは、4−CF3または4−n−プロピル、特に4−CF3を表す。
【0028】
R6は、Aが結合、CH2または1,4−フェニレンを表し、Hetが前記の定義のように場合によって置換された10個までの環原子の複素環系を表す、Het−Aを表す。典型的に、Hetは、第2の5または6員環に場合によって融合する5または6員複素環を表す。前記の第2の5または6員環は、炭素環または複素環である可能性があり、Hetが炭素環に融合した複素環を含む基を表す場合、残りの分子への結合は、これらの環のいずれかを介する可能性がある。Hetによって表される基により含まれるいずれの基も、芳香族を含む飽和または不飽和である可能性がある。Hetに関する定義の範囲内の複素環系の例は、ピリジン、キノリン、イソキノリン、フラン、ベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ピラゾール、トリアゾール、テトラヒドロピラン、テトラヒドロチオピラン、ピペリジンおよびテトラヒドロフランを含む。基Hetは、非置換であるか、または前記の定義のように置換されている可能性がある。好ましい置換基は、(存在する場合)CF3、C1−4アルキル(特にメチル)、C1−4アルコキシカルボニル(t−ブトキシカルボニルなど)フェニルおよびトリフルオロメチルフェニルを含む。
【0029】
Aが1,4−フェニレンを表す場合、Hetは、典型的にフェニルまたは置換されたフェニル置換基を担持していない単環系を表す。
【0030】
R6によって表される基の例は、3−ピリジル、6−トリフルオロメチル−3−ピリジル、2−フリル、5−(2−トリフルオロメチルフェニル)−2−フリル、2−チエニル、3−チエニル、ベンゾチオフェン−3−イル、3−キノリニル、ベンゾフラン−2−イル、6−キノリニル、1−フェニル−5−メチルピラゾール−4−イル、フラン−3−イル、4−(ピリジン−2−イル)フェニル、4−(ピラゾール−1−イル)フェニル、4−(1,2,4−トリアゾール−1−イル)フェニル、4−(チオフェン−2−イル)フェニル、テトラヒドロピラン−4−イル、(テトラヒドロチオピラン−4−イル)メチル、1−(t−ブトキシカルボニル)ピペリジン−4−イル、(テトラヒドロピラン−4−イル)メチル、4−(ピリジン−4−イル)フェニル、4−(ピリジン−3−イル)フェニルおよびテトラヒドロフラン−2−イルを含む。
【0031】
R7は、CF3置換基を場合によって担持する10個までの炭素原子の炭化水素基を表す。前記炭化水素基は、完全に飽和され得るか、あるいは1つまたは複数の二重もしくは三重結合またはその組合せを含むことができ、そしてフェニル環を含むことができる。典型的に、前記炭化水素基は、8個までの炭素原子(例えば、6個までの炭素原子)を含む。典型的な炭化水素基は、10個までの炭素原子(例えば、8個までの炭素原子)および特に合計で6個までの炭素原子のアルキル(特に分枝のアルキル)、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、フェニルおよびフェニルアルキルを含む。一実施形態において、R7は、非置換の単価水素基を表す。R7によって表される非置換の炭化水素基の例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、3−メチルブチル、2−エチルブチル、4−メチルペンチル、3,3−ジメチルブチル、3−メチルブテン−1−イル、3−メチルブト−3−エン−1−イニル、4−メチルペント−1−イニル、3,3−ジメチルブト−1−イニル、シクロヘキシル、フェニル、シクロプロピルメチル、シクロヘキシルエチニル、ベンジルおよび2−フェニルエチルを含む。
【0032】
代わりの実施形態において、R7はCF3置換基を担持する。R7によって表された置換の炭化水素基の例は、2,2,2−トリフルオロエチル、3,3,3−トリフルオロプロピル、4,4,4−トリフルオロブチル、1−メチル−3,3,3−トリフルオロプロピルおよび4−トリフルオロメチルフェニルを含む。
【0033】
本発明による化合物の第1のサブセットは、式IIの化合物ならびに薬学的に許容されるその塩および水和物から成る
【0034】
【化6】
(式中、p、R2、R5、R6およびR7は、同一の定義および前述のような好ましいアイデンティティを有する。)。
【0035】
本サブセットの特定の実施形態において、pは0であり、Yは結合である。
【0036】
本発明による化合物の第2のサブセットは、式IIIの化合物ならびに薬学的に許容されるその塩および水和物から成る
【0037】
【化7】
(式中、p、R2、Y、R5、R6およびR7は、同一の定義および前述のような好ましいアイデンティティを有する。)。
【0038】
本サブセットの範囲内で、Yは好ましくは結合であり、pは好ましくは0である。
【0039】
本発明による化合物の第3のサブセットは、式IVの化合物ならびに薬学的に許容されるその塩および水和物から成る
【0040】
【化8】
(式中、Raは、H、ハロゲンまたはCF3を表し;
R6およびR7は、同一の定義および前述のような好ましいアイデンティティを有する。)。
【0041】
ピペリジン環の2位に結合した置換フェニル基および4位に結合したCH2CO2H基は、ピペリジン環に関して有利に(しかし、必ずしも必要でなく)シス配列である。
【0042】
特定の実施形態において、RaはHを表す。
【0043】
本発明による特定の化合物は、本明細書に添付された実施例部分に記載されている。
【0044】
式Iの化合物を(式中、Zは、CO2Hである。)、典型的に対応するエステル(1)の加水分解によって得る(例えば、THF水溶液中のLiOHで還流することによって)
【0045】
【化9】
(Rは、メチルまたはエチルなどのC1−6アルキルを表し、p、q、V、W、X、Y、R2、R3、R4、R5、R6およびR7は、前述と同一の意味を有する。)。
【0046】
対応する化合物を(Zは、1H−テトラゾール−5−イルを表す。)、対応するニトリルにエステル(1)を変換し、引き続いて酸化トリブチルスズの存在下でトルエンを還流しながらアジドトリメチルシランで処理することによって得る。ニトリルへの変換を、トルエン中の塩化アンモニウム懸濁液にトリメチルアルミニウムを加え、次にエステル(1)を加え、混合物を還流し、固体の酒石酸ナトリウムカリウムで処理することによって実施することができる。
【0047】
化合物(1)を、R6R7CH−Lと化合物(2)の反応によって得ることができる
【0048】
【化10】
(Lは、ハロゲン化物(特に臭化物またはヨウ化物)、トシレート、メシレートまたはトリフレートなどの脱離基であり、R、p、q、V、W、X、Y、R2、R3、R4、R5、R6およびR7は、前述と同一の意味を有する。)。正常なアルキル化状態を使用することができる(例えば、炭酸カリウムなどの塩基の存在下においてDMF溶液中で加熱する。)。
【0049】
代わりに、化合物(2)を、アルデヒドまたはケトン官能基を含む基R6R7CH−の前駆体で還元的アルキル化にかけることができる。そのような場合、化合物(2)を、水の共沸除去と共に、酸触媒の存在下のトルエン中においてR6−CO−R7で還流し、得られた付加物を、ナトリウムトリアセトキシボロヒドリドを用いて還元することができる。R7がアルキン−1−イル基であるとき有用な、この経路の変形では、化合物(2)を、例えば、水中の70℃でのマイクロ波加熱を通して、金(III)臭化物の存在下で、R6−CHOおよびR7−Hと反応させる。
【0050】
別の変形において、化合物(2)、R6−CHOおよびベンゾトリアゾールを、水の共沸除去と共に、トルエン中で還流し、得られた付加物をR7−Zn−Halと反応させる(Halは、ハロゲン化物(好ましくは塩化物)を表し、R6およびR7は、前述と同一の意味を有する。)。反応は、低温(例えば10℃以下)でジクロロメタンなどの無水非プロトン溶媒中において適切に実施される。
【0051】
ピペリジン(2)を(VおよびWは、共に炭素原子であり、R3およびR4は、Hである。)、例えば、PtO2触媒に対するメタノールHCl中での、対応するピリジン(3)の水素化によって得る
【0052】
【化11】
(R、p、q、X、Y、R2およびR5は、前述と同一の意味を有する。)。
【0053】
ピリジン(3)を(Xは、結合であり、Yは、結合である。)、アリールボロン酸(5a)とクロロピリジン(4a)の結合によって得ることができる
【0054】
【化12】
(R、p、q、R2およびR5は、前述と同一の意味を有する。)。反応は、例えば、炭酸ナトリウムおよびPd(PPh3)4の存在下のジメトキシエタン水溶液中での、標準のスズキ(Suzuki)結合条件下で起こる。
【0055】
ピリジン(3)を(Xは、結合であり、Yは、CH2である。)、ベンジル亜鉛誘導体(5b)とクロロピリジン(4a)の結合によって得ることができる。反応を、(Ph3P)2NiCl2などのニッケル触媒の存在下のTHF中における0℃から周囲温度で実施することができる。
【0056】
ピリジン(3)を(Xは、結合であり、Yは、CH2CH2である。)、アルキン(5c)とクロロピリジン(4a)の結合、および引き続く水素化によって得ることができる。本結合を、例えば、マイクロ波加熱によりジオキサンおよびトリエチルアミンの混合物において、CuIとPd(Ph3)4などのPd(0)触媒の存在下で実施することができる。水素化は、ピリジン(3)のピペリジン(2)への変換と同様な条件下で起こり、実際にこのプロセスで好ましく混合させる。
【0057】
ピリジン(3)を(Xは、CH2である。)、前述のように(5a)、(5b)または(5c)でのクロロピリジン(4b)の合成、次にリチウムジイソプロピルアミドなどの強塩基の存在下で、CO(OR)2で生成物を処理することによって得ることができる(Rは、前述と同一の意味を有する。)。代わりに、クロロピリジン(4b)を、(5a)、(5b)または(5c)との反応の前に、CO(OR)2で処理することができる。
【0058】
式(2)のピペリジンを(式中、VおよびWは、共に炭素原子であり、R3およびR4は、Hであり、Xは、結合であり、pは、1であり、R2は、CO2R基と同一の環位置に結合している。)、R2−L(Lは、前述と同一の意味を有する。)と対応する化合物(pは、0である。)のアルキル化によって得る。本反応を、リチウムヘキサメチルジシラジド(HMDS)などの強塩基の存在下のTHF溶液中において実施できる。この処置の間、例えば、BOC誘導体としての、ピペリジン環の1位を保護することが好ましい。
【0059】
エステル(1)への代わりの経路は(VおよびWは、共に炭素原子であり、R3およびR4は、Hであり、pは、0であり、Xは、CH2であり、CH2CO2R基は、4位に結合している。)、(RO)2P(O)CH2CO2Rとピペリドン(6)の縮合、引き続いて得られたオレフィンの(7)の水素化を含む
【0060】
【化13】
(R、Y、q、R5、R6およびR7は、前述と同一の意味を有する。)。縮合は、NaHの存在下のTHF中において起こるが、水素化は、エタノール中のPd/C触媒に対して実施することができる。式(1)の対応するエステルを(式中、Xは、結合である。)、KHMDSおよびTf2NPh、次にPd(II)触媒の存在下におけるCOおよびROHによるケトン(6)の処理、引き続いて得られたテトラヒドロピリジン誘導体の水素化によって得ることができる。
【0061】
ケトン(6)を、ジヒドロピリドン(8)の還元によって得ることができる
【0062】
【化14】
(Y、q、R5、R6およびR7は、前述と同一の意味を有する。)。還元を、−78℃のTHF中でL−セレクトリド(L−Selectride)などのホウ化水素還元剤を使用して実施することができる。
【0063】
化合物(8)を、トランス−1−メトキシ−3−(トリメチルシリルオキシ)−1,3−ブタジエンと、R6R7CH−NH2とアルデイド(deyde)(9)の縮合から形成されたイミンとの間のディールスアルダー反応(Diels−Alder reaction)によって得ることができる
【0064】
【化15】
(Y、q、R5、R6およびR7は、前述と同一の意味を有する。)。付加環化を、In(III)トリフレートの存在下、周囲温度でアセトニトリル中において実施することができ、引き続いて重炭酸塩水溶液でクエンチする。
【0065】
代わりに、ピペリドン(6)を、トリメチル[(1−メチレンプロプ−2−エン−1−イル)オキシ]シランと上述したイミンを反応させ(例えば、不活性雰囲気下の周囲温度でのジクロロメタン中において)、次にフッ化テトラブチルアンモニウムを加えることによるワンポットプロセスにおいて得ることができる。
【0066】
ピペリジン(2)への代わり経路は(VおよびWは、共に炭素原子であり、R3およびR4は、Hであり、pは、0であり、Xは、CH2であり、CH2CO2R基は、4位に結合している。)、ジヒドロピリジン(8)に関する前述の様式におけるジヒドロピリドン(10)の合成
【0067】
【化16】
(Y、qおよびR5は、前述と同一の意味を有する。)、引き続いてベンジルオキシカルボニル保護基の除去(例えば、酸での処理によって)を含む。化合物(10)を、ベンジルクロロギ酸エステルおよび有機金属の誘導体(11)と4−メトキシピリジンのワンポット反応によって得ることができる(M1は、LiまたはMg−ハライドであり、Y、qおよびR5は、前述と同一の意味を有する。)。本反応は、THFなどの溶媒中において低温(例えば、−25℃)で起こる。
【0068】
ジヒドロピリジン(8)または(10)が関与する上記の経路において、Yは、好ましくは結合である。
【0069】
ジヒドロピリジン(8)または(10)が関与する上記の経路を、R2−Lでの化合物(8)または(10)(R2およびLは、前述と同一の意味を有する。)のアルキル化を通して、ピペリジン環の3位にR2を有する生成物を得るために適合させることができる。前記アルキル化は、従来の条件下で起こる(例えば、リチウムジイソプロピルアミドの存在下のTHF中において)。
【0070】
代わりに、前述の経路を、CuIの存在下におけるR2−Mg−ハライドでの化合物(8)または(10)の処理を通してピペリジン環の6位にR2基を有する生成物を得るために適合させることができる(R2は、前述と同一の意味を有する。)。反応を、低温で(例えば、−78℃から−10℃)THF中において実施することができる。
【0071】
さらなる代替において、前述の経路を、−CH2CO2R基がL−CH2CO2R(LおよびRは、前述と同一の意味を有する。)による化合物(8)または(10)のアルキル化を通してピペリジン環の3位に結合し、引き続いてCH2にケト基が還元した生成物を得るために適合させることができる。アルキル化は、通常の条件下で起こり、ケト基の還元は、1,2−エタンジチオールでの処理を通して容易に引き起こされ、ジチオケタルを形成し、引き続いてラネーニッケル(Raney nickel)で処理する。
【0072】
式(1)のピペリジンへの代わり経路は(式中、VおよびWは、共に炭素原子であり、R3およびR4は、共にHであり、Xは、結合であり、pは、0であり、CO2Rは、5位に結合している。)、ジエン(12)の環化、引き続いて得られた1,2,3,6−テトラヒドロピリジン誘導体の還元を含む
【0073】
【化17】
(R、Y、q、R5、R6およびR7は、前述と同一の意味を有する。)。環化は、Ru触媒の存在下で起こり、還元は、メタノール中のMgでの処理によって引き起こされる。ジエン(12)を、適切なブロモメタクリレートエステルでの二級アミン(13)のアルキル化によって得ることができ、アミン(13)を、R6R7CH−NH2でのアルデヒド(9)の縮合およびアリルトリブチルスタンナンでの処理によって得ることができる
【0074】
【化18】
(Y、q、R5、R6およびR7は、前述と同一の意味を有する。)。
【0075】
式(1)のピペリジンへの別の経路は(式中、VおよびWは、共に炭素原子であり、pは、0であり、R3およびR4は、共にHであり、Xは、結合であり、CO2Rは、4位に結合している。)、ビスエステル(14)のモノ脱炭酸(mono−decarboxylation)を含む
【0076】
【化19】
(R、Y、q、R5、R6およびR7は、前述と同一の意味を有する。)。反応は、DMSO中の塩化ナトリウムと、約160℃で加熱することによって実施することができる。その後、メタノール中のナトリウムメトキシドと生成物を還流させ、4位でのエピマー化、およびトランス異性体を代償にしたシス異性体での濃縮を引き起こす。ビスエステル(14)を、ジケトン(15)とR6R7CH−NH2の反応、
【0077】
【化20】
引き続いてワンポット処置におけるシアノ水素化ホウ素ナトリウムによる還元から得ることができる(R、Y、q、R5、R6およびR7は、前述と同一の意味を有する。)。第1のステップは、−78℃の三級アミンおよびTiCl4の存在下で、周囲温度に昇温させながら、ジメトキシエタン中で実施することができる。第2のステップは、室温で反応混合物にシアノ水素化ホウ素ナトリウムのメタノール溶液を加えることによって実施することができる。ジケトン(15)を、式(16)の化合物による適切なアリルマロネートジアルキルエステルのアルキル化
【0078】
【化21】
引き続いてアリル基のオゾン分解によって得ることができる(L、R、Y、qおよびR5は、前述と同一の意味を有する。)。アルキル化は、NaHの存在下でDMF中において実施することができる(例えば、周囲温度で)。オゾン分解は、−78℃で基質のジクロロメタン溶液を介してオゾンに富む酸素に通し、硫化ジメチルを加え、次に周囲温度で終夜攪拌することによって実施することができる。
【0079】
式(2)のピペリジンを(式中、R3およびR4は、−CH2CH2−ブリッジを完成し、Yは、結合である。)、ケトン(6)のエステル(1)への変換のために前述した方法による二環式ケトン(17)の合成
【0080】
【化22】
(qおよびR5は、前述と同一の意味を有する。)、引き続いて水素化による保護基4−メトキシベンジルの除去によって得ることができる。
【0081】
二環式ケトン(17)を、アセトンジカルボン酸と4−メトキシベンジルアミンの反応、次にケトアルデヒド(18)による原位置での生成物の処理によって得ることができる
【0082】
【化23】
(R5およびqは、前述と同一の意味を有する。)。
【0083】
式(1)のピペラジンへの好ましい経路は(式中、Vは、炭素原子であり、Wは、窒素原子である。)、L−X1−CO2Rによる化合物(19)のアルキル化を含む
【0084】
【化24】
(X1は、結合以外であるXであり、別のすべての変量は以前の定義の通りである。)。化合物(19)は、
【0085】
【化25】
化合物(1)への化合物(2)の変換、引き続いてトリチル基の除去(例えば、メタノールHClでの処理によって)に関する前述の方法を使用して化合物(20)から得ることができる。化合物(20)は、ピリジン(3)の合成、引き続いて水素化(化合物(3)の化合物(2)への変換の場合のように)、および標準的方法によるトリチル化に関する前述の様式における適切なピラジン誘導体と化合物(5a)、(5b)または(5c)の結合を通して得ることができる。
【0086】
式(1)のピロリジンへの好ましい経路は(式中、Vは、結合であり、pは、0であり、Xは、CH2を表す。)、(a)t−ブチルスルフィンアミドでアルデヒド(9)を縮合し、アリルMgBrと得られたイミンを反応させて、付加物(21a)を得るステップと;
【0087】
【化26】
(b)N−アルキル化(例えば、(2)から(1)への変換に関する前述のあらゆる方法による)により化合物(21b)を得るステップと;
(c)ルテニウム触媒(例えば、チャンI(Zhan I))の存在下におけるCH2=CH−CO2Rとの反応、引き続いてメタノールHClでの処理により化合物(22a)を得るステップと;
【0088】
【化27】
(d)1−ヒドキシメチルベンゾトリアゾールとの反応(例えば、モレキュラーシーブとベンゼンを還流させることで)により化合物(22b)を得るステップと;
(e)−78℃のTHF中におけるSmI2およびt−ブタノールでの処理による環化のステップとを含む。
【0089】
いくつかの上記の経路が式IVの化合物の合成に適していることは容易に理解できる。したがって、式IVの化合物のエステル前駆体への好ましい経路において、式(2a)のピペリジン、アルデヒドR6−CHOおよびベンゾトリアゾールを、水の共沸除去と共にトルエン中で還流させ、得られた付加物をR7−Zn−Halと反応させる
【0090】
【化28】
(Halは、ハロゲン化物(好ましくは塩化物)を表し、Ra、R、R6およびR7は、前述と同一の意味を有する。)。反応は、低温で(例えば、10℃未満で)ジクロロメタンなどの無水非プロトン溶媒中において適切に実施される。ピペリジン(2a)は、適切なボロン酸(5a)とピリジン(4b)の結合、以前に記載されたようなさらなる生成物の合成を通して得ることができる。同様の結果が、アルデヒドR7CHOおよびベンゾトリアゾールとピペリジン(2a)を反応させ、得られた付加物をR6−Zn−Halで処理することによって達成できることは容易に理解できる。第2のステップを、THFを含む溶媒中において実施すると、THFの関与する副反応が起こる可能性があり、R6が2−フリルを表す生成物を得る。
【0091】
式IVの化合物への別の好ましい経路において、式(2a)のピペリジン、アルデヒドR6−CHOおよび1−アルキンを、金(III)臭化物の存在下で(例えば、70℃で)、マイクロ波加熱にかけ、式IVの化合物を得る(式中、R7は、1−アルキニルである。)。必要に応じて、対応する化合物を(R7は、アルキルまたはアルケニルである。)、アルキニル誘導体の水素化によって得ることができる(例えば、Pd/C触媒に対する酢酸エチル中において)。
【0092】
式IVの化合物への第3の経路において、式(15)の適切なジケトンを(Y=結合)、式R6R7CH−NH2のアミンと反応させ、引き続いて化合物(14)の調製のために以前に記載されたように、シアノ水素化ホウ素ナトリウムで処理する。その後、モノ脱炭酸(以前に記載されたように)および同族体化(後述されるように)により、式IVの化合物を得る。
【0093】
式Iのカルボン酸を(式中、Xは、結合である。)、同族体化の標準的方法によって(例えば、塩化オキサリル;トリメチルシリルジアゾメタンおよびアセトニトリル;ROHおよび銀安息香酸塩による連続した処理;次に得られたエステルの加水分解)、対応する化合物(Xは、CH2である。)に変換することができる。対応する化合物(Xは、CH2である。)の同様な処理によって、化合物を得る(Xは、CH2CH2である。)。式(1)のエステルを(Xは、C(R1)2またはCH2C(R1)2であり、少なくとも1つのR1は、H以外である。)、標準的方法により対応する化合物(各R1は、Hである。)のアルキル化によって調製することができる。
【0094】
同様に、式Iによる特定の化合物を、有機合成の当業者に公知の結合生成または開裂の標準的技術によって式Iによる異なる化合物に変換することができる。
【0095】
これらが、これら自体が市販でない場合は、前述の合成スキームのための出発物質を、市販の材料の直接の化学修飾によって得ることができる。
【0096】
本発明による特定の化合物は、1つまたは複数のキラル中心の存在により、または分子の相対的な非対称性により光学異性体として存在することができる。そのような化合物を、ラセミ体で調製することができ、または個々の鏡像異性体を、エナンチオ特異的合成もしくは分割のいずれかによって調製することができる。新規な化合物を、例えば、分取HPLCなどの標準的技術、または光学的活性な酸(例えば、ジ−p−トルオイル−D−酒石酸および/または−ジ−p−トルオイル−L−酒石酸など)での塩生成、引き続いて遊離塩基の分別晶出および再生によるジアステレオマーペアの生成によって、これらの成分鏡像異性体(component enantiomer)に分割させることができる。また、新規な化合物を、ジアステレオマーエステルまたはアミドの生成、引き続いてクロマトグラフ分離およびキラル補助基の除去によって分割することができる。代わりに、式Iの化合物の調製におけるラセミ中間体を、上述した技術、および後のステップにおいて使用される所望の鏡像異性体によって分割することができる。例えば、ラセミピペリジン誘導体(2a)を、L−マンデル酸での塩生成を通して分割することができる。
【0097】
上記のいずれかの一連の合成の間、いずれかの関連の分子上の感受性または反応性基を保護することが必要および/または望ましいと思われる。このことは、例えば、Protective Groups in Organic Chemistry、ed.J.F.W.McOmie、Plenum Press、1973;およびT.W.Greene & P.G.M.Wuts、Protective Groups in Organic Synthesis、John Wiley & Sons、3rd ed、1999に記載の保護基などの従来の保護基により達成することができる。保護基は、当業者に公知の方法を使用して、都合よい後の過程で除去することができる。
【0098】
本発明の化合物は、Aβの1−42アイソフォームの生成を選択的に減少させるために、アミロイド前駆体タンパク質に対するγ−セクレターゼの作用を変更する有用な特性を有し、このため、Aβ(1−42)によって媒介される疾患(特に脳におけるβ−アミロイドの沈着に関わる疾患)に対する治療の開発における使用が見出されている。
【0099】
本発明のさらなる態様によれば、脳のβ−アミロイドの沈着を伴う疾患の治療または予防のための薬物製造における、上記の定義のような式Iによる化合物、または薬学的に許容されるその塩の使用を提供する。
【0100】
脳のAβの沈着を伴う疾患は、典型的にアルツハイマー病(AD)、脳アミロイド血管症、HCHWA−D、多発脳梗塞性痴呆、ボクサー認知症またはダウン症候群である(好ましくはADである。)。
【0101】
さらなる態様において、本発明は、アルツハイマー病、脳アミロイド血管症、HCHWA−D、多発脳梗塞性痴呆、ボクサー認知症またはダウン症候群に関連した認知症の発症を治療する、予防する、または遅延させるための薬物製造における、上記の定義のような式Iの化合物、または薬学的に許容されるその塩の使用を提供する。
【0102】
また、本発明は、上記の定義のような式Iの化合物、または薬学的に許容されるその塩の治療有効量を、それを必要とする患者に投与することを含む、脳のAβ沈着を伴う疾患を治療または予防する方法を提供する。
【0103】
さらなる態様において、本発明は、上記の定義のような式Iの化合物、または薬学的に許容されるその塩の治療有効量を、それを必要とする患者に投与することを含む、アルツハイマー病、脳アミロイド血管症、HCHWA−D、多発脳梗塞性痴呆、ボクサー認知症またはダウン症候群と関連した認知症の発症を治療する、予防するまたは遅延させる方法を提供する。
【0104】
式Iの化合物は、Aβ(1−40)などの短鎖のアイソフォームの産生を著しく低下させることなしに、Aβの(1−42)アイソフォームの産生を選択的に弱めるために、γ−セクレターゼの作用を調節する。これは、自己凝集し、不溶性の沈着を形成する傾向が少なく、より容易に脳から除去され、および/または神経毒性がより少ないAβの分泌を生じさせる。したがって、本発明のさらなる態様は、上記の定義のような式Iの化合物、または薬学的に許容されるその塩の治療有効量を、それを必要とする対象者に投与することを含む、脳のAβ沈着を遅延させ、抑制し、または予防する方法を提供する。
【0105】
式Iの化合物が、γ−セクレターゼの活性を抑制することとは対照的に、γ−セクレターゼの活性を調節するので、前述の治療上の有益性は、副作用[例えば、γ−セクレターゼによって制御されている別のシグナル伝達経路(例えば、ノッチ経路(Notch))の破壊から発生し得る副作用]が減少することであると信じられている。
【0106】
本発明の一実施形態において、式Iの化合物を、AD、脳アミロイド血管症、HCHWA−D、多発脳梗塞性痴呆、ボクサー認知症またはダウン症候群(好ましくはAD)を患う患者に投与する。
【0107】
本発明の代替の実施形態において、式Iの化合物を、軽度の認知障害または加齢性の認知機能低下を患う患者に投与する。そのような治療の良好な転帰は、ADの発症の予防または遅延である。加齢性の認知機能低下および軽度の認知障害(MCI)は、記憶障害が存在するが、認知症の別の診断基準が存在しない状態である(Santacruz and Swagerty、American Family Physician、63(2001)、703−13)。(また、「The ICD−10 Classification of Mental and Behavioural Disorders」、Geneva:World Health Organisation、1992、64−5を参照のこと)。本明細書では、「加齢性の認知機能低下」は、記憶および学習;注意および集中;思考;言語;ならびに視空間機能のうち少なくとも1つにおいて少なくとも6カ月の期間の低下、さらに1つ以上の標準偏差のスコアが、標準化された神経心理学テスト(例えば、MMSE)で基準以下であることを意味する。特に、記憶における進行性の低下が見られる可能性がある。MCIのより重度の状態において、記憶障害の程度は、患者の年齢に対して正常と考えられる範囲外であるが、ADは存在していない。MCIおよび軽度ADの鑑別診断について、Petersenら、Arch.Neurol.、56(1999)、303−8に記載されている。MCIの鑑別診断に関するさらなる情報は、Knopmanら、Mayo Clinic Proceedings、78(2003)、1290−1308によって提供されている。老齢の対象者に関する試験において、Tuokkoら(Arch,Neurol.、60(2003)577−82)は、発症時にMCIを呈する対象者では、5年以内に認知症を発症するリスクが3倍高いことを発見した。
【0108】
Grundmanら(J.Nol.Neurosci.、19(2002)、23−28)は、MCI患者におけるベースラインの低い海馬容量は、その後のADにおける予後指標であることを報告している。同様に、Andreasenら(Arta Neurol.Scand、107(2003)47−51)は、総タウの高CSF濃度、リン酸−タウの高CSF濃度およびAβ42の低CSF濃度がMCIからADへの進行のリスク増加にすべて関連していることを報告している。
【0109】
本実施形態の範囲内で、式Iの化合物を、記憶機能障害を患うが、認知症の症状を呈してない患者に有利に投与する。そのような記憶機能障害は、典型的に、脳卒中、または脳下垂体機能障害によって引き起こされる代謝異常などの全身または脳疾患に起因していない。そのような患者は、特に55歳以上の人々、特に60歳以上の人々、および好ましくは65歳以上の人々である可能性がある。そのような患者は、彼らの年齢に対して成長ホルモン分泌のパターンおよびレベルが正常である可能性がある。しかし、そのような患者は、アルツハイマー病を発症する1つまたは複数のさらなる危険因子を有する可能性がある。そのような因子は、疾患の家族歴;疾患に対する遺伝的素因;血清コレステロール高値;および成人発症型糖尿病を含む。
【0110】
本発明の特定の実施形態において、式Iの化合物を、疾患の家族歴;疾患に対する遺伝的素因;血清コレステロール高値;成人発症型糖尿病;高ベースライン海馬容量;総タウの高CSF濃度、リン酸−タウの高CSF濃度およびAβ(1−42)の低CSF濃度から選択されるADを発症するための1つまたは複数の危険因子をさらに有する加齢性の認知機能低下またはMCIを患う患者に投与する。
【0111】
遺伝的素因(特に、早期発症ADへの)は、APP、プレセニリン−1およびプレセニリン−2遺伝子などの1つまたは複数の遺伝子数における点変異に起因する可能性がある。また、アポリポタンパク質E遺伝子のε4アイソフォームがホモ接合である対象者は、ADを発症するリスクが高い。
【0112】
認知機能低下または障害の患者の程度は、本発明に従った治療コースの前、間および/または後に定期的間隔で有利に評価され、その中の変化(例えば、認知機能低下の減速または停止)を検出することができる。年齢および教育に関して調整された基準による簡易精神状態検査(Mini−Mental State Examination;MMSE)などの様々な神経心理検査が、この目的のために当技術分野において公知である(Folsteinら、J.Psych.Res.、12(1975)、196−198、Anthonyら、Psychological Med.、12(1982)、397−408;Cockrellら、Psychopharmacology、24(1988)、689−692;Crumら、J.Am.Med.Assoc’n.18(1993)、2386−2391)。MMSEは、成人における認知状態についての短時間の定量的測定である。これは、特定の時点での認知機能低下または障害の重症度を推定し、経時的な個々の認知変化の経過を追跡し、治療に対する個々の反応を記録するために、認知機能低下または障害をスクリーニングするために使用することができる。別の適切な試験は、アルツハイマー病評価尺度(Alzheimer Disease Assessment Scale;ADAS)の特にこの認知要素(ADSA−cog)である(Rosenら、Am.J.Psychiatry、141(1984)、1356−64を参照のこと)。
【0113】
式Iの化合物は、1つまたは複数の式Iの化合物および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物の形態で、典型的に使用される。したがって、さらなる態様において、本発明は、上記の定義のような式Iの化合物、または薬学的に許容されるその塩、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。好ましくは、これらの組成は、経口、非経口、鼻腔内、舌下もしくは直腸投与、または吸入もしくはガス注入による投与のための、錠剤、ピル、カプセル、粉末、顆粒、無菌の非経口溶液または懸濁液、定量エロゾールまたは液体スプレー、点滴剤、アンプル、経皮パッチ、自動注入装置または坐剤などの単位剤形である。典型的に、主要な活性成分を、例えば、従来の錠剤化成分(例えば、コーンスターチ、ラクトース、スクロース、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウムおよび第二リン酸カルシウム)、またはゴム、分散剤、懸濁化剤、界面活性剤(例えば、ソルビタンモノオレエートおよびポリエチレングリコール)、および別の製薬希釈剤(例えば、水)と混合し、本発明の化合物または薬学的に許容されるその塩を含む均一な調合前組成を形成させる。均一としてこれらの調合前組成を指すとき、本組成を等しく有効な単位剤形(例えば、錠剤、ピルおよびカプセル)に容易に細分することができるように、活性成分が本組成を通して均一に分散されていることを意味する。この調合前組成を、次に、本発明の活性成分の0.1から約500mg含む前述のタイプの単位剤形に細分する。典型的な単位剤形は、活性成分の1から100mg(例えば、1、2、5、10、25、50または100mg)を含む。組成の錠剤またはピルを、持続性作用の利点をもたらす剤形を提供するために、被覆またはさもなければ配合することができる。例えば、錠剤またはピルは、内側および外側投薬成分を含むことができ、外側投薬成分は内側投薬成分に対するエンベロープの形態である。この2つの成分は、腸溶層によって分離され、この層は、胃における分解に抵抗し、内側の成分が無傷で十二指腸へ通過または放出を遅らせることを可能にする。様々な材料を、そのような腸溶層または被覆のために使用することができ、そのような材料は、多くのポリマー酸およびセラック、セチルアルコールおよび酢酸セルロースなどの材料とポリマー酸の混合物を含む。
【0114】
本発明において有用な組成を、経口投与または注射用に組み込むことができる液体形態は、水溶液、液体またはゲル充填カプセル、適切に風味をつけたシロップ、水性または油性懸濁液、および綿実油、胡麻油、やし油または落花生油などの食用油で風味をつけた乳濁液、ならびにエリキシル剤および同様の製薬媒体を含む。水性懸濁液のための適切な分散剤または懸濁化剤は、トラガカントゴム、アラビアゴム、アルギン酸塩、デキストラン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(ビニルピロリドン)またはゼラチンなどの合成および天然ゴムを含む。
【0115】
アルツハイマー病を治療または予防するための適切な用量レベルは、活性化合物の、1日あたり約0.01から250mg/kg、好ましくは1日あたり約0.01から100mg/kg、より好ましくは1日あたり約0.05から50mg/kg体重である。本化合物を、1日あたり1から4回の投与計画で投与することができる。しかし、場合によっては、これらの範囲以外の投与量を使用してもよい。
【0116】
式Iの化合物を、ADまたはその症状の治療または予防に有用であることが知られている、1種または複数のさらなる化合物と組み合わせて投与することができる。したがって、そのようなさらなる化合物は、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤(例えば、ドネペジルおよびガランタミン)、NMDAアンタゴニスト(例えば、メマンチン)またはPDE4阻害剤(例えば、Ariflo(商標)およびWO03/018579、WO01/46151、WO02/074726およびWO02/098878において開示された化合物クラス)などの認知力を高める薬物を含む。また、そのようなさらなる化合物は、スタチン(例えば、シンバスタチン)などのコレステロール降下剤を含む。そのようなさらなる化合物は、同様に、Aβの分泌を阻害する化合物(γ−セクレターゼ阻害剤、β−セクレターゼ阻害剤およびGSK−3α阻害剤など)、Aβの凝集を阻害する化合物、およびAβに選択的に結合する抗体などの脳におけるAβの産生または処理を変更することが知られている化合物を含む(「アミロイド調節剤」)。また、そのようなさらなる化合物は、WO2004/110443で開示されているような成長ホルモン分泌促進物質を含む。
【0117】
本発明のこの実施形態において、アミロイド調節剤は、Aβの分泌を阻害する化合物、例えば、γ−セクレターゼ阻害剤(例えば、WO01/90084、WO02/30912、WO01/70677、WO03/013506、WO02/36555、WO03/093252、WO03/093264、WO03/093251、WO03/093253、WO2004/039800、WO2004/039370、WO2005/030731、WO2005/014553、WO2004/089911、WO02/081435、WO02/081433、WO03/018543、WO2004/031137、WO2004/031139、WO2004/031138、WO2004/101538、WO2004/101539およびW02/47671において開示されたγ−セクレターゼ阻害剤など)もしくはβ−セクレターゼ阻害剤(例えば、WO03/037325、WO03/030886、WO03/006013、WO03/006021、WO03/006423、WO03/006453、WO02/002122、WO01/70672、WO02/02505、WO02/02506、WO02/02512、WO02/02520、WO02/098849およびWO02/100820において開示されたβ−セクレターゼ阻害剤など)、またはAβの生成または放出を阻害する他のいずれかの化合物(例えば、WO98/28268、WO02/47671、WO99/67221、WO01/34639、WO01/34571、WO00/07995、WO00/38618、WO01/92235、WO01/77086、WO01/74784、WO01/74796、WO01/74783、WO01/60826、WO01/19797、WO01/27108、WO01/27091、WO00/50391、WO02/057252、US2002/0025955およびUS2002/0022621において開示される化合物など)、さらにGSK−3阻害剤の特にGSK−3α阻害剤(Phielら、Nature、423(2003)、435−9で開示された例えば、リチウムなど)である可能性がある。
【0118】
本実施形態の範囲内で、アミロイド調節剤は、有利にはγ−セクレターゼ阻害剤であり、この好ましい例は、式XIの化合物または薬学的に許容されるその塩を含む
【0119】
【化29】
(式中、m、Z、R1b、R1c、Ar1およびAr2は、WO03/018543において定義の通りである。)。
【0120】
そのような化合物は、WO03/018543に記載のように調製することができる。好ましい例は、式XIaによって定義された化合物および薬学的に許容されるその塩を含む
【0121】
【化30】
(式中、mは、0または1であり、Xは、ClまたはCF3であり、Yは、OH、OC1−6アルキル、NH2またはNHC1−6アルキルである。)。特定の例は、mが1であり、YがOHである化合物(またはそのナトリウム塩)およびmが0であり、YがNH2またはNHC1−6アルキルである化合物を含む。
【0122】
本発明のこの実施形態に使用するためのγ−セクレターゼ阻害剤の別の好ましいクラスは、式XIIによって定義されたγ−セクレターゼ阻害剤クラスまたは薬学的に許容されるその塩である
【0123】
【化31】
(式中、XおよびRは、WO03/093252の定義の通りである。)。
【0124】
Xは、非常に適切に5−置換−チアゾール−2−イル、5−置換−4−メチルチアゾール−2−イル、5−置換−1−メチルチアゾール−3−イル、1−置換−イミダゾール−4−イルまたは1−置換−1,2,4−チアゾール−3−イルである。好ましくは、Rは、「ハロ」がフルオロまたはクロロを指す、フェニル、モノハロフェニル、ジハロフェニル、トリハロフェニル、シアノフェニル、メチルフェニル、メトキシフェニル、トリフルオロメチルフェニル、トリフルオロメトキシフェニル、ピリジル、モノハロピリジルおよびトリフルオロメチルピリジルなどの場合によって置換されたフェニルまたはヘテロアリールを表す。R−X−の特に好ましいアイデンティティは、5−(4−フルオロフェニル)−1−メチルピラゾール−3−イル、5−(4−クロロフェニル)−1−メチルピラゾール−3−イルおよび1−(4−フルオロフェニル)イミダゾール−4−イルを含む。そのような化合物を、WO03/093252に開示の方法によって調製することができる。
【0125】
代わりに、アミロイド調整剤は、Aβの凝集を阻害する化合物であることができる。適切な例は、クリオキノールなどのキレート剤(GourasおよびBeal、Neuron、30(2001)、641−2)およびWO99/16741に開示の化合物、特にDP−109として知られる化合物(Kalendarevら、J.Pharm.Biomed.Anal.、24(2001)、967−75)を含む。本発明の使用に適したAβ凝集の別の阻害剤は、WO96/28471、WO98/08868、WO00/052048(Apan(商標)(プリーシス(Praecis))として知られる化合物など);WO00/064420、WO03/017994、WO99/59571およびAlzhemed(商標)(ニューロケム(Neurochem))として知られる化合物;WO00/149281およびPTI−777およびPTI−00703として知られる組成(プロテオテク(ProteoTech));WO96/39834、WO01/83425、WO01/55093、WO00/76988、WO00/76987、WO00/76969、WO00/76489、WO97/26919、WO97/16194およびWO97/16191を含む。
【0126】
代わりに、アミロイド調節剤は、選択的にAβに結合する抗体である可能性がある。前記抗体は、ポリクローナルまたはモノクローナルであり得るが、好ましくはモノクローナルであり、好ましくはヒトまたはヒト化抗体である。好ましくは、抗体は、WO03/016466、WO03/016467、WO03/015691およびWO01/62801に記載のように生体液から可溶性Aβを隔離することができる。適切な抗体は、ヒト化抗体226(WO01/62801に記載)およびWO03/016466に記載のその修正版を含む。
【0127】
本明細書では、「組み合わせて」という表現は、式Iの化合物とさらなる化合物の両方の治療有効量を、対象者に投与するが、獲得される様式に何も制限を設けないことを必要とする。したがって、2種を、対象者に対する同時投与のために単一剤形に混合するか、または対象者に対する同時または連続投与のために別々の剤形で提供することができる。連続投与は、時間を近づけるか、または時間を離すことができる(例えば、1種を朝に投与し、別の種を夕方に投与する。)。別々の種を、同一の頻度または異なる頻度で投与することができる(例えば、1種を1日1回、および別の種を1日2回または複数回)。別々の種を、同一の経路または異なる経路によって投与することができる(例えば、可能ならば、経口経路が両方の種とも好ましいが、1種を経口的におよび別の種を非経口的に)。さらなる化合物が抗体であるとき、典型的に、非経口的におよび式Iの化合物と別に投与される。
【0128】
さらなる態様において、本発明は、脳におけるβ−アミロイドの沈着を伴う疾患の治療または予防に使用するための式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩と、式XI(a)の化合物または薬学的に許容されるその塩との組合せを提供する。前記の使用は、そのような治療または予防を必要とする患者へのそれぞれの化合物の同時または別々の投与を含む。
【0129】
さらなる態様において、本発明は、薬学的に許容される担体に、式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩と、式XI(a)の化合物または薬学的に許容されるその塩とを含む医薬組成物を提供する。好ましくは、医薬組成物は、錠剤またはカプセルなどの経口投与に適した単位用量形態である。
【0130】
実施例
Aβ(1−42)の産生を選択的に阻害する式Iの化合物の能力を、以下のアッセイを使用して測定した。
【0131】
細胞ベースのγ−セクレターゼアッセイ
直接γ−セクレターゼ基質SPA4CTを過剰発現しているヒトSH−SY5Y神経芽細胞腫細胞を、プレーティングの前に酪酸ナトリウム(10mM)で4時間誘発した。細胞を、35,000細胞/ウェル/100μlで、フェノールレッドフリーのMEM/10%FBS、50mM HEPES、1%グルタミン入りの96ウェルプレートに蒔き、37℃、5%CO2で2時間インキュベートした。
【0132】
試験のために、化合物をMe2SOに希釈し、10ポイント用量反応曲線を得た。典型的に、Me2SO中のこれら希釈化合物10μlを、さらに182μlの希釈緩衝液(フェノールレッドフリーのMEM/10%FBS、50mM HEPES、1%グルタミン)に希釈し、各希釈物10μlを、96ウェルプレート中の細胞に加えた(0.5%の最終Me2SO濃度を得た。)。適切な媒体および阻害剤の制御が、アッセイのウィンドウを測定するために使用された。
【0133】
37℃での終夜のインキュベーション後、5%CO2、10μlおよび50μlの培地を、それぞれAβ(40)およびAβ(42)ペプチドの検出のために新しいコスタ(Costar)丸底96ウェルプレートに移した。40μlのオリゲネス(Origen)緩衝液(PBS、2%BSA、0.2%ツウィーン(Tween)20)を、Aβ(40)のウェルに加え、引き続いて25μlのそれぞれの抗体予備混合物を以下のウェルに加えた。
【0134】
Aβ(40)予備混合物:オリゲネス緩衝液で希釈した1μg/mlのルテニル化(ruthenylated)G2−10抗体、4μg/mlのビオチン化4G8抗体
Aβ(42)予備混合物:オリゲネス緩衝液で希釈した0.5μg/mlのルテニル化G2−11抗体、4μg/mlのビオチン化4G8抗体
(ビオチン化4G8抗体は、シグネットパソロジー社(Signet Pathology Ltd)より提供され、G2−10およびG2−11抗体は、ケミコン(Chemicon)により提供された。)
4℃での振盪機におけるアッセイプレートの終夜のインキュベーション後、オリゲネスM8分析器(イゲン社(Igen Inc.))を、製造者の説明書に従って調整した。ストレプトアビジン磁気ビーズ(ダイナル(Dynal))予備混合物(オリゲネス緩衝液中に400μg/mlのストレプトアビジンビーズ/ml)25μlを、アッセイプレートに加え、振盪機上で15分間インキュベートした。150μlのオリゲネス緩衝液を、各ウェルに加え、プレートを製造者の説明書に従ってオリゲネスM8分析器により読み取った。
【0135】
製造者の説明書に従って、細胞生存度を、ホルマザンへのMTS(オーエン試薬(Owen’s reagent)のバイオ還元を利用した比色細胞増殖アッセイ(CellTiter 96(商標)AQアッセイ、プロメガ(Promega))によって、Aβアッセイの培地の除去後に、対応する細胞において測定した。簡単に述べると、10xMTS/PES 5μlを、インキュベーターに戻す前に、残る培地50μlに加えた。光学濃度を、約4時間後に495nmで読み取った。
【0136】
Aβ(40)およびAβ(42)の阻害のためのLD50およびIC50値を、適切なソフトウェアを使用して(例えば、エクセルフィット)、非線形回帰フィット分析(fit analysis)によって算出した。総シグナルおよびバックグラウンドを、対応するMe2SOおよび阻害剤の制御によって定義した。
【0137】
以下の実施例に記載の化合物は、A(1−42)阻害に関してすべてIC50値を示した。これは、A(1−40)阻害に関する対応するIC50値より少なくとも2倍低く、典型的に少なくとも5倍低く、好ましい場合では、少なくとも50倍低かった。
【0138】
中間体1:(±)−メチル{2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン−4−イル}アセテートハイドロクロライド
【0139】
【化32】
ステップ1:4−メチル−2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン
【0140】
【化33】
DME(40ml)およびNa2CO3水溶液(2M、40ml)中の2−クロロ−4−メチルピリジン(1.9ml、21.6mmol)と4−(トリフルオロメチル)ベンゼンボロン酸(5.0g、26mmol)の混合物を、脱気した(Firestone(登録商標)バルブ×3)。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(1.15g、1.0mmol、5mol%)を加え、さらなる脱気後(Firestone(登録商標)バルブ×3)、混合物を、還流させながら16時間加熱した。反応物を、室温まで冷却し、H2O(100ml)およびEtOAc(150ml)で希釈した。混合物を、Celite(登録商標)パッドを通して濾過し、EtOAcで洗浄した。相を分離させ、水層をEtOAc(200ml)で抽出した。混合した抽出物を、H2O(100ml)および鹹水(×1)で洗浄し、次に乾燥させ(MgSO4)、濾過し、蒸発させた。残渣を、10%EtOAc/イソヘキサンで溶離するシリカクロマトグラフィーにより精製し、白色の固体としてエステルを得た(3.5g、68%)。1H NMR(360MHz,CDCl3)δ:2.44(3H,s)、7.13(2H,d,J 5.0)、7.58(1H,s)、7.72(2H,d,J 8.2)、8.09(2H,d,J 8.2)、8.57(1H,d,J 5.0)。
【0141】
ステップ2:メチル{2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン−4−イル}アセテート
【0142】
【化34】
LDA溶液(THF/ヘプタン/エチルベンゼン中に2M、44ml、88mmol)を、N2下で、内部温度が<−70℃を維持するように、4−メチル−2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン(10.5g、44mmol)の攪拌された乾燥THF(300ml)溶液に1滴ずつ加えた。この温度で1時間後、炭酸ジメチル(8.9ml、106mmol)を加えた。30分後、冷却槽を除去した。内部の温度が−20℃に達したとき、反応物を、−10℃の冷浴へ移し、ゆっくりと0℃まで昇温させた。0℃で1時間後、反応を、NH4Cl水溶液(半飽和、100ml)でクエンチした。反応混合物を、真空中で濃縮した。残渣を、H2O(200ml)で希釈し、EtOAcで抽出した(2×200ml)。混合した抽出物を、鹹水で洗浄し(×1)、乾燥させ(MgSO4)、濾過し、蒸発させた。残渣を、10−30%EtOAc/イソヘキサンで溶離するシリカクロマトグラフィーにより精製し、淡黄色の液体としてエステルを得た(9.2g、71%)。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ:3.72(2H,s)、3.75(3H,s)、7.24(1H,dd,J 1.4,5.0)、7.72(3H,t,J 8.4)、8.11(2H,d,J 8.2)、8.68(1H,d,J 5.0)。
【0143】
ステップ3:(±)−メチル{2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン−4−イル}アセテートハイドロクロライド
MeOH(100ml)中のメチル{2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン−4−イル}アセテート(6.2g、21mmol)、PtO2(200mg、0.9mmol)およびHCl溶液(ジオキサン中に4N、5.8ml、23mmol)の混合物を、Parr(登録商標)装置で、20psiで5時間水素添加した。触媒を、濾過により除去し、濾液を真空中で蒸発させ、白色の固体として所望のピペリジンを得た(7.1g、量)。1H NMR(400MHz,CD3OD)δ:1.58−1.72(1H,m)、1.75−1.85(1H,m)、2.08(1H,d,J 14.2)、2.19(1H,t,J 14.2)、2.28−2.38(1H,m)、2.45(2H,d,J 6.9)、3.24−3.32(1H,m)、3.51−3.57(1H,m)、3.67(3H,s)、4.46(1H,d,J 10.2)、7.72(2H,d,J 8.3)、7.79(2H,d,J 8.4)。
【0144】
遊離塩基を、NaHCO3(水性)での処理およびDCMへの抽出によって得た。有機抽出物を乾燥させ、濾過し、蒸発させた。
【0145】
中間体2:(+)−メチル{(2S,4R)−2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン−4−イル}アセテート
【0146】
【化35】
(±)−シスメチル4−(トリフルオロメチル)フェニルピペリジン−4−イル)アセテート(中間体1[遊離塩基]、32.6g、0.108mol)を、高温のイソプロパノール(100ml)に溶解し、本溶液を、L−(+)−マンデル酸(9g、0.054mol)の高温のイソプロパノール(170ml)溶液に加え、得られた溶液を、室温で終夜放置した。白色の結晶性固体を沈殿させ(17.55g、36%)、濾過した。母液を蒸発させ、残渣を炭酸ナトリウム(2M、100ml)で中和させ、ジクロロメタン(3×100ml)で抽出した。混合した抽出物を、鹹水で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、濾過し、蒸発させた。この抽出物を、高温のイソプロパノール(100ml)で溶解し、D−(−)−マンデル酸(9g、0.054mol)の高温のイソプロパノール(170ml)溶液に加え;即時の結晶化が起こり、混合物を2時間放置した。白色の結晶性固体を、濾過により単離し(21g、44%)、酢酸イソプロピルより再結晶化させ(250ml)、白色の結晶性物質として生成物を得た(19.8g、40%)(光学純度>99.5%)。本材料を、炭酸ナトリウムで中和し(2M、100ml)、ジクロロメタンで抽出した(3×100ml)。混合した抽出物を、鹹水で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、濾過し、蒸発させ、遊離塩基を得た:αD(c=1、MeOH)+23°。1H NMR(360MHz,CDCl3)δ:1.23(6H,d,J 6.9)、2.88(1H,qn,J 6.9)、4.27(2H,s)、7.15−7.21(4H,m)、7.71(2H,d,J 8.2)、8.10(2H,d,J 8.2)。
【0147】
中間体3
(±)メチル{(2R*,4S*)−1−[(1S*)−1−(4−ヨードフェニル)−4−メチルフェニル]−2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン−4−イル}アセテート
【0148】
【化36】
トルエン中の中間体1、4−ヨードベンズアルデヒドおよびベンゾトリアゾールの等モル量の混合物を攪拌し、ディーンスタークトラップ(Dean−Stark trap)でN2下、還流させながら18時間加熱した。RTまで冷却した後、溶媒を真空中で除去し、濃厚な油を得て、これをさらなる精製なしに使用した。1−ブロモ−3−メチルブタン(3モル当量)を、内部温度を約30℃に保つような速度で、N2下で乾燥Et2O中の活性化マグネシウム(3モル当量)の攪拌懸濁液に加えた。RTでの90分後、反応物を、氷槽で冷却し、塩化亜鉛のジエチルエーテル(1.0M、3モル当量)溶液を、内部温度が<10℃であるように加えた。冷却槽を取り除き、反応物をRTで1時間攪拌し、次に冷却槽で再冷却した。乾燥DCM中のベンゾトリアゾール付加物(上記から)溶液を、内部温度が<10℃であるようにカニューレを介して加えた。この温度で45分後、冷却槽を取り除き、混合物はRTで18時間攪拌した。反応物を、氷槽で冷却し、飽和NH4Cl水溶液でクエンチした。混合物を、DCMおよびH2Oで希釈し、次にHyflo(登録商標)を通して濾過した。層を分離し、水層をDCMで抽出した(×3)。混合した抽出物を乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、蒸発させた。残渣を、クロマトグラフィーにより精製し(シリカ、3−6%Et2O/イソヘキサン)、65%の収率で、表題化合物を得た。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm)0.58−0.69(1H,m)、0.81−0.83(6H,m)、0.85−0.96(1H,m)、1.13(1H,dq,J 4.5,12.8)、1.32(1H,q,J 12.4)、1.42(1H,七重線,J 6.6)、1.63(1H,br,d,J 13.2)、1.69−1.76(2H,m)、1.80(1H,qd,J 2.9,12.8)、1.87−1.98(1H,m)、1.13−1.26(2H,m)、2.33(1H,dt,J 2.4,11.9)、2.68(1H,td,J 3.0,11.4)、3.35(1H,dd,J 4.12,9.6)、3.62(3H,s)、3.7(1H,dd,J 2.6,10.9)、6.99(2H,d,J 8.3)、7.54(2H,d,J 7.8)、7.59−7.63(4H,m);M/Z(ES+)588(M+H)。
【0149】
実施例1
(±){(2S*,4R*)−1−{(1R*)−4−メチル−1−[6−(トリフルオロメチル)ピリジン−3−イル]ペント−4−エン−2−イン−1−イル}−2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン−4−イル}酢酸
【0150】
【化37】
ステップ1:6−(トリフルオロメチル)ニコチンアルデヒド
[6−(トリフルオロメチル)ピリジン−3−イル]メタノール(0.886g、5.0mmol)のDCM(20ml)溶液を、RTでDCM(20ml)中のデスマーチン(Dess−Martin)ペルヨージナン(2.334g、5.5mmol)の混合物に加えた。反応物を1.5時間攪拌し、次にEt2O(100ml)および4N NaOH(15ml)で希釈した。混合物を10分間攪拌し、次に分離させた。有機層を4N NaOH(15ml)次に鹹水で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、濾過し、蒸発させた。残渣を、クロマトグラフィーにより精製し(シリカ、15%EtOAc/ヘキサン)、アルデヒド(0.392g、45%)を得た。1H NMR(400MHz,CDCl3):δ 7.89(1H,d,J 8.1)、8.37(1H,d,J 8.1)、9.20(1H,s)、10.22(1H,s)。
【0151】
ステップ2:(±)メチル{(2S*,4R*)−1−{(1R*)−4−メチル−1−[6−(トリフルオロメチル)ピリジン−3−イル]ペント−4−エン−2−イン−1−イル}−2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン−4−イル}アセテート
【0152】
【化38】
水中(0.8ml)のステップ1のアルデヒド(0.422g、2.4mmol)、中間体1(0.242g、0.8mmol)、2−メチル−1−ブタン−3−イン(0.22ml、2.4mmol)およびAuBr3(35mg、0.08mmol)の混合物を、マイクロ波において70℃で1時間加熱した。反応混合物をSCXカートリッジに充填し、粗生成物をMeOH中の2N NH3で溶離した。溶離液を濃縮し、EtOAcで希釈し、鹹水で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、濾過し、蒸発させた。残渣を、クロマトグラフィーにより精製し(シリカ、5−10%EtOAc/ヘキサン)、エステル(0.270g、64%)を得た。1H NMR(400MHz,CDCl3):δ 1.26−1.32(1H,m)、1.44(1H,q,J 12.2)、1.73(1H,m)、1.92(1H,dq,J 13.0,2.9)、2.00−2.04(4H,m)、2.20−2.32(2H,m)、2.44−2.54(2H,m)、3.64(3H,s)、3.69(1H,dd,J 2.8,11.3)、4.65(1H,s)、5.34(1H,brs)、5.42(1H,s)、7.63(5H,m)、7.98(1H,m)、8.89(1H,s)。
【0153】
ステップ3:(±){(2S*,4R*)−1−{(1R*)−4−メチル−1−[6−(トリフルオロメチル)ピリジン−3−イル]ペント−4−エン−2−イン−1−イル}−2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン−4−イル}酢酸
ステップ2のエステル(0.146g、0.28mmol)およびLiOH(0.133g、5.6mmol)のTHF(3ml)および水(3ml)溶液を、RTで16時間攪拌した。反応混合物を、2N HClでpH6まで酸性化させ、EtOAcで抽出した。混合した抽出物を、鹹水で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、濾過し、蒸発させた。残渣を、クロマトグラフィーにより精製し(シリカ、1−2%MeOH/DCM)、酸(0.101g、71%)を得た。1H NMR(360MHz,CD3OD):δ 1.26−1.38(1H,m)、1.51(1H,q,J 12.1)、1.77(1H,m)、1.90−1.98(2H,m)、2.03(3H,s)、2.24(2H,d,J 6.9)、2.43−2.57(2H,m)、3.74(1H,dd,J 2.6,11.4)、4.70(1H,s)、5.39(1H,m)、5.46(1H,s)、7.70−7.72(4H,m)、7.80(1H,d,J 8.2)、8.17(1H,d,J 8.1)、8.82(1H,s)。
【0154】
実施例2−20
以下の化合物を、中間体2(実施例2−16)または中間体1(実施例17−19)および適切なアルデヒドを用いて、実施例1の手順で作成した。
【0155】
【表1】
【0156】
実施例21
{(2S,4R)−1−[(1R)−4−メチル−1−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルメチル)ペンチル]−2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン−4−イル}酢酸
【0157】
【化39】
ステップ1:メチル{(2S,4R)−1−[(1R)−4−メチル−1−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルメチル)ペンチル]−2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン−4−イル}アセテート
【0158】
【化40】
メチル{(2S,4R)−1−[(1S)−4−メチル−1−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルメチル)ペント−4−エン−2−イン−1−イル]−2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン−4−イル}アセテート(実施例20の調製からのエステル中間体、221mg、0.46mmol)のMeOH(10ml)溶液を、45psiで4時間ラネーニッケルにより(約500mg)水素添加した。触媒を濾過によって除去し、CH2Cl2で洗浄した。濾液を蒸発させ、残渣をクロマトグラフィーにより精製し(シリカ、25%Et2O/イソヘキサン)、油としてアルカン(154mg)を得た。1H NMR(360MHz,CDCl3):δ 0.62−0.70(1H,m)、0.81−1.03(10H,m)、1.08−1.95(12H,m)、2.17−2.31(4H,m)、2.95(1H,brd,J 12.0)、3.33(1H,t,J 11.6)、3.41(1H,t,J 11.5)、3.58(1H,d,J 9.0)、3.64(3H,s)、3.86(1H,brd,J 10.6)、3.92(1H,brd,J 11.0)、7.38−7.40(2H,d,m)、7.53(2H,d,J 8.1);M/Z(ES+)484(MH+)。
【0159】
ステップ2:{(2S,4R)−1−[(1R)−4−メチル−1−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルメチル)ペンチル]−2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン−4−イル}酢酸
【0160】
【化41】
メチル{(2S,4R)−1−[(1R)−4−メチル−1−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルメチル)ペンチル]−2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン−4−イル}アセテート(ステップ1、142mg、0.29mmol)およびNaOH水溶液(4N、220μl、0.88mmol)のMeOH(2ml)溶液を、60℃で3時間加熱した。RTまで冷却した後、MeOHを、真空中で除去し、残渣をCH2Cl2/H2Oの間で分配した。2N HCl(約0.5ml)を加えた。水層のpHを、約pH7に飽和NaHCO3水で調整した。水層をCH2Cl2で抽出した(×4)。混合した化合物を乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、蒸発させた。残渣を、クロマトグラフィーにより精製し(シリカ、4−8%MeOH/CH2Cl2)、無色の固体として酸を得た(113mg)。1H NMR(360MHz,CD3OD):δ 0.65−0.75(1H,m)、0.83−1.15(11H,m)、1.18−1.55(6H,m)、1.73−1.93(5H,m)、2.18−2.30(3H,m)、2.44(1H,brt,J 12)、3.11(1H,brd,J 12)、3.35(1H,d,J 11)、3.43(1H,d,J 12)、3.79(2H,d,J 6.7)、3.88(1H,d,J 8.0)、7.53(2H,d,J 7.6)、7.63(2H,d,J 8.2);M/Z(ES+)470(MH+)。
【0161】
実施例22
(±){(2R*,4S*)−1−[(1S*)−4−メチル−1−(4−ピリジン−4−イルフェニル)ペンチル]−2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン−4−イル}酢酸
【0162】
【化42】
ステップ1:(±)メチル{(2R*,4S*)−1−[(1S*)−4−メチル−1−(4−ピリジン−4−イルフェニル)ペンチル]−2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン−4−イル}アセテート
【0163】
【化43】
1,4−ジオキサン(1ml)中の中間体3(130mg、0.22mmol)、ピリジン−4−イルボロン酸(32mg、0.264mmol)、Pd(dppf)2Cl2(9mg、0.011mmol)および2N Na2CO3水溶液を、マイクロ波照射によって160℃まで10分間加熱した。次に、反応混合物をMeOHで希釈し、SCXカートリッジに充填し、これをMeOHで流し、次にMeOH中の2M NH3で溶離した。NH3溶離剤を減圧下で濃縮し、粗生成物を得て、これを分取逆相HPLCによって精製した。
【0164】
【表2】
【0165】
表題化合物を、TFA塩、26mg(18%)として得た(M/Z539(MII+))。
【0166】
ステップ2:(±){(2R*,4S*)−1−[(1S*)−4−メチル−1−(4−ピリジン−4−イルフェニル)ペンチル]−2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン−4−イル}酢酸
ステップ1からの生成物(26mg、0.048mmol)を、6M NaOH水溶液(0.05ml)を含むMeOH(1ml)中においてRTで18時間攪拌した。反応混合物を、減圧下で濃縮させ、残渣を分取逆相HPLCによって精製した。
【0167】
【表3】
【0168】
表題化合物を、TFA塩、22mg(72%)として得た(M/Z(ES+)525)。1H NMR(500MHz,CD3OD):δ 0.64−0.72(1H,m)、0.74−0.79(1H,m)、0.85−0.87(6H,m)、1.50(1H,七重線,J 6.6)、1.64(1H,q,J 12.4)、1.95(1H,q,J 12)、2.15−2.24(3H,m)、2.28−2.41(4H,m)、3.49(1H,dt,J 2.5,12.7)、3.72(1H,d,J 12.1)、4.06(1H,dd,J 2.5,12.4)、4.96(1H,dd,J 2.2,11.5)、7.56(2H,d,J 8.1)、7.88(2H,d,J 7.1)、7.96(2H,d,J 8.4)、8.02(2H,d,8.4)、8.25(2H,d,J 5.9)、8.84(2H,s)。
【0169】
実施例23
(±){(2R*,4S*)−1−[(1S*)−4−メチル−1−(4−ピリジン−3−イルフェニル)ペンチル]−2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン−4−イル}酢酸
【0170】
【化44】
表題化合物を、ピリジン−3−イルボロン酸を使用して実施例22と類似した方法で調製した(M/Z(ES−)525)。
【0171】
実施例24
(±){(2R*,4S*)−1−[(1S*)−4−メチル−1−(4−ピリジン−2−イルフェニル)ペンチル]−2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン−4−イル}酢酸
【0172】
【化45】
ステップ1:(±)メチル{(2R*,4S*)−1−[(1S*)−4−メチル−1−(4−ピリジン−2−イルフェニル)ペンチル]−2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン−4−イル}アセテート
【0173】
【化46】
THF(3.5ml)中のヨードベンゼン前駆体中間体3(587mg、1mmol)、6−フェニル−2−ピリジン−4−イル−1,2,6,2−ジオキサアザボロケン(536mg、2mmol)、トリ(o−トリル)ホスフィン(61mg、0.2mmol)、Pd(OAc)2(11mg、0.05mmol)、K2CO3(276mg、2mmol)およびCuI(76mg、0.4mmol)を、マイクロ波照射によって150℃まで20分間加熱した。反応混合物を、MeOHで希釈し、珪藻土濾過助剤のパッドを通して濾過した。濾液を減圧下で濃縮し、残渣をフラッシュクロマトグラフィーにより精製し(シリカゲル、イソヘキサン中に5−40%EtOAc)、表題化合物200mgを得た(37%)(M/Z(ES+)539(MII+))。
【0174】
ステップ2:(±){(2R*,4S*)−1−[(1S*)−4−メチル−1−(4−ピリジン−2−イルフェニル)ペンチル]−2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン−4−イル}酢酸
ステップ1からの生成物を(50mg、0.093mmol)を、6M NaOH水溶液(0.1ml、0.6mmol)を含むMeOH(1ml)中においてRTで18時間加水分解した。溶媒を減圧下で除去し、残渣を分取逆相HPLCによって精製した。
【0175】
【表4】
【0176】
表題化合物を、ビスTFA塩、35mg(52%)として得た(M/Z(ES+)525(MII+))。1H NMR(500MHz,CD3OD):δ 0.65−0.72(1H,m)、0.76−0.81(1H,m)、0.83−0.85(6H,m)、1.49(1H,七重線,J 6.5)、1.61(1H,q,J 12.3)、1.93(1H,q,J 12.4)、2.16−2.24(3H,m)、2.27−2.40(4H,m)、3.49(1H,dd,J 2.8,12.7)、3.75(1H,d,J 12.7)、4.04(1H,d,J 3.1,13)、5.96(1H,dd,J 2.7,12.1)、7.48(2H,d,J 8.4)、7.53−7.56(1H,m)、7.85(2H,d,J 7.8)、7.96−8.00(3H,m)、8.07(3H,d,J 8.1)、8.70(1H,d,J 5.0)。19F NMR(470MHz,CD3OD):δ −64(3F)、−77(6F)。
【0177】
実施例25および26
(±){(2S,4R)−1−{(S)−(2R)−テトラヒドロフラン−2−イル[4−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}−2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン−4−イル}酢酸および(±){(2S,4R)−1−{(S)−(2S)−テトラヒドロフラン−2−イル[4−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}−2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン−4−イル}酢酸
【0178】
【化47】
ステップ1:(±)メチル{(2S,4R)−1−{(S)−(2R)−テトラヒドロフラン−2−イル[4−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}−2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン−4−イル}アセテートおよび(±)メチル{(2S,4R)−1−{(S)−(2S)−テトラヒドロフラン−2−イル[4−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}−2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン−4−イル}アセテート
【0179】
【化48】
中間体1(3.0g、10mmol)、4−(トリフルオロメチル)ベンズアルデヒド(1.37ml、10mmol)およびベンゾトリアゾール(1.19g、10mmol)のトルエン(50ml)溶液を、ディーンおよびスターク(Dean & Stark)条件下で、還流させながら3時間加熱した。冷却した混合物を、真空中で蒸発させ、残渣をDCMに溶解した。フラスコを、削り屑状マグネシウム(magnesium turning)(240mg、10mmol)で充填し、真空下で攪拌しながら乾燥させた。一旦室温で、THF(5ml)を加え、引き続いて1−ブロモ−3,3,3−トリフルオロプロパン(1066μl、10mmol)を加えた。数滴を加え、引き続いて手により加熱することで、発熱反応を惹起させ、内部温度を約40℃に維持しながら、残る臭化物を加えた。一旦、添加が終了したならば、混合物を室温で30分間攪拌した。混合物を0℃まで冷却し、塩化亜鉛(tBuOMe中の1M懸濁液、10ml、10mmol)を、添加中に0℃未満に維持しながらゆっくりと加え、THFで洗浄した。一旦、添加が終了したならば、混合物を室温で1時間攪拌した。白色の懸濁液を、0℃まで冷却し、ベンゾトリアゾール付加物(上記を参照のこと、1.0mmol)を、DCM(5ml)溶液としてゆっくりと加えた。冷却を取り止め、空気をフラスコ内に入れ、混合物を室温で16時間攪拌した。混合物を、NH4Cl(半飽和)およびDCMで希釈し、混合物を、Celite(登録商標)ベッドを通して濾過した。相を分離させ、水層をDCMで抽出した。抽出物を乾燥させ(MgSO4)、真空下で蒸発させ、黄色のゴム状の固体を得て、これをフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、イソヘキサン中で25−40−60−80%DCM)で精製し、2種の別個のジアステレオマーとして所望の化合物を得た。
【0180】
高流速ジアステレオマー(87mg、16%)1H(CDCl3):δ 7.59(2H,d,J 8.1)、7.50(6H,t,J 9.1)、4.36−4.30(1H,m)、3.85(1H,d,J 8.6)、3.76−3.66(2H,m)、3.62(4H,d,J 4.6)、3.15(1H,d,J 11.7)、2.72(1H,t,J 11.0)、2.27−2.12(2H,m)、1.98(2H,dd,J 6.0,10.5)、1.89−1.77(3H,m)、1.70(1H,d,J 12.3)、1.33−1.13(3H,m)。M/Z(ES+)530(M+H)。
【0181】
低流速ジアステレオマー(43mg、8%)。1H NMR(CDCl3):δ 7.64−7.49(6H,m)、7.23(2H,s)、4.70−4.64(1H,m)、4.38(1H,d,J 8.9)、3.78(2H,t,J 6.4)、3.62(4H,t,J 8.0)、3.49(1H,t,J 8.5)、3.04(1H,d,J 11.3)、2.82(1H,t,J 10.7)、2.24−2.12(3H,m)、2.01(1H,s)、1.77−1.67(4H,m)、1.29−1.15(2H,m)。M/Z(ES+)530(M+H)。
【0182】
ステップ2:(±){(2S,4R)−1−{(S)−(2R)−テトラヒドロフラン−2−イル[4−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}−2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン−4−イル}酢酸および(±){(2S,4R)−1−{(S)−(2S)−テトラヒドロフラン−2−イル[4−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}−2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン−4−イル}酢酸
表題化合物を、実施例1のステップ3に記載の手順を用いてステップ1から得た高流速ジアステレオマーのエステルの加水分解によって調製し、白色の泡沫を得た(53mg、64%)。1H NMR(CD3OD):δ 7.65−7.51(8H,m)、4.45−4.39(1H,m)、3.94(1H,d,J 9.1)、3.69−3.61(3H,m)、3.22(1H,d,J 11.9)、2.79(1H,t,J 11.2)、2.24−2.12(2H,m)、2.05(1H,d,J 6.3)、1.90−1.74(4H,m)、1.54−1.44(1H,m)、1.39−1.29(2H,m)、1.25−1.17(1H,m)。
M/Z(ES−)516(M+H)。
【0183】
ステップ1から得た低流速ジアステレオマーのエステルを、実施例1のステップ3に記載の手順を使用して加水分解し、5%MeOH/DCM(7mg、18%)で溶離するシリカクロマトグラフィー後に、白色の泡沫を得た。1H NMR(CD3OD):δ 7.72−7.56(6H,m)、7.37(2H,d,J 8.1)、4.79−4.73(1H,m)、4.43(1H,d,J 9.2)、3.86−3.78(2H,m)、3.51(1H,t,J 11.5)、3.14(1H,d,J 11.4)、2.89(1H,t,J 11.0)、2.22−2.12(2H,m)、1.95(1H,s)、1.76(4H,t,J 12.3)、1.63(1H,t,J 5.6)、1.35−1.25(2H,m)、1.19(1H,dd,J 8.8,21.2)、1.03−0.97(1H,m)。M/Z(ES+)516(M+H)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体の治療上の処置における使用のための化合物に関する。特に、アルツハイマー病などの脳におけるβ−アミロイドペプチドの沈着を伴う疾患を治療するために有用、またはそのような疾患に関連した認知症の発症を予防もしくは遅らせるために有用なカルボキシ官能性1,2−二置換ピペリジンおよび関連の化合物を提供する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病(AD)は、認知症の最も一般的な形態である。この診断については、米国精神医学会(American Psychiatric Association)によって発行された精神障害の診断と統計の手引き(第4編)(the Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders、4th ed.)において記載されている(DSM−IV)。本疾患は、記憶および全般的な認知機能の進行性の喪失という臨床的特徴、ならびに患者の皮質領域および連合脳領域における細胞外タンパク様斑の沈着という病理学的特徴を有する神経変性障害である。これらの斑は、主にβ−アミロイドペプチド(Aβ)の繊維性凝集を含む。Aβは、酵素のβ−セクレターゼおよびγ−セクレターゼの関与する別々の細胞内タンパク質分解イベントを通して、アミロイド前駆体タンパク質(APP)から形成される。γ−セクレターゼによって媒介されたタンパク分解部位の変異性により、異なる鎖長のAβを生じさせる(例、Aβ(1−38)、Aβ(1−40)およびAβ(1−42))。また、Aβ(4−42)などのN末端切断が、おそらくβ−セクレターゼによって媒介されたタンパク分解部位の変異性の結果として脳で発見される。便宜上、本明細書では、「Aβ(1−40)」および「Aβ(1−42)」などの表現は、そのようなN末端切断型変異体(N−terminal truncated variant)を含む。細胞外液(extracellular medium)への分泌後、Aβは、最初は可溶性の凝集を形成し、この凝集は、ADにおける重要な神経毒性因子と広く信じられており(Gongら、PNAS、100(2003)、10417−22を参照のこと。)、最終的に、ADの病理学的特徴である不溶性の沈着および高密度な老人斑(neuritic plaque)となる。
【0003】
脳におけるAβ沈着を伴う他の痴呆性の状態は、脳アミロイド血管症、遺伝性アミロイド性脳出血(オランダ型)(hereditary cerebral hemorrhage with amyloidosis、Dutch−Type;HCHWA−D)、多発脳梗塞性認知症、ボクサー認知症およびダウン症候群を含む。
【0004】
斑形成過程における様々な介入が、ADに対する治療上の処置として提案されてきた(例えば、HardyおよびSelkoe、Science、297(2002)、353−6を参照のこと。)。提案されてきたそのような治療法は、例えば、β−またはγ−セクレターゼの阻害によってAβの産生を遮断または弱めるというものである。また、グリコゲン生成酵素キナーゼ3(GSK−3)の阻害の特にGSK−3αの阻害により、Aβの産生を遮断できることが報告されている(Phielら、Nature、423(2003)、435−9を参照のこと。)。
【0005】
別の提案された治療法は、Aβの凝集を遮断する化合物を投与し、Aβに選択的に結合する抗体を投与することを含む。
【0006】
別の提案された治療は、Aβ(1−42)の産生を選択的に弱めるためにγ−セクレターゼの作用を調節するということである。これは、Aβの短鎖のアイソフォームの優先的分泌を生じさせるが、自己凝集および斑形成の傾向を減少させ、このため、より容易に脳から除去され、および/またはより神経毒性が少ないと信じられている。この効果を示す化合物は、特定の非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)およびこれらの類似体を含む(WO01/78721およびUS2002/0128319およびWeggenら、Nature、414(2001)212−16;Moriharaら、J.Neurochem.、83(2002)、1009−12;ならびにTakahashiら、J.Biol.Chem.、278(2003)、18644−70を参照のこと。)。また、PPARαおよび/またはPPARδの活性を調節する化合物は、Aβ(1−42)を低下させる効果を有することが報告されている(WO02/100836)。一酸化窒素を放出することができるNSAID誘導体は、抗神経炎症効果の改善を示し、および/または動物モデルにおける大脳内のAβ沈着を減少することが報告されている(WO02/092072;Jantzenら、J.Neuroscience、22(2002)、226−54)。US2002/0015941は、容量性カルシウム流入活性を増強する薬剤がAβ(1−42)を低下させることができることを教えている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現在、特定のカルボキシ官能性1,2−二置換ピペリジンおよび関連の化合物がAβ(1−42)の産生を選択的に阻害する所望の特性を有することが発見されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩もしくは水和物を提供する
【0009】
【化3】
[式中、pは、0または1であり;
qは、0、1、2または3であり;
Vは、残る原子価がH、R2もしくはX−Z、またはそのいずれかの組合せに結合することを通して満たされる、結合または炭素原子を表し;
Wは、Wが窒素原子を表す場合、Vは炭素原子を表し、部分X−ZはWに結合するという条件で、残る原子価がH、R2もしくはX−Z、またはそのいずれかの組合せに結合することを通して満たされる、窒素原子または炭素原子を表し;
Xは、WがNを表す場合、Xは結合を表さないという条件で、結合またはC(R1)2またはCH2C(R1)2を表し;
Yは、結合またはCH2またはCH2CH2を表し;
Zは、CO2Hまたはテトラゾール環を表し;
各R1は、独立にHまたは6個までの炭素原子の非芳香族炭化水素基を表し;または2つのR1基は、C3−6脂環式基を完成させ;
R2は、6個までの炭素原子の非芳香族炭化水素基を表し;
R3およびR4は、それぞれHを表すか、またはVおよびWがそれぞれ炭素原子を表す場合、R3およびR4は、一緒になってCH2CH2架橋を表し;
各R5は、独立にハロゲン、0−3つのフッ素置換基を担持するC1−6アルキル、0−3つのフッ素置換基を担持するC1−6アルコキシ、またはC2−6アルケニルを表し;
R6は、Het−Aを表し(Aは、結合、CH2または1,4−フェニレンを表し、Hetは、ハロゲン、C1−4アルキル、CF3、C1−4アルコキシおよびC1−4アルコキシカルボニルから選択される3つまでの置換基を場合によって担持するか、またはそれ自体がハロゲン、C1−4アルキル、C1−4アルコキシもしくはC1−4アルコキシカルボニルで場合によって置換されたフェニル置換基を場合によって担持する10個までの環原子の複素環系を表す。);
R7は、CF3置換基を場合によって担持する10個までの炭素原子の炭化水素基を表す。]。
【0010】
式Iにおいて変化が複数回生じる場合、あらゆる特定の発生時に前記変化によって得られたアイデンティティは、あらゆる別の発生時に得られたアイデンティティとは無関係である。
【0011】
本明細書では、「炭化水素基」という表現は、単に炭素および水素原子から成る基を指す。特に明記しないかぎり、そのような基は、単独または示された炭素原子の最大数と一致したいずれかの組合せで、直鎖、分枝または環状構造を含む可能性があり、これらは芳香族を含む飽和または不飽和である可能性がある。
【0012】
本明細書では、「C1−Xアルキル」(Xは、1より大きい整数である。)という表現は、構成炭素原子数が1からxの範囲以内である、直鎖および分枝アルカリ基を指す。特定のアルキル基は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルおよびt−ブチルである。「C2−6アルケニル」、「ヒドロキシC1−6アルキル」「ヘテロアリールC1−6アルキル」「C2−6アルケニル」および「C1−6アルコキシ」などの派生の表現は、類似した様式で解釈されるものとする。
【0013】
「C3−6脂環式」という表現は、3から6個の環炭素原子を含む環状非芳香族炭酸水素基を指す。例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンテニル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルを含む。
【0014】
「複素環式」という用語は、少なくとも1個の環原子がN、OおよびSから選択される一環もしくは二環性系を指す。特に明記しないかぎり、本用語は、芳香族系を含む飽和および不飽和系の両方を含む。複素環基は、特に明記しないかぎり、環炭素または環窒素を通して結合される可能性がある。
【0015】
本明細書では、「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を含み、このうち、特に明記しないかぎり、フッ素および塩素が好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
薬物における使用のために、式Iの化合物は、薬学的に許容される塩の形態であることができる。しかし、別の塩は、式Iの化合物または薬学的に許容されるそれらの塩の調製に有用である可能性がある。本発明の化合物の適した薬学的に許容される塩は、例えば、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酢酸、安息香酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、炭酸またはリン酸などの薬学的に許容される酸の溶液と本発明による化合物の溶液を混合させることによって形成させることができる。代わりに、薬学的に許容される塩を、適切な塩基とカルボン酸基の中和によって形成させることができる。したがって、形成される薬学的に許容される塩の例は、ナトリウムまたはカリウム塩などのアルカリ金属塩;アンモニウム塩;カルシウムまたはマグネシウム塩類などのアルカリ土類金属塩;ならびにアミン塩(ピリジニウム塩を含む。)および四級アンモニウム塩などの適切な有機塩基で形成された塩を含む。
【0017】
光学的および幾何学的の両方で、式Iによって含まれるすべての異性体の形態が、単独で、またはあらゆる比率の混合物として、本発明の範囲内であることが理解されよう。したがって、次式の部分が、
【0018】
【化4】
V−Wによって完成された環に関してシスまたはトランス配置である可能性がある。さらに、シスまたはトランス配置の特定の化合物が2つの鏡像異性体の形態を有し、この両方とも、単一のホモキラル化合物、またはあらゆる比率のラセミ混合物であるかにかかわらず、本発明の範囲内である。あらゆる誤解を避けるために、(A)および(B)などの構造式は、
【0019】
【化5】
本明細書では、特に明記されていないかぎり、明白にアスタリスクでマークされた炭素原子の相対配置であるが、これらの絶対配置ではないと解釈しなければならない。
【0020】
式Iにおいて、Wが窒素原子を表す場合、Vは結合でなく、部分X−ZはWに結合しなければならないという条件で、Vは、結合または炭素原子を表し、Wは、窒素原子または炭素原子を表す。したがって、式Iは、VおよびWのアイデンティティによって、ピロリジン、ピペリジンおよびピペラジン誘導体を含む。好ましい実施形態において、Vは、炭素原子を表し、このため、ピペリジンまたはピペラジン環を完成する。最も好ましくは、VおよびWは、共に炭素原子を表し、このため、ピペリジン環を完成する。VおよびWの一方または両方が炭素原子を表す場合、前記炭素原子の残る原子価は、H、R2もしくはX−Z、またはそのあらゆる組合せへの結合を通して満たされる。
【0021】
部分X−Zは、VおよびWによって表される環位置を含むあらゆる利用可能な環位置で結合することができるが、Wが窒素を表すときは、X−ZはWに結合しなければならない。好ましくは、X−Zは、部分CHR6R7に結合している窒素原子に隣接したいずれかの位置にも結合していない。したがって、好ましいピペリジン環の場合に、X−Zは、3、4または5位、好ましくは3または4位、最も好ましくは4位に典型的に結合している。誤解を避けるために、ピペリジン環の窒素原子は、1位と考えられ、YおよびR4に結合した炭素原子は、2位と考えられる。
【0022】
Zは、CO2Hまたはテトラゾール環を表し、特に、Zは、CO2Hまたは1,2,3,4−テトラゾール−5−イルを表すが、好ましくはCO2Hを表す。
【0023】
基Xは、各R1が独立にHもしくは6個までの炭素原子の非芳香族炭化水素基を表すか;または2つのR1基がC3−6脂環式基(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンテニルまたはシクロペンチルなど)を完成させる、結合、C(R1)2またはCH2C(R1)2を表す。好ましくは、1つのR1基がHであり、別のものがHまたはC1−6アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピルもしくはブチルなど)である。Xに関する特定のアイデンティティは、Wが窒素原子を表す場合、Xは結合であることはできないという条件で、結合、CH2、CH(CH3)、CH2CH2、シクロペンタン−1,1−ジイル、およびシクロペント−3−エン−1,1−ジイルを含む。好ましくは、Xは、結合またはCH2を表し、最も好ましくは、XはCH2を表す。
【0024】
Yは、結合、CH2またはCH2CH2、好ましくは結合またはCH2、および最も好ましくは結合を表す。
【0025】
基R2は(存在すると)、VまたはWで表された炭素原子を含み、部分X−Zが結合している炭素原子を含む、環上のあらゆる利用可能な位置で結合することができる。1つの特定の実施形態において、pは0であり、R2は存在しない。別の特定の実施形態において、pは1であり、VおよびWはピペリジン環を完成し、R2および部分X−Zは、その4位に共に結合している。別の特定の実施形態において、pは1であり、VおよびWはピペリジン環を完成し、R2は3位に結合しており、部分X−Zは4位に結合している。別の特定の実施形態において、pは1であり、R3はHであり、VおよびWはピペリジン環を完成し、R2は6位に結合しており、部分X−Zは4位に結合している。R2の典型的なアイデンティティは、メチル、エチルまたはn−プロピルなどのC1−6アルキル、およびアリルなどのC2−6アルケニルを含む。
【0026】
R3およびR4がそれぞれHを表すか、またはVおよびWがそれぞれ炭素原子を表す場合、R3およびR4は、一緒になって−CH2CH2−を表し、したがって架橋された二環式構造を完成する。R3およびR4が一緒になって−CH2CH2−を表す場合、pは好ましくは0であり、Yは好ましくは結合である。特定の実施形態において、R3およびR4は、共にHを表す。
【0027】
式Iにおいて、qは、好ましくは1または2、最も好ましくは1である。各R5は、独立にハロゲン(特にF)、0−3つのフッ素置換基を担持するC1−6アルキル、0−3つのフッ素置換基を担持するC1−6アルコキシ、またはC2−6アルケニルを表す。1つのR5が存在する場合、非常に適切に(しかし、必ずしも必要でなく)4位に結合される。(R5)qに対する典型的なアイデンティティは、2−CF3、3−CF3,4−CF3、2,4−ジ(CF3)、2−F−4−CF3、4−OCF3、4−アリール、4−n−プロピル、4−イソプロピルおよび4−tert−ブチルを含む。一実施形態において、(R5)qは、4−CF3または4−n−プロピル、特に4−CF3を表す。
【0028】
R6は、Aが結合、CH2または1,4−フェニレンを表し、Hetが前記の定義のように場合によって置換された10個までの環原子の複素環系を表す、Het−Aを表す。典型的に、Hetは、第2の5または6員環に場合によって融合する5または6員複素環を表す。前記の第2の5または6員環は、炭素環または複素環である可能性があり、Hetが炭素環に融合した複素環を含む基を表す場合、残りの分子への結合は、これらの環のいずれかを介する可能性がある。Hetによって表される基により含まれるいずれの基も、芳香族を含む飽和または不飽和である可能性がある。Hetに関する定義の範囲内の複素環系の例は、ピリジン、キノリン、イソキノリン、フラン、ベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ピラゾール、トリアゾール、テトラヒドロピラン、テトラヒドロチオピラン、ピペリジンおよびテトラヒドロフランを含む。基Hetは、非置換であるか、または前記の定義のように置換されている可能性がある。好ましい置換基は、(存在する場合)CF3、C1−4アルキル(特にメチル)、C1−4アルコキシカルボニル(t−ブトキシカルボニルなど)フェニルおよびトリフルオロメチルフェニルを含む。
【0029】
Aが1,4−フェニレンを表す場合、Hetは、典型的にフェニルまたは置換されたフェニル置換基を担持していない単環系を表す。
【0030】
R6によって表される基の例は、3−ピリジル、6−トリフルオロメチル−3−ピリジル、2−フリル、5−(2−トリフルオロメチルフェニル)−2−フリル、2−チエニル、3−チエニル、ベンゾチオフェン−3−イル、3−キノリニル、ベンゾフラン−2−イル、6−キノリニル、1−フェニル−5−メチルピラゾール−4−イル、フラン−3−イル、4−(ピリジン−2−イル)フェニル、4−(ピラゾール−1−イル)フェニル、4−(1,2,4−トリアゾール−1−イル)フェニル、4−(チオフェン−2−イル)フェニル、テトラヒドロピラン−4−イル、(テトラヒドロチオピラン−4−イル)メチル、1−(t−ブトキシカルボニル)ピペリジン−4−イル、(テトラヒドロピラン−4−イル)メチル、4−(ピリジン−4−イル)フェニル、4−(ピリジン−3−イル)フェニルおよびテトラヒドロフラン−2−イルを含む。
【0031】
R7は、CF3置換基を場合によって担持する10個までの炭素原子の炭化水素基を表す。前記炭化水素基は、完全に飽和され得るか、あるいは1つまたは複数の二重もしくは三重結合またはその組合せを含むことができ、そしてフェニル環を含むことができる。典型的に、前記炭化水素基は、8個までの炭素原子(例えば、6個までの炭素原子)を含む。典型的な炭化水素基は、10個までの炭素原子(例えば、8個までの炭素原子)および特に合計で6個までの炭素原子のアルキル(特に分枝のアルキル)、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、フェニルおよびフェニルアルキルを含む。一実施形態において、R7は、非置換の単価水素基を表す。R7によって表される非置換の炭化水素基の例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、3−メチルブチル、2−エチルブチル、4−メチルペンチル、3,3−ジメチルブチル、3−メチルブテン−1−イル、3−メチルブト−3−エン−1−イニル、4−メチルペント−1−イニル、3,3−ジメチルブト−1−イニル、シクロヘキシル、フェニル、シクロプロピルメチル、シクロヘキシルエチニル、ベンジルおよび2−フェニルエチルを含む。
【0032】
代わりの実施形態において、R7はCF3置換基を担持する。R7によって表された置換の炭化水素基の例は、2,2,2−トリフルオロエチル、3,3,3−トリフルオロプロピル、4,4,4−トリフルオロブチル、1−メチル−3,3,3−トリフルオロプロピルおよび4−トリフルオロメチルフェニルを含む。
【0033】
本発明による化合物の第1のサブセットは、式IIの化合物ならびに薬学的に許容されるその塩および水和物から成る
【0034】
【化6】
(式中、p、R2、R5、R6およびR7は、同一の定義および前述のような好ましいアイデンティティを有する。)。
【0035】
本サブセットの特定の実施形態において、pは0であり、Yは結合である。
【0036】
本発明による化合物の第2のサブセットは、式IIIの化合物ならびに薬学的に許容されるその塩および水和物から成る
【0037】
【化7】
(式中、p、R2、Y、R5、R6およびR7は、同一の定義および前述のような好ましいアイデンティティを有する。)。
【0038】
本サブセットの範囲内で、Yは好ましくは結合であり、pは好ましくは0である。
【0039】
本発明による化合物の第3のサブセットは、式IVの化合物ならびに薬学的に許容されるその塩および水和物から成る
【0040】
【化8】
(式中、Raは、H、ハロゲンまたはCF3を表し;
R6およびR7は、同一の定義および前述のような好ましいアイデンティティを有する。)。
【0041】
ピペリジン環の2位に結合した置換フェニル基および4位に結合したCH2CO2H基は、ピペリジン環に関して有利に(しかし、必ずしも必要でなく)シス配列である。
【0042】
特定の実施形態において、RaはHを表す。
【0043】
本発明による特定の化合物は、本明細書に添付された実施例部分に記載されている。
【0044】
式Iの化合物を(式中、Zは、CO2Hである。)、典型的に対応するエステル(1)の加水分解によって得る(例えば、THF水溶液中のLiOHで還流することによって)
【0045】
【化9】
(Rは、メチルまたはエチルなどのC1−6アルキルを表し、p、q、V、W、X、Y、R2、R3、R4、R5、R6およびR7は、前述と同一の意味を有する。)。
【0046】
対応する化合物を(Zは、1H−テトラゾール−5−イルを表す。)、対応するニトリルにエステル(1)を変換し、引き続いて酸化トリブチルスズの存在下でトルエンを還流しながらアジドトリメチルシランで処理することによって得る。ニトリルへの変換を、トルエン中の塩化アンモニウム懸濁液にトリメチルアルミニウムを加え、次にエステル(1)を加え、混合物を還流し、固体の酒石酸ナトリウムカリウムで処理することによって実施することができる。
【0047】
化合物(1)を、R6R7CH−Lと化合物(2)の反応によって得ることができる
【0048】
【化10】
(Lは、ハロゲン化物(特に臭化物またはヨウ化物)、トシレート、メシレートまたはトリフレートなどの脱離基であり、R、p、q、V、W、X、Y、R2、R3、R4、R5、R6およびR7は、前述と同一の意味を有する。)。正常なアルキル化状態を使用することができる(例えば、炭酸カリウムなどの塩基の存在下においてDMF溶液中で加熱する。)。
【0049】
代わりに、化合物(2)を、アルデヒドまたはケトン官能基を含む基R6R7CH−の前駆体で還元的アルキル化にかけることができる。そのような場合、化合物(2)を、水の共沸除去と共に、酸触媒の存在下のトルエン中においてR6−CO−R7で還流し、得られた付加物を、ナトリウムトリアセトキシボロヒドリドを用いて還元することができる。R7がアルキン−1−イル基であるとき有用な、この経路の変形では、化合物(2)を、例えば、水中の70℃でのマイクロ波加熱を通して、金(III)臭化物の存在下で、R6−CHOおよびR7−Hと反応させる。
【0050】
別の変形において、化合物(2)、R6−CHOおよびベンゾトリアゾールを、水の共沸除去と共に、トルエン中で還流し、得られた付加物をR7−Zn−Halと反応させる(Halは、ハロゲン化物(好ましくは塩化物)を表し、R6およびR7は、前述と同一の意味を有する。)。反応は、低温(例えば10℃以下)でジクロロメタンなどの無水非プロトン溶媒中において適切に実施される。
【0051】
ピペリジン(2)を(VおよびWは、共に炭素原子であり、R3およびR4は、Hである。)、例えば、PtO2触媒に対するメタノールHCl中での、対応するピリジン(3)の水素化によって得る
【0052】
【化11】
(R、p、q、X、Y、R2およびR5は、前述と同一の意味を有する。)。
【0053】
ピリジン(3)を(Xは、結合であり、Yは、結合である。)、アリールボロン酸(5a)とクロロピリジン(4a)の結合によって得ることができる
【0054】
【化12】
(R、p、q、R2およびR5は、前述と同一の意味を有する。)。反応は、例えば、炭酸ナトリウムおよびPd(PPh3)4の存在下のジメトキシエタン水溶液中での、標準のスズキ(Suzuki)結合条件下で起こる。
【0055】
ピリジン(3)を(Xは、結合であり、Yは、CH2である。)、ベンジル亜鉛誘導体(5b)とクロロピリジン(4a)の結合によって得ることができる。反応を、(Ph3P)2NiCl2などのニッケル触媒の存在下のTHF中における0℃から周囲温度で実施することができる。
【0056】
ピリジン(3)を(Xは、結合であり、Yは、CH2CH2である。)、アルキン(5c)とクロロピリジン(4a)の結合、および引き続く水素化によって得ることができる。本結合を、例えば、マイクロ波加熱によりジオキサンおよびトリエチルアミンの混合物において、CuIとPd(Ph3)4などのPd(0)触媒の存在下で実施することができる。水素化は、ピリジン(3)のピペリジン(2)への変換と同様な条件下で起こり、実際にこのプロセスで好ましく混合させる。
【0057】
ピリジン(3)を(Xは、CH2である。)、前述のように(5a)、(5b)または(5c)でのクロロピリジン(4b)の合成、次にリチウムジイソプロピルアミドなどの強塩基の存在下で、CO(OR)2で生成物を処理することによって得ることができる(Rは、前述と同一の意味を有する。)。代わりに、クロロピリジン(4b)を、(5a)、(5b)または(5c)との反応の前に、CO(OR)2で処理することができる。
【0058】
式(2)のピペリジンを(式中、VおよびWは、共に炭素原子であり、R3およびR4は、Hであり、Xは、結合であり、pは、1であり、R2は、CO2R基と同一の環位置に結合している。)、R2−L(Lは、前述と同一の意味を有する。)と対応する化合物(pは、0である。)のアルキル化によって得る。本反応を、リチウムヘキサメチルジシラジド(HMDS)などの強塩基の存在下のTHF溶液中において実施できる。この処置の間、例えば、BOC誘導体としての、ピペリジン環の1位を保護することが好ましい。
【0059】
エステル(1)への代わりの経路は(VおよびWは、共に炭素原子であり、R3およびR4は、Hであり、pは、0であり、Xは、CH2であり、CH2CO2R基は、4位に結合している。)、(RO)2P(O)CH2CO2Rとピペリドン(6)の縮合、引き続いて得られたオレフィンの(7)の水素化を含む
【0060】
【化13】
(R、Y、q、R5、R6およびR7は、前述と同一の意味を有する。)。縮合は、NaHの存在下のTHF中において起こるが、水素化は、エタノール中のPd/C触媒に対して実施することができる。式(1)の対応するエステルを(式中、Xは、結合である。)、KHMDSおよびTf2NPh、次にPd(II)触媒の存在下におけるCOおよびROHによるケトン(6)の処理、引き続いて得られたテトラヒドロピリジン誘導体の水素化によって得ることができる。
【0061】
ケトン(6)を、ジヒドロピリドン(8)の還元によって得ることができる
【0062】
【化14】
(Y、q、R5、R6およびR7は、前述と同一の意味を有する。)。還元を、−78℃のTHF中でL−セレクトリド(L−Selectride)などのホウ化水素還元剤を使用して実施することができる。
【0063】
化合物(8)を、トランス−1−メトキシ−3−(トリメチルシリルオキシ)−1,3−ブタジエンと、R6R7CH−NH2とアルデイド(deyde)(9)の縮合から形成されたイミンとの間のディールスアルダー反応(Diels−Alder reaction)によって得ることができる
【0064】
【化15】
(Y、q、R5、R6およびR7は、前述と同一の意味を有する。)。付加環化を、In(III)トリフレートの存在下、周囲温度でアセトニトリル中において実施することができ、引き続いて重炭酸塩水溶液でクエンチする。
【0065】
代わりに、ピペリドン(6)を、トリメチル[(1−メチレンプロプ−2−エン−1−イル)オキシ]シランと上述したイミンを反応させ(例えば、不活性雰囲気下の周囲温度でのジクロロメタン中において)、次にフッ化テトラブチルアンモニウムを加えることによるワンポットプロセスにおいて得ることができる。
【0066】
ピペリジン(2)への代わり経路は(VおよびWは、共に炭素原子であり、R3およびR4は、Hであり、pは、0であり、Xは、CH2であり、CH2CO2R基は、4位に結合している。)、ジヒドロピリジン(8)に関する前述の様式におけるジヒドロピリドン(10)の合成
【0067】
【化16】
(Y、qおよびR5は、前述と同一の意味を有する。)、引き続いてベンジルオキシカルボニル保護基の除去(例えば、酸での処理によって)を含む。化合物(10)を、ベンジルクロロギ酸エステルおよび有機金属の誘導体(11)と4−メトキシピリジンのワンポット反応によって得ることができる(M1は、LiまたはMg−ハライドであり、Y、qおよびR5は、前述と同一の意味を有する。)。本反応は、THFなどの溶媒中において低温(例えば、−25℃)で起こる。
【0068】
ジヒドロピリジン(8)または(10)が関与する上記の経路において、Yは、好ましくは結合である。
【0069】
ジヒドロピリジン(8)または(10)が関与する上記の経路を、R2−Lでの化合物(8)または(10)(R2およびLは、前述と同一の意味を有する。)のアルキル化を通して、ピペリジン環の3位にR2を有する生成物を得るために適合させることができる。前記アルキル化は、従来の条件下で起こる(例えば、リチウムジイソプロピルアミドの存在下のTHF中において)。
【0070】
代わりに、前述の経路を、CuIの存在下におけるR2−Mg−ハライドでの化合物(8)または(10)の処理を通してピペリジン環の6位にR2基を有する生成物を得るために適合させることができる(R2は、前述と同一の意味を有する。)。反応を、低温で(例えば、−78℃から−10℃)THF中において実施することができる。
【0071】
さらなる代替において、前述の経路を、−CH2CO2R基がL−CH2CO2R(LおよびRは、前述と同一の意味を有する。)による化合物(8)または(10)のアルキル化を通してピペリジン環の3位に結合し、引き続いてCH2にケト基が還元した生成物を得るために適合させることができる。アルキル化は、通常の条件下で起こり、ケト基の還元は、1,2−エタンジチオールでの処理を通して容易に引き起こされ、ジチオケタルを形成し、引き続いてラネーニッケル(Raney nickel)で処理する。
【0072】
式(1)のピペリジンへの代わり経路は(式中、VおよびWは、共に炭素原子であり、R3およびR4は、共にHであり、Xは、結合であり、pは、0であり、CO2Rは、5位に結合している。)、ジエン(12)の環化、引き続いて得られた1,2,3,6−テトラヒドロピリジン誘導体の還元を含む
【0073】
【化17】
(R、Y、q、R5、R6およびR7は、前述と同一の意味を有する。)。環化は、Ru触媒の存在下で起こり、還元は、メタノール中のMgでの処理によって引き起こされる。ジエン(12)を、適切なブロモメタクリレートエステルでの二級アミン(13)のアルキル化によって得ることができ、アミン(13)を、R6R7CH−NH2でのアルデヒド(9)の縮合およびアリルトリブチルスタンナンでの処理によって得ることができる
【0074】
【化18】
(Y、q、R5、R6およびR7は、前述と同一の意味を有する。)。
【0075】
式(1)のピペリジンへの別の経路は(式中、VおよびWは、共に炭素原子であり、pは、0であり、R3およびR4は、共にHであり、Xは、結合であり、CO2Rは、4位に結合している。)、ビスエステル(14)のモノ脱炭酸(mono−decarboxylation)を含む
【0076】
【化19】
(R、Y、q、R5、R6およびR7は、前述と同一の意味を有する。)。反応は、DMSO中の塩化ナトリウムと、約160℃で加熱することによって実施することができる。その後、メタノール中のナトリウムメトキシドと生成物を還流させ、4位でのエピマー化、およびトランス異性体を代償にしたシス異性体での濃縮を引き起こす。ビスエステル(14)を、ジケトン(15)とR6R7CH−NH2の反応、
【0077】
【化20】
引き続いてワンポット処置におけるシアノ水素化ホウ素ナトリウムによる還元から得ることができる(R、Y、q、R5、R6およびR7は、前述と同一の意味を有する。)。第1のステップは、−78℃の三級アミンおよびTiCl4の存在下で、周囲温度に昇温させながら、ジメトキシエタン中で実施することができる。第2のステップは、室温で反応混合物にシアノ水素化ホウ素ナトリウムのメタノール溶液を加えることによって実施することができる。ジケトン(15)を、式(16)の化合物による適切なアリルマロネートジアルキルエステルのアルキル化
【0078】
【化21】
引き続いてアリル基のオゾン分解によって得ることができる(L、R、Y、qおよびR5は、前述と同一の意味を有する。)。アルキル化は、NaHの存在下でDMF中において実施することができる(例えば、周囲温度で)。オゾン分解は、−78℃で基質のジクロロメタン溶液を介してオゾンに富む酸素に通し、硫化ジメチルを加え、次に周囲温度で終夜攪拌することによって実施することができる。
【0079】
式(2)のピペリジンを(式中、R3およびR4は、−CH2CH2−ブリッジを完成し、Yは、結合である。)、ケトン(6)のエステル(1)への変換のために前述した方法による二環式ケトン(17)の合成
【0080】
【化22】
(qおよびR5は、前述と同一の意味を有する。)、引き続いて水素化による保護基4−メトキシベンジルの除去によって得ることができる。
【0081】
二環式ケトン(17)を、アセトンジカルボン酸と4−メトキシベンジルアミンの反応、次にケトアルデヒド(18)による原位置での生成物の処理によって得ることができる
【0082】
【化23】
(R5およびqは、前述と同一の意味を有する。)。
【0083】
式(1)のピペラジンへの好ましい経路は(式中、Vは、炭素原子であり、Wは、窒素原子である。)、L−X1−CO2Rによる化合物(19)のアルキル化を含む
【0084】
【化24】
(X1は、結合以外であるXであり、別のすべての変量は以前の定義の通りである。)。化合物(19)は、
【0085】
【化25】
化合物(1)への化合物(2)の変換、引き続いてトリチル基の除去(例えば、メタノールHClでの処理によって)に関する前述の方法を使用して化合物(20)から得ることができる。化合物(20)は、ピリジン(3)の合成、引き続いて水素化(化合物(3)の化合物(2)への変換の場合のように)、および標準的方法によるトリチル化に関する前述の様式における適切なピラジン誘導体と化合物(5a)、(5b)または(5c)の結合を通して得ることができる。
【0086】
式(1)のピロリジンへの好ましい経路は(式中、Vは、結合であり、pは、0であり、Xは、CH2を表す。)、(a)t−ブチルスルフィンアミドでアルデヒド(9)を縮合し、アリルMgBrと得られたイミンを反応させて、付加物(21a)を得るステップと;
【0087】
【化26】
(b)N−アルキル化(例えば、(2)から(1)への変換に関する前述のあらゆる方法による)により化合物(21b)を得るステップと;
(c)ルテニウム触媒(例えば、チャンI(Zhan I))の存在下におけるCH2=CH−CO2Rとの反応、引き続いてメタノールHClでの処理により化合物(22a)を得るステップと;
【0088】
【化27】
(d)1−ヒドキシメチルベンゾトリアゾールとの反応(例えば、モレキュラーシーブとベンゼンを還流させることで)により化合物(22b)を得るステップと;
(e)−78℃のTHF中におけるSmI2およびt−ブタノールでの処理による環化のステップとを含む。
【0089】
いくつかの上記の経路が式IVの化合物の合成に適していることは容易に理解できる。したがって、式IVの化合物のエステル前駆体への好ましい経路において、式(2a)のピペリジン、アルデヒドR6−CHOおよびベンゾトリアゾールを、水の共沸除去と共にトルエン中で還流させ、得られた付加物をR7−Zn−Halと反応させる
【0090】
【化28】
(Halは、ハロゲン化物(好ましくは塩化物)を表し、Ra、R、R6およびR7は、前述と同一の意味を有する。)。反応は、低温で(例えば、10℃未満で)ジクロロメタンなどの無水非プロトン溶媒中において適切に実施される。ピペリジン(2a)は、適切なボロン酸(5a)とピリジン(4b)の結合、以前に記載されたようなさらなる生成物の合成を通して得ることができる。同様の結果が、アルデヒドR7CHOおよびベンゾトリアゾールとピペリジン(2a)を反応させ、得られた付加物をR6−Zn−Halで処理することによって達成できることは容易に理解できる。第2のステップを、THFを含む溶媒中において実施すると、THFの関与する副反応が起こる可能性があり、R6が2−フリルを表す生成物を得る。
【0091】
式IVの化合物への別の好ましい経路において、式(2a)のピペリジン、アルデヒドR6−CHOおよび1−アルキンを、金(III)臭化物の存在下で(例えば、70℃で)、マイクロ波加熱にかけ、式IVの化合物を得る(式中、R7は、1−アルキニルである。)。必要に応じて、対応する化合物を(R7は、アルキルまたはアルケニルである。)、アルキニル誘導体の水素化によって得ることができる(例えば、Pd/C触媒に対する酢酸エチル中において)。
【0092】
式IVの化合物への第3の経路において、式(15)の適切なジケトンを(Y=結合)、式R6R7CH−NH2のアミンと反応させ、引き続いて化合物(14)の調製のために以前に記載されたように、シアノ水素化ホウ素ナトリウムで処理する。その後、モノ脱炭酸(以前に記載されたように)および同族体化(後述されるように)により、式IVの化合物を得る。
【0093】
式Iのカルボン酸を(式中、Xは、結合である。)、同族体化の標準的方法によって(例えば、塩化オキサリル;トリメチルシリルジアゾメタンおよびアセトニトリル;ROHおよび銀安息香酸塩による連続した処理;次に得られたエステルの加水分解)、対応する化合物(Xは、CH2である。)に変換することができる。対応する化合物(Xは、CH2である。)の同様な処理によって、化合物を得る(Xは、CH2CH2である。)。式(1)のエステルを(Xは、C(R1)2またはCH2C(R1)2であり、少なくとも1つのR1は、H以外である。)、標準的方法により対応する化合物(各R1は、Hである。)のアルキル化によって調製することができる。
【0094】
同様に、式Iによる特定の化合物を、有機合成の当業者に公知の結合生成または開裂の標準的技術によって式Iによる異なる化合物に変換することができる。
【0095】
これらが、これら自体が市販でない場合は、前述の合成スキームのための出発物質を、市販の材料の直接の化学修飾によって得ることができる。
【0096】
本発明による特定の化合物は、1つまたは複数のキラル中心の存在により、または分子の相対的な非対称性により光学異性体として存在することができる。そのような化合物を、ラセミ体で調製することができ、または個々の鏡像異性体を、エナンチオ特異的合成もしくは分割のいずれかによって調製することができる。新規な化合物を、例えば、分取HPLCなどの標準的技術、または光学的活性な酸(例えば、ジ−p−トルオイル−D−酒石酸および/または−ジ−p−トルオイル−L−酒石酸など)での塩生成、引き続いて遊離塩基の分別晶出および再生によるジアステレオマーペアの生成によって、これらの成分鏡像異性体(component enantiomer)に分割させることができる。また、新規な化合物を、ジアステレオマーエステルまたはアミドの生成、引き続いてクロマトグラフ分離およびキラル補助基の除去によって分割することができる。代わりに、式Iの化合物の調製におけるラセミ中間体を、上述した技術、および後のステップにおいて使用される所望の鏡像異性体によって分割することができる。例えば、ラセミピペリジン誘導体(2a)を、L−マンデル酸での塩生成を通して分割することができる。
【0097】
上記のいずれかの一連の合成の間、いずれかの関連の分子上の感受性または反応性基を保護することが必要および/または望ましいと思われる。このことは、例えば、Protective Groups in Organic Chemistry、ed.J.F.W.McOmie、Plenum Press、1973;およびT.W.Greene & P.G.M.Wuts、Protective Groups in Organic Synthesis、John Wiley & Sons、3rd ed、1999に記載の保護基などの従来の保護基により達成することができる。保護基は、当業者に公知の方法を使用して、都合よい後の過程で除去することができる。
【0098】
本発明の化合物は、Aβの1−42アイソフォームの生成を選択的に減少させるために、アミロイド前駆体タンパク質に対するγ−セクレターゼの作用を変更する有用な特性を有し、このため、Aβ(1−42)によって媒介される疾患(特に脳におけるβ−アミロイドの沈着に関わる疾患)に対する治療の開発における使用が見出されている。
【0099】
本発明のさらなる態様によれば、脳のβ−アミロイドの沈着を伴う疾患の治療または予防のための薬物製造における、上記の定義のような式Iによる化合物、または薬学的に許容されるその塩の使用を提供する。
【0100】
脳のAβの沈着を伴う疾患は、典型的にアルツハイマー病(AD)、脳アミロイド血管症、HCHWA−D、多発脳梗塞性痴呆、ボクサー認知症またはダウン症候群である(好ましくはADである。)。
【0101】
さらなる態様において、本発明は、アルツハイマー病、脳アミロイド血管症、HCHWA−D、多発脳梗塞性痴呆、ボクサー認知症またはダウン症候群に関連した認知症の発症を治療する、予防する、または遅延させるための薬物製造における、上記の定義のような式Iの化合物、または薬学的に許容されるその塩の使用を提供する。
【0102】
また、本発明は、上記の定義のような式Iの化合物、または薬学的に許容されるその塩の治療有効量を、それを必要とする患者に投与することを含む、脳のAβ沈着を伴う疾患を治療または予防する方法を提供する。
【0103】
さらなる態様において、本発明は、上記の定義のような式Iの化合物、または薬学的に許容されるその塩の治療有効量を、それを必要とする患者に投与することを含む、アルツハイマー病、脳アミロイド血管症、HCHWA−D、多発脳梗塞性痴呆、ボクサー認知症またはダウン症候群と関連した認知症の発症を治療する、予防するまたは遅延させる方法を提供する。
【0104】
式Iの化合物は、Aβ(1−40)などの短鎖のアイソフォームの産生を著しく低下させることなしに、Aβの(1−42)アイソフォームの産生を選択的に弱めるために、γ−セクレターゼの作用を調節する。これは、自己凝集し、不溶性の沈着を形成する傾向が少なく、より容易に脳から除去され、および/または神経毒性がより少ないAβの分泌を生じさせる。したがって、本発明のさらなる態様は、上記の定義のような式Iの化合物、または薬学的に許容されるその塩の治療有効量を、それを必要とする対象者に投与することを含む、脳のAβ沈着を遅延させ、抑制し、または予防する方法を提供する。
【0105】
式Iの化合物が、γ−セクレターゼの活性を抑制することとは対照的に、γ−セクレターゼの活性を調節するので、前述の治療上の有益性は、副作用[例えば、γ−セクレターゼによって制御されている別のシグナル伝達経路(例えば、ノッチ経路(Notch))の破壊から発生し得る副作用]が減少することであると信じられている。
【0106】
本発明の一実施形態において、式Iの化合物を、AD、脳アミロイド血管症、HCHWA−D、多発脳梗塞性痴呆、ボクサー認知症またはダウン症候群(好ましくはAD)を患う患者に投与する。
【0107】
本発明の代替の実施形態において、式Iの化合物を、軽度の認知障害または加齢性の認知機能低下を患う患者に投与する。そのような治療の良好な転帰は、ADの発症の予防または遅延である。加齢性の認知機能低下および軽度の認知障害(MCI)は、記憶障害が存在するが、認知症の別の診断基準が存在しない状態である(Santacruz and Swagerty、American Family Physician、63(2001)、703−13)。(また、「The ICD−10 Classification of Mental and Behavioural Disorders」、Geneva:World Health Organisation、1992、64−5を参照のこと)。本明細書では、「加齢性の認知機能低下」は、記憶および学習;注意および集中;思考;言語;ならびに視空間機能のうち少なくとも1つにおいて少なくとも6カ月の期間の低下、さらに1つ以上の標準偏差のスコアが、標準化された神経心理学テスト(例えば、MMSE)で基準以下であることを意味する。特に、記憶における進行性の低下が見られる可能性がある。MCIのより重度の状態において、記憶障害の程度は、患者の年齢に対して正常と考えられる範囲外であるが、ADは存在していない。MCIおよび軽度ADの鑑別診断について、Petersenら、Arch.Neurol.、56(1999)、303−8に記載されている。MCIの鑑別診断に関するさらなる情報は、Knopmanら、Mayo Clinic Proceedings、78(2003)、1290−1308によって提供されている。老齢の対象者に関する試験において、Tuokkoら(Arch,Neurol.、60(2003)577−82)は、発症時にMCIを呈する対象者では、5年以内に認知症を発症するリスクが3倍高いことを発見した。
【0108】
Grundmanら(J.Nol.Neurosci.、19(2002)、23−28)は、MCI患者におけるベースラインの低い海馬容量は、その後のADにおける予後指標であることを報告している。同様に、Andreasenら(Arta Neurol.Scand、107(2003)47−51)は、総タウの高CSF濃度、リン酸−タウの高CSF濃度およびAβ42の低CSF濃度がMCIからADへの進行のリスク増加にすべて関連していることを報告している。
【0109】
本実施形態の範囲内で、式Iの化合物を、記憶機能障害を患うが、認知症の症状を呈してない患者に有利に投与する。そのような記憶機能障害は、典型的に、脳卒中、または脳下垂体機能障害によって引き起こされる代謝異常などの全身または脳疾患に起因していない。そのような患者は、特に55歳以上の人々、特に60歳以上の人々、および好ましくは65歳以上の人々である可能性がある。そのような患者は、彼らの年齢に対して成長ホルモン分泌のパターンおよびレベルが正常である可能性がある。しかし、そのような患者は、アルツハイマー病を発症する1つまたは複数のさらなる危険因子を有する可能性がある。そのような因子は、疾患の家族歴;疾患に対する遺伝的素因;血清コレステロール高値;および成人発症型糖尿病を含む。
【0110】
本発明の特定の実施形態において、式Iの化合物を、疾患の家族歴;疾患に対する遺伝的素因;血清コレステロール高値;成人発症型糖尿病;高ベースライン海馬容量;総タウの高CSF濃度、リン酸−タウの高CSF濃度およびAβ(1−42)の低CSF濃度から選択されるADを発症するための1つまたは複数の危険因子をさらに有する加齢性の認知機能低下またはMCIを患う患者に投与する。
【0111】
遺伝的素因(特に、早期発症ADへの)は、APP、プレセニリン−1およびプレセニリン−2遺伝子などの1つまたは複数の遺伝子数における点変異に起因する可能性がある。また、アポリポタンパク質E遺伝子のε4アイソフォームがホモ接合である対象者は、ADを発症するリスクが高い。
【0112】
認知機能低下または障害の患者の程度は、本発明に従った治療コースの前、間および/または後に定期的間隔で有利に評価され、その中の変化(例えば、認知機能低下の減速または停止)を検出することができる。年齢および教育に関して調整された基準による簡易精神状態検査(Mini−Mental State Examination;MMSE)などの様々な神経心理検査が、この目的のために当技術分野において公知である(Folsteinら、J.Psych.Res.、12(1975)、196−198、Anthonyら、Psychological Med.、12(1982)、397−408;Cockrellら、Psychopharmacology、24(1988)、689−692;Crumら、J.Am.Med.Assoc’n.18(1993)、2386−2391)。MMSEは、成人における認知状態についての短時間の定量的測定である。これは、特定の時点での認知機能低下または障害の重症度を推定し、経時的な個々の認知変化の経過を追跡し、治療に対する個々の反応を記録するために、認知機能低下または障害をスクリーニングするために使用することができる。別の適切な試験は、アルツハイマー病評価尺度(Alzheimer Disease Assessment Scale;ADAS)の特にこの認知要素(ADSA−cog)である(Rosenら、Am.J.Psychiatry、141(1984)、1356−64を参照のこと)。
【0113】
式Iの化合物は、1つまたは複数の式Iの化合物および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物の形態で、典型的に使用される。したがって、さらなる態様において、本発明は、上記の定義のような式Iの化合物、または薬学的に許容されるその塩、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。好ましくは、これらの組成は、経口、非経口、鼻腔内、舌下もしくは直腸投与、または吸入もしくはガス注入による投与のための、錠剤、ピル、カプセル、粉末、顆粒、無菌の非経口溶液または懸濁液、定量エロゾールまたは液体スプレー、点滴剤、アンプル、経皮パッチ、自動注入装置または坐剤などの単位剤形である。典型的に、主要な活性成分を、例えば、従来の錠剤化成分(例えば、コーンスターチ、ラクトース、スクロース、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウムおよび第二リン酸カルシウム)、またはゴム、分散剤、懸濁化剤、界面活性剤(例えば、ソルビタンモノオレエートおよびポリエチレングリコール)、および別の製薬希釈剤(例えば、水)と混合し、本発明の化合物または薬学的に許容されるその塩を含む均一な調合前組成を形成させる。均一としてこれらの調合前組成を指すとき、本組成を等しく有効な単位剤形(例えば、錠剤、ピルおよびカプセル)に容易に細分することができるように、活性成分が本組成を通して均一に分散されていることを意味する。この調合前組成を、次に、本発明の活性成分の0.1から約500mg含む前述のタイプの単位剤形に細分する。典型的な単位剤形は、活性成分の1から100mg(例えば、1、2、5、10、25、50または100mg)を含む。組成の錠剤またはピルを、持続性作用の利点をもたらす剤形を提供するために、被覆またはさもなければ配合することができる。例えば、錠剤またはピルは、内側および外側投薬成分を含むことができ、外側投薬成分は内側投薬成分に対するエンベロープの形態である。この2つの成分は、腸溶層によって分離され、この層は、胃における分解に抵抗し、内側の成分が無傷で十二指腸へ通過または放出を遅らせることを可能にする。様々な材料を、そのような腸溶層または被覆のために使用することができ、そのような材料は、多くのポリマー酸およびセラック、セチルアルコールおよび酢酸セルロースなどの材料とポリマー酸の混合物を含む。
【0114】
本発明において有用な組成を、経口投与または注射用に組み込むことができる液体形態は、水溶液、液体またはゲル充填カプセル、適切に風味をつけたシロップ、水性または油性懸濁液、および綿実油、胡麻油、やし油または落花生油などの食用油で風味をつけた乳濁液、ならびにエリキシル剤および同様の製薬媒体を含む。水性懸濁液のための適切な分散剤または懸濁化剤は、トラガカントゴム、アラビアゴム、アルギン酸塩、デキストラン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(ビニルピロリドン)またはゼラチンなどの合成および天然ゴムを含む。
【0115】
アルツハイマー病を治療または予防するための適切な用量レベルは、活性化合物の、1日あたり約0.01から250mg/kg、好ましくは1日あたり約0.01から100mg/kg、より好ましくは1日あたり約0.05から50mg/kg体重である。本化合物を、1日あたり1から4回の投与計画で投与することができる。しかし、場合によっては、これらの範囲以外の投与量を使用してもよい。
【0116】
式Iの化合物を、ADまたはその症状の治療または予防に有用であることが知られている、1種または複数のさらなる化合物と組み合わせて投与することができる。したがって、そのようなさらなる化合物は、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤(例えば、ドネペジルおよびガランタミン)、NMDAアンタゴニスト(例えば、メマンチン)またはPDE4阻害剤(例えば、Ariflo(商標)およびWO03/018579、WO01/46151、WO02/074726およびWO02/098878において開示された化合物クラス)などの認知力を高める薬物を含む。また、そのようなさらなる化合物は、スタチン(例えば、シンバスタチン)などのコレステロール降下剤を含む。そのようなさらなる化合物は、同様に、Aβの分泌を阻害する化合物(γ−セクレターゼ阻害剤、β−セクレターゼ阻害剤およびGSK−3α阻害剤など)、Aβの凝集を阻害する化合物、およびAβに選択的に結合する抗体などの脳におけるAβの産生または処理を変更することが知られている化合物を含む(「アミロイド調節剤」)。また、そのようなさらなる化合物は、WO2004/110443で開示されているような成長ホルモン分泌促進物質を含む。
【0117】
本発明のこの実施形態において、アミロイド調節剤は、Aβの分泌を阻害する化合物、例えば、γ−セクレターゼ阻害剤(例えば、WO01/90084、WO02/30912、WO01/70677、WO03/013506、WO02/36555、WO03/093252、WO03/093264、WO03/093251、WO03/093253、WO2004/039800、WO2004/039370、WO2005/030731、WO2005/014553、WO2004/089911、WO02/081435、WO02/081433、WO03/018543、WO2004/031137、WO2004/031139、WO2004/031138、WO2004/101538、WO2004/101539およびW02/47671において開示されたγ−セクレターゼ阻害剤など)もしくはβ−セクレターゼ阻害剤(例えば、WO03/037325、WO03/030886、WO03/006013、WO03/006021、WO03/006423、WO03/006453、WO02/002122、WO01/70672、WO02/02505、WO02/02506、WO02/02512、WO02/02520、WO02/098849およびWO02/100820において開示されたβ−セクレターゼ阻害剤など)、またはAβの生成または放出を阻害する他のいずれかの化合物(例えば、WO98/28268、WO02/47671、WO99/67221、WO01/34639、WO01/34571、WO00/07995、WO00/38618、WO01/92235、WO01/77086、WO01/74784、WO01/74796、WO01/74783、WO01/60826、WO01/19797、WO01/27108、WO01/27091、WO00/50391、WO02/057252、US2002/0025955およびUS2002/0022621において開示される化合物など)、さらにGSK−3阻害剤の特にGSK−3α阻害剤(Phielら、Nature、423(2003)、435−9で開示された例えば、リチウムなど)である可能性がある。
【0118】
本実施形態の範囲内で、アミロイド調節剤は、有利にはγ−セクレターゼ阻害剤であり、この好ましい例は、式XIの化合物または薬学的に許容されるその塩を含む
【0119】
【化29】
(式中、m、Z、R1b、R1c、Ar1およびAr2は、WO03/018543において定義の通りである。)。
【0120】
そのような化合物は、WO03/018543に記載のように調製することができる。好ましい例は、式XIaによって定義された化合物および薬学的に許容されるその塩を含む
【0121】
【化30】
(式中、mは、0または1であり、Xは、ClまたはCF3であり、Yは、OH、OC1−6アルキル、NH2またはNHC1−6アルキルである。)。特定の例は、mが1であり、YがOHである化合物(またはそのナトリウム塩)およびmが0であり、YがNH2またはNHC1−6アルキルである化合物を含む。
【0122】
本発明のこの実施形態に使用するためのγ−セクレターゼ阻害剤の別の好ましいクラスは、式XIIによって定義されたγ−セクレターゼ阻害剤クラスまたは薬学的に許容されるその塩である
【0123】
【化31】
(式中、XおよびRは、WO03/093252の定義の通りである。)。
【0124】
Xは、非常に適切に5−置換−チアゾール−2−イル、5−置換−4−メチルチアゾール−2−イル、5−置換−1−メチルチアゾール−3−イル、1−置換−イミダゾール−4−イルまたは1−置換−1,2,4−チアゾール−3−イルである。好ましくは、Rは、「ハロ」がフルオロまたはクロロを指す、フェニル、モノハロフェニル、ジハロフェニル、トリハロフェニル、シアノフェニル、メチルフェニル、メトキシフェニル、トリフルオロメチルフェニル、トリフルオロメトキシフェニル、ピリジル、モノハロピリジルおよびトリフルオロメチルピリジルなどの場合によって置換されたフェニルまたはヘテロアリールを表す。R−X−の特に好ましいアイデンティティは、5−(4−フルオロフェニル)−1−メチルピラゾール−3−イル、5−(4−クロロフェニル)−1−メチルピラゾール−3−イルおよび1−(4−フルオロフェニル)イミダゾール−4−イルを含む。そのような化合物を、WO03/093252に開示の方法によって調製することができる。
【0125】
代わりに、アミロイド調整剤は、Aβの凝集を阻害する化合物であることができる。適切な例は、クリオキノールなどのキレート剤(GourasおよびBeal、Neuron、30(2001)、641−2)およびWO99/16741に開示の化合物、特にDP−109として知られる化合物(Kalendarevら、J.Pharm.Biomed.Anal.、24(2001)、967−75)を含む。本発明の使用に適したAβ凝集の別の阻害剤は、WO96/28471、WO98/08868、WO00/052048(Apan(商標)(プリーシス(Praecis))として知られる化合物など);WO00/064420、WO03/017994、WO99/59571およびAlzhemed(商標)(ニューロケム(Neurochem))として知られる化合物;WO00/149281およびPTI−777およびPTI−00703として知られる組成(プロテオテク(ProteoTech));WO96/39834、WO01/83425、WO01/55093、WO00/76988、WO00/76987、WO00/76969、WO00/76489、WO97/26919、WO97/16194およびWO97/16191を含む。
【0126】
代わりに、アミロイド調節剤は、選択的にAβに結合する抗体である可能性がある。前記抗体は、ポリクローナルまたはモノクローナルであり得るが、好ましくはモノクローナルであり、好ましくはヒトまたはヒト化抗体である。好ましくは、抗体は、WO03/016466、WO03/016467、WO03/015691およびWO01/62801に記載のように生体液から可溶性Aβを隔離することができる。適切な抗体は、ヒト化抗体226(WO01/62801に記載)およびWO03/016466に記載のその修正版を含む。
【0127】
本明細書では、「組み合わせて」という表現は、式Iの化合物とさらなる化合物の両方の治療有効量を、対象者に投与するが、獲得される様式に何も制限を設けないことを必要とする。したがって、2種を、対象者に対する同時投与のために単一剤形に混合するか、または対象者に対する同時または連続投与のために別々の剤形で提供することができる。連続投与は、時間を近づけるか、または時間を離すことができる(例えば、1種を朝に投与し、別の種を夕方に投与する。)。別々の種を、同一の頻度または異なる頻度で投与することができる(例えば、1種を1日1回、および別の種を1日2回または複数回)。別々の種を、同一の経路または異なる経路によって投与することができる(例えば、可能ならば、経口経路が両方の種とも好ましいが、1種を経口的におよび別の種を非経口的に)。さらなる化合物が抗体であるとき、典型的に、非経口的におよび式Iの化合物と別に投与される。
【0128】
さらなる態様において、本発明は、脳におけるβ−アミロイドの沈着を伴う疾患の治療または予防に使用するための式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩と、式XI(a)の化合物または薬学的に許容されるその塩との組合せを提供する。前記の使用は、そのような治療または予防を必要とする患者へのそれぞれの化合物の同時または別々の投与を含む。
【0129】
さらなる態様において、本発明は、薬学的に許容される担体に、式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩と、式XI(a)の化合物または薬学的に許容されるその塩とを含む医薬組成物を提供する。好ましくは、医薬組成物は、錠剤またはカプセルなどの経口投与に適した単位用量形態である。
【0130】
実施例
Aβ(1−42)の産生を選択的に阻害する式Iの化合物の能力を、以下のアッセイを使用して測定した。
【0131】
細胞ベースのγ−セクレターゼアッセイ
直接γ−セクレターゼ基質SPA4CTを過剰発現しているヒトSH−SY5Y神経芽細胞腫細胞を、プレーティングの前に酪酸ナトリウム(10mM)で4時間誘発した。細胞を、35,000細胞/ウェル/100μlで、フェノールレッドフリーのMEM/10%FBS、50mM HEPES、1%グルタミン入りの96ウェルプレートに蒔き、37℃、5%CO2で2時間インキュベートした。
【0132】
試験のために、化合物をMe2SOに希釈し、10ポイント用量反応曲線を得た。典型的に、Me2SO中のこれら希釈化合物10μlを、さらに182μlの希釈緩衝液(フェノールレッドフリーのMEM/10%FBS、50mM HEPES、1%グルタミン)に希釈し、各希釈物10μlを、96ウェルプレート中の細胞に加えた(0.5%の最終Me2SO濃度を得た。)。適切な媒体および阻害剤の制御が、アッセイのウィンドウを測定するために使用された。
【0133】
37℃での終夜のインキュベーション後、5%CO2、10μlおよび50μlの培地を、それぞれAβ(40)およびAβ(42)ペプチドの検出のために新しいコスタ(Costar)丸底96ウェルプレートに移した。40μlのオリゲネス(Origen)緩衝液(PBS、2%BSA、0.2%ツウィーン(Tween)20)を、Aβ(40)のウェルに加え、引き続いて25μlのそれぞれの抗体予備混合物を以下のウェルに加えた。
【0134】
Aβ(40)予備混合物:オリゲネス緩衝液で希釈した1μg/mlのルテニル化(ruthenylated)G2−10抗体、4μg/mlのビオチン化4G8抗体
Aβ(42)予備混合物:オリゲネス緩衝液で希釈した0.5μg/mlのルテニル化G2−11抗体、4μg/mlのビオチン化4G8抗体
(ビオチン化4G8抗体は、シグネットパソロジー社(Signet Pathology Ltd)より提供され、G2−10およびG2−11抗体は、ケミコン(Chemicon)により提供された。)
4℃での振盪機におけるアッセイプレートの終夜のインキュベーション後、オリゲネスM8分析器(イゲン社(Igen Inc.))を、製造者の説明書に従って調整した。ストレプトアビジン磁気ビーズ(ダイナル(Dynal))予備混合物(オリゲネス緩衝液中に400μg/mlのストレプトアビジンビーズ/ml)25μlを、アッセイプレートに加え、振盪機上で15分間インキュベートした。150μlのオリゲネス緩衝液を、各ウェルに加え、プレートを製造者の説明書に従ってオリゲネスM8分析器により読み取った。
【0135】
製造者の説明書に従って、細胞生存度を、ホルマザンへのMTS(オーエン試薬(Owen’s reagent)のバイオ還元を利用した比色細胞増殖アッセイ(CellTiter 96(商標)AQアッセイ、プロメガ(Promega))によって、Aβアッセイの培地の除去後に、対応する細胞において測定した。簡単に述べると、10xMTS/PES 5μlを、インキュベーターに戻す前に、残る培地50μlに加えた。光学濃度を、約4時間後に495nmで読み取った。
【0136】
Aβ(40)およびAβ(42)の阻害のためのLD50およびIC50値を、適切なソフトウェアを使用して(例えば、エクセルフィット)、非線形回帰フィット分析(fit analysis)によって算出した。総シグナルおよびバックグラウンドを、対応するMe2SOおよび阻害剤の制御によって定義した。
【0137】
以下の実施例に記載の化合物は、A(1−42)阻害に関してすべてIC50値を示した。これは、A(1−40)阻害に関する対応するIC50値より少なくとも2倍低く、典型的に少なくとも5倍低く、好ましい場合では、少なくとも50倍低かった。
【0138】
中間体1:(±)−メチル{2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン−4−イル}アセテートハイドロクロライド
【0139】
【化32】
ステップ1:4−メチル−2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン
【0140】
【化33】
DME(40ml)およびNa2CO3水溶液(2M、40ml)中の2−クロロ−4−メチルピリジン(1.9ml、21.6mmol)と4−(トリフルオロメチル)ベンゼンボロン酸(5.0g、26mmol)の混合物を、脱気した(Firestone(登録商標)バルブ×3)。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(1.15g、1.0mmol、5mol%)を加え、さらなる脱気後(Firestone(登録商標)バルブ×3)、混合物を、還流させながら16時間加熱した。反応物を、室温まで冷却し、H2O(100ml)およびEtOAc(150ml)で希釈した。混合物を、Celite(登録商標)パッドを通して濾過し、EtOAcで洗浄した。相を分離させ、水層をEtOAc(200ml)で抽出した。混合した抽出物を、H2O(100ml)および鹹水(×1)で洗浄し、次に乾燥させ(MgSO4)、濾過し、蒸発させた。残渣を、10%EtOAc/イソヘキサンで溶離するシリカクロマトグラフィーにより精製し、白色の固体としてエステルを得た(3.5g、68%)。1H NMR(360MHz,CDCl3)δ:2.44(3H,s)、7.13(2H,d,J 5.0)、7.58(1H,s)、7.72(2H,d,J 8.2)、8.09(2H,d,J 8.2)、8.57(1H,d,J 5.0)。
【0141】
ステップ2:メチル{2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン−4−イル}アセテート
【0142】
【化34】
LDA溶液(THF/ヘプタン/エチルベンゼン中に2M、44ml、88mmol)を、N2下で、内部温度が<−70℃を維持するように、4−メチル−2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン(10.5g、44mmol)の攪拌された乾燥THF(300ml)溶液に1滴ずつ加えた。この温度で1時間後、炭酸ジメチル(8.9ml、106mmol)を加えた。30分後、冷却槽を除去した。内部の温度が−20℃に達したとき、反応物を、−10℃の冷浴へ移し、ゆっくりと0℃まで昇温させた。0℃で1時間後、反応を、NH4Cl水溶液(半飽和、100ml)でクエンチした。反応混合物を、真空中で濃縮した。残渣を、H2O(200ml)で希釈し、EtOAcで抽出した(2×200ml)。混合した抽出物を、鹹水で洗浄し(×1)、乾燥させ(MgSO4)、濾過し、蒸発させた。残渣を、10−30%EtOAc/イソヘキサンで溶離するシリカクロマトグラフィーにより精製し、淡黄色の液体としてエステルを得た(9.2g、71%)。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ:3.72(2H,s)、3.75(3H,s)、7.24(1H,dd,J 1.4,5.0)、7.72(3H,t,J 8.4)、8.11(2H,d,J 8.2)、8.68(1H,d,J 5.0)。
【0143】
ステップ3:(±)−メチル{2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン−4−イル}アセテートハイドロクロライド
MeOH(100ml)中のメチル{2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン−4−イル}アセテート(6.2g、21mmol)、PtO2(200mg、0.9mmol)およびHCl溶液(ジオキサン中に4N、5.8ml、23mmol)の混合物を、Parr(登録商標)装置で、20psiで5時間水素添加した。触媒を、濾過により除去し、濾液を真空中で蒸発させ、白色の固体として所望のピペリジンを得た(7.1g、量)。1H NMR(400MHz,CD3OD)δ:1.58−1.72(1H,m)、1.75−1.85(1H,m)、2.08(1H,d,J 14.2)、2.19(1H,t,J 14.2)、2.28−2.38(1H,m)、2.45(2H,d,J 6.9)、3.24−3.32(1H,m)、3.51−3.57(1H,m)、3.67(3H,s)、4.46(1H,d,J 10.2)、7.72(2H,d,J 8.3)、7.79(2H,d,J 8.4)。
【0144】
遊離塩基を、NaHCO3(水性)での処理およびDCMへの抽出によって得た。有機抽出物を乾燥させ、濾過し、蒸発させた。
【0145】
中間体2:(+)−メチル{(2S,4R)−2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン−4−イル}アセテート
【0146】
【化35】
(±)−シスメチル4−(トリフルオロメチル)フェニルピペリジン−4−イル)アセテート(中間体1[遊離塩基]、32.6g、0.108mol)を、高温のイソプロパノール(100ml)に溶解し、本溶液を、L−(+)−マンデル酸(9g、0.054mol)の高温のイソプロパノール(170ml)溶液に加え、得られた溶液を、室温で終夜放置した。白色の結晶性固体を沈殿させ(17.55g、36%)、濾過した。母液を蒸発させ、残渣を炭酸ナトリウム(2M、100ml)で中和させ、ジクロロメタン(3×100ml)で抽出した。混合した抽出物を、鹹水で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、濾過し、蒸発させた。この抽出物を、高温のイソプロパノール(100ml)で溶解し、D−(−)−マンデル酸(9g、0.054mol)の高温のイソプロパノール(170ml)溶液に加え;即時の結晶化が起こり、混合物を2時間放置した。白色の結晶性固体を、濾過により単離し(21g、44%)、酢酸イソプロピルより再結晶化させ(250ml)、白色の結晶性物質として生成物を得た(19.8g、40%)(光学純度>99.5%)。本材料を、炭酸ナトリウムで中和し(2M、100ml)、ジクロロメタンで抽出した(3×100ml)。混合した抽出物を、鹹水で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、濾過し、蒸発させ、遊離塩基を得た:αD(c=1、MeOH)+23°。1H NMR(360MHz,CDCl3)δ:1.23(6H,d,J 6.9)、2.88(1H,qn,J 6.9)、4.27(2H,s)、7.15−7.21(4H,m)、7.71(2H,d,J 8.2)、8.10(2H,d,J 8.2)。
【0147】
中間体3
(±)メチル{(2R*,4S*)−1−[(1S*)−1−(4−ヨードフェニル)−4−メチルフェニル]−2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン−4−イル}アセテート
【0148】
【化36】
トルエン中の中間体1、4−ヨードベンズアルデヒドおよびベンゾトリアゾールの等モル量の混合物を攪拌し、ディーンスタークトラップ(Dean−Stark trap)でN2下、還流させながら18時間加熱した。RTまで冷却した後、溶媒を真空中で除去し、濃厚な油を得て、これをさらなる精製なしに使用した。1−ブロモ−3−メチルブタン(3モル当量)を、内部温度を約30℃に保つような速度で、N2下で乾燥Et2O中の活性化マグネシウム(3モル当量)の攪拌懸濁液に加えた。RTでの90分後、反応物を、氷槽で冷却し、塩化亜鉛のジエチルエーテル(1.0M、3モル当量)溶液を、内部温度が<10℃であるように加えた。冷却槽を取り除き、反応物をRTで1時間攪拌し、次に冷却槽で再冷却した。乾燥DCM中のベンゾトリアゾール付加物(上記から)溶液を、内部温度が<10℃であるようにカニューレを介して加えた。この温度で45分後、冷却槽を取り除き、混合物はRTで18時間攪拌した。反応物を、氷槽で冷却し、飽和NH4Cl水溶液でクエンチした。混合物を、DCMおよびH2Oで希釈し、次にHyflo(登録商標)を通して濾過した。層を分離し、水層をDCMで抽出した(×3)。混合した抽出物を乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、蒸発させた。残渣を、クロマトグラフィーにより精製し(シリカ、3−6%Et2O/イソヘキサン)、65%の収率で、表題化合物を得た。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm)0.58−0.69(1H,m)、0.81−0.83(6H,m)、0.85−0.96(1H,m)、1.13(1H,dq,J 4.5,12.8)、1.32(1H,q,J 12.4)、1.42(1H,七重線,J 6.6)、1.63(1H,br,d,J 13.2)、1.69−1.76(2H,m)、1.80(1H,qd,J 2.9,12.8)、1.87−1.98(1H,m)、1.13−1.26(2H,m)、2.33(1H,dt,J 2.4,11.9)、2.68(1H,td,J 3.0,11.4)、3.35(1H,dd,J 4.12,9.6)、3.62(3H,s)、3.7(1H,dd,J 2.6,10.9)、6.99(2H,d,J 8.3)、7.54(2H,d,J 7.8)、7.59−7.63(4H,m);M/Z(ES+)588(M+H)。
【0149】
実施例1
(±){(2S*,4R*)−1−{(1R*)−4−メチル−1−[6−(トリフルオロメチル)ピリジン−3−イル]ペント−4−エン−2−イン−1−イル}−2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン−4−イル}酢酸
【0150】
【化37】
ステップ1:6−(トリフルオロメチル)ニコチンアルデヒド
[6−(トリフルオロメチル)ピリジン−3−イル]メタノール(0.886g、5.0mmol)のDCM(20ml)溶液を、RTでDCM(20ml)中のデスマーチン(Dess−Martin)ペルヨージナン(2.334g、5.5mmol)の混合物に加えた。反応物を1.5時間攪拌し、次にEt2O(100ml)および4N NaOH(15ml)で希釈した。混合物を10分間攪拌し、次に分離させた。有機層を4N NaOH(15ml)次に鹹水で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、濾過し、蒸発させた。残渣を、クロマトグラフィーにより精製し(シリカ、15%EtOAc/ヘキサン)、アルデヒド(0.392g、45%)を得た。1H NMR(400MHz,CDCl3):δ 7.89(1H,d,J 8.1)、8.37(1H,d,J 8.1)、9.20(1H,s)、10.22(1H,s)。
【0151】
ステップ2:(±)メチル{(2S*,4R*)−1−{(1R*)−4−メチル−1−[6−(トリフルオロメチル)ピリジン−3−イル]ペント−4−エン−2−イン−1−イル}−2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン−4−イル}アセテート
【0152】
【化38】
水中(0.8ml)のステップ1のアルデヒド(0.422g、2.4mmol)、中間体1(0.242g、0.8mmol)、2−メチル−1−ブタン−3−イン(0.22ml、2.4mmol)およびAuBr3(35mg、0.08mmol)の混合物を、マイクロ波において70℃で1時間加熱した。反応混合物をSCXカートリッジに充填し、粗生成物をMeOH中の2N NH3で溶離した。溶離液を濃縮し、EtOAcで希釈し、鹹水で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、濾過し、蒸発させた。残渣を、クロマトグラフィーにより精製し(シリカ、5−10%EtOAc/ヘキサン)、エステル(0.270g、64%)を得た。1H NMR(400MHz,CDCl3):δ 1.26−1.32(1H,m)、1.44(1H,q,J 12.2)、1.73(1H,m)、1.92(1H,dq,J 13.0,2.9)、2.00−2.04(4H,m)、2.20−2.32(2H,m)、2.44−2.54(2H,m)、3.64(3H,s)、3.69(1H,dd,J 2.8,11.3)、4.65(1H,s)、5.34(1H,brs)、5.42(1H,s)、7.63(5H,m)、7.98(1H,m)、8.89(1H,s)。
【0153】
ステップ3:(±){(2S*,4R*)−1−{(1R*)−4−メチル−1−[6−(トリフルオロメチル)ピリジン−3−イル]ペント−4−エン−2−イン−1−イル}−2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン−4−イル}酢酸
ステップ2のエステル(0.146g、0.28mmol)およびLiOH(0.133g、5.6mmol)のTHF(3ml)および水(3ml)溶液を、RTで16時間攪拌した。反応混合物を、2N HClでpH6まで酸性化させ、EtOAcで抽出した。混合した抽出物を、鹹水で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、濾過し、蒸発させた。残渣を、クロマトグラフィーにより精製し(シリカ、1−2%MeOH/DCM)、酸(0.101g、71%)を得た。1H NMR(360MHz,CD3OD):δ 1.26−1.38(1H,m)、1.51(1H,q,J 12.1)、1.77(1H,m)、1.90−1.98(2H,m)、2.03(3H,s)、2.24(2H,d,J 6.9)、2.43−2.57(2H,m)、3.74(1H,dd,J 2.6,11.4)、4.70(1H,s)、5.39(1H,m)、5.46(1H,s)、7.70−7.72(4H,m)、7.80(1H,d,J 8.2)、8.17(1H,d,J 8.1)、8.82(1H,s)。
【0154】
実施例2−20
以下の化合物を、中間体2(実施例2−16)または中間体1(実施例17−19)および適切なアルデヒドを用いて、実施例1の手順で作成した。
【0155】
【表1】
【0156】
実施例21
{(2S,4R)−1−[(1R)−4−メチル−1−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルメチル)ペンチル]−2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン−4−イル}酢酸
【0157】
【化39】
ステップ1:メチル{(2S,4R)−1−[(1R)−4−メチル−1−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルメチル)ペンチル]−2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン−4−イル}アセテート
【0158】
【化40】
メチル{(2S,4R)−1−[(1S)−4−メチル−1−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルメチル)ペント−4−エン−2−イン−1−イル]−2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン−4−イル}アセテート(実施例20の調製からのエステル中間体、221mg、0.46mmol)のMeOH(10ml)溶液を、45psiで4時間ラネーニッケルにより(約500mg)水素添加した。触媒を濾過によって除去し、CH2Cl2で洗浄した。濾液を蒸発させ、残渣をクロマトグラフィーにより精製し(シリカ、25%Et2O/イソヘキサン)、油としてアルカン(154mg)を得た。1H NMR(360MHz,CDCl3):δ 0.62−0.70(1H,m)、0.81−1.03(10H,m)、1.08−1.95(12H,m)、2.17−2.31(4H,m)、2.95(1H,brd,J 12.0)、3.33(1H,t,J 11.6)、3.41(1H,t,J 11.5)、3.58(1H,d,J 9.0)、3.64(3H,s)、3.86(1H,brd,J 10.6)、3.92(1H,brd,J 11.0)、7.38−7.40(2H,d,m)、7.53(2H,d,J 8.1);M/Z(ES+)484(MH+)。
【0159】
ステップ2:{(2S,4R)−1−[(1R)−4−メチル−1−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルメチル)ペンチル]−2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン−4−イル}酢酸
【0160】
【化41】
メチル{(2S,4R)−1−[(1R)−4−メチル−1−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルメチル)ペンチル]−2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン−4−イル}アセテート(ステップ1、142mg、0.29mmol)およびNaOH水溶液(4N、220μl、0.88mmol)のMeOH(2ml)溶液を、60℃で3時間加熱した。RTまで冷却した後、MeOHを、真空中で除去し、残渣をCH2Cl2/H2Oの間で分配した。2N HCl(約0.5ml)を加えた。水層のpHを、約pH7に飽和NaHCO3水で調整した。水層をCH2Cl2で抽出した(×4)。混合した化合物を乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、蒸発させた。残渣を、クロマトグラフィーにより精製し(シリカ、4−8%MeOH/CH2Cl2)、無色の固体として酸を得た(113mg)。1H NMR(360MHz,CD3OD):δ 0.65−0.75(1H,m)、0.83−1.15(11H,m)、1.18−1.55(6H,m)、1.73−1.93(5H,m)、2.18−2.30(3H,m)、2.44(1H,brt,J 12)、3.11(1H,brd,J 12)、3.35(1H,d,J 11)、3.43(1H,d,J 12)、3.79(2H,d,J 6.7)、3.88(1H,d,J 8.0)、7.53(2H,d,J 7.6)、7.63(2H,d,J 8.2);M/Z(ES+)470(MH+)。
【0161】
実施例22
(±){(2R*,4S*)−1−[(1S*)−4−メチル−1−(4−ピリジン−4−イルフェニル)ペンチル]−2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン−4−イル}酢酸
【0162】
【化42】
ステップ1:(±)メチル{(2R*,4S*)−1−[(1S*)−4−メチル−1−(4−ピリジン−4−イルフェニル)ペンチル]−2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン−4−イル}アセテート
【0163】
【化43】
1,4−ジオキサン(1ml)中の中間体3(130mg、0.22mmol)、ピリジン−4−イルボロン酸(32mg、0.264mmol)、Pd(dppf)2Cl2(9mg、0.011mmol)および2N Na2CO3水溶液を、マイクロ波照射によって160℃まで10分間加熱した。次に、反応混合物をMeOHで希釈し、SCXカートリッジに充填し、これをMeOHで流し、次にMeOH中の2M NH3で溶離した。NH3溶離剤を減圧下で濃縮し、粗生成物を得て、これを分取逆相HPLCによって精製した。
【0164】
【表2】
【0165】
表題化合物を、TFA塩、26mg(18%)として得た(M/Z539(MII+))。
【0166】
ステップ2:(±){(2R*,4S*)−1−[(1S*)−4−メチル−1−(4−ピリジン−4−イルフェニル)ペンチル]−2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン−4−イル}酢酸
ステップ1からの生成物(26mg、0.048mmol)を、6M NaOH水溶液(0.05ml)を含むMeOH(1ml)中においてRTで18時間攪拌した。反応混合物を、減圧下で濃縮させ、残渣を分取逆相HPLCによって精製した。
【0167】
【表3】
【0168】
表題化合物を、TFA塩、22mg(72%)として得た(M/Z(ES+)525)。1H NMR(500MHz,CD3OD):δ 0.64−0.72(1H,m)、0.74−0.79(1H,m)、0.85−0.87(6H,m)、1.50(1H,七重線,J 6.6)、1.64(1H,q,J 12.4)、1.95(1H,q,J 12)、2.15−2.24(3H,m)、2.28−2.41(4H,m)、3.49(1H,dt,J 2.5,12.7)、3.72(1H,d,J 12.1)、4.06(1H,dd,J 2.5,12.4)、4.96(1H,dd,J 2.2,11.5)、7.56(2H,d,J 8.1)、7.88(2H,d,J 7.1)、7.96(2H,d,J 8.4)、8.02(2H,d,8.4)、8.25(2H,d,J 5.9)、8.84(2H,s)。
【0169】
実施例23
(±){(2R*,4S*)−1−[(1S*)−4−メチル−1−(4−ピリジン−3−イルフェニル)ペンチル]−2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン−4−イル}酢酸
【0170】
【化44】
表題化合物を、ピリジン−3−イルボロン酸を使用して実施例22と類似した方法で調製した(M/Z(ES−)525)。
【0171】
実施例24
(±){(2R*,4S*)−1−[(1S*)−4−メチル−1−(4−ピリジン−2−イルフェニル)ペンチル]−2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン−4−イル}酢酸
【0172】
【化45】
ステップ1:(±)メチル{(2R*,4S*)−1−[(1S*)−4−メチル−1−(4−ピリジン−2−イルフェニル)ペンチル]−2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン−4−イル}アセテート
【0173】
【化46】
THF(3.5ml)中のヨードベンゼン前駆体中間体3(587mg、1mmol)、6−フェニル−2−ピリジン−4−イル−1,2,6,2−ジオキサアザボロケン(536mg、2mmol)、トリ(o−トリル)ホスフィン(61mg、0.2mmol)、Pd(OAc)2(11mg、0.05mmol)、K2CO3(276mg、2mmol)およびCuI(76mg、0.4mmol)を、マイクロ波照射によって150℃まで20分間加熱した。反応混合物を、MeOHで希釈し、珪藻土濾過助剤のパッドを通して濾過した。濾液を減圧下で濃縮し、残渣をフラッシュクロマトグラフィーにより精製し(シリカゲル、イソヘキサン中に5−40%EtOAc)、表題化合物200mgを得た(37%)(M/Z(ES+)539(MII+))。
【0174】
ステップ2:(±){(2R*,4S*)−1−[(1S*)−4−メチル−1−(4−ピリジン−2−イルフェニル)ペンチル]−2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン−4−イル}酢酸
ステップ1からの生成物を(50mg、0.093mmol)を、6M NaOH水溶液(0.1ml、0.6mmol)を含むMeOH(1ml)中においてRTで18時間加水分解した。溶媒を減圧下で除去し、残渣を分取逆相HPLCによって精製した。
【0175】
【表4】
【0176】
表題化合物を、ビスTFA塩、35mg(52%)として得た(M/Z(ES+)525(MII+))。1H NMR(500MHz,CD3OD):δ 0.65−0.72(1H,m)、0.76−0.81(1H,m)、0.83−0.85(6H,m)、1.49(1H,七重線,J 6.5)、1.61(1H,q,J 12.3)、1.93(1H,q,J 12.4)、2.16−2.24(3H,m)、2.27−2.40(4H,m)、3.49(1H,dd,J 2.8,12.7)、3.75(1H,d,J 12.7)、4.04(1H,d,J 3.1,13)、5.96(1H,dd,J 2.7,12.1)、7.48(2H,d,J 8.4)、7.53−7.56(1H,m)、7.85(2H,d,J 7.8)、7.96−8.00(3H,m)、8.07(3H,d,J 8.1)、8.70(1H,d,J 5.0)。19F NMR(470MHz,CD3OD):δ −64(3F)、−77(6F)。
【0177】
実施例25および26
(±){(2S,4R)−1−{(S)−(2R)−テトラヒドロフラン−2−イル[4−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}−2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン−4−イル}酢酸および(±){(2S,4R)−1−{(S)−(2S)−テトラヒドロフラン−2−イル[4−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}−2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン−4−イル}酢酸
【0178】
【化47】
ステップ1:(±)メチル{(2S,4R)−1−{(S)−(2R)−テトラヒドロフラン−2−イル[4−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}−2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン−4−イル}アセテートおよび(±)メチル{(2S,4R)−1−{(S)−(2S)−テトラヒドロフラン−2−イル[4−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}−2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン−4−イル}アセテート
【0179】
【化48】
中間体1(3.0g、10mmol)、4−(トリフルオロメチル)ベンズアルデヒド(1.37ml、10mmol)およびベンゾトリアゾール(1.19g、10mmol)のトルエン(50ml)溶液を、ディーンおよびスターク(Dean & Stark)条件下で、還流させながら3時間加熱した。冷却した混合物を、真空中で蒸発させ、残渣をDCMに溶解した。フラスコを、削り屑状マグネシウム(magnesium turning)(240mg、10mmol)で充填し、真空下で攪拌しながら乾燥させた。一旦室温で、THF(5ml)を加え、引き続いて1−ブロモ−3,3,3−トリフルオロプロパン(1066μl、10mmol)を加えた。数滴を加え、引き続いて手により加熱することで、発熱反応を惹起させ、内部温度を約40℃に維持しながら、残る臭化物を加えた。一旦、添加が終了したならば、混合物を室温で30分間攪拌した。混合物を0℃まで冷却し、塩化亜鉛(tBuOMe中の1M懸濁液、10ml、10mmol)を、添加中に0℃未満に維持しながらゆっくりと加え、THFで洗浄した。一旦、添加が終了したならば、混合物を室温で1時間攪拌した。白色の懸濁液を、0℃まで冷却し、ベンゾトリアゾール付加物(上記を参照のこと、1.0mmol)を、DCM(5ml)溶液としてゆっくりと加えた。冷却を取り止め、空気をフラスコ内に入れ、混合物を室温で16時間攪拌した。混合物を、NH4Cl(半飽和)およびDCMで希釈し、混合物を、Celite(登録商標)ベッドを通して濾過した。相を分離させ、水層をDCMで抽出した。抽出物を乾燥させ(MgSO4)、真空下で蒸発させ、黄色のゴム状の固体を得て、これをフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、イソヘキサン中で25−40−60−80%DCM)で精製し、2種の別個のジアステレオマーとして所望の化合物を得た。
【0180】
高流速ジアステレオマー(87mg、16%)1H(CDCl3):δ 7.59(2H,d,J 8.1)、7.50(6H,t,J 9.1)、4.36−4.30(1H,m)、3.85(1H,d,J 8.6)、3.76−3.66(2H,m)、3.62(4H,d,J 4.6)、3.15(1H,d,J 11.7)、2.72(1H,t,J 11.0)、2.27−2.12(2H,m)、1.98(2H,dd,J 6.0,10.5)、1.89−1.77(3H,m)、1.70(1H,d,J 12.3)、1.33−1.13(3H,m)。M/Z(ES+)530(M+H)。
【0181】
低流速ジアステレオマー(43mg、8%)。1H NMR(CDCl3):δ 7.64−7.49(6H,m)、7.23(2H,s)、4.70−4.64(1H,m)、4.38(1H,d,J 8.9)、3.78(2H,t,J 6.4)、3.62(4H,t,J 8.0)、3.49(1H,t,J 8.5)、3.04(1H,d,J 11.3)、2.82(1H,t,J 10.7)、2.24−2.12(3H,m)、2.01(1H,s)、1.77−1.67(4H,m)、1.29−1.15(2H,m)。M/Z(ES+)530(M+H)。
【0182】
ステップ2:(±){(2S,4R)−1−{(S)−(2R)−テトラヒドロフラン−2−イル[4−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}−2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン−4−イル}酢酸および(±){(2S,4R)−1−{(S)−(2S)−テトラヒドロフラン−2−イル[4−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}−2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン−4−イル}酢酸
表題化合物を、実施例1のステップ3に記載の手順を用いてステップ1から得た高流速ジアステレオマーのエステルの加水分解によって調製し、白色の泡沫を得た(53mg、64%)。1H NMR(CD3OD):δ 7.65−7.51(8H,m)、4.45−4.39(1H,m)、3.94(1H,d,J 9.1)、3.69−3.61(3H,m)、3.22(1H,d,J 11.9)、2.79(1H,t,J 11.2)、2.24−2.12(2H,m)、2.05(1H,d,J 6.3)、1.90−1.74(4H,m)、1.54−1.44(1H,m)、1.39−1.29(2H,m)、1.25−1.17(1H,m)。
M/Z(ES−)516(M+H)。
【0183】
ステップ1から得た低流速ジアステレオマーのエステルを、実施例1のステップ3に記載の手順を使用して加水分解し、5%MeOH/DCM(7mg、18%)で溶離するシリカクロマトグラフィー後に、白色の泡沫を得た。1H NMR(CD3OD):δ 7.72−7.56(6H,m)、7.37(2H,d,J 8.1)、4.79−4.73(1H,m)、4.43(1H,d,J 9.2)、3.86−3.78(2H,m)、3.51(1H,t,J 11.5)、3.14(1H,d,J 11.4)、2.89(1H,t,J 11.0)、2.22−2.12(2H,m)、1.95(1H,s)、1.76(4H,t,J 12.3)、1.63(1H,t,J 5.6)、1.35−1.25(2H,m)、1.19(1H,dd,J 8.8,21.2)、1.03−0.97(1H,m)。M/Z(ES+)516(M+H)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩もしくは水和物
【化1】
[式中、pは、0または1であり;
qは、0、1、2または3であり;
Vは、残る原子価がH、R2もしくはX−Z、またはそのいずれかの組合せに結合することを通して満たされる、結合または炭素原子を表し;
Wは、Wが窒素原子を表す場合、Vは炭素原子を表し、部分X−ZはWに結合するという条件で、残る原子価がH、R2もしくはX−Z、またはそのいずれかの組合せに結合することを通して満たされる、窒素原子または炭素原子を表し;
Xは、WがNを表す場合、Xは結合を表さないという条件で、結合またはC(R1)2またはCH2C(R1)2を表し;
Yは、結合またはCH2またはCH2CH2を表し;
Zは、CO2Hまたはテトラゾール環を表し;
各R1は、独立にHまたは6個までの炭素原子の非芳香族炭化水素基を表し;または2つのR1基は、C3−6脂環式基を完成させ;
R2は、6個までの炭素原子の非芳香族炭化水素基を表し;
R3およびR4は、それぞれHを表すか、またはVおよびWがそれぞれ炭素原子を表す場合、R3およびR4は、一緒になってCH2CH2架橋を表し;
各R5は、独立にハロゲン、0−3つのフッ素置換基を担持するC1−6アルキル、0−3つのフッ素置換基を担持するC1−6アルコキシ、またはC2−6アルケニルを表し;
R6は、Het−Aを表し(Aは、結合、CH2または1,4−フェニレンを表し、Hetは、ハロゲン、C1−4アルキル、CF3、C1−4アルコキシおよびC1−4アルコキシカルボニルから選択される3つまでの置換基を場合によって担持するか、またはそれ自体がハロゲン、C1−4アルキル、C1−4アルコキシもしくはC1−4アルコキシカルボニルで場合によって置換されたフェニル置換基を場合によって担持する10個までの環原子の複素環系を表す。);
R7は、CF3置換基を場合によって担持する10個までの炭素原子の炭化水素基を表す。]。
【請求項2】
Vが炭素原子を表す、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Wが炭素原子を表し、部分X−Zが得られたピペリジン環の3位または4位に結合している、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
(R5)qが、2−CF3、3−CF3、4−CF3、2,4−ジ(CF3)、2−F−4−CF3、4−OCF3、4−アリル、4−n−プロピル、4−イソプロピルおよび4−tert−ブチルから選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
式IVの請求項1に記載の化合物ならびに薬学的に許容されるその塩および水和物
【化2】
(式中、Raは、H、ハロゲンまたはCF3を表す。)。
【請求項6】
R6が、3−ピリジル、6−トリフルオロメチル−3−ピリジル、2−フリル、5−(2−トリフルオロメチルフェニル)−2−フリル、2−チエニル、3−チエニル、ベンゾチオフェン−3−イル、3−キノリニル、ベンゾフラン−2−イル、6−キノリニル、1−フェニル−5−メチルピラゾール−4−イル、フラン−3−イル、4−(ピリジン−2−イル)フェニル、4−(ピラゾール−1−イル)フェニル、4−(1,2,4−トリアゾール−1−イル)フェニル、4−(チオフェン−2−イル)フェニル、テトラヒドロピラン−4−イル、(テトラヒドロチオピラン−4−イル)メチル、1−(t−ブトキシカルボニル)ピペリジン−4−イル、(テトラヒドロピラン−4−イル)メチル、4−(ピリジン−4−イル)フェニル、4−(ピリジン−3−イル)フェニルおよびテトラヒドロフラン−2−イルから選択される、請求項1または5に記載の化合物。
【請求項7】
R7が、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、3−メチルブチル、2−エチルブチル、4−メチルペンチル、3,3−ジメチルブチル、3−メチルブテン−1−イル、3−メチルブト−3−エン−1−イニル、4−メチルペント−1−イニル、3,3−ジメチルブト−1−イニル、シクロヘキシル、フェニル、シクロプロピルメチル、シクロヘキシルエチニル、ベンジル、2−フェニルエチル、2,2,2−トリフルオロエチル、3,3,3−トリフルオロプロピル、4,4,4−トリフルオロブチル、1−メチル−3,3,3−トリフルオロプロピルおよび4−トリフルオロメチルフェニルから選択される、請求項1または5に記載の化合物。
【請求項8】
請求項1に記載の化合物および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項9】
薬物療法における使用のための請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
脳のAβ沈着を伴う疾患の治療または予防における使用のための請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
請求項1に記載の化合物の治療効果のある治療を、それを必要とする患者に与えることを含む、脳のAβ沈着を伴う疾患を治療または予防する方法。
【請求項1】
式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩もしくは水和物
【化1】
[式中、pは、0または1であり;
qは、0、1、2または3であり;
Vは、残る原子価がH、R2もしくはX−Z、またはそのいずれかの組合せに結合することを通して満たされる、結合または炭素原子を表し;
Wは、Wが窒素原子を表す場合、Vは炭素原子を表し、部分X−ZはWに結合するという条件で、残る原子価がH、R2もしくはX−Z、またはそのいずれかの組合せに結合することを通して満たされる、窒素原子または炭素原子を表し;
Xは、WがNを表す場合、Xは結合を表さないという条件で、結合またはC(R1)2またはCH2C(R1)2を表し;
Yは、結合またはCH2またはCH2CH2を表し;
Zは、CO2Hまたはテトラゾール環を表し;
各R1は、独立にHまたは6個までの炭素原子の非芳香族炭化水素基を表し;または2つのR1基は、C3−6脂環式基を完成させ;
R2は、6個までの炭素原子の非芳香族炭化水素基を表し;
R3およびR4は、それぞれHを表すか、またはVおよびWがそれぞれ炭素原子を表す場合、R3およびR4は、一緒になってCH2CH2架橋を表し;
各R5は、独立にハロゲン、0−3つのフッ素置換基を担持するC1−6アルキル、0−3つのフッ素置換基を担持するC1−6アルコキシ、またはC2−6アルケニルを表し;
R6は、Het−Aを表し(Aは、結合、CH2または1,4−フェニレンを表し、Hetは、ハロゲン、C1−4アルキル、CF3、C1−4アルコキシおよびC1−4アルコキシカルボニルから選択される3つまでの置換基を場合によって担持するか、またはそれ自体がハロゲン、C1−4アルキル、C1−4アルコキシもしくはC1−4アルコキシカルボニルで場合によって置換されたフェニル置換基を場合によって担持する10個までの環原子の複素環系を表す。);
R7は、CF3置換基を場合によって担持する10個までの炭素原子の炭化水素基を表す。]。
【請求項2】
Vが炭素原子を表す、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Wが炭素原子を表し、部分X−Zが得られたピペリジン環の3位または4位に結合している、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
(R5)qが、2−CF3、3−CF3、4−CF3、2,4−ジ(CF3)、2−F−4−CF3、4−OCF3、4−アリル、4−n−プロピル、4−イソプロピルおよび4−tert−ブチルから選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
式IVの請求項1に記載の化合物ならびに薬学的に許容されるその塩および水和物
【化2】
(式中、Raは、H、ハロゲンまたはCF3を表す。)。
【請求項6】
R6が、3−ピリジル、6−トリフルオロメチル−3−ピリジル、2−フリル、5−(2−トリフルオロメチルフェニル)−2−フリル、2−チエニル、3−チエニル、ベンゾチオフェン−3−イル、3−キノリニル、ベンゾフラン−2−イル、6−キノリニル、1−フェニル−5−メチルピラゾール−4−イル、フラン−3−イル、4−(ピリジン−2−イル)フェニル、4−(ピラゾール−1−イル)フェニル、4−(1,2,4−トリアゾール−1−イル)フェニル、4−(チオフェン−2−イル)フェニル、テトラヒドロピラン−4−イル、(テトラヒドロチオピラン−4−イル)メチル、1−(t−ブトキシカルボニル)ピペリジン−4−イル、(テトラヒドロピラン−4−イル)メチル、4−(ピリジン−4−イル)フェニル、4−(ピリジン−3−イル)フェニルおよびテトラヒドロフラン−2−イルから選択される、請求項1または5に記載の化合物。
【請求項7】
R7が、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、3−メチルブチル、2−エチルブチル、4−メチルペンチル、3,3−ジメチルブチル、3−メチルブテン−1−イル、3−メチルブト−3−エン−1−イニル、4−メチルペント−1−イニル、3,3−ジメチルブト−1−イニル、シクロヘキシル、フェニル、シクロプロピルメチル、シクロヘキシルエチニル、ベンジル、2−フェニルエチル、2,2,2−トリフルオロエチル、3,3,3−トリフルオロプロピル、4,4,4−トリフルオロブチル、1−メチル−3,3,3−トリフルオロプロピルおよび4−トリフルオロメチルフェニルから選択される、請求項1または5に記載の化合物。
【請求項8】
請求項1に記載の化合物および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項9】
薬物療法における使用のための請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
脳のAβ沈着を伴う疾患の治療または予防における使用のための請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
請求項1に記載の化合物の治療効果のある治療を、それを必要とする患者に与えることを含む、脳のAβ沈着を伴う疾患を治療または予防する方法。
【公表番号】特表2009−531407(P2009−531407A)
【公表日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−502225(P2009−502225)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【国際出願番号】PCT/GB2007/050155
【国際公開番号】WO2007/110667
【国際公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(390035482)メルク シャープ エンド ドーム リミテッド (81)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【国際出願番号】PCT/GB2007/050155
【国際公開番号】WO2007/110667
【国際公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(390035482)メルク シャープ エンド ドーム リミテッド (81)
【Fターム(参考)】
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