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認知行動能力向上剤
説明

認知行動能力向上剤

【課題】短期間の摂取によって、高次脳機能を根幹とした感覚〜知覚〜認知〜判断〜行動・抑制を全て包括する認知行動能力の向上剤を提供する。
【解決手段】本発明の認知行動能力の向上剤は、アスタキサンチンおよび/またはそのエステルを含む。この認知行動能力は、例えば、判断処理能力、空間注意配分能力、周辺認知に対する集中力、および高次脳機能を必要とする身体反応の速度および/または正確性によって決定づけられる敏捷性からなる群より選択される少なくとも1つの能力である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポーツ適性に関連する認知行動能力の向上剤に関する。
【背景技術】
【0002】
スポーツにおいて、監督の指示・敵および味方選手の動き、球技の場合にはボールの動きなど、時々刻々と変化する周辺状況を正確に知覚、認知、および判断しながら適切な身体反応行動を起こさなくてはならない。例えば、敏捷性という能力は、認知行動機能を必要とする身体反応の速度および/または正確性によって決定づけられる。そのため、笛の合図に合わせた反復横飛び、ランプの点滅に対する反応テストなどの敏捷性についてのテスト項目が、高齢者やスポーツ選手の身体機能テスト項目に含まれている。このように、敏捷性は運動・スポーツにおいて必須の能力である。
【0003】
認知行動機能とは、感覚〜知覚〜認知〜判断〜行動・抑制を包括する高次の脳機能である。より具体的には、まず、周辺状況は、感覚器官(視覚、聴覚、触覚、味覚、および臭覚)によって情報として常に脳に伝達される。脳では、大量の情報を取捨選択しなければならない。この際、複数の情報にどの程度気を配ることができるかという能力(注意分散または注意配分)が重要となる。複数の情報としては、例えば、野球の場合は、ベンチからの指示、塁上の走者、守備についている相手選手、投手の投球動作などが挙げられる。ここで取捨選択された情報が統合されて1つの意味を有する情報、すなわち知覚となる。次いで、知覚した情報を短時間記憶し、現在の知覚と過去の記憶とを照合して(認知)、判断を行う。
【0004】
例えば、球技において、パスを出すという判断に基づいて、実際に動作の方向、速度、タイミングなどを複合した行動を実行するためには、敏捷性、空間注意配分などの能力が求められる。
【0005】
このような認知行動機能は、脳機能に深く関連している。脳機能を改善すると報告されている種々の食品成分は多数存在する。例えば、イチョウ葉エキス、DHA(ドコサヘキサエン酸)、L−カルニチン、メラトニン、コエンザイムQ10、リン脂質、α−リポ酸、核酸、霊芝、セラミド、ブドウ種子エキス、ポリフェノール類、松樹皮抽出物、グルコサミン、ハープシールオイル、ヤマブシタケ、明日葉、ニンニク抽出物、冬虫夏草、ウコン、マカ、カシス抽出物、テアニン、β−カロテン、リコペンなどが、脳機能の改善効果を有することが知られている。また、カロテノイドの1つであるアスタキサンチンについては、後述するような報告がある。
【0006】
例えば、感覚の1つである視覚に関しては、アスタキサンチンが、脳神経、特に眼および網膜につながる神経へのダメージを改善することが記載されている(特許文献1)。また、アスタキサンチンの眼精疲労および眼の調節機能障害に対する改善作用が知られている(特許文献2)。このことから、一般に疲れ眼に対して、アスタキサンチンがよいといわれている。しかし、この眼に対する作用は、単に解剖学上の眼という感覚器の機能に対する効果でしかない。
【0007】
また、アスタキサンチンの記憶に関連する作用も知られている。例えば、特許文献3には、アスタキサンチンを含む組成物が、老齢化に伴って低下する記憶力の予防、および低下した記憶力を改善する効果を有することが開示されている。ここでは、マウスを用いて記憶・学習能力向上作用および記憶力改善作用を示している。また、特許文献4では、アスタキサンチンを含むヘマトコッカス藻抽出物が、マウスを用いたうつ状態改善効果、ラットを用いた記憶試験において脳機能障害に対する改善効果を示すことが開示されている。さらに、脳神経機能障害の改善という観点から、特許文献5には、アスタキサンチンが、神経細胞のミトコンドリア機能障害および酸化的ストレスを軽減することができることが開示されている。しかし、いずれもモデル動物において検討されているにすぎず、ヒトの高次脳機能への影響は推測できない。
【0008】
さらに、行動については、アスタキサンチンが運動に対して作用を有することが知られている。例えば、アスタキサンチンにより、筋肉機能の持続時間を改善し、または筋肉障害もしくは疾患を治療できること(特許文献6)、動物において運動中に発生する酸化ストレスを軽減・予防できること(特許文献7)が記載されている。また、特許文献8には、アスタキサンチンの投与により、腎機能を低下させることなく体内のクレアチンを増加させることによって、筋肉およびその他の組織の運動能力を高めることが記載されている。さらに、特許文献9には、アスタキサンチンが疲労改善効果を示すことも記載されている。しかし、上記の報告はいずれも、筋肉組織レベルでの筋力・持久力の向上作用や筋肉へのダメージの軽減・予防効果について確認しただけでのものであり、高次脳機能が関与する認知行動能力が向上した結果としての身体運動能力の向上作用については示されていない。
【0009】
アスタキサンチン以外のカロテノイドのうち、上記のβ−カロテンおよびリコペンについては、認知機能に関する報告がある。リコペンは、脳卒中・脳塞栓時の虚血再還流によって発生する活性酸素による脳細胞へのダメージや細胞死を防ぐことが知られているにすぎない(非特許文献1)。また、β−カロテンの摂取を18年間続けることにより、摂取をしていないプラセボ群に比べて、言語記憶などの認知機能の衰退が少ないことが報告されている(非特許文献2)。しかし、この非特許文献2での認知機能のテストは、電話によるインタビュー形式での認知症検査、特に言語記憶テストに限られている。また、1年程度での摂取では効果は認められていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5527533号明細書
【特許文献2】国際公開第2002/094253号
【特許文献3】特開2001−2569号公報
【特許文献4】特開2007−126455号公報
【特許文献5】特開2008−19242号公報
【特許文献6】特表2001−514215号公報
【特許文献7】特表2007−532121号公報
【特許文献8】特開2007−314491号公報
【特許文献9】特開2006−347927号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】カゴメ株式会社ホームページ,会社情報,ニュースリリース,「リコピンが脳神経細胞を保護する可能性を示唆 −カゴメ、名古屋文理大学短期大学部、藤田保健衛生大学との共同研究−」,2007年9月25日,[2008年5月28日検索],インターネット<URL: http://www.kagome.co.jp/news/2007/070925.html>
【非特許文献2】Grodsteinら、Arch. Intern. Med., Vol.167,pp.2184-2190 (2007)
【非特許文献3】A.F. Kramerら、Nature,Vol.400,pp.418-419 (1999)
【非特許文献4】N.J. Cepedaら、Developmental Psychology,Vol.37,No.5,pp.715-730 (2001)
【非特許文献5】S. HsiehおよびL.C. Liu、Brain Res. Cogn. Brain Res.,Vol.22,No.2,pp.165-75 (2005)
【非特許文献6】A.F. KramerおよびT. Weber、「Handbook of psychophysiology」(第2版),J.T. Cacioppoら編,New York, Cambridge University Press,(2000) pp.794-814
【非特許文献7】E. Donchinら、「Psychophysiology: Systems, processed, and applications」,M. G. H. Colesら編, New York, Guilford Press, (1986) pp.702-718
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、短期間の摂取によって、高次脳機能を根幹とした感覚〜知覚〜認知〜判断〜行動・抑制を全て包括する認知行動能力の向上剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、アスタキサンチンおよび/またはそのエステルを含む、認知行動能力の向上剤を提供する。
【0014】
1つの実施態様では、上記認知行動能力は、判断処理能力、空間注意配分能力、周辺認知に対する集中力、および高次脳機能を必要とする身体反応の速度および/または正確性によって決定づけられる敏捷性からなる群より選択される少なくとも1つの能力である。
【0015】
1つの実施態様では、上記認知行動能力は、神経心理学的検査および神経生理学的検査の少なくとも1つの項目で評価される能力である。
【0016】
さらなる実施態様では、上記項目は、単純反応、選択反応、作動記憶、遅延再生、および注意分散からなる群より選択される少なくとも1つである。
【0017】
ある実施態様では、上記項目は、選択反応、作動記憶、または注意分散である。
【0018】
1つの実施態様では、上記認知行動能力は、スポーツ適性である。
【0019】
他の実施態様では、上記認知行動能力の向上剤は、さらに、イチョウ葉エキス、不飽和脂肪酸、L−カルニチン、メラトニン、コエンザイムQ10、リン脂質、α−リポ酸、核酸、霊芝、セラミド、ブドウ種子エキス、ポリフェノール類、松樹皮抽出物、グルコサミン、ハープシールオイル、ヤマブシタケ、明日葉、ニンニク抽出物、冬虫夏草、ウコン、マカ、カシス抽出物、およびテアニンからなる群より選択される少なくとも1つを含む。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、アスタキサンチンの短期間の摂取によって、高次脳機能を根幹とした感覚〜知覚〜認知〜判断〜行動・抑制を全て包括する認知行動機能を向上させることができる認知行動能力の向上剤が提供される。この認知行動能力の向上剤は、いわゆる認知症や重度の記憶障害などの脳機能障害に対する改善・予防を目的とするものではなく、身体機能、より具体的には、高次脳機能が必要とされる運動適性などを向上させる。認知行動能力を必要とするスポーツにおいても、身体運動能力の向上が期待される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の認知行動能力の向上剤に有効成分として含まれるアスタキサンチンおよび/またはそのエステルは、以下の式:
【0022】
【化1】

【0023】
(ここで、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または脂肪酸残基である)で示されるカロテノイドの一種である。アスタキサンチンのエステルとしては、特に限定されないが、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸などの飽和脂肪酸、あるいはオレイン酸、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、ビスホモ−γ−リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸などの不飽和脂肪酸のモノエステルまたはジエステルが挙げられる。これらは単独でまたは適宜組み合わせて用いることができる。アスタキサンチンは、β−カロテンの骨格の両端にオキソ基とヒドロキシ基とを余分に有する構造であるため、β−カロテンとは異なり、分子の安定性が低い。これに対し、両端のヒドロキシ基が不飽和脂肪酸などでエステル化されたエステル体(例えば、オキアミ抽出物)はより安定である。
【0024】
本発明に用いられるアスタキサンチンおよび/またはそのエステルは、化学的に合成されたものであっても、あるいは天然物由来のもののいずれであってもよい。後者の天然物としては、アスタキサンチンおよび/またはそのエステルを含有する赤色酵母;ティグリオパス(赤ミジンコ)、オキアミなどの甲殻類の殻;緑藻類などの微細藻類などが挙げられる。本発明においては、アスタキサンチンおよび/またはそのエステルの特性を利用できるものであれば、どのような方法で生産されたアスタキサンチンおよび/またはそのエステルを含有する抽出物をも使用することができる。一般的には、これらの天然物からの抽出物が用いられ、抽出エキスの状態であっても、また必要により適宜精製したものであってもよい。本発明においては、このようなアスタキサンチンおよび/またはそのエステルを含有する粗抽出物や破砕粉体物、あるいは必要により適宜精製されたもの、化学合成されたものを、単独でまたは適宜組み合わせて用いることができる。化学的安定性を考慮すると、好ましくはエステル体が用いられる。
【0025】
本発明において、認知行動能力とは、認知行動機能そのもの、ならびにこの認知行動機能を発揮し得る能力をまとめていう。この認知行動能力は、神経心理学的検査、神経生理学的検査などの種々の測定方法によって評価され得る。神経心理学的検査としては、CogHealth、ウェクスラー成人知能検査、スタンフォード・ビネー知能検査、VPTA標準高次視知覚検査、SPTA標準高次動作性検査、ウェクスラー記憶検査、CAT-CAS標準注意検査法・標準意欲評価法、D−CAT注意機能スクリーニングテスト、浜松式高次脳機能スケール、新ストループ検査、長谷川式認知症スケール、N式精神機能検査、COGNISTAT、MEDE多面的初期痴呆判定検査、NS痴呆症状検査、TAIS、MMSEなどが挙げられる。神経生理学的検査としては、脳波の事象関連電位などがあり、事象関連電位としては、随伴陰性変動(CNV)、P1−N1−P2、NA、Nd、N2b、P300、MMN、N400などが挙げられる。より医学的には、機能的核磁気共鳴画像法(fMRI)、単一光子放射断層撮影(SPECT)、光トポグラフィーなどによる脳の高次機能の活動測定によっても評価され得る。また、大衆的には、いわゆる脳トレと呼ばれる一連のテレビゲームソフトなどによっても評価し得る。さらに、行動能力は、光反応時間などを調べる体力測定などによっても評価し得る。
【0026】
CogHealthは、行動の抑制、情報処理の再構築などの高次脳機能(遂行機能)の評価として用いられてきたtask−switching課題に基づいている(非特許文献3〜5)。また、fMRIによる脳画像分析では、前頭葉活性とtask−switching課題との関連性が実証されていることから、前頭葉機能検査としてもコンセンサスが得られている。CogHealthは、例えば、パソコンモニター上に映し出されるトランプに反応して、ボタンを押すシステムであり、「単純反応」「選択反応」「作動記憶」「遅延再生」および「注意分散」の5つのタスク(評価項目)から構成されている。CogHealthの測定では、これらのタスクごとに平均RT(反応時間)を算出して解析を行う。
【0027】
「単純反応」は、トランプが裏から表にひっくり返った時にボタンを押す課題である。「選択反応」は、裏から表にひっくり返ったトランプが赤か黒か判断してボタンを押す課題である。言い換えれば、単純反応および選択反応は、ヒトの前頭葉機能における反応・抑制時間に関する課題である。感覚的な1つの刺激に対して1つの反応をするまでの時間が単純反応時間であり、そして1つの刺激の種類を判別し、どちらであるかを判断し反応するのに要する時間が選択反応時間である。
【0028】
「作動記憶」はひっくり返ったトランプが、ひとつ前のトランプと同じかどうか判断してボタンを押す課題である。「遅延再生」はひっくり返ったトランプが、遅延再生課題中で出てきたことのあるトランプであるかどうかを判断してボタンを押すものであり、「作動記憶」と併せて、即時記憶、エピソード記憶などの記憶力を測定する課題である。作動記憶は、短期的な情報の保存だけでなく、認知的な情報処理も含めた概念である。作動記憶は、秒単位の非常に短時間の記憶であるが、遅延再生は、作動記憶よりもやや長い時間の記憶である。
【0029】
「注意分散」は5枚のトランプが上下に動き、一枚でも上下に設定されている線に触れた時にボタンを押す課題であり、空間注意分散能力を測定する課題である。言い換えれば、注意分散とは、1点に集中するのではなく、周囲全体に注意を配分できる能力(空間注意分散能力または空間注意配分能力)のことである。これは、注意の散漫とは全く逆の意である。
【0030】
これらのタスクは、CogHealthにおけるトランプ刺激に限定されるものではなく、ランプや音などを用いた検査においても共通した高次脳機能の評価タスクである。
【0031】
一方、脳波の一種である事象関連電位は、認知作業中の脳神経活動を測定することにより、認知機能を測定する手法である。特に、事象関連電位のP300(P3b)成分は、精神作業負荷の推定に利用されてきた(非特許文献6)。2つの課題を同時に遂行させて、一方の課題を難しくする(あるいは優先権を高くする)と、他方の課題の遂行成績が悪くなる。このような二重課題法を用いた研究から、P300振幅はそれを惹起した事象に対する知覚−中枢レベルの認知機能を明確に反映すると考えられている(非特許文献7)。すなわち、P300の振幅は、周辺認知課題に対する注意度、集中度、および認知負担度を反映する。
【0032】
P300の試験では、例えば、聴覚Oddball課題が採用され得、この課題では、被験者にヘッドホンから、2KHzの高い音と1KHzの低い音の2種類を聞かせ、高い音を聞いた時点でなるべく早く正確にボタンを押してもらう。この場合、電極は、例えば、国際式10−20電極法に基づく計3カ所(Fz、Cz、およびPz)を頭皮上に配置する。電極装着後、実験中、被験者は、椅子に座って正面にある「二重丸」の固視点を注視するように指示され、得られた振幅について、Grand Averageから摂取前後の変化を測定する。
【0033】
日常生活やスポーツにおけるヒトの認知行動では、判断処理能力、空間注意配分能力、周辺認知に対する集中力、高次脳機能を必要とする身体反応の速度および/または正確性によって決定づけられる敏捷性が必要である。例えば、野球のバッティングにおいては、ベンチの指示、塁上の敵味方プレイヤーの動きなどの複数課題に注意を向けつつ、ピッチャーの投げる球にも集中し、バットを振るべきコースに球が来たときのみ瞬時にバットを振る能力が必要とされる。
【0034】
ここで、スポーツは、任意のスポーツをいい、特定のスポーツに限定されない。スポーツとしては、例えば、アウトドアスポーツ、アニマルスポーツ、格闘技・武術、射的競技、水上競技、体操、団体競技、ラケット競技などが挙げられる。アウトドアスポーツとしては、例えば、ラフティング、スポーツカイト、ウォータースポーツ(例えば、釣り、サーフィン、ウィンドサーフィン)などが挙げられる。アニマルスポーツとしては、馬術、競馬などが挙げられる。格闘技・武術としては、相撲、柔道、空手道、柔術、ムエタイ、少林寺拳法、レスリング、総合格闘技、ボクシング、剣道、フェンシングなどが挙げられる。射的競技としては、射撃、クレー射撃、ゴルフなどが挙げられる。水上競技としては、水泳、水球などが挙げられる。体操としては、体操競技、新体操などが挙げられる。団体競技としては、アメリカンフットボール、サッカー、フットサル、水球、ソフトボール、ドッジボール、バレーボール、ハンドボール、ビーチバレー、フットボール、ホッケー、野球、ラグビー、ラクロスなどが挙げられる。ラケット競技としては、バドミントン、テニス、卓球、スカッシュなどが挙げられる。
【0035】
本発明の認知行動能力の向上剤は、イチョウ葉エキス、不飽和脂肪酸(例えば、DHA、エイコサペンタエン酸(EPA)、アラキドン酸、γ−リノレン酸)、L−カルニチン、メラトニン、コエンザイムQ10、リン脂質(例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン)、α−リポ酸、核酸、霊芝、セラミド、ブドウ種子エキス、ポリフェノール類(例えば、レスベラトロール、クルクミン、セサミン、カテキン)、松樹皮抽出物、グルコサミン、ハープシールオイル、ヤマブシタケ、明日葉、ニンニク抽出物、冬虫夏草、ウコン、マカ、カシス抽出物、テアニンなどの認知機能改善効果を有するといわれている成分や該成分を含む食品素材などを適宜含んでいてもよい。
【0036】
本発明の認知行動能力の向上剤の投与経路は、経口投与または非経口投与のいずれであってもよい。その剤形は、投与経路に応じて適宜選択される。例えば、注射液、輸液、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、丸剤、腸溶剤、トローチ、内用液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、点鼻剤、点耳剤、点眼剤、吸入剤、坐剤、経腸栄養剤などが挙げられる。これは、それぞれ単独でまたは組み合わせて使用することができる。これらの製剤には、必要に応じて、賦形剤、結合剤、防腐剤、酸化安定剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味剤などの医薬の製剤技術分野において通常用いられる補助剤が用いられる。
【0037】
本発明の認知行動能力の向上剤の投与量は、投与の目的や投与対象者の状況(性別、年齢、体重など)に応じて異なる。通常、成人に対して、アスタキサンチンフリー体換算で、経口投与の場合、1日あたり0.1mg〜2g、好ましくは4mg〜500mg、一方、非経口投与の場合、1日あたり0.01mg〜1g、好ましくは0.1mg〜500mgで投与され得る。
【0038】
本発明の認知行動能力の向上剤は、上記のような医薬品としてだけでなく、医薬部外品、機能性食品、栄養補助剤、飲食物などとして使用することができる。医薬部外品として使用する場合、必要に応じて、医薬部外品などの技術分野で通常用いられている種々の補助剤とともに使用され得る。あるいは、機能性食品、栄養補助剤、または飲食物として使用する場合、必要に応じて、例えば、甘味料、香辛料、調味料、防腐剤、保存料、殺菌剤、酸化防止剤などの食品に通常用いられる添加剤とともに使用してもよい。また、溶液状、懸濁液状、シロップ状、顆粒状、クリーム状、ペースト状、ゼリー状などの所望の形状で、あるいは必要に応じて成形して使用してもよい。これらに含まれる割合は、特に限定されず、使用形態、および使用量に応じて適宜選択することができる。本発明においては、機能性食品、栄養補助剤、飲食物などとして使用することが好ましい。
【実施例】
【0039】
(調製例1:アスタキサンチンカプセルの調製)
まず、アスタキサンチンを次のように調製した。ヘマトコッカス・プルビアリス(Haematococcus pluvialis)K0084株を、25℃にて光照射条件下3%COを含むガスを通気しながら栄養ストレス(窒素源欠乏)をかけて培養し、シスト化した。シスト化した細胞を、ビーズビーターによって破砕し、エタノールでアスタキサンチンを含む油性画分を抽出した。抽出物を減圧濃縮してエタノールを留去し、アスタキサンチンをフリー体換算で8.0質量%含む抽出物を調製した。
【0040】
このアスタキサンチンを8.0質量%含有する抽出物を用いて、1カプセル当たり以下の表1に示す成分を内包するソフトカプセルを調製した。
【0041】
【表1】

【0042】
得られたソフトカプセル1個当たりには、アスタキサンチンがフリー体換算で3mg含有される。
【0043】
(実施例1:アスタキサンチン投与による認知機能評価試験)
加齢に伴う物忘れ傾向を自覚するが、認知症などの脳機能障害には該当しない、50歳〜69歳の健常な男性10名(年齢:55.7±3.7)について試験を実施した。上記アスタキサンチン含有ソフトカプセル(1粒にアスタキサンチン3mg)を、原則として、1日2回、朝夕食後に2粒ずつ水と共に摂取させた。投与期間は12週間とした。
【0044】
本実施例において、認知機能の評価として、task−switching課題であるCogHealthおよび脳波事象関連電位であるP300を投与開始6週目および12週目に測定した。
【0045】
CogHealthについては、被験者に、パソコンモニター上に映し出されるトランプに反応して、ボタンを押す操作を行わせた。「単純反応」「選択反応」「作動記憶」「遅延再生」および「注意分散」のタスクごとにそれぞれ平均RT(反応時間)を算出した。記憶課題の2つ(「作動記憶」および「遅延再生」)に関しては、平均AR(正答率)も併せて算出し、解析を行った。結果を以下の表2に示す。
【0046】
脳波については、被験者にヘッドホンから、2KHzの高い音と1KHzの低い音の2種類を聞かせ、高い音を聞いた時点でなるべく早く正確にボタンを押してもらう、聴覚Oddball課題を用いた。電極は、国際式10−20電極法に基づく計3カ所(Fz、Cz、およびPz)を頭皮上に配置した。基準電極には、前頭極(Fpz)を用い、参照電位は、左右両耳朶連結として基準誘導により誘発脳波を計測した。眼球電位(EOG)は、右または左の眼窩上縁に配置した。電極と頭皮との接触インピーダンスは、10kΩ以下としたが、それが不可能の場合でも最大15kΩ以下になるようにした。電極装着後、実験中、被験者は、椅子に座って正面にある「二重丸(◎)」の固視点を注視するように指示した。データにおいて、ノイズが入っているものは欠測とし、基線より上部にP300があるものの値は0とした。測定は2回行い、各加算回数は20回とし、得られた潜時、振幅についてGrand Averageから摂取前後の変化について検討した。結果を以下の表3に示す。
【0047】
各指標とも多重比較(Dunnet)を行ってP値を求めた。P300の結果については、補足的にStudentのt−検定を摂取前後に比較として用いた。
【0048】
【表2】

【0049】
CogHealthの全タスクで、反応時間の減少が確認された。分散分析の後、下位検定を行った結果、摂取前と摂取6週後との比較では注意分散に有意な反応時間の減少が確認された(P=0.034)。摂取前と摂取12週後との比較では、反応時間(P=0.034)、選択反応(P=0.013)、作動記憶(P=0.014)、遅延再生(P=0.032)、注意分散(P=0.020)のすべてのタスクにおいて反応時間が有意に減少した。また、正答率の面では、作動記憶では有意な増加が確認できたが(P=0.045)、遅延再生では大きな変化は認められなかった(P=0.991)。
【0050】
【表3】

【0051】
本実施例では、FzにおけるP300の変化が顕著であったため、これを採択し、解析を行った。多重比較の結果、振幅には有意な変化は確認できなかったが、振幅を摂取前後で比較したところ、有意傾向に近い結果が得られた(P=0.057)。
【0052】
このように、アスタキサンチンの摂取による、高次脳機能を必要とする身体反応の速度および/または正確性によって決定づけられる敏捷性(反応速度・反応正確性)、判断処理能力、および空間注意配分能力に対する向上効果がCogHealthにより確認され、そして周辺認知に対する集中力を向上させる効果がP300により確認された。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明によれば、CogHealthで、アスタキサンチンが、高次脳機能を必要とする身体反応の速度および/または正確性によって決定づけられる敏捷性(反応速度・反応正確性)、判断処理能力、および空間注意配分能力に対する向上効果、ならびにP300で確認された周辺認知に対する集中力を向上させる効果を有することが確認され、これらの効果により、日常生活およびスポーツ時の身体能力を向上させることができる。
【0054】
本発明の認知行動能力の向上剤に含まれるアスタキサンチンおよび/またはそのエステルは食経験が長く、医薬品として使用されるだけでなく、健康食品などとして日常的に予防的に用いられ得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスタキサンチンおよび/またはそのエステルを含む、認知行動能力の向上剤。
【請求項2】
前記認知行動能力が、判断処理能力、空間注意配分能力、周辺認知に対する集中力、および高次脳機能を必要とする身体反応の速度および/または正確性によって決定づけられる敏捷性からなる群より選択される少なくとも1つの能力である、請求項1に記載の認知行動能力の向上剤。
【請求項3】
前記認知行動能力が、神経心理学的検査および神経生理学的検査の少なくとも1つの項目で評価される能力である、請求項2に記載の認知行動能力の向上剤。
【請求項4】
前記項目が、単純反応、選択反応、作動記憶、遅延再生、および注意分散からなる群より選択される少なくとも1つである、請求項3に記載の認知行動能力の向上剤。
【請求項5】
前記項目が、選択反応、作動記憶、または注意分散である、請求項4に記載の認知行動能力の向上剤。
【請求項6】
前記認知行動能力が、スポーツ適性である、請求項3に記載の認知行動能力の向上剤。
【請求項7】
さらに、イチョウ葉エキス、不飽和脂肪酸、L−カルニチン、メラトニン、コエンザイムQ10、リン脂質、α−リポ酸、核酸、霊芝、セラミド、ブドウ種子エキス、ポリフェノール類、松樹皮抽出物、グルコサミン、ハープシールオイル、ヤマブシタケ、明日葉、ニンニク抽出物、冬虫夏草、ウコン、マカ、カシス抽出物、およびテアニンからなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項1から6のいずれかの項に記載の認知行動能力の向上剤。

【公開番号】特開2010−270095(P2010−270095A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−131448(P2009−131448)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】