説明

認証方法及び認証装置

【課題】利用者が簡便に利用でき、かつ、電源用の外部配線を無くすること。
【解決手段】引手部を操作する利用者を認証する認証方法であって、前記引手部に加えられる操作を受けて発電するステップと、このステップで生じた電力供給を受けて、制御部が起動し、前記利用者に特別な認証動作を行わせない態様で前記利用者に固有の認証情報を取得して、前記利用者の利用可否に関する認証動作を実行するステップと、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、認証方法及び認証装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、キャビネットに、電気的に施解錠を行う施解錠装置を組込み、各利用者に付与されたIDカードのIDを取得することで利用者の認証を行い施解錠装置の施解錠を制御するようにした収納システムが知られている。
【0003】
なお、本願発明に関連する先行技術として、特許文献1〜3に開示のものがある。これらは、錠装置に発電装置を組込んだ技術を開示している。
【0004】
【特許文献1】特開平8−319742号公報
【特許文献2】特開2003−27786号公報
【特許文献3】特開2005−127096号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、IDカード等を用いて認証を行うシステムでは、利用の度に利用者がIDカードを取出してこれをカードリーダに読込ませる等、特別な認証操作が必要であり、利用者に面倒な作業を強いることになっていた。
【0006】
そこで、本発明は、利用者が簡便に利用でき、かつ、電源用の外部配線を無くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、第1の態様に係る認証方法は、引手部を操作する利用者を認証する認証方法であって、(a)前記引手部に加えられる操作を受けて発電するステップと、(b)前記ステップ(a)で生じた電力供給を受けて、制御部が起動し、前記利用者に特別な認証動作を行わせない態様で前記利用者に固有の認証情報を取得して、前記利用者の利用可否に関する認証動作を実行するステップと、を備えたものである。
【0008】
第2の態様に係る認証方法は、第1の態様に係る認証方法であって、(c)前記ステップ(b)に続いて、前記制御部が、前記認証動作による認証結果に基づいて錠装置を駆動制御するステップと、(d)前記錠装置が、前記制御部による駆動制御に応じて、前記ステップ(a)で生じた電力供給を受けて、ロック状態からアンロック状態に切替るステップと、をさらに備えたものである。
【0009】
第3の態様に係る認証装置は、引手部を操作する利用者を認証する認証装置であって、前記引手部に加えられる操作を受けて発電する発電部と、前記発電部からの電力供給を受けて起動し、前記利用者に特別な認証動作を行わせない態様で前記利用者に固有の認証情報を取得して、その認証情報に基づいて前記開閉部の利用可否を決定する制御部と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0010】
この第1の態様に係る認証方法によると、引手部に加えられる開放操作を受けて発電し、これによる電力供給を受けて、制御部が起動し、前記利用者に特別な認証動作を行わせない態様で前記利用者に固有の認証情報を取得して、前記利用者の利用可否に関する認証動作を実行する。このため、利用者が簡便に利用でき、かつ、電源用の外部配線を無くすることができる。
【0011】
また、第2の態様に係る認証方法によると、制御部の認証結果に応じて錠装置がロック状態からアンロック状態に切替るため、権限ある利用者は引手を操作することで、簡便に利用できる。
【0012】
この第3の態様に係る認証装置によると、引手部に加えられる開放操作を受けて発電し、これによる電力供給を受けて、制御部が起動し、前記利用者に特別な認証動作を行わせない態様で前記利用者に固有の認証情報を取得して、その認証情報に基づいて前記開閉部の利用可否を決定する。このため、利用者が簡便に利用でき、かつ、電源用の外部配線を無くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明の実施形態に係る格納システム及び認証錠装置について説明する。
【0014】
<A:全体構成>
まず、本格納システムの全体構成について説明する。図1は格納システムの全体を概略的に示す図であり、図2は格納システムの要部拡大図である。
【0015】
この格納システムは、格納手段として複数のキャビネット10(図1では3つのキャビネット10を図示)を備えている。これらの各キャビネット10には、自己発電して所定の認証動作及び解錠動作を行う自己発電式の認証錠装置20が組込まれている。また、このキャビネット10の利用者に対しては、無線端末装置としてのIDカード18が付与される。
【0016】
この格納システムはおおよそ次のようにして利用される。すなわち、利用者が所定のキャビネット10の格納部位を利用するにあたって、該キャビネット10に設けられた引手部12a,15aを操作する。すると、その操作力を受けて認証錠装置20内で自己発電を行い、この発電力を受けて利用者に付与されたIDカード18との間で無線通信を行って利用者が該キャビネット10を利用可能であるか否かを判断する。認証錠装置20は、利用者が利用可能であると認証したときに、解錠動作する。一方、認証錠装置20は、利用者が利用不可であると判断したときに施錠状態を保つ。これにより、利用者は該利用権限あるキャビネット10の格納部位だけを利用できるようになる。
【0017】
なお、これらの利用履歴は、認証錠装置20から管理コンピュータ60に送信され、その利用履歴が管理コンピュータ60にて管理記憶されるようになっている。
【0018】
<B:キャビネットの構成>
キャビネット10の構成についてより詳細に説明する。図1及び図2に示すように、キャビネット10は、書類等の格納物を格納する手段である。ここでは、キャビネット10は、上半部と下半部とに分割されており、それぞれに、扉12で開閉自在とされた扉式収納部13又は引出し押込自在とされた複数段(ここでは3段)の引出し部15を有する引出式収納部16を有している。これらの扉12及び引出し部15は、開閉自在な開閉部として機能する。
【0019】
もっとも、キャビネット10の全体が一組の扉で開閉される構成であってもよいし、又は、全体が引出式の収納部であってもよい。
【0020】
また、格納手段の例は、キャビネット10のように一定位置に設置される固定タイプのものに限られず、可動式の脇机等、可動タイプのものであってもよい。
【0021】
例えば、図3に示すキャビネット10Bは、複数段(ここでは)の引出し部15Bを有する本体の底面に転動体を有するキャスタ11Bが取付けられた構成となっている。
【0022】
上記扉12や引出し部15,15Bには、それらが開かれるのに先立って開放操作される引手部12a,15a,15Baを備えている。ここでは、引手部12a,15a,15Baは、略板状部材であり、扉12や引出し部15,15Bの正面の窪み部位に設けられている。また、引手部12a,15a,15Baは、該正面部位と略水平な初期姿勢から該正面部位から突出する方向に傾斜した操作姿勢との間で揺動自在に取付けられると共に、ねじりコイルバネ等の弾性手段によって操作姿勢から初期姿勢に向けて付勢されている。
【0023】
そして、利用者が扉12や引出し部15,15Bを開くにあたっては、引手部12a,15a,15Baに手をかけるようにして、その引手部12a,15a,15Baを初期姿勢から操作姿勢に姿勢変更させるようにしつつ、扉12や引出し部15,15Bを引出すようになっている。
【0024】
これらの各引手部12a,15a,15Baのそれぞれに、認証錠装置20が組込まれている。
【0025】
このような引手部12a,15a,15Ba自体の構成は、従来のキャビネットの扉や引出しに設けられているものと同様構成であるため、詳細な説明は省略する。
【0026】
勿論、引手部12a,15a,15Baとしては上記構成に限らず、利用者が利用しようとする場合にごく自然に手をかけて何らかの操作を加えようとする全ての構成、例えば、一般的なドアのノブのような構成も含む。
【0027】
<C:認証錠装置の構成>
認証錠装置20について説明する。この認証錠装置20は、上記各扉12及び各引出し部15,15Bに取付けられている(図2参照)。各認証錠装置20は、各扉12及び各引出し部15,15B毎を管理単位として、後述する認証動作及び解錠動作を行う。
【0028】
図4は認証錠装置のブロック図である。この認証錠装置20は、発電部22と、制御部28と、錠装置30とを備えている。そして、上記引手部12a,15a,15Baに加えられる操作を受けて発電部22が発電するようになっている。また、この発電部22からの電力供給を受けて制御部28が起動して認証動作を行い、利用可と判断された場合に錠装置30を駆動して扉12及び引出し部15,15Bを開放可能な状態に切替えるようになっている。
【0029】
各部についてより詳細に説明する。
【0030】
<C−1:発電部>
図5は発電部の機構を説明する図である。図4及び図5に示すように、発電部22は、引手部12a,15a,15Baの動きを伝達する伝達機構23と、運動エネルギーを電気エネルギーに変換する発電本体部26とを備えている。
【0031】
ここでは、伝達機構23は、ラック24aとピニオン24bとの組合わせにより構成されている。また、発電本体部26は、直流発電機により構成されている。
【0032】
ラック24aと引手部12a,15a,15Baとは、線状部材等の連結部材25を介して連結されており、引手部12a,15a,15Baが初期姿勢から操作姿勢に姿勢変更されるのに伴ってラック24aが逐次引張られるように移動するようになっている。ピニオン24bは、発電本体部26の回転軸に取付けられており、上記ラック24aと噛合うようになっている。そして、引手部12a,15a,15Baの姿勢変更によりラック24aが移動すると、ラック24aとピニオン24bとの噛合い機構により、直線運動が回転運動に変換されて発電本体部26に伝達され、発電本体部26が直流電力を生じるようになっている。この電力は、制御部28及び錠装置30に供給される。
【0033】
なお、運動エネルギーを電気エネルギーに変換する発電本体部26としては、磁石とコイルとを適宜組合わせたもの等、電磁誘導を利用した種々の構成を用いることができる。また、その他、圧電素子等、圧電効果を利用して発電するものを用いることもできる。
【0034】
また、引手部12a,15a,15Baの動きを発電本体部26に伝達する機構としても、種々のリンク機構やギヤ等を用いた様々な構成のものを用いることができる。
【0035】
<C−2:錠装置>
図6は錠装置を示す図である。図4及び図6に示すように、錠装置30は、ロック部32と、解錠駆動部36とを備えている。
【0036】
ロック部32は、扉12及び引出し部15,15Bと閉状態に保つロック状態とそれらを開放可能にするアンロック状態との間で切替可能に構成されている。
【0037】
ここでは、ロック部32は、扉12及び引出し部15,15Bに揺動自在に取付けられたロック爪33と、ロック爪33を付勢するコイルバネ等の付勢手段34とを有している。
【0038】
ロック爪33は、基端部が軸部33bを介して扉12及び引出し部15,15Bに揺動自在に取付けられると共に、先端部にキャビネット10の本体側に形成されたロック孔10hに係脱自在なロック突部33aを有している。そして、ロック爪33は、ロック突部33aをロック孔10hに係合させたロック姿勢(図6参照)と、ロック孔10hから係合解錠可能な非ロック姿勢(図6で矢符A1方向に姿勢変更した姿勢)との間で姿勢変更自在とされている。
【0039】
また、上記付勢手段34は、ロック爪33をロック姿勢に向けて(図6の矢符A2参照)常時付勢している。この付勢手段34の付勢力により、扉12及び引出し部15,15Bが閉じられた状態では、ロック突部33aはロック孔10hに係合した状態に保たれ、ロック部32がロック状態を保つようになっている。
【0040】
また、ロック爪33は、軸部33bを介して引手部12a,15a,15Baの取付軸に連結されている。この軸部33bと引手部12a,15a,15Baの取付軸との間には、クラッチ部35が介在している。クラッチ部35は、解錠駆動部36の駆動により、引手部12a,15a,15Baの取付軸から軸部33bへの回転力の伝達経路を確立した状態と遮断した状態とに切替可能に構成されている。そして、その伝達経路が確立された状態では、引手部12a,15a,15Baを操作姿勢に姿勢変更することで、ロック爪33が非ロック姿勢に姿勢変更し、ロック状態からアンロック状態に切り替るようになっている。
【0041】
一方、その伝達経路が遮断された状態では、引手部12a,15a,15Baの姿勢に拘らず、ロック爪33はロック姿勢と非ロック姿勢との間で姿勢変更可能で、かつ、ロック姿勢に向けて付勢された状態となっている。つまり、この状態では、引手部12a,15a,15Baを操作姿勢に姿勢変更しても、ロック姿勢に保たれる。また、ロック爪33の先端部を直接押すことで付勢手段34の付勢力に抗してロック爪33をロック姿勢から非ロック姿勢に姿勢変更させることができるようになっている。
【0042】
また、ロック突部33aの先端部はロック爪33の先端側に向けて順次先細りとなる傾斜形状に形成されている。そして、扉12及び引出し部15,15Bが開かれた状態から扉12及び引出し部15,15Bを閉じると、ロック突部33aの傾斜状の先端部がロック孔10hの周縁部に摺接することで、ロック爪33が非ロック姿勢に姿勢変更するようになる。また、ロック突部33aがロック孔10hの周縁部を乗越えると、付勢手段34の付勢力によりロック爪33がロック姿勢に姿勢変更し、ロック突部33aがロック孔10hに係合し、ロック状態となるようになっている。
【0043】
解錠駆動部36は、発電部22からの電力供給を受けて上記ロック部32をロック状態からアンロック状態へ切替駆動するように構成されている。
【0044】
ここでは、解錠駆動部36は、自己吸着型プランジャ37を有している。自己吸着型クランプは、マグネット37aを有する略U字状のヨーク37bと、ヨーク37bに巻回されたコイル37cと、略U字状の可動片37dとを有している。ヨーク37bは固定位置に設けられており、可動片37dはヨーク37bに吸着した位置(吸着位置)とヨーク37bから離れた位置(離間位置)との間で移動自在に構成されている(矢符A3参照)。
【0045】
ヨーク37bは固定位置に設けられており、そのコイル37cはスイッチング素子29を介して発電部22に電気的に接続されている。また、可動片37dは、コイルバネ等の弾性伝達手段を介して引手部12a,15a,15Baに連結されている。そして、引手部12a,15a,15Baを引張ると、可動片37dを吸着位置から離間位置に向けて移動させる力が作用するようになっている。
【0046】
この自己吸着型プランジャ37は、コイル37cに電流が流されない通常状態では、可動片37dはマグネット37aの磁力によりヨーク37bに吸着保持されている。この状態で、コイル37cに、スイッチング素子29をオン状態にして、発電部22からパルス波等の開放電圧を印加すると、コイル37cによりマグネット37aの磁束を相殺する磁束が発生し、可動片37dの吸着力がキャンセルされる。すると、可動片37dは、引手部12a,15a,15Baから弾性伝達手段を介して伝達される力により、離間位置に向けて移動するようになる。
【0047】
可動片37dが吸着位置から離間位置に向けて移動すると、その移動が移動伝達機構を介してクラッチ部35に伝達され、クラッチ部35は、引手部12a,15a,15Baの取付軸から軸部33bへの回転力の伝達経路が確立された状態になる。その移動を伝達する移動伝達機構自体は、周知のリンク機構を利用して構成することができる。
【0048】
また、この自己吸着型プランジャ37は、吸着位置が下方、離間位置が上方になる位置関係で配設されている。そして、可動片37dが吸着位置から離間位置した後、開放電圧を遮断すると、重力によって可動片37dが吸着位置に復帰する。これにより、クラッチ部35は、引手部12a,15a,15Baの取付軸から軸部33bへの回転力の伝達経路が遮断された状態になる。
【0049】
なお、可動片37dを吸着位置に復帰させる構成としては、重力を利用した構成に限らず、例えば、コイルバネ等の弾性手段を用いた構成であってもよい。
【0050】
<C−3:制御部>
制御部28は、図4に示すように、発電部22からの電力供給を受けて起動し、利用者に関する認証情報を取得しその認証情報に基づいて、自己が取付けられた扉12及び引出し部15,15Bの利用可否を判断し、利用可と判断された場合に、解錠駆動部36を駆動制御してロック部32をアンロック状態に切替える手段である。
【0051】
より詳細に説明すると、制御部28は、CPU、ROMおよびRAM等を備える一般的なマイクロコンピュータであり、その演算動作はすべて予め格納されたソフトウェアプログラムによって実行されるものである。この制御部28は、発電部22から電力供給を受けると起動し、その電力により認証制御部28aと錠制御部28bとして機能を実行するようになっている。
【0052】
認証制御部28aには、自己のメモリ内に、自己が取付けられた扉12及び引出し部15,15Bを利用可能なIDリストが登録されている。そして、認証制御部28aは、起動によりアンテナ28cを通じてIDカード18との間で無線通信を行い、IDカード18を所持した利用者が、自己が取付られた扉12及び引出し部15,15Bを利用可能であるかどうかの認証動作を行うようになっている。
【0053】
ここで、IDカード18は、自己のメモリ内に固有のID(認証情報)を記憶すると共に、認証制御部28aとの間で無線通信を行い認証制御部28aからの要求に応じて自己のID情報を認証制御部28aに向けて無線送信するように構成されている。このIDカード18は、本システムの利用者に付与されており、利用者は、このIDカード18を所持して引手部12a,15a,15Baを初期姿勢から操作姿勢に向けて引張るように操作する。
【0054】
錠制御部28bは、認証制御部28aの認証結果に基づいて、スイッチング素子29をオンオフすることで、解錠駆動部36を駆動制御するようになっている。
【0055】
図7は本制御部の動作を示すフローチャートである。
【0056】
同図に示すように、発電部22が発電すると、ステップS1に示すように、制御部28は発電部22からの電力供給を受けて起動し、ステップS2に移行する。
【0057】
ステップS2では、認証制御部28aは無線交信の成否を判定する。ここで、利用者がIDカード18を所持していなかった場合には、無線交信不成立となり、処理を終了する。一方、利用者がIDカード18を所持していた場合には、そのIDカード18との間に無線交信が成立し、ステップS3に移行する。
【0058】
ステップS3では、該IDカード18に無線通信を通じてIDの要求指令を与える。そして、IDカード18にIDが登録されていなかった場合等には、IDを取得できず、処理を終了する。一方、IDカード18からIDを取得できた場合には、ステップS4に移行する。
【0059】
ステップS4では、無線交信を通じて取得されたIDカード18のIDと自己のメモリに登録された利用可能なIDリストに基づいて、利用可能な否かの認証を行う。認証の結果、不合格(利用不可)と判断された場合には、処理を終了する。一方、合格(利用可能)と判断された場合には、ステップS5に移り、スイッチング素子29にオン信号を与え、スイッチング素子29をオン状態になる。これにより、錠装置30はアンロック状態になり、利用者が該当する扉12及び引出し部15,15Bを利用できるようになる。
【0060】
ステップS5で解錠動作を行った後、ステップS6において、認証制御部28aは、自己の扉12及び引出し部15,15Bを識別する符号と共に、利用者のIDを外部に向けて無線通信する。この無線通信は、外部に設けられた管理コンピュータ60で受信される。
【0061】
これにより、制御部28は処理を終了する。
【0062】
なお、管理コンピュータ60は、複数の制御部28との間で通信を行い、利用者のIDと自己の扉12及び引出し部15,15Bの識別符号と利用時間等を対応づけたテーブルを生成更新し、このテーブルを本システムの利用履歴として記憶する。
【0063】
<D:全体動作の説明>
本システムの全体動作を説明する。図8は引手部の状態と本システムの動作内容との関係を示す図である。
【0064】
まず、利用者は自己に付与されたIDカード18を所持して、引手部12a,15a,15Baを引張って初期姿勢から操作姿勢に向けて姿勢変更させる。
【0065】
引手部12a,15a,15Baの操作を開始すると、発電部22は発電する。すると、引手部12a,15a,15Baの操作開始後初期(動作ストローク初期区間)で、制御部28は電力供給を受けて起動し上記認証動作を実行する。制御部28での認証が合格になると、引手部12a,15a,15Baの操作中期(動作ストローク中期区間)で、解錠駆動部36が動作してロック部32をロック状態からアンロック状態へ切替駆動する。この後、引手部12a,15a,15Baの操作開始後終期(動作ストローク終期区間)で、ロック部32による実際のロックが解除されると共に、制御部28から管理コンピュータ60に向けて履歴データが送信される。
【0066】
なお、上記例では引手部12a,15a,15Baが操作されて発電が継続している期間内に、認証錠装置20の動作が全て終了するようになっているが必ずしもその必要はない。例えば、引手部12a,15a,15Baと発電部22との間に、バネ等の弾性手段を用いた蓄力機構を介在させたり、或は、給電回路に電力を一時的に蓄えるキャパシタを設ける等して、引手部12a,15a,15Baの操作終了後に認証錠装置20の動作が行われるようにしてもよい。
【0067】
これにより、利用者は、操作姿勢に姿勢変更された引手部12a,15a,15Baを引張りつつ、扉12及び引出し部15,15Bを引いて開くことができる。そして、利用者は扉12及び引出し部15,15Bで閉じられていた収納空間に収納された収納物にアクセスして利用できる。
【0068】
利用を終了すると、利用者は、扉12及び引出し部15,15Bを押してそれらを閉じる。この際には、上記したように、発電部や解錠駆動部36の動作状況と関わりなく、ロック部32をロック孔10hに係合させて、元の閉じた状態、即ち、扉12及び引出し部15,15Bを閉状態に保つロック状態にすることができる。
【0069】
以上のように構成された格納システム及び錠装置30によると、扉12及び引出し部15,15Bに、引手部12a,15a,15Baに加えられる開放操作を受けて発電する発電部22と、ロック状態とアンロック状態との間で切替可能なロック部32と、発電部22からの電力供給を受けてロック部32をロック状態からアンロック状態へ切替え可能な解錠駆動部36とを有する錠装置30と、発電部22からの電力供給を受けて起動し、利用者に関するIDを取得しそのIDに基づいて利用可否を決定し、利用可と判断された場合に、解錠駆動部36を駆動制御してロック部32をアンロック状態に切替える制御部28とが設けられているため、外部からの電源供給を受けることなく、認証動作及び解錠動作が行われ、電源用の外部配線を無くするができる。また、停電等の影響を受けることなくキャビネット10を利用できるという利点もある。
【0070】
また、外部配線を無くすることができるため、外部配線工事等を行うことなく、本認証錠装置20をそれ単独で、又は、扉12や引出し部15,15Bと共に交換するだけで、既存のキャビネット10に容易に後付することができるというメリットもある。
【0071】
また、制御部28は、発電部22からの電力供給を受けて起動し、利用者に関するIDを取得しそのIDに基づいて利用可否を決定し、利用可と判断された場合に、解錠駆動部36を駆動制御してロック部32をアンロック状態に切替えるため、利用者は格別な認証動作を行うことなく、通常のキャビネット10を利用するのと同様に、引手部12a,15a,15Baを開放操作するだけで、利用権限ある場所を簡便に利用できる。
【0072】
また、実際に引手部12a,15a,15Baの操作を受けたものに対応する認証錠装置20だけが動作を実行するため、無関係な他の認証錠装置20が誤動作をしてしまう恐れも回避できる。
【0073】
しかも、制御部28は、起動後にIDと無線通信することで、IDを取得するものであると、利用者がIDカード18を所持しつつ引手部12a,15a,15Baを開放操作することで、利用権限ある格納場所を簡便に利用できる。
【0074】
なお、図9に示すように、上記制御部28とIDカード18とは、キャビネット10の正面にIDカード18がある状態、特に、キャビネット10を利用しようとする利用者が存在するであろうと予定される正面エリアにIDカード18がある状態で、それらの間で無線通信が成立するように設定されていることが好ましい。具体的には、そのような距離範囲(例えば、50cm)の範囲内で無線通信が成立するような電波出力に設定されていることが好ましい。
【0075】
これにより、実際にキャビネット10を利用しようとする利用者が所持するIDカード18のIDを取得することができ、誤った解錠を防止することができる。すなわち、キャビネット10の周囲に利用意思を持たないが利用権限ある人が存在したとする。かかる状況で、他の利用権限ない人がキャビネット10を利用しようとした場合に、利用権限ある人のIDが読込まれ誤った認証がなされる恐れがある。そこで、無線通信の成立範囲を限定することで、上記のような誤った認証を回避することができる。
【0076】
もっとも、この場合には、図10に示すように、履歴データを管理コンピュータ60に送信する場合には、制御部28からの電波出力を強くして(例えば、30m送信可能な程度の電波出力)に切替えることが好ましい。
【0077】
<E:変形例>
なお、上記実施形態では、認証錠装置20に組込まれた制御部28が認証制御部28aと錠制御部28bとして機能を実行する例で説明したが、図11に示すように、認証制御部28aとしての機能が外部の制御手段である外部コントローラにより実現されていてもよい。
【0078】
すなわち、図11に示す例では、キャビネット10側に、上記認証錠装置20のうち認証機能を省略した認証錠装置120が設けられている。また、外部コントローラ100が無線通信機102を通じて各認証錠装置120及び各IDカード18と無線通信可能に構成されている。
【0079】
そして、認証錠装置120は、引手部12a,15a,15Baに操作が加えられると、外部コントローラ100に対して認証結果を問い合せる。すると、外部コントローラ100は、認証結果問い合せのあった認証錠装置120の最も近く存在するIDカード18のIDを無線通信にて取得し、上記認証制御部28aと同様に認証を行い、その認証結果を認証結果問い合せのあった認証錠装置120に対して送信する。認証錠装置120はその認証結果に応じて解錠制御を行う。外部コントローラ100による認証結果は、利用履歴として無線LAN等を通じて管理コンピュータ60に送信される。
【0080】
なお、外部コントローラ100によるIDカード18等の位置特定は、3点測量を利用した位置特定技術等を適用できる。認証対象となる認証錠装置120とIDカード18との対応を正確にするため、その位置特定は可及的に正確になされることが好ましい。
【0081】
つまり、利用者に関する認証情報を取得しその利用者認証情報に基づいて扉12、引出し部15,15Bの利用可否を決定する認証動作を行う認証手段としての機能は、必ずしも認証錠装置20,120に設けられている必要はないし、また、その機能を実行する手段が認証錠装置20,120内での発電を電源として実際の処理を行う必要はない。要するに、引手部12a,15a,15Baへの操作を起因として認証錠装置20,120の内部又は外部の制御手段が認証動作を行い、かつ、認証錠装置20,120の内部の認証錠装置20が内部発電電力によって駆動制御されてロック状態からアンロック状態へ切替わる構成であればよい。
【0082】
また、認証は、必ずしも各利用者に付与されたIDカード18のIDを取得して行われる必要はない。例えば、認証錠装置20の近くに存在する利用者の顔や網膜を認証するものであってもよい。また、引手部12a,15a,15Baに指紋等の認証装置を組込んでよい。要するに、利用者に特別な認証動作を行わせずに、各人に固有の情報を取得して認証する種々の構成をも採用することができる。
【0083】
例えば、図12に示す例では、図11において、IDカード18と外部コントローラ100との間で通信を行うことで、認証及び位置特定を行う代りに、キャビネット10を配置した部屋に1又は複数のカメラ装置210を設置し、その部屋内の人物を撮像している。そして、このカメラ装置210の画像に基づいて、人物の顔の認証及びその人物の存在位置を特定するようにしている。
【0084】
勿論、上記各認証装置は、認証錠装置20,120に組込まれていてもよい。
【0085】
また、上記認証錠装置20自体は、キャビネット10の扉12や引出し部15,15Bだけではなく、例えば、建築物や部屋の扉等に設けることもできる。
【0086】
また、上記実施形態には次の内容が開示されている。
【0087】
第1の態様は、開閉自在な開閉部と、前記開閉部が開かれるのに先立って開放操作される引手部とを有する格納手段と、利用者に関する認証情報を取得しその利用者認証情報に基づいて前記開閉部の利用可否を決定する認証動作を行う認証手段と、を備え、前記開閉部に、前記引手部に加えられる開放操作を受けて発電する発電部と、前記開閉部を閉状態に保つロック状態と前記開閉部を開放可能にするアンロック状態との間で切替可能なロック部と、前記発電部からの電力供給を受けて前記ロック部を前記ロック状態から前記アンロック状態へ切替え可能な解錠駆動部とを有する錠装置と、前記発電部からの電力供給を受けて前記解錠駆動部の駆動を制御する解錠駆動制御手段とが設けられており、前記引手部への開放操作に伴って前記認証手段が認証動作を行い、利用可と判断された場合に、前記解錠駆動制御手段は解錠駆動部を駆動して前記ロック部をアンロック状態に切替えるものである。
【0088】
これにより、外部からの電源供給を受けることなく、解錠駆動部及び解錠駆動制御手段が動作する。従って、電源用の外部配線を無くすることができる。また、内蔵電池を無くすることができるので、内蔵電池として二次電池を用いた場合と比べて充電作業等が不要であるというメリットがあり、また、ソーラー電池を採用した場合と比較して暗所や夜間での使用にも制約がないというメリットがある。
【0089】
また、前記引手部への開放操作に伴って認証手段が認証動作を行い、利用可と判断された場合に、前記解錠駆動制御手段は解錠駆動部を駆動して前記ロック部をアンロック状態に切替えるため、利用者は特殊な認証動作を行うことなく、引手を開放操作するだけで、権限ある開閉部を簡便に利用できる。
【0090】
また、第2の態様は、開閉自在な開閉部と、前記開閉部が開かれるのに先立って開放操作される引手部とを有する格納手段を備え、前記開閉部に、前記引手部に加えられる開放操作を受けて発電する発電部と、前記開閉部を閉状態に保つロック状態と前記開閉部を開放可能にするアンロック状態との間で切替可能なロック部と、前記発電部からの電力供給を受けて前記ロック部を前記ロック状態から前記アンロック状態へ切替え可能な解錠駆動部とを有する錠装置と、前記発電部からの電力供給を受けて起動し、利用者に関する認証情報を取得しその認証情報に基づいて前記開閉部の利用可否を決定し、利用可と判断された場合に、解錠駆動部を駆動制御して前記ロック部をアンロック状態に切替える制御手段と、が設けられたものである。
【0091】
これにより、外部からの電源供給を受けることなく、認証動作及び解錠動作が行われ、電源用の外部配線を無くすることができる。
【0092】
また、制御手段は、前記発電部からの電力供給を受けて起動し、利用者に関する認証情報を取得しその認証情報に基づいて前記開閉部の利用可否を決定し、利用可と判断された場合に、解錠駆動部を駆動制御して前記ロック部をアンロック状態に切替えるため、利用者は格別な認証動作を行うことなく、引手を開放操作するだけで、利用権限ある開閉部を簡便に利用できる。
【0093】
また、第3の態様は、上記第1又は第2の態様において、識別符号が割当てられて利用者に付与される無線端末装置をさらに備え、前記認証手段又は前記制御手段は、起動後に前記無線端末装置と通信することで、利用者の認証情報として前記無線端末装置に割当てられた識別符号を取得するものである。
【0094】
これにより、利用者が無線端末装置を所持しつつ引手を開放操作することで、利用権限ある開閉部を簡便に利用できる。
【0095】
また、第4の態様は、第2の態様において、識別符号が割当てられて利用者に付与される無線端末装置をさらに備え、格納手段の正面エリアにある前記無線端末装置と前記制御手段の間で無線通信が成立するように設定されており、前記制御手段は、起動後に前記無線端末装置と通信することで、利用者の認証情報として前記無線端末装置に割当てられた識別符号を取得するものである。
【0096】
これにより、格納手段を利用しようとする利用者が所持する無線端末装置の識別符号を読取ることができ、周辺にいる人が所持する無線端末装置の存在による誤った解錠を防止することができる。
【0097】
また、第5の態様は、引手部を有する開閉部材に取付けられる認証錠装置であって、前記引手部に加えられる操作を受けて発電する発電部と、前記開閉部を閉状態に保つロック状態と前記開閉部を開放可能にするアンロック状態との間で切替可能なロック部と、前記発電部からの電力供給を受けて前記ロック部を前記ロック状態から前記アンロック状態へ切替え可能な解錠駆動部とを有する錠装置と、前記発電部からの電力供給を受けて起動し、利用者に関する認証情報を取得しその認証情報に基づいて前記開閉部の利用可否を決定し、利用可と判断された場合に、解錠駆動部を駆動制御して前記ロック部をアンロック状態に切替える制御手段と、を備えたものである。
【0098】
これにより、外部からの電源供給を受けることなく、解錠駆動部及び制御手段が動作して、認証及び解錠することができる。従って、電源用の外部配線を無くすることができる。
【0099】
また、制御手段は、前記発電部からの電力供給を受けて起動し、利用者に関する認証情報を取得しその認証情報に基づいて前記開閉部の利用可否を決定し、利用可と判断された場合に、解錠駆動部を駆動制御して前記ロック部をアンロック状態に切替えるため、利用者は特殊な認証動作を行うことなく、引手を開放操作するだけで、権限ある開閉部を簡便に利用できる。
【0100】
なお、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】格納システムの全体を概略的に示す図である。
【図2】格納システムの要部拡大図である。
【図3】キャビネットの他の例を示す図である。
【図4】認証錠装置のブロック図である。
【図5】発電部の機構を説明する図である。
【図6】錠装置を示す図である。
【図7】制御部の動作を示すフローチャートである。
【図8】引手部の状態と本システムの動作内容との関係を示す図である。
【図9】認証錠装置とIDカードとの無線通信範囲の例を示す図である。
【図10】認証錠装置と管理コンピュータとの無線通信範囲の例を示す図である。
【図11】認証制御部としての機能を外部に設けた変形例を示す図である。
【図12】他の認証装置を用いた変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0102】
10 キャビネット
12 扉
12a,15a,15Ba 引手部
15 引出し部
18 IDカード
20 認証錠装置
22 発電部
28 制御部
28a 認証制御部
28b 錠制御部
30 錠装置
32 ロック部
36 解錠駆動部
60 管理コンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
引手部を操作する利用者を認証する認証方法であって、
(a)前記引手部に加えられる操作を受けて発電するステップと、
(b)前記ステップ(a)で生じた電力供給を受けて、制御部が起動し、前記利用者に特別な認証動作を行わせない態様で前記利用者に固有の認証情報を取得して、前記利用者の利用可否に関する認証動作を実行するステップと、
を備えた認証方法。
【請求項2】
請求項1記載の認証方法であって、
(c)前記ステップ(b)に続いて、前記制御部が、前記認証動作による認証結果に基づいて錠装置を駆動制御するステップと、
(d)前記錠装置が、前記制御部による駆動制御に応じて、前記ステップ(a)で生じた電力供給を受けて、ロック状態からアンロック状態に切替るステップと、
をさらに備えた認証方法。
【請求項3】
引手部を操作する利用者を認証する認証装置であって、
前記引手部に加えられる操作を受けて発電する発電部と、
前記発電部からの電力供給を受けて起動し、前記利用者に特別な認証動作を行わせない態様で前記利用者に固有の認証情報を取得して、その認証情報に基づいて前記開閉部の利用可否を決定する制御部と、
を備えた認証装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−138515(P2008−138515A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−16009(P2008−16009)
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【分割の表示】特願2006−52184(P2006−52184)の分割
【原出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000139780)株式会社イトーキ (833)
【Fターム(参考)】