説明

認証装置、認証方法、及びプログラム

【課題】なりすまし等の悪意のある電話を確実に識別するとともに、悪意のある電話の可能性が高いと判定された場合に、その旨を所定の通知先に通知する。
【解決手段】発信者端末と着信者端末とが電話網を介して接続されて構成された通信システムにおいて使用される認証装置において、前記発信者端末から前記着信者端末に向けて送信された音声を受信する受信手段と、前記受信手段により受信する音声から声紋情報を取得し、当該声紋情報と、所定の声紋情報とを照合することにより声紋認証を行う声紋認証手段と、前記声紋認証が成功しなかった場合に、前記受信手段により受信する音声の内容が、所定のキーワードに該当するかどうかを判定する判定手段と、前記判定手段により、前記音声の内容が前記所定のキーワードに該当すると判定された場合に、所定の通知先アドレス宛に、前記発信者端末のユーザが正当な者でないことを示すメッセージを通知する通知手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、なりすまし電話のような危険な通話を識別し、識別結果を所定の通知先に通知する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、本人になりすまして本人の家族に電話をかけることによりなされる振り込め詐欺のような詐欺行為が社会問題になっている。このような悪意のある電話への従来からある対策としては、ナンバーディスプレイ、ISDN等を利用して、着信者側で発信者番号を表示するようにし、表示された発信者番号から発信者を識別するとともに、発信者側から発信者番号が通知されない場合には端末の機能や電話サービスを利用して着信拒否する方法がある。
【特許文献1】特開2005−148982号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の従来の方法では、発信が公衆電話からなされた場合、電話番号で発信者の本人性を確認することはできず、会話の中で本人かどうかを確認せざるを得ない。また、番号非通知の場合に、一律に着信を拒否してしまうと、悪意でない電話も拒否してしまう可能性が高くなるという問題がある。更に、悪意のない発信者がいつも使用している電話番号と異なる電話番号から発信を行う場合には、着信者側には誰のものかわからない電話番号が表示されるので、悪意のない発信者との通話がなされない可能性がある。
【0004】
上記のように、発信者番号のみを用いたなりすまし電話対策では、悪意でない電話を拒否することなく悪意のある電話を判別することはできず、結局、悪意のある電話を判別するには、電話の着信があった場合に着信を拒否することなく発信者と会話を行って、発信者との会話内容や発信者の声質等から判断するしかない。
【0005】
しかし、発信者の巧みな言い回しにより、着信を受けた者が正常な心理状態でなくなった場合等には、危険性についての十分な判断が困難になり、なりすましを信用してしまう可能性が高い。
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、なりすまし等の悪意のある電話をできるだけ確実に識別するとともに、悪意のある電話の可能性が高いと判定された場合において、その旨を予め定めた通知先に通知するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、発信者端末と着信者端末とが電話網を介して接続されて構成された通信システムにおいて使用される認証装置であって、所定の声紋情報と、所定のキーワードと、所定の通知先アドレスとを格納する格納手段と、前記発信者端末から前記着信者端末に向けて送信された音声を受信する受信手段と、前記受信手段により受信する音声から声紋情報を取得し、当該声紋情報と、前記格納手段に格納された所定の声紋情報とを照合することにより声紋認証を行う声紋認証手段と、前記声紋認証が成功しなかった場合に、前記受信手段により受信する音声の内容が、前記格納手段に格納された所定のキーワードに該当するかどうかを判定する判定手段と、前記判定手段により、前記音声の内容が前記所定のキーワードに該当すると判定された場合に、前記格納手段に格納された所定の通知先アドレス宛に、前記発信者端末のユーザが正当な者でないことを示すメッセージを通知する通知手段と、を備えたことを特徴とする認証装置として構成される。
【0007】
前記所定の声紋情報、前記所定のキーワード、及び前記所定の通知先アドレスは、それぞれ前記着信者端末の電話番号である着信者番号に対応付けて前記格納手段に格納された情報であることとしてもよい。
【0008】
また、前記認証装置は、前記発信者端末の電話番号である発信者番号の認証を行う発信者番号認証手段を更に備え、前記格納手段は、前記着信者番号に対応付けて認証用電話番号を更に格納し、前記発信者番号認証手段は、前記発信者番号が、前記認証用電話番号と一致するかどうかを判定することより前記発信者番号の認証を行うこととしてもよい。
【0009】
また、前記受信手段は、前記電話網における音声中継装置(中継機能を持つ呼制御装置等)から、又は前記着信者端末から前記音声を受信することとしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、なりすまし等の悪意のある電話をできるだけ確実に識別することが可能になるとともに、悪意のある電話の可能性が高いと判定された場合において、その旨を予め定めた通知先に通知することができ、例えば、なりすまし電話による詐欺被害等を防止する効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0012】
(第1の実施の形態)
<システム構成>
図1は、本発明の第1の実施の形態におけるシステム構成図である。図1に示すように、本実施の形態に係るシステムは、発信者端末1、着信者端末2、認証装置3が電話網4を介して接続された構成をとる。また、電話網4は呼制御装置5を備えている。更に、通知先端末6が備えられており、通知先端末6はインターネット等を介して認証装置3から電子メールを受信することが可能である。
【0013】
発信者端末1、及び着信者端末2は、電話網4を介して通話を行うために使用される一般的な電話機である。なお、着信者端末2は、自動的に受注業務等を行う自動音声応答システムでもよい。
【0014】
呼制御装置5は、端末間の呼接続制御を行ったり、発信者番号及び着信者番号等を認証装置3に送信したりする機能を有する装置である。また、呼制御装置6は、呼接続を行った端末間で送受信される音声(音声データ)を中継する中継機能を備えており、当該中継機能を用いて端末間で送受信される通話音声を取得し、それを認証装置3に送信することができる。なお、呼制御装置5が音声の中継機能を有する代わりに、認証装置3が音声の中継機能を有することとしてもよい。
【0015】
電話網4は、当該電話網において本実施の形態に係る処理を行う呼制御装置5を実現できれば、固定電話網、携帯電話網、VoIP網等のいずれでもよく、特定の方式に限定されるものではない。ただし、本実施の形態では、電話網4としてVoIP網を使用し、呼制御装置3としてSIPサーバを用いることを想定している。本実施の形態で説明する呼制御装置3を用いた呼制御処理自体は既存技術を用いて実現できる。
【0016】
認証装置3は、本発明に係る認証処理を行う装置である。図2に、認証装置3の機能構成図を示す。
【0017】
図2に示すように、本実施の形態に係る認証装置3は、送受信部31、発信者番号認証部32、声紋認証部33、危険度分析・通知部34、認証制御部35、及びユーザ情報格納部36を有する。
【0018】
送受信部31は、電話番号、音声、メール等の各種データの送受信を電話網4を介して行うための機能部である。
【0019】
発信者番号認証部32は、呼制御装置5から発信者番号及び着信者番号を受信し、これらの番号に基づき、ユーザ情報格納部36に格納された情報を検索することにより、発信者番号の認証を行う機能部である。
【0020】
声紋認証部33は、電話網4から受信する発信者端末1と着信者端末2間の通話音声から声紋(音声の特徴)を抽出し、当該声紋とユーザ情報格納部36に格納された声紋とを比較することにより、声紋認証を行う機能部である。
【0021】
危険度分析・通知部34は、上記通話音声を音声認識技術を用いてテキストに変換し、そのテキストとユーザ情報格納部36に格納された予め定めた危険ワードとを比較することにより、会話の中に予め定めた危険ワードが含まれているかどうかを判定し、これにより会話の危険度を判定する機能を有する。更に、危険度分析・通知部43は、会話の危険度が高いと判定した場合に、予め登録した通知先にその旨を電子メールを用いて通知する機能を有する。なお、通知方法は電子メールに限らない。例えば、電話を通知先にかけて音声メッセージを送信する方法でもよい。
【0022】
認証制御部35は、各機能部に対して処理指示を行うとともに、各機能部による処理結果を取得する機能を有し、後述するフローチャートに示す処理は、この認証制御部35の制御により行われる。
【0023】
ユーザ情報格納部36は、ユーザ情報をテーブルとして格納する機能部である。図3に、ユーザ情報格納部36が格納するテーブルの一例を示す。図3に示すように、本実施の形態におけるユーザ情報格納部36には、ユーザ毎に、電話番号1、電話番号1に対応する声紋情報、電話番号2、各電話番号2に対応する声紋情報、危険ワード、通知先メールアドレスが格納されている。
【0024】
電話番号1は、対応するユーザの電話端末の電話番号である。電話番号2は、例えば当該ユーザの家族の構成メンバーの各電話番号である。また、各声紋情報は、対応する電話番号に対応するユーザの声紋情報である。危険ワードは、会話の危険度を判定するために用いるキーワードである。通知先メールアドレスは、危険度が高いと判定された場合に、その旨の通知を行う通知先のメールアドレスである。これらの情報は、例えば、ユーザ登録処理等において予め登録される情報である。
【0025】
なお、ここでの"危険度"における"危険"の意味は、例えば、着信者が悪意のある発信者にだまされる(詐欺にあう)危険といった意味であり、この観点での危険ワードとしては例えば"口座番号"、"振込み"等がある。ただし、危険ワードはこのような観点での単語に限定されるものではなく、利用者のニーズによって適宜設定することが可能である。
【0026】
認証装置3は、CPU、メモリ等の記憶装置を有する一般的なコンピュータに、上記の各機能部に対応する処理を行うためのプログラムを搭載することにより実現することが可能である。当該プログラムは、ネットワーク上のサーバからダウンロードしてコンピュータにインストールしてもよいし、プログラムが記録された記録媒体(メモリ等)からコンピュータにインストールしてもよい。
【0027】
<システムの動作>
次に、図4のシーケンスチャートを参照しながら本実施の形態におけるシステムの動作例について説明する。以下の例では、発信者端末1のユーザを発信者と呼び、着信者端末2のユーザを着信者と呼び、発信者が着信者に対して電話をかけて通話を行う場合について説明する。
【0028】
発信者が発信者端末1において着信者端末2の電話番号を用いて発呼操作を行うことにより、発信者端末1から着信者端末2に対して発呼がなされ、SIPによる呼制御(ステップ1〜4)により発信者端末1と着信者端末2との間の呼接続がなされ、通話が開始される(ステップ5)。
【0029】
呼制御装置5は、SIPによる呼制御の過程で、発信者端末1の電話番号(発信者番号)と着信者端末2の電話番号(着信者番号)とを取得しており、ステップ6において、呼制御装置5は、発信者番号と着信者番号とを認証装置3に送信し、認証装置3は発信者番号と着信者番号を受信する(ステップ6)。
【0030】
更に、呼制御装置5は、認証装置3と呼接続を行い、発信者端末1と着信者端末2間で送受信される音声を取得し、取得した音声を順次認証装置3に送信する(ステップ7)。認証装置3は当該音声を取得する。
【0031】
なお、認証装置3が音声の中継機能を持つ場合、呼制御装置5による呼制御により認証装置3と発信者端末1との間の呼接続、及び認証装置3と着信者端末2との間の呼接続を行い、認証装置3が発信者端末1と着信者端末2との間の通話音声の中継を行うこととしてもよい。この場合、認証装置3は、自分自身が中継する音声を取得し、認証処理に用いる。上記のようにして認証装置3が取得する音声は、認証装置3に備えられている記憶装置に格納される。
【0032】
ステップ8において認証装置は認証処理を行う。ステップ8で行われる認証処理の詳細を図5のフローチャートを参照して説明する。
【0033】
認証処理において、まず、認証装置3の発信者番号認証部32は、発信者番号認証を行う(ステップ81)。具体的には、発信者番号認証部32は、発信者番号と着信者番号を用いてユーザ情報格納部36を検索することにより、電話番号1として格納されている着信者番号を検出し、当該着信者番号に対応付けて電話番号2として格納されている電話番号(一般には複数である)の中に発信者番号が含まれているかどうかをチェックする。
【0034】
電話番号1として格納されている着信者番号に対応付けて電話番号2として格納されている電話番号の中に発信者番号が含まれていれば(ステップ82におけるYes)、発信者番号認証部は発信者番号認証が成功したと判定し、その旨を認証制御部35に通知する。本実施の形態では、当該通知を受けた認証制御部35は、発信者は正当な者(着信者の家族等、着信者が予期している者)であると判断し、これ以上の認証処理を行わない。もちろん、この発信者番号の認証に加えて、次のステップでの声紋認証も成功した場合にはじめて発信者は正当な者であると判定することとしてもよい。
【0035】
電話番号1として格納されている着信者番号に対応付けて電話番号2として格納されている電話番号の中に発信者番号が含まれていない場合(ステップ82におけるNo)、発信者番号認証部32は発信者番号認証に失敗したと判断し、その旨を認証制御部35に通知する。
【0036】
すると、認証制御部35は、声紋認証部33に対して声紋認証を行うよう指示し、声紋認証部33は、声紋認証処理を行う(ステップ83)。ここでは、声紋認証部33は、記憶装置に蓄積される音声(音声データ)から、無音で区切られる各音声を取得し、それぞれの声紋情報を取得し、当該声紋情報をユーザ情報格納部36に格納された声紋情報と比較することにより、それらの一致度合いを判定する。
【0037】
比較の対象となる声紋情報は、着信者番号(電話番号1)に対応付けられている声紋情報と、着信者番号(電話番号1)に対応する各電話番号2に対応付けられた声紋情報である。
【0038】
ここで、認証装置3が取得する音声には発信者の音声と着信者の音声が含まれている。上記の比較の結果、取得した音声の声紋が着信者番号(電話番号1)に対応付けられている声紋情報と一致する場合、その音声は着信者の音声であるため、発信者が正当な者であるかどうかの判定の対象とはしない。取得した音声の声紋が着信者番号(電話番号1)に対応付けられている声紋情報と一致しない音声について、それが、電話番号2に対応付けられた声紋情報のいずれかと一致するかどうかを判定することにより、発信者が正当な者であるかどうかの判定を行う。
【0039】
例えば、声紋認証部33は、判定対象の複数の音声(無音区間で区切られた複数の音声)のうち、予め定めた割合の個数の音声が、電話番号2に対応付けられた1つの声紋情報と一致すると判定された場合に声紋認証に成功したと判定する。
【0040】
声紋認証部33により、声紋認証が成功したと判定された場合には(ステップ84のOK)、図4のステップ8全体の認証が成功であると判定され、これ以上の認証処理を行わない。声紋認証部33により、声紋認証が失敗したと判定された場合には(ステップ84のNG)、その旨が認証制御部35に通知され、認証制御部35は、危険度分析・通知部34に対して危険度分析処理を行うように指示し、これにより危険度分析・通知部34は、危険度分析処理を行う(ステップ85)。
【0041】
ステップ85において、危険度分析・通知部34は、認証制御部35により記憶装置に順次記憶されている音声を当該記憶装置から取得し、それをテキストに変換し、ユーザ情報格納部36において着信者番号(電話番号1)に対応付けて記憶されている危険ワード(一般には複数)と比較し、当該音声が危険ワードのいずれかに該当するかどうかをチェックする。この処理を、所定の時間長の音声が記憶される度に行う。
【0042】
そして、例えば、危険度分析・通知部43は、複数回のチェックのうちの予め定めた割合の個数の音声が危険ワードのいずれかに該当する場合に(ステップ86のYes)、発信者と着信者との間で行われている会話の危険度が高いと判定し、判定結果を保持しておく(ステップ87)。複数回のチェックのうち、危険ワードの割合が予め定めた割合より低い場合には(ステップ86のNo)、認証成功であると判定し、これ以上の認証処理を行わない。
【0043】
図5のシーケンスチャートに戻って説明を続ける。図5において、発信者と着信者間での通話が終了したことにより、端末間での回線切断処理が行われる(ステップ9〜10)。また、端末間での回線切断を検知した呼制御装置5は、認証装置3にその旨を通知する(ステップ11)。
【0044】
認証処理(ステップ8)での危険度分析処理において危険度分析・通知部34により会話の危険度が高いと判定された場合、回線切断通知を受けた認証装置3における危険度分析・通知部34は、着信者端末2に対して呼接続を行って(ステップ12)、発信者は正当な者でない可能性がある旨の音声メッセージを着信者端末2に向けて送信する(ステップ13)。さらに、危険度分析・通知部34は、ユーザ情報格納部36において、着信者番号(電話番号1)に対応付けて格納されている通知先メールアドレスを取得し、当該通知先メールアドレス宛に、着信者が不正な者と通話を行った可能性があることを示すメッセージを電子メールで送信する(ステップ14)。
【0045】
なお、上記の例では、発信者端末1と着信者端末2が呼接続された後に、発信者に認証が行われていることを意識させることなく認証処理が行われていたが、呼接続がなされる前に、発信者に認証を意識させながら認証を行うこととしてもよい。
【0046】
この場合の処理内容を図6に示すシーケンスチャートを参照して説明する。
【0047】
発信者端末1から着信者端末2に対する発呼(呼接続要求の送信)がなされると(ステップ21)、呼制御装置5は、着信者端末2への呼接続処理を行わず(中断して)、呼接続要求から取得した発信者番号と着信者番号を認証装置3に送信するとともに(ステップ22)、発信者端末1と認証装置3との間の呼接続処理を行い、その結果、発信者端末1と認証装置3との間が呼接続される(ステップ23)。
発信者端末1と認証装置3との間の呼接続が完了した後、認証装置3における認証制御部35は、認証装置3の記憶装置に着信者番号と対応付けて予め格納してある特定のキーワードを発信者に発話させるための音声メッセージ(トーキー)を発信者端末1に送出する(ステップ24)。
【0048】
音声メッセージに応答して発信者により発話された音声を受信した認証装置3では、音声認識処理を行って、受信した音声が、上記のキーワードに合致するものかどうかの判定を行うことにより、音声認証処理を行う(ステップ25、26)。もちろん、ステップ26では、前述した声紋認証及び発信者番号認証の両方または一方を行うこととしてもよい。
【0049】
ステップ26の音声認証が成功した場合、認証装置3は認証に成功した旨を示す音声メッセージを発信者端末1に送信するとともに(ステップ27)、認証に成功した旨の通知を呼制御装置5に送信する(ステップ28)。当該通知を受信した呼制御装置5は、中断していた呼接続処理を再開し、発信者端末1と着信者端末2間での呼接続を行う(ステップ29、30)。これにより、発信者と着信者との間で通話が行われる。
【0050】
一方、ステップ26の音声認証に失敗した場合、認証装置3は認証に失敗した旨を示す音声メッセージを発信者端末1に送信するとともに(ステップ27のタイミングに相当)、認証に失敗した旨の通知を呼制御装置5に送信する(ステップ28のタイミングに相当)。当該通知を受信した呼制御装置5は、発信者端末1と着信者端末2間での呼接続処理を中止する。また、認証装置3は、発信者からのメッセージを録音した後に、発信者端末1との回線を切断する(ステップ31)。ここで録音したメッセージは、必要に応じて着信者端末2から着信者が確認することが可能である。
【0051】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態は、認証装置3が電話網内の呼制御装置等から発信者番号等を取得しない場合の実施形態である。以下の説明において、第1の実施の形態で示した装置、機能部と同様の機能を有する装置、機能部には同じ参照符号を付している。
【0052】
図7に、第2の実施の形態におけるシステム構成図を示す。図7に示すように、本実施の形態に係るシステムは、発信者端末1、着信者端末7が電話網Aを介して接続されているとともに、着信者端末7と認証装置3が電話網Bに接続される構成をとる。また、インターネット等に接続された通知先端末6が備えられており、認証装置3は、インターネット等を介して通知先端末6に電子メールを送信することが可能である。
【0053】
本実施の形態における電話網Aは、PSTN、携帯電話網等であり、電話網BはVoIP網等であるが、これらに限定されるわけではない。発信者端末1は電話網Aを介した通話を行うことが可能な一般的な電話機である。認証装置3は、第1の実施の形態における認証装置3と同様の機能を有する装置である。
本実施の形態における着信者端末7は、電話網Aの回線と、電話網Bの回線の少なくとも2回線に接続可能であり、一方の回線において送受信する通話音声を他方の回線に転送すること、及びその逆方向の転送が可能な端末である。図8に、着信者端末7の機能構成図を示す。
【0054】
図8に示すように、着信者端末7は、電話網A対応部71、電話網B対応部72、音声転送制御部73、ユーザインタフェース部74を有する。電話網A対応部71、電話網B対応部72はそれぞれ電話網A、電話網Bの回線を収容し、当該回線を介して呼接続及び音声通信を行う機能部である。なお、電話網Aと電話網Bが同じ電話網であってもよく、その場合、電話網A対応部71、電話網B対応部72は、当該電話網の複数の回線対応部となる。つまり、この場合、着信者端末7は、当該電話網に対応した回線を2回線収容する端末である。
【0055】
音声転送制御部73は、電話網A対応部71が収容する回線を用いて着信者端末7と発信者端末1との間で通話が行われているときに送受信される音声を、認証装置3に転送するための機能部である。また、音声転送制御部73は、その逆方向の音声転送を行うことも可能である。ユーザインタフェース部74は、着信者が通話を行うために必要な操作装置を含むものであり、電話網A対応部71から着信通知を受けてユーザを呼び出す機能も備えている。ユーザインタフェース部74に一般的な電話機を接続し、その電話機を用いて着信者が通話を行うこととしてもよい。
【0056】
<システムの動作>
次に、図9のシーケンスチャートを参照しながら本実施の形態におけるシステムの動作例について説明する。以下の例では、第1の実施の形態と同様に、発信者端末1のユーザを発信者と呼び、着信者端末7のユーザを着信者と呼び、発信者が着信者に対して電話をかけて通話を行う場合について説明する。また、発信者端末1と着信者端末7間の回線を回線Aと呼び、着信者端末7と認証装置3間の回線を回線Bと呼び、認証装置3から着信者端末7への発呼により確立される回線を回線Cと呼ぶことにする。
【0057】
発信者が発信者端末1において着信者端末7に対して発呼操作を行うことにより、発信者端末1から着信者端末7に対して発呼がなされ、回線Aが確立され、発信者端末1と着信者端末7との間で回線Aによる通話が開始される(ステップ41)。
【0058】
発信者端末1と着信者端末7との間で回線Aが確立したことを、着信者端末7の音声転送制御部73が検知すると、音声転送制御部73は、電話網B対応部72に対し認証装置3と呼接続を行うよう指示する。この指示を受けた電話網B対応部72は、認証装置3との間で電話網Bを介した呼接続処理を行い、回線Bを確立する(ステップ42)。また、このとき、音声転送制御部73から電話網B対応部72を介して認証装置3に着信者番号が送信される。
【0059】
また、着信者端末7では、電話網A対応部71を介して回線Aを経由した発信者端末1との音声通信が行われるとともに、電話網A対応部71により送受信される音声が音声転送制御部73により電話網B対応部72を介して回線B経由で認証装置3に送信される(ステップ43)。
【0060】
認証装置3では、着信者端末7から受信する音声を順次蓄積し、認証処理を行う(ステップ44)。ここでの認証処理は、図5に示す処理のうちのステップ83以降の処理と同じである。つまり、本実施の形態では、発信者番号認証を行わずに、着信者番号と受信音声を用いた声紋認証、及び危険度判定処理を行う。
【0061】
発信者と着信者間での通話が終了すると、着信者端末7は、回線Aを切断するとともに、回線Bも切断する(ステップ45、46)。
【0062】
認証処理(ステップ44)での危険度分析処理において危険度分析・通知部34により会話の危険度が高いと判定された場合、回線切断通知を受けた認証装置3における危険度分析・通知部34は、着信者端末7に対して呼接続を行って、回線Cを確立し(ステップ47)、発信者は正当な者でない可能性がある旨の音声メッセージを着信者端末7に向けて送信する(ステップ48)。さらに、危険度分析・通知部34は、ユーザ情報格納部36において、着信者番号(電話番号1)に対応付けて格納されている通知先メールアドレスに向けて、着信者が不正な者と通話を行った可能性があることを示すメッセージを送信する(ステップ49)。認証処理(ステップ44)での危険度分析処理において全ての認証をクリアし、会話の危険度が高いと判定されなかった場合には、ステップ47〜49の処理は行われない。
【0063】
なお、上記の例では、発信者端末1と着信者端末7が呼接続された後に、発信者に認証が行われていることを意識させることなく認証処理が行われていたが、呼接続がなされる前に、発信者に認証を意識させながら認証を行うこととしてもよい。
【0064】
この場合の処理内容を図10に示すシーケンスチャートを参照して説明する。
【0065】
発信者端末1から着信者端末7への発呼がなされ、回線Aが確立すると(ステップ51)、着信者端末7の電話網A対応部71は、ユーザインタフェース部74に対して着信を知らせるための通知を行うことなく、回線Aが確立したことを音声転送制御部73に通知する。通知を受けた音声転送制御部73は、認証装置3との間で回線Bを確立する旨の指示を電話網B対応部72に対して行い、当該指示を受けた電話網B対応部72は認証装置3に発呼をして、回線Bを確立するとともに(ステップ52)、着信者番号を認証装置3に送信する(ステップ53)。
【0066】
認証装置3における認証制御部36は、認証装置3に着信者番号と対応付けて予め格納してある特定のキーワードを発信者に発話させるための音声メッセージ(トーキー)を回線Bに送出する(ステップ54)。この音声メッセージは、着信者端末7において転送されて回線Aを介して発信者端末1に送信される(ステップ55)。
【0067】
認証装置3は、音声メッセージに応答して発信者により発話された音声を回線A、着信者端末7、及び回線Bを介して受信し(ステップ56、57)、受信した音声が、上記のキーワードに合致するものかどうかの判定を行うことにより、音声認証処理を行う(ステップ58)。もちろん、ここで前述した声紋認証及び発信者番号認証の両方または一方を追加で行うこととしてもよい。
【0068】
音声認証が成功した場合、認証装置3は認証に成功した旨の通知を着信者端末7に送信する(ステップ59)。当該通知を受信した着信者端末7は、回線Bを切断するとともに(ステップ60)、発信者端末1から着信があった旨の通知をユーザインタフェース部74に対して行う(ステップ61:回線A着信処理)。これにより、回線Aを介して発信者と着信者との間で通話が行われる。
【0069】
一方、音声認証に失敗した場合、認証装置3は認証に失敗した旨を示す音声メッセージを着信者端末7を介して発信者端末1に送信した後に、認証に失敗した旨の通知を着信者端末7に送信する(ステップ59のタイミングに相当)。当該通知を受信した着信者端末7は、発信者からのメッセージを録音した後に、回線Aを切断する(ステップ62)。ここで録音したメッセージは、必要に応じて着信者端末7から着信者が確認することが可能である。また、上記の処理に代えて、回線Aを切断することなく、ユーザインタフェース部74が通常の着信音と異なる着信音(危険度が高いことを表す着信音)を鳴らし、電話に出るかどうかを着信者の判断にまかせることとしてもよい(ステップ62)。
【0070】
本発明は、上記の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲内において、種々変更・応用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の第1の実施の形態におけるシステム構成図である。
【図2】認証装置3の機能構成図である。
【図3】ユーザ情報格納部36が格納するテーブルの一例を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態におけるシーケンスチャートである。
【図5】本発明の第1の実施の形態におけるフローチャートである。
【図6】本発明の第1の実施の形態におけるシーケンスチャートである。
【図7】本発明の第2の実施の形態におけるシステム構成図である。
【図8】着信者端末7の機能構成図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態におけるシーケンスチャートである。
【図10】本発明の第2の実施の形態におけるシーケンスチャートである。
【符号の説明】
【0072】
1 発信者端末
2 着信者端末
3 認証装置
4 電話網
5 呼制御装置
6 通知先端末
31 送受信部
32 発信者番号認証部
33 声紋認証部
34 危険度分析・通知部
35 認証制御部
36 ユーザ情報格納部
7 着信者端末
A、B 電話網
71 電話網A対応部
72 電話網B対応部
73 音声転送制御部
74 ユーザインタフェース部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発信者端末と着信者端末とが電話網を介して接続されて構成された通信システムにおいて使用される認証装置であって、
所定の声紋情報と、所定のキーワードと、所定の通知先アドレスとを格納する格納手段と、
前記発信者端末から前記着信者端末に向けて送信された音声を受信する受信手段と、
前記受信手段により受信する音声から声紋情報を取得し、当該声紋情報と、前記格納手段に格納された所定の声紋情報とを照合することにより声紋認証を行う声紋認証手段と、
前記声紋認証が成功しなかった場合に、前記受信手段により受信する音声の内容が、前記格納手段に格納された所定のキーワードに該当するかどうかを判定する判定手段と、
前記判定手段により、前記音声の内容が前記所定のキーワードに該当すると判定された場合に、前記格納手段に格納された所定の通知先アドレス宛に、前記発信者端末のユーザが正当な者でないことを示すメッセージを通知する通知手段と、
を備えたことを特徴とする認証装置。
【請求項2】
前記所定の声紋情報、前記所定のキーワード、及び前記所定の通知先アドレスは、それぞれ前記着信者端末の電話番号である着信者番号に対応付けて前記格納手段に格納された情報であることを特徴とする請求項1に記載の認証装置。
【請求項3】
前記認証装置は、前記発信者端末の電話番号である発信者番号の認証を行う発信者番号認証手段を更に備え、前記格納手段は、前記着信者番号に対応付けて認証用電話番号を更に格納し、
前記発信者番号認証手段は、前記発信者番号が、前記認証用電話番号と一致するかどうかを判定することより前記発信者番号の認証を行うことを特徴とする請求項2に記載の認証装置。
【請求項4】
前記受信手段は、前記電話網における音声中継装置から、又は前記着信者端末から前記音声を受信することを特徴とする請求項1ないし3のうちいずれか1項に記載の認証装置。
【請求項5】
発信者端末と着信者端末とが電話網を介して接続されて構成された通信システムにおいて使用される認証装置が実行する認証方法であって、前記認証装置は、所定の声紋情報と、所定のキーワードと、所定の通知先アドレスとを格納する格納手段を備え、前記認証方法は、
前記発信者端末から前記着信者端末に向けて送信された音声を受信する受信ステップと、
前記受信ステップにおいて受信する音声から声紋情報を取得し、当該声紋情報と、前記格納手段に格納された所定の声紋情報とを照合することにより声紋認証を行う声紋認証ステップと、
前記声紋認証が成功しなかった場合に、前記受信ステップにおいて受信する音声の内容が、前記格納手段に格納された所定のキーワードに該当するかどうかを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにおいて前記音声の内容が前記所定のキーワードに該当すると判定された場合に、前記格納手段に格納された所定の通知先アドレス宛に、前記発信者端末のユーザが正当な者でないことを示すメッセージを通知する通知ステップと、
を備えたことを特徴とする認証方法。
【請求項6】
所定の声紋情報と、所定のキーワードと、所定の通知先アドレスとを格納する格納手段を備えたコンピュータを、発信者端末と着信者端末とが電話網を介して接続されて構成された通信システムにおいて使用される認証装置として機能させるプログラムであって、前記コンピュータを、
前記発信者端末から前記着信者端末に向けて送信された音声を受信する受信手段、
前記受信手段により受信する音声から声紋情報を取得し、当該声紋情報と、前記格納手段に格納された所定の声紋情報とを照合することにより声紋認証を行う声紋認証手段、
前記声紋認証が成功しなかった場合に、前記受信手段により受信する音声の内容が、前記格納手段に格納された所定のキーワードに該当するかどうかを判定する判定手段、
前記判定手段により、前記音声の内容が前記所定のキーワードに該当すると判定された場合に、前記格納手段に格納された所定の通知先アドレス宛に、前記発信者端末のユーザが正当な者でないことを示すメッセージを通知する通知手段、
として機能させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−109619(P2010−109619A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−278894(P2008−278894)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(399035766)エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社 (321)
【Fターム(参考)】