説明

認証装置及び認証方法、電子機器、並びにコンピューター・プロクラム

【課題】心臓の発する微量な電気信号から心拍毎に切り出した心電波形を用いて個人を識別し認証する。
【解決手段】登録工程では、心電波形のばらつきを解析し、心電波形とともにばらつき情報を記録しておき、認証の工程で相関係数を求める際に、登録波形の中でばらつきが大きいと記録されているサンプル点における相関係数への寄与度を下げて、演算を行なう。同一人物から得られた心電波形の中でばらつきが大きいサンプル点が存在しても、ばらつきの大きなサンプル点の相関係数への寄与度を下げることにより、ばらつきに影響されず、個人認証を行なうことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個人の体から取得した生体情報を用いて個人を識別し、認証する認証装置及び認証方法、電子機器、並びにコンピューター・プロクラムに係り、特に、心臓の発する微量な電気信号から心拍毎に切り出した心電波形を用いて個人を識別し、認証する認証装置及び認証方法、電子機器、並びにコンピューター・プロクラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、個人の体から取得した生体情報を用いて個人を識別し、認証する技術が急速に普及している。個人認証は、個人の体から取得した生体情報をあらかじめ登録しておく登録工程と、認証対象となる個人から取得した生体情報をあらかじめ登録したものと照合する認証工程からなる。個人の体から取得する生体情報として、顔画像や(例えば、特許文献1を参照のこと)、指紋、虹彩、音声(例えば、特許文献2を参照のこと)、心電信号(例えば、特許文献3を参照のこと)、などを挙げることができる。
【0003】
このうち、心電信号は、体表面に接触させた電極から取得される心臓の発する微量な電気信号である。例えば、心拍毎に心電信号を切り出した心電波形を、個人認証に用いることができる。すなわち、登録工程では、個人の体から取得した心電波形をあらかじめ登録波形として登録しておき、認証工程において、ユーザーから取得した心電波形を認証用波形として登録波形と照合して、個人の識別、認証を行なうことができる。また、心電信号の波形には、P波、Q波、R波、S波、T波などの特徴的な波形が周期的(心拍毎)に表れることが知られており、ディジタル処理などを施してこれらの周期的な波形の特徴情報を抽出し、抽出された特徴情報を用いて登録や認証を行なう場合もある。
【0004】
ここで、ディジタル処理により認証用波形と登録波形を照合する際に、2つの波形の相互相関関数を用いる方法が一般的に利用されている。得られた相関係数は2つの波形の類似度を表すことから、相関係数の値が大きければ認証を許可し、逆に相関係数の値が小さければ認証を拒否する。
【0005】
しかしながら、同一人物から安静な状態で取得した心電波形であっても、必ずしも安定した波形パターンを得られるとは限らない。このため、同一人物を識別し認証できないおそれがある。
【0006】
図8には、同一人物から安静な状態で取得した心電波形の一例を示している。図8Aは、一定期間、同一人物から心電信号を取得し、心拍毎に切り出した心電波形を例えば最も特徴的なR波のピークを用いて正規化し、重ねてプロットしたものである。また、図8Bは、図8Aにプロットしたすべての波形の平均波形であり、これを登録波形として用いる。
【0007】
また、図9には、上記と同一人物から得た、R波のピークで正規化した認証用波形を実線で示している。同図中で、図8Bに示した登録波形を破線で併せて示している。図9から、心電波形のQRS波はよく一致している一方、T波の立下り以降にズレがあることが分かる。このズレによって、登録波形と認証用波形の相関係数が低下する。すなわち、同一人物から得られる心電波形に生じるばらつきが、認証システムの認証性能を低下させる一因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−178651号公報
【特許文献2】特開2007−156422号公報
【特許文献3】特表2008−518709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、心臓の発する微量な電気信号から心拍毎に切り出した心電波形を用いて、好適に個人を識別し認証することができる、優れた認証装置及び認証方法、電子機器、並びにコンピューター・プロクラムを提供することにある。
【0010】
本発明のさらなる目的は、同一人物から得られる心電波形に生じるばらつきが生じていても、認証性能を低下させることなく、心電波形に基づいて個人を識別し認証することができる、優れた認証装置及び認証方法、電子機器、並びにコンピューター・プロクラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願は、上記課題を参酌してなされたものであり、請求項1に記載の発明は、
個人の体から取得した心電信号から心拍毎に抽出した心電波形の各時刻における心電電位のばらつきを求めるばらつき情報取得部と、
前記心電波形を前記情報取得部で求めたばらつきとともに格納する格納部と、
を具備する認証装置。
である。
【0012】
また、本願の請求項2に記載の発明は、
個人の体から心電信号を取得する心電信号取得部と、
登録工程において、前記心電信号取得部で取得した心電信号から心拍毎に抽出した心電波形の各時刻における心電電位のばらつきを求め、前記心電波形を登録波形として前記ばらつきとともに登録する登録部と、
認証工程において、前記登録部に登録されたばらつきに基づいて各時刻における重み係数を計算し、前記登録部に登録された登録波形及び当該認証工程で前記心電信号取得部により取得した心電信号から心拍毎に抽出した認証用波形の各々を前記重み係数で重み付けし、重み付けした後の登録波形と認証用波形の相互相関を求め、得られた相互相関値に基づいて認証の可否を判定する認証部と、
を具備する認証装置である。
【0013】
本願の請求項3に記載の発明によれば、請求項1に記載の認証装置の登録部は、複数の心電波形を平均した心電波形を登録波形として登録するとともに、各時刻における複数の心電波形と前記登録波形との偏差の2乗を算術平均した分散波形をばらつきとして登録するように構成されている。
【0014】
本願の請求項4に記載の発明によれば、請求項1に記載の認証装置の認証部は、前記認証波形の各時刻における心電電位のばらつきを求め、前記登録部に登録されたばらつきと前記認証波形のばらつきとの相互相関をさらに求め、登録波形と認証用波形の相互相関値とともに、登録波形のばらつきと認証用波形のばらつきの相互相関値に基づいて認証の可否を判定するように構成されている。
【0015】
また、本願の請求項5に記載の発明は、
登録工程において、取得した心電信号から心拍毎に抽出した心電波形の各時刻における心電電位のばらつきを求め、前記心電波形を登録波形として前記ばらつきとともに登録部に登録する登録ステップと、
認証工程において、前記登録部に登録されたばらつきに基づいて各時刻における重み係数を計算する重み係数計算ステップと、
前記登録部に登録された登録波形及び前記認証工程取得した心電信号から心拍毎に抽出した認証用波形の各々を前記重み係数計算ステップで求めた重み係数で重み付けする重み付けステップと、
前記重み付けステップで重み付けした後の登録波形と認証用波形の相互相関を求める相互相関計算ステップと、
前記相互相関計算ステップで得られた相互相関値に基づいて認証の可否を判定する判定ステップと、
を有する認証方法である。
【0016】
また、本願の請求項6に記載の発明は、
請求項1に記載の認証装置を備え、
前記認証部が認証を許可したことに応じて所定の処理を起動する、
情報機器である。
【0017】
また、本願の請求項7に記載の発明は、
登録工程において、取得した心電信号から心拍毎に抽出した心電波形の各時刻における心電電位のばらつきを求め、前記心電波形を登録波形として前記ばらつきとともに登録する登録部、
認証工程において、前記登録部に登録されたばらつきに基づいて各時刻における重み係数を計算し、前記登録部に登録された登録波形及び当該認証工程で前記心電信号取得部により取得した心電信号から心拍毎に抽出した認証用波形の各々を前記重み係数で重み付けし、重み付けした後の登録波形と認証用波形の相互相関を求め、得られた相互相関値に基づいて認証の可否を判定する認証部、
としてコンピューターを機能させるようにコンピューター可読形式で記述したコンピューター・プログラムである。
【0018】
本願の請求項7に係るコンピューター・プログラムは、コンピューター上で所定の処理を実現するようにコンピューター可読形式で記述されたコンピューター・プログラムを定義したものである。換言すれば、本願の請求項7に係るコンピューター・プログラムをコンピューターにインストールすることによって、コンピューター上では協働的作用が発揮され、本願の請求項2に係る認証装置と同様の作用効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、同一人物から得られる心電波形に生じるばらつきが生じていても、認証性能を低下させることなく、心電波形に基づいて個人を識別し認証することができる、優れた認証装置及び認証方法、電子機器、並びにコンピューター・プロクラムを提供することができる。
【0020】
本発明によれば、登録工程において心電波形のばらつきを解析し、心電波形(登録波形)とともにばらつき情報を記録しておき、さらに認証の工程において相関係数を求める際に、登録波形の中でばらつきが大きいと記録されているサンプル点における相関係数への寄与度を下げて、演算を行なうようにしている。したがって、同一人物から得られた心電波形の中でばらつきが大きいサンプル点が存在する場合であっても、ばらつきの大きなサンプル点の相関係数への寄与度を下げることにより、ばらつきに影響されず、認証性能を保ちながら、個人の識別、認証を行なうことができる。
【0021】
本発明のさらに他の目的、特徴や利点は、後述する本発明の実施形態や添付する図面に基づくより詳細な説明によって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、心臓の発する微量な電気信号から心拍毎に切り出した心電波形を用いて個人を識別し、認証する認証装置1の構成を模式的に示した図である。
【図2】図2は、ディジタル処理部30内の登録部33の内部構成例を示した図である。
【図3】図3は、心電波形の各サンプル点における分散値からなる分散波形を示した図である。
【図4】図4は、ディジタル処理部30内の認証部34の内部構成例を示した図である。
【図5】図5は、分散データから求めた重み係数の一例を示した図である。
【図6】図6は、相互相関計算部404で求めた相関係数値rを、登録波形及び認証用波形にばらつき情報に基づく重み付けを行なわず、単純に相互相関をとる従来の方法で求めた相関係数値とともに示した図である。
【図7】図7は、認証部34の変形例を示した図である。
【図8A】図8Aは、一定期間、同一人物から心電信号を取得し、心拍毎に切り出した心電波形をR波のピークで正規化し、重ねてプロットした、心電波形の一例を示した図である。
【図8B】図8Bは、図8Aにプロットしたすべての波形の平均波形を示した図である。
【図9】図9は、上記と同一人物から得た認証用波形を登録波形とともに示した図である。
【図10】図10は、理想的な心電信号の波形の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0024】
図1には、心臓の発する微量な電気信号から心拍毎に切り出した心電波形を用いて個人を識別し、認証する認証装置1の構成を模式的に示している。図示の認証装置1は、電極部10と、アナログ処理部20と、ディジタル処理部30で構成される。
【0025】
電極部10は、個人の体表面に接触し、心臓の発する微量な電気信号を心電信号として取得する。心電信号の波形には、P波、Q波、R波、S波、T波などの特徴的な波形が周期的(心拍毎)に表れることが知られている。理想的な心電信号の波形の一例を、図10に示しておく。
【0026】
アナログ処理部20は、心電信号を増幅する増幅部21と、不要帯域のノイズを除去するフィルター部22と、アナログ心電信号をディジタル信号に変換するAD変換部23を備えている。
【0027】
ディジタル処理部30は、前処理部31と、特徴抽出部32と、登録部33と、認証部34を備えている。
【0028】
前処理部31は、入力された心電信号の帯域内のノイズを除去するフィルターや、心電信号から心拍毎に心電波形を切り出す機能を有する。前処理部31は、例えば、心電波形をR波のピークで正規化する。
【0029】
特徴抽出部32は、波形の特徴情報を抽出する。後段の登録部33や認証部34では、抽出された特徴情報を用いて登録、識別を行なうことができる。
【0030】
登録部33は、当該認証装置1を使用するユーザーの登録を行なう工程において、入力された心電波形を、登録波形として記憶し保持する機能を有する。
【0031】
認証部34は、当該認証装置1を使用するユーザーの認証を行なう工程において、認証のために入力された心電波形を認証用波形として、登録部33で登録済みの登録波形を照合し、照合結果を出力する。本実施形態では、認証部34は、認証用波形と登録波形を照合するために、2つの波形の相互相関関数を用いる。得られた相関係数は2つの波形の類似度を表すことから、相関係数の値が大きければ認証を許可し、相関係数の値が小さければ認証を拒否する。
【0032】
ここで、同一人物から安静な状態で取得した心電波形であっても、必ずしも安定した波形パターンを得られるとは限らない、という問題がある(図8Aを参照のこと)。このため、同一人物を識別し認証できないおそれがある(図9を参照のこと)。
【0033】
同一人物から取得した心電波形にズレがあるという現象があって、なお本人拒否率を低く維持するようにするには、本人か否かの判定基準となる相関係数値の閾値を下げざるを得ない。しかしながら、閾値を下げることで他人を認証してしまうリスクが高まるという問題が生じる。
【0034】
そこで、本実施形態に係る認証装置1では、登録部33で心電波形を登録する登録工程において、心電波形のばらつきを解析し、心電波形とともにばらつき情報を記録するようにしている。また、その後の認証部34における認証工程では、相関係数を求める際に、登録波形の中でばらつきが大きいと記録されているサンプル点は相関係数への寄与度を下げて、演算を行なうようにしている。
【0035】
したがって、同一人物から得られた心電波形の中でばらつきが大きいサンプル点が存在する場合であっても、ばらつきの大きなサンプル点の相関係数への寄与度を下げることにより、ばらつきに影響され難くなる。
【0036】
図2には、ディジタル処理部30内の登録部33の内部構成例を示している。図示の登録部33は、平均計算部201と、分散計算部202と、格納部203を備えている。
【0037】
登録部33の前段には前処理部31があり(前述並びに図1を参照のこと)、前処理部31は、登録工程において、心電信号から心電波形を切り出し、心電波形をR波のピークで正規化した後に、登録部33へ出力する(図1に示す例では、さらに特徴抽出部32で心電波形から特徴抽出された後に、登録部33へ入力される)。
【0038】
心電波形が、登録部33に入力されると、心電波形における心電電位のばらつきの解析が行なわれる。具体的には、まず平均計算部201で、複数の心電波形xi(t)をバッファーし、登録波形としての平均心電波形mx(t)を、下式(1)のように算出する。但し、iは演算に用いる心電波形の周期(拍数)番号であり、1〜Nの正の整数とする。
【0039】
【数1】

【0040】
次に、分散計算部202では、心電波形の各サンプル点(時刻t)の分散を求める。分散は、各サンプル点における、平均値mx(t)と各波形xi(t)の偏差を2乗し、それを算術平均して得られる(周知)。登録分散波形vx(t)は下式(2)にように表される。
【0041】
【数2】

【0042】
図3には、図8Aで示した心電波形xi(t)の各サンプル点における分散値からなる分散波形vx(t)を例示している。
【0043】
そして、各個人について得られた平均心電波形mx(t)と分散波形vx(t)をセットにして、格納部203に格納する。平均心電波形mx(t)は、登録波形に相当する。また、分散波形vx(t)は、心電波形における心電電位のばらつきを示すばらつき情報である。ばらつき情報は、各サンプル点における登録波形の値mx(t)の信頼度を表す。
【0044】
図4には、ディジタル処理部30内の認証部34の内部構成例を示している。図示の認証部34は、重み係数計算部401と、入力波形重み付け部402と、登録波形重み付け部403と、相互相関計算部404と、閾値判定部405を備えている。
【0045】
認証部34は、登録部33と同様に、前段に前処理部31がされている(図1に示す例では、さらに特徴抽出部32で心電波形から特徴抽出された後に、認証部34へ入力される)。前処理部31は、認証工程において、心電信号から心電波形を切り出し、心電波形をR波のピークで正規化した後に、認証部34へ出力する。
【0046】
認証部34で、入力された心電波形(認証用波形)の認証を行なう際、まず、登録部33内の格納部203に記録されている、登録波形としての登録平均波形mx(t)、並びに、ばらつき情報としての登録分散波形vx(t)を読み出す。
【0047】
そして、重み係数計算部401は、ばらつき情報(分散データ)としての登録分散波形vx(t)を基に、ばらつきの大きい(すなわち、分散値の大きい)サンプル点に対しては小さく、ばらつきの小さい(すなわち、分散値の小さい)サンプル点に対しては大きな値を持つような重み係数w(t)を求める。
【0048】
図5には、分散データから求めた重み係数の一例を示している。同図は、図3に示した分散データを基に、分散値vx(t)が0.004以下となる時刻tのサンプル点における重み係数w(t)を1とし、分散値vx(t)が0.004を超える時刻tのサンプル点における重み係数w(t)を0としたシンプルな例である。
【0049】
【数3】

【0050】
但し、本発明の要旨は、このような重み係数w(t)の計算方法に限定されるものではない。分散値vx(t)が小さな値となる時刻tは、ばらつきが少なく、信頼度の高いサンプル点である。逆に、分散値vx(t)が大きな値となる時刻tは、ばらつきが少なく、信頼度の低いサンプル点である。分散値vx(t)などのばらつきで表わされる信頼度に応じた重み係数w(t)を設定する、さまざまな重み係数w(t)の計算方法を適用することができる。
【0051】
そして、入力波形重み付け部402は、前段の前処理部31から認証用に入力される複数の心電波形yi(t)をバッファーし、認証用波形としての認証平均波形my(t)を下式(4)のように算出し、これに重み係数w(t)を乗算することにより重み付けして、重み付け後の認証用平均波形wmy(t)を得る。
【0052】
【数4】

【0053】
【数5】

【0054】
また、登録波形重み付け部403は、登録部33内の格納部203から読み出した登録平均波形mx(t)に重み係数w(t)を乗算することにより重み付けして、重み付け後の登録平均波形wmy(t)を得る。
【0055】
【数6】

【0056】
続いて、相互相関計算部404は、重み付け後の認証用平均波形wmy(t)と重み付け後の登録平均波形wmy(t)の相互相関を行ない、相関係数を求める。
【0057】
ここで、心拍周期のうち、相関の計算に用いるサンプルをj=1〜nとすると、正規化相互相関rは、下式(7)のように表わされる。
【0058】
【数7】

【0059】
最後に、閾値判定部405は、相関係数があらかじめ決められた閾値より高いか否かを判定する。そして、閾値より高ければ登録波形と認証用波形は同一人物から取得された心電波形であると判断し、認証を許可する。閾値より低ければ異なる人物と判断し、認証を拒否する。
【0060】
図6には、本実施形態において相互相関計算部404で求めた相関係数値rを、登録波形及び認証用波形にばらつき情報に基づく重み付けを行なわず、単純に相互相関をとる従来の方法で求めた相関係数値とともに示している。同図から明らかであるように、登録波形及び認証用波形にばらつき情報に基づく重み付けを行なうことによって、相関係数値が向上したことが分かる。
【0061】
なお、上記の変形例として、図3に表したような分散データを、複数の認証用波形から取得し、登録分散データと認証用波形の分散データの相互相関をとる方法も可能である。この場合の認証部34の構成例を図7に示している。認証部34は、分散計算部406と第2の相互相関計算部407をさらに備えている。分散計算部406は、前処理部31から入力される認証用波形の分散を計算する。また、第2の相互相関計算部407は、登録部33内の格納部203から読み出された登録分散波形と、分散計算部406で認証用波形から求めた認証用分散波形の相互相関値を求める。そして、閾値範囲手部405は、心電波形の相互相関値と分散波形の相互相関値の2つを用いて認証を判定する。
【0062】
上述したように、認証装置1は、登録工程で心電波形のばらつき情報を心電波形とともに記録する。そして、認証工程では、ばらつき情報を基に設定した重み係数を用いて認証用波形と登録波形の重み付けを行ない、重み付け後の2つの波形の相互相関を行なう。この結果、相互相関値は心電波形のばらつきに影響されにくくなり、安定した認証性能を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上、特定の実施形態を参照しながら、本発明について詳細に説明してきた。しかしながら、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が該実施形態の修正や代用を成し得ることは自明である。
【0064】
本発明に係る認証処理装置並びに認証方法は、パーソナル・コンピューターを始め各種情報機器のセキュリティー、ATM(Automated Teller Machine)、出入管理、自動車や金庫などの機器組み込みなど、さまざまな分野に適用することができる。
【0065】
要するに、例示という形態で本発明を開示してきたのであり、本明細書の記載内容を限定的に解釈するべきではない。本発明の要旨を判断するためには、特許請求の範囲を参酌すべきである。
【符号の説明】
【0066】
1…認証装置
10…電極部
20…アナログ処理部
21…増幅部
22…フィルター部
23…AD変換部
30…ディジタル処理部
31…前処理部
32…特徴抽出部
33…登録部
34…認証部
201…平均計算部
202…分散計算部
203…格納部
401…重み係数計算部
402…入力波形重み付け部
403…登録波形重み付け部
404…相互相関計算部
405…閾値判定部
406…分散計算部
407…第2の相互相関計算部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
個人の体から取得した心電信号から心拍毎に抽出した心電波形の各時刻における心電電位のばらつきを求めるばらつき情報取得部と、
前記心電波形を前記情報取得部で求めたばらつきとともに格納する格納部と、
を具備する認証装置。
【請求項2】
個人の体から心電信号を取得する心電信号取得部と、
登録工程において、前記心電信号取得部で取得した心電信号から心拍毎に抽出した心電波形の各時刻における心電電位のばらつきを求め、前記心電波形を登録波形として前記ばらつきとともに登録する登録部と、
認証工程において、前記登録部に登録されたばらつきに基づいて各時刻における重み係数を計算し、前記登録部に登録された登録波形及び当該認証工程で前記心電信号取得部により取得した心電信号から心拍毎に抽出した認証用波形の各々を前記重み係数で重み付けし、重み付けした後の登録波形と認証用波形の相互相関を求め、得られた相互相関値に基づいて認証の可否を判定する認証部と、
を具備する認証装置。
【請求項3】
前記登録部は、複数の心電波形を平均した心電波形を登録波形として登録するとともに、各時刻における複数の心電波形と前記登録波形との偏差の2乗を算術平均した分散波形をばらつきとして登録する、
請求項2に記載の認証装置。
【請求項4】
前記認証部は、前記認証波形の各時刻における心電電位のばらつきを求め、前記登録部に登録されたばらつきと前記認証波形のばらつきとの相互相関をさらに求め、登録波形と認証用波形の相互相関値とともに、登録波形のばらつきと認証用波形のばらつきの相互相関値に基づいて認証の可否を判定する、
請求項2に記載の認証装置。
【請求項5】
登録工程において、取得した心電信号から心拍毎に抽出した心電波形の各時刻における心電電位のばらつきを求め、前記心電波形を登録波形として前記ばらつきとともに登録部に登録する登録ステップと、
認証工程において、前記登録部に登録されたばらつきに基づいて各時刻における重み係数を計算する重み係数計算ステップと、
前記登録部に登録された登録波形及び前記認証工程取得した心電信号から心拍毎に抽出した認証用波形の各々を前記重み係数計算ステップで求めた重み係数で重み付けする重み付けステップと、
前記重み付けステップで重み付けした後の登録波形と認証用波形の相互相関を求める相互相関計算ステップと、
前記相互相関計算ステップで得られた相互相関値に基づいて認証の可否を判定する判定ステップと、
を有する認証方法。
【請求項6】
請求項1に記載の認証装置を備え、
前記認証部が認証を許可したことに応じて所定の処理を起動する、
情報機器。
【請求項7】
登録工程において、取得した心電信号から心拍毎に抽出した心電波形の各時刻における心電電位のばらつきを求め、前記心電波形を登録波形として前記ばらつきとともに登録する登録部、
認証工程において、前記登録部に登録されたばらつきに基づいて各時刻における重み係数を計算し、前記登録部に登録された登録波形及び当該認証工程で前記心電信号取得部により取得した心電信号から心拍毎に抽出した認証用波形の各々を前記重み係数で重み付けし、重み付けした後の登録波形と認証用波形の相互相関を求め、得られた相互相関値に基づいて認証の可否を判定する認証部、
としてコンピューターを機能させるようにコンピューター可読形式で記述したコンピューター・プログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−176106(P2012−176106A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40535(P2011−40535)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】