説明

認識機能の補助

本発明は、18歳までの年齢を有するヒトの認識の発達または認識能力の補助における使用のための食用組成物の製造における、少なくとも2:1の重量比の生体利用性鉄化合物と生体利用性亜鉛化合物、及び少なくとも一つのビタミンBの使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、18歳までの年齢を有するヒトの認識の発達または能力を補助するための食用組成物の調製における特定のミクロ栄養素の使用に関する。本発明はまた、前述の食用組成物を使用することによる、そのようなヒトの認識の発達または能力の補助方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、ヒトにおける栄養素と認識能力の間のリンク、特に幼少期の間の認識能力の発達に対する栄養素の影響について、ますます興味が増大してきている。
【0003】
鉄の欠乏に感受性である脳の領域(例えば大脳皮質、前頭葉、及び海馬)は、遂行機能及び記憶のような高度の認識機能に関与する領域であるため、子供の認識能力及び発達について、鉄は重要な栄養素であると解されている(Beard, 1995, Amarican Jounarl of Nutrition, 62, 709-710)。
【0004】
亜鉛は、認識能力に対する独立の効果、並びに鉄の効力の増強を通じた間接的効果を有するであろう(Black & Miguel, 2001, The emerging roles of zinc in human nutrition, development and infectious disease, part 1, Nutrition Today, 36, 281-290)。亜鉛は、髄鞘形成、並びにニューロンの励起能力の鍵となるモジュレーターであるGABA及びグルタマートといった神経伝達物質の放出について重要であるため、子供の認識能力及び発達について重要である(Bhatnagar & Taneja, 2001, Zinc & Cognitive development. British Journal of Nutrition, 85, s139-s145)。介入の研究により、20mg/日の亜鉛プラス他のミクロ栄養素が、中国及びメキシコのアメリカンスクールの年齢の子供に対してポジティブな効果を有することが示されている(Penland, 2000, Behavioural data and methodological issues in studies of zinc nutrition in humans, Journal of Nutrition, 130, 361s-364s)。
【0005】
ビタミンB-6は、グルタミン作動性システム、及び学習及び記憶に重要であるN-メチル-D-アスパルタート(NMDA)レセプターに影響するであろう(Calvaresi & Bryan, 2001, B vitamins, cognition and ageing: A review. Journal of Gerontology: Psychological Sciences, 56, P327-P339)。インド(Refsum等, 2001 - Hyperhomocysteinemia and elevated methylmalonic acid indicate a high prevalence of cobalamin deficiency in Asian Indians. American Journal of Clinical Nutrition, 74, 233-241)及びインドネシア(Setiawan等, 2000 Vitamin B-6 inadequancy is prevalent in rural, and urban Indonesian children, Journal of Nutrition, 1301, 553-558)における子供の相関研究により、B-12及びB-6の欠乏と貧弱な認識能力のと間の関係が示されている。
【0006】
特定のオメガ-3ポリ不飽和脂肪酸(PUFA)が、認識能力とリンクしている。研究により、ドコサヘキサン酸(DHA)、α-リノレン酸(ALA)、及びアラキドン酸(AA)を補った乳児用調合乳を与えられた乳児と母乳を与えられた乳児は、より優れた敏感な視覚と問題解決能力を含む認識能力を示すことが示されている(Uary等, 2001, Essential fatty acids in somatic growth and brain development. Nutrition and fitness: Diet, genes, physical activity and health. NY: Karger. pp.134-160)。
【0007】
WO 03/003981は、心的能力の改善において有益であると主張されている組成物を開示している。これらの組成物は、イオン交換樹脂上のビタミンB12、ドコサヘキサン酸、特定のハーブ抽出物を含み、鉄及び/または亜鉛を含んでも良い。
【0008】
WO 00/62812は、認識能力の改善に有益であると主張されている栄養性組成物を開示している。前記組成物は、カフェイン、コリン、ガンマアミノ酪酸、L-フェニルアラニン、及びタウリンを含む。
【0009】
US 2003/0044472 A1は、注意力欠如障害/多動症を治療するための組成物を開示している。前記組成物は、オメガ3-脂肪酸、特定のビタミンB、及び亜鉛を含む。
【0010】
US 2002/0045660 A1は、PDAを含む乳児用ミルク製剤を開示している。DHAを乳児用調合乳に補うことは、予定日より早まった乳児の神経学的発達を促進すると言われている。
【0011】
Neumann等(2002, contribution of animal source foods in improving diet quality and functions in children in the developing world, Nutrition Research, 22, 193-220)は、子供の成長、認識の発達、及び健康に対する鉄、亜鉛、ビタミンB12及びAの効果をレビューしている。
【0012】
Abstract No. XP-002257665, Behavioral Responses of Young Anemic Indian Children to Iron Folic Acid Supplementsは、鉄及び葉酸サプリメントでの若いインドの子供の補給の結果を開示している。前記サプリメントは、Hb値を上昇し、特に能力の分野で知能検査の結果の改善をもたらすことが報告されている。
【非特許文献1】Beard, 1995, Amarican Jounarl of Nutrition, 62, 709-710
【非特許文献2】Black & Miguel, 2001, The emerging roles of zinc in human nutrition, development and infectious disease, part 1, Nutrition Today, 36, 281-290
【非特許文献3】Bhatnagar & Taneja, 2001, Zinc & Cognitive development. British Journal of Nutrition, 85, s139-s145
【非特許文献4】Penland, 2000, Behavioural data and methodological issues in studies of zinc nutrition in humans, Journal of Nutrition, 130, 361s-364s
【非特許文献5】Calvaresi & Bryan, 2001, B vitamins, cognition and ageing: A review. Journal of Gerontology: Psychological Sciences, 56, P327-P339
【非特許文献6】Refsum等, 2001 - Hyperhomocysteinemia and elevated methylmalonic acid indicate a high prevalence of cobalamin deficiency in Asian Indians. American Journal of Clinical Nutrition, 74, 233-241
【非特許文献7】Setiawan等, 2000 Vitamin B-6 inadequancy is prevalent in rural, and urban Indonesian children, Journal of Nutrition, 1301, 553-558
【非特許文献8】Uary等, 2001, Essential fatty acids in somatic growth and brain development. Nutrition and fitness: Diet, genes, physical activity and health. NY: Karger. pp.134-160
【特許文献1】WO 03/003981
【特許文献2】WO 00/62812
【特許文献3】US 2003/0044472 A1
【特許文献4】US 2002/0045660 A1
【非特許文献9】Neumann等(2002, contribution of animal source foods in improving diet quality and functions in children in the developing world, Nutrition Research, 22, 193-220
【非特許文献10】Abstract No. XP-002257665, Behavioral Responses of Young Anemic Indian Children to Iron Folic Acid Supplements
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ヒト、特に18歳までの年齢を有するヒトの認識の発達または能力を補助するであろう食用組成物について、当該技術分野でますます需要が存在している。好ましくはそのような食用組成物は、通常の食品に添加することができ、または別個に、例えばそれ自体食品として消費できる。
【0014】
本発明は、ヒト、特に18歳までの年齢を有するヒトの認識機能の発達及び/または能力を補助する食用組成物を提供することを探求する。
【0015】
とりわけ、ヒト、特に18歳までの年齢を有するヒトの認識の発達及び/または能力を補助し、通常の食品に添加できる、または別個に消費できる組成物を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
驚くべきことに、本発明に係る食用組成物は、ヒト、特に18歳までの年齢を有するヒトの認識の発達または能力を補助することができることが見出された。これらの食用組成物は、通常の食品に添加することができ、または別個に消費することができる。
【0017】
第一の特徴点によれば、本発明は、18歳までの年齢を有するヒトの認識の発達または認識能力の補助における使用のための食用組成物の製造における、
1.少なくとも2:1の重量比の生体利用性鉄化合物と生体利用性亜鉛化合物、及び
2.少なくとも一つのビタミンB
の使用を提供する。
【0018】
第二の特徴点によれば、本発明は、18歳までの年齢を有するヒトの認識の発達または認識能力の補助方法であって、前記ヒトに、
1)少なくとも2:1の重量比の生体利用性鉄化合物と生体利用性亜鉛化合物、及び
2)少なくとも一つのビタミンB
を含む食用組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0019】
本発明の第一及び第二の特徴点の両者によれば、消費後の食用組成物は、6から9歳の年齢を有するヒトの認識の発達または能力を補助することが好ましい。
【0020】
ここで使用される用語「認識」及び「認識機能」は互換的に使用され、
− 知性(流動的な、結晶化した)
− 創造性(新たな考えを生じて開かれている、正確な新たな関係)
− 記憶(記号化、貯蔵、回復)
− 遂行機能(新たなものの扱い、プランニング及び履行、モニタリング能力、用心、仕事と無関係な情報の阻害)
− 認識資質(情報加工の速度、作動記憶容量、注意力)
といった範囲の機能の構築を指す。
【0021】
ここで使用される用語「認識の発達」は、経時的な認識(認識機能)の発達を指す。ヒトにおける認識(認識機能)の質は、認識能力を測定する試験によって評価できる。成長中の子供の認識(認識機能)は、脳の発達とともに経時的に発達するため、所定の子供についての経時的な認識能力の測定は、認識の発達の測定を提供する。例えば、6-9歳の年齢の子供について、認識の発達は一般的に:
− 情報加工能力及び/または遂行機能における急成長
− 脳の前頭葉の発達(遂行機能に関与する)
によって認識される。これらの成長の急成長はまた、子供時代の他の期間(例えば0-2歳及び10代中期)でも生じてよい。
【0022】
本発明は、18歳までの年齢を有するヒトの認識の発達または能力を補助する簡便で有効な方法を提供する。
【0023】
実施例及び比較例を除き、または他に明白に記載された場合を除き、物質の量、または反応条件、物質及び/または使用の物理的特性を示す本明細書中の全ての数値は、用語「約」によって修飾されるものと解されるべきである。全ての量は、他に記載がなければ重量パーセンテージとして表される。食用組成物については、全てのパーセンテージは、他に記載がなければ、組成物の総重量に基づく重量である。
【0024】
用語「含む」は、いずれかの後に記載されるエレメントに制限されずに、むしろメジャーまたはマイナーな機能的重要性を有する不特定のエレメントを包含するように意味する。言い換えると、記載された工程、エレメント、またはオプションは、排他的である必要はない。用語「含んでいる」または「有する」が使用される場合は何時でも、これらの用語が前述の「含む」と同等であることを意味する。
【0025】
ここで称される食用組成物の一回分は、典型的に単一の食事時間で、単一の部分として消費されるように提供される食用組成物の量を指す。飲料については、典型的な一回分のサイズは、100から500mlの範囲内であり、棒状の製品またはクッキー等については、20から100gの範囲内であろう。しかしながら、一回分のサイズは、食用組成物のタイプによって変化すると解される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明によれば、本発明に係る特定の栄養素の混合物を含む食用組成物は、18歳までの年齢を有するヒトの認識の発達または能力を補助するために使用できる。前記食用組成物及びその成分の更なる詳細が以下に記載される。
【0027】
鉄化合物
本発明は、鉄化合物、つまり身体に対して少なくとも部分的に生体利用性である鉄化合物を使用する。いずれの生体利用性鉄化合物もが、本発明によって使用されて良いが、第一鉄が第二鉄よりも身体によって一般的に好適に利用される。
【0028】
使用できる生体利用性鉄化合物は、食用第一鉄化合物、例えば硫酸第一鉄のような食用無機鉄化合物を含む。第一鉄がより生体利用性であるが、特定の第二鉄塩もまた鉄の高度に生体利用性化合物を提供でき、これらもまた本発明によって使用されて良い。適切な例として、硫酸第二鉄及び塩化第二鉄及びこれらの混合物が含まれる。
【0029】
食用生体利用性鉄有機化合物もまた、本発明によって使用されて良い。好ましい例として、カルボン酸第一鉄塩、例えばフマル酸第一鉄、コハク酸第一鉄、酒石酸第一鉄、乳酸第一鉄、グルコン酸第一鉄、クエン酸第一鉄、及びそれらの混合物が含まれる。前述の通り、第一鉄は典型的により生体利用性であるが、本発明で使用されて良い高度に生体利用性の食用第二鉄化合物として、カルボン酸第二鉄塩、例えばクエン酸第二鉄アンモニウム、クエン酸第二鉄、及びそれらの混合物が含まれる。
【0030】
特に好ましい生体利用性鉄有機化合物は、EDTA第二鉄(エチレンジアミン四酢酸ナトリウム第二鉄、またはエチレンジアミノ四酢酸ナトリウム鉄、NaFeEDTA)である。EDTA第二鉄は、添加されたビタミン/ミネラルミックスを有する食用組成物中にしばしば存在する他のカチオン(例えばナトリウム、カルシウム、カリウム、亜鉛、ヨウ素、ビタミンC、ビタミンE等)とあまり相互変換せず、それ故有意な遊離鉄を生じないという利点を有する。これは、食料品の着色及び香味の安定性に寄与する。更にそれは食用組成物中で比較的安定性であり、良好な生体利用性を有する。
【0031】
本発明によって使用できる他の食用鉄有機化合物には、生体利用性鉄−糖−カルボキシラート錯体が含まれる。これらの物質はここで「錯体」と称されるが、それは実際には、錯体化した、高度に水和した、保護されたコロイドとして溶液中に存在しても良い。しかしながら用語「錯体」は、単純化の目的のため使用される。そのような物質は、US 6 509 045に記載されており、それは参考としてここに取り込まれる。
【0032】
これらの鉄−糖-カルボキシラート錯体では、カルボキシラートが、第一鉄(好ましい)または第二鉄に対する対イオンを提供する。これらの錯体を生産するために使用できる糖は、グルコース、スクロース及びフルクトース、マンノース、ガラクトース、ラクトース、マルトース等のような食用のサッカリド糖のいずれかを含み、スクロース及びフルクトースが好ましい。それらの混合物もまた使用されて良い。使用されるカルボン酸は、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、コハク酸、プロピオン酸、及びそれらの混合物のようないずれかの食用カルボン酸であって良い。特定の例では、サッカリド第二鉄、サッカラート第二鉄、及びそれらの混合物が含まれる。
【0033】
US 6 509 045はまた、鉄がキレートの形態で投与されたならばより生体利用性であることを開示しており、その場合キレートリガンドはアミノ酸またはタンパク質加水分解産物である(US 3,939,540及びUS 4,020,158参照)。これらのキレート化鉄化合物は、鉄プロテイナート、鉄アミノ酸キレート及びペプチドまたはポリペプチドキレートのような各種の名称によって当該技術分野で既知である。そのような物質もまた、本発明によって使用されて良い。
【0034】
特に適切な第一鉄アミノ酸キレートは、反応性リガンドがグリシン、リジン、及びロイシンであるものであり、反応性リガンドがグリシンである場合の第一鉄アミノ酸キレートを含む。
【0035】
本発明における使用のため高度に生体利用性のアミノ酸キレート化鉄として特に適切な第一鉄アミノ酸キレートは、少なくとも2:1の金属比でリガンドを有するものである。例えば、2の金属モル比でリガンドを有する適切な第一鉄アミノ酸キレートは、Fe(L)2[式中Lはアルファアミノ酸、ジペプチド、トリペプチド、またはクアドラペプチド反応性リガンドである]の式のものである。かくしてLは、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、シスチン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、ヒドロキシプロリン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、オミチン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、及びバリンから選択される天然に存在するアルファアミノ酸、またはこれらのアルファアミノ酸のいずれかの組み合わせによって形成されるジペプチド、トリペプチド、若しくはクアドラペプチドであるいずれかの反応性リガンドであることができる。US 3,969,540及びUS 4,020,158を参照。これらは参考として取り込まれる。
【0036】
元素の鉄もまた、本発明によって使用されて良く、生体利用性化合物であるとここで考慮されるが、厳格に言うと、それは化合物ではない。
【0037】
前述の生体利用性鉄化合物のいずれかの一つ以上の混合物もまた使用されて良い。生体利用性鉄化合物は、第一鉄無機化合物、カルボン酸第一鉄塩、鉄−糖−カルボキシラート錯体、キレート化鉄化合物、及びそれらの混合物から選択される。生体利用性鉄化合物は適切な場合、水和形態で存在しても良い。特に好ましい生体利用性鉄化合物は、ナトリウム第二鉄エチレンジアミン四酢酸、またはナトリウム鉄エチレンジアミノ四酢酸(NaFeEDTAとして既知)である。
【0038】
生体利用性鉄化合物は、所望であれば、カプセル化形態で存在しても良い。
【0039】
食用組成物で使用される生体利用性鉄化合物の量は、本発明に係る亜鉛に対する鉄の重量比に対する条件を満たすことを前提に、18歳までの年齢を有する人の認識の発達または能力を補助するいずれかの量であって良い。生体利用性鉄化合物由来の50mgまでの鉄の量、より好ましくは食用組成物の一回分当たり0.5から30mg、最も好ましくは1から20mg、例えば2から15mgの量が、食用組成物中で使用されることが好ましい。これらの量は、生体利用性鉄化合物中の鉄の重量に基づき、生体利用性鉄化合物の総重量には基づかない。かくして、生体利用性鉄化合物の重量は、使用される前記化合物に依存して対応するように大きいであろう。
【0040】
亜鉛化合物
本発明は、生体利用性亜鉛化合物、つまり身体に対して少なくとも部分的に生体利用性である亜鉛化合物を使用する。
【0041】
使用できる生体利用性亜鉛化合物は、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、及びこれらの混合物のような食用無機亜鉛化合物を含む。
【0042】
食用生体利用性亜鉛有機化合物もまた、本発明によって使用されて良い。好ましい例として、カルボン酸亜鉛塩、例えば酢酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、アスコルビン酸亜鉛、クエン酸亜鉛、アスパラギン酸亜鉛、ピコール酸亜鉛、及びこれらの混合物が含まれる。
【0043】
鉄化合物について前述したタイプのアミノ酸キレート化亜鉛化合物もまた使用されて良い。
【0044】
前記体利用性亜鉛化合物のいずれかの一つ以上の混合物もまた使用されて良い。好ましくは生体利用性亜鉛化合物は、無機亜鉛塩、カルボン酸亜鉛塩、キレート化亜鉛化合物、及びこれらの混合物から選択される。前記化合物は、適切な場合、水和形態で存在しても良い。
【0045】
生体利用性亜鉛化合物は、所望であれば、カプセル化形態で存在しても良い。
【0046】
本発明の一つの実施態様によれば、鉄化合物はNaFeEDTAを含み、亜鉛化合物は硫酸亜鉛.7HOを含むのが特に好ましい。
【0047】
食用組成物で使用される生体利用性亜鉛化合物の量は、本発明に係る亜鉛に対する鉄の重量比に対する条件を満たすことを前提に、18歳までの年齢を有する人の認識の発達または能力を補助するいずれかの量であって良い。生体利用性亜鉛化合物由来の50mgまでの亜鉛の量、より好ましくは食用組成物の一回分当たり0.5から20mg、最も好ましくは0.7から15mg、例えば1から10mgの量が、食用組成物中で使用されることが好ましい。これらの量は、生体利用性亜鉛化合物中の亜鉛の重量に基づき、生体利用性亜鉛化合物の総重量には基づかない。かくして、生体利用性亜鉛化合物の重量は、使用される前記化合物に依存して対応するように大きいであろう。
【0048】
生体利用性亜鉛化合物に対する生体利用性鉄化合物の重量比は、2:1から5:1、最も好ましくは2:1から4:1の範囲であることが特に好ましい。
【0049】
ビタミンB
本発明は、好ましくはビタミンB6、B11、及びB12から選択される少なくとも一つのビタミンBを使用する。食用組成物は、ビタミンB6、B11、及びB12のいずれか二つ、より好ましくはB6、B11、及びB12のぞれぞれを含むことが好ましい。
【0050】
少なくとも一つのビタミンBは、食用組成物の一回分中で5mgまで、好ましくは0.05から3mg、より好ましくは0.1から2mgの量で好ましくは使用される。
【0051】
ビタミンB6及びB11はそれぞれ、食用組成物の一回分当たり0.05から5mg、より好ましくは0.075から3mg、最も好ましくは0.1から2mgの量で使用されることが好ましい。
【0052】
ビタミンB12は、食用組成物の一回分当たり0.0001から1mg、好ましくは0.001から0.5mg、最も好ましくは0.0015から0.2mgの量で使用されることが好ましい。
【0053】
前述の全てのビタミンBについて、参照される成分の量は、活性成分の量である。
【0054】
ポリ不飽和脂肪酸
本発明は、好ましくは更に、食用組成物の調製においてポリ不飽和脂肪酸を使用する。好ましくは、オメガ3脂肪酸、特にドコサヘキサン酸(DHA、C20:5)及び/またはエイコサペンタン酸(EPA、C22:5)を含むいずれかのオイルが使用されて良い。好ましいオメガ3脂肪酸は、C18:3、C18:4,C20:4、C20:5、C22:5、及びC22:6である。
【0055】
好ましくは、ポリ不飽和脂肪酸は、魚油及び/または藻類から由来するオイルの食用組成物中への封入によって取り込まれて良い。
【0056】
ポリ不飽和脂肪酸は好ましくは、少なくとも2:1、より好ましくは少なくとも3:1、例えば少なくとも4:1の重量比でDHAとEPAとを含む。
【0057】
ポリ不飽和脂肪酸は好ましくは、食用組成物の一回分当たり2gまで、より好ましくは一回分当たり50mgから1g、より好ましくは一回分当たり100から500mgの量で使用される。
【0058】
本発明によれば、ポリ不飽和脂肪酸は、食用組成物中で生体利用性鉄化合物または生体利用性亜鉛化合物のいずれかとともに使用されることが特に好ましい。ポリ不飽和脂肪酸、特にDHAとEPAの混合物が、食用組成物中で生体利用性鉄化合物と生体利用性亜鉛化合物の両者とともに使用されることが最も好ましい。
【0059】
ビタミンA及びC
ビタミンCを共存して補うことが、身体による鉄の吸収を改善することが既知である。ビタミンAは鉄の移動を促進し、ビタミンAとベータカロチンは非ヘム鉄の吸収を増大する(Mejia & Chew, 1988, Hematological effects of supplementing anaemic children with vitamin A alone and in combination with iron. Americal Journal of Clinical Nutrition, 48, 1271-1276)。
【0060】
ビタミンA及び/またはビタミンCは好ましくは、食用組成物中に含まれる。
【0061】
ビタミンAは好ましくは、酢酸レチノール同等量に基づいて、0.5から50mg、好ましくは1から20mg、例えば2から10mgの量で使用される。ビタミンCは好ましくは、1から100mg、好ましくは5から75mg、例えば10から65mgの量で使用される。
【0062】
本発明によれば、食用組成物は、ここに記載されたビタミンBに加えて、ポリ不飽和脂肪酸、生体利用性鉄化合物、生体利用性亜鉛化合物、及びビタミンA及び/またはC、特にビタミンAとCの両者を含むことが特に好ましい。
【0063】
本発明の食用組成物は、栄養性サプリメントの形態(錠剤、パウダー、カプセル、または液体製品のような)、または飲料を含む食品組成物の形態(製品)で存在しても良い。本発明によれば、食品組成物が特に好ましい。
【0064】
食用組成物は、タンパク質、炭水化物、または脂肪の少なくとも一つを更に含む食品組成物であることが好ましい。食品組成物は、とりわけ以下に記載される量で少なくともタンパク質及び炭水化物を含むことが特に好ましい。別法として、タンパク質、炭水化物、及び/または脂肪の一つのソースは、例えば食用組成物がこれらの成分の実質的な量を含まないなら、食用組成物と同時に与えることができる。この場合、本発明の食用組成物及び付加的な食料品は、本発明によって使用できるキットを提供するであろう。タンパク質、炭水化物、及び脂肪含量物等に対するここでのコメントは、そのようなキット中の付加的な食料品に対して同等に適用される。
【0065】
食用組成物は、例えば固形製品、パウダー化製品、液体、流動可能な、スプーンですくえる、注ぐことができる、または広げることができる製品、またはバー等として存在して良い。食用組成物は、水またはミルクのような液体と混合して、液体またはスラリー製品を生産するパウダーであっても良い。
【0066】
食用組成物は、乳製品(例えば乳に基づく製品および飲料のような)、飲料を含むダイズベースの製品、パン及びシリアルに基づく製品(パスタまたはヌードルに基づく製品及びシリアルバーを含む)、ケーキ、ビスケット、アイスクリーム、デザート、スープ、ポリッジタイプの製品、直ぐ飲める液体を含む飲料、可溶性パウダー化製品から生産される液体、バー製品、菓子類、スナック食品、直ぐ食べられる食品、事前に実装された食品、及び乾燥された食品等、および可溶性パウダー化製品から適切に選択されて良い。
【0067】
食用組成物は、飲料(乳及びダイズに基づく飲料を含む)、バー製品、ポリッジ、ビスケット、またはケーキの形態で存在することが特に好ましい。
【0068】
食用パウダーが本発明によって提供される場合、これは飲料またはビスケットのような別の食品に通常添加され、より簡便に消費されるものであろう。
【0069】
タンパク質
食用組成物は、好ましくは更にタンパク質を含み、これは食用食品並びに上述の特定のミクロ栄養素の消費者に対してエネルギーを提供することが好ましい。いずれかの適切なタンパク質が、食用組成物のタイプに依存して使用されて良い。
【0070】
タンパク質の適切なソースとしては、ミルク、ヨーグルト、ケフィール、チーズ、またはクリームのような乳製品ソースが含まれる。他の動物のソースはまた、食用組成物のタイプに依存して使用されて良い。別法として食用組成物は、ダイズタンパク質、コメタンパク質、エンドウマメタンパク質、またはコムギタンパク質のような植物起源のタンパク質を含んでも良い。
【0071】
食用組成物中のタンパク質の量は、食用組成物の好ましくは0.1から30または40重量%、好ましくは0.5から25重量%、最も好ましくは1から20重量%の量である。
【0072】
炭水化物
食用組成物は、前記組成物の重量に基づいて好ましくは1から90重量%、より好ましくは5から80重量%、最も好ましくは10から75重量%の量で、一つ以上の炭水化物を含んでも良い。これは、食用食品並びに上述の特定のミクロ栄養素の消費者にエネルギーを提供することが好ましい。
【0073】
例えばスクロース、ラクトース、グルコース、フルクトース、コーンシロップ、マルトデキストリン、デンプン、変性デンプン、またはそれらの混合物といったいずれかの適切な炭水化物を使用して良い。
【0074】
食用組成物は、前記組成物の重量に基づいて例えば0.1から10重量%、好ましくは0.5から5重量%の量で食物繊維を含んでも良い。
【0075】
食用組成物は、好ましくは上記の量で、タンパク質と炭水化物の両者を含むことが特に好ましい。
【0076】
脂肪
食用組成物は、前述のいずれかのポリ不飽和脂肪酸に加えて食用脂肪を含んでも良い。前記組成物は好ましくは、組成物の重量に基づいて40重量%まで、より好ましくは0.5から30重量%、最も好ましくは0.75から10または20重量%の他の脂肪を含む。
【0077】
いずれかの適切な脂肪が使用されて良いが、植物性脂肪が特に好ましい。適切な例として、植物性脂肪、植物オイル、ナッツオイル、シードオイル、またはそれらの混合物が含まれる。飽和または不飽和の(モノ不飽和及びポリ不飽和)の脂肪が使用されて良いが、飽和脂肪はあまり好ましくない。
【0078】
食用組成物中のタンパク質、脂肪、炭水化物、及び他の成分の量は、前記組成物の製品フォーマットに従って、更に必要な場合は、国家または地域の法律に従って変化するであろう。
【0079】
任意成分
食品組成物は、前記食品組成物の重量に基づいて好ましくは60重量%までの量で、果実または野生の断片または粒子、濃縮物、ジュース、またはブーリを任意に含んでも良い。好ましくは前記組成物は、0.1から40重量%、より好ましくは1から20重量%のこれらの成分を含む。これらの成分の量は、食用組成物のタイプに依存するであろう。
【0080】
食用組成物はまた、前記組成物の重量に基づいて0.1から15重量%、好ましくは3から8重量%の食塩を含んでも良い。例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、クエン酸、乳酸、安息香酸、アスコルビン酸のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、またはこれらの混合物といったいずれかの食塩が使用されて良い。塩化カルシウム及びカゼイン酸カルシウムのようなカルシウム塩も使用されて良い。
【0081】
前記食用組成物は、他の添加されるビタミン及び/またはミネラル、ハーブ、種子、香料、安定化剤、乳化剤、アロマ、抗酸化剤、着色料、防腐剤、またはそれらの混合物から選択される成分を更に含んでも良い。これらの成分は、従来量で使用される。
【0082】
これらの他の添加されるビタミン及び/またはミネラルは、ビタミンD、E、H、K、及びカルシウム、マグネシウム、カリウム、ヨウ素、マンガン、モリブデン、リン、セレン、及び/またはクロムの少なくとも一つから好ましくは選択される。
【0083】
調製
本発明の食用組成物は、食用組成物のタイプに依存して、混合、混在、均一化、高圧均一化、乳化、分散、及び/またはカプセル化を含むいずれかの適切な調製方法によって調製されて良い。各種のタイプの食用組成物についての最も適切な調製方法の選択は、当業者に委ねられる。
【0084】
認識の発達または能力の補助方法
本発明はまた、本発明の第二の特徴点によれば、18歳までの年齢を有するヒトの認識の発達または能力の前述の補助方法を提供する。
【0085】
本発明によって被験者に投与される総有効量は、それが投与されるヒトのニーズ、例えば年齢、一般的な栄養状態等によって変化して良い。本発明に係るミクロ栄養素のそれぞれについての食用組成物の投与によって投与される典型的な量は、当該ミクロ栄養素に対して参照される見出しにおいて上述してある。これらは、ミクロ栄養素あたりの一日当たり投与される典型的な量である。毎日の有効量は、単一の投与量または複数の投与量によって投与されて良い。
【0086】
本発明の食用組成物の消費は、好ましくは毎日の食事の一部として生じる。前記食用組成物は毎日消費されることが好ましい。
【0087】
本発明は、以下の実施例によってされに記載されるが、実施例は非制限的なものとして理解されるべきである。本発明の範囲内にある更なる実施例は、当業者に明らかであろう。
【実施例】
【0088】
実施例1−飲料
表1に示された組成を有する5gのパウダーを、0.6重量%のダイズタンパク質を含む100mlの市販されている水性ダイズベース飲料(ADESダイズベース果実飲料)に加えた。生成した飲料を、パウダーが溶解するまで混合した。
【0089】
【表1】

【0090】
前記食用組成物は、認識の発達または能力を補助するために、18歳までの年齢のヒトによって消費できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
18歳までの年齢を有するヒトの認識の発達または認識能力の補助における使用のための食用組成物の製造における、
1.少なくとも2:1の重量比の生体利用性鉄化合物と生体利用性亜鉛化合物、及び
2.少なくとも一つのビタミンB
の使用。
【請求項2】
前記食用組成物が、前記食用組成物の一回分当たり0.5から30mgの生体利用性鉄化合物由来の鉄を含む、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記生体利用性鉄化合物が、第一鉄無機化合物、カルボン酸第一鉄塩、鉄−糖−カルボキシラート錯体、キレート化鉄化合物、及びそれらの混合物から選択される、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記食用組成物が、前記食用組成物の一回分当たり0.5から20mgの生体利用性亜鉛化合物由来の亜鉛を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記生体利用性亜鉛化合物が、無機亜鉛塩、カルボン酸亜鉛塩、キレート化亜鉛化合物、及びそれらの混合物から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記生体利用性亜鉛化合物に対する生体利用性鉄化合物の重量比が、2:1から5:1の範囲内にある、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記食用組成物が、少なくとも一つのポリ不飽和脂肪酸を更に含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記食用組成物が、一回分当たり2gまでの前記ポリ不飽和脂肪酸を含む、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記ポリ不飽和脂肪酸が、少なくとも2:1の重量比のドコサヘキサン酸とエイコサペンタン酸を含む、請求項7または8に記載の使用。
【請求項10】
前記少なくとも一つのビタミンBが、ビタミンB6、B11、及びB12から選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
前記食用組成物が、ビタミンA及び/またはビタミンCを更に含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
前記食用組成物が食品組成物である、請求項1から11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
前記食品組成物が、タンパク質及び/または炭水化物を更に含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
18歳までの年齢を有するヒトの認識の発達または認識能力の補助方法であって、前記ヒトに、
1)少なくとも2:1の重量比の生体利用性鉄化合物と生体利用性亜鉛化合物、及び
2)少なくとも一つのビタミンB
を含む食用組成物を投与する工程を含む方法。
【請求項15】
前記食用組成物が食品組成物である、請求項13に記載の方法。

【公表番号】特表2006−527987(P2006−527987A)
【公表日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−520692(P2006−520692)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【国際出願番号】PCT/EP2004/006817
【国際公開番号】WO2005/013724
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(590003065)ユニリーバー・ナームローゼ・ベンノートシヤープ (494)
【Fターム(参考)】